(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸心の回りで回転する入力軸の回転を受けて、往復直線移動を行う巻上げケースと、前記巻上げケースによって蓄勢する蓄勢バネ部と、前記蓄勢バネ部の蓄勢力により、往復直線移動を行なう蓄勢ケースと、前記蓄勢ケースの往復直線移動を受けて往復回転する切替クランクを備え、前記切替クランクの回転力を負荷時タップ切替器に伝達する負荷時タップ切替器の蓄勢装置において、
前記蓄勢バネ部は、前記巻上げケースによる蓄勢時には共に蓄勢される第1弾性部材と第2弾性部材を含み、
前記蓄勢バネ部の蓄勢力による前記蓄勢ケースの移動する移動期間には、前記第1弾性部材と第2弾性部材の両蓄勢力の解放による第1移動期間と、第1移動期間後に続くとともに第1弾性部材のみによる蓄勢力の解放による第2移動期間を含む負荷時タップ切替器の蓄勢装置。
前記第1弾性部材は大径のコイルスプリングであり、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材の中に同軸で配置されている小径のコイルスプリングである請求項1に記載の負荷時タップ切替器の蓄勢装置。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切替器は、変圧器のタップ切替等に用いられ、その蓄勢装置は、タップ切り替えを短時間で行うために設けられている。
図9〜
図11を参照して従来の負荷時タップ切替器に用いられる蓄勢装置(非特許文献1)を説明する。
【0003】
図9(a)〜(c)に示すように蓄勢装置10は、図示しない電動操作機構に一端が連結された入力軸11を備えている。前記入力軸11の他端は、同軸上に設けられた偏心カム12に連結され、前記電動操作機構からの駆動力を伝達する。
【0004】
偏心カム12は、前記入力軸11の回転を受け、偏心動作を行なう。前記偏心カム12は、巻上げケース13の上面に設けられた一対のガイド板13a,13b間に配置されている。巻上げケース13は、相互に離間した一対の支持部材30に対して相互に平行に架設された一対のバネ案内シャフト34に対して直線移動自在に支持されている。巻上げケース13は、前記偏心カム12の偏心動作を受けたガイド板13a,13bにより、往復直線移動を行なう。蓄勢バネ14は、前記バネ案内シャフト34に巻装されて、巻上げケース13の直線運動によって蓄勢する。
【0005】
前記支持部材30には、バネ案内シャフト34と平行に一対のケースガイドシャフト32が架設されている。蓄勢ケース15は、ケースガイドシャフト32に対して直線移動自在に支持され、前記蓄勢バネ14が蓄勢力の解放によって、往復直線移動を行なう。
【0006】
切替クランク16は前記蓄勢ケース15に作動連結されており、前記蓄勢バネ14の蓄勢力により蓄勢ケース15が往復移動した際に回転して、図示しない遮断機構部におけるタップ切り替えを行う。
【0007】
ラッチ18,19は、前記切替クランク16に設けられた係合爪20、21に係合し、前記蓄勢バネ14を蓄勢している間は切替クランク16及び蓄勢ケース15を一時的に拘束するようにしている。
【0008】
前記蓄勢装置10のタップ切り替え時における動作は、下記のように行われる。
図9(a)〜(c)は、蓄勢装置10のタップ切り替え前の状態を示しており、この状態で、電動操作機構に切換信号が入ると、入力軸11は、偏心カム12を介して、巻上げケース13を直線的に移動させる。この状態では、ラッチ19と切替クランク16の係合爪21が係合されることにより蓄勢ケース15は拘束されている。このため、
図10(a)〜(c)に示すように巻上げケース13の直線移動により、蓄勢バネ14が蓄勢される。
【0009】
巻上げケース13に設けられた解除部13cがラッチ19を作動させてラッチ19と係合爪21の係合を外すと、蓄勢ケース15の拘束が解除される。すると、蓄勢バネ14の蓄勢力により蓄勢ケース15が巻上げケース13の方向に移動される。この移動は、前記蓄勢力により高速に行われる。
【0010】
そして、
図9(c)に示すように、切替クランク16が最終到達位置に位置すると、切替クランク16は、支持部材30に設けられた一対のダンパ35,36のうち一方のダンパ36に当接する。
【0011】
また、前記蓄勢ケース15が最終到達位置に達すると、
図11(a)、(b)に示すようになる。そして、切替クランク16が最終到達位置に位置すると、切替クランク16の係合爪20に、ラッチ18が係合し、蓄勢ケース15は再び拘束される。又、巻上げケース13は、入力軸11の回転が終了時に偏心カム12により駆動されて最終到達位置まで移動し、切換動作を完了する。
【0012】
また、次のタップ切り替え時の蓄勢装置10の動作は詳説しないが、以下の通りである。
図示しない電動操作機構に切換信号が入ると、入力軸11が偏心カム12を介して、巻上げケース13を、
図11(a)〜(c)の状態からラッチ18の方向に移動させて、蓄勢バネ14を蓄勢させる。そして、解除部13cによりラッチ18と係合爪20の係合を外す。すると、蓄勢バネ14の蓄勢力により蓄勢ケース15が移動し、ラッチ19と係合爪21が係合する。巻上げケースが最終到達位置に達し、切換動作を完了する。又、切替クランク16は、他方のダンパ35に当接する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の蓄勢装置10の蓄勢バネ14は、単一のコイルスプリングにより構成されている。単一のコイルスプリングの場合、蓄勢トルクを調整するには、弾性力の異なるコイルスプリングに代えることにより行っている。
【0015】
弾性力が大きいコイルスプリングにすると、蓄勢トルクは全体的に大きくなり、或いは弾性力が小さいコイルスプリングにすると、蓄勢トルクは全体的に小さくなる。このことにより、本来蓄勢トルクとして必要ではない箇所においても、トルクが大きくなるか、或いは、本来蓄勢トルクとして必要である箇所では小さくなる。このため、前記負荷時タップ切替器の負荷トルクと蓄勢トルクのバランスが崩れ、単一のコイルスプリングで蓄勢トルクを調整する場合は、切替速度のコントロール等が困難になる。
【0016】
例えば蓄勢トルクよりも、負荷時タップ切替器が動作するのに必要な負荷トルクの方が高い場合のようにバランスが崩れると、切換動作が正常に動作せず、切換途中で停止することになる。
【0017】
反対に、負荷トルクよりも蓄勢トルクが大きすぎる例として、アーク遮断に必要な時間の確保ができなくなる可能性がある。
また、切替速度のコントロールが困難とは、負荷時タップ切替器においての負荷トルクの時間的なバランスによる。例えば、切替最後に負荷トルクとして大きなトルクが必要であったり、初動において大きなトルクが必要であったりと、負荷時タップ切替器の中身構成(部品の配置)によって負荷トルクとしてのタイミングは変わるため、それらと蓄勢トルクを対応させる必要があるが、単一のコイルスプリングでの蓄勢トルクの調整が難しい。
【0018】
本発明の目的は、複数の弾性部材によって弾性力の調整を容易に行うことができ、また、蓄勢解放の終了時に必要な蓄勢トルクは、従来と同様に単一コイルスプリングで駆動し、蓄勢解放初動時の蓄勢トルクが不足する場合は蓄勢解放初動時の蓄勢トルクを大きくできる負荷時タップ切替器の蓄勢装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記問題点を解決するために、軸心の回りで回転する入力軸の回転を受けて、往復直線移動を行う巻上げケースと、前記巻上げケースによって蓄勢する蓄勢バネ部と、前記蓄勢バネ部の蓄勢力により、往復直線移動を行なう蓄勢ケースと、前記蓄勢ケースの往復直線移動を受けて往復回転する切替クランクを備え、前記切替クランクの回転力を負荷時タップ切替器に伝達する負荷時タップ切替器の蓄勢装置において、前記蓄勢バネ部は、前記巻上げケースによる蓄勢時には共に蓄勢される第1弾性部材と第2弾性部材を含み、前記蓄勢バネ部の蓄勢力による前記蓄勢ケースの移動する移動期間には、前記第1弾性部材と第2弾性部材の両蓄勢力の解放による第1移動期間と、第1移動期間後に続くとともに第1弾性部材のみによる蓄勢力の解放による第2移動期間を含むものである。
【0020】
前記第1弾性部材は大径のコイルスプリングであり、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材の中に同軸で配置されている小径のコイルスプリングにすることもできる。
第2弾性部材は、第1弾性部材の中に複数個配置することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の弾性部材によって弾性力の調整を容易に行うことができ、また、蓄勢解放の終了時に必要な蓄勢トルクは、従来と同様に単一コイルスプリングで駆動し、蓄勢解放初動時の蓄勢トルクが不足する場合は蓄勢解放初動時の蓄勢トルクを大きくできる。また、本発明によれば、第1弾性部材及び第2弾性部材を種々組み合わせることができるため、蓄勢トルクを調整する場合は、切替速度のコントロールを行い易くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1〜
図8を参照して本発明を具体化した一実施形態の負荷時タップ切替器の蓄勢装置を説明する。なお、前記従来例と同一又は相当する構成については、同一符号を付して説明する。
【0024】
図1、
図2に示すように、蓄勢装置10は、電動操作機構100に一端が連結されるとともに軸心の回りで回転する入力軸11を備えている。前記入力軸11の他端は、同軸上に設けられた偏心カム12に連結され、前記電動操作機構100からの駆動力を伝達する。
【0025】
偏心カム12は、前記入力軸11の回転を受け、偏心動作を行なう。前記偏心カム12の回転軸12aは、巻上げケース13に対して下方から上方に向かって貫通されて前記入力軸11に連結されている。
図2に示すように偏心カム12は、巻上げケース13内において、巻上げケース13の下面に設けられた一対のガイド板13a,13b間に配置されている。
【0026】
図2に示すように、ケース13の下方に固定板29が配置され、固定板29の上面には一対の支持部材30が固定されている。両支持部材30間には、相互に平行に架設された一対のバネ案内シャフト34が設けられ、前記巻上げケース13は、前記バネ案内シャフト34に対して直線移動自在に支持されている。巻上げケース13は、前記偏心カム12の偏心動作を受けたガイド板13a,13bにより、往復直線移動を行なう。
図3に示すように、本実施形態では、従来例の蓄勢バネ14の代わりに蓄勢バネ部140が設けられている。蓄勢バネ部140の詳細は、後述する。
【0027】
前記蓄勢バネ部140は、前記バネ案内シャフト34に設けられており、巻上げケース13の直線運動によって蓄勢する。
前記支持部材30間には、前記バネ案内シャフト34と平行に一対のケースガイドシャフト32が架設されている。蓄勢ケース15は、前記ケースガイドシャフト32に対して直線移動自在に支持され、前記蓄勢バネ部140の蓄勢力の解放によって、往復直線移動を行なう。
【0028】
図1に示すように蓄勢ケース15の下方には、固定板29に対して回転自在に支持された切替クランク16が配置されている。なお、
図2では、説明の便宜上、切替クランク16の図示は省略されている。
【0029】
蓄勢ケース15下面には一対のカム部材15aが突設され、カム部材15a間には前記切替クランク16の上面に設けられたカムフォロア16aが係入されている。カムフォロア16aは、蓄勢ケース15の往復直線移動により切替クランク16を回転させる。切替クランク16は前記蓄勢バネ部140の蓄勢力により回転して、遮断機構部120におけるタップ切替器のタップ切り替えを行う。
【0030】
図3(b)に示すように、切替クランク16は、往復回転方向のそれぞれに向かう各端に係合爪20,21が形成されている。固定板29の上面には、一対のラッチ18,19が回動自在に支持されている。ラッチ18,19は、前記係合爪20、21にそれぞれ係合する係合アーム18a,19aと、解除アーム18b,19bとを有する。ラッチ18,19間には、図示はしないが、引っ張りバネが掛けられており、係合アーム18a,19aを切替クランク16側に向くように付勢している。
【0031】
そして、ラッチ18,19の係合アーム18a,19aは、係合爪20,21に係合し、前記蓄勢バネ部140を蓄勢している間は切替クランク16及び蓄勢ケース15を一時的に拘束するようにしている。
【0032】
また、
図1に示すように巻上げケース13には、前記係合アーム18a,19aと、係合爪20,21との係合を解除する解除部13cが設けられている。解除部13cは、巻上げケース13の直線移動のとき、切替クランク16を拘束している係合アーム18a,19aの解除アーム18b,19bに当接して解除方向に作動させることにより、係合アーム18a,19aと、係合爪20,21との係合を解除する。
【0033】
図3(b)、
図4(b)、
図5(b)に示すように固定板29上には、ダンパ40が形成されている。ダンパ40は、切替クランク16の回転軌跡上に位置するように配置されている。前記ダンパ40の筐体43の両端には、衝接時に切替クランク16の各端部を受ける一対のピン44,45がその長手方向に移動自在に挿入されている。
【0034】
次に、
図7(a)、(b)を参照して蓄勢バネ部140の詳細を説明する。
蓄勢バネ部140は、バネ案内シャフト34に巻装された単一のコイルスプリング143と、コイルスプリング143の各端を受けるとともにバネ案内シャフト34に貫通された一対のバネ受け141,142と、バネ案内シャフト34に摺動自在に貫通されたガイド部材145及びガイド部材145とバネ受け141,142間にそれぞれ配置されたコイルスプリング146,147を含む。コイルスプリング143は円筒状のコイルスプリングにより構成されている。
【0035】
図7(a)に示すように、ガイド板13a,13bには、前記バネ案内シャフト34を摺動自在に貫通した管状部材148,149が固定されている。また、
図1、
図7(a)、(b)に示すように、巻上げケース13と蓄勢ケース15とが相互に移動する際に、ガイド板13aと蓄勢ケース15の壁部15b、及びガイド板13bと蓄勢ケース15の壁部15cとは相互に干渉しないように形成されている。
【0036】
バネ受け141に対してガイド板13aが壁部15bよりも近位に位置した場合(例えば、
図4(a)、
図5(a)、及び
図6(a)に示す状態の場合)は、バネ受け141はガイド板13aの管状部材148に対して係止可能である。また、バネ受け141に対して壁部15bがガイド板13aよりも近位に位置した場合(例えば、
図3に示す状態の場合)は、図示はしないがバネ受け141は壁部15bに対して係止可能である。
【0037】
バネ受け142に対してガイド板13bが壁部15cよりも近位に位置した場合(例えば、
図2及び
図7(a)に示す状態の場合)は、バネ受け142は、ガイド板13bの管状部材149に対して係止可能である。また、バネ受け142に対して壁部15cがガイド板13bよりも近位に位置した場合(例えば、
図7(b)に示す状態の場合)は、バネ受け142は壁部15cに対して係止可能である。
【0038】
ガイド部材145は、軸心方向の中央部にはバネ案内シャフト34よりも若干大径の貫通孔145aを有する。ガイド部材145は、バネ案内シャフト34が貫通孔145aに摺動自在に挿通されることによりバネ案内シャフト34に対して軸心方向に移動可能である。
【0039】
コイルスプリング146,147は、コイルスプリング143よりも小径の円筒状に形成されて、バネ案内シャフト34に対してコイルスプリング143と同軸となるように巻装されている。
【0040】
また、巻上げケース13と蓄勢ケース15の相対移動によってコイルスプリング146,147とコイルスプリング143とがともに圧縮されて蓄力された際のコイルスプリング146,147の蓄勢トルクは、両蓄勢トルクが同時に解放された際には、コイルスプリング146,147の方がコイルスプリング143よりも早期に蓄勢トルクが0となるようにされている。すなわち、このようにコイルスプリング146,147の蓄勢トルクが0となった後も、コイルスプリング143は蓄勢トルクを解放し続けて伸長することにより、
図7(a)の例で示すようにコイルスプリング146,147は、前記ガイド部材145から離間するように、或いはバネ受け141,142から離間するようにその長さが設定されている。コイルスプリング146,147の大きさ及び前記蓄勢トルクは、同じとなるように設定することもできるが、負荷時タップ切替器の負荷トルクに応じて異なるように設定してもよい。
【0041】
コイルスプリング143は第1弾性部材に相当し、コイルスプリング146,147は、第2弾性部材に相当する。
(実施形態の作用)
本実施形態の蓄勢装置10のタップ切り替え時における動作は、下記のように行われる。
【0042】
図3(a)、(b)は、蓄勢装置10のタップ切り替え前の状態を示している。このとき、
図7(a)に示すように蓄勢バネ部140は蓄勢前の状態である。
この状態で、電動操作機構100に切換信号が入ると、
図1に示す入力軸11は、偏心カム12を介して、巻上げケース13を直線的に移動させる。この状態では、
図3(b)に示すようにラッチ19と切替クランク16の係合爪21が係合されることにより蓄勢ケース15は拘束されている。このため、
図4(a)、(b)及び
図7(b)に示すように巻上げケース13の直線移動により、前記蓄勢バネ部140が蓄勢される。
図4(a)の例では図において、蓄勢ケース15は拘束されているため、ガイド板13aの右側への移動により、コイルスプリング143は、バネ受け141、142間で圧縮されるとともに、コイルスプリング146,147は、バネ受け141とガイド部材145間、及びガイド部材145とバネ受け142間で圧縮される。
【0043】
そして、
図4(a)、(b)に示すように巻上げケース13に設けられた解除部13cが、解除アーム19bに当接して作動させる。このことにより、ラッチ19が回転されてラッチ19と係合爪21の係合が外されて、蓄勢ケース15の拘束が解除される。
【0044】
すると、
図5(a)、(b)に示すように蓄勢バネ部140のコイルスプリング143,146,147の蓄勢力(蓄勢トルク)により蓄勢ケース15が巻上げケース13の方向に移動させる。この移動は、前記蓄勢力により高速に行われる。
【0045】
図8は、前記蓄勢ケース15の拘束が解除された時点tをt=0としたときからt2までの蓄勢トルクの変化を表している。二点鎖線Aはコイルスプリング146,147の合計の蓄勢トルクを示し、点線Bはコイルスプリング143の蓄勢トルクを示し、実線Cは、コイルスプリング143,146,147の合計の蓄勢トルクを示している。
【0046】
t=0からt1までは、第1移動期間τ1であり、この期間では実線C(=A+B)で示すようにして時間の経過とともに蓄勢バネ部140の蓄勢トルクが減少する。また、t1〜t2は、第2移動期間τ2であり、この期間では、点線B(=C)で示すようにして時間の経過とともに蓄勢バネ部140の蓄勢トルクが減少する。第2移動期間では、コイルスプリング146,147の蓄勢トルクが0となっている期間であり、コイルスプリング143のみの蓄勢トルクで蓄勢ケース15が移動する。
【0047】
そして、
図6(b)に示すように、切替クランク16が最終到達位置に位置すると、切替クランク16は、ダンパ40のピン44に当接し、ダンパ40により緩衝される。
また、
図6(b)に示すように、切替クランク16が最終到達位置に位置すると、切替クランク16の係合爪20に、ラッチ18が係合し、蓄勢ケース15は再び拘束される。又、巻上げケース13は、入力軸11の回転が終了時に偏心カム12により駆動されて最終到達位置まで移動しタップ切替を完了する。
【0048】
また、次のタップ切り替え時の蓄勢装置10の動作は詳説しないが、以下の通りである。
電動操作機構100に切換信号が入ると、入力軸11が偏心カム12を介して、巻上げケース13を、
図6(a)、(b)の状態からラッチ18の方向に移動させて、蓄勢バネ部140を蓄勢させる。そして、解除部13cによりラッチ18と係合爪20の係合を外す。すると、蓄勢バネ部140の蓄勢力により蓄勢ケース15が移動し、ラッチ19と係合爪21が係合する。巻上げケースが最終到達位置に達し、切換動作を完了する。又、このとき切替クランク16は、ダンパ40のピン45に当接し、ダンパ40により緩衝される。
【0049】
本実施形態の蓄勢装置10によれば、下記の特徴がある。
(1) 本実施形態の蓄勢装置10は、軸心の回りで回転する入力軸11と、入力軸11の回転を受けて、往復直線移動を行う巻上げケース13と、巻上げケース13によって蓄勢する蓄勢バネ部140と、蓄勢バネ部140の蓄勢力により、往復直線移動を行なう蓄勢ケース15と、蓄勢ケース15の往復直線移動を受けて往復回転する切替クランク16を備え、切替クランク16の回転力を、負荷時タップ切替器に伝達するようにしている。そして、蓄勢バネ部140は、巻上げ蓄勢ケース15による蓄勢時には共に蓄勢されるコイルスプリング143(第1弾性部材)とコイルスプリング146,147(第2弾性部材)を含む。さらに、蓄勢バネ部140の蓄勢力による蓄勢ケース15の移動する移動期間には、コイルスプリング143(第1弾性部材)とコイルスプリング146,147(第2弾性部材)の両蓄勢力の解放による第1移動期間τ1と、第1移動期間τ1後に続くとともにコイルスプリング143(第1弾性部材)のみによる蓄勢力の解放による第2移動期間τ2を含むようにしている。
【0050】
この結果、本実施形態によれば、複数の弾性部材によって弾性力の調整を容易に行うことができ、また、蓄勢解放の終了時に必要な蓄勢トルクは、従来と同様に単一コイルスプリングで駆動し、蓄勢解放初動時の蓄勢トルクが不足する場合は蓄勢解放初動時の蓄勢トルクを大きくできる。また、本実施形態によれば、コイルスプリング143(第1弾性部材)及びコイルスプリング146,147(第2弾性部材)を種々組み合わせることができるため、蓄勢トルクの調整によって切替速度のコントロールを行い易くすることができる。
【0051】
また、蓄勢解放時において第2移動期間では第2弾性部材の蓄勢力は0の状態となるため、全体の特性トルクが上がるわけではなく、第2弾性部材が作用している第1移動期間のみ蓄勢トルクを大きくすることができる。
【0052】
さらに、従来技術では一本のバネであると本来越えたい負荷時タップ切替器の負荷トルクの位置だけを越えることができないため、全体の蓄勢トルクをあげる必要があるが、バネを複数本(例えば、本実施形態では6本)とすることで越えたい負荷トルクの時間的位置だけ蓄勢トルクを大きくすることが可能となるため、無駄な蓄勢力を必要としない。
【0053】
(2) 本実施形態の蓄勢装置10では、第1弾性部材としてのコイルスプリング143は大径のコイルスプリングとし、第2弾性部材としてのコイルスプリング146,147はコイルスプリング143の中に同軸で配置するように小径にした。この結果、本実施形態によれば、第2弾性部材を第1弾性部材の中に収納できるため、従来と同様の大きさの巻上げケース13に組み付けすることができ、大型化することがない。
【0054】
(3) 本実施形態の蓄勢装置10では、コイルスプリング146,147(第2弾性部材)をコイルスプリング143の中に2個配置するようにした。この結果、コイルスプリング146,147の異なる仕様で組み合わせることができ、蓄勢トルクを調整する場合は、切替速度のコントロールを行い易くすることができる。
【0055】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように構成してもよい。
・ 第1弾性部材及び第2弾性部材は、軸方向に同径の円筒状のコイルスプリングに限定するものではなく、例えば円錐コイルスプリングにしてもよく、コイルスプリングの形状は限定するものではない。
【0056】
・ 前記実施形態では、コイルスプリング146,147の大きさ及び前記蓄勢トルクを互いに同じとなるように設定したが、同じ大きさ、同じ蓄勢トルクとなるように限定するものではない。負荷時タップ切替器は種々の仕様があり、負荷トルク及び切替速度も異なる。従って、コイルスプリング146,147の大きさ及び蓄勢トルクを負荷時タップ切替器の負荷トルク及び切替速度に応じて互いに異なる大きさ、異なる蓄勢トルクとなるようにしてもよい。この場合も、コイルスプリング143とコイルスプリング146,147の蓄勢トルクを同時に解放した際、コイルスプリング146,147の蓄勢トルクの解放がコイルスプリング143よりも早期に終了させるようにコイルスプリング146,147の仕様を設定してもよい。また、負荷時タップ切替器の負荷トルク及び必要とされる切替速度に応じてコイルスプリング146,147のいずれか一方の蓄勢トルクの解放を早期に終了するように調整してもよい。
【0057】
・
図8に示すように、前記実施形態ではコイルスプリング143の最大蓄勢トルク(蓄勢トルクが解放される直前の値:t=0)を、コイルスプリング146,147の合計の最大蓄勢トルク(蓄勢トルクが解放される直前の値:t=0)よりも大きく設定するようにしているが、このような場合に限定するものではない。
【0058】
例えば、コイルスプリング143の最大蓄勢トルク(蓄勢トルクが解放される直前の値:t=0)を、コイルスプリング146,147の合計の最大蓄勢トルク(蓄勢トルクが解放される直前の値:t=0)よりも小さく設定するようにしてもよい。この場合においても、コイルスプリング143とコイルスプリング146,147の蓄勢トルクを同時に解放した際、コイルスプリング146,147の蓄勢トルクの解放がコイルスプリング143よりも早期に終了させるようにコイルスプリング146,147の仕様を設定するものとする。
【0059】
・ 前記実施形態では、コイルスプリング143の中に、コイルスプリング146,147を配置したが、コイルスプリング143の外において、バネ案内シャフト34と同様のバネ案内シャフトをバネ案内シャフト34と平行に配置し、このバネ案内シャフトにコイルスプリング146,147及びガイド部材145を設けるようにしてもよい。
【0060】
・ 第2弾性部材としてのコイルスプリング146,147のいずれか一方を省略することも可能である。この場合も、第1弾性部材としてのコイルスプリング143と第2弾性部材としてのコイルスプリングの蓄勢トルクを同時に解放した際、第2弾性部材としてのコイルスプリングの蓄勢トルクの解放がコイルスプリング143よりも早期に終了させるように第2弾性部材としてのコイルスプリングの仕様を設定するものとする。
【0061】
・ 第2弾性部材としてのコイルスプリングを3つ以上設けることも可能である。この場合も、第1弾性部材としてのコイルスプリング143と第2弾性部材としての3つ以上のコイルスプリングの蓄勢トルクを同時に解放した際、第2弾性部材としてのコイルスプリングの蓄勢トルクの解放がコイルスプリング143よりも早期に終了させるように第2弾性部材としてのコイルスプリングの仕様を設定するものとする。
【0062】
・ 前記実施形態では、第1弾性部材を単一のコイルスプリング143としたが、第1弾性部材を内外2重のコイルスプリングとしてもよい。すなわち、内外2重のコイルスプリングを第1弾性部材とし、さらに、その中に、或いは平行に第2弾性部材を配置するようにしてもよい。