特許第6084413号(P6084413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084413
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電磁弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170213BHJP
   F16K 31/08 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F16K31/06 360
   F16K31/08
   F16K31/06 305S
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-207329(P2012-207329)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-62583(P2014-62583A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 新治
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3005308(JP,U)
【文献】 実開昭62−4675(JP,U)
【文献】 実開平1−133582(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0099830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F16K 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが周囲に巻回された固定鉄心、
前記固定鉄心と同軸上に配設され、前記コイルに対する通電状態に応じて前記固定鉄心から離脱する離脱位置と前記固定鉄心に吸着する吸着位置との間で変位可能であり、前記離脱位置及び前記吸着位置のうち何れか一方を原位置とする可動鉄心、
前記固定鉄心に対して前記可動鉄心を吸着又は反発させた状態を保持するための永久磁石、
前記可動鉄心の変位に応じて流路の切替を行う弁体、
前記可動鉄心の変位を干渉しない第1位置と、前記可動鉄心を前記原位置に復帰させる第2位置との間で変位可能な復帰部材、
前記復帰部材が配置される収納部を有する複数の電磁弁、
電断となったときにエアの供給の有無を切り替えることで前記複数の電磁弁における前記復帰部材を前記第1位置から前記第2位置に変位させる1つのエア供給装置、
前記1つのエア供給装置から供給されるエアを、前記複数の電磁弁における前記収納部それぞれに分岐して供給する出力流路が形成されたマニホールドベースと
を備えた電磁弁装置。
【請求項2】
前記復帰部材は、前記可動鉄心の軸に対して直交する方向に沿って前記第1位置と前記第2位置との間を変位し、
前記復帰部材の前記可動鉄心に対向する一端には、前記可動鉄心に向かってテーパが形成され、
前記可動鉄心には、前記復帰部材が前記第1位置から前記第2位置に変位する場合に、前記復帰部材に形成された前記テーパが摺接する摺接部が形成されている請求項1に記載の電磁弁装置。
【請求項3】
前記復帰部材を前記第2位置から前記第1位置に付勢する付勢部材を有する請求項1又は請求項2に記載の電磁弁装置。
【請求項4】
操作者により操作可能な操作部、
前記復帰部材とは別体であり、前記可動鉄心の変位を干渉しない第3位置と、前記可動鉄心を前記離脱位置又は前記吸着位置に変位させる第4位置との間で変位可能な第2復帰部材、を有し、
前記摺接部は、前記可動鉄心の全周に対して形成され、
前記第2復帰部材は、前記可動鉄心の軸に対して直交する方向に沿って前記第3位置と前記第4位置との間を変位し、
前記第2復帰部材の前記可動鉄心に対向する一端には、前記可動鉄心に向かって第2テーパが形成されている請求項に記載の電磁弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに対する通電により流路の切替を行う弁体を有する電磁弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁弁は、弁座に対して弁体を接離させることにより流路を切り換える主弁部と、この主弁部の弁体を移動させるためのソレノイド部とから構成されている。ソレノイド部には、ケースに固定された固定鉄心と、固定鉄心に対して移動可能な可動鉄心と、固定鉄心の周囲に巻かれたコイルとが備えられている。そして、コイルに通電することで可動鉄心を移動させ、この可動鉄心に弁体を連動させることで弁体を原位置から移動させるようになっている。また、コイルに対する通電を維持することで弁体を原位置から移動させた位置に保持させることができる。
【0003】
このような電磁弁の中でも、例えば、特許文献1に示すように、固定鉄心の周縁において、固定鉄心を挟むように永久磁石が配設された自己保持型電磁弁が開示されている。このような電磁弁では、コイルへの通電がなくなるとコイルの励磁作用による吸引力は消滅するものの、永久磁石から発生する磁束の一部が固定鉄心を通過することで、弁体が通電により移動した位置に保持される。このため、弁体の位置を切り替えるときに通電するが、弁体の位置を保持する場合には通電しないので、弁体の位置を保持するときにも継続してコイルに通電を行う電磁弁よりも、消費電力を小さく、放熱も少なくすることができる。また、このような電磁弁では、コイルに対して逆方向に通電することで可動鉄心を移動させ、この可動鉄心に弁体を連動させることで弁体を原位置に移動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−133071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような自己保持型電磁弁において、永久磁石から発生する磁束によって、弁体が始動した位置に保持されるため、消費電力が小さく、放熱も少なくすることができる反面、弁体が原位置に配置されていない場合に、電断となってしまうと、弁体を原位置に復帰させることができず、弁体が保持されてしまうことがあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、消費電力を小さく、放熱を少なくすることができるとともに、電断となったときであっても弁体の配置を原位置に復帰させることができる電磁弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
記問題点を解決するために、請求項に記載の発明は、コイルが周囲に巻回された固定鉄心、前記固定鉄心と同軸上に配設され、前記コイルに対する通電状態に応じて前記固定鉄心から離脱する離脱位置と前記固定鉄心に吸着する吸着位置との間で変位可能であり、前記離脱位置及び前記吸着位置のうち何れか一方を原位置とする可動鉄心、前記固定鉄心に対して前記可動鉄心を吸着又は反発させた状態を保持するための永久磁石、前記可動鉄心の変位に応じて流路の切替を行う弁体、前記可動鉄心の変位を干渉しない第1位置と、前記可動鉄心を前記原位置に復帰させる第2位置との間で変位可能な復帰部材、前記復帰部材が配置される収納部を有する複数の電磁弁、電断となったときにエアの供給の有無を切り替えることで前記複数の電磁弁における前記復帰部材を前記第1位置から前記第2位置に変位させる1つのエア供給装置、前記1つのエア供給装置から供給されるエアを、前記複数の電磁弁における前記収納部それぞれに分岐して供給する出力流路が形成されたマニホールドベースとを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の電磁弁装置において、前記復帰部材は、前記可動鉄心の軸に対して直交する方向に沿って前記第1位置と前記第2位置との間を変位し、前記復帰部材の前記可動鉄心に対向する一端には、前記可動鉄心に向かってテーパが形成され、前記可動鉄心には、前記復帰部材が前記第1位置から前記第2位置に変位する場合に、前記復帰部材に形成された前記テーパが摺接する摺接部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電磁弁装置において、前記復帰部材を前記第2位置から前記第1位置に付勢する付勢部材を有することを要旨とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の電磁弁装置において、操作者により操作可能な操作部、前記復帰部材とは別体であり、前記可動鉄心の変位を干渉しない第3位置と、前記可動鉄心を前記離脱位置又は前記吸着位置に変位させる第4位置との間で変位可能な第2復帰部材、を有し、前記摺接部は、前記可動鉄心の全周に対して形成され、前記第2復帰部材は、前記可動鉄心の軸に対して直交する方向に沿って前記第3位置と前記第4位置との間を変位し、前記第2復帰部材の前記可動鉄心に対向する一端には、前記可動鉄心に向かって第2テーパが形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消費電力を小さく、放熱を少なくすることができるとともに、電断となったときであっても弁体の配置を原位置に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の電磁弁マニホールドを示す上面図。
図2】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図3】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図4】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図5】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図6】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図7】実施形態の電磁弁マニホールドを示す断面図。
図8】(a)〜(c)は、電磁弁マニホールドを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態における電磁弁マニホールド10は、複数の電磁弁11,12A〜12Dと、複数の電磁弁11,12A〜12Dに対して流体としてのエア(空気)の給排を行うためのマニホールドベース13とから構成されている。複数の電磁弁11,12A〜12Dは、それぞれマニホールドベース13に連結されることによって並設されている。以下、図1の左右方向を電磁弁マニホールド10の並設方向LRとする。
【0015】
複数の電磁弁11,12A〜12Dとしては、1つの直動式3ポート電磁弁11と、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dとから構成されている。直動式3ポート電磁弁11は、通電時と非通電時とで弁体の位置を切り替える電磁弁である。自己保持型電磁弁12A〜12Dは、通電時に弁体の位置を切り替え、非通電時では弁体の位置を保持する電磁弁である。1つの直動式3ポート電磁弁11は、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dの並設方向LRの一端に配設されている。
【0016】
また、本実施形態において、マニホールドベース13には、各流路14〜19が別々の流路として形成されている。具体的に、マニホールドベース13には、並設方向LRに貫通するとともに、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに分岐される集中給気流路14が形成されている。この集中給気流路14における一方の給気口14aには図示しない正圧供給源が接続され、集中給気流路14を介して複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに対して正圧エアが集中的に供給される。なお、この集中給気流路14における他方の給気口14bには、図示しない封止部材が配設され、集中給気流路14が封止される。
【0017】
また、マニホールドベース13には、複数の自己保持型電磁弁12A〜12D毎に連通する出力流路15A〜15Dが形成されている。この出力流路15A〜15Dの開口15Aa〜15Daには、図示しないチューブ配管を介してエアシリンダ等の空気圧機器がそれぞれ接続され、出力流路15A〜15Dを介して複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dから空気圧機器に正圧エアが供給される。
【0018】
そして、マニホールドベース13には、並設方向LRに貫通するとともに、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに分岐される集中排気流路16が形成されている。この集中排気流路16は、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれからのエアを集中的に外部に排気するための流路である。なお、この集中排気流路16における両方の排気口16a、16bには、封止部材が配設されておらず、集中排気流路16は、封止されていない。
【0019】
その一方で、マニホールドベース13には、直動式3ポート電磁弁11に連通する給気流路17が形成されている。この給気流路17の給気口17aにも図示しない正圧供給源が接続され、給気流路17を介して直動式3ポート電磁弁11に対して正圧エアが供給される。
【0020】
また、マニホールドベース13には、並設方向LRに貫通するとともに、直動式3ポート電磁弁11から、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに分岐される出力流路18が形成されている。この出力流路18は、1つの直動式3ポート電磁弁11から複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに対して正圧エアを集中的に供給するための流路である。また、この出力流路18の両端の開口18a,18b、及び背面の開口18cにも、図示しない封止部材が配設され、出力流路18が封止される。
【0021】
そして、マニホールドベース13には、1つの直動式3ポート電磁弁11に対して連通する排気流路19が形成されている。この排気流路19は、1つの直動式3ポート電磁弁11からのエアを外部に排気する流路である。なお、この排気流路19における排気口19aには、封止部材が配設されておらず、排気流路19は封止されていない。
【0022】
まず、直動式3ポート電磁弁11について図2図4にしたがって説明する。
図2図4に示すように、直動式3ポート電磁弁11は、エアの流路を切り換えるための弁体26を有する主弁部20と、弁体26を駆動させるためのソレノイド部40とから構成されている。
【0023】
主弁部20は、非磁性材製(合成樹脂材料製)である長箱状のボディ21を備えるとともに、ボディ21には、その長手方向の他端から一端に向かって挿通孔21aが形成されている。また、ボディ21の一側面には、ボディ21における長手方向の他端から一端に向かって、供給ポート22、出力ポート23、及び排出ポート24がこの順序で形成されるとともに、それらの一端が挿通孔21aに向けて開口されている。
【0024】
供給ポート22の他端には、マニホールドベース13に形成された給気流路17が接続され、図示しない正圧供給源から正圧空気が供給される。出力ポート23の他端には、マニホールドベース13に形成された出力流路18が接続される。出力ポート23は、自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに対して集中的に正圧エアを供給する場合があり、出力ポート23には、自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれからのエアが供給される場合がある。また、排出ポート24の他端には、マニホールドベース13に形成された排気流路19が接続され、排気流路19を介して排気が外部に排出される。
【0025】
出力ポート23に連通する空間に弁室25が区画形成されている。弁室25内にはゴム製の弁体26が収容されるとともに、弁体26は、弁室25内の供給弁座27及び排出弁座28のそれぞれに対して接離可能になっている。弁室25において、弁体26の他端面側には、供給弁座27が設けられるとともに、弁体26の一端面側には、供給弁座27に対向するように排出弁座28が設けられている。弁体26は、挿通孔21aに挿入された円筒状をなす弁ガイド29の内周面に嵌着され、弁ガイド29と一体的に設けられている。また、弁体26の一端面と、この一端面に対向する弁室25の内面との間には、弁復帰ばね30が配設されており、弁体26は、弁復帰ばね30のばね力によって排出弁座28から離間する方向へ付勢されている。
【0026】
そして、図3に示すように、弁体26が弁復帰ばね30のばね力によって排出弁座28から離間する方向へ移動すると、弁体26は供給弁座27に着座して、出力ポート23と排出ポート24とが弁室25を介して連通する。そして、自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれから出力ポート23に排出された正圧エアが排出ポート24から排出されるようになっている。
【0027】
その一方で、図4に示すように、弁体26が弁復帰ばね30のばね力に抗して供給弁座27から離間する方向へ移動すると、弁体26は排出弁座28に着座して、供給ポート22と出力ポート23とが弁室25を介して連通し、出力ポート23から自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに正圧エアが供給されるようになっている。
【0028】
次に、図2図4に示すように、ソレノイド部40は、磁性材料で形成された円筒状の磁気カバー41を備えるとともに、磁気カバー41の一端は、主弁部20のボディ21の他端と接合されている。磁気カバー41の内側には、コイル42aが複数巻回された円筒状のボビン42が配設されている。
【0029】
磁気カバー41の内部であって、ボビン42よりもボディ21側には、ガイドリング43が設けられるとともに、磁気カバー41の他端内面と主弁部20のボディ21側の他端面との間にボビン42及びガイドリング43が挟持されている。ガイドリング43及びボビン42内には、略円柱状をなすとともに磁性体の可動鉄心44が挿入されている。可動鉄心44の一端側は、挿通孔21aの他端側に入り込むように延在されるとともに、可動鉄心44の一端面は弁ガイド29の他端面に当接している。また、可動鉄心44の一端には、外方に突出する鍔部44aが形成されるとともに、ガイドリング43と鍔部44aとの間に鉄心復帰ばね45が介在されている。可動鉄心44は、鉄心復帰ばね45のばね力により弁ガイド29を押圧する方向へ付勢されている。
【0030】
また、ボビン42内には略円柱状をなすとともに磁性体の固定鉄心46が挿入されている。つまり、固定鉄心46は、ボビン42を介してコイル42aが周囲に巻回されている。固定鉄心46の一端面は磁極面となっており、この磁極面が可動鉄心44の他端面と対向するように配設されている。よって、可動鉄心44と固定鉄心46とは同軸上に配設されている。
【0031】
そして、図3に示すように、コイル42aに通電されてコイル42aが励磁されると、コイル42aの周りに固定鉄心46、ガイドリング43及び磁気カバー41を通過する磁気回路が形成される。これにより、コイル42aの励磁作用が鉄心復帰ばね45のばね力に抗して、可動鉄心44が固定鉄心46側に吸引されて移動し、可動鉄心44が固定鉄心46に当接した状態になる。これによって、弁体26が供給弁座27に着座して、出力ポート23と排出ポート24とが弁室25を介して連通する。
【0032】
その一方で、図4に示すように、コイル42aが通電されておらず、コイル42aが励磁されないときには、磁気回路が形成されず、鉄心復帰ばね45のばね力により、可動鉄心44がボディ21側に移動し、可動鉄心44が固定鉄心46に当接しない状態になる。これによって、弁体26が排出弁座28に着座して、供給ポート22と出力ポート23とが弁室25を介して連通する。
【0033】
このように、本実施形態における直動式3ポート電磁弁11は、通電時では、供給ポート22と出力ポート23とを連通させず、出力ポート23と排出ポート24とを連通させ、非通電時では、出力ポート23と排出ポート24とを連通させず、供給ポート22と出力ポート23とを連通させるノーマルオープン型の直動式3ポート電磁弁である。したがって、通電時では、供給ポート22からの正圧エアは、出力ポート23を介して自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに供給されない一方で、非通電時では、供給ポート22からの正圧エアは、出力ポート23を介して自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに供給される。
【0034】
また、この直動式3ポート電磁弁11は、電断時においては、非通電時となるため、供給ポート22と出力ポート23とを連通させる原位置に戻る自己復帰ができる電磁弁である。この電断とは、各電磁弁11,12A〜12Dに対する電源装置から電源電圧が供給されない状況を示し、操作者が意図して電源電圧が供給されない状況や、操作者が意図せず電源電圧が供給されない状況を含む。なお、本実施形態において、可動鉄心が固定鉄心に当接する位置を吸着位置、可動鉄心が固定鉄心に当接しない位置を離脱位置として示す場合がある。
【0035】
また、本実施形態において、直動式3ポート電磁弁11では、電源電圧が正常に供給されている場合には、常時、コイル42aに対する通電が行われる。このため、電源電圧が供給されていない場合に限り、コイル42aに対して非通電となる。したがって、直動式3ポート電磁弁11は、電断となったときに、自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに正圧エアを供給する。
【0036】
次に、自己保持型電磁弁12A〜12Dについて図5図8にしたがって説明する。なお、本実施形態において、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dは同じような構成となっているため、自己保持型電磁弁12Aを代表として説明し、他の自己保持型電磁弁12B〜12Dの説明を省略する。
【0037】
図5図7に示すように、自己保持型電磁弁12Aは、エアの流路を切り換えるための弁体59を有する主弁部50と、弁体59を駆動させるためのソレノイド部70と、電断時に弁体59の位置を原位置に復帰させるための自己復帰機構80とから構成されている。
【0038】
主弁部50は、非磁性材製(合成樹脂材料製)である長箱状のボディ51を備えるとともに、ボディ51には、その長手方向の一端から他端に亘って貫通孔51aが形成されている。また、ボディ51の一側面には、ボディ51における長手方向の一端から他端に向かって、供給ポート52、出力ポート53及び排出ポート54がこの順序で形成されるとともに、各ポート52〜54は、それらの一端が貫通孔51aに向けて開口されている。
【0039】
供給ポート52の他端には、マニホールドベース13に形成された集中給気流路14が接続され、図示しない正圧供給源から正圧エアが供給される。出力ポート53の他端には、マニホールドベース13に形成された出力流路15Aが接続される。出力ポート53は、図示しないエアシリンダ等の空気圧機器に正圧エアを供給する場合があり、出力ポート53には、空気圧機器からの排気が供給される場合がある。また、排出ポート54の他端には、マニホールドベース13に形成された集中排気流路16が接続される。排出ポート54は、集中排気流路16を介して排気を外部に排出する。
【0040】
貫通孔51aの一端は、有底円筒状のリテーナ55が取り付けられることで封止されている。リテーナ55は、貫通孔51aの一端を封止する底部55aと、底部55aの周縁部から円筒状に延びる延在部55bとからなる。延在部55bは、その先端が出力ポート53における貫通孔51aへの開口周囲まで延びるように設けられている。延在部55bにおいて、供給ポート52と重合する位置には連通孔55cが形成され、供給ポート52とリテーナ55内とは連通孔55cを介して連通している。
【0041】
また、延在部55bの先端部には、供給弁座56が貫通孔51aを囲むように形成されている。さらに、ボディ51において、出力ポート53と排出ポート54との間で貫通孔51aを囲む端面には排出弁座57が供給弁座56に対向するように形成されている。そして、供給弁座56と排出弁座57との間であって、且つ出力ポート53に連通する空間に弁室58が区画形成されている。弁室58内には弁体59が収容されるとともに、弁体59は、供給弁座56及び排出弁座57それぞれに対して接離可能になっている。また、リテーナ55内と弁室58内とは連通している。
【0042】
弁体59は、貫通孔51aに挿入された円筒状をなすロッド60の外周面に嵌着されてロッド60と一体的に設けられている。ロッド60の一端側には外方へ突出する突出部60aが形成されるとともに、この突出部60aがリテーナ55内に位置するようにロッド60の一端側がリテーナ55内に挿通されている。突出部60aとリテーナ55の底部55aとの間には弁復帰ばね61が介在されている。弁体59は、弁復帰ばね61のばね力によって供給弁座56から離間する方向へ付勢されている。
【0043】
そして、図6に示すように、弁体59が弁復帰ばね61のばね力によって供給弁座56から離間する方向へ移動すると、弁体59は排出弁座57に着座して、供給ポート52と出力ポート53とが連通孔55c、リテーナ55内及び弁室58を介して連通し、出力ポート53から空気圧機器に正圧エアが供給されるようになっている。
【0044】
その一方で、図7に示すように、弁体59が弁復帰ばね61のばね力に抗して排出弁座57から離間する方向へ移動すると、弁体59は供給弁座56に着座して、出力ポート53と排出ポート54とが弁室58及び貫通孔51aを介して連通し、空気圧機器から出力ポート53に排出されたエアが排出ポート54から排出されるようになっている。
【0045】
次に、図5図7に示すように、ソレノイド部70は、磁性材料で形成された円筒状の磁気カバー71を備えるとともに、磁気カバー71の一端は、自己復帰機構80の自己復帰ブロック81の他端と接合されている。また、磁気カバー71の他端には挿入孔71aが形成されている。磁気カバー71の内側には、コイル72aが複数巻回された円筒状のボビン72が配設されている。
【0046】
磁気カバー71の内部であって、ボビン72よりも自己復帰機構80側には、ガイドリング73が設けられるとともに、磁気カバー71の他端内面と自己復帰機構80の自己復帰ブロック81の他端面との間にボビン72及びガイドリング73が挟持されている。ガイドリング73及びボビン72内には、略円柱状をなすとともに磁性体の可動鉄心74が挿入されている。可動鉄心74の一端側は、自己復帰ブロック81の貫通孔81aを介して主弁部50の貫通孔51aの他端側に入り込むように延在されるとともに、可動鉄心74の一端面はロッド60の他端面に当接している。また、可動鉄心74の一端には、外方に突出する鍔部74aが形成されるとともに、ガイドリング73と鍔部74aとの間に鉄心復帰ばね75が介在されている。可動鉄心74は、鉄心復帰ばね75のばね力によりロッド60を押圧する方向へ付勢されている。また、可動鉄心74において、鍔部74aよりも可動鉄心74の一端側には、可動鉄心74における周方向の全周に亘って凹む凹部74bが形成されている。また、可動鉄心74の凹部74bよりも可動鉄心74の一端側には、凹部74b側が小径となるように摺接部としてのテーパ74dが形成されている。
【0047】
また、ボビン72内には略円柱状をなすとともに磁性体の固定鉄心76が挿入されている。つまり、固定鉄心76は、ボビン72を介してコイル72aが周囲に巻回されている。固定鉄心76の一端面は磁極面となっており、この磁極面が可動鉄心74の他端面と対向するように配設されている。よって、可動鉄心74と固定鉄心76とは同軸上に配設されている。
【0048】
固定鉄心76における軸方向の他端寄りには、固定鉄心76における軸方向の両端部よりも小径をなす凹部76aが形成されている。凹部76aは、固定鉄心76における周方向の全周に亘って凹むように形成されている。固定鉄心76の凹部76a内には、永久磁石77が配設されている。
【0049】
そして、図示しない吸着側信号線に通電することによって、コイル72aに順方向に通電されてコイル72aが励磁されると、コイル72aの周りに固定鉄心76、ガイドリング73及び磁気カバー71を通過する磁気回路が形成される。この場合、図6に示すように、コイル72aに対して順方向に通電されることによって、コイル72aの励磁作用が吸着方向に対して働き、コイル72aの励磁作用及び永久磁石77の吸引力が鉄心復帰ばね75のばね力に抗して、可動鉄心74が固定鉄心76側に吸引されて移動し、可動鉄心74が固定鉄心76に当接する状態になる。これによって、弁体59が排出弁座57に着座して、供給ポート52と出力ポート53とが弁室58を介して連通する。
【0050】
その一方で、図示しない離脱側信号線に通電することによって、コイル72aに逆方向に通電されてコイル72aが励磁されると、コイル72aの周りに固定鉄心76、ガイドリング73及び磁気カバー71を通過する磁気回路が形成される。この場合、図7に示すように、コイル72aに対して逆方向に通電されることによって、コイル72aの励磁作用が離脱方向に対して働く。そして、コイル72aの励磁作用及び永久磁石77の反発力が鉄心復帰ばね75のばね力に加えられて、可動鉄心74がロッド60側に反発されて移動し、可動鉄心74が固定鉄心76に当接せずに、ロッド60の他端側を押圧する状態になる。これによって、弁体59が供給弁座56に着座して、出力ポート53と排出ポート54とが弁室58を介して連通する。
【0051】
また、コイル72aへの通電が停止されてコイル72aが励磁されないときには、磁気回路が形成されず、コイル72aの励磁作用による吸引力は消滅するが、固定鉄心76を挟むように永久磁石77が配設されている。このため、固定鉄心76は、永久磁石77から発生する磁束の一部が通過して磁気飽和している。したがって、固定鉄心76を通過する磁束以外の磁束により磁気回路が維持され、この磁気回路により可動鉄心74が固定鉄心76に吸着された状態が保持される。
【0052】
このように、本実施形態における自己保持型電磁弁12Aは、吸着側信号線に対する通電時では、出力ポート53と排出ポート54とを連通させず、供給ポート52と出力ポート53とを連通させる一方で、離脱側信号線に対する通電時では、供給ポート52と出力ポート53とを連通させず、出力ポート53と排出ポート54とを連通させる。また、自己保持型電磁弁12Aは、非通電時では各ポートの状態を保持する。したがって、自己保持型電磁弁12Aは、供給ポート22と出力ポート23とを連通させる状態と、出力ポート23と排出ポート24とを連通させる状態とを切り替える場合に、通電状態とする必要があるが、それ以外の状態を維持する場合には、通電状態を維持せずに、非通電状態とすることができる。
【0053】
また、電断時においては非通電時となるため、一般的な自己保持型電磁弁は、電断前における状態を保持し、原位置には戻らない自己復帰ができない電磁弁といえる。なお、本実施形態における自己保持型電磁弁12Aも、自己保持型電磁弁12A単体では自動的には自己復帰ができない電磁弁であるが、操作者の押圧操作によって、又は直動式3ポート電磁弁11からの正圧エアの供給によって自己復帰機構80を駆動させる電磁弁である。これによって、電断時においても、供給ポート22と出力ポート23とを連通させるように弁体26を原位置に戻し、復帰させることができる。
【0054】
図8(a)に示すように、自己復帰機構80は、可動鉄心74を固定鉄心76から離脱する離脱位置に移動させるための機構であり、特に、自己保持型電磁弁12Aの非通電時において可動鉄心74を物理的に離脱位置に移動させる。
【0055】
自己復帰機構80は、非磁性材製(合成樹脂材料製)である自己復帰ブロック81を備えるとともに、自己復帰ブロック81には、可動鉄心74における軸方向の一端から他端に亘って貫通孔81aが形成されている。また、自己復帰ブロック81の一端には、主弁部50におけるボディ51の他端が、自己復帰ブロック81の他端には、ソレノイド部70における磁気カバー71やガイドリング73の一端がそれぞれ接続されている。自己復帰ブロック81の貫通孔81aには、可動鉄心74が貫通されている。
【0056】
また、自己復帰ブロック81には、貫通孔81aと連通するように収納部としての第1ピストン室82と、第2収納部としての第2ピストン室86とが形成されている。第1ピストン室82と第2ピストン室86とは、可動鉄心74の軸方向に対して直交する直交方向に延伸し、それぞれ可動鉄心74に向けて開口するように形成されている。また、貫通孔81aと第1ピストン室82との間、貫通孔81aと第2ピストン室86との間には、それらを区画する突出部81b,81cがそれぞれ形成されている。
【0057】
次に、第1ピストン室82内には、可動鉄心74に対して直交するように延伸する第1ピストン83が収容される。復帰部材としての第1ピストン83の一端側は、可動鉄心74の外周に対向し、一端側が細くなるようにテーパ83aが形成されている。また、このテーパ83aは、ボディ51側に形成されている。特に、可動鉄心74が固定鉄心76に当接する吸着位置に配置されている場合には、第1ピストン83のテーパ83aが、可動鉄心74のテーパ74dに摺接するように第1ピストン83が配置されている。その一方で、可動鉄心74が固定鉄心76に当接しない離脱位置に配置されている場合には、第1ピストン83の一端が、可動鉄心74の凹部74bに摺接しないように第1ピストン83が配置されている。
【0058】
第1ピストン83の他端側には外方へ突出する突出部83bが形成されている。第1ピストン室82を形成する突出部81bの内壁81dと、第1ピストン83の突出部83bとの間には付勢部材としてのピストン復帰ばね84が介在されている。このため、通常時では、第1ピストン83は、ピストン復帰ばね84のばね力により可動鉄心74から離れる方向に付勢されている。
【0059】
また、第1ピストン室82において、第1ピストン83の他端側にはマニホールドベース13に形成された出力流路18が接続される。第1ピストン室82には、出力流路18を介して直動式3ポート電磁弁11からの正圧エアが供給される。第1ピストン83の側面には凹部83cが形成されており、OリングO1が配設されている。このため、出力流路18から第1ピストン室82に供給される正圧エアは、OリングO1よりも可動鉄心74側には供給されない。このため、正圧エアが出力流路18から第1ピストン室82に供給されると、図8(b)に示すように、ピストン復帰ばね84のばね力に抗して可動鉄心74側へ移動する。このため、可動鉄心74が吸着位置に配置されている場合には、第1ピストン83におけるテーパ83aが可動鉄心74におけるテーパ74dに摺接し、押圧することによって、固定鉄心76に摺接しない離脱位置に可動鉄心74が移動し、第1ピストン83の一端が凹部74bに収納される。なお、可動鉄心74が最初から離脱位置に配置されている場合には、第1ピストン83のテーパ83aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接することなく、第1ピストン83の一端が凹部74bに収納される。このように、第1ピストン83は、可動鉄心74のテーパ74dを押圧し、凹部74bに収納可能である。また、第1ピストン室82への正圧エアの供給が停止されると、図8(a)に示すように、ピストン復帰ばね84のばね力によって、可動鉄心74から離間する方向へ第1ピストン83が移動する。なお、本実施形態において、第1ピストン83が可動鉄心74に摺接しない位置が第1位置に、第1ピストン83が可動鉄心74に摺接する位置が第2位置にそれぞれ相当する。
【0060】
また、本実施形態において、複数の電磁弁11,12A〜12Dのそれぞれには図示しない同じ電源装置から電源電圧が供給される。このため、電源装置が故障するなど、電源装置からの電源電圧が供給されない場合、複数の電磁弁11,12A〜12Dの全てで電断となる。したがって、電源装置が故障するなど、自己保持型電磁弁12A〜12Dにおいて電断となり、コイル72aに対して非通電となったときには、特別に電断を監視(検知)する素子を備えなくても、直動式3ポート電磁弁11においても同じように電断となり、第1ピストン室82に正圧エアが供給される。
【0061】
なお、自己復帰ブロック81には、第1ピストン室82のソレノイド部70側に圧入溝81fが形成されており、その圧入溝81fには、圧入板85の一端が圧入されている。圧入溝81fは、圧入板85の長さよりも僅かに長く、圧入板85の厚みよりも僅かに厚い形状である。また、第1ピストン83の他端側には、ソレノイド部70側に、圧入板85の長さより僅かに長く、圧入板85の厚みよりも僅かに厚いスライド溝83dが形成されている。これによって、圧入板85は、可動鉄心74に直交する方向に対する第1ピストン83の移動を可能とするとともに、マニホールドベース13側への第1ピストン83の脱落を防止する。
【0062】
第2ピストン室86内には、可動鉄心74に対して直交するように延伸する第2ピストン87が収容される。第2復帰部材としての第2ピストン87の一端側は、可動鉄心74の外周に対向しており、一端側が細くなるようにテーパ87aが形成されている。また、このテーパ87aは、ボディ51側に形成されている。特に、可動鉄心74が固定鉄心76に当接する吸着位置に配置されている場合には、第2ピストン87のテーパ87aが、可動鉄心74のテーパ74dに摺接するように第2ピストン87が配置されている。その一方で、可動鉄心74が固定鉄心76に当接しない離脱位置に配置されている場合には、第2ピストン87の一端が、可動鉄心74の凹部74bに摺接しないように第2ピストン87が配置されている。
【0063】
第2ピストン87の他端側には外方へ突出する突出部87bが形成されている。第2ピストン室86を形成する突出部81cの内壁81eと、第2ピストン87の突出部87bとの間にはピストン復帰ばね88が介在されている。このため、通常時では、第2ピストン87は、ピストン復帰ばね88のばね力により可動鉄心74から離れる方向に付勢されている。
【0064】
第2ピストン87の他端面側には、自己復帰ブロック81から露呈し、操作者により押圧操作が可能な操作部としての操作ボタン89が配設されている。操作ボタン89が可動鉄心74側に押圧操作されると、図8(c)に示すように、操作ボタン89がピストン復帰ばね88のばね力に抗して可動鉄心74側へ移動する。このため、可動鉄心74が吸着位置に配置されている場合には、第2ピストン87におけるテーパ87aが可動鉄心74におけるテーパ74dに摺接し、押圧することによって、固定鉄心76に摺接しない離脱位置に可動鉄心74が移動し、第2ピストン87の一端が凹部74bに収納される。なお、可動鉄心74が最初から離脱位置に配置されている場合には、第2ピストン87のテーパ87aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接することなく、第2ピストン87の一端が凹部74bに収納される。また、操作ボタン89の押圧操作が終了されると、図8(a)に示すように、操作ボタン89がピストン復帰ばね88のばね力によって、可動鉄心74から離間する方向へ第2ピストン87及び操作ボタン89が移動する。なお、本実施形態において、第2ピストン87が可動鉄心74に摺接しない位置が第3位置に、第2ピストン87が可動鉄心74に摺接する位置が第4位置にそれぞれ相当する。
[作用]
次に、電磁弁マニホールド10の作用について説明する。
【0065】
電磁弁マニホールド10において、自己保持型電磁弁12Aでは、図6に示すように、吸着側信号線への通電によってコイル72aに順方向に通電され、コイル72aの励磁作用及び永久磁石77の吸引力により可動鉄心74が固定鉄心76側に吸引されて移動する。そして、弁体59が排出弁座57に着座して、供給ポート52と出力ポート53とが弁室58を介して連通する。
【0066】
その一方で、図7に示すように、離脱側信号線への通電によってコイル72aに逆方向に通電され、コイル72aの励磁作用及び永久磁石77の反発力により可動鉄心74がロッド60側に反発されて移動する。そして、弁体59が供給弁座56に着座して、出力ポート53と排出ポート54とが弁室58を介して連通する。
【0067】
また、コイル72aへの通電が停止されると、コイル72aが励磁されず、コイル72aの励磁作用による吸引力及び反発力は消滅するが、固定鉄心76は、永久磁石77から発生する磁束の一部が通過して磁気飽和し、コイル72aへの通電の停止前の状態が保持される。
【0068】
次に、直動式3ポート電磁弁11では、図4に示すように、コイル42aに通電されると、コイル42aの励磁作用が鉄心復帰ばね45のばね力に抗して、可動鉄心44が固定鉄心46側に吸引されて移動し、弁体26が供給弁座27に着座して、出力ポート23と排出ポート24とが弁室25を介して連通する。
【0069】
その一方で、図3に示すように、コイル42aが通電されていないときには、鉄心復帰ばね45のばね力により、可動鉄心44がボディ21側に移動し、弁体26が排出弁座28に着座して、供給ポート22と出力ポート23とが弁室25を介して連通する。これによって、直動式3ポート電磁弁11は、非通電時では、自己保持型電磁弁12Aに対して正圧エアを供給することとなる。特に、各電磁弁11,12A〜12Dにおいて電断となった場合には、各電磁弁11,12A〜12Dでコイル42a,72aに対して非通電となり、直動式3ポート電磁弁11は、自己保持型電磁弁12Aに対して正圧エアを供給することとなる。
【0070】
そして、自己保持型電磁弁12Aでは、電断時に直動式3ポート電磁弁11からの正圧エアが出力流路18を介して第1ピストン室82に対して供給される。第1ピストン室82では、正圧エアの供給により第1ピストン83が他端側から一端側に押圧され、図8(b)に示すように、ピストン復帰ばね84のばね力に抗して可動鉄心74側に向かって移動する。そして、可動鉄心74が吸着位置に配置されている場合には、第1ピストン83が可動鉄心74側に移動することで、第1ピストン83のテーパ83aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接し、可動鉄心74を離脱位置に移動させる。
【0071】
その一方で、通電時には、直動式3ポート電磁弁11からの正圧エアが第1ピストン室82に対して供給されない。このため、第1ピストン83は、ピストン復帰ばね84のばね力によって、可動鉄心74から離間する方向へ移動する。
【0072】
なお、自己保持型電磁弁12Aでは、通電時であるか非通電時であるかに拘わらず、操作ボタン89の押圧操作が行われた場合には、第2ピストン87が他端側から一端側に押圧され、図8(c)に示すように、ピストン復帰ばね88のばね力に抗して可動鉄心74側に向かって移動する。そして、可動鉄心74が吸着位置に配置されている場合には、第2ピストン87が可動鉄心74側に移動することで、第2ピストン87のテーパ87aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接し、可動鉄心74を離脱位置に移動させる。その一方で、操作ボタン89の押圧操作が行われない場合、第2ピストン87は、ピストン復帰ばね88のばね力によって、可動鉄心74から離間する方向へ移動する。
【0073】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)複数の電磁弁12A〜12Dは、
固定鉄心76に対して可動鉄心74を吸着させた状態を保持するための永久磁石77を有する。また、複数の電磁弁12A〜12Dは、可動鉄心74の変位を干渉しない第1位置と、可動鉄心74を原位置に復帰させる第2位置との間で変位可能な第1ピストン83を有する。そして、各電磁弁11,12A〜12Dが電断となったときには、直動式3ポート電磁弁11からのエアが第1ピストン室82に供給されることで、第1ピストン83が第1位置から第2位置に変位する。このため、消費電力が小さく、放熱が少ない自己保持型電磁弁12A〜12Dを用いても、電断となったときには第1ピストン室82に正圧エアが供給されることで、可動鉄心74を原位置である離脱位置に変位させることができる。したがって、消費電力を小さく、放熱を少なくすることができるとともに、電断となったときであっても弁体26の配置を原位置に復帰させることができる。
【0074】
(2)従来において、弁体を原位置に自己復帰させる自己復帰機構が電磁弁毎に搭載されるように考えられるものの、電磁弁毎に搭載することによって装置の大型化、製造工程の増大を招くおそれがあった。そこで、本実施形態での構成とすると、直動式3ポート電磁弁11を用いることによって、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dに対して集中的に正圧エアが供給可能である。また、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dに対して、少なくとも1つの直動式3ポート電磁弁11が配設されていればよく、電磁弁装置の小型化を図ることができ、製造工程の増大を抑制することができる。更にまた、自己保持型電磁弁12A〜12Dは、直動式3ポート電磁弁11よりも消費電力が小さく、放熱が少ない傾向がある。このため、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dに対して1つの直動式3ポート電磁弁11を備えるように構成すれば、複数の直動式3ポート電磁弁から構成するよりも、消費電力が小さく、放熱が少なくなる。
【0075】
(3)また、第1ピストン83において、可動鉄心74に対向する一端にはテーパ83aが形成されている。第1ピストン83が第1位置から第2位置に変位する場合に、テーパ83aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接することによって、可動鉄心74を離脱位置に移動させることができる。このため、可動鉄心74の軸に直交するように第1ピストン83が変位する場合であっても、円滑に可動鉄心74を原位置に変位させることができる。
【0076】
(4)第1ピストン83を第2位置から第1位置に付勢するピストン復帰ばね84が配設されている。このため、直動式3ポート電磁弁11から正圧エアが供給されない場合には、ピストン復帰ばね84は、そのばね力によって第1ピストン83を第2位置から第1位置に変位させることができる。
【0077】
(5)第2ピストン87は、操作ボタン89の操作に応じて、可動鉄心74の変位を干渉しない第3位置と、可動鉄心74を原位置に復帰させる第4位置との間で変位可能である。第2ピストン87において、可動鉄心74に対向する一端にはテーパ87aが形成されている。第2ピストン87が第3位置から第4位置に変位する場合に、テーパ87aが可動鉄心74のテーパ74dに摺接することによって、可動鉄心74を離脱位置に移動させることができる。このため、直動式3ポート電磁弁11からの正圧エアの供給以外に、操作者の押圧操作によっても、可動鉄心74を離脱位置に変位させることができる。したがって、消費電力を小さく、放熱を少なくすることができるとともに、操作ボタン89の操作に応じて弁体26の配置を原位置に復帰させることもできる。また、可動鉄心74の軸に直交するように第2ピストン87が変位する場合であっても、円滑に可動鉄心74を原位置に変位させることができる。更にまた、第2ピストン87は、第1ピストン83と同じように、可動鉄心74の全周に形成されたテーパ74dに摺接することで、第1ピストン83、第2ピストン87のそれぞれに対応して異なるテーパ74dを形成する必要がなく、製造工数を削減することができる。また、第1ピストン83と第2ピストン87とは、可動鉄心74を挟んで対向するように配置されている。このため、第1ピストン83と第2ピストン87とで、同じ軸上で可動鉄心74に摺接することとなり、可動鉄心74を異なる軸上から摺接する場合よりも可動鉄心74の安定化を図ることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記実施形態において、直動式3ポート電磁弁11と、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dとが同じ電源装置から電源供給しなくてもよい。この場合、例えば、電断時等を監視する監視部を複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dのそれぞれに搭載し、電断時等である場合に直動式3ポート電磁弁11に電断信号を供給することで、直動式3ポート電磁弁11により電断時等が特定可能なように構成すればよい。このように構成することによって、直動式3ポート電磁弁11により電断時等が特定されると、正圧エアが第1ピストン室82に供給され、弁体26を原位置に復帰させることができる。
【0079】
○ 上記実施形態において、ノーマルクローズ型の直動式3ポート電磁弁を採用し、通電時に正圧エアを第1ピストン室82に供給し、非通電時に正圧エアを第1ピストン室82に供給しないように構成してもよい。この場合、第1ピストン室82において正圧エアが供給される場合に第1位置に配置され、正圧エアが供給されない場合に第2位置に変位するように構成する必要がある。
【0080】
○ 上記実施形態において、原位置を吸着位置としてもよく、第1ピストン83におけるテーパ87aがソレノイド部70側に形成されるように構成してもよい。
○ 上記実施形態において、可動鉄心74、各ピストン83,87の何れか一方にテーパが形成されていてもよく、何れにもテーパが形成されていなくてもよい。
【0081】
○ 上記実施形態において、各ピストン83,87を可動鉄心74の軸方向に直交しない方向に変位させてもよい。具体的な一例としては、各ピストン83,87を可動鉄心74の軸方向に変位させてもよい。
【0082】
○ 上記実施形態において、自己復帰機構80を第1ピストン83に関する構成のみとし、第2ピストン87に関する構成を備えなくてもよい。つまり、操作者の操作に応じて弁体26が原位置に復帰しなくてもよい。
【0083】
○ 上記実施形態において、直動式3ポート電磁弁11と、自己保持型電磁弁12A〜12Dとで給気流路を同じ流路としてもよく、排気流路を同じ流路としてもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0084】
○ 上記実施形態において、複数の自己保持型電磁弁12A〜12Dに対して複数の直動式3ポート電磁弁11を搭載してもよい。また、1つの自己保持型電磁弁に対して1つの直動式3ポート電磁弁11を搭載してもよい。
【0085】
○ 上記実施形態において、第1ピストン室82に正圧エアを供給するエア供給装置として直動式3ポート電磁弁11以外を採用してもよい。例えば、直動式バランスポペット電磁弁を採用してもよい。また、請求項中における電磁弁装置としては、このようなエア供給装置を備えるか否かを問わず、電磁弁が複数あるか1つあるかも問わない。
【0086】
○ 上記実施形態において、第1ピストン室82に単なるエアを供給しても問題ない。
○ 上記実施形態において、自己保持型電磁弁12A〜12Dが単なるエアを出力する構成であっても問題ない。また、エアでなくても流路を切り替える弁体を備える構成であればよい。
【0087】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ) コイルが周囲に巻回された固定鉄心、前記固定鉄心と同軸上に配設され、前記コイルに対する通電状態に応じて前記固定鉄心から離脱する離脱位置と前記固定鉄心に吸着する吸着位置との間で変位可能であり、前記離脱位置及び前記吸着位置のうち何れか一方を原位置とする可動鉄心、前記固定鉄心に対して前記可動鉄心を吸着させた状態を保持するための永久磁石、前記可動鉄心の変位に応じて流路の切替を行う弁体、前記可動鉄心の変位を干渉しない第1位置と、前記可動鉄心を前記原位置に復帰させる第2位置との間で変位可能な復帰部材、前記復帰部材が配置される収納部、前記収納部に対してエアを供給可能であり、電断となったときにエアの供給の有無を切り替えることで前記複数の電磁弁における前記復帰部材を前記第1位置から前記第2位置に変位させるエア供給装置を有する電磁弁装置。
【符号の説明】
【0088】
10…電磁弁マニホールド、11…直動形3ポート電磁弁、12A〜12D…自己保持型電磁弁、13…マニホールドベース、14…集中給気流路、15A〜15D、18…出力流路、16…集中排気流路、17…給気流路、19…排気流路、20,50…主弁部、22,52…供給ポート、23,53…出力ポート、24,54…排出ポート、25,58…弁室、26,59…弁体、27,56…供給弁座、28,57…排出弁座、30,61…弁復帰ばね、40,70…ソレノイド部、42,72…ボビン、42a,72a…コイル、44,74…可動鉄心、46,76…固定鉄心、74b…凹部、74d,83a,87a…テーパ、45,75…鉄心復帰ばね、77…永久磁石、80…自己復帰機構、81…自己復帰ブロック、82…第1ピストン室、83…第1ピストン、84,88…ピストン復帰ばね、86…第2ピストン室、87…第2ピストン、89…操作ボタン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8