特許第6084531号(P6084531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084531
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】表皮一体発泡成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20170213BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20170213BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20170213BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
   B29C39/10
   A47C27/15 A
   A47C7/38
   B29K105:04
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-140627(P2013-140627)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-13409(P2015-13409A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−061615(JP,U)
【文献】 実開平03−122799(JP,U)
【文献】 特開2005−006874(JP,A)
【文献】 特開2005−192634(JP,A)
【文献】 実開平02−022808(JP,U)
【文献】 特開昭63−035314(JP,A)
【文献】 特開平01−178286(JP,A)
【文献】 特開2010−254104(JP,A)
【文献】 特開2003−206327(JP,A)
【文献】 特開2005−206780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C39/00−43/58
A47C7/00−7/74
A47C27/00−27/22
A47C31/00−31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂から形成されるパッドと、
その表面を覆う表皮と
を有する表皮一体発泡成形品であって、
前記表皮は、その内面に、前記発泡樹脂よりも高硬度の含浸層を有し、前記含浸層の内面に含浸バリアーフィルム層と連続気泡軟質ポリウレタンフォームとがさらに設けられていることを特徴とする表皮一体発泡成形品。
【請求項2】
前記含浸層は高硬度ワディングからなる請求項1記載の表皮一体発泡成形品。
【請求項3】
前記発泡樹脂は軟質ポリウレタンフォームに炭酸ガスを混入した原料から形成される請求項1乃至2記載の表皮一体発泡成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮内の軟質ポリウレタンフォーム原料に炭酸ガスを混入し、表皮と一体発泡してなる表皮一体発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタンフォーム原料を炭酸ガスにより発泡し、ポリウレタンフォームを得る技術があり(特開2000−230066号公報)、かかる技術により、表皮一体発泡成形品、例えば、ヘッドレストが製造される。このヘッドレストを製造するには、表皮内に注入した軟質ポリウレタンフォーム原料に炭酸ガスを混入して表皮と一体となるように発泡する。
【0003】
このような表皮一体発泡成形品では、ポリウレタンフォーム原料のセルサイズを炭酸ガスの膨張力を利用して強制的に膨張させ、発泡倍率を増す低密度発泡工法であり、このように、ポリウレタンフォーム原料のセルサイズが大きくなるということは、樹脂骨格が強制的に伸ばされることとなり、ウレタンとしての強度は低下する。その結果、ウレタンとしての最大発泡時の大きさから硬化するまでの収縮は、ウレタンの樹脂強度が低下した分だけ増し、上記のように、表皮一体発泡成形品であるヘッドレストにあっては、表皮内のウレタンフォームが収縮した分だけ表皮に表皮皺が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−230066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の技術では、ウレタンとしての最大発泡時の大きさから硬化するまでの収縮は、ウレタンの樹脂強度が低下した分だけ増し、表皮一体発泡成形品であるヘッドレストにあっては、表皮内のウレタンフォームが収縮した収縮分だけ、表皮とウレタンフォームの間に部分的に隙間が生じ、その隙間による撓みにより表皮に表皮皺が生じて外観品質が悪くなるという不具合が生じていた。また、ウレタンが収縮するので、表皮の内部で発泡する際には、狙い通りのサイズにならないという課題も生じていた。
【0006】
本発明は、ウレタンが最大発泡時の大きさから硬化するまでの収縮が生じても表皮に表皮皺が生じることなく外観品質が維持できる表皮一体発泡成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、発泡樹脂から形成されるパッドと、その表面を覆う表皮とを有する表皮一体発泡成形品であって、
前記表皮は、その内面に、前記発泡樹脂よりも高硬度の含浸層を有することを特徴とする。
【0008】
かかる表皮一体発泡成形品では、表皮と一体発泡する際には、前記表皮の内面に、発泡樹脂よりも高硬度の含浸層を有しているので、発泡樹脂の発泡液は含浸層含浸し、もしくは接着し、その結果、表皮の内面に含浸層が接着しているので、発泡後の発泡樹脂が最大膨張率を迎えた時には、含浸層と一体化し、発泡樹脂の収縮が高硬度からなる含浸層により抑えられ、表皮と発泡樹脂との間の、発泡樹脂の収縮による隙間発生を抑えることができるので、表皮に表皮皺発生が防止でき、前記含浸層の内面に含浸バリアーフィルム層と連続気泡軟質ポリウレタンフォームをさらに設け、含浸する含浸層が厚くなり、表皮への肌さわりがよくなる。
【0009】
前記含浸層は高硬度ワディングからなることが好ましい。発泡樹脂はワディングに含浸し、高硬度ワディングなので、収縮する際には、高硬度ワディングが外形形状を保持しており表皮の皺発生が防止できる。
【0010】
前記発泡樹脂は軟質ポリウレタンフォームに炭酸ガスを混入した原料から形成される。
かかる表皮一体発泡成形品では、表皮内の軟質ポリウレタンフォーム原料に炭酸ガスを混入し、表皮と一体発泡する際には、前記表皮の内面に、前記軟質ポリウレタンフォーム原料が含浸する含浸層を有し、この含浸層は前記軟質ポリウレタンフォーム原料よりも高硬度からなるので、発泡液は含浸層含浸し、その結果、炭酸ガスにより発泡されたポリウレタンフォームが最大膨張率を迎えた時には、表皮は含浸層と一体化し、ポリウレタンフォームの収縮が高硬度からなる含浸層により抑えられ、表皮とポリウレタンフォームとの間の、ポリウレタンフォームの収縮による隙間発生を抑えることができるので、表皮に表皮皺発生が防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡樹脂が最大発泡時の大きさから硬化するまでの収縮が生じても表皮に表皮皺が生じることなく外観品質が維持できる表皮一体発泡成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る表皮一体発泡成形品の一実施形態であるヘッドレストの断面図である。
図2図1に示すヘッドレストの要部拡大図である。
図3図2に相当する他の実施形態を示す要部拡大図である。
図4図2に相当する他の実施形態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態につき、図1乃至図4に基づき説明する。
本発明に係る表皮一体発泡成形品の一実施形態として、図1に示す、自動車用シートのヘッドレストの場合につき説明する。このヘッドレストは表皮1と、この表皮1の内面1dに接着した含浸層となる高硬度ワディング2と、軟質ウレタンフォーム3と、ヘッドレストステー4からなる。表皮1はヘッドレストの後側の後面側表皮1aと、下側の下面側表皮1bと、前側の前面側表皮2cとからなり、これら後側の後面側表皮1aと、下側の下面側表皮1bと、前側の前面側表皮2cがそれぞれ互いの端部を縫着して袋状になっている。また、前面側表皮2cには、その前面に、着座者の頭部が接するので、クッション性をよくするためにクッション部5が形成されている。
【0014】
図1図2に示すように、高硬度ワディング2は、表皮1を形成する後面側表皮1aと、下側の下面側表皮1bと、前側の前面側表皮1cの裏面、内面に例えば、接着剤で接着されている。接着方法としては、加圧、加熱があるが、いずれの方法であっても、表皮内面に接着できればよい。高硬度ワディング2を表皮1の内面に接着しているのは、ウレタンフォーム3が表皮1の内部で収縮する際に表皮1の変形を抑えるためである。この高硬度ワディング2は、その厚さが0.5乃至5ミリ程で、表皮1の内面に接着されている。
【0015】
表皮1の内部に、軟質ポリウレタンフォーム原料に炭酸ガスを混入して注入し、表皮1と一体発泡する際には、軟質ポリウレタンフォーム原料が含浸する高硬度ワディング2を表皮1の内面1dに接着して設けているので、表皮1の内部のウレタンフォーム原料は、その発泡時に、高硬度ワディング2に含浸することにより、ウレタンフォーム原料は高硬度ワディング2と一体化される。炭酸ガスにより発泡されたウレタンフォーム原料は最大膨張率を迎えた時に、高硬度ワディング2と合体し、収縮するウレタンフォーム原料が高硬度ワディング2の高硬度ゆえの強度により、ウレタンフォーム原料の収縮が抑えられる。そのため、高硬度ワディングを接着した表皮1は撓むことなく外形形状を維持しているので、撓みによる表皮1の表皮皺の発生が防止できる。
【0016】
図3図4は他の実施形態を示し、図3に示す実施形態は、表皮1の内面1dに、上記で説明した高硬度ワディング2を接着し、さらに、この高硬度ワディング2の内面2aに含浸バリアーフィルム層6を設けたものである。含浸バリアーフィルム層6を高硬度ワディング2の内面2aに設けることにより、高硬度ワディング2に発泡液が含浸して硬くなり過ぎを抑えている。そのため、表皮1側のクッション性がよくなる。
【0017】
また、図4に示す実施形態は、図3に示す実施形態とほぼ同様であるが、図3に示す実施形態において、さらに、含浸バリアーフィルム層6の内面6aに連続気泡軟質ポリウレタンフォーム7を設けたものである。この連続気泡軟質ポリウレタンフォーム7は、その厚さが0.5乃至5.0ミリで、高硬度ワディング2が発泡液の含浸により硬化しすぎるのを抑えている。そのため、表皮1側のクッション性が一層よくなる。
【0018】
上記説明では、表皮一体発泡成形品の一実施形態として、自動車用シートのヘッドレストの場合につき説明したが、これに限られず、例えば、自動車用シートのシートクッション、シートバック、またはアームレストであってもよい。また、含浸層としての高硬度ワディング2は、表皮1の後側の後面側表皮1aと、下側の下面側表皮1bと、前側の前面側表皮1cのすべての内面1dに接着した場合につき説明したが、すべての内面に接着することなく、表皮1の全面に撓みが生じなければ、例えば、表皮1の後側の後面側表皮1aにだけに接着することもできる。すなわち、撓みが生じやすい表皮1の部分だけに部分的に含浸層を設ければよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0019】
1は表皮
2は含浸層たる高硬度ワディング

図1
図2
図3
図4