(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084606
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ハイブリッドドライブトレイン、ハイブリッド車両、および作動方法
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20170213BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20170213BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20170213BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20170213BHJP
F02B 1/06 20060101ALI20170213BHJP
F02B 11/00 20060101ALI20170213BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20170213BHJP
F02D 15/00 20060101ALI20170213BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20170213BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20170213BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
F02D41/04 305F
B60K6/485
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F02B1/06
F02B11/00 B
F02D13/02 H
F02D13/02 J
F02D15/00 E
F02D41/02 305
F02D43/00 301E
F02D43/00 301S
F02D43/00 301Z
F02D45/00 310N
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-515069(P2014-515069)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-522463(P2014-522463A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】EP2011006334
(87)【国際公開番号】WO2012171546
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2014年2月12日
【審判番号】不服2015-22653(P2015-22653/J1)
【審判請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】102011104422.5
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ディーラー
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ハーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ルーディガー・ヘルヴェーク
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・クレーナー
(72)【発明者】
【氏名】フリーデマン・ヴォルパース
【合議体】
【審判長】
中村 達之
【審判官】
金澤 俊郎
【審判官】
槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−155780(JP,A)
【文献】
特開平11−210539(JP,A)
【文献】
特開2008−261337(JP,A)
【文献】
特開2000−265910(JP,A)
【文献】
特開2004−19587(JP,A)
【文献】
特開2009−97368(JP,A)
【文献】
特開2009−185634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 29/02
F02D 41/00 - 41/40
F02D 45/00
F02D 43/00
B60K 6/00
B60W 10/06 - 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電動機(5)および少なくとも1つの内燃機関(4)を有するハイブリッドドライブトレイン(3)の作動方法であって、
前記内燃機関(4)が低NOx作動方式で作動される低・中の負荷の領域(9)においては、前記内燃機関(4)の燃焼空間において燃焼空気比がλ>1の燃料−空気混合気または燃料−排気ガス−空気混合気が点火装置により点火時点で火花点火され、前記火花点火によって開始される火炎前面燃焼がチャージ圧縮燃焼に移行し、
前記内燃機関(4)が火花点火作動方式で作動されるより高い負荷の領域(13)においては、前記内燃機関(4)の燃焼空間において燃焼空気比がλ=1の燃料−空気混合気または燃料−排気ガス−空気混合気が点火装置により点火時点で火花点火され、前記火花点火によって開始される火炎前面燃焼がチャージ圧縮燃焼に移行しないものであり、
前記低NOx作動方式から前記火花点火作動方式への移行のために圧縮比が低減され、
前記内燃機関(4)のガス交換バルブのストロークが、前記低NOx作動方式から前記火花点火作動方式への移行のために開口度および/または開口期間に関し増加されるものであり、
低・中の負荷の前記領域(9)において前記内燃機関(4)が低NOx作動方式で作動され、そのため低・中の負荷の前記領域(9)における前記内燃機関(4)のために、前記負荷の比較的小さい部分のみが調整可能であり、
所要の設定負荷が定常運転中の前記内燃機関(4)の現行負荷を越える場合、前記設定−現行の差が少なくとも1つの前記電動機(5)によって提供され、
所要の設定負荷が定常運転中の前記内燃機関(4)の現行負荷を越える場合および前記設定−現行の差が少なくとも1つの前記電動機(5)の最大出力を越える場合、前記低NOx作動方式から前記火花点火作動方式へ移行され、前記火花点火作動方式において前記内燃機関(4)が作動される作動方法。
【請求項2】
所要の設定負荷が定常運転中の前記内燃機関(4)の現行負荷を下回る場合、前記設定−現行の差が発電機として作動する少なくとも1つの前記電動機(5)によって低減されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両(1)のハイブリッドドライブトレインであって、
少なくとも1つの内燃機関(4)と、
少なくとも1つの電動機(5)と、
請求項1または2に記載の方法によって前記ハイブリッドドライブトレイン(3)を作動するためのコントローラ(7)と
を備える車両(1)のハイブリッドドライブトレイン。
【請求項4】
ハイブリッド車両であって、
シャーシ(2)と、
請求項3に記載のハイブリッドドライブトレイン(3)と
を備えるハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド
ドライブトレインに関する。本発明はまたその種のハイブリッド
ドライブトレインを持つハイブリッド車両にも関する。最後に、本発明は当該ハイブリッド
ドライブトレインを作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にハイブリッド
ドライブトレインは1つの内燃機関および少なくとも1つの電動機を含む。両原動機は、1台の車両における推進力の発生に利用されることができるような、両駆動装置の駆動力の発生に役立っている。
【0003】
特許文献1には、その内燃機関が自己点火作動方式で作動可能なハイブリッド
ドライブトレインが開示されている。開示された当該ハイブリッド
ドライブトレインは、内燃機関が停止している期間中、電動機から供給される低回転数および低負荷のみによって作動される。
【0004】
特許文献2には、ハイブリッド
ドライブトレインの制御方式が開示されており、そこではハイブリッド車両の好ましいルートの始点と終点を含む少なくとも一組のルート入力データが最初に記録される。次に、終点に達するための最適の燃料効率ルートが上記少なくとも一組のルート入力データに基づいて決定される。次に、最適の燃料消費ルートを達成するための駆動装置制御戦略が選択され、この駆動装置制御戦略はいつ内燃機関と電動機が作動され、かつ、いつバッテリが充電されるべきかを決定することを含む。かくして、最終的に駆動装置制御戦略が実施される。
【0005】
内燃機関は、燃焼作動方式の違いにより区別される。火花点火作動方式は、火炎
前面燃焼により作動するものとして一般的に知られている。火花点火作動方式はオットーサイクルエンジンが一般的である。点火装置の助けにより点火時点から火炎
前面燃焼が始まる。それによって火炎
前面伝播する点火位置から空間的に個別の燃焼空間に向かって広がる。それと異なり、自己点火作動方式は基本的に点火装置を持たずに機能するものであり、一般的に
はチャー
ジ圧縮燃焼によって特徴付けられ、そこでは燃焼反応は燃焼空間において多くの空間的に分散された位置において同時に始まる。自己点火作動方式はディーゼル機関において典型的である。
【0006】
ディーゼル機関では、通常、希薄な状態で作動されている期間中、オットー機関の化学量論的な混合気構成が行われる。しかしながら、オットー機関のための最近の火花点火作動方式は、また、稀薄混合気が火花点火されるものとして知られている。例えば、成層チャージを直接噴射と結合した場合、稀薄混合気点火が可能になる。
【0007】
最近のオットー機関は、また自己点火作動方式でも作動することができる。したがって、オットー機関の課題は、これらの自己点火作動方式が比較的低い回転数および/または負荷に於いてのみ確実な作動が可能なことである。より高い回転数および/または負荷において、自己点火作動方式は不安定となり、ノッキング傾向を示す。
【0008】
自己点火作動方式の安定性のために、オットー機関は火花点火によってチャージ圧縮燃焼を始めることにより希望する点火時点を実現することが基本的に可能である。気温や気圧などの周囲条件のハンディキャップにより、火花点火の助けによって確実な自己点火に必要な枠組みが作られることができるので、火花点火により直接的にチャージ圧縮燃焼を起こすことができる。
【0009】
チャージ圧縮燃焼は、火炎
前面燃焼と比べてエネルギー効率が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 10 2007 016 551 A1
【特許文献2】DE 11 2007 000 515 T5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特に高いエネルギー効率を特徴とするハイブリッド
ドライブトレイン、またはハイブリッド車両、または関連する作動方法のために、改善された設計、または少なくとも別の設計を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項の主題により解決される。有利な実施形態は従属請求項の主題である。
本発明は、チャージ圧縮燃焼に基づく低NO
x作動方式を用いた低・中の回転数および/または負荷の領域において、また火炎面燃焼に基づく火花点火作動方式により作動する、より高い負荷の領域において、ハイブリッド
ドライブトレインを有する内燃機関を作動する一般的な思想に基づいている。この低NO
x作動方式は、均一な空気と燃料および任意に再導入される排気ガスの希薄混合気が、点火装置により点火時点で火花点火されることにより火炎面燃焼を開始させ、次にこの火炎面燃焼がチャージ圧縮燃焼を開始させることを特徴とする。この低NO
x作動方式により、チャージ圧縮燃焼は2度誘発され、それは第1に、火炎面燃焼を開始させる点火装置による火花点火により、そして第2に、チャージ圧縮燃焼を開始させる火炎面燃焼によりである。結果的にチャージ圧縮燃焼を導入することになる火炎面燃焼を火花点火により生じさせるためには、適切な方策によって、その都度の燃焼空間に必要とされる温度と圧力の周囲条件が構成されることが求められる。
【0013】
内燃機関の低NO
x作動方式は、比較的高いエネルギー効率と低い大気汚染排気ガス、即ち低NO
x排出量、の組み合わせを特徴とする。しかしながら、内燃機関の出力は低NO
x運転によって制限される。より高出力を実現するためには、チャージは火花点火作動に生成され、そこでは均質な化学量論的な空気と燃料および任意に再導入される排気ガスの混合気が、個別の点火時点で火花点火され、火炎
前面燃焼を誘発するものであり、それは低NO
x作動方式と対照的に、チャージ圧縮燃焼に移行しない。そのためには、個別の燃焼空間に応じて必要な温度と圧力の周囲条件を作るために適切な方策がとられる。火花点火作動方式はより高出力が得られることが特徴である。しかしそのためには効率と大気汚染排気ガスの劣化が代償として受け入れられなければならない。
【0014】
実用的には、ハイブリッド
ドライブトレインの作動は主として低NO
x作動方式に基づいて行われ、効率へのサポートはその時々に電動機によって達成される。
【0015】
一実施形態の特別な長所としては、低NO
x作動方式から火花点火作動方式へ変更するために、圧縮比の低減をもたらすということである。ピストンエンジンとして構成された内燃機関について、圧縮比は圧縮前の全体の燃焼空間と圧縮後の残留空間の比率を意味するものと理解される。したがって、圧縮比は圧縮容積(圧縮後の残留空間)と排気量(圧縮前後の容積差)および圧縮容積(圧縮後の容積)の和の比率として計算される。
【0016】
高圧縮比によって、チャージ圧縮燃焼に基づく、エネルギー効率の高い低NO
x作動方式が実現可能となる。しかしながら、低NO
x作動方式は正に高圧縮比を基礎としている故に、高性能と共にノッキングのような不安定性が発生するので、低出力という制限をもたらす。圧縮比を下げれば、通常の火花点火火炎
前面燃焼の領域に到達し、そこでは高負荷で安定しているが、効率は低い。圧縮比を調節できる内燃機関は、圧縮比を変えるための装置を装備することが可能である。例えばピストンのストロークを可変とすることができる。
【0017】
提供可能な別の便利な実施形態としては、低NO
x作動方式から火花点火作動方式への変更のために、ガス交換バルブのストロークを開口度および/または開口期間に関し増加することができる。低NO
x作動方式ならびに火花点火作動方式において、個別の燃焼空間における適切な周囲条件を得るためにガス交換バルブのストロークを開口度および/または開口期間に関し変えることが必要になることもある。例えば、火花点火作動方式に好適なガス交換バルブのストロークに基づいて、低NO
x運転に好適な周囲条件を提供するために、前記ストロークを開口度と開口期間に関し変更することが必要になることもある。
【0018】
ガス交換バルブのストロークが可変であるような内燃機関は、例えば、ガス交換バルブのストロークを開口度と開口期間に関し調節するための装置を備えている。
【0019】
特に好適な実施形態においては、内燃機関を低・中の回転数および/または負荷の領域において、準定常状態で運転することができる。内燃機関が低・中の回転数および/または負荷で定常的または準定常的に運転されているとき、その特性としては、回転数および/または負荷が変動しても内燃機関の各作動点は変化しないか、ほんの僅か変化するだけであり、したがって内燃機関は当該作動点においてほぼ定常的に運転される。特に、内燃機関が準定常的な運転をしているときは、回転数および/または負荷は比較的僅かな範囲しか調整できない。ここで「僅かな」という表現は、回転数および負荷の個々の範囲において最大20%、好ましくは最大でも10%に制限することを意味する。かくして、当該内燃機関は低・中の回転数および/または負荷の範囲において常に最適の燃費の運転が可能であり、その結果、当該内燃機関は特に高いエネルギー効率を持っている。
【0020】
当該内燃機関の定常運転において所要の設定負荷が現行負荷を越える場合、設定と現行の差は少なくとも電動機によって供給することができる。その場合、各電動機はハイブリッド
ドライブトレインのバッテリからの電源で作動する。
【0021】
定常運転中の当該内燃機関で所要の設定負荷が現行負荷を下回る場合、設定と現行の差は発電機として作動される少なくとも1つの電動機によって吸収される。ここで例えば前述のバッテリが再充電される可能性がある。
【0022】
定常運転中の当該内燃機関で所要の設定負荷が現行負荷を上回り、更に、設定と現行の差が少なくとも1つの電動機の最大出力を上回ることが起こり得る。この場合、低NO
x作動方式での定常運転は火花点火作動方式に切り替えられ、それによって内燃機関は火花点火作動方式でダイナミックに作動されることになる。火花点火作動方式による内燃機関のダイナミック運転によって、内燃機関は回転数と負荷の変化に対して迅速に対応することができる。またそのような高い負荷と回転速度において、各電動機から出力の支援が行われる。
【0023】
本発明によるハイブリッド
ドライブトレインは、内燃機関と少なくとも1つの電動機ならびにバッテリを含む。更に当該ハイブリッド
ドライブトレインは上述の作動方式を遂行し得るように構成され、および/またはプログラムされているコントローラを含んでいる。
【0024】
本発明によるハイブリッド駆動車両は、望ましくは道路走行用の車両であり、シャーシ、ボディ、例えば上述の様式のハイブリッド
ドライブトレインが配置された車体を含む。
【0025】
本発明のさらなる重要な特性および特徴は、従属請求項、図面、図面の基礎である関連する図面の説明により明らかにされる。
【0026】
上述および以下に述べる利点は、個々に指定した組合せだけでなく、その他の組み合わせや特有なものも本発明の主旨に沿うものである限り、適用され得るものと解釈されるものとする。
【0027】
本発明の望ましい実施例は図面に示され、以下の説明において解き明かされており、同じ記号は同じもの、または類似品、または帰納的に同様な組立部分を指すものとする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ハイブリッド
ドライブトレインを持つハイブリッド車両の原理説明用の非常に単純化された概略図である。
【
図2】ハイブリッド
ドライブトレインを持つハイブリッド車両を図解する負荷−回転数グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1において、好ましくは道路走行用の車両であるハイブリッド車両1は、シャーシ2、およびハイブリッド
ドライブトレイン3を含む。この場合、車両1は道路走行用車両を示しており、シャーシ2には車輪およびその他の部品がもうけられていることは明らかである。
【0030】
ハイブリッド
ドライブトレイン3は少なくとも1つの内燃機関4、少なくとも1つの電動機5、ならびに、少なくとも1つの電動機5と適切に接続される少なくとも1つのバッテリ6を含んでいる。
図1において、内燃機関4と電動機5は直列配置されるように示されているが、並列またはその他の配置であってもよい。特に、各電動機5は車両1の駆動車輪に直結されたハブモーターと理解してもよい。
【0031】
ハイブリッド
ドライブトレイン3は入力信号に基づいて内燃機関4および電動機5を制御するコントローラ7を含んでいる。その場合、コントローラ7は、
図2のグラフと共に以下に説明するように合目的的に構成されている。
【0032】
図2に示すグラフは横軸に回転数を、縦軸に負荷を示し、それらは内燃機関4を用いて実現され得るものである。そのグラフにおいて、曲線8は低NO
x作動方式を用いて実現され得るトルク曲線を示す。この方法で達成し得る負荷は曲線8の下側にある分である。低NO
x作動方式に割り当てられた領域は
図2において記号9で示されている。破線で示された経路10は出力を示し、これは低NO
x作動方式の領域9において実現される。
【0033】
トルク曲線8の上側に平行して別のトルク曲線11が破線として示されているが、それは本質的にノッキング限界に関連する境界線である。
【0034】
図2には、さらに火花点火作動方式で作動中の内燃機関4のトルク曲線12が示されている。この場合、火花点火作動方式はトルク曲線12の下側で低NO
x作動方式のトルク曲線8、11の上側に位置する。関連する領域は
図2において記号13として示されている。火花点火作動方式に相当するこの領域13はさらにトルク曲線14で示されており、火花点火作動方式で達成可能な内燃機関4の出力が反映されたものである。両作動方式、即ち、一方の低NO
x作動方式の領域9と他方の火花点火作動方式の領域13は、一方では著しく異なるトルク曲線8、11および12により、また、他方では異なるトルク曲線10および14によって表わされており、識別可能である。
【0035】
矢印15は、低NO
x作動方式の領域9から火花点火作動方式の領域13に到達するための各々の燃焼空間の圧縮比の減少を示している。矢印16は低NO
x作動方式から火花点火作動方式への変化を示している。矢印17は火花点火作動方式から低NO
x作動方式への変化を示している。
【0036】
所要の出力および所要の負荷は、低・中の回転数または負荷の領域9にあり、内燃機関4は低NO
x作動方式で作動される。この場合、燃焼空気比がλ>1である均質な燃料−空気混合気または均質な燃料−排気ガス−空気混合気が、内燃機関4の各燃焼空間において点火装置によって予め設定された点火時点で火花点火され、この火花点火の結果、火炎
前面燃焼が開始され、次にチャージ圧縮燃焼が開始され、またはチャージ圧縮燃焼に移行する。
【0037】
しかしながら、領域13においてより高い回転数および/または負荷または出力が求められた場合、内燃機関4は火花点火作動方式により作動され、それによって燃焼空気比がλ=1である均質な燃料−空気混合気または均質な燃料−排気ガス−空気混合気が、内燃機関4の各燃焼空間において点火装置によって各点火時点で火花点火され、この火花点火の結果、火炎
前面燃焼が開始され、それはチャージ圧縮燃焼に移行しない。
【0038】
低NO
x作動方式すなわち低NO
x燃焼(NAV)の期間中は、チャージ圧縮燃焼に基づく燃焼が支配的になる。それと異なり、火炎
前面燃焼に基づく燃焼が火花点火作動方式において可能になる。
【0039】
矢印16に従って低NO
x作動方式から火花点火作動方式への切り替えを行うためには、コントローラ7が矢印15に従って圧縮比を下げればよい。同時に、コントローラ7はガス変換バルブのストロークを開口度および/または開口期間に関し増加することができる。ここで火花点火作動方式を実現するために必要な周囲条件が作られる。
【0040】
矢印17に従って火花点火作動方式から低NO
x作動方式に切り替えを行い、それによって圧縮比は増大し、ガス交換バルブのストロークを開口度および/または開口時間に関し減少させ、低NO
x作動方式を実現するための周囲条件を作る。
【0041】
内燃機関4は、低・中の回転数および/または負荷の領域9に於いては準定常状態の運転となる。この領域9の中では、内燃機関4は回転数および/または負荷に関して、比較的小さい部分の枠組みの中でのみ変化する。この領域9における内燃機関4の準定常状態運転は、その場合、燃費最適化となる。
【0042】
低NO
x作動方式期間中の所要の設定負荷が内燃機関4の定常運転によって得られた現行負荷を超えた場合、設定−現行の差が少なくとも1つの電動機に伝えられ、又は補償される。この場合、当該電動機5はバッテリ6によって作動される。
【0043】
一方、低NO
x作動方式期間中の所要の設定負荷が定常運転中の内燃機関4の現行負荷を超えた場合、設定−現行の差は電動機5が発電機として作動されることにより吸収される。この場合、生まれた電気はバッテリ6の充電に使われる。
【0044】
低NO
x作動方式から火花点火作動方式への切り替えは、所要の設定負荷が定常運転中の内燃機関の現行負荷を超えた場合、そして更に設定−現行の差が少なくとも1つの電動機5の能力限度を超えた場合に発生する。火花点火作動方式が実施されている領域13においては、内燃機関4がダイナミック運転を行い、そのために内燃機関は広範囲の負荷の変化および回転数の変化が追尾的に発生する。