特許第6084575号(P6084575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6084575粒子を操作するためのマイクロ流体デバイス
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  • 特許6084575-粒子を操作するためのマイクロ流体デバイス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084575
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】粒子を操作するためのマイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20170213BHJP
   C12M 1/26 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   !C12M1/26
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-545619(P2013-545619)
(86)(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公表番号】特表2014-508026(P2014-508026A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】IB2011055920
(87)【国際公開番号】WO2012085884
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】BO2010A000755
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507008482
【氏名又は名称】メナリーニ・シリコン・バイオシステムズ・ソシエタ・ペル・アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】メドロ,ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】マナレージ,ニコロ
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−054399(JP,A)
【文献】 特表2002−536167(JP,A)
【文献】 特表2006−524797(JP,A)
【文献】 特開2009−014736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00−19/32
B81C 1/00−7/04
C12M 1/26
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の少なくとも1つの所定のタイプの粒子を操作するマイクロ流体デバイスであって、デバイス(1)は装置に接続するように設計され、前記デバイス(1)自身を該デバイス(1)の外部の前記装置に接続するための接続ユニット(2)と、次には、前記所定のタイプの粒子を操作するために少なくとも1つの注入口(4;4’)と、少なくとも1つの放出口(5;5’)と、及び少なくとも1つのマイクロ流体チャンバ(6;6’)とを備えるマイクロ流体システム(3)と、
前記デバイス(1)のタイプに関する情報と、前記デバイス(1)が動作するようになされた方法に関する情報と、前記デバイス(1)の少なくとも1つの識別子と、その組合せとから成るグループの中から選択された前記デバイス(1)に関する情報を含む不揮発性の書き換え可能なメモリとを具備し、前記メモリには不良電極のマッピングが含まれており、
前記デバイス(1)のアクチュエータを駆動するステップが前記装置によって実行され、前記マイクロ流体チャンバ(6;6’)が、粒子を移動させるために複数のアクチュエータを有し、
前記デバイスに関する情報が、不良電極が置かれている領域を回避するように粒子を移動させるための不良アクチュエータを識別する内容を含む、デバイス。
【請求項2】
前記デバイス(1)に関する情報が、前記メモリの非書換可能な領域に少なくとも部分的に設定される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記マイクロ流体チャンバが、前記所定のタイプの粒子を試料の他の粒子に対して選択的に移動させるように設計されている、請求項1又は請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記マイクロ流体チャンバが、前記所定のタイプの粒子を試料の他の粒子に対して選択的に移動させるように設計され、かつ粒子を移動させるために複数のアクチュエータを有し、前記デバイス(1)に関する情報が、粒子を移動させるための不良電極を識別する内容を含む、請求項1又は請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記デバイス(1)に関する情報が、前記マイクロ流体システム(3)の構造(様々な構成部品の配置及び形状)に関する情報を含む、先行する請求項1〜4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイス(1)に関する情報には、実施可能な最大の使用回数が含まれる、先行する請求項1〜5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項7】
前記メモリは、前記デバイス(1)が使用される回数を記憶するように設計され、特に、前記メモリの一部は、前記デバイス(1)が使用される回数を記憶するために割り当てられる、先行する請求項1〜6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
前記デバイス(1)に関する情報には、前記デバイス(1)の最大の使用時間が含まれる、先行する請求項1〜7のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項9】
前記メモリは、前記デバイス(1)が使用される時間を記憶するように設計され、特に、前記メモリの一部は、前記デバイス(1)が使用される時間を記憶するために割り当てられる、先行する請求項1〜8のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項10】
前記接続ユニット(2)が、前記デバイス(1)の外部に向かって少なくとも部分的に露出されている電気コネクタ(2a)を有する、先行する請求項1〜9のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項11】
前記メモリがパスワードによってアクセス可能である、先行する請求項1〜10のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項12】
前記メモリが暗号化される、先行する請求項1〜11のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項13】
チャンバ(6;6’)が配置されている領域内のシリコン下部構造体(8)と;主にプラスチックで作られており、その中で前記注入口(4;4’)、前記放出口(5;5’)、及び前記マイクロ流体システム(3)の少なくとも1つのチャネル(7)が得られる構成部品(9)と、前記シリコン下部構造体(8)とは異なる位置にある主にプラスチック材料から作られた前記構成部品(9)に対応する領域に設定されている前記メモリ用の物理媒体、を具備する、先行する請求項1〜12のいずれか1つに記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイス及びそのようなデバイスの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
本特許出願PCT/IB2010/000615は、試料の粒子を操作するため(特に、所定のタイプの粒子を他の粒子から分離するため)のマイクロ流体デバイスを開示している。そのようなデバイスは寸法が比較的小さく、また次に操作する別の試料を汚染しないように、使用後に捨てることができる。前記デバイスは、通常は、電子制御ユニットを備えてデバイスの様々な構成部品を管理する大きな寸法の固定装置と組み合わせて使用される。デバイスは分離室を備えており、その中で使用時には、公開番号WO0069565、WO2007010367、WO2007049120、及びWO2007116312の1つ又は複数の特許出願書類の中で説明されている内容に基づいて、粒子の操作が行われる
【0003】
1つの同様な装置は、種々の用途のために様々なデバイスを使用することができる。
【0004】
上記のデバイスは診断分野で高い頻度で使用されるため、それらのデバイスを最高の精度で慎重に取り扱うことが極めて重要である。現在では、どのようなシステムも、デバイスを管理する中でのヒューマン・エラーを防ぐこと、及び/又は比較的小さい(またこのため、通常の動作では無視できる)ようなデバイスの不具合があっても操作を最適にするように、デバイスの様々な構成部品を駆動することは想定されていない。
【0005】
特許文献US6726820には、集積された読み取り、書き込み、及び書き換え可能なメモリを搭載したマイクロデバイスが記載されている。
【0006】
特許文献DE10352887には、幾つかの情報を含むメモリを搭載したDNAチップ・アレイ・プロセッサが記載されている。
【0007】
特許文献US5690893には、分析の条件を含む不揮発性メモリを備えた分析器が記載されている。
【0008】
特許文献US2004092024には、リセット可能メモリが付いた試料用の複数の支持板が記載されている。
【0009】
特許文献US5384028には、バイオセンサの製造に関するデータを含むデータを記憶するためのメモリを備えたバイオセンサが記載されている。
【0010】
特許文献WO2005064325には、書き換え可能な不揮発性メモリを含むバイオ分析のための再利用可能なカートリッジが記載されている。
【0011】
特許文献WO2009137415は、液滴アクチュエータに関する。
【0012】
特許文献WO0047322には、所定の経路に沿って構成部品(パケット)を移動するための装置が記載されている。それには、使い捨てタイプのメモリ媒体は記載されていない。
【0013】
文献番号US6726820、DE10352887、US5690893、US2004092024、US5384028、WO2005064325、WO2009137415、及びWO0047322のいずれも、比較的小さい(またこのため、通常の動作では無視できる)ようなデバイスの不具合があっても操作を最適にするように、デバイスの様々な構成部品を駆動するシステムを想定していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、少なくとも部分的に、従来技術の限界を克服することを可能にし、かつ同時に容易にまた経済的に製造するのに好適なデバイスを提供すること及び前記デバイスの使用法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、デバイス及び前記デバイスの使用法は、その後の独立クレームの中で、及び好ましいことに、直接的又は間接的に独立クレームに依存するクレームのいずれか1つの中で請求されるものに従って提供される。
【0016】
特に明確に指定されない場合、本テキストでは、以下に列挙する用語は下記に示す意味を有するものとする。
【0017】
「セクションの等価直径」は、断面と同じ面積を有する円の直径を意味する。
【0018】
チャネル又はダクトの「セクション」は、チャネル(又はダクト)の長手方向の延長部、すなわち、チャネル(又はダクト)内の流体の進行方向に対してほぼ垂直なチャネルのルーメンの断面を意味する。
【0019】
「マイクロ流体システム(又はデバイス)」は、少なくとも1つのマイクロ流体チャネル(又はダクト)及び/又はマイクロ流体チャンバから成るシステム(又はデバイス)を意味する。
【0020】
「マイクロ流体チャンバ」は、1mm未満の独自の寸法(特に、高さ)の1つを有する内部空間を画定するチャンバを意味する。
【0021】
「マイクロ流体チャネル(又はダクト)」は、断面が1mm未満の等価な直径を有するチャネル(又はダクト)を意味する。
【0022】
チャネル又はダクト又はチャンバの寸法は、側面計を用いる標準的な方法で測定することができる。
【0023】
本テキストでは、「粒子」は、最大寸法が500μm未満(好ましくは、150μm未満)の微粒子を意味する。粒子の非限定的な例には、セル、セルラー・デトリタス(特に、セルラー・フラグメント)、セルラー・アグリゲート(例えば、ニューロスフィア又はマンモスフィアなどの幹細胞から生じたセルの小さなクラスタ)、バクテリア、リポスフィア、(ポリスチレン及び/又は磁気の)ミクロスフィア、ナノスフィア(例えば、最大100nmのナノスフィア)、セルなどに結合したミクロスフィアによって形成された複合体がある。好ましいことに、粒子はセルである。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、粒子(好ましいことに、セル及び/又はセルラー・デトリタス)は、60μm未満の最大の寸法を有する。
【0025】
粒子の寸法は、目盛り付きスケールが付いた顕微鏡、又は目盛り付きスケールが付いたスライド(その上に粒子が置かれる)を用いて使用される通常の顕微鏡を用いる標準的な方法で測定することができる。
【0026】
本テキストでは、「粒子の寸法」は、粒子の長さ、幅、及び厚さを意味する。
【0027】
「実質的に選択的な」という用語は、粒子の変位(又は移動及び/又は分離を示す他の同様の用語)を識別するために使用される。ここで変位及び/又は分離された粒子は、大部分が1つ又は複数の所定の種類によって構成されている粒子である。都合が良いことに、実質的に選択的な変位(又は移動及び/又は分離を示す他の同様な用語)は、所定の種類の粒子の少なくとも90%(好ましくは95%)の粒子を移動させることを想定している(粒子の総数に対する所定の種類の粒子の数によって与えられるパーセンテージ)。
【0028】
非限定的な実施形態の例を示す添付図面を参照して、本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に基づいて構築されたシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ流体デバイスが、試料の少なくとも1つの所定のタイプの粒子を操作するために提供される。特に、デバイス1は、実質的に選択的な方法で、上記の粒子を別の粒子に対して分離するように設計されている。より具体的には、デバイスは使い捨てタイプのものである。
【0031】
図1では、1つのそのようなデバイスが、全体的に1で示されている。
【0032】
このデバイス1は、ある装置(図示していない)と接続するように設計され、デバイス1自身をこの装置に電気的に(又は電磁的に)接続するための接続ユニット2を備えている。
【0033】
この装置は、デバイス1の種々の部品を駆動するように設計されている。装置はデバイス1(とは別に)の外部にあり、接続ユニット2を介してデバイス1と接続することができる。幾つかの実施形態によれば、装置は、使用時に、装置をデバイス1に接続するためにデバイス1が挿入されるシート(図示せず)を有している。
【0034】
図示した実施形態によれば、接続ユニット2は、複数の電気コネクタ2a(その一部のみが図1に概略的に示されている)を有しており、それぞれの電気コネクタ2aは装置の対応するコネクタ(図示せず)と結合するように設計されている。都合が良いことに、コネクタ2aは少なくとも部分的にデバイス1の外部に向かって露出されている。使用時には、デバイス1は、コネクタ2aを経由して装置から動作命令を受け取る。
【0035】
さらに図示していない実施形態によれば、接続ユニット2は、無線モードで(特に、装置と)通信する(情報及び/又は命令を受信及び/又は送信する)ことができる。このことは、デバイスのグループの中で1つ又は複数の所定のデバイスを識別することが望まれる場合は特に有用である。
【0036】
無線通信により、デバイス1と装置との間の直接接触を防ぐことができる。これには2つの利点が存在する、(i)デバイス1が生物学的廃棄物の中で使用される場合、装置の汚染が防止される、(ii)デバイス1が新しい場合、デバイス1自身の汚染が防止される(無菌又はDNA/RNAフリーの可能性)。
【0037】
デバイス1は、マイクロ流体システム3を備えており、それは次に、少なくとも1つの注入口4、少なくとも1つの放出口5、及び少なくとも1つの(マイクロ流体)チャンバ6を有している。チャンバ6の中で、使用時に、所定のタイプの粒子が操作される。特に、システム3も少なくとも1つのマイクロ流体システム7を備えている。より具体的には、システム3は、複数のマイクロ流体チャネル7を有している。
【0038】
図1に示した実施形態によれば、システム3は、2つの注入口4及び4’、2つの放出口5及び5’、及び2つの(マイクロ流体)チャネル6及び6’を備えている。特定の場合において、チャンバ6’は互いに接続された異なる形状の3つの部分を含んでいる。
【0039】
チャンバ6は、所定のタイプの粒子を試料の別の粒子に対して選択的に移動させるように設計されている。特に、使用時にあたっては、試料はチャンバ6に送られて、所定のタイプの粒子が、液体搬送媒体で前もって充填されたチャンバ6’内に選択的に送られる。所定のタイプの粒子は、次に、オペレータによって放出口5’を通して回収される。
【0040】
デバイス1は、チャンバ6(及びチャンバ6’)の対応する位置に設定された下部構造体8を備えている。より詳細には、下部構造体8は、底部でチャンバ6(及びチャンバ6’)の範囲を定めている。下部構造体8は、主に(より詳細には、完全に)シリコンで作られている。
【0041】
デバイス1は、装置から来る命令に基づいて動作する複数のアクチュエータ(例えば、バルブ及び/又は電極)を備えている。幾つかの実施形態によれば、チャンバ6は(粒子を移動させるための)複数のアクチュエータを備えている。デバイス1のアクチュエータは、チャンバ6(及び/又は6’)のアクチュエータを備えている。チャンバ6(及び/又は6’)のアクチュエータは、特に、電極を含んでいる(電極である)。
【0042】
チャンバ6の種々のアクチュエータ(電極)を駆動することにより、粒子を変位させることができる(また装置によって制御される)。好ましいことに、チャンバ6(及びチャンバ6’)の構造及び動作は、本願の名前で出願された公開番号WO0069565、WO2007010367、WO2007049120及びWO2007116312のうちの1つ又は複数の特許出願書類の中に記載されている。
【0043】
より具体的には、デバイス1は、本出願人の名で出願された特許出願PCT/IB2010/000615(公開番号WO2010106434)に記載されたデバイスと同様の構成及び動作を示している。デバイス1は、後述するように、部分的に書き換え可能なメモリが存在するために、特許出願PCT/IB2010/000615の中に記載されたものとは異なる。同様に、この装置は、特許出願PCT/IB2010/000615に記載された装置と同様の構成及び動作を示している。
【0044】
図示した実施形態によれば、デバイス1は、(特に、プラスチック材料で作られた)構成部品9も備えている。この構成部品9の中には、注入口4(及び4’)及び放出口5(及び5’)が作られている。マイクロ流体チャネル7及び(部分的に)チャンバ6(及び6’)も構成部品9の中に作られている。より具体的には、システム3が、少なくとも部分的に(幾つかの実施形態では、完全に)構成部品9の中に作られる。
【0045】
都合が良いことに、構成部品9は、プラスチック材料から構成されている(より具体的には、主にプラスチック材料で作られている)。
【0046】
特定の実施形態によれば、デバイス1は、プリント基板(PCB−図示せず)を備えている。このPCBは接続ユニット2と下部構造体8とに接続されている。このPCBは構成部品9の下に置かれている。
【0047】
デバイス1は、書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュ・メモリ)を含む。より具体的には、デバイス1は、前記メモリに対する物理媒体10を備えている。
【0048】
幾つかの(図示されたもののような)実施形態によれば、メモリの物理媒体10は、下部構造体8から別個に(すなわち、別の位置に)、構成部品9の領域内に置かれる。このようにして、製造コストを低減することができる。
【0049】
さらに別の実施形態(図示せず)によれば、メモリの物理媒体10は、下部構造体8に対応する位置に設定される。物理媒体10は、PCBに接続される。
【0050】
特に、メモリは、デバイス1に関する情報を含んでいる。
【0051】
好ましいことに、メモリはデバイス1のタイプに関する情報を含んでいる。好ましいことに、デバイス1のタイプに関する情報は、少なくとも部分的に(個別では、完全に)メモリの非書換可能な(読取り専用)領域に記憶される。
【0052】
特に、デバイス1のタイプに関する情報は、該デバイス1の構造(様々な構成部品の配置及び形状)に関する情報を含む。より具体的には、デバイス1のタイプに関する情報は、マイクロ流体システム3の構成(様々な構成部品の配置及び形状)に関する情報を含む。この方法では、装置(より具体的には、装置の制御ユニット)はデバイス1を認識し、適切な方法で、それ自身のアクチュエータ(従って、デバイス1自身の様々な構成部品)を駆動することができる。デバイス1(特に、マイクロ流体システム3)の構造に関する情報は、該デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。このメモリは読取り専用タイブである(すなわち、そのメモリは変更できない)。
【0053】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報は、PCBの構造(様々な構成部品の配置及び形状)に関する情報を含む。より具体的には、デバイス1のタイプに関する情報は、マイクロ流体システム3の構造(様々な構成部品の配置及び形状)に関する情報を含む。この方法では、装置(より具体的には、該装置の制御ユニット)はデバイス1を認識し、適切な方法で、PCBを駆動することができる。PCBの構造に関する情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。このメモリは読取り専用タイプである(すなわち、その情報は変更できない)。
【0054】
好ましいことに、デバイス1のタイプに関する情報は、デバイス1の故障しているアクチュエータ(特に、電極)を指示することを含んでいる。特に、故障しているアクチュエータを指示することは、チャンバ6(及び/又は6’)の故障しているアクチュエータ(特に、電極)を指示することを含む(より具体的には、指示することである)。
【0055】
より正確には、デバイス1のタイプに関する情報には、不良電極の位置が含まれる。言い換えると、メモリには不良電極のマッピングが含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイブである(すなわち、その情報は変更できない)。一般に、不良電極は非機能性である、すなわち、どのような場合でも、適切な動作を保証することはできない。
【0056】
このタイプの情報を用いて、装置(特に、該装置の制御ユニット)は、不良電極が置かれている領域を回避するように、粒子(特に、所定のタイプの粒子)を操作する(より正確には、移動させる)。換言すると、不良電極に対応する位置を通過しない1つ又は複数の経路に粒子を組み付けるように、電極を作動する。
【0057】
このように、極めて重要な利点は、デバイス1にたとえ小さな欠陥があっても、デバイス1を使用可能にすることが実現されることである。
【0058】
これにより、製造の終了時にデバイス1をテストするとき、デバイス1自身の使用結果の品質を低下することなく、デバイス1の不合格品の数を著しく低下させることができる。従って、製造コストをかなり低減することが可能になる。
【0059】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、実施可能な最大の使用数が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、その情報は変更できない)。
【0060】
好ましいことに、メモリは、デバイス1が使用された回数を記憶するように設計されている。特に、メモリの一部は、デバイス1が使用された回数を記憶するために割り当てられる。
【0061】
使用にあたっては、デバイス1が使用されるときはいつも、装置(特に、該装置の制御ユニット)がメモリ内に前記使用状況を記録する。装置(特に、該装置の制御ユニット)が、(メモリを読み取ることによって)使用状況が最大数に達していることを検出すると、装置自身が動作をブロックして、対応するエラー信号を発生する。
【0062】
このようにして、デバイス1の使用における高い品質レベルを保証することができる。具体的には、例えば、診断目的のために使用される場合、デバイス1は、試料の汚染を防止するために、1回だけ使用することができる。この場合には、説明した内容により、オペレータによるエラー及びこれにより間違った結果が生じることを防止することができる。
【0063】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、デバイス1の最大の使用時間が含まれている。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、その情報は変更できない)。
【0064】
好適なことに、メモリは、デバイス1が使用される時間を記憶するように設計されている。特に、メモリの一部は、デバイス1が使用される時間を記憶するために割り当てられる。
【0065】
使用にあたっては、デバイス1が使用されるときはいつも、装置(特に、該装置の制御ユニット)がメモリ内に前記使用時間を記録し、メモリ自身内に既に存在する時間にそれを加える。装置(特に、該装置の制御ユニット)が、(メモリを読み取ることによって)使用時間が最大に到達していることを検出すると、装置自身が動作をブロックして、対応するエラー信号を発生する。
【0066】
このようにして、デバイス1を使用する場合に高い品質レベルを保証することができる。特に、このように、(過度に使用することにより)使い切られたデバイス1が再度使用されないようにすることができる。
【0067】
好ましいことに、メモリにはパスワードを介してアクセスすることができる。このように、前記メモリが不正変更されるリスクを低減することができる
【0068】
好ましいことに、メモリは暗号化される。このようにして、デバイス1を不適当な装置と組み合わせて使用される可能性が防止される。
【0069】
好ましいことに、デバイス1のタイプに関する情報には、該デバイス1の有効期限が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、その情報は変更できない)。使用にあたっては、装置(特に、該装置の制御ユニット)が、(メモリを読み取ることによって)有効期限が過ぎていることを検出すると、装置自身が動作をブロックして、対応するエラー信号を発生する。
【0070】
また、このように、動作の品質及び安全性が向上する。
【0071】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、下部構造体(ウェーファ)8に関するマイクロ流体システム3の位置が含まれる(後者がリソグラフィ技術によって作られた場合)。メモリは、さらに、各生産ロットやロット自体の識別子内の下部構造(ウエハ)8の識別子を含む。メモリはさらに、各生産ロット内の下部構造体(ウェーファ)8の識別子及びロット自体の識別子を含む。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、その情報は変更できない)。
【0072】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、不良アクチュエータ(電極)に関する情報が存在するか否か(例えば、1=存在する、0=存在しない)に関する表示が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0073】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、エラーのタイプを表示することが含まれる(例えば、コード及び/又は着色マーカ)。都合が良いことに、デバイス1のタイプに関する情報には、デバイス1のモデルの表示がさらに含まれる(デバイス1の各バージョン又は新しいバージョンは、メモリ内に記憶されている可能性もある異なる操作手順を要求することがある)。幾つかの特定の実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、構成部品9を製造するために使用されているマスクのタイプの指示が含まれる。
【0074】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、デバイス1を製造するために使用されているボンディング・システムに関する情報が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0075】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、チャンバ6(及び/又は6’)の高さに関する情報が含まれる(例えば、90μm)。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0076】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、試料ごとに回収できる液滴(特に、放出口5’を介して)の最大数に関する情報が含まれる。前記液滴は、所定のタイプの粒子を含む(又はどんな場合でも含む必要がある)ものである。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0077】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、上述した液滴の平均体積に関する情報が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、種々の搬送溶液(例えば、PBS−リン酸緩衝食塩水)を使用することに対するデバイス1の許可に関する情報が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0079】
使用時には、搬送溶液が、所定のタイプの粒子を選択的に変位させる前に、チャンバ6’に送られる。
【0080】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、動作温度の範囲(例えば、277K〜309K)に関する情報が含まれる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。この情報は読取り専用タイプである(すなわち、それは変更できない)。
【0081】
幾つかの実施形態によれば、メモリは、デバイス1が装置内に挿入されており取り外されていないかどうかに関する情報(例えば、1=挿入されている、0=挿入されていない)を有する(特に、記憶するために割り当てられた部分を有する)ように設計されている。この情報は、デバイス1の使用時に(装置によって−より具体的には、装置の制御ユニットによって)メモリに書き込まれる。幾つかの実施形態によれば、挿入と同時に(特に、挿入直後に)、挿入に関する情報が(例えば、書込み1によって)書き込まれる。取外しと同時に(特に、取外しの直前に)、取外しに関する情報が(例えば、書込み0によって)書き込まれる。
【0082】
この情報は、デバイス1が装置内に挿入されているが、そこから取外しされていない時を示し、また挿入後に装置を再起動する場合に、実験を遂行できるようにする目的を有する。デバイス1が装置から取り外されて技術者によって手動で電源オフにされる場合、もはやデバイス1を使用すべきではない、また都合が良いことに、メモリが0に等しいこの変数を有し、その結果、デバイス1が取り外されていることを理解し、改ざんされている可能性があることを装置が検出することができ、このため、実験の継続を防止することができる。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、メモリは、1つ又は複数の下記の情報項目含む(特に、記憶用に割り当てられた部分を有する)ように設計される、実験開始の日時(メモリへの書込みは実験の開始時に行われる)、デバイス1を装置1に挿入する日時(メモリへの書込みは挿入の直後に行われる)、実験の最後の日時(メモリへの書込みは実験の最後に行われる)、デバイス1を装置から取り外す日時(メモリへの書込みは取外しの直前に行われる)、使用するパラメータの設定(特に、使用される搬送溶液−例えば、PBS)(メモリへの書込みは実験の開始時に行われる)、使用される装置の識別子(メモリへの書込みは実験の挿入直後に行われる)、使用されるパターンの名前(すなわち、電気泳動フィールドの構成、すなわち、各電極と各位相との間の関連付け−VpあるいはVm(電極によって想定できる付勢電位))(メモリへの書込みは実験の開始時に行われる)、Vp、Vm及びVlid(蓋を付勢するための電位)用の周波数、振幅及び位相デルタ(メモリへの書込みは実験の開始時に行われる)。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、デバイス1のタイプに関する情報には、上述した情報の多数のタイプの組合せが含まれる。
【0085】
都合が良いことに、メモリは、デバイス1を動作させる必要がある方法に関する情報(すなわち、操作手順を実行する必要があることに関する情報、例えば、種々のアクチュエータを動作させる方法)を有している。
【0086】
幾つかの変形例によれば、情報には、使用状況(例えば、研究のみ又は体外診断に使用すること)の表示が含まれる。
【0087】
幾つかの実施形態によれば、メモリには、デバイス1のタイプに関する情報、デバイス1が動作するようになされた方法に関する情報、及びそれらの組合せの中から選択された情報が含まれる。
【0088】
好ましいことに、デバイス1が動作するようになされた方法に関する情報は、少なくとも部分的に(詳細には、完全に)メモリの非書換可能な(読取り専用)領域に記憶される。
【0089】
幾つかの実施形態によれば、メモリはデバイス1の少なくとも1つの識別子(すなわち、デバイス1の固有の識別子コード)を有している。言い換えると、各デバイス1のメモリは、他のデバイスの識別子とは異なる識別子を含んでいる。この情報は、デバイス1のテスト時にメモリに書き込まれる。
【0090】
都合がいいことに、デバイス1の識別子は、少なくとも部分的に(詳細には、完全に)メモリの非書換可能な(読取り専用)領域に記憶される。
【0091】
幾つかの実施形態によれば、メモリには、デバイス1のタイプに関する情報、デバイス1が動作するようになされた方法に関する情報、デバイス1の少なくとも1つの識別子、及びそれらの組合せの中から選択された情報が含まれる。
【0092】
好ましいことに、メモリ内に存在する情報の1つ又は複数の項目は、装置のヒューマン・マシン・インタフェース(HMI−例えば、スクリーン)によって表示することができる。
【0093】
本発明の第2の態様によれば、診断目的のためのデバイス1の使用法が提供される。
【0094】
本発明の第3の態様によれば、所定のタイプの粒子を他の粒子から分離するためにデバイス1を使用する方法が提供される。
【0095】
特に明記しない限り、この明細書で引用された文献の内容(記事、書籍、特許出願、など)は、本願で一体想起される。特に、前述の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
図1