特許第6084503号(P6084503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084503
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】車両の車体下側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170213BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   B62D25/20 F
   B60J5/06 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-70091(P2013-70091)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193641(P2014-193641A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃幸
(72)【発明者】
【氏名】山中 昇平
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−015928(JP,A)
【文献】 特開2006−035929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延び、その長手方向の断面が中空閉断面とされるロッカと、このロッカ内で車体の前後方向に延び、このロッカを補強する補強パネルと、上記ロッカの後端部に隣接するよう上記側壁の下端部に形成されるホイールハウスと、上記ロッカの外側面に形成されるロッカ開口と、上記ロッカ内に設けられてこのロッカに支持されると共に上記ロッカ開口に向かって開口し、上記側壁の外側面に沿って前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールを支持する箱状支持体と、この箱状支持体の後端部に支持され、上記ドアの所定位置以上の後方向への移動を阻止するストッパとを備えた車両の車体下側部構造において、
上記補強パネルの前部側を、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口側に向かって開口する横向きハット形状となるよう形成する一方、上記補強パネルの後端部を上記ホイールハウスに結合して、上記補強パネルの前部側の底面板に上記箱状支持体を結合し、この箱状支持体の後端部における上記ストッパの近傍部分を上記補強パネルの後端部に支持させるリテイナーを設けたことを特徴とする車両の車体下側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側壁の下端縁部を構成するロッカ側に、ドアが前、後方向に移動するよう案内する案内レールを支持させるようにした車両の車体下側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体下側部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体下側部構造は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延び、その長手方向の断面が中空閉断面とされるロッカと、このロッカ内で車体の前後方向に延び、このロッカを補強する補強パネルと、上記ロッカの後端部に隣接するよう上記側壁の下端部に形成されるホイールハウスと、上記ロッカの外側面に形成されるロッカ開口と、上記ロッカ内に設けられてこのロッカに支持されると共に上記ロッカ開口に向かって開口し、上記側壁の外側面に沿って前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールを支持する箱状支持体と、この箱状支持体の後端部に支持され、上記ドアの所定位置以上の後方向への移動を阻止するストッパとを備えている。
【0003】
そして、上記ドアを前方移動させれば、上記側壁に形成されているドア開口が閉じられるようになっている。一方、上記ドアを後方移動させれば、上記ドア開口が開かれ、また、上記ドアを、更に後方移動させて上記ストッパにより阻止させれば、上記ドア開口は全開状態とされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように、案内レールはドアの移動を前、後方向に案内するためのものであり、ストッパはドアを上記所定位置に停止させるためのものである。そして、このようなドアの移動の案内や停止が、より強度的に安定してできれば、その分、このドアの開閉動作がより精度よく達成されることになると考えられ、これはドアの操作上好ましいことである。
【0006】
しかし、上記従来の技術では、案内レールやストッパを支持する箱状支持体とロッカを補強する補強パネルとは、このロッカ内で互いに離れて設けられていて、上記補強パネルによる直接的な箱状支持体の補強は考慮されていない。このため、この箱状支持体を介しての上記ロッカに対する案内レールやストッパの支持剛性の向上については、上記従来の技術では十分に配慮されているとは言い難く、この点、改善の余地が残されている。
【0007】
そこで、上記補強パネルに対し箱状支持体を連結してこの箱状支持体を補強する補強材を設け、これにより、上記ロッカに対する案内レールやストッパの支持剛性を向上させることが考えられる。しかし、単にこのようにした場合には、車体下側部の部品点数が増加して、その生産性が低下し、生産コストが高価になるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体下側部のロッカ側に支持されて前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールと、このドアの移動を阻止するストッパとを設けた場合に、上記ドアの開閉動作が精度よく達成できるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体下側部の生産性が良好に維持されて、生産コストを安価にできるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、車体2の側壁9の下端縁部を構成して車体2の前後方向に延び、その長手方向の断面が中空閉断面とされるロッカ10と、このロッカ10内で車体2の前後方向に延び、このロッカ10を補強する補強パネル11と、上記ロッカ10の後端部に隣接するよう上記側壁9の下端部に形成されるホイールハウス12と、上記ロッカ10の外側面に形成されるロッカ開口35と、上記ロッカ10内に設けられてこのロッカ10に支持されると共に上記ロッカ開口35に向かって開口し、上記側壁9の外側面に沿って前、後方向に移動するようドア30を案内する案内レール32を支持する箱状支持体37と、この箱状支持体37の後端部に支持され、上記ドア30の所定位置以上の後方向への移動を阻止するストッパ48とを備えた車両の車体下側部構造において、
上記補強パネル11の前部側を、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口35側に向かって開口する横向きハット形状となるよう形成する一方、上記補強パネル11の後端部を上記ホイールハウス12に結合して、上記補強パネル11の前部側の底面板53に上記箱状支持体37を結合し、この箱状支持体37の後端部における上記ストッパ48の近傍部分を上記補強パネル11の後端部に支持させるリテイナー57を設けたことを特徴とする車両の車体下側部構造である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延び、その長手方向の断面が中空閉断面とされるロッカと、このロッカ内で車体の前後方向に延び、このロッカを補強する補強パネルと、上記ロッカの後端部に隣接するよう上記側壁の下端部に形成されるホイールハウスと、上記ロッカの外側面に形成されるロッカ開口と、上記ロッカ内に設けられてこのロッカに支持されると共に上記ロッカ開口に向かって開口し、上記側壁の外側面に沿って前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールを支持する箱状支持体と、この箱状支持体の後端部に支持され、上記ドアの所定位置以上の後方向への移動を阻止するストッパとを備えた車両の車体下側部構造において、
上記補強パネルの前部側を、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口側に向かって開口する横向きハット形状となるよう形成する一方、上記補強パネルの後端部を上記ホイールハウスに結合して、上記補強パネルの前部側の底面板に上記箱状支持体を結合し、この箱状支持体の後端部における上記ストッパの近傍部分を上記補強パネルの後端部に支持させるリテイナーを設けており、次の効果が生じる。
【0013】
即ち、第1に、上記補強パネルの前部側の断面をハット形状としたため、この補強パネルの前部側は、これを単なる平板形状にすることに比べ、その剛性を、より向上させることができる。また、上記補強パネルの後端部を車体の側壁の下端部に形成されるホイールハウスに結合したため、上記補強パネルは、その剛性を長手方向の全体にわたり向上させることができる。更に、上記したように断面がハット形状とされた補強パネルの前部側では、その幅方向の中途部を構成する底面板はその剛性をより高くさせることができる。そして、上記したように補強パネルの前部側の上記底面板に上記箱状支持体を結合させたため、この箱状支持体に支持された上記案内レールは、上記箱状支持体および補強パネルを介して上記ロッカに対し強固に支持される。
【0014】
しかも、前記したように、箱状支持体の後端部における上記ストッパの近傍部分を上記補強パネルの後端部に支持させるリテイナーを設けたため、上記箱状支持体の後端部に支持された上記ストッパは、上記箱状支持体の後端部、リテイナー、および補強パネルの後端部を介して上記ロッカおよびホイールハウスに対し強固に支持される。
【0015】
よって、上記ロッカに対する案内レールやストッパの支持剛性が向上することから、上記案内レールによるドアの前、後方向の移動や、上記ストッパによるドアの所定位置への移動阻止は、強度的に安定した状態でなされる。この結果、上記ドアの開閉動作は精度よく達成でき、これはドアの操作上好ましい。
【0016】
また、第2に、走行中の車両が、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、その衝撃力は、上記ロッカに加えて、前記したように剛性が向上させられた補強パネルの前部側と、この補強パネルの前部側に直接結合されると共にこの補強パネルの後端部に上記リテイナーを介し支持された箱状支持体と、上記補強パネルの後端部を結合させたホイールハウスとにより支持される。よって、上記前突時の衝撃力による車体の変形は効果的に抑制される。
【0017】
更に、第3に、上記車両の特に箱状支持体に対し、その外側方から何らかの物体が衝突(側突)したとき、その衝撃力は、上記リテイナーおよび補強パネルの後端部を介し上記ホイールハウスにより支持される。よって、上記側突時の衝撃力による車体の変形も効果的に抑制される。
【0018】
そして、第4に、上記した第1〜第3の諸効果は、特に上記補強パネルの形状やこの補強パネルへの箱状支持体の結合位置を工夫したり、この補強パネルの後端部をホイールハウスに結合したりすることにより達成されるのであって、別途の大型の補強材を設けることは不要にできる。よって、その分、上記諸効果を達成できるようにした場合でも、車体下側部の生産性を良好に維持して、その生産コストを安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図2のI−I線矢視拡大断面図である。
図2】車体後部の側面部分破断図である。
図3図2のIII−III線矢視断面図である。
図4図1のIV−IV線矢視断面図である。
図5図1で示したものの部分簡略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の車両の車体下側部構造に関し、車体下側部のロッカ側に支持されて前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールと、このドアの移動を阻止するストッパとを設けた場合に、上記ドアの開閉動作が精度よく達成できるようにし、かつ、このようにした場合でも、車体下側部の生産性が良好に維持されて、生産コストを安価にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0021】
即ち、車両の車体下側部構造は、車体の側壁の下端縁部を構成して車体の前後方向に延び、その長手方向の断面が中空閉断面とされるロッカと、このロッカ内で車体の前後方向に延び、このロッカを補強する補強パネルと、上記ロッカの後端部に隣接するよう上記側壁の下端部に形成されるホイールハウスと、上記ロッカの外側面に形成されるロッカ開口と、上記ロッカ内に設けられてこのロッカに支持されると共に上記ロッカ開口に向かって開口し、上記側壁の外側面に沿って前、後方向に移動するようドアを案内する案内レールを支持する箱状支持体と、この箱状支持体の後端部に支持され、上記ドアの所定位置以上の後方向への移動を阻止するストッパとを備える。
【0022】
上記補強パネルの前部側は、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口側に向かって開口する横向きハット形状となるよう形成される。一方、上記補強パネルの後端部は上記ホイールハウスに結合される。上記補強パネルの前部側の底面板に上記箱状支持体が結合される。この箱状支持体の後端部における上記ストッパの近傍部分を上記補強パネルの後端部に支持させるリテイナーが設けられる。
【実施例】
【0023】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0024】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0025】
車両1は、板金製の車体2と、この車体2にサスペンション3により懸架される車輪4とを備え、これらサスペンション3および車輪4により車体2が走行面5上に支持される。
【0026】
車体2の内部が車室8とされ、車体2は、その車室8の側面を形成する側壁9と、この側壁9の下端縁部に形成されて車体2の前後方向に延びるロッカ10と、このロッカ10内で車体2の前後方向に延び、このロッカ10を補強する補強パネル11と、上記ロッカ10の後端部の後側に隣接するよう上記側壁9の下端部に形成され、上記車輪4をその上方から覆うよう形成されるホイールハウス12とを備えている。
【0027】
上記ロッカ10は、それぞれ車体2の前後方向に長く延び、車体2の幅方向で互いに対面するアウタ、インナパネル16,17を有している。これらアウタ、インナパネル16,17の各上端部の間に上記補強パネル11の上端縁部が挟まれてスポット溶接S1により互いに結合される。また、上記アウタ、インナパネル16,17の各下端縁部の間に上記補強パネル11の下端縁部が挟まれてスポット溶接S2により互いに結合される。上記アウタ、インナパネル16,17の間に空間が形成される。これにより、上記ロッカ10は、その長手方向の各部が中空閉断面にされると共に、上記補強パネル11により補強されて高剛性を有し、車体2の骨格部材を構成している。
【0028】
上記ホイールハウス12は、車体2の外、内側部がわを構成するアウタ、インナパネル21,22を有している。上記ロッカ10の後端部におけるアウタ、インナパネル16,17と、上記ホイールハウス12の前端部におけるアウタ、インナパネル21,22とは互いに結合され、これらロッカ10とホイールハウス12とは互いに補強し合うこととされる。この場合、ホイールハウス12は、車体2の側面視(図2)で上方に凸の円弧形状をなし、かつ、その長手方向の各部断面はコの字形状とされる。これにより、上記ホイールハウス12は、全体として車体2における高剛性部材とされる。また、上記ホイールハウス12のアウタ、インナパネル21,22が互いに対向する対向縁部の間に上記補強パネル11の後端縁部が挟まれてスポット溶接S3により互いに結合される。
【0029】
また、車体2は、上記ロッカ10の後端部がわから後方に向かって延びるリヤサイドメンバ25を備えている。このリヤサイドメンバ25の前端部は上記ロッカ10の車体2の幅方向における内側面の上部に結合される。上記リヤサイドメンバ25は、その長手方向の各部断面が倒立ハット形状とされて高剛性を有し、車体2の骨格部材を構成している。
【0030】
車体2の左右各側部における各ロッカ10同士および各リヤサイドメンバ25の前端部同士にフロアパネル26が架設される。また、このフロアパネル26の後端部側から一旦上方に延出した後、後方に延びてシートライザ27が形成される。これらフロアパネル26とシートライザ27とにより前記車室8の下面が形成される。上記フロアパネル26の後端部とシートライザ27とは互いに結合され、この結合体26,27は車体2の幅方向に延びて、その長手方向の各部が中空閉断面とされて高剛性を有している。そして、上記結合体26,27は、車体2の左右各側部における各ロッカ10同士を互いに強固に結合して車体2の骨格部材を構成している。
【0031】
上記結合体26,27の上側に配置され、この結合体26,27を跨ぐようにシート28が設けられる。詳図しないが、このシート28の前端部は、上記結合体26,27により補強されたこの結合体26,27の前方近傍のフロアパネル26の後端部に支持される。また、上記シート28の後端部は、上記結合体26,27により補強されたこの結合体26,27の後方近傍のシートライザ27の部分に支持される。
【0032】
上記リヤシート28の側方における上記車体2の側壁9の後部にドア開口29が形成され、このドア開口29を車体2の外方から開閉可能に閉じるドア30が設けられる。この場合、上記ロッカ10は上記ドア開口29の下部開口縁部を構成する。車体2の側壁9の後部外側面に、それぞれ車体2の前後方向に長く延びる上、下、中途部案内レール31〜33が支持される。これら上、下、中途部案内レール31〜33により上記ドア30が上記側壁9の外側面に沿って車体2の前、後方向に移動するよう案内される。この場合、上記ドア30は、前方かつ車体2の内側方への移動で上記ドア開口29を閉じ(図1〜3中実線)、これとは逆の後方移動で上記ドア開口29を開くようになっている(図1,2中一点鎖線)。
【0033】
上記の場合、下部案内レール32は上記ロッカ10側に支持される。具体的には、このロッカ10の外側面を形成するアウタパネル16に、このロッカ10の長手方向に長く延びるロッカ開口35が形成される。また、上記ロッカ10内に設けられ、このロッカ10に支持パネル36を介し支持されると共に上記ロッカ開口35に向かって開口する箱状支持体37が設けられる。
【0034】
上記箱状支持体37は、上記ロッカ10の長手方向に長く延び、上下方向で互いに離れて対面する上、下面板38,39と、これら上、下面板38,39の車体2の内側方がわの各端縁部同士を結合する底面板40と、これら各板38〜40の後端縁部同士を結合して上記箱状支持体37の後端開口を閉じる後面板41とを有している。これにより、上記箱状支持体37は、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口35に向かい開口するコの字形状とされて高剛性材とされる。上記後面板41は、車体2の後方に向かうに従い外側方に向かうよう傾斜している。そして、上記箱状支持体37の開口縁部は上記ロッカ開口35の開口縁部にスポット溶接S4により結合される。
【0035】
車体2の前後方向における少なくとも上記シートライザ27と同じ位置に、上記ロッカ10の上端部に対し上記箱状支持体37を支持する他の支持パネル42が設けられる。この他の支持パネル42の上端縁部は、上記ロッカ10のアウタ、インナパネル16,17の各上端縁部の間に挟まれて前記スポット溶接S1により結合され、上記他の支持パネル42の下端縁部は上記箱状支持体37の上面板38の上面に結合される。これにより、上記他の支持パネル42は上記ロッカ10の上端部と箱状支持体37とを互いに結合して、これら10,37を互いに補強する。なお、上記他の支持パネル42は設けなくてもよい。
【0036】
上記箱状支持体37の上面板38の下面に上記下部案内レール32が支持される。この下部案内レール32に嵌入され、この下部案内レール32に沿ってのみ前、後方向に移動可能な案内ローラ43が設けられると共に、この案内ローラ43に上記ドア30の下端部を支持する支持アーム44が設けられる。図示しないが、これと同様の構成により、上記上、中途部案内レール31,33に対し上記ドア30の上端部と上下方向における中途部とが支持される。
【0037】
上記箱状支持体37の後端部である後面板41に締結具47により弾性のストッパ48が支持される。このストッパ48は、図1,2中一点鎖線で示すように、上記ドア30がドア開口29を全開としたときの所定位置以上の後方向への移動を阻止するものである。
【0038】
前記補強パネル11の前部側は、その上、下部を構成する上、下面板51,52と、これら上、下面板51,52の車体2の内側方がわの各下、上端縁部同士を結合する底面板53と、上記上、下面板51,52の車体2の外側方がわの各上、下端縁部にそれぞれ形成される外向きフランジ54とを有している。これにより、上記補強パネル11の前部側は、その長手方向の各部断面が上記ロッカ開口35側に向かって開口する横向きハット形状となるよう形成される。
【0039】
上記補強パネル11の前部側の底面板53に対し上記箱状支持体37の底面板40が面接触させられてスポット溶接S5により結合される。
【0040】
上記箱状支持体37の後端部である後面板41における上記ストッパ48の近傍部分を上記補強パネル11の後端部に支持させるリテイナー57が設けられる。このリテイナー57は、上記後面板41における上記ストッパ48の近傍部分に上記締結具47により締結される台座部58と、この台座部58から一体的に延出して、その各延出端部が上記補強パネル11の後端部にスポット溶接S6により結合される複数本(2本)の脚部59とを有している。
【0041】
前記サスペンション3は、車体2の前後方向で上記補強パネル11および箱状支持体37の各後端部と同じところに配置され、上記ロッカ10のインナパネル17の外面および上記リヤサイドメンバ25の前端部の下面とに跨ってそれぞれに結合されるサスペンションブラケット62と、このサスペンションブラケット62の後方で車体2の前、後方向に延び、その後端部に上記車輪4を支持するサスペンションアーム63と、このサスペンションアーム63の前端部を弾性材を介し上記サスペンションブラケット62に枢支させる枢支軸64とを有している。
【0042】
上記構成によれば、第1に、上記補強パネル11の前部側の断面をハット形状としたため、この補強パネル11の前部側は、これを単なる平板形状にすることに比べ、その剛性を、より向上させることができる。また、上記補強パネル11の後端部を車体2の側壁9の下端部に形成されるホイールハウス12に結合したため、上記補強パネル11は、その剛性を長手方向の全体にわたり向上させることができる。更に、上記したように断面がハット形状とされた補強パネル11の前部側では、その幅方向の中途部を構成する底面板53はその剛性をより高くさせることができる。そして、上記したように補強パネル11の前部側の上記底面板53に上記箱状支持体37を結合させたため、この箱状支持体37に支持された上記下部案内レール32は、上記箱状支持体37および補強パネル11を介して上記ロッカ10に対し強固に支持される。
【0043】
しかも、前記したように、箱状支持体37の後端部における上記ストッパ48の近傍部分を上記補強パネル11の後端部に支持させるリテイナー57を設けたため、上記箱状支持体37の後端部に支持された上記ストッパ48は、上記箱状支持体37の後端部、リテイナー57、および補強パネル11の後端部を介して上記ロッカ10およびホイールハウス12に対し強固に支持される。
【0044】
よって、上記ロッカ10に対する下部案内レール32やストッパ48の支持剛性が向上することから、上記下部案内レール32によるドア30の前、後方向の移動や、上記ストッパ48によるドア30の所定位置への移動阻止は、強度的に安定した状態でなされる。この結果、上記ドア30の開閉動作は精度よく達成でき、これはドア30の操作上好ましい。
【0045】
また、第2に、走行中の車両1が、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、その衝撃力は、上記ロッカ10に加えて、前記したように剛性が向上させられた補強パネル11の前部側と、この補強パネル11の前部側に直接結合されると共にこの補強パネル11の後端部に上記リテイナー57を介し支持された箱状支持体37と、上記補強パネル11の後端部を結合させたホイールハウス12とにより支持される。よって、上記前突時の衝撃力による車体2の変形は効果的に抑制される。
【0046】
更に、第3に、上記車両1の特に箱状支持体37に対し、その外側方から何らかの物体が衝突(側突)したとき、その衝撃力は、上記他の支持パネル42により補強されたロッカ10を介し上記フロアパネル26とシートライザ27との結合体26,27により支持され、また、上記リテイナー57および補強パネル11の後端部を介し上記ホイールハウス12により支持され、更に、上記ロッカ10を介し上記サスペンションブラケット62により支持される。よって、上記側突時の衝撃力による車体2の変形も効果的に抑制される。
【0047】
そして、第4に、上記した第1〜第3の諸効果は、特に上記補強パネル11の形状やこの補強パネル11への箱状支持体37の結合位置を工夫したり、この補強パネル11の後端部をホイールハウス12に結合したりすることにより達成されるのであって、別途の大型の補強材を設けることは不要にできる。よって、その分、上記諸効果を達成できるようにした場合でも、車体2下側部の生産性を良好に維持して、その生産コストを安価にすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 車体
3 サスペンション
4 車輪
8 車室
9 側壁
10 ロッカ
11 補強パネル
12 ホイールハウス
29 ドア開口
30 ドア
32 下部案内レール(案内レール)
35 ロッカ開口
37 箱状支持体
48 ストッパ
51 上面板
52 下面板
53 底面板
54 外向きフランジ
57 リテイナー
58 台座部
59 脚部
62 サスペンションブラケット
63 サスペンションアーム
64 枢支軸
S1〜S6 スポット溶接
図1
図2
図3
図4
図5