(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、スラリーには活物質等が含まれており、活物質等は混合され分散されているが、スラリーの処方の仕方や組成等により特性が異なり、長時間にわたって分散された状態が続くスラリーもあれば、短時間で固形成分が沈殿したり凝集したりする不安定なスラリーもある。
【0005】
このようなスラリーを基材に塗布するためのダイには、前記特許文献1に開示されているように、幅方向に長いマニホールド(液溜め部)と、このマニホールドに繋がるスリットとが形成されており、スラリーは、マニホールドに供給され、マニホールドからスリットを通じて基材に対して吐出される。スリットは、基材の幅方向に沿って均一な量でスラリーが吐出されるように均一な隙間寸法で形成されているが、前記のような不安定なスラリーの場合、吐出作業を連続して行っていると、やがて、マニホールドの一部でスラリーの固形成分の沈殿や凝集が発生し、固形成分が滞留することがある。
【0006】
スラリーは、ダイの中央部に形成されている流入口からマニホールドへ供給され、マニホールドの全体に広がるが、その流入口に近い中央部に比べて、マニホールドの両端部ではスラリーが流れ難くなる。このため、吐出作業を連続して行っていると、マニホールドの両端部において、スラリーの固形成分の沈殿や凝集が発生しやすく、固形成分が滞留し、スリットからのスラリーの吐出量(流量)が中央部と両端部とで不均一になることがある。
【0007】
すると、スラリーの吐出作業の初期では、
図5(A)に示すように、基材90上に幅方向に均一な厚さのスラリー膜91を塗布することができるが、
図5(B)に示すように、やがて(数時間後)、両端部92,93でスラリーの吐出量が減少して基材90上のスラリー膜91が薄くなり、さらに数時間後では、
図5(C)に示すように、中央部94と両端部92,93とでスラリー層91の厚さが大きく異なってしまう。
前記のとおり、基材90上に形成される活物質を含む層の厚さは、電池の充放電量に直接影響を与えることから、
図5(C)に示すような状態で電気用極板が製造されると、その極板を用いた電池の品質を低下させてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、スラリーの吐出作業を長時間継続して行っていても、基材上に形成されるスラリー膜の厚さを均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池用極板の製造装置は、幅方向に長くスラリーを溜める空間からなるマニホールドと、このマニホールドと繋がりスラリーを基材に対して吐出するスリットと
、幅方向の中央部に設けられ前記マニホールドと繋がる流入部とが形成されたダイと、前記ダイの幅方向の中央部に設けられている
前記流入部から前記マニホールドにスラリーを供給する供給手段と
、前記基材上へ塗布したスラリーの膜厚を測定するセンサとを備え、前記ダイには、前記マニホールドのスラリーを前記スリット以外から当該ダイの外部へ流出させる流出部が、
前記流入部を間に挟む幅方向の両端部と、この両端部の間の途中部に設けられ
、前記センサの計測結果に応じて前記流出部を通じて前記マニホールドから流出させるスラリーの流量を調整することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ダイには、マニホールドのスラリーをスリット以外からダイの外部へ流出させる流出部が、幅方向の両端部に設けられていることから、マニホールドの幅方向の両端部においてスラリーが流れ難くなるのを防ぐことができ、このため、両端部でスラリーの固形成分が沈殿や凝集しにくくなり、従来のように、スリットの両端部において、スラリーの吐出量が減少してしまうのを抑えることができる。さらに、両端部の間の途中部にも、流出部が設けられていることで、両端部のみでスラリーが流れ易くなるのを抑えている。以上より、スラリーの吐出作業を長時間継続して行っていても、基材上に形成されるスラリー膜の厚さを均一にすることが可能となる。
【0011】
また、前記流出部には、
前記センサの計測結果に応じて前記マニホールドから流出させるスラリーの排出調整を行う調整手段が設けられているのが好ましい。
この場合、流出部を通じてマニホールドから流出させるスラリーの排出調整を行うことにより、スリットから吐出させるスラリーの量が変更される。このため、スラリーをスリットから幅方向の全長にわたって均等に吐出させるためのより厳密な制御が可能となる。
【0012】
また、前記流出部は、前記マニホールドの底部と繋がっており、当該マニホールドの底部のスラリーを流出させるのが好ましい。
スラリーの固形成分は、マニホールドの底部に沈殿し凝集しようとするため、流出部が、マニホールドの底部に繋がるようにして形成されていることで、沈殿し凝集しようとする固形成分を外部へ排出しやすくなる。
【0013】
また、本発明は、ダイに形成された幅方向に長いマニホールド
の当該幅方向の中央に設けられた流入部から供給され当該マニホールドに溜められているスラリーを、このマニホールドと繋がるスリットから吐出して、基材へ塗布して行う電池用極板の製造方法であって、前記マニホールドのスラリーを前記スリット以外の流出部から、当該ダイの外部へ流出させるステップを含み、前記流出部からのスラリーの流出を、
前記流入部を間に挟む前記マニホールドの幅方向の両端部と、この両端部の間の途中部とから行う
と共に、前記スリットから吐出させ前記基材上へ塗布したスラリーの膜厚をセンサによって測定し、当該測定の結果に応じて前記流出部を通じて前記マニホールドから流出させるスラリーの流量を調整することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スリット以外の流出部からのスラリーの流出を、マニホールドの幅方向の両端部と、この両端部の間の途中部とから行うことで、マニホールドの幅方向の両端部においてスラリーが流れ難くなるのを防ぐことができ、このため、両端部でスラリーの固形成分が沈殿や凝集しにくくなり、従来のように、スリットの両端部において、スラリーの吐出量が減少してしまうのを抑えることができる。さらに、両端部の間の途中部からも、スラリーを流出させることで、両端部のみでスラリーが流れ易くなるのを抑えている。以上より、スラリーの吐出作業を長時間継続して行っていても、基材上に形成されるスラリー膜の厚さを均一にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スラリーの吐出作業を長時間継続して行っていても、基材上に形成されるスラリー膜の厚さを均一にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電池用極板の製造装置の概略構成を示す説明図である。この製造装置1は、ロールツーロールで送られる金属箔からなる基材2に、活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含むスラリー3を塗布するための装置である。この製造装置によれば、塗布したスラリー3を乾燥させることで基材2上に活物質を含む層が形成され、この基材2が所定形状に切断され電池用極板となる。基材2上に形成される活物質を含む層の厚さは、電池の充放電量に直接影響を与えることから、基材2に塗布するスラリー3の膜厚管理は非常に重要であり、この製造装置1によれば、以下の実施形態において説明するように、スラリー3は、基材2の送り方向及び幅方向に沿って均一な厚さ(均一な塗膜量)で塗布される。なお、基材2の幅方向は、基材2の送り方向に直交する方向である。
【0018】
製造装置1は、基材2の幅方向に沿って長く構成されたダイ10と、このダイ10にスラリー3を供給する供給手段20とを備えている。ダイ10において、その長手方向を幅方向という。この製造装置1では、ダイ10に対向するローラ5が設置されており、ダイ10の幅方向とローラ5の回転中心線の方向とは平行である。基材2は、このローラ5に案内され、基材2とダイ10(後述のスリット12の先端)との間隔(隙間)が一定に保たれ、この状態でスラリー3の塗布が行われる。
【0019】
本実施形態のダイ10は、先細り形状である第一リップ13aを有する第一分割体13と、先細り形状である第二リップ14aを有する第二分割体14とを、これらの間にシム板15を挟んで、組み合わせた構成からなる。
図2は、
図1のa矢視の断面図である。
図3の(A)は、
図1のb矢視の断面図であり、シム板15を、
図3(B)に示している。ダイ10は、その内部に、幅方向に長い空間からなるマニホールド11と、このマニホールド11と繋がるスリット12とが形成されている。供給手段20により供給されたスラリー3は、先ずマニホールド11に溜められ、次に、スリット12から吐出される。
【0020】
スリット12は、マニホールド11と同様に幅方向に長く形成されており、スリット12の幅方向寸法は、後述するシム板15の内寸W(
図3(B)参照)によって決定され、スリット12の幅方向寸法と略同一の幅方向寸法のスラリー3を、基材2上に塗布することができる。スリット12の隙間寸法(高さ寸法)は、例えば0.4〜1.5mmである。本実施形態では、スリット12の隙間方向が上下方向であり、幅方向が水平方向となる姿勢でダイ10は設置されている。つまり、マニホールド11とスリット12とが水平方向に並んで配置される姿勢でダイ10は設置されている。したがって、マニホールド11に溜められているスラリー3をスリット12を通じて基材2へと流す方向は水平方向となる。
なお、シム板15の厚さを変更することにより、マニホールド11内部の圧力(塗工圧力)を調整することができ、この調整によって、様々な特性を有するスラリー3で均一な膜厚の塗工を行うことが可能となる。
【0021】
ダイ10の幅方向の中央部には、流入部16が設けられており、この流入部16は、ダイ10の外部からマニホールド11へ繋がる貫通孔(流入口)からなる。供給手段20は、この流入部16に一端部が接続されている流入パイプ21(
図2参照)と、
図1に示すように、スラリー3を貯留しているタンク22と、このタンク22内のスラリー3を、パイプ21を通じてダイ10へ供給するためのポンプ23とを有している。以上より、供給手段20は、マニホールド11に流入部16からスラリー3を供給することができる。なお、本実施形態では、
図2に示すように、流入部16は、マニホールド11の底部17と繋がっており、この底部17からスラリー3を流入させる構成としている。
【0022】
そして、マニホールド11は、供給手段20から供給されたスラリー3を溜めることができ、マニホールド11に溜められているスラリー3を、スリット12は、ロールツーロールで送られる基材2に対して吐出し、この基材2に対してスラリー3を連続的に塗布することができる。スリット12の隙間寸法はその幅方向に一定であり、基材2上に塗布されるスラリー3の厚さは幅方向に一定となる。
【0023】
また、ダイ10には圧力センサ(図示せず)が設けられており、この圧力センサは、マニホールド11のスラリー3の内圧を計測する。そして、この計測結果に基づいて供給手段20によるスラリー3の供給が制御され、マニホールド11のスラリー3の内圧を一定に保つ。マニホールド11で内圧が一定とされるスラリー3は、スリット12から幅方向全長にわたって均等の量で吐出され、また、前記圧力センサの計測結果に基づいて、スリット12から吐出されるスラリー3の量が変動しないように制御され、基材2上に塗布されるスラリー3の送り方向の厚さを一定とする。また、図示しないが、パイプ21の途中にはスラリー3用のフィルタが設けられている。
【0024】
そして、ダイ10には、マニホールド11のスラリー3をスリット12以外からダイ10の外部へ流出させる流出部31,32,33,34が設けられている。本実施形態では、マニホールド11の幅方向の両端部11a,11bに、第1と第2の流出部31,32が設けられ、この両端部11a,11bの間の途中部11c,11dに、第3と第4の流出部33,34が設けられている。
流出部31,32,33,34は、マニホールド11とダイ10の外部とを繋ぐ貫通孔と、貫通孔に接続されている流出パイプ51,52,53,54とからなる。これら流出部31,32,33,34から流出させたスラリー3は、タンク22へ戻される。なお、タンク22へ戻される途中に、図示しないがフィルタが設けられているのが好ましい。
【0025】
このように、ダイ10には、マニホールド11のスラリー3をスリット12以外からダイ10の外部へ流出させる流出部31,32が、幅方向の両端部11a,11bに設けられていることから、これら両端部11a,11bにおいてスラリー3が流れ難くなる(滞留する)のを防ぐことができる。このため、両端部11a,11bでスラリー3の固形成分が沈殿や凝集しにくくなり、従来のように、ダイ10の両端部において、スラリー3の吐出量が減少してしまうのを抑えることができる。
【0026】
ここで、マニホールド11の両端部11a,11bにおいて、スラリー3の固形成分が沈殿や凝集し易くなる理由は、これら両端部11a,11bには、マニホールド11の幅方向端面を構成する壁10a,10bが存在していることから(
図2参照)、マニホールド11の中央部から供給され幅方向両側へ広がるスラリー3は、両端部11a,11bにおいて流速が低下しやすく、スラリー3が滞留しやすいためである。特に、スラリー3は粘度(粘性)が高いため、両端部11a,11bにおいて滞留しやすく固形成分が沈殿や凝集しやすい。
なお、本実施形態の製造装置1のダイ10から吐出されるスラリー3として、粘度が数千から数万cP(剪断速度=1の場合)のものを採用することができる。
【0027】
また、流出部31,32,33,34それぞれは、マニホールド11の底部17と繋がっており、マニホールド11の底部17のスラリー3を主に流出させる構成としている。スラリー3の固形成分は、マニホールド11の底部17に沈殿し凝集しようとするため、流出部31,32,33,34を底部17に繋がるようにして形成することで、沈殿し凝集しようとする固形成分を、ダイ10の外部へ排出しやすくしている。
【0028】
さらに、本実施形態では、この流出部31,32,33,34それぞれには、マニホールド11から流出させるスラリー3の排出調整を行う調整手段が設けられている。具体的に説明すると、
図2に示すように、流出パイプ51,52,53,54それぞれに、前記調整手段としてバルブ61,62,63,64が接続されている。これらバルブ61,62,63,64それぞれは、流出部31,32,33,34それぞれから流出するスラリー3の流量を調整する機能を有している。なお、バルブ61,62,63,64それぞれは、流出部31,32,33,34それぞれから流出するスラリー3の圧力を調整してもよい。または、流出部31,32,33,34からタンク22へスラリー3を戻す配管の途中に、スラリー3の流量管理(流出量調整)を行う機器(例えば、ポンプ)が設けられていてもよく、この場合、この機器が、マニホールド11から流出させるスラリー3の排出調整を行う調整手段として機能する。
【0029】
また、この製造装置1は、基材2上へ塗布したスラリー3の膜厚を測定するセンサ36を備えている(
図1参照)。センサ36は、幅方向に沿って複数設けられていてもよい。センサ36は、非接触式であり、基材2上のスラリー3の膜厚を、幅方向に沿って複数カ所、又は、幅方向の全長にわたって計測可能であり、計測結果は、製造装置1が備えている制御装置(コンピュータ)37に出力される。制御装置37はセンサ36からの計測結果に基づくフィードバック制御を行い、バルブ61,62,63,64の開度を調整する。つまり、スラリー3の膜厚の計測結果に応じて、制御装置37は、バルブ61,62,63,64それぞれに対して制御信号を出力し、バルブ61,62,63,64それぞれの開度を調整する。これにより、スラリー3の膜厚を幅方向に一定に保つことが可能となる。
なお、センサ36の代わりに制御装置37が有するタイマ機能により、バルブ61,62,63,64の開度を制御してもよい。つまり、塗布開始からある時間が経過するとスラリー3の固形成分の沈殿や凝集が問題となることから、この時間が経過する前の所定時間をタイマで計測し、その所定時間が経過すると、制御装置37はバルブ61,62,63,64の開度を大きくする制御を行ってもよい。
【0030】
さらに、本実施形態では、マニホールド11の両端部11a,11bの間の途中部11c,11dにも、流出部33,34が設けられており、両端部11a,11bのみでスラリー3が流れ易くなるのを抑えている。そして、この途中部11c,11dに接続されているバルブ63,64の開度を調整することで、スラリー3の吐出作業を長時間継続して行っていても、基材2上に形成されるスラリー3の膜厚を均一にすることが可能となる。
【0031】
例えば、このダイ10を用いた塗布作業を開始してからある時間までは、マニホールド11では、両端部11a,11bを含めて、スラリー3の固形成分の沈殿や凝集は発生しにくく、スリット12の全幅において均一な吐出量を得ることができる。このため、バルブ61,62,63,64の開度は、すべて同じ程度(開度がゼロであってもよい)とされる。
しかし、ある時間を超え、両端部11a,11bにおいて、スラリー3の固形成分の沈殿や凝集が多く発生しそうになると、両端部11a,11bに対応するバルブ61,62の開度を大きく変更する。これにより、両端部11a,11bにおいてスラリー3が流れやすくなり、固形成分の沈殿や凝集が発生し難く、スリット12の両端部において、スラリー3の吐出量が減少してしまうのを抑えることができる。
そして、両側のバルブ61,62の開度を大きく変更した際、スリット12の幅方向両端部では、スラリー3の吐出量が変化する傾向にあり、これが原因となって、その幅方向の中央側に隣りの途中部11c,11dでも、スラリー3の吐出量が一時的に変化する現象が起こる。
【0032】
そこで、両端部11a,11bにおいて、固形成分の沈殿や凝集が多く発生しそうになると、両端部11a,11bに対応するバルブ61,62の開度を(徐々に)大きく変更すると共に、途中部11c,11dに対応するバルブ63,64の開度も(徐々に)大きく変更する制御が行われる。なお、開度変更中のバルブ63,64の開度を、開度変更中のバルブ61,62の開度よりも小さくし、途中に設けられている流出部33,34からのスラリー3の流出量を、両端の流出部31,32からのスラリー3の流出量よりも少なくしている。さらに、この際、マニホールド11のスラリー3の内圧も一定となるように制御される。
以上の制御によれば、流出部31,32,33,34を通じてマニホールド11から流出させるスラリー3の流量を調整することにより、スリット12から吐出させるスラリー3の量が変更される。このため、スラリー3をスリット12から幅方向の全長にわたって均等に吐出させるためのより厳密な制御が可能となり、基材2上に形成されるスラリー3の膜厚を、幅方向及び送り方向について、均一にすることが可能となる。
【0033】
前記実施形態では、塗布作業開始からある時間経過後に行われる、マニホールド11のスラリー3をスリット12以外の流出部31,32,33,34から吐出させるステップは、製造装置1によってスラリー3の塗布作業(塗布ステップ)が行われている時間帯に並行に実行され、スリット12からスラリー3を吐出させた基材2は、電池用極板の対象としている。
これに対して、他の実施形態として塗布作業(塗布ステップ)の開始からある時間について経過後、所定時間についてのみ、流出部31,32,33,34からスラリー3を吐出させるステップが行われ、この所定時間について、スリット12からスラリー3が吐出された基材2については、製品(電池用極板)の対象外としてもよい。
【0034】
以上前記各実施形態に係る製造装置1によって行われる電池用極板の製造方法は、マニホールド11に溜められているスラリー3をスリット12以外の流出部31,32,33,34から、ダイ10の外部へ流出させるステップを含んでおり、このステップでは、流出部31,32,33,34からのスラリー3の流出を、マニホールド11の幅方向の両端部11a,11bと、この両端部11a,11bの間の途中部11c,11dとから行う。
これにより、前記のとおり、時間経過と共に、マニホールド11の幅方向の両端部11a,11bにおいてスラリー3の流れが悪くなるのを防ぎ、両端部11a,11bでスラリー3の固形成分が沈殿や凝集しにくくし、従来のように、両端部11a,11bにおいて、スラリー3の吐出量が減少してしまうのを抑えることができる。さらに、両端部11a,11bの間の途中部11c,11dからも、スラリー3を流出させることから、両端部11a,11bのみでスラリー3が流れ易くなるのを抑えることができる。
以上より、スラリー3の吐出作業を長時間継続して行っていても、基材2上に形成されるスラリー3の膜厚さを均一にすることが可能となる。
【0035】
また、本発明の製造装置1は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、前記実施形態(
図2参照)では、流入部16は、マニホールド11の底部17と繋がっており、この底部17からスラリー3を流入させる構成としているが、流入部16は、マニホールド11の側部(高さ方向の中間部)と繋がった構成であってもよい。
また、前記実施形態では、マニホールド11のスラリー3をスリット12を通じて基材2へと流す方向が水平方向となるようにダイ10が設置されている場合について説明したが、ダイ10の設置姿勢はこれ以外であってもよい。例えば、マニホールド11とスリット12とが鉛直方向に並んで配置される姿勢でダイ10は設置されていてもよく、この場合において、マニホールド11のスラリー3をスリット12を通じて基材2へと流す方向が鉛直方向上向きとなるようにダイ10が設置されていてもよい。なお、この場合であっても、流出部31等はマニホールド11の底部17と接続されている。
さらに、前記実施形態では、両端部11a,11bの間において、二カ所の途中部11c,11dに流出部33,34が設けられている場合について説明したが、途中部に設ける流出部の数はこれ以外であってもよく、流出部は、両端部11a,11bの間の途中部に少なくとも一カ所設けられていればよい。
【0036】
また、シム板15の形状(
図3(b)参照)は、図示した以外のものであってもよい。シム板15の形状によりスリット12(スラリー3の流路)の形状が決定されることから、シム板15の形状によってスラリー3の固形成分が沈殿等発生しやすい途中部に、流出部を設ければよい。
【0037】
例えば、シム板15は、
図4(A)に示すように、幅方向に長い本体部15aと、この本体部15aの幅方向両側部から延びる第一の突出片15b,15cと、これら第一の突出片15b,15cの間に少なくとも一つ設けられている第二の突出片(本実施形態では二つの突出片15d,15e)とを有した櫛型であってもよい。第一の突出片15b,15cによりスリット12の幅方向寸法が規定され、第二の突出片(15d,15e)によりスリット12が幅方向に分割される。このシム板15の場合、スリット12において、隣り合う突出片それぞれの間から、スラリー3が吐出され、
図4(B)に示すように、機材2の上に複数条のスラリー層(ストライプのスラリー層)が形成される。
そして、前記のとおり(
図2参照)、ダイ10には、流出部(31,32,33,34)が、幅方向の両端部11a,11bと、この両端部11a,11bの間の途中部11c,11dに設けられていることで、塗布作業を継続して行っても、櫛型であるシム板15によって分割されたスリット12の各区間からのスラリー3の吐出量を均一にすることができ、複数条のスラリー層それぞれの膜厚を一定にすることが可能となる。
【0038】
なお、本発明の製造装置1は、塗布する塗布液が粘度の高いスラリーである場合に有効であり、粘度の高いスラリーを塗布して製品(例えば、光学フィルム)を製造する場合に適用してもよい。