特許第6084383号(P6084383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084383
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】無機質板、及び無機質板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20170213BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 18/24 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 14/20 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 14/18 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20170213BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B16/02 Z
   C04B18/24 Z
   C04B14/38 C
   C04B14/20 A
   C04B14/18
   C04B18/10 A
   C04B18/10 Z
   C04B22/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-146826(P2012-146826)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-9121(P2014-9121A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 怜司
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐助
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116685(JP,A)
【文献】 特開2008−081328(JP,A)
【文献】 米国特許第04377415(US,A)
【文献】 特開平11−152450(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1884180(CN,A)
【文献】 特開平08−012409(JP,A)
【文献】 特開2001−335354(JP,A)
【文献】 諸橋健二ほか,産地の異なるウォラストナイトの性状が硬化体性能に与える影響,スレート協会技術部会論文集,日本,1990年 6月,第33集,第55頁〜第73頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
C04B 103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分対比で、水硬性材料を30〜70質量%、補強繊維を5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlのウォラストナイトを1〜30質量%、無機混和材を18〜64質量%含有し、
前記無機混和材として、パーライト、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰を含む
ことを特徴とする無機質板。
【請求項2】
前記ウォラストナイトは、ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の無機質板。
【請求項3】
前記ウォラストナイトを15〜30質量%含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の無機質板。
【請求項4】
水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトと、無機混和材とを含有するスラリーを生成する工程と、
得られたスラリーを脱水してシートを生成する工程と、
得られたシートをプレス、養生する工程とを含み、
前記スラリーを生成する工程において、前記スラリーの組成を、固形分対比で、水硬性材料30〜70質量%、補強繊維5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlであるウォラストナイト1〜30質量%、無機混和材18〜64質量%とし、
前記無機混和材として、パーライト、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰を使用する
ことを特徴とする無機質板の製造方法。
【請求項5】
前記スラリーを生成する工程において、前記ウォラストナイトとして、ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満であるウォラストナイトを使用する
ことを特徴とする請求項4に記載の無機質板の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーを生成する工程において、前記スラリーは前記ウォラストナイトを15〜30質量%含有する
ことを特徴とする請求項4に記載の無機質板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐クラック性、耐火性に優れ、建築板に好適な無機質板、及び無機質板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水硬性材料を水に分散させたスラリーを、ハチェック抄造機やフローオン抄造機等を用いて抄造、脱水し、次いで養生して、強度等の物性に優れるとともに、生産性の良い無機質板を製造することが行われている。そして、無機質板の耐クラック性、耐火性、寸法安定性等を向上させるために、該スラリーにウォラストナイトを添加、混合することも行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セメントスラリーを抄造して繊維補強セメント板を製造する際に、セメントスラリーの全固形分重量に対して0.5〜5重量%のウォラストナイトを、濾布上に供給した直後のグリーンシートに散布し、次いでグリーンシートに振動を与える製造方法が開示されている。しかし、ウォラストナイトは、その粉砕、分級方法により発揮される性能に差が生じる。そのため、無機質板に、耐クラック性、耐火性、寸法安定性等を保持させるためには、適切なグレードのウォラストナイトを使用する必要がある。また、適切なグレードのウォラストナイトを使用しないと、曲げ強度が低下する、濾水性等の面から生産性が悪くなる等の懸念がある。
【0004】
特許文献2には、セメント及びパルプ繊維材及び骨材を含み、更に、アスペクト比が10以上の無機添加剤を配合してある繊維セメント板が開示されており、該無機添加剤がウォラストナイトであることが開示されている。しかし、ウォラストナイトには大小様々な針状の結晶が存在するので、ウォラストナイトのアスペクト比が10以上であっても、ウォラストナイトの大きさの分布により、無機質板に耐クラック性、耐火性、寸法安定性等を保持させることができない懸念がある。また、ウォラストナイトの微細物が多いと、曲げ強度が低下する、濾水性等の面から生産性が悪くなる懸念もある。よって、ウォラストナイトの選定の判断として、アスペクト比は信頼性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−301511号公報
【特許文献2】特開平7−166644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、耐クラック性、耐火性、寸法安定性、生産性に優れる無機質板、及び、無機質板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建築板に好適な無機質板を提供する。本発明の無機質板は、固形分対比で、水硬性材料を30〜70質量%、補強繊維を5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlのウォラストナイトを1〜30質量%、無機混和材を18〜64質量%含有し、無機混和材として、パーライト、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰を含むことを特徴とする。
本発明において、ウォラストナイトは、ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満であることが好ましい
更に、無機混和材として、マイカ水酸化マグネシウムのすくなくとも1種を含み、補強繊維として故紙、パルプのすくなくとも1種を含むことが更に好ましい。
更に、本発明は、無機質板の製造方法も提供する。本発明の製造方法は、水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトと、無機混和材とを含有するスラリーを生成する工程と、得られたスラリーを脱水してシートを生成する工程と、得られたシートをプレス、養生する工程とを含む。スラリーを生成する工程において、該スラリーの組成を、固形分対比で、水硬性材料30〜70質量%、補強繊維5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlであるウォラストナイト1〜30質量%無機混和材18〜64質量%とし、無機混和材として、パーライト、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰を使用することを特徴とする。
本発明では、スラリーを生成する工程において、ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満であるウォラストナイトを使用することが好ましい。
スラリーを生成する工程においてスラリーは無機混和材として、マイカ水酸化マグネシウムのすくなくとも1種を使用し、補強繊維として故紙、パルプのすくなくとも1種を使用することが更に好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐クラック性、耐火性、寸法安定性、生産性に優れる無機質板、及び、無機質板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0010】
本発明の無機質板は、水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトとを含有する。
【0011】
水硬性材料としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等のセメントや、無水石膏、半水石膏、二水石膏等の石膏や、高炉スラグ、転炉スラグ等のスラグがあり、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。
【0012】
補強繊維としては、木片、竹片、木粉、故紙、針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の木質補強材や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維や、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、ロックウール等があり、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。
【0013】
ウォラストナイトは、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlである物である。ウェットボリューム値(30分静置)とは、ウォラストナイト15gを100mlメスシリンダー(JIS R3505規格品、内径28mm、全高250mm)に入れ、水で満たした後、密閉し、上下反転を十回以上行い、ウォラストナイトが水中に分散したことを確認し、その後、30分静置したときの水中でのウォラストナイトの嵩の高さである。ウェットボリューム値(15分静置)は、同様の方法で水を満たし、密閉、上下反転させた後、15分静置したときの水中でのウォラストナイトの嵩の高さである。
なお、ウォラストナイトは、ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満であると、ウォラストナイト結晶の微細物が少ないので、スラリー脱水時に濾水を阻害しにくく、生産性に優れるとともに、得られる無機質板が耐クラック性、耐火性等を発現しやすくなるので好ましい。
【0014】
また、本発明の無機質板は、無機混和材を含有しても良い。無機混和材としては、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、パーライト、シリカフューム、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、バーミキュライト、セピオライト、ゾノトライト、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、珪藻土、カオリナイト、ゼオライト等があり、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。その中でも、マイカ、パーライト、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、水酸化マグネシウムのすくなくとも1種を含有することが好ましい。
【0015】
更に、本発明の無機質板は、無機組成物も含有することができる。無機組成物としては、製造工程で発生した硬化前の無機質板の不良板、硬化後の無機質板の不良板、建築現場で発生した無機質板の端材、廃材などがある。いずれも衝撃式粉砕機及び/又は擦過式粉砕機で粉砕した物である。該無機組成物を含有することで、産業廃棄物を減らすことができる。
【0016】
更に、本発明の無機質板は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、アクリル酸カルシウム等の硬化促進剤や、ベントナイト等の鉱物粉末や、ロウ、ワックス、パラフィン、シリコン、コハク酸、高級脂肪酸の金属塩等の防水剤、撥水剤や、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等や、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水性糊料、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリル樹脂エマルジョンなどの合成樹脂エマルジョンの強化剤も含有することができる。
【0017】
そして、本発明の無機質板は、固形分対比で、水硬性材料を30〜70質量%、補強繊維を5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlのウォラストナイトを1〜30質量%含有する。水硬性材料を30〜70質量%含有するのは、30質量%未満であると、得られる無機質板の強度は不足し、70質量%より多いと、耐クラック性等の物性や、生産性が悪化するためである。蒸気養生、自然養生の場合には、40〜70質量%とすることが好ましい。繊維補強材を5〜15質量%含有するのは、5質量%未満では得られる無機質板の強度は不足し、15質量%より多いと、硬化が不十分となるためである。ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlのウォラストナイトを含有するのは、15ml未満では、得られる無機質板に十分な耐クラック性や耐火性が得られないためであり、45mlより嵩高いと、生産性が悪くなるためである。また、該ウォラストナイトを1〜30質量%含有するのは、1質量%未満では、得られる無機質板にウォラストナイトの効果が得られないためであり、30質量%より多いと、得られる無機質板の強度が不足するためである。
【0018】
なお、本発明の無機質板は、無機混和材を18〜64質量%含有することが好ましい。無機混和材を18〜64質量%とするのは、18質量%未満では、無機質板に、軽量効果、耐クラック性等の無機混和材の効果が得られないためであり、64質量%より大きいと、無機質板の強度が不足する懸念があるためである。
【0019】
そして、本発明の無機質板の製造方法は、水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトとを含有するスラリーを生成する工程と、得られたスラリーを脱水してシートを生成する工程と、得られたシートをプレス、養生する工程とを含む。
【0020】
スラリーを生成する工程において、該スラリーには、水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトとを含有させる。水硬性材料と、補強繊維と、ウォラストナイトは、粉体(乾燥)状態で混合してから水に分散させてスラリーとしても良いし、予め各原料を別の水に分散しておいてから混合してスラリーとしても良い。
なお、本発明では、ウォラストナイトは、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlである物を使用する。そして、本発明では、スラリーの組成を、固形分対比で、水硬性材料30〜70質量%、補強繊維5〜15質量%、ウェットボリューム値(30分静置)が15〜45mlであるウォラストナイト1〜30質量%とする。それにより、得られる無機質板は、強度、耐クラック性、耐火性に優れるとともに、生産性に優れる。ウェットボリューム値(15分静置)とウェットボリューム値(30分静置)の差が10%未満であるウォラストナイトを使用すると、スラリー脱水時に濾水を阻害しにくく、より生産性に優れるとともに、得られる無機質板が耐クラック性、耐火性等を発現しやすくなるので好ましい。
【0021】
更に、スラリーは、固形分対比で無機混和材を18〜64質量%含有しても良い。それにより、得られる無機質板は強度が低下せず、軽量効果、耐クラック性等の無機混和材の効果を得ることができる。
【0022】
次に、得られたスラリーを脱水して、シートを生成する工程において、該スラリーは、抄造方式、型枠方式により、脱水され、シートが形成される。
抄造方式では、フェルト、金網等を用いて、スラリーを水と固形物に分離することによりシートが形成される。具体的には、フェルトの上にスラリーを流下させ、スラリーを脱水する方法や、スラリーを円形の金網ですきあげて脱水する方法などにより行うことができる。なお、得られた抄造シートは、上に別の抄造シートを積層して、積層シートとすることもできる。積層方法としては、抄造シートの搬送方向に、抄造シートを製造する装置を複数用意し、各装置で製造された抄造シートを積層する方法や、抄造シートをロールに巻き付けて積層し、所定の厚みが得られたら該ロールより外す方法等がある。なお、抄造方式において、脱水前のスラリーの固形分濃度は、20質量%以下となるように調整する。スラリーの固形分濃度を20質量%以下とするのは、20質量%より多いとスラリーを脱水する際に時間がかかり、脱水された抄造シートに亀裂が入りやすく、抄造しにくいなどの問題が発生するためである。
型枠方式では、下側に吸引脱水装置を備えた枠内にスラリーを流し込み、下側側から吸引脱水して、スラリーを水と固形物に分離することによりシートが形成される。なお、型枠方式では、脱水前のスラリーの固形分濃度は20〜40質量%となるように調整する。スラリーの固形分濃度を20質量%以上とするのは、20質量%より少ないとスラリーを脱水する際に時間がかかり、脱水されたシートに亀裂が入りやすいなどの問題が発生するためである。スラリーの固形分濃度を40質量%以下とするのは、40質量%より多いとスラリーの流動性が悪くなり、脱水されたシートに亀裂が入りやすいなどの問題が発生するためである。
【0023】
次に、得られたシートをプレス、養生する工程において、該シートは、通常10kg/cm以上の圧力でプレスし、その後、自然養生、蒸気養生、オートクレーブ養生等の養生方法により養生する。なお、プレスの際に、マットの上、又は下に型板を配置し、マットに凹凸模様を形成することもできる。また、通常、蒸気養生は、60〜90℃で5〜36時間の条件で行い、オートクレーブ養生は、通常150〜200℃、0.5MPa以上の圧力で7〜15時間行う。更に、蒸気養生、オートクレーブ養生の前に一次養生を行っても良い。
【0024】
次に、本発明の実施例をあげる。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示す固形分組成のスラリーをフェルトの上に流下させて脱水し、得られたシートを積層し、80℃で蒸気養生して、実施例1〜5、比較例1〜3の無機質板を製造した。なお、ウォラストナイトのウェットボリューム値は、ウォラストナイト15gを入れ、水で満たした100mlメスシリンダーを密閉し、上下反転を20回行ってウォラストナイトを水中に分散させた後、所定時間静置して求めた。また、スラリーの固形分濃度は、全て14質量%とし、40kg/cmでプレスして板厚は14mmとした。
【0027】
そして、得られた実施例1〜5、及び比較例1〜3の各無機質板について、生産性を確認するとともに、絶乾比重、曲げ強度、寸法安定性、塗膜密着性、耐クラック性、燃焼時収縮性を測定し、判定したので、その結果も表1に示す。
生産性は、濾過面にろ紙を敷いたブフナー漏斗に、各無機質板を製造する際に用いるスラリーを500ml投入し、0.2MPaの吸引力で吸引ビンを減圧することにより脱水させ、水が落ちなくなるまでの時間を測定し、50秒より大きい場合は”×”とし、40〜50秒である場合は”△”とし、40秒未満である場合は”○”とした。
曲げ強度は、各無機質板を7×20cmの試験体とし、それを用いること以外はJIS A 1408に準じて測定した。また、曲げ強度測定後の各試験体を120℃の乾燥機に投入し、平衡状態となった時の各試験体の体積、質量を測定して求めた。
寸法安定性は、各無機質板を7×20cmの試験体とし、20℃、湿度65%の恒温恒湿室で平衡状態とさせた後、該試験体の長さ(lとする)を測定し、その後、該試験体を水中に浸せきし、7日経過した後に、該試験体を水中から取り出し、布で表面に付着した水を拭き取った後、再度、該試験体の長さ(lとする)を測定し、(l−l)をlで除算した値に100を乗算することにより値を求め、比較例1の値を基準とし、得られた値が、比較例1の絶対値より大きい場合は”×”とし、比較例1の絶対値の半分以上から同じ場合は”○”とし、比較例1の絶対値の半分未満である場合は”◎”とした。
塗膜密着性は、塗装を施した試験体にカッターナイフで2mm間隔で25マスの切り込みを入れた後、その上からセロハンテープを貼り、その後、セロハンテープを剥がし、セロハンテープに付着した塗膜の量を確認して、4マス以上塗膜が剥がれた場合は”×”とし、2〜3マス塗膜が剥がれた場合は”△”とし、0〜1マス塗膜が剥がれた場合は”○”とした。
耐クラック性は、各無機質板を30cm角の試験体とし、該試験体の端部を水に4時間浸漬した後、二酸化炭素を充満させた密閉容器内に4時間置き、その後、16時間80℃で乾燥させることを1サイクルとし、10サイクル行った後の試験体の状況を確認して、試験体の端部(水に浸漬側)に4本以上クラックがみられた場合には”×”とし、2〜3本のクラックが見られた場合には”△”とし、0〜1本のクラックが見られた場合には”○”とした。
燃焼時収縮性は、各無機質板を7×20cmとし、該試験体を120℃の乾燥機で24時間乾燥させ、その後、デシケーター内で試験体が室温程度になるまで冷まし、該試験体の長さ(lとする)を測定し、その後、900℃の炉内に20分間投入し、再度、デシケーター内で試験体が室温程度になるまで冷まし、再度、該試験体の長さ(lとする)を測定し、(l−l)をlで除算した値に100を乗算することにより求め、得られた値が5より大きい場合は”×”とし、4〜5である場合は”△”とし、4未満である場合は”○”とした。
【0028】
ウォラストナイトを含有しない比較例1の無機質板は、曲げ強度が11.2N/mmと低く、かつ、寸法安定性、燃焼時収縮性に劣った。また、ウェットボリューム値(30分静置)が10mlであるウォラストナイトを含有する比較例2の無機質板も、曲げ強度が11.5N/mmと低く、寸法安定性、燃焼時収縮性に劣った。更に、ウェットボリューム値(30分静置)が30mlであるウォラストナイトを固形分対比で35質量%含有する比較例3の無機質板は、曲げ強度が7.5N/mmと非常に低く、寸法安定性に劣った。
一方、実施例1〜5の無機質板は、いずれも曲げ強度が12N/mmより大きいとともに、生産性、寸法安定性、塗膜密着性、耐クラック性、燃焼時収縮性に優れた。
【0029】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、耐クラック性、耐火性、寸法安定性、生産性に優れる無機質板、及び、無機質板の製造方法を提供することができる。