特許第6084459号(P6084459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084459
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】救命支援装置および救命支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/08 20060101AFI20170213BHJP
   A61N 1/39 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   A61N1/08
   A61N1/39
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-282897(P2012-282897)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-124316(P2014-124316A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 勤
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 弘行
(72)【発明者】
【氏名】石見 拓
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−000405(JP,A)
【文献】 特表2005−512698(JP,A)
【文献】 特開2012−235874(JP,A)
【文献】 特開2008−188216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/08
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部とを備え
前記センサ部は、パルスオキシメータの少なくとも一部であるか、超音波、電磁波、レーザ光のいずれかを用いる計測器の少なくとも一部であり、使用に際して前記患者の衣服を脱がす必要のない身体部位に装着される、救命支援装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記センサ部が取得した前記血流に係る情報を出力可能とされている、請求項1に記載の救命支援装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記血流に係る情報を対応付けられた自動体外式除細動器に対して送信可能とされている、請求項に記載の救命支援装置。
【請求項4】
自動体外式除細動器とともに収容される箱体からの搬出を検知する搬出検知部と、
前記検知部が前記搬出を検知した場合に、起動処理を実行する制御部とを備える、請求項1からのいずれか一項に記載の救命支援装置。
【請求項5】
対応付けられた自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部と、
当該自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知した場合に、起動処理を実行する制御部とを備える、請求項1からのいずれか一項に記載の救命支援装置。
【請求項6】
対応付けられた自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部を備え、
前記判定部が当該自動体外式除細動器の使用が必要と判定した場合、前記出力部は、当該自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知するまで、当該使用を促す情報の報知を継続する、請求項1からのいずれか一項に記載の救命支援装置。
【請求項7】
自動体外式除細動器と、
前記自動体外式除細動器と携行可能とされた救命支援装置と、
前記自動体外式除細動器および前記救命支援装置を収容する箱体とを備え、
前記救命支援装置は、
者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、前記自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部と、
前記救命支援装置が前記箱体から搬出されたことを検知する搬出検知部と、
前記救命支援装置が前記箱体から搬出されたことを前記検知部が検知した場合に、前記救命支援装置の起動処理を実行する制御部とを備え、
前記センサ部は、パルスオキシメータの少なくとも一部であるか、超音波、電磁波、レーザ光のいずれかを用いる計測器の少なくとも一部であり、使用に際して前記患者の衣服を脱がす必要のない身体部位に装着される、救命支援システム。
【請求項8】
自動体外式除細動器と、
前記自動体外式除細動器と携行可能とされた救命支援装置とを備え、
前記救命支援装置は、
者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、前記自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部と、
前記自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部と、
前記自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知した場合に、前記救命支援装置の起動処理を実行する制御部とを備え、
前記センサ部は、パルスオキシメータの少なくとも一部であるか、超音波、電磁波、レーザ光のいずれかを用いる計測器の少なくとも一部であり、使用に際して前記患者の衣服を脱がす必要のない身体部位に装着される、救命支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動体外式除細動器(Automatic External Defibrillator;AED)を使用することの要否を判定するための救命支援装置、および少なくとも当該救命支援装置とAEDを備えて構成される救命支援システムに関する。
【0002】
AEDは、心室細動や脈のない心室頻拍といった致死性不整脈が検出された患者に対して電気ショックを実施することにより、当該患者を蘇生させるための装置である。具体的には、患者の意識および呼吸がない場合に、裸にした当該患者の胸部にAEDが備える電極パッドを貼り付ける。AEDは、当該電極パッドを通じて取得された心電図を解析し、致死性不整脈を検出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−61361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療従事者でない一般市民が倒れている患者を目の前にしたとき、AEDを運んでくることはできても、使用に踏み切ることを躊躇するのが普通である。特に死戦期にある患者は、心肺停止状態にありながら喘ぎ呼吸という独特の呼吸をするため、正しく意識および呼吸がない状態であると判断することが難しい。結果として電気ショックの適用が遅れることがあり、救命率低下の一因となっている。
【0005】
また意識のない患者には、脳障害、低血糖、出血性ショック、溺水、一酸化炭素中毒などの原因とする者が含まれている。このような患者に対してはAEDの使用は必要ないものの、その正確な判断は一般市民にとって困難である。したがって公衆の面前で不必要に胸部を裸にされるなど、患者のプライバシー保護が十分でなくなる場合がある。また胸部を裸にするという処置の必要性が、AEDの使用を躊躇させる一因ともなっている。
【0006】
よって本発明は、AED使用の要否を適切に判断することにより、AEDの使用を躊躇する救助者を支援して救命率を向上し、患者のプライバシーも保護しうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明がとりうる第1の態様は、救命支援装置であって、
患者に装着可能とされ、当該患者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部とを備える。
【0008】
このような構成によれば、自動体外式除細動器を使用してよいのか判断をしかねている救助者に対して、その要否についての適切な情報を提供し、救命措置の支援を行なうことができる。特に一刻を争う使用が必要と判断された場合において、救助者に使用行為を強く促すことができる。一方使用が必要ないと判断された場合においては、患者の衣服を不必要に脱がすことが避けられるため、当該患者のプライバシーを守ることができる。
【0009】
前記センサ部は、パルスオキシメータの少なくとも一部、または超音波、電磁波、レーザ光のいずれかを用いる計測器の少なくとも一部である構成としてもよい。
【0010】
このようなセンサ部の場合、患者の額、指先、頸部、腕部、脚部などに装着することができるため、患者の肌の露出を最小限に抑えて血流に係る情報を取得することができる。特に体動の影響を受けにくい患者の額にパルスオキシメータを装着する場合、簡易な構成を用いつつも血流に係る情報取得の確実性を向上できる。
【0011】
前記出力部は、前記センサ部が取得した前記血流に係る情報を出力可能とされている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、例えば電気ショックを与えた後に当該情報を出力させることにより、患者の容態がどのように変化したかを救助者が知ることができる。
【0013】
前記出力部は、前記血流に係る情報を対応付けられた自動体外式除細動器に対して送信可能とされている構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、当該情報を自動体外式除細動器の動作に反映させるシステムを構成することができる。
【0015】
自動体外式除細動器とともに収容される箱体からの搬出を検知する搬出検知部と、前記検知部が前記搬出を検知した場合に、起動処理を実行する制御部とを備える構成としてもよい。
【0016】
このような構成によれば、箱体から自動対外式除細動器を搬出するとともに救命支援装置が起動されるため、患者が倒れている現場に到着次第、すぐに救命支援装置を使用することができる。救命措置を一秒でも早く開始できることは、救命率の向上に寄与する。
【0017】
したがって上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第2の態様は、救命支援システムであって、
自動体外式除細動器と、
前記自動体外式除細動器と携行可能とされた救命支援装置と、
前記自動体外式除細動器および前記救命支援装置を収容する箱体とを備え、
前記救命支援装置は、
患者に装着可能とされ、当該患者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、前記自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部と、
前記救命支援装置が前記箱体から搬出されたことを検知する搬出検知部と、
前記救命支援装置が前記箱体から搬出されたことを前記検知部が検知した場合に、前記救命支援装置の起動処理を実行する制御部とを備える。
【0018】
ここで、対応付けられた自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部を備え、前記判定部が当該自動体外式除細動器の使用が必要と判定した場合、前記出力部は、当該自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知するまで、当該使用を促す情報の報知を継続する構成としてもよい。
【0019】
このような構成によれば、躊躇する救助者に対して使用を強く促す作用が期待できるとともに、使用ができる別の救助者に代替するなどして、自動体外式除細動器の使用に至る確実性を向上させることができる。
【0020】
あるいは、対応付けられた自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部と、当該自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知した場合に、起動処理を実行する制御部とを備える構成としてもよい。
【0021】
救助者は、患者が倒れている現場に自動体外式除細動器を運び次第、先ずはこれを起動することが通常である。したがって救命措置の開始を遅らせることなく、搬出を検知する構成が省略された、より低コストの救命支援装置を提供することができる。
【0022】
したがって上記の目的を達成するために、本発明がとりうる第3の態様は、救命支援システムであって、
自動体外式除細動器と、
前記自動体外式除細動器と携行可能とされた救命支援装置とを備え、
前記救命支援装置は、
患者に装着可能とされ、当該患者の血流に係る情報を取得するセンサ部と、
前記血流に係る情報に基づいて、前記自動体外式除細動器を使用することの要否を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記要否に係る情報を救助者に報知する出力部と、
前記自動体外式除細動器が起動されたことを検知する起動検知部と、
前記自動体外式除細動器が起動されたことを前記起動検知部が検知した場合に、前記救命支援装置の起動処理を実行する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る救命支援システムを模式的に示す図である。
図2図1の救命支援システムの具体的な構成を示す機能ブロック図である。
図3】自動体外式除細動器と救命支援装置の使用態様例を模式的に示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る救命支援システムの具体的な構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。なお以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る救命支援システム1を模式的に示す図である。救命支援システム1は、自動体外式除細動器(以下AEDと略記する)2、救命支援装置3、および箱体4からなる。AED2は、周知の構成を有するものである。
【0026】
箱体4は、収容空間4a、および当該収容空間4aを閉塞する扉体4bを備えている。箱体4は、AED2および救命支援装置3を収容空間4aに収容した状態で所定の場所に設置されている。救命支援装置3は、AED2と携行可能な状態とされている。救命を要する事態が発生すると、救助者は扉体4bを開いてAED2および救命支援装置3を箱体4から搬出する。
【0027】
図2は、上記の救命支援システム1の具体的な構成を示す機能ブロック図である。救命支援装置3は、センサ部31、制御部32、判定部33、出力部34、入力部35、搬出検知部36、および起動検知部37を備えている。本実施形態においては、これらの構成要素は全て単一の筺体3a内に配置されている。図3に示すように、救命支援装置3は、患者としての患者10の額10aに装着して使用される。したがって筺体3aは、額10aに装着可能なサイズと形状を有している。
【0028】
センサ部31は、図示しない発光部と受光部を有する周知のパルスオキシメータである。発光部は患者10の額10aに対向するように配置され、血液が吸収帯を有する波長の光を照射する。受光部も額10aに対向するように配置され、血液による吸収を受けた反射光または透過光を受光する。受光部は、受光した光の強度に応じた信号を出力するように構成されている。
【0029】
すなわちセンサ部31は、本発明の血流に係る情報としての脈拍の有無を検出することができる。心臓の拍動が停止していなければ血流が存在し、血流が存在すれば拍動に伴って血液の厚みが変化し、血液の厚み変化に伴って光吸収の度合い、すなわち受光強度が変化するためである。
【0030】
制御部32は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を備え、救命支援装置3の各部を制御する。
【0031】
判定部33は、制御部32により実現される機能ブロックの1つである。判定部33は、センサ部31が検出した脈拍の有無に基づいて、AED2を使用することの要否を判定する。
【0032】
前述のように、患者の意識喪失には様々な原因があり、AED2を用いて電気ショックを与えることを必要としない場合がある。心源性の意識喪失は、電気ショックを与える必要がある場合であって、脈拍が存在しない事実をもってこれを判断することができる。脳障害、多量出血、低血糖、貧血、低炭酸ガスなどを原因とする意識喪失は、電気ショックを与える必要のない(与えてはならない)場合であって、脈拍が存在する事実をもってこれを判断することができる。
【0033】
したがって判定部33は、センサ部31により脈拍が存在しない事実が検出された場合に、AED2の使用が必要であると判断し、センサ部31により脈拍が存在する事実が検出された場合に、AED2の使用は必要ないと判断するように構成されている。
【0034】
出力部34は、判定部33が判定したAED2の使用の要否を救助者に報知するように構成されている。報知は、聴覚的な報知(ガイダンスメッセージ、メロディ、ビープ音など)と視覚的な報知(LEDの発光、ディスプレイにメッセージを表示など)の少なくとも一方を用いて、様々な態様で行なうことができるように構成されている。
【0035】
入力部35は、センサ部31による検出動作の開始を含む各種指示を入力可能に構成されている。制御部32は、入力部35を通じて入力される救助者からの指示に応じて救命支援装置3の各部を制御するように構成されている。
【0036】
搬出検知部36は、救命支援装置3が箱体4から搬出されたことを検出するように構成されている。具体的には、搬出検知部36は、救命支援装置3がAED2とともに箱体4から搬出される際の振動を検出する振動センサを備えている。制御部32は、搬出検知部36が当該搬出の事実を検知した場合に、救命支援装置3の起動処理を実行するように構成されている。このとき、例えば「センサを額に装着して下さい。」というガイド音声が出力される。
【0037】
起動検知部37は、救命支援装置3に対応付けられたAED2が起動されたことを検知するように構成されている。具体的には、起動検知部37は、AED2が起動されることにより発生する電磁波を検出するアンテナを備えている。判定部33がAED2の使用が必要と判定した場合、制御部32は、起動検知部37が当該起動の事実を検知するまで、出力部34を通じたAED2の使用を促す報知を継続させるように構成されている。このとき、例えば「AEDを起動して、その指示に従って下さい。」というガイド音声が出力される。
【0038】
救命を要する事態が発生したとき、救助者は所定の場所に設置された箱体4の扉4bを開き、収容空間4aからAED2および救命支援装置3を搬出する。このときに生ずる振動により救命支援装置3が起動されるため、患者が倒れている現場に到着次第、すぐに救命支援装置3を使用することができる。救命措置を一秒でも早く開始できることは、救命率の向上に寄与する。
【0039】
図3に示すように、救助者は患者10の額10aに救命支援装置3を装着してから入力部35を操作し、センサ部31による脈拍検出処理の開始を指示する。センサ部31は血流の有無(血液の厚み変化の有無)を受光部による受光強度の変化の有無を通じて検出する。判定部33は、検出された脈拍の有無に応じて、AED2使用の要否を判定する。
【0040】
判定結果は、出力部34を通じて救助者に報知される。脈拍が検出されなかった場合、例えば「脈を検出できません。AEDを使用して下さい。」というガイド音声が出力されたり、表示装置の少なくとも一部が緑色に発光したりする。脈拍が検出された場合、「脈を検出しました。AEDを使用しないで下さい。」というガイド音声が出力されたり、表示装置の少なくとも一部が赤色に発光したりする。
【0041】
本実施形態の救命支援装置3は、患者10の額10aに装着して脈拍を検出できるパルスオキシメータを備えているため、使用に際して患者10の衣服を脱がす必要がない。また額10aは体動の影響を受けにくい箇所であるため、脈拍の有無を正確に検出することができる。したがってAED2の使用が必要である場合は、救助者に対して適切な指示を提供することができる。一方AED2の使用が不要である場合は、患者10の衣服を不必要に脱がすことが避けられるため、患者10のプライバシーを守ることができる。
【0042】
またAED2の使用を促す報知は、救助者がAED2を起動したことが起動検知部37に検知されるまで継続される。したがって躊躇する救助者に対して使用を強く促す作用が期待できるとともに、使用ができる別の救助者に代替するなどして、AED2の使用に至る確実性を向上させることができる。
【0043】
AED2の起動が起動検知部37により検知されると、制御部32は出力部34を通じた報知を停止する。救助者は、以降AED2が出力するガイド音声に従い、図3に示すように、裸にした患者10の胸部に電極パッド2a、2bを貼り付け、必要に応じて患者10に電気ショックを与える。
【0044】
救命支援装置3の出力部34は、必要に応じて入力部35から所定の指示を与えることにより、センサ部31が取得した血流に係る情報、すなわち脈拍の有無や動脈血酸素飽和度の検出結果を出力できるように構成されている。例えば電気ショックを与えた後に当該情報を出力させることにより、患者10の容態がどのように変化したかを救助者が知ることができる。
【0045】
本実施形態に係る救命支援システム1は、既存のAED2および箱体4に何ら変更を加えることなく構成可能である。すなわち、既に設置済みのAED2を新規な製品に交換することなく、救命支援装置3を当該AED2と携行可能に設置するのみでよい。これにより、救助者のAED2使用に対する躊躇を抑制し、救命率の向上を図りうる救命システム1を、最小限の追加コストで構成することができる。
【0046】
次に図4を参照しつつ、本発明の第2の実施形態に係る救命支援システム1Aについて説明する。第1の実施形態と実質的に同一または同様の構成には同一の参照番号を付与し、繰り返しとなる説明は省略する。本実施形態の救命支援システム1Aは、救命支援装置3Aが搬出検知部36を備えていない点において、第1の実施形態に係る救命支援システム1と相違する。
【0047】
本実施形態に係る救命支援装置3Aの制御部32Aは、当該救命支援装置3Aに対応付けられたAED2が起動されたことを起動検知部37が検知した場合に、救命支援装置3Aの起動処理を実行するように構成されている。
【0048】
救助者は、患者が倒れている現場にAED2を運び次第、先ずはAED2を起動することが通常である。したがって救命措置の開始を遅らせることなく、搬出検知部36に係る構成が省略された、より低コストの救命支援装置3Aを提供することができる。また箱体4を含まずに、AED2と救命支援装置3Aのみで救命支援システム1Aを構成することができる。
【0049】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0050】
センサ部31が装着される箇所は、必ずしも患者10aの額10aであることを要しない。透過型のパルスオキシメータが、指先10bに装着される構成としてもよい。この場合においても、患者10の衣服を脱がすことなく脈拍検出処理を実行することができる。
【0051】
センサ部31は、必ずしもパルスオキシメータであることを要しない。血流に係る情報を取得しうる限りにおいて、センサ部31は、超音波、電磁波、レーザ光のいずれかを用いる計測器(超音波血流計、電磁血流計、レーザ血流計、ドップラ血流計など)の少なくとも一部として構成してもよい。この場合、センサ部31は、患者10の頸部10c、腕部10d、または脚部10eに装着される。いずれの場合においても、患者10の肌の露出を最小限に抑えて脈拍検出処理を実行することができる。
【0052】
センサ部31は、必ずしもその全体が救命支援装置3(3A)の筺体3a内に収容されることを要しない。少なくとも患者の肌に装着される部分を筺体3aの外部に設け、血流の状態を示す信号を、有線または無線通信を通じて制御部32に対し出力する構成としてもよい。
【0053】
搬出検出部36は、必ずしも振動センサであることを要しない。これに代えて、加速度センサを備える構成としても同様の作用が得られる。あるいは、例えば図2において破線で示すように、AED2および救命支援装置3の搬出に伴って状態が変化する搬出検知機構5を設けることができる。搬出検知機構5の例としては、マグネットを箱体4に設置するとともに搬出検知部36を磁気センサで構成し、救命支援装置3がマグネットから引き離されて磁気センサが検出する磁力が所定値を下回ることをもって、搬出が検知される構成が考えられる。また救命支援装置3が箱体4から引き離されることにより、電気的に切断あるいは接続されるスイッチ機構を設ける構成としてもよい。
【0054】
図2から図4に破線で示すように、救命支援装置3(3A)と有線または無線通信が可能な通信部2cをAED2が備える構成としてもよい。この場合、AED2が起動されたことを示す信号を通信部2cから起動検知部37に送信し、起動検知部37が当該信号を受信したことをもって制御部32(32A)がAED2の起動を検知する構成とすることができる。この場合、AED2の起動検出に伴って救命支援装置3(3A)において実行される処理を確実なものとすることができる。
【0055】
またセンサ部31が取得した血流に係る情報を、出力部34と通信部2cを介してAED2に対して送信する構成としてもよい。この場合、当該情報をAED2の動作に反映させるシステムを構成することができる。
【0056】
出力部34より出力される情報は、判定部33により判定されたAED2使用の要否に係る情報や、センサ部31により取得された血流に係る情報に限られない。例えば、AED2の使用が必要ないと判定された場合に、医療従事者の到着までに必要な処置を案内する音声を出力したり、患者10の容態を把握するために必要な質問を出力して簡易問診を行なわせる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1A:救命支援システム、2:自動体外式除細動器(AED)、3、3A:救命支援装置、4:箱体、31:センサ部、32、32A:制御部、33:判定部、34:出力部、36:搬出検知部、37:起動検知部
図1
図2
図3
図4