【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、眼鏡装用者の幾何学的形状パラメータを測定するための測定方法を提供する。前記方法は、画面と、対象と、自らの傾斜角を判定するための手段を備えるコンパクトな画像取得システムと、コンピュータとを有する独立したコンピュータ装置を実現する。前記システムは前記画面に接続されている。前記コンピュータは、画像取得システムの制御と処理される画像の取得を可能にしている。
本発明の方法の主な特徴は、
頭を略水平方向に自然な状態で保ちながら、前方かつ無限遠に位置する点を装用者に観察させるステップであって、1組の眼鏡が、装用者の顔面上の自然な位置を占めるステップと、
この第1の姿勢でフレームの位置の第1の画像を取得するステップと、
自然で快適な位置をとることにより、画像取得システムに対して既知の位置に置かれた目標物を装用者に観察させるステップであって、前記観察によって人の頭が傾動し、1組の眼鏡が装用者の顔面上で第1の姿勢に対して不変の位置を保つステップと、
第1の姿勢で使用されたものと同じ画像取得システムにより、この第2の姿勢におけるフレームの位置の第2の画像を取得するステップと、
2枚の画像のうちの一方から眼の位置を判定するステップと、
装用者の幾何学的形状パラメータを判定する目的で、眼の位置、第1の姿勢のフレームの位置、第2の姿勢のフレームの位置、および画像取得システムの傾斜角から取得された2枚の画像をコンピュータ処理するステップであって、前記処理が、第1の位置と第2の位置との間で、眼から注視点までの注視軸に対する装用者の顔面の傾きの違いを考慮するための演算補正を含むステップと、
測定結果を提供するステップと、
を備えていることである。
【0006】
かかる方法の原理は、眼鏡装用者が、自然で快適な2つの姿勢をとること、次に、その2つの姿勢に対応する眼鏡フレームの2枚の画像を取得すること、そして最後に、所望される幾何学的形状パラメータをその2枚の画像から推定するために、その2枚の画像をコンピュータ処理することに依存する。
画像取得システムは、動画または静止画を撮るための少なくとも1台のカメラを備えうる。画像取得システムは、両方の画像を2つの姿勢で取得するために、同じものを指定する必要がある。画像取得システムの軸の傾斜角は、その傾斜角による視差誤差を補正できるように、特に正確に把握する必要がある。画像取得システムは、所与の傾斜角で静止させて、あるいは可能な傾斜角の範囲で移動させて使用されうる。第1の構成では、装用者が、自身の顔がカメラの視野の中央に来るように位置を変える。第2の構成では、取得システムの傾斜角が、装用者の顔が適切にフレーム内に収まるように、装用者の位置に合わせられる。
「コンパクト」という用語は、前記画像取得システムに適用された場合、システムが小型であり、テーブルや机など従来の家具に置けるように、かつ適切な角度で傾けられるように簡単に取り扱えるということを意味する。目標物は、画像取得システムによって運ばれることが好都合である。このようにすれば、本発明の方法を実現するために必要な機器があまり分散しない。
本発明の測定方法の別の好適な実現形態では、目標物が画像取得システム自体によって構成される。取得システムによって2つの姿勢で撮られた画像は、装用者の眼を基準にして位置付けられた眼鏡フレームを主に示す。所望のパラメータを取得する目的で画像をコンピュータ処理するのに必要な情報のすべてが、前記眼鏡フレームの位置が装用者の眼を基準にして3次元で表示された結果として前記画像に明瞭に表示される必要がある。フレームおよび装用者の眼の両方が画像に明瞭かつ正確に表示されることが基本である。本発明の方法では、装用者の顔面上における眼鏡フレームの位置が、第1の姿勢と第2の姿勢との間で一定のままである。顔面上で正しく位置付けられると、眼鏡の位置は、一方の位置から他方の位置に再調整されない。幾何学的形状パラメータは、従来の三角法関係に基づいて前記画像から容易に推定できる。なお、画像処理は、顔面が、第1および第2の姿勢における装用者の眼と注視点との間の視軸に対して異なる位置にあることを考慮するために、取得されたパラメータを補正計算することを含む。この差は小さく、角度にして数度ではあるが、判定されるパラメータの値への影響は一般に大きくなりうる。フレームは、3次元におけるフレームの向きと傾斜角とを画像に正確に表示できるように、マーカを備えたクリップという形態の位置特定手段を任意で備えうる。画面の主な働きは、装用者が2つの姿勢をとっている間、取得画像を参照できるようにすることである。また、所望の幾何学的形状パラメータの測定結果を提供しうる。この方法は、眼鏡装用者によって、あるいは眼鏡士でありうるオペレータによって直接制御されうる。
説明中の曖昧さ避けるため、「1組の眼鏡」および「フレーム」という用語は均等とみなすべきである。「傾動」という用語は、水平軸を中心に頭を前後に回動する動きに使用される。
本発明の方法は、装用者の側での様々な実観察状況に現実的な手法を提案するために測定ステップを簡便化する働きをする。そのため、かかる方法によって判定されたパラメータは、大半が理論的な計算によって判定されたパラメータよりもランダム誤差が少ない。
【0007】
フレームには、マーカを備え、前記フレームに固定されたクリップという形態の位置特定手段が装着されており、前記フレームの傾斜角が1台のカメラから評価されることが好都合である。マーカを備えたクリップにより、装用者の顔面におけるフレームの傾斜角を正確に見ることができる。かかる状況下で、カメラによってキャプチャされた画像における前記クリップの寸法的特徴からこの傾斜角を判定するために必要なカメラは1台だけである。前記カメラは、本発明の方法で実現された画像取得システムの基幹的部分を形成するものと想定される。
【0008】
本発明の方法の別の好適な実施形態では、立体方式で使用される少なくとも1台のカメラによってフレームの傾斜角が評価され、前記カメラは2枚の画像を撮る。このカメラは、基準要素が表示された2枚の画像を撮る。この要素は、装用者の顔面上または装用者の背後の壁に等しく配置されうる。前記画像は、フレームの傾斜角を判定する働きをする。
【0009】
フレームの傾斜角は、立体方式で使用される少なくとも2台のカメラによって評価されることが好ましい。この構成では、少なくとも2つの異なる箇所に置かれた少なくとも2つの別個のカメラおよび毎回のフレーム写真撮影が、マーカを備えたクリップに頼らずに前記フレームの傾斜角を判定する働きをする。
【0010】
画像取得システムは、高解像度カメラであることが好都合である。一般に、高解像度カメラとは、1メガピクセルよりも高い解像度を有するカメラのことである。カメラの解像度が高いほど、測定値の精度は高い。
【0011】
取得システムの傾斜角を判定するための手段は、傾斜計を備えることが好ましい。画像取得システムは、予め所与の位置で固定されたままである。しかし、非常に大柄の人の場合には、満足のいく眼および眼鏡フレームの画像を得るために画像取得システムを傾ける必要がありうる。傾斜角は、測定結果から導出されるその後のパラメータ計算に統合するために把握しておく必要がある。
【0012】
前記方法によって測定された幾何学的形状パラメータは、瞳孔とレンズVの底辺との間の高さHと、装用時前傾角ΘPであることが好ましい。なお、フレームが装用者の鼻の上に置かれ、装用者が遠くを注視している場合、装用時前傾角は、垂直面に対するレンズVの傾斜角と一致するという点に留意すべきである。
【0013】
測定高さHmは、レンズVと眼との間の距離DVOを考慮するために補正されることが好ましい。
【0014】
レンズと眼との間の距離DVOは、2枚の画像間の測定差異から推定されることが好ましい。装用者が2つの異なる姿勢をとっている間に撮られた2枚の画像により、レンズと眼との間の距離を計算できる。この距離DVOは、本発明の測定方法で測定できる別の幾何学的形状パラメータである。
【0015】
オペレータは、眼鏡装用者の前に位置取り、画像取得システムを調節して、本発明の測定方法の各ステップを制御することが好ましい。この方法は、眼鏡装用者の幾何学的形状パラメータの測定値を得るために、眼鏡士によって実施されうる。そのため眼鏡士は、両方の姿勢による使用可能な眼およびフレームの画像の取得に都合がいいように、画像取得システムを操作する。そのために、画面は、前記画像をリアルタイムで見る眼鏡士と対面する向きにする。また、写真撮影を開始し、コンピュータによる画像処理を開始するのも眼鏡士である。本発明の測定方法は、主に眼鏡士の施設で使用する目的で開発されたものである。
【0016】
取得システムは、装用者の顔の位置に合わせるために、傾斜角が調節されることが好ましい。この構成の場合、取得システムは、フレーム内に正しく収められた装用者の顔の画像を取得するために、システムの傾斜角を変えることによって移動させる。
【0017】
本発明の測定方法の別の好適な実現形態では、取得システムの傾斜角が一定であり、装用者は、顔が画像の中央に写るように適切な高さに位置決めする。画像取得システムは、傾斜角を調節できない場合がある。かかる状況下では、取得システムが所与の位置で固定され、装用者の顔を移動させて前記取得システムの視野の中央に持ってくる。この構成の場合、正確で信頼できる測定値を得る上で必要な状況を組み合わせるために、装用者が事前にいくつかの位置決め制約を受ける。
【0018】
本発明は、本発明の測定方法を実施するための測定装置も提供する。本発明の装置の主な特徴は、コンピュータと、傾斜計を備えた少なくとも1台のカメラと、前記カメラで撮影された画像を測定結果と一緒に表示できる表示画面と、を備えており、画面の位置とカメラの位置とを互いに独立して調節できるという点である。この測定装置は、ある特定の制約的な配置を必ずしも必要とせずに、所望の測定値と相互作用し、それらの測定値を提供するために各種部品が互いに接続されている測定キットと考えることができる。この種の装置は、互いに接続する方法についてある程度の柔軟性を示すため、テーブルや机の上、あるいは地面など、どのような環境でも容易に設置できる。カメラの位置に対する画面の位置を独立的に調節できることにより、本発明の測定装置を複数の構成で使用できる。そして、前記方法を実現するのに必要な各種機器をできるだけ正確に位置決めすることによって本発明の測定方法の成果を高めうる。
【0019】
測定装置は、画面、第2のカメラ、傾斜計、およびコンピュータを組み合わせたタブレットと、傾斜計を装着した前記少なくとも1台のカメラとによって構成されることが好ましい。このバージョンの装置は、一層コンパクトなバージョンの1つであるため、狭いスペースで設置できる。装置の各種構成部品を小型のタブレットにまとめることにより、測定装置は、装用者またはオペレータが1つのキットから方法のすべてを制御することができ、動き回ったり、部品を互いに移動させたりすることなく必要な調整ができるため、使用時の柔軟性がさらに高まる。ただしタブレットは、装用者またはオペレータが取り扱いやすい小型の品を想定する必要がある。この種の品は特に、正確な箇所に設置して所望の方向に向けられるように、部屋の中で簡単に持ち運ばれうる。タブレットは、タッチ画面を有しうるか、あるいはマウスを使用して従来通りに使用されうる。カメラは、タブレットに直接固定されたり、タブレットを支持する目的でも使用されるサポートに固定されたりしうる。
【0020】
この装置は、タブレットとカメラとが固定されるサポートを備えることが好ましい。このサポートによって、カメラをタブレットのすぐ近く、具体的には両者間を数センチメートル未満の距離で置けるようにすることにより、装置をよりコンパクトにできる。
【0021】
カメラおよびタブレットは、垂直面のどちら側にも位置し、両者間で15°〜45°までの範囲の角度を成すことが好ましい。この角度は、30°であることが好ましい。このようにして、画面はある方向に向けられ、カメラは反対方向に向けられる。この配置により、眼鏡士は、前記タブレットの背面に位置するカメラによって画像を撮影し、眼鏡装用者の顔をタブレットの画面上で直接観察できる。この構成によれば、画像を取得するために眼鏡士がカメラを装用者の顔と同じ高さに置く必要がない。測定装置をテーブルまたは机に置いた後で、タブレットおよびカメラの傾斜角をできるだけ正確に調節すれば十分でありうる。
【0022】
眼鏡装用者が特定の機器を運ぶ必要が一切なく、一連の制約的かつ反復的な姿勢をとる必要がない限り、装用者の幾何学的形状パラメータを測定するための本発明の方法は、極めて人間工学に則ったユーザフレンドリーな利点を有する。また、画面を介して、あるいは印刷された文書によって、測定結果を装用者または眼鏡士に直ちに提供できるという利点もある。最後に、本発明の方法で実現された測定装置は小型であるため、狭い部屋やテーブルあるいは机の上にも設置できる。
【0023】
図1〜
図9を参照しながら、本発明の測定方法の好適な実現形態について以下詳しく説明する。