特許第6084477号(P6084477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エフコンサルタントの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084477
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いた成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/06 20060101AFI20170213BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170213BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   C08G18/06
   C08L75/04
   C08K5/13
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-22823(P2013-22823)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-152239(P2014-152239A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】天野 良太郎
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−217678(JP,A)
【文献】 特開2009−079115(JP,A)
【文献】 特開2009−286816(JP,A)
【文献】 特開2006−247233(JP,A)
【文献】 特開2006−063314(JP,A)
【文献】 特表2010−512986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00−18/87
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機潜熱蓄熱材、
(b)ヒンダードフェノール基を有する化合物、
(c−1)ポリオール化合物、
(c−2)イソシアネート化合物、
を含み、
(a)有機潜熱蓄熱材が、炭素数8以上36以下の脂肪族炭化水素、炭素数8以上36以下の長鎖アルコール、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上であることを特徴とする蓄熱成形体用樹脂組成物。
【請求項2】
(b)成分が、分子中に1つのヒンダードフェノール基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱成形体用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄熱成形体用樹脂組成物から形成された蓄熱成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱性、耐熱性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱エネルギーを蓄える技術、即ち蓄熱技術が、昨今のエネルギー問題を解決する技術の一つとして着目されている。
蓄熱技術は、太陽熱、地熱等の自然エネルギーや、冷暖房器具からの余熱を有効利用する技術で、例えば、住宅においては、安価な夜間電力を使用して、熱を蓄え、多目的な熱源として利用し、日中の電力消費を抑える技術として利用されている。
【0003】
このような蓄熱技術に用いられる蓄熱材としては、顕熱蓄熱材、潜熱蓄熱材が挙げられ、特に、物質が固体から液体に相変化する時に熱を蓄え(蓄熱)、液体から固体に相変化する時に熱を放出(放熱)するという性質を利用した有機潜熱蓄熱材が広く採用されている。
【0004】
しかしながら有機潜熱蓄熱材は、蓄熱・放熱による相変化時の状態変化を繰り返し、また熱そのものによって、劣化する場合がある。また、有機潜熱蓄熱材を含む蓄熱体は、熱によって変質するという場合もある。
【0005】
このような問題に対し、例えば、特許文献1では、難燃剤を導入することによって、耐熱性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−69293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、難燃剤として金属水酸化物が用いられており、このような化合物を用いた場合、耐熱性は確保できるものの、蓄熱性能が低下してしまい、耐熱性と蓄熱性の両方の性能を両立することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、有機潜熱蓄熱材、ポリオール化合物、イソシアネート化合物を有する樹脂組成物に、ヒンダードフェノール基を有する化合物を含有することによって、優れた蓄熱性を維持しつつ、優れた耐熱性を発現できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.(a)有機潜熱蓄熱材、
(b)ヒンダードフェノール基を有する化合物、
(c−1)ポリオール化合物、
(c−2)イソシアネート化合物、
を含み、
(a)有機潜熱蓄熱材が、炭素数8以上36以下の脂肪族炭化水素、炭素数8以上36以下の長鎖アルコール、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種以上であることを特徴とする蓄熱成形体用樹脂組成物。
2.(b)成分が、分子中に1つのヒンダードフェノール基を有する化合物であることを特徴とする1.に記載の蓄熱成形体用樹脂組成物。
3.1.または2.に記載の蓄熱成形体用樹脂組成物から形成された蓄熱成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、蓄熱性に優れるとともに、耐熱性にも優れることを特徴とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、有機潜熱蓄熱材(以下、「(a)成分」ともいう。)、ヒンダードフェノール基を有する化合物(以下、「(b)成分」ともいう。)、ポリオール化合物(以下、「(c−1)成分」ともいう。)、イソシアネート化合物(以下、「(c−2)成分」ともいう。)を含むことを特徴とするものである。
本発明の樹脂組成物は、(b)成分を含有することによって、過剰な温度上昇等により、有機潜熱蓄熱材((a)成分)が劣化し蓄熱性能が損なわれたり、樹脂組成物から形成される成形体が変質する等の問題を防ぐことができる。
(b)成分のようなヒンダードフェノール基を有する化合物は、通常、酸化防止効果を有する添加剤として用いることが多い。本発明では、このような(b)成分を、有機潜熱蓄熱材((a)成分)を含む樹脂組成物に混合することにより、過剰な温度上昇等による蓄熱性能の低下、成形体の変質等を防ぐことができ、耐熱性にも優れるという予期せぬ効果が得られたものである。
【0013】
<(b)成分>
(b)成分は、化学式(1)((1a)または(1b))のような化学構造を有するヒンダードフェノール基を有する化合物である。
【0014】
(化学式(1))
【0015】
(b)成分としては、例えば、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸3−エチルヘキシル、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸メチル、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ安息香酸エチル、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(2−メチルプロピル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−オクチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4−エチルフェノール、3−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、オクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロ肉桂酸、2,4−ビス(ラウリルチオメチル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、N,N’−(1,3−プロパンジイル)ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(6−シクロヘキシル−p−クレゾール)、2,2’−メチレンビス[6−(1−メチルシクロヘキシル)−p−クレゾール]、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸](2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ビス(2,2−ジメチル−2,1−エタンジイル)、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’−チオジエチルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、6,6’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[[4−(1,1−ジメチルエチル)−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]エチル]ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明では特に、分子中にヒンダードフェノール基を1つ有する化合物を用いることが好ましい。
【0016】
また、(b)成分に加えて、化学式(2)のような化学構造を有するヒンダードアミン基を有する化合物を用いることもできる。
【0017】
(化学式(2))
【0018】
ヒンダードアミン基を有する化合物としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−プロポキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−4−エトキシピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−4−プロポキシピペリジン、ビス(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、1−オキシル−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンアセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンプロパノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンブチレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンペンタノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンヘプタノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンオクタノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンノナノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンデカノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンウンデカノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンドデカノエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)プロパンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブタンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ペンタンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘプタンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)オクタンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ノナンジオエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデカンジオエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−エトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−プロポキシピペリジン等が挙げられる。
【0019】
本発明では、(b)成分として、少なくともヒンダードフェノール基を有する化合物を含むことが好ましく、特に分子中にヒンダードフェノール基を1つ有する化合物を用いることが好ましい。
【0020】
<(a)成分>
(a)成分としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、ポリエーテル合物、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8以上36以下の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、n−デカン(融点−30℃)、n−ウンデカン(融点−25℃)、n−ドデカン(融点−8℃)、n−トリデカン(融点−5℃)、ペンタデカン(融点6℃)、n−テトラデカン(融点8℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、エイコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0022】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8以上36以下の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0023】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)、オクタデカン酸(融点70℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0024】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0025】
ポリエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジアクリレート、エチルエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0027】
本発明では(a)成分として、特に、炭素数8以上36以下の脂肪族炭化水素、炭素数8以上36以下の長鎖アルコール、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8以上36以下の脂肪族炭化水素、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。
中でも、炭素数8以上36以下の長鎖脂肪酸エステル、好ましくは、炭素数15以上22以下の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、このような長鎖脂肪酸エステルは、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0028】
<(c−1)成分>
本発明で用いるポリオール化合物((c−1)成分)は、後述するイソシアネート化合物((c−2)成分)と反応させることにより成形物(以下、「(c)成分」ともいう。)を形成し、(a)成分、(b)成分を担持・保持する成分である。
本発明の樹脂組成物は、(c−1)成分と(c−2)成分とが反応して、適度な3次元架橋構造を形成し、該架橋構造内に多量の(a)成分、(b)成分を担持・保持可能な成形体を得ることができる。さらに得られた成形体は柔軟性に優れ、(a)成分の漏れを抑制することが可能である。
【0029】
(c−1)成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンエチレンポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール、セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類等が挙げられる。
本発明では、特に、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましく、さらには、グリセリンを開始剤とするポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。
【0030】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0031】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、1,4−テトラメチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、トリメチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、メタキシレングリコール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、シュークロースなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0032】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0034】
本発明では、ポリエステルポリオールとして、特に、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物が好ましく、例えば、多価アルコールとして、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等、多価カルボン酸として、アジピン酸等を用いることが好ましい。
ポリエステルポリオールの製造方法は、常法により行うことができ、必要に応じ、公知の硬化剤、硬化触媒等を用いてもよい。
【0035】
アクリルポリオールとしては、例えば、ヒドロキシル基を有するアクリル単量体を単独重合または共重合させる、または共重合可能な他の単量体を共重合させることによって得ることができる。
【0036】
ヒドロキシル基を有するアクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル類;
上記(メタ)アクリル酸エステル類とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類とのモノエーテル類;
(メタ)アクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;
上記(メタ)アクリル酸エステル類と、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られる付加物;
等が挙げられ、これらを単独重合または共重合することにより得ることができる。
【0037】
また、共重合可能な他の単量体としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有単量体;
【0038】
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
【0039】
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のエポキシ基含有単量体;
【0040】
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等のアミド基含有単量体;
【0041】
(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有単量体;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有単量体;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有単量体;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有単量体;
ビニルオキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体
【0042】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0043】
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;
スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー等のその他の単量体;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
重合方法としては、特に限定されず、公知の塊状重合、懸濁重合、溶液重合、分散重合、乳化重合、酸化還元重合等を用いればよく、必要に応じ、開始剤、連鎖移動剤等またはその他の添加剤等を加えてもよい。例えば、上記のモノマー成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0046】
環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0047】
なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0048】
ポリオレフィンポリオールとしては、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールであって、数平均分子量が500以上のものを用いることができる。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい
【0049】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のポリアルキレングリコールの他、多価アミンないし多価アルコールを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた共重合体等が挙げられる。
【0050】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0051】
多価アルコールとしては、上述したもの等が挙げられるが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、シュークロースなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が好適に用いられる。
【0052】
セルロース及び/またはその誘導体としては、セルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類、エチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類等が挙げられる。
【0053】
セルロース及び/またはその誘導体は、ヒドロキシル基を有するものであるが、ヒドロキシル基の一部をアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等により、置換されたものが好ましい。
具体的には、置換度が、1.8以上2.8以下、さらには2.2以上2.6以下であることが好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成するグリコースユニット中に存在する3つのヒドロキシル基が、アルコキシル基等で置換された割合を意味し、100%置換された場合で置換度は3となる。
置換度をこのような範囲で制御することにより、後述する(a)成分との相互作用を向上させることができ、多孔体内に、(a)成分を長期に亘り保持することができる。
置換度が、1.8より小さい場合は、(a)成分との相互作用が低下する場合があり、(a)成分を多孔体内に、十分保持できない場合がある。また、2.8より大きい場合は、セルロース中のヒドロキシル基が減少し、十分な強度を有する3次元架橋構造が得られない場合がある。
【0054】
<イソシアネート化合物((c−2)成分)>
本発明で用いる(c−2)成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等、及び、これらをアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及び、それらと共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。
【0055】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネート、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト(XDI)、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0059】
本発明では、特に、HMDI及びその誘導体化したもの等の脂肪族ジイソシアネート、MDI及びその誘導体化したもの等の芳香族ジイソシアネート等を用いることが好ましい。このようなイソシアネート化合物は、ポットライフ、硬化速度の調整等が簡便であり、好ましい。
【0060】
本発明の樹脂組成物における(a)成分の混合比率は、樹脂組成物全量に対し、50重量%以上、さらには60重量%以上、さらには65重量%以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、90重量%以下程度であればよい。
また、(c−1)成分と(c−2)成分の混合比率は、NCO/OHモル比率で0.5以上8.0以下、好ましくは0.7超7.0以下、さらに好ましくは0.8以上5.0以下の範囲で設定すればよい。本発明の樹脂組成物は、(c−1)成分、(c−2)成分の混合比率を、NCO/OHモル比率で0.5以上8.0以下とすることで、(a)成分の含有率が高くても、(a)成分の保持力、成形性に優れ、優れた蓄熱性能及び持続性を有し、かつ、(a)成分の漏れも無く、柔軟性、加工性、施工性に優れる成形体を得ることができる。
さらに、(b)成分の混合比率は、樹脂組成物全量に対し、0.01重量%以上1.5重量%以下、さらには0.03重量%以上1.0重量%以下、さらには0.05重量%以上0.8重量%以下であることが好ましい。このような範囲であることにより、優れた蓄熱性能を維持するとともに、耐熱性に優れる成形体を得ることができる。
このように本発明樹脂組成物は、(a)成分を多く含んでいるにもかかわず、(b)成分を含有することで、過剰な温度上昇等により有機潜熱蓄熱材((a)成分)が劣化し蓄熱性能が損なわれることを防ぎ、樹脂組成物から形成される成形体が変質することを防ぐことができ、優れた蓄熱性、耐熱性を示すことができる。
【0061】
<有機処理された層状粘土鉱物(d)>
本発明の樹脂組成物は、さらに、有機処理された層状の粘土鉱物(以下、「(d)成分」ともいう。)を用いることが好ましい。(d)成分は、(a)成分と混合し用いるもので、(d)成分と(a)成分を混合することにより、(d)成分の層間に、(a)成分が入り込む。(d)成分は、有機処理されたものであるため、(a)成分が(d)成分の層間に入り込みやすく、また(a)成分が(d)成分の層間に保持されやすい構造となっている。
このような(d)成分と(a)成分を混合することにより、結果として、(a)成分の粘度を上昇させ、後述する(c)成分内に(a)成分を担持し、より保持し続けることができる。そのため、(a)成分が成形体外部へ漏れ出すのを防ぎ、蓄熱性に優れ、加工性、施工性に優れた成形体を得ることができる。
また、(d)成分は、(a)成分とほとんど反応することがなく、有機潜熱蓄熱材の融点やその他の各種物性に影響を与えない。そのため、(a)成分の蓄熱材としての性能を効率よく発揮することができ、相変化温度(融点)の設定が容易である。
【0062】
(d)成分としては、有機処理された層状粘土鉱物であれば特に限定されない。
層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0063】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)、ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)、エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)等が挙げられる。
【0064】
(d)成分の混合比は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上50重量部以下(より好ましくは1重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは3重量部以上15重量部以下)程度とすればよい。
【0065】
<親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤(e)>
本発明樹脂組成物は、さらに、親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤(以下、「(e)成分」ともいう。)を用いることが好ましい。
親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤((e)成分)を用いることで、(a)成分の保持力を高めるとともに、成形性をより優れたものとし、より優れた蓄熱性能及び持続性を有し、かつ、(a)成分の漏れも無く、柔軟性、加工性、施工性により優れる成形体を得ることができる。
【0066】
(e)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、
ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられ、特に、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0067】
本発明では特に(e)成分として、親水親油バランス(HLB値)が10以上(好ましくは10超20以下、より好ましくは11以上19以下、さらに好ましくは12以上18以下、最も好ましくは13以上17以下)の非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
このような(e)成分を含むことにより、(a)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分の分離を防ぐことができ、樹脂組成物から(a)成分が均一に分散した成形体を形成することができる。
【0068】
(e)成分の混合比は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上30重量部以下(さらに好ましくは0.1重量部以上20重量部以下)程度とすればよい。このような範囲であることにより、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分、(c−2)成分の分離をより防ぐことができ、(a)成分が均一に分散した成形体を得ることができる。
【0069】
また、(a)成分として炭素数8以上36以下の長鎖アルキル基を有する蓄熱材を用いた場合、(e)成分の構造中に、炭素数8以上36以下の長鎖アルキル基を有する非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。特に、(a)成分と(e)成分の長鎖アルキル基の炭素数が近似するもの、あるいは同様のものを選定することにより、本発明の効果を高めることができる。
【0070】
<熱伝導性物質(f)>
本発明樹脂組成物は、さらに、熱伝導性物質(以下、「(f)成分」ともいう。)を用いることが好ましい。(f)成分を混合することにより、樹脂組成物や成形体内の熱の移動をスムーズにし、蓄熱材の熱効率性を向上させ、より優れた蓄熱性能を得ることができる。また、蓄えた熱を外部へ熱移動しやすくなり、温熱、冷熱効果を早めることができる。
熱伝導性物質としては、例えば、銅、鉄、亜鉛、ベリリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、ジルコニウム、モブリデン、タングステン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の金属およびそれらの合金、あるいはこれらの金属を含む金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物等の金属化合物、また、鱗状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
(f)成分の熱伝導率としては、1W/(m・K)以上、さらには3W/(m・K)以上、さらには5W/(m・K)以上であることが好ましい。このような熱伝導率を有する(f)成分を混合することにより、より効率よく蓄熱材の熱効率性を向上させることができる。また(f)成分は、微粒子として用いることが好ましく、平均粒子径は、1〜100μm、さらには5〜50μmであることが好ましい。
【0072】
(f)成分の混合比は、(a)成分100重量部に対し、好ましくは5重量部以上200重量部以下(より好ましくは10重量部以上80重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上60重量部以下)程度とすればよい。
【0073】
本発明樹脂組成物は、上記成分の他に、相溶化剤、反応促進剤、難燃剤、顔料、骨材、粘性調整剤、可塑剤、緩衝剤、分散剤、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、防藻剤、湿潤剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、凍結防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維類、香料、化学物質吸着剤、光触媒、吸放湿性粉粒体等の添加剤を含有することもできる。
【0074】
本発明は、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分、(c−2)成分等を含む樹脂組成物であり、例えば、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(c−1)成分と(c−2)成分からなる成形物(以下、「(c)成分」ともいう。)中に(a)成分、(b)成分等が含有された成形体を得ることができる。
【0075】
本発明では、(a)成分、(b)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分、また必要によりその他の成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させて、成形体を形成することができる。
このような形成方法としては、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分、(c−2)成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させる方法、(a)成分、(b)成分、(c−1)成分(または(c−2)成分)を混合し、(c−2)成分(または(c−1)成分)を添加することにより反応させる方法等が挙げられる。
反応温度は、特に限定されないが、(a)成分の相変化温度以上とすることが好ましく、使用する(a)成分の種類によって異なるが、通常20℃〜80℃程度であればよい。また、反応時間は通常0.2〜5時間程度とすればよい。
また、反応を促進するため、上記反応促進剤や、熱、光等のエネルギーを与えることができる。
【0076】
また、(e)成分を含有する場合、(a)成分、(b)成分、(e)成分と、(c−1)成分、(c−2)成分を混合し、(a)成分をコロイド分散させ、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることが好ましい。具体的には、(a)成分、(b)成分、(e)成分、(c−1)成分、(c−2)成分を混合し、(c−1)成分と(c−2)成分を反応させる方法、(a)成分、(b)成分、(e)成分、(c−1)成分(または(c−2)成分)を混合し、(c−2)成分(または(c−1)成分)を添加することにより反応させる方法等が挙げられる。
このような方法では、(c−1)成分及び/または(c−2)成分中に(a)成分が、微細なコロイド状に分散した状態をつくりだし、そのような状態から(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(c)成分中に(a)成分が、微細に分散した成形体を製造することができる。
このような製造方法では、(a)成分の含有率をより高くすることができる。また、(a)成分が、微細に均一に分散した状態であるため、垂直に固定化した場合でも蓄熱材の偏りがなく、(a)成分の固液変化に伴う体積変化による成形体自体の形状変化を軽減することもできるため、好ましい。
【0077】
(e)成分を含有し、微細なコロイド状に分散した状態をつくりだす方法では、反応前の状態において、(a)成分が、粒子径10μm以上1000μm以下(好ましくは50μm以上900μm以下、さらに好ましくは100μm以上800μm以下)程度の大きさのコロイド状に分散した状態であることが好ましい。このような状態から(c−1)成分と(c−2)成分を反応させることにより、(a)成分が微細に分散した成形体を得ることができる。
【0078】
なお、粒子径は、光学顕微鏡(BHT−364M、オリンパス光学工業株式会社製)を用いて測定した値である。
【0079】
本発明の樹脂組成物は、上記方法により成形体を形成するもので、該成形体の形状は、シート状、棒状、針状、球状、角状、粉末状等、その形状は特に限定されない。
本発明では特にシート状として用いることが好ましく、柔軟性に優れるため湾曲させたとしても成形体が破断することなく、切断したとしても切断面から(a)成分が漏れ出すこともなく、また、釘打ち等によっても(a)成分が漏れ出すことがないため、様々な用途に使用しやすい。
例えば、シート状の成形体は、成形体の片面または両面に各種基材を、使用用途に合わせて積層することもできるし、また、シート成形時に後述する各種基材を予め積層し、成形体を得ることもできる。この際、成形体の形成方法としては、特に限定されず、押出し成形、型枠成形等、または各種基材にスプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り、コテ塗り、流し込み等の公知の方法で塗付することにより形成することができる。
【0080】
また、シート状の成形体の厚さは、特に限定されないが、通常1mm以上100mm以下程度とすればよい。
【0081】
本発明の樹脂組成物は、主として、住宅等の建築物の壁材、天井材、床材等の内・外装材の材料として好適に使用することができる。
さらに、本発明の樹脂組成物は、床暖房システム、冷暖房システム、車輌等の内装材、機械・機器等の工業製品、熱電変換システム、熱搬送媒体、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス、保温シート、結露防止シート、冷却シート、電気製品、OA機器、プラント、タンク、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具、日用雑貨等に用いる材料としても適用できる。
【0082】
本発明の樹脂組成物は、使用する用途に合わせて、潜熱蓄熱材を適宜設定することができる。例えば、建築物の内・外装材として使用する場合は、潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを使用すればよい。この他、床暖房に用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が25℃〜40℃付近のもの、衣類、寝具として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が25℃〜35℃、車輌等の内装材として用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が15℃〜30℃付近のものを、冷蔵庫に用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−10℃〜5℃付近のものを、冷凍庫に用いる場合は潜熱蓄熱材の融点が−30℃〜−10℃付近のものを、それぞれ使用すればよい。
【0083】
例えば、本発明の樹脂組成物から得られる成形体と断熱体を積層することにより、優れた蓄熱性・断熱性を示すため、建築物の壁材、天井材、床材等、冷蔵・冷凍庫、浴槽・浴室、クーラーボックス等に適用することにより、外部温度の変化に対し、空間内温度を最適な温度に保つことができ、省エネ化を図ることができる。
このような断熱体としては、例えば、ポリスチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体、発泡ゴム、グラスウール、ロックウール、発泡セラミック等、あるいはこれらの複合体等が挙げられる。また、市販の断熱体を使用してもよい。
断熱体の熱伝導率は、0.1W/(m・K)未満(より好ましくは0.08W/(m・K)以下、さらに好ましくは0.05W/(m・K)以下)であることが好ましい。
【0084】
また、熱伝導率が0.1W/(m・K)以上の熱伝導体を積層することもできる。熱伝導体としては、例えば、ガラス板、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の樹脂ボードや樹脂シート、銅、アルミニウム、鉄、真鍮、亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属板等、あるいは金属材料を含む樹脂ボードまたは樹脂シート等、スレート板、石膏ボード、ALC板、木毛セメント板、合板等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物から得られる成形体と熱伝導体を積層することにより、優れた蓄熱性・放熱性を示すため、建築物の壁材、天井材、床材等に適用することにより、成形体に蓄えられた冷熱や温熱を、空間内に効率よく伝えることができ、空間内温度を最適な温度に保つことができ、省エネ化を図ることができる。熱伝導体で発生しやすい、結露を防止する効果も得ることができる。
【0085】
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形体と、難燃材、準不燃材および不燃材等の防火材とを積層することにより、優れた蓄熱性に加え、防火性を付与することができ、防火性を必要とする部位(例えば、建築物の内装材等)にも適用することができる。
このような防火材としては、例えば、コンクリート板、ガラス板、金属板、木毛セメント板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等の平板、金属フィルム、グラスファイバー等のフィルム成形体、発泡性防火材料、難燃材含有材料等が挙げられる。
【0086】
また、本発明の樹脂組成物から得られる成形体と、発熱体を積層することにより、床暖房システム、融雪・滑氷屋根材、浴槽・浴室、保温シート等に適用することができる。
床暖房システムとして適用する場合、発熱体として、例えば、面状発熱体や、温水を利用した配管等を利用することができ、これらの発熱体と本発明の成形体、床材を組み合わせることができる。このような床暖房システムは、公知の方法で、積層・設置することができるが、例えば、発熱体、面状発熱体、床材を積層した床暖房システムは、厚みを抑えることができ、かつ、厚みを抑えたとしても、優れた床暖房効果と省エネ効果を発揮することができ、特にリフォーム等に好適に用いることができる。
【0087】
また、本発明の成形体は、最適な温度を維持しつづけることができるため、衣類、カーテン、じゅうたん、寝具等に用いられる素材と組み合わせることにより、快適な環境を得ることができる。さらに、南極やシベリア地方等の極寒地域や、火事場等の高温環境下においても、外部温度の影響を抑えることができるため、防寒服や消防服等にも有効である。
このような素材としては、木綿、麻、羊毛、シルク等の天然繊維、ナイロン、テトロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ビニロン、レーヨン、アラミド、アゾール等の有機繊維、ガラス、アスベスト等の無機繊維、またはこれらを難燃処理・撥水処理した繊維等が挙げられる。また、金属、樹脂シートやゴム等でもよく、これらのうち、1種または2種以上を複合して用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下に実験例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実験例に限定されない。
【0089】
(実験例1)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、有機潜熱蓄熱材B、ヒンダードフェノール基を有する化合物A、ポリオールB、反応促進剤を、温度50℃で攪拌羽根により1000rpmで混合攪拌した。さらにポリイソシアネートBを加え攪拌した後、250mm×170mm×5mmの型枠中に流し込み、50℃で30分硬化させ、脱型して試験体を得た。
【0090】
(成形性評価試験)
試験体を得る際の成形性について評価した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:異常はみられず、優れた試験体が得られた。
○:ほとんど異常はみられず、良好な試験体が得られた。
×:硬化不良が見られた。
【0091】
得られた試験体を用い、次の試験を行った。
【0092】
(蓄熱材漏れ評価試験1)
得られた試験体を、50℃の雰囲気下で6時間、続いて10℃の雰囲気下で6時間放置する試験を30回繰り返し行った後、試験体からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
【0093】
(蓄熱材漏れ評価試験2)
得られた試験体を、30℃または38℃の雰囲気下で360時間放置した後、試験体からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
(なお、蓄熱材漏れ評価試験2では、実験例1〜11、13、15は30℃、実験例12、14は38℃の雰囲気下で放置した。)
【0094】
(蓄熱物性試験)
DSC220CU(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、示差走査熱量測定(DSC測定)により、得られた試験体の相変化温度(℃)および潜熱量(kJ/kg)を測定した。測定条件としては、アルミニウムをリファレンスとし、昇温温度10℃/min、−20〜60℃の温度領域で測定した。結果は表3に示す。
【0095】
(加工性試験)
50℃の雰囲気下で72時間放置した試験体をカッターナイフで切断し、切断面からの蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
【0096】
(施工性試験)
50℃の雰囲気下で72時間放置した試験体に釘打ちし、釘打ちによる蓄熱材の漏れを観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
◎:漏れがみられなかった
○:漏れがほとんどみられなかった
×:漏れがみられた
【0097】
(柔軟性試験)
50℃の雰囲気下で72時間放置した試験体を、180°湾曲させ、該湾曲面を観察した。評価は次の通りである。結果は表3に示す。
5:異常がみられず、蓄熱材の漏れもみられなかった
4:異常がほとんどみられず、蓄熱材の漏れもみられなかった
3:湾曲面にて一部亀裂がみられたが、蓄熱材の漏れはみられなかった
2:湾曲面にて亀裂がみられ、蓄熱材の漏れもみられた
1:湾曲できなかった、もしくは、試験体が割れてしまった
【0098】
(耐熱性試験)
得られた試験体を、100℃で120時間放置した後、試験体からの蓄熱材の漏れ、試験体の変質度を観察した。評価は、試験体の変質・蓄熱材の漏れがみられなかったものを「10」、試験体の変質や蓄熱材の漏れがみられたものを「1」として、10段階評価で行った。結果は表3に示す。
【0099】
(実験例2〜15)
表2に示す配合量以外は、実験例1と同様の方法にて試験体を得、実験例1と同様の試験を行った。結果は表3に示す。
【0100】
実験例1〜5、9〜15は本発明規定の樹脂組成物であり、耐熱性能において優れる結果を示した。これに対し、リン系酸化防止剤を用いた実験例6、イオウ系酸化防止剤を用いた実験例7、ヒンダードフェノール基を有する化合物を用いていない実験例8は、耐熱性能に劣る結果となった。
また、実験例9〜10に比べ、実験例1のほうが、良好な結果を示した。
また、実験例1〜3は分子中に1つのヒンダードフェノール基を有する化合物を用いており、分子中に2以上のヒンダードフェノール基を有する化合物を用いた実験例4〜5に比べ、良好な結果を示した。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】