特許第6084407号(P6084407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084407
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   H01F37/00 K
   H01F37/00 A
   H01F37/00 E
   H01F37/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-194584(P2012-194584)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-53335(P2014-53335A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直之
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−205957(JP,A)
【文献】 実開昭60−124022(JP,U)
【文献】 特開2010−203998(JP,A)
【文献】 特開2010−045110(JP,A)
【文献】 特開昭60−134408(JP,A)
【文献】 実開平01−100421(JP,U)
【文献】 実開昭50−119914(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトルのコアの脚部に筒状のボビンが装着され、このボビンの外周にコイルが巻回されているリアクトルにおいて、
前記ボビンにおけるコイル巻回部には、コイルの軸方向に伸びるセンサ装着用の凹部が形成され、
前記凹部内に装着されたセンサは、ボビンの外周に巻回されたコイルの内周面とボビンの内側に挿入されたコアの外周面の少なくとも1つによって、凹部内に位置決めされ
前記ボビンにおけるコイル巻回部の端部には、巻回部の表面よりも突出した端面板が一体に形成され、
前記端面板には、その外面から前記凹部の一端の開口部に向かって、前記凹部の軸方向に対して傾斜した方向から貫通する挿入穴が形成され、
前記挿入穴はセンサを挿通できる大きさを有し、その縁の一部には前記凹部の軸方向に直角な断面と重なる係止部が形成され、
前記凹部内に装着されたセンサは、その端部が前記挿入穴の縁に設けられた係止部と係合することによって、凹部の軸方向に対する位置決めがなされていることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
リアクトルの中心部分にコアの脚部が配置され、その脚部に筒状のボビンが装着され、このボビンの外周にコイルが巻回されているリアクトルにおいて、
前記ボビンにおけるコイル巻回部の外周面には、コイルの軸方向に伸びるセンサ装着用の凹部が形成され、
前記凹部内に装着されたセンサは、ボビンの外周に巻回されたコイルの内周面によって、凹部内からボビンの外周方向に飛び出さないように押さえられ
前記ボビンにおけるコイル巻回部の端部には、巻回部の表面よりも突出した端面板が一体に形成され、
前記端面板には、その外面から前記凹部の一端の開口部に向かって、前記凹部の軸方向に対して傾斜した方向から貫通する挿入穴が形成され、
前記挿入穴はセンサを挿通できる大きさを有し、その縁の一部には前記凹部の軸方向に直角な断面と重なる係止部が形成され、
前記凹部内に装着されたセンサは、その端部が前記挿入穴の縁に設けられた係止部と係合することによって、凹部の軸方向に対する位置決めがなされていることを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
前記コアが、2つのE字型の分割コアを突き合わせることで、中心脚及び左右の脚部を構成したものであり、少なくともその中心脚に前記ボビンを介してコイルが巻回されていることを特徴とする請求項または請求項に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記中心脚の外周に装着するボビンが、2つのE字型の分割コアの中心脚に装着される2つの分割ボビンから構成され、2つのE字型の分割コアを突き合わせた状態において、2つの分割コアが突き合わされて中心脚の外周に筒状のボビンが形成されていることを特徴とする請求項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記請求項から請求項のいずれか1項に記載された2個のリアクトルを、各リアクトルの中心脚が同一方向となるように1つのケース内に収納し、このケースと2個のリアクトルの空隙部に樹脂を充填すると共に、前記2個のリアクトルの対向部分から、各リアクトルに装着したセンサのリードを引き出することにより、前記2個のリアクトルの対向面を中心として各リアクトルのセンサを対称形に配置したことを特徴とするリアクトル。
【請求項6】
前記センサが温度センサであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性コアとその磁性コアにコイルを巻回して成るリアクトルに関するもので、特に、サーミスタなどの温度センサをコア及びコイルに近接して配置する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
磁性コアの左右の脚部にコイルを巻回したリアクトルは、コアコイルとも呼ばれ、コアを有しない空芯の(空心コイル)に比較して高いインダクタンスを有する。そのため、フィルタや昇圧チョーク、あるいは力率改善などの用途に、従来から広く使用されている。
【0003】
車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルとして、コアの周囲に配した樹脂製のボビンに巻線を巻回してコイルを形成したリアクトル部品を、コイル及びコアから発せられる熱を放熱するために金属製のケースに収納した後、ケース内に充填材を流し込んで固めたものが多く用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この種のリアクトルでは、高電流を流し続けるとコイルが過熱して構成部品の耐熱温度を超えてしまうため、サーミスタなどの温度センサにより内部温度を測定して、コイル及びコアが一定温度以上に発熱しないように通電制御がなされる。
【0005】
リアクトルに温度センサを配置する場合、正確な温度検出を行うには、発熱体となるコイルやコアに近接して温度センサを配置することが必要である。そのため、コアの左右の脚部にコイルを巻回したリアクトルにおいては、従来から特許文献1や特許文献2のように、左右のコイルの間に温度センサを配置する構成が採用されていた。この従来技術によれば、リアクトルの中心部分に温度センサを配置できることから、この種の構成のリアクトルにおいては、温度の検出精度が優れる利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−98209号公報
【特許文献2】特開2010−203998号公報
【特許文献3】特開2010−186766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リアクトルには、前記特許文献2や特許文献3に記載されたように、コイル全体が矩形の枠状をしており、その左右の脚部にそれぞれコイルを巻回したもの以外に、E型の分割コアを組み合わせて3本の脚部を形成したものも知られている。この3本の脚部を有するリアクトルでは、中心脚のみ、あるいは3本の脚部のすべてにコイルが巻回される。
【0008】
このような3本の脚部を有するリアクトルでは、その中央部分に中心脚とコイルが存在することから、上記のような手段では、リアクトルの中央部分に温度センサを配置することが難しい。そのため、コアの中心脚やそれに巻回したコイルを避けて温度センサを配置しなければならず、センサ位置が偏ったり、発熱部分から離れた位置になってしまい温度検出を精度良く行えない問題があった。
【0009】
この種の問題点は、温度センサに限らずリアクトルの他の状態を検出するセンサにおいても同様であって、従来技術では、各種のセンサをコイルやコアの近傍に配置することは困難であった。
【0010】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。すなわち、本発明は、中心部分にコアやコイルが配置されたリアクトルにおいて、その部分の温度その他の検出を精度良く行えるセンサの配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明のリアクトルは、次のような特徴を有する。
(1)リアクトルのコアの脚部に筒状のボビンが装着され、このボビンの外周にコイルが巻回されている。
(2)前記ボビンにおけるコイル巻回部には、コイルの軸方向に伸びるセンサ装着用の凹部が形成されている。
(3)前記凹部内に装着されたセンサは、ボビンの外周に巻回されたコイルの内周面とボビンの内側に挿入されたコアの外周面の少なくとも1つによって、凹部内に位置決めされている。
(4)前記ボビンにおけるコイル巻回部の端部には、巻回部の表面よりも突出した端面板が一体に形成されている。
(5)前記端面板には、その外面から前記凹部の一端の開口部に向かって、前記凹部の軸方向に対して傾斜した方向から貫通する挿入穴が形成されている。
(6)前記挿入穴はセンサを挿通できる大きさを有し、その縁の一部には前記凹部の軸方向に直角な断面と重なる係止部が形成されている。
(7)前記凹部内に装着されたセンサは、その端部が前記挿入穴の縁に設けられた係止部と係合することによって、凹部の軸方向に対する位置決めがなされている。
【0012】
第2の発明のリアクトルは、次のような特徴を有する。
(1)リアクトルの中心部分にコアの脚部が配置され、その脚部に筒状のボビンが装着され、このボビンの外周にコイルが巻回されている。
(2)前記ボビンにおけるコイル巻回部の外周面には、コイルの軸方向に伸びるセンサ装着用の凹部が形成されている。
(3)前記凹部内に装着されたセンサは、ボビンの外周に巻回されたコイルの内周面によって、凹部内からボビンの外周方向に飛び出さないように押さえられている。
(4)前記ボビンにおけるコイル巻回部の端部には、巻回部の表面よりも突出した端面板が一体に形成されている。
(5)前記端面板には、その外面から前記凹部の一端の開口部に向かって、前記凹部の軸方向に対して傾斜した方向から貫通する挿入穴が形成されている。
(6)前記挿入穴はセンサを挿通できる大きさを有し、その縁の一部には前記凹部の軸方向に直角な断面と重なる係止部が形成されている。
(7)前記凹部内に装着されたセンサは、その端部が前記挿入穴の縁に設けられた係止部と係合することによって、凹部の軸方向に対する位置決めがなされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、コアの外周に装着するコイル巻回用のボビンの外周に凹部を設け、この凹部内にセンサを装着することで、コアとコイルとの間にセンサを装着することができる。その結果、リアクトルの温度を精度良く検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のリアクトルの斜視図。
図2】第1実施形態のリアクトルおけるコアとボビン、及び温度センサ部分の一部を分解して示す斜視図。
図3】第1実施形態のリアクトルおけるコアとボビン、及び温度センサ部分をすべて分解して示す斜視図。
図4】第1実施形態における分割ボビンの1つを示す斜視図。
図5】第1実施形態の分割ボビンに対して温度センサを装着した状態を示す斜視図。
図6】第1実施の形態において、温度センサをリアクトルに装着する工程を順次示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1から図4に示すとおり、本実施形態のリアクトルは、2つのE字型の分割コア10a,10bを組み合わせてなるコアと、このコアの中心脚11a,11bに装着された2つの分割ボビン20a,20bと、この分割ボビン20a,20bの外周に装着されたコイル30とから構成されている。
【0017】
本実施形態において、2つのリアクトルR1,R2が、その脚部の方向が同じになるようにして、ケース40内に収納されている。ケース40と2つのリアクトルR1,R2の空隙部には、絶縁性の樹脂50が充填されている。
【0018】
2つのリアクトルR1,R2におけるボビン20a,20bとコイル30の間に、それぞれ温度センサ60が配置されている。温度センサ60は、全体形状が円柱の棒状をしており、その一端にはリード61が接続されている。このリード61の端部には外部接続用のコネクタ62が設けられている。
【0019】
ケース40の外部には、樹脂製の保持部材31a,31bが固定され、この保持部材31a,31bにモールド成型された通電バー32a,32bによって、2つのリアクトルの巻線間が電気的に接続されている。この通電バー32a,32bは、保持部材31a,31bにモールド成型された端子33a,33bに接続され、この端子33a,33bがリアクトルR1,R2外部に設けられた電源その他の回路に接続される。
【0020】
図2及び図3の分解斜視図に示すように、本実施形態において、各リアクトルR1,R2のコアは、E字型をした2つの分割コア10a,10bをその3本の脚部同士を突き合わせるように対向して組み合わせたものである。この場合、2つの10a,10bの対向面には、ギャップ形成用のシート状あるいは板状のスペーサ(図示せず)が挟持されている。
【0021】
中心脚11a,11bの外周に装着された各分割ボビン20a,20bは、筒形をしたコイル巻回部21a,21bと、その一方の端部に設けられた端面板22a,22bとを備えている。コイル巻回部21a,21bの内部には、分割コア10a,10bの中心脚11a,11bが挿入されるもので、そのためコイル巻回部21a,21bの内周は中心脚11a,11bの形状に沿った四角形になっている。
【0022】
各分割ボビン20a,20bにおける対向するボビンとの接触部分には、分割コア20a,20bを組み合わせた場合に、両者が外れないように固定するための係止部材23,24が設けられている。本実施形態では、一方の係止部材23は、コイル巻回部21a,21bの縁から相手側の分割コアに向かって突出した舌片であり、他方の係止部材24は、コイル巻回部21a,21bの表面に形成され、前記舌片状係止部材23が嵌合する凹部である。
【0023】
コイル巻回部21a,21bの上部表面には、コイルの軸方向に沿って伸びる溝状の凹部25a,25bが設けられている。この溝状の凹部25a,25bは、本実施形態では丸い棒状をしている温度センサ60を装着するための部分で、温度センサ60の外形に対応した寸法のU字型断面を有する。凹部25a,25bの上方の開口部の幅は、温度センサ60の幅よりも大きく、温度センサ60を上方から凹部25a,25b内に嵌め込むことができる寸法である。
【0024】
凹部25a,25bにおける対向する分割ボビン側の端部はU字形断面形状のまま露出しており、対向する分割ボビン21a,21bの凹部25aと25bが連続して1本の溝状の凹部を形成する。一方、凹部25a,25bにおける端面板22a,22b側の端部には、端面板22a,22bの外面から凹部25a,25bに向かって貫通した挿入穴26a,26bが設けられている。
【0025】
この挿入穴26a,26bは、凹部25a,25bの軸方向に対して傾斜した方向(本実施形態では、リアクトルの下方から斜め上方)に向けて設けられている。この挿入穴26a,26bは温度センサ60を挿通できる大きさを有し、その縁の一部には凹部25a,25bのU字形断面と重なる係止部27a,27bが形成されている(図6参照)。この係止部27a,27bは、凹部25a,25b内に装着された温度センサ60の端部と係合するものである。
【0026】
対向して設けられた2つの端面板22a,22bの上部には、リアクトルの外側に向かって水平方向に張り出したブラケット28a,28bが一体に形成されている。ケースの外側に位置するブラケット28aの両端には、ねじ挿入穴29が設けられている。このねじ挿入穴29内には止めねじ41が挿入され、止めねじ41の先端をケース40のコーナー部分に締め付けることによって、2つのリアクトルR1,R2のケース40の外側に位置する分割ボビン20aは、ケース40に固定されている。
【0027】
2つのリアクトルR1,R2のケース40の内側に位置する分割ボビン20bは、端面板22bに形成されたブラケット28bがケース40の上縁にまで伸びている。このブラケット28bの延長部分の上部には、ケース40の縁に沿って伸びる細長い板状の止め金具42が重ね合わされており、この止め金具42を止めねじ41によってケース40に締め付けることにより、分割ボビン20bはケース40に固定されている。
【0028】
2つのリアクトルR1,R2のうち、一方のリアクトルR1におけるケース内側の分割ボビン20bには、温度センサ60のコネクタ62を固定するための係止部63が設けられている。この係止部63は、ブラケット28bと一体に形成されており、コネクタ62の底部に設けられたフック部64に係合することで、コネクタ62を分割ボビン20bに固定する。
【0029】
[1−2.作用]
このような構成を有する本実施形態のリアクトルを組み立てるには、まず、図5に示すようにケース40の内側に位置する一方の分割ボビン20bの凹部25b内に温度センサ60を装着する。この装着工程を、図6(a)〜(e)に示す。
【0030】
なお、図6(a)〜(d)では、反対側の分割ボビン20aも図示しているが、2つの分割ボビン20a,20bを一体化するのは、コイル30をボビンの外側に装着した後である。これらの図では、コイル30装着後の状態を示す図6(e)との比較のため、反対側の分割ボビン20aを図示している。
【0031】
この凹部25b内に温度センサ60を装着するには、図6(a)に示すように、凹部25bの軸方向に対して傾斜した方向に設けられている挿入穴26bから、温度センサ60の先端を凹部25bに向かって挿入する。次に、図6(b)(c)に示すように、端面板22bの内側まで差し込んだ温度センサ60の先端を倒して、温度センサ60を凹部25b内に嵌め込む。
【0032】
このようにすると、図6(d)に示すように、温度センサ60は凹部25b内にセットされると同時に、温度センサ60のリード61側の端部が、挿入穴26bの縁に突出している係止部27bと係合する。その結果、温度センサ60は、挿入穴26bから抜け出ることなく、凹部25b内での軸方向の位置決めがなされる。
【0033】
一方の分割ボビン20bに温度センサ60をセットした後は、その分割ボビン20bのコイル巻回部21bの外周にコイル30をはめ込み、反対側から他方の分割ボビン20aをコイル30の内側に挿入して、2つの分割ボビン20a,20bの先端を突き合わせ、係止部23,24を嵌め合わせることで、分割ボビン20a,20bを一体化する。
【0034】
反対側から他方の分割ボビン20aをコイル30の内側に挿入する場合、既に一方の分割ボビン20bの凹部25bにセットされている温度センサ60の先端を、反対側の分割ボビン20aの凹部25aの端部に挿入する。これにより、温度センサ60が、一方の分割ボビン20bのコイル巻回部21bよりも長いものであっても、組み合わされた2つの分割ボビン20a,20bの凹部25a,25b内に収納することができる。
【0035】
このようにして、分割ボビン20a,20bにコイル30をセットすると、図6(e)に示すように、凹部25a,25b内にセットされた温度センサ60は、その上方からコイル30の内周面で押さえられることになり、凹部25a,25bの上面開口部から浮き上がることがない。
【0036】
その後、分割ボビン20a,20bの両側から、コイル巻回部21a,21bの内側に分割コア10a,10bの中心脚11a,11bを挿入し、その先端同士をスペーサを介して突き合わせることで、コアの外周にコイルを巻回したリアクトルを構成する。
【0037】
同様にして2つ目のリアクトルを組み立てた後は、2つのリアクトルR1,R2をケース40内に収納し、止めねじ41及び止め金具42を利用して、分割ボビンのブラケット28a,28bをケース40に固定する。その後、リアクトルR1,R2とケース40の間隙に樹脂50を充填し、さらに通電バー32a,32bをコイル30に接続することより、リアクトルを完成する。
【0038】
[1−3.効果]
本実施形態のリアクトルは、コアの外周に装着するコイル巻回用の分割ボビン20a,20bの外周に凹部25a,25bを設け、この凹部25a,25b内に温度センサ60を装着することで、コアとコイルとの間に温度センサ60を装着することができる。その結果、リアクトルの温度を精度良く検出することが可能になる。
【0039】
特に、コアの外周に装着するコイル巻回用の分割ボビン20a,20bの外周に凹部を設け、この凹部内に温度センサ60を装着することで、中心脚にコイルを巻回したリアクトルにおいても、その中心脚11a,11bとコイル30との間に温度センサ60を装着することができる。その結果、リアクトル中央部の温度を精度良く検出することが可能になる。
【0040】
また、温度センサ60の挿入穴26a,26bを凹部25a,25bの軸方向に対して傾斜して設けたので、装着時には挿入穴26a,26bを通して温度センサ60を凹部25a,25b内に斜めに差し込むことができる。そして、凹部25a,25b内に斜めに差し込んだ温度センサ60を凹部25a,25b内にその軸方向と平行にセットした後は、挿入穴26a,26bの縁に形成した係止部27a,27bによって温度センサ60の引き抜きが防止されるので、凹部25a,25bの軸方向に対する温度センサ60の位置決めが確実になされる。
【0041】
その結果、凹部25a,25b内に装着した温度センサ60は、ボビン外周のコイル30によって押さえられて凹部25a,25bからの飛び出しのおそれもなく、また、凹部25a,25bの軸方向に対しては、係止部27a,27bによって位置決めされるので、コイル30の外周方向及び軸方向にいずれに対しても温度センサ60を確実に保持できる。
【0042】
更に、ボビンのコイル巻回部21a,21bの内側には、コアの中心脚11a,11bが挿入されているので、凹部25a,25b内にセットした温度センサ60はコアによって支持されることになり、凹部25a,25bの底部側の位置決めも確実である。
【0043】
[2.他の実施形態]
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態も含有する。
【0044】
(1)本明細書において、上下左右とは、各部材相互の位置関係を分かり易くするために便宜的に付けた方向であって、各部材の配置方向を限定するものではない。実際のリアクトルの使用時には、種々の方向に配置されることは当然である。
【0045】
(2)磁性コアを構成する材料としては、フェライトとフェライト、フェライトとセンダストやFeSi系のダストコア、ダストコアとダストコアの組み合わせを使用することができ、これらの材料とギャップ寸法を調整することで、種々のリアクタ特性を有するリアクトルを得ることができる。
【0046】
(3)前記実施形態は、2つのE字型の分割コアを使用したが、3本の脚部が長い1つのE字型コアと1つのI字型ヨークとを組み合わせても、2本のI字形ヨークと3つのI字形脚部とを組み合わせてコアを構成することも可能である。
【0047】
(4)本発明は、3本の脚部を有するリアクトルに限定されるものではなく、従来技術に記載したような2本の脚部を有するリアクトルにも適用可能である。その場合、2本の脚部に巻回されたコイルのボビンにそれぞれ凹部を設け、各凹部内に温度センサを装着することで、各コイルの温度検出が可能となる。
【0048】
(5)図示の実施形態は、ボビンの端面板に係止部を設けて凹部内における温度センサの軸方向の位置決めを行ったが、この軸方向の位置決め手段はこのような構成に限定されない。例えば、ボビンと温度センサを接着剤や粘着テープなどで固定しても良いし、凹部の内面に温度センサと係合する突起を設けて位置決めを行うこともできる。
【0049】
(6)図示の実施形態では、ボビンの端面板に設けた挿入穴から凹部内に温度センサを挿入したが、挿入穴の代わりに、ボビンの端面板に上端が開口した溝部を形成し、その溝にリードを通すようにして、温度センサを上方から凹部に嵌め込むこともできる。挿入穴を設ける場合も、分割コアの一方のみに設けて、他方の分割コアの凹部の端部は、端面板の表面により塞いでおいても良い。
【0050】
(7)分割ボビンの両方に温度センサ装着用の凹部を設ける必要はなく、温度センサの寸法によっては一方の分割コアのみに設けても良い。また、本発明は、分割ボビンではなく、1つのボビンをコアの外周に装着したリアクトルにも適用できる。
【0051】
(8)図示の実施形態は、1つのケース内に2つのリアクトルを装着したものであるが、ケース内に装着するリアクトル数は1つでも良く、また3個以上の複数でも良い。ただし、リアクトルを2個1組として使用する場合、図示の実施形態のように、2つのリアクトルの対向面に各リアクトルの温度センサのリードを引き出すことが望ましい。もちろん、対向面ではなく、2つのリアクトルの外側にリードを引き出す構成も、本発明に含まれる。
【0052】
(9)図示の実施例では、脚部同士の対向面にギャップ形成用のスペーサを挟持させたが、このスペーサを設けない場合もある。また、各脚部の長さに差を設けることで、脚部の対向面の間にエアギャップを形成したり、スペーサの代わりに接着剤を介在させることも可能である。
【0053】
(10)温度センサ以外に、振動センサや磁気センサなど、他の種類のセンサをリアクトル内に配置する場合においても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
R1,R2…リアクトル
10a,10b…分割コア
11a,11b…中心脚
20a,20b…分割ボビン
21a,21b…コイル巻回部
22a,22b…端面板
23,24…係止部材
25a,25b…温度センサ装着用の凹部
26a,26b…挿入穴
27a,27b…係止部
28a,28b…ブラケット
29…ねじ挿入穴
30…コイル
31a,31b…保持部材
32a,32b…通電バー
33a,33b…端子
40…ケース
41…止めねじ
50…樹脂
60…温度センサ
61…リード
62…コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6