(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084404
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】燃料電池の電極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20170213BHJP
C01B 3/06 20060101ALI20170213BHJP
C01B 3/08 20060101ALI20170213BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20170213BHJP
H01M 8/14 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
H01M4/86 T
C01B3/06
C01B3/08 Z
H01M8/06 R
H01M8/14
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-190835(P2012-190835)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-49270(P2014-49270A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】512129217
【氏名又は名称】株式会社TI
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰男
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05008163(US,A)
【文献】
国際公開第2010/007949(WO,A1)
【文献】
特開2009−252638(JP,A)
【文献】
米国特許第04564567(US,A)
【文献】
特開2012−001407(JP,A)
【文献】
特開2003−200051(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/084790(WO,A1)
【文献】
特開2011−108573(JP,A)
【文献】
特開昭59−087767(JP,A)
【文献】
特開昭62−147660(JP,A)
【文献】
特開昭61−013567(JP,A)
【文献】
特開平01−204365(JP,A)
【文献】
特表2004−512651(JP,A)
【文献】
特開2008−004521(JP,A)
【文献】
特開平06−275302(JP,A)
【文献】
特開平03−116659(JP,A)
【文献】
特開平04−253164(JP,A)
【文献】
特開昭61−269856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86 − 4/98
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
H01M 8/04 − 8/06
C01B 3/00 − 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉反応セル内にNaOH又はKOHを反応剤として収納し、前記密閉反応セルを300〜600℃に加熱して溶融塩の液面から微細粒子を飛散せしめ、この微細粒子と反応セル内に供給された水蒸気とを、反応セル内に設置したステンレス板又は鉄板近傍で反応せしめ、それら板上に高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜を形成するようにした燃料電池の電極板の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属−遷移金属酸化膜はNa3Fe5O8、Na4Fe6O11、Na5FeO4の少なくとも一種であり、前記ステンレス板はSUS304である請求項1記載の燃料電池の電極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高次アルカリ金属−遷移金属酸化物
からなる電極
の製造方法及びこれを使用した燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
水から水素を発生する技術として、本件発明者は、ステンレスの反応セル内に反応剤として、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)を設置し、反応セルを500〜600℃に加熱して溶融塩とし、その液面からナノオーダーの微細粒子を飛散せしめ、ここに水蒸気を供給してステンレス成分雰囲気内で水を分解して水素を発生する技術を種々開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010−084790号
【特許文献2】特開2011−213562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本件発明者は、種々実験を重ねて行くに従ってステンレス成分と、水と、アルカリ金属水酸化物とで高次のアルカリ金属−鉄酸化膜が形成され、この酸化膜が特殊機能を有して種々の作用をすることができることを発見した。
【0005】
一方、現在の燃料電池の電極としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)を使用したものが多く、これら金属は、いずれもレアメタルのため、燃料電池が高価なものとなっており、前記酸化膜は、Pd、Ptと同等の作用をすることが判明したので、本件発明者は、燃料電池の電極として使用する構造について開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の燃料電池は、高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜をステンレス板又は鉄板上に形成したものを正極及び負極とし、この両極間に電解質を介在せしめるようにした。
【0007】
また、前記高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜は、Na
xFe
yO
w(x、y、w、は整数)か、又はK
xFe
yO
wであり、前記ステンレス板はSUS304(18%Cr−8%Ni−Fe残)であることが好ましい。
【0008】
更にまた、前記高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜は、Na
xFe
yCr
zO
w(x、y、z、wは整数)か、又はK
xFe
yCr
zO
wであることが好ましい。
【0009】
更にまた、前記高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜は、Na
xFe
yTi
zO
w(x、y、z、wは整数)か、又はK
xFe
yTi
zO
wであることが好ましい。
【0010】
更にまた、前記高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜は、密閉反応セル内にNaOH又はKOHを反応剤として収納し、前記密閉反応セルを300〜600℃に加熱して溶融塩の液面から微細粒子を飛散せしめ、この微細粒子と反応セル内に供給された水蒸気とを、反応セル内に設置したステンレス板又は鉄板近傍で反応せしめるようにすることが好ましい。
【0011】
更にまた、前記密閉反応セル内で反応時に発生した水素を負極側に供給することが好ましい。
【0012】
更にまた、前記負極の外側に水素供給室を、前記正極の外側に酸素供給室を形成し、前記両極間に水素発生室を設け、この水素発生室の下部に反応剤且つ電解質としてNaOH又はKOHを収納し、この反応剤をそれらの融点以上に加熱して溶融塩とし、その液面から微細粒子を水素発生室の上部に飛散せしめ、ここに水蒸気を供給して水素を発生し、この水素を前記水素供給室に供給するようにすることが好ましい。
【0013】
更にまた、前記反応剤且つ電解質は、一定の溶融液面を保持するように補給されるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
ステンレス板上に、簡単に、安価に高次アルカリ−遷移金属酸化膜(Na
3Fe
5O
9、Na
4Fe
6O
11、Na
5FeO
4、Na
xTi
yFe
zO
w、Na
xTi
yCr
zO
w等ができ、この酸化膜は、水素吸蔵能力が高く、しかも負極で水素を吸蔵する際に水素イオン(H
+)と電子(e
−)に分離し、この水素イオン(H
+)は電解質を通って正極で電子(e
−)と結合し、更に酸素と結合して水を排出する。したがって、安価な燃料電池を製造できる。
【0015】
前記酸化膜を形成する方法としては、密閉反応セル内にNaOH又はKOHを収納し、密閉セルを300〜600℃に加熱して溶融塩から微細粒子を飛散せしめるとともに水蒸気を密閉反応セル内に供給するものであり、これにより水素を発生しつつステンレス材又は鉄材上に酸化膜を容易に形成できる。この水素中には、反応後のNaOH、KOHを主体とする微細粒子が含まれているが、この水素を負極に供給しても電極の酸化膜と同成分であるため電極の劣化はない。
【0016】
更に、両電極間に反応セルとしての作用を果たす水素発生室を設け、この水素発生室内に、反応剤且つ電解質としてアルカリ金属水酸化物を収納し、加熱して溶融塩とし、こうすれば水素発生と電流発生とを同時に行うことができ自己完結型の燃料電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】水素発生を伴う酸化膜形成装置の概略構成図である。
【
図4】薄い電極板に酸化膜を形成した状態を示す電極板の側面図である。
【
図6】本発明の他の実施例を示す燃料電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1において、水素発生を伴う酸化膜形成装置M
1は、反応セル1を有し、この反応セル1には、反応剤2が収納され、前記反応セル1の外周には面状ヒータ3が設けられている。前記反応セル1の図上右端は開閉蓋4に形成され、この開閉蓋4には吊持棒5が水平に保持され、この吊持棒5に所定寸法のステンレス板又は鉄板6(電極原板)が多数個所定間隔で保持されている。また、前記反応セル1の上面左右には、水蒸気又は水を反応セル1内に供給するための水管7と発生した水素ガス(H
2)を排出するための水素管8が取り付けられている。前記反応剤2としては、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、これら水酸化物は、その融点(300〜350℃)以上に加熱されると溶融塩となり、その液面からはナノオーダーの微細粒子が飛散する。一方、前記水管7から供給される水蒸気(水の場合には反応セル内で水蒸気となる)が、前記微細粒子(親水性が大きい)に補捉され、この状態で前記電極原板6の表面に作用して高次アルカリ金属−遷移金属酸化膜9を形成する。
【0020】
今、電極原板としてステンレス材であるオーステナイト系のSUS304(18%Cr−8%Ni−残Fe)を使用した場合に、水を捕捉した微細粒子はSUS304表面で反応を起こし、先ずステンレスのFe成分と水が反応して
Fe + H
2O → FeO + 1/2H
2 …(1)
FeOが生じ、次いで、このFeOと微細粒子成分(NaOH)とが反応して、
FeO + NaOH → NaFeO
2+ 1/2H
2 …(2)
NaFeO
2が生じ、次にこのNaFeO
2が量の多いFeと水とに再び反応して、
3NaFeO
2 + 2Fe + 3H
2O
→ Na
3Fe
5O
9 + 3H
2 …(3)
高次のアルカリ金属−鉄(遷移金属の一種)酸化膜9(Na
xFe
yO
w;x、y、wは
プラスの整数)が生じる。この反応は、ステンレス板の代りに鉄板を使用した場合にも起こる。なお、オーステナイト系のステンレスを使用した場合には、Niが入っており、このNiは自ら酸化物を作らず、反応の触媒的作用を果たす。なお、ステンレス内のクロム(Cr)は、時として酸化物を作り、Na
XFe
YCr
ZO
Wの酸化膜を形成する場合がある。この場合Fe
YCr
Zが遷移金属を表している。なお、酸素分圧によっては、Na
3Fe
5O
8、Na
4Fe
6O
11、Na
5FeO
4等のアルカリ金属−鉄酸化膜が生じる場合がある。
【0021】
なお、
図2においては、電極原板6の表面がNaOHとH
2Oに反応して高次の酸化膜9を形成して、電極板Eとしているが、
図3、
図4に示すように、電極原板を予め0.5mm位に薄く形成して薄電極原板10とし、その内厚全てを新たな化合物の酸化膜に形成して電極板Eとすれば、機能の高い電極板とすることができる。この場合、その上面には、端子板12を設ける必要がある。
【0022】
次に本発明の電極板Eを用いた燃料電池M
2について説明する。
【0023】
図5において、前記電極板E(+)、E(−)を所定間隔を配して配設し、それら両電極間に電解質20を設けている。前記電解質としては、濃厚リン酸溶液を保持させた炭化ケイ素の微粉末を固めたものであってもよいし、NaOH又はKOHを500℃程度に加熱して溶融した後、常温にして固めたものであってもよい。
【0024】
前記電極E(−)の左側外方には水素室21が設けられ、この水素室21の入口21aには、
図1に示す酸化膜形成装置M
1からの水素(H
2)が水素タンク30を介して供給され、出口21bからは使用済の残ガスが排出される。また、電極E(+)の外側には、酸素室22が形成され、酸素(O
2)が入口22aから供給され、正極で発生する水素(H
2)と結合して出口22bから水として排出される。負極では、供給された水素(H
2)が水素イオン(H
+)と電子(e
−)に分離されて吸蔵され、電子(e
−)は負荷23を経て正極E(+)に達し、一方、負極E(−)の水素イオン(H
+)は、電解質20を経て正極(+)に達し、ここで電子(e
−)を結合して水素となる。
【0025】
また、前記酸化膜形成装置M
1から排出された水素(H
2)には、反応剤の微粒子が若干含まれるが、それをそのまま水素室21に送っても、電極の酸化膜の成分と同一であるので電極酸化膜を劣化させることがない。
【0026】
次に、本発明の他の実施例である燃料電池M
3について説明する。
【0027】
燃料電池M
3は、
図1の酸化膜形成装置M
1で形成した負極電極E(−)と、これから所定間隔離して設けた正極電極E(+)と、これら両電極間に形成された水素発生室40と、負極電極(−)の外方に形成した水素供給室41と、正極電極の外方に形成した酸素供給室42とを有している。前記水素発生室の下部には、反応剤兼電解質としての反応剤43が収納され、この反応剤としては、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物が使用される。この反応剤はその溶融点(300〜350℃以上)に加熱されて溶融塩となり、その液面から無数のナノオーダーの微粒子が飛散する。ここに水蒸気を供給して微粒子に補捉せしめ、この微粒子と、これに捕捉された水蒸気と電極面の高次酸化膜とが作用して水が分解され、水素が発生する。この水素は水素発生室上面に設けた水素管60を通って水素タンク50に貯留される。この水素タンク50からの水素は、水素入口41aを介して水素供給室41に供給され、ここで使用されなかった残ガスが残ガス出口41bから排出される。負極E(−)では、水素ガス(H
2)が水素イオン(H
+)と電子(e
−)に分離され、電子(e
−)は負荷51で仕事をし、正極E(+)で電解室43を通って正極E(+)に到達した水素イオン(H
+)と結合して水素となる。更に、この水素は酸素入口42aから流入した酸素と結合して水出口42bから水として排出される。なお、この水は高温なので全て水蒸気にしてから経路lを通って水蒸気管61を介して前売水素発生室40内に送られる。
【0028】
なお、前記反応剤43を電解質として維持するためには、好ましくは400〜600℃に加熱する必要があり、そのためには加熱装置52が水素発生室底部に設けられ、また、反応剤43の溶融塩(電解質)の量を所定量に維持するためにアルカリ金属水酸化物の補給筒53が設けられている。
【符号の説明】
【0029】
1…反応セル
2…反応剤
4…開閉蓋
5…吊持棒
6…電極原板
10…薄電極原板
20…電解室
30…水素タンク
40…水素発生室
43…反応剤