(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084377
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】付加型シリコーン樹脂組成物および光半導体装置用封止剤
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20170213BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20170213BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20170213BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20170213BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20170213BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
H01L23/30 R
H01L23/30 F
H01L33/56
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-140228(P2012-140228)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-5326(P2014-5326A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】サム フイ
【審査官】
前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−007126(JP,A)
【文献】
特開2014−005327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00− 83/16
C09D183/00−183/16
C09J183/00−183/16
C08G 77/00− 77/62
C07F 7/02− 7/21
H01L 23/00− 23/66
H01L 33/00− 33/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノ水素ポリシロキサン(b)、付加反応触媒(c)と、
(メタ)アクリロイル基含有トリアルコキシシラン(d1)、エポキシ基含有トリアルコキシシラン(d2)およびビニル基含有トリアルコキシシラン(d3)のみを23〜100℃雰囲気下で2〜24時間反応させた反応物(d)を含有し、
前記反応物(d)が、前記(d1)、(d2)、(d3)の合計を100重量部とした場合に(d3)の割合が20〜32重量部となるような配合比で反応させたものであることを特徴とする付加型シリコーン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン(a)100重量部に対して、(d)成分が、0.1〜20重量部配合されていることを特徴とする請求項1記載の付加型シリコーン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の付加型シリコーン樹脂組成物を含有することを特徴とする光半導体装置用封止剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリフタルアミド樹脂などの難接着性基材に対して優れた密着性を有するとともに、硫黄ガスバリアー性にも優れ、さらに高温高湿下において優れた耐久性を有し、接着剤、シーリング剤、封止剤などとして有用な硬化性シリコーン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は耐熱性に優れ、弾性を有することから接着剤、シーリング剤、封止剤などの各種用途に使用されており、最近ではLEDなどの光半導体の接着剤や封止剤としての需要が増加しつつある。LED部材には各種エンジニアリングプラスチックが使用されているため、シリコーン樹脂にはこれらのエンジニアリングプラスチックへの密着性が求められている。しかしながら、ポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックへの密着性が十分ではなく、改良が求められている。また、LEDの導通や反射用金属として用いられる銀の腐蝕を抑制するため、硫黄ガスバリア性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1〜4には、種々の付加硬化型シリコーン樹脂組成物が開示されているが、いずれもポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックへの密着性が十分ではなく、更なる改良が必要であった。また、硫黄ガスバリア性についても十分ではなかった。また、特許文献5には硫黄ガスバリアー性を改良したシリコーン樹脂組成物が開示されているが、高温高湿下における耐久性は十分ではなかった。
【特許文献1】特開2004-2783号公報
【特許文献2】特開2004-266134号公報
【特許文献3】特表2007-502346号公報
【特許文献4】特開2007-63538号公報
【特許文献5】特許4671309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はポリフタルアミド樹脂などの難接着性基材に対して優れた密着性を有するとともに、硫黄ガスバリアー性にも優れ、さらに高温高湿下において優れた耐久性を有し、接着剤、シーリング剤、封止剤などとして有用な硬化性シリコーン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノ水素ポリシロキサン(b)、付加反応触媒(c)と、(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン(d1)、エポキシ基含有
トリアルコキシシラン(d2)およびビニル基含有
トリアルコキシシラン(d3)
のみを23〜100℃雰囲気下で2〜24時間反応させた反応物(d)を含有し、前記反応物(d)が、前記(d1)、(d2)、(d3)の合計を100重量部とした場合に(d3)の割合が20〜32重量部となるような配合比で反応させたものであることを特徴とする付加型シリコーン樹脂組成物
の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の付加型シリコーン樹脂組成物はポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックへの密着性に優れる。また、硫黄ガスバリアー性にも優れ、高温高湿下において優れた耐久性を有するため、LEDなどの光半導体装置や各種電子部材の接着剤、シーリング剤、封止剤などとして特に適する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の付加型シリコーン樹脂組成物の各成分について説明する。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン(a)は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基などの炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは例えば主鎖がジオルガノシロキサンの繰返し単位であり、末端がトリオルガノシロキサン構造であるものが例示され、分岐や環状構造を有するものであってもよい。末端や繰返し単位中のケイ素に結合したオルガノ構造としてはメチル基、エチル基、フェニル基などが例示される。具体例としては、両末端にビニル基を有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0008】
1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するオルガノ水素ポリシロキサン(b)は、末端および/または繰返し構造中において、2個以上のSiH基を含有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは例えば主鎖がジオルガノシロキサンの繰返し単位であり、末端がトリオルガノシロキサン構造であるものが例示され、分岐や環状構造を有するものであってもよい。末端や繰返し単位中のケイ素に結合したオルガノ構造としてはメチル基、エチル基、フェニル、オクチル基などが例示され、これらの2個以上が水素基に置換されたものともいえる。前記オルガノポリシロキサン(a)とオルガノ水素ポリシロキサン(b)の配合比は、ビニル基とSiH基のモル比で(a):(b)=1:0.8〜1.5とすることが好ましく、より好ましくは(a):(b)=1:0.9〜1.2である。
【0009】
付加反応触媒(c)は、前記(a)成分と前記(b)成分のヒドロシリル化反応を促進させるために添加され、ヒドロシリル化反応の触媒活性を有する公知の金属、金属化合物、金属錯体などを用いることができる。特に白金、白金化合物、それらの錯体を用いることが好ましい。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、助触媒を併用してもよい。付加反応触媒(c)の配合量は組成物全体に対して1ppm〜50ppmとすることが好ましく、より好ましくは5〜20ppmである。
【0010】
本発明の付加型シリコーン樹脂組成物は前記(a)〜(c)の各成分に加えて、(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン(d1)、エポキシ基含有
トリアルコキシシラン(d2)およびビニル基含有
トリアルコキシシラン(d3)
のみを23〜100℃雰囲気下で2〜24時間反応させた反応物(d)を含有することを特徴とする。ここで、(d)に代えて、単に(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン、エポキシ基含有
トリアルコキシシランおよびビニル基含有
トリアルコキシシランを前記(a)〜(c)の各成分と混合しても本願発明の効果は得られない。すなわち、(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン、エポキシ基含有
トリアルコキシシランおよびビニル基含有
トリアルコキシシランのみを予め
23〜100℃雰囲気下で2〜24時間反応させ、前記(a)〜(c)の各成分と混合することが必要である。
【0011】
(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン(d1)は、分子内に(メタ)アクリロイル基およびアルコキシシリル基などの反応性シリル基を有する化合物である。具体的には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0012】
エポキシ基含有
トリアルコキシシラン(d2)は、分子内にエポキシ基およびアルコキシシリル基などの反応性シリル基を有する化合物である。エポキシ基含有
トリアルコキシシランの具体例として、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0013】
ビニル基含有
トリアルコキシシラン(d3)は、分子内にビニル基およびアルコキシシリル基などの反応性シリル基を有する化合物である。ビニル基含有
トリアルコキシシランの具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0014】
各
トリアルコキシシランを反応させる条件として、23℃雰囲気下であれば24時間程度攪拌混合することにより十分に反応が進行する。同様に、60℃雰囲気下であれば8時間程度、80℃雰囲気下であれば4時間程度、100℃雰囲気下であれば2時間程度攪拌混合することにより十分に反応が進行する。
【0015】
(メタ)アクリロイル基含有
トリアルコキシシラン(d1)、エポキシ基含有
トリアルコキシシラン(d2)およびビニル基含有
トリアルコキシシラン(d3)は、これらの合計を100重量部とした場合に(d3)の割合が20〜32重量部となるような配合比で反応させる必要がある。この範囲内とすることにより、高温高湿下における良好な耐久性が得られる。
【0016】
また、前記オルガノポリシロキサン(a)100重量部に対して、(d)成分を0.1〜20重量部配合することが好ましく、0.5〜10重量部配合することがより好ましい。
【0017】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物には前記必須成分の他、各種樹脂、添加剤を配合できる。希釈剤の配合により、粘度、柔軟性等を調整できる。その具体例として、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2−エチルヘキシルなどフタル酸エステル系の希釈剤、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジアルキル、セバシン酸ジブチル、エポキシ化大豆油、ポリプロピレングリコール、アクリルポリマー、α−オレフィンやその誘導体、植物油由来脂肪酸の2−エチルヘキシルエステル化合物等が挙げられる。
【0018】
粘度調整、粘性調整、増量などを目的として、炭酸カルシウム、硅砂、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、カオリン、二酸化ケイ素、メラミン等の無機充填材や有機充填材、硬化樹脂の補強のためにガラス繊維等の補強材、軽量化及び粘度調整などのためにシラスバルーン、ガラスバルーン等の中空体を添加できる。その他、酸化防止剤、顔料、防腐剤などを適宜使用することができる。
【0019】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0020】
反応物の調製
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−503)1重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−403)1重量部およびビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−1003)を60℃雰囲気下で8時間攪拌混合し、反応物1を得た。また、表1、2の配合、反応条件にて同様に反応物2〜18を得た。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
付加型シリコーン樹脂組成物の調製
ポリメチルビニルシロキサン(Hanse chemie社製の商品名VQM885、粘度 12Pa・s/23℃、ビニル基含有量 0.53mmol/gr)100重量部に前記反応物4を1重量部添加した。次いで付加反応触媒として白金−ビニルシロキサン錯体(ユミコアル社製の商品名Pt-VTSC-12.0VTS)を組成物全体に対して10ppmとなるよう添加し、さらにメチル水素ポリシロキサン(SiVance社製の商品名MQH-7、粘度 0.16Pa・s/23℃、SiH含有量 5.5mmo/gr)10重量部を添加混合することにより、実施例1の付加型シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0024】
実施例1において、反応物4に代えて表3、4記載の配合にて各反応物、各
トリアルコキシシランを添加した他は実施例1と同様に行い、実施例2〜15、比較例1〜8の各付加型シリコーン樹脂組成物を得た。
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
硬度
各付加型シリコーン樹脂組成物を硬化させ、厚み2mmの試験体を作成した。JIS K6301に準拠し、硬度計Aを用いて硬度を測定した。
【0028】
密着性
各付加型シリコーン樹脂組成物をポリフタルアミド樹脂板(幅25mm、2mm厚)に塗布量50g/m
2で塗布し、別のポリフタルアミド樹脂板(幅25mm、2mm厚)を長さ方向に25mm重なり合うように貼り合わせてクリップで固定し、150℃雰囲気下で1時間硬化させた。23℃雰囲気下で24時間養生後、引張り速度50mm/分でせん断試験を行い、強度の測定および破壊状態の確認を行った。また、被着材として半光沢銀メッキSUS板(幅25mm、100μm厚、メッキ厚3〜7μm)を用いて、同様にせん断強度の測定および破壊状態の確認を行った。
【0029】
腐食性
銀メッキを施した銅板上に各付加型シリコーン樹脂組成物を塗布、硬化することによって厚み2mmの皮膜を形成した。該銅板を硫黄粉0.2gと共に100ccガラスビンに封入し、60℃または80℃雰囲気下で24時間放置した。放置後に銅板を取り出してシリコーン皮膜を剥がし、銀メッキの腐食の程度を確認して以下のように評価した。
○:腐食なし
△:部分的に腐食(薄い黒色)
×:全面腐食(黒色化)
【0030】
耐湿熱性
密着性試験と同様な作成方法で、各付加型シリコーン樹脂組成物をポリフタルアミド樹脂板(幅25mm、2mm厚)に塗布量50g/m
2で塗布し、別のポリフタルアミド樹脂板(幅25mm、2mm厚)を長さ方向に25mm重なり合うように貼り合わせてクリップで固定し、150℃雰囲気下で1時間硬化させた。23℃雰囲気下で24時間養生後、試験片を60℃、90%RHの環境下で4000時間放置後、試験片を23℃雰囲気下で24時間に静置した後、引張り速度50mm/分でせん断試験を行い、強度の測定および破壊状態の確認を行った。各水準の試験片の数n=5から平均値を求め、初期の値より平均値の低下が10%未満の場合は○と判定し、10%以上の場合は×と判定した。
【0031】
実施例の各付加型シリコーン樹脂組成物はポリフタルアミド樹脂や半光沢銀メッキSUSに対して優れた密着性を有しており、60℃、80℃における硫黄ガスバリアー性にも優れている。さらに、高温高湿下で長時間放置された後にも十分な密着性有しているため、信頼性が高い。一方、比較例1〜3の各付加型シリコーン樹脂組成物は密着性や硫黄ガスバリアー性には優れるものの、高温高湿下で長時間放置された後の密着性が十分でなく、実施例と比較すると信頼性に劣る。比較例4〜8については、各性能とも劣っている。