(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084657
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】患者に流体を輸送する、無線通信を有するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20170213BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/142 530
A61M5/168 516
【請求項の数】22
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-120454(P2015-120454)
(22)【出願日】2015年6月15日
(62)【分割の表示】特願2012-519585(P2012-519585)の分割
【原出願日】2010年6月30日
(65)【公開番号】特開2015-205193(P2015-205193A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】12/498,301
(32)【優先日】2009年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505403186
【氏名又は名称】ケアフュージョン 303、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】バターフィールド、ロバート、ディー.
【審査官】
鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−34845(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/079528(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/049252(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/045896(WO,A2)
【文献】
国際公開第2008/112011(WO,A2)
【文献】
国際公開第2008/117214(WO,A1)
【文献】
特表2012−532003(JP,A)
【文献】
特開平1−297076(JP,A)
【文献】
特表平11−508465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て点滴液(IV)輸送セットと非使い捨てIVポンプとを備える装置であって、
前記使い捨て点滴液(IV)輸送セットは、
前記非使い捨てIVポンプに搭載されるよう構成された使い捨てIVカセットと、
IV液の検知領域内に配置された場合に輸液パラメータを検知するよう構成されたセンサと、
プロセッサと、
前記使い捨てIVカセットおよび前記センサと結合された送受信部であって、前記IVポンプと無線通信するように構成された送受信部と、を備え、
前記送受信部はさらに、エネルギを放射的に受け、その放射的に受けたエネルギを使用して動作し、かつ、前記センサに動作電力を提供するよう構成され、
当該使い捨てIV輸送セットは輸液動作が開始可能となる前にプログラムされる必要がある動作パラメータを格納し、当該使い捨てIV輸送セットは前記動作パラメータを前記非使い捨てIVポンプ上の中央処理装置(CPU)に伝達し、
前記プロセッサは、使用ログを維持し、全使用時間を保持し報告するように構成され、
前記非使い捨てIVポンプは、流体から流体的に絶縁されたまま、前記使い捨てIV輸送セットを受け入れ、かつ、前記使い捨てIV輸送セットと無線で結合されるように構成され、
前記CPUは、前記センサの動作パラメータを無線で制御するように構成され、前記プロセッサに前記使い捨てIV輸送セットの全使用時間を問い合わせ、前記全使用時間が時間基準を超える場合、輸液セッションを開始するために前記使い捨てIV輸送セットをロードする動作を停止するよう構成される、装置。
【請求項2】
前記センサは、流体圧力センサ、エアインライン検出センサおよび流体温度センサのうちのひとつである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記送受信部は、近距離無線通信(NFC)プロトコルを使用して通信するよう構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記使い捨てIV輸送セットは、保持されるデータを放射殺菌から保護するよう構成された部分を有するメモリをさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記メモリ、前記センサおよび前記送受信部と通信可能に結合される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
本IV輸送セットは前記IVポンプから流体的および電気的に絶縁されるよう構成される、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記メモリは一意的識別値を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサおよび前記センサは、単一の集積回路(IC)パッケージに実装される、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記センサは、前記プロセッサを有する集積回路パッケージに対して外側にあり、前記センサは、前記集積回路パッケージに対して外側にあるコネクタを介して前記プロセッサと通信可能に結合される、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記コネクタは蒸着導電性ワイヤを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
流体ポンプのプロセッサに実装される流体ポンプの作動方法であって、
前記流体ポンプに搭載されている点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分の第2の無線送受信部であって前記点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分およびセンサに結合された前記第2の無線送受信部を検出するために第1の無線送受信部を用いて無線スキャンを行うステップと、
前記第2の無線送受信部によって前記流体ポンプからエネルギを無線で受け、前記センサに動作電力を提供するステップと、
前記第2の無線送受信部によって前記流体ポンプと無線通信するステップと、
輸液セッションを開始するために、前記プロセッサが、検出された点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分を前記プロセッサ上にロードするステップと、
前記プロセッサが、前記使い捨て部分の第2プロセッサに前記使い捨て部分の全使用時間を問い合わせ、前記全使用時間が時間基準を超える場合、前記ロードするステップを停止するステップと、
前記プロセッサが、検出された点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分を前記流体ポンプとの動作のためにプログラムするステップと、
前記点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分と無線通信するステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記無線通信するステップは、周期的にひとつ以上の流体パラメータを測定することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記無線通信するステップは、測定された流体パラメータの値が許容基準を満たさない場合、警告を発することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記無線通信するステップは、測定された流体パラメータの値が許容基準を満たさない場合、前記プロセッサが、前記輸液セッションを一時停止するための信号を発生することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッサが、測定された流体パラメータの追加的測定を周期的に行うことと、
追加的測定からの値が許容基準を満たす場合、前記プロセッサが、前記輸液セッションを再開するための信号を発生することと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
輸液のための装置であって、使い捨て部分と非使い捨て部分とを備え、
前記使い捨て部分は、
流体入口と、
前記入口と流体的に連結された流体出口と、
前記入口と前記出口との間の位置で輸液パラメータを測定するよう構成されたセンサと、
プロセッサと、
前記センサと結合された送受信部であって前記輸液パラメータの測定値を無線で伝送するよう構成された送受信部と、を含み、
前記送受信部はさらに前記非使い捨て部分と無線通信するよう構成され、前記送受信部はさらに、エネルギを放射的に受け、その放射的に受けたエネルギを使用して動作し、かつ、前記センサに動作電力を提供するよう構成され、
前記非使い捨て部分は前記流体から流体的に絶縁されたまま、前記使い捨て部分を受け入れ、かつ、前記使い捨て部分と無線で結合されるよう構成され、
前記非使い捨て部分は、前記センサの動作パラメータを無線で制御するよう構成された中央処理装置(CPU)を含み、
前記プロセッサは、使用ログを維持し、全使用時間を保持し報告するよう構成され、
前記CPUは、前記プロセッサに前記使い捨てIV輸送セットの全使用時間を問い合わせ、前記全使用時間が時間基準を超える場合、輸液セッションを開始するために前記使い捨てIV輸送セットをロードする動作を停止する、装置。
【請求項17】
前記使い捨て部分は、前記非使い捨て部分からの無線送信されたエネルギによって無線で電力供給される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記使い捨て部分はさらに、識別番号を前記非使い捨て部分に無線送信するよう構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記CPUはさらに、前記動作パラメータに関するユーザ入力を受けるよう構成される、請求項16から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記動作パラメータは前記センサによるサンプリングレートである、請求項16から18のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
点滴液(IV)の輸送システムであって、
請求項1に記載の装置を備えるシステム。
【請求項22】
非使い捨てIVポンプに搭載されるよう構成された使い捨て点滴液(IV)輸送セットを備える装置であって、
IV液の検知領域内に配置された場合に輸液パラメータを検知するよう構成されたセンサと、
前記使い捨てIV輸送セットのプロセッサと、
前記センサと結合された送受信部であって、前記IVポンプと無線通信するよう構成された送受信部と、を備え、
前記送受信部はさらに、エネルギを放射的に受け、その放射的に受けたエネルギを使用して動作し、かつ、前記センサに動作電力を提供するよう構成され、
前記センサの動作パラメータは、前記非使い捨てIVポンプにおける中央処理装置(CPU)によって制御されるように構成され、
前記プロセッサは、使用ログを維持し、全使用時間を保持し報告するよう構成され、
前記非使い捨てIVポンプは、流体から流体的に絶縁されたまま、前記使い捨てIV輸送セットを受け入れ、かつ、前記使い捨てIV輸送セットと無線で結合されるように構成され、
前記CPUは、前記プロセッサに前記使い捨てIV輸送セットの全使用時間を問い合わせ、前記全使用時間が時間基準を超える場合、輸液セッションを開始するために前記使い捨てIV輸送セットをロードする動作を停止するよう構成される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に輸液システムに関し、特にセンサデータが無線で通信される輸液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
点滴液(IV)輸送システムは、患者に流体を輸送するかまたは患者の体から流体を引き出すために使用される。輸液システムは典型的には、非使い捨て部分に取り付けられた使い捨て部分を含む。動作中、輸送されている流体は使い捨て部分と接触するが、通常は非使い捨て部分からは分離されている。殺菌および汚染の観点から、通常、使い捨て部分は使用された後廃棄される。一方で、非使い捨て部分は一般にシステムを通じて輸送される流体から流体的に分離されているので、非使い捨て部分を複数の輸液作業について再利用できる。輸液作業の間、エアインライン(AIL)センサや流体圧力センサや流体温度センサなどのひとつ以上のセンサを使用して輸液パラメータを監視できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
センサの動作に関するひとつの問題は、流体パラメータの測定精度が、介在分離膜の存在により悪影響を受けうるということである。例えば、負の流体圧力によって分離膜がつぶれると、圧力センサは不正確な測定結果を生成しうる。分離膜によって引き起こされる測定の不正確さを克服するために、ある従来技術に係る輸液システムは、センサ要素を輸送される流体と接触するよう配置していた。しかしながら、これらのシステムは、電力を供給するために、センサまで伸びる電気ワイヤおよび/またはセンサに伴う他の電子部品を必要とする。非使い捨て部分をセンサ要素に接続する電気ワイヤの存在により、そのようなシステムはある欠点に苦しむこととなる。その欠点は、センサ要素から予期しない漏れが生じた場合、電気ワイヤを伝って流体が非使い捨て部分まで漏れ伝わり、非使い捨て部分を汚し非使い捨て部分に損傷を与えうるということである。さらに、そのように電気ワイヤを流体の近くに配置することにより、輸液システムに接続される患者に予期せぬショックを与える危険性が増大する。そのようなショックは患者に害をなすであろう。
【0004】
したがって、輸液システムによる輸液の間に輸液パラメータを測定するための現行のシステムおよび方法には懸念が存在する。これらは測定精度および潜在的なショックハザードを含むが、それらに限られる必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のおよび他の懸念は、本開示において説明される種々の構成に係る輸液システムおよび方法によって解消される。
【0006】
ある例示的な態様では、点滴液(IV)の輸送システムの使い捨て部分であって、IV液の検知領域内に配置された場合に輸液パラメータを検知するよう構成されたセンサと、輸液システムの非使い捨て部分と無線通信するよう構成された送受信部と、を備える使い捨て部分が開示される。
【0007】
第2の例示的な態様では、流体ポンプのプロセッサに実装される輸液方法が開示される。この方法は、使い捨て点滴(IV)輸送セットを検出するために無線スキャンを行うことと、輸液セッションを開始するために、検出された使い捨てIV輸送セットをプロセッサ上にロードすることと、検出された使い捨てIV輸送セットを流体ポンプとの動作のためにプログラムすることと、IV輸送セットと無線通信することにより輸液セッションを監視することと、を含む。
【0008】
第3の例示的な態様では、輸液のための装置であって、輸液パラメータを測定するよう構成されたセンサを含む使い捨て部分と、流体から流体的に分離された非使い捨て部分と、を備え、非使い捨て部分は、センサの動作パラメータを無線で制御するよう構成された中央処理装置(CPU)を含む、装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施の形態の上述のおよび他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかとなるであろう。
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態で使用される輸液システムを示すブロック図である。
【
図2A】本開示の所定の構成に係る、使い捨て部分での流体測定システムを示すブロック図である。
【
図2B】本開示の所定の構成に係る、非使い捨て部分での流体監視システムを示すブロック図である。
【
図3】本開示の所定の構成に係る、オフチップセンサを有する流体測定システムを示すブロック図である。
【
図4】本開示の所定の実施の形態にしたがって行われる例示的な輸液動作を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の所定の実施の形態にしたがって行われる例示的な輸液動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の所定の実施の形態にしたがって行われる例示的な輸液動作を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態を使用する輸液システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施の形態は、部分的には、互いに無線通信するよう構成された使い捨て部分および非使い捨て部分を有する輸液システムを提供することによって、流体パラメータの測定に関する課題を指向し解決する。ある態様では、使い捨て部分はアクティブな電子部品(電源)を有さないよう構成され、非使い捨て部分から動作電力を無線で受けるよう構成される。ある態様では、輸液センサは使い捨て部分に配置される。
【0012】
図1は、本開示の所定の構成に係る輸液システム100を示す。使い捨て部分102は流体測定システム200を含み、非使い捨て部分104は流体監視システム256を含む。使い捨て部分102および非使い捨て部分104は無線通信リンク110を介して通信可能に結合される。加えて、使い捨て部分102および非使い捨て部分104は互いに流体的に分離されるよう構成されており、それによって、一方から他方へ、偶然にしろ意図的にしろ、流体の通路が形成されるのを避けることができる。使い捨て部分は、流体測定システム200が流体搬送チューブ108に検出可能な程度に近くなるよう配置される。非使い捨て部分104は、通信リンク106を介してユーザと通信するよう構成される。例示を目的とし限定を目的とせずに、ある構成では、使い捨て部分102は点滴液(IV)輸送セットであり、そのセットは非使い捨て部分104の中にロードされ、非使い捨て部分104は、カーディナルヘルス社によって製造されるGEMINI(米国特許商標庁登録)またはMEDLEY(米国特許商標庁登録)などの大容量ポンプ(LVP)モジュールであってもよい。
【0013】
図1を参照すると、無線通信リンク110は一般に、近くの他の医療機器と干渉しない周波数で動作する。同様に、通信周波数は、病院環境においてよく見られる他の無線送信器(例えば、無線ローカルエリアネットワーク製品)からの望ましくない干渉を避けるよう選択される。ある構成では、使い捨て部分102と非使い捨て部分104との物理的距離は数センチメートル程度に制限される。このため、無線通信リンク110での通信のために近距離無線通信(NFC)技術を使用するのが好適である。大抵の医療アプリケーションでは約100キロビット毎秒のデータスループットを有する通信リンク110で十分であるが、本開示の実施の形態はデータスループットの特定の範囲に限定されるものではない。非使い捨て部分104の近く(例えば、数センチメートル内)にある使い捨て部分102以外の使い捨て部分102と非使い捨て部分104との通信を避けるために、国際標準化機構(ISO)のISO−14443明細書に記載されるNFC技術などの短距離通信を使用すると有利である。これにより、ある輸液システムの使い捨て部分と近くにある別の輸液システムの非使い捨て部分との間の誤った接続を避けることができる。ある構成では、例えば電気電子技術者協会(IEEE)によって規定される無線通信規格の802.1xスイートに基づく、より長距離の無線通信が使用されてもよい。
【0014】
図2Aは、本開示の所定の構成に係る、使い捨て部分102に実装される流体測定システム200を示すブロック図である。図示の実施の形態では、流体測定システム200は、センサ1(要素202)からセンサn(要素204)までを含むセンサグループと通信可能に結合されたプロセッサ201を含む。一般に、数字nは1以上である。センサ要素202および204は、例えば流体圧力センサ、流体温度センサ、エアインラインセンサなどであってもよい。プロセッサ201はさらに、メモリ206および無線周波数(RF)送受信部208と、ワイヤ(オーミック)接続を介して通信可能に結合される。
【0015】
図2Aを参照すると、センサ202、204はそれぞれ、検出領域212、214において流体チューブ108と検出可能に接触するよう構成される。ある構成では、センサ要素202、204は、流体チューブ108内の流体と直接接触するよう実装されてもよく、検出領域212または214は流体の漏れを防ぐためにシールされてもよい(
図2Aではシールは示されていない)。ある構成では、分離膜(
図2Aでは不図示)が検出領域212または214に設けられてもよい。分離膜は流体の漏れを防ぐバリアとして機能してもよい。分離膜はセンサ材料を、流体チューブ108内の流体に曝されることから保護する。ある構成では、いくつかのセンサは分離膜によって流体から分離されており、一方で他のセンサは流体と直接接触するよう構成される。ある構成では、RF送受信部208はさらに、他の電気的要素に電力を供給するためにおよび流体パラメータの検出動作のために、エネルギを放射的に受け取るよう構成される。ある構成では、流体測定システム200は完全にパッシブであってもよい(すなわち、電池などの電源によって電力供給されなくてもよい)。
【0016】
図2Bは、本開示の構成に係る、非使い捨て部分104に実装されたポンプ流体監視システム256の部分を示すブロック図である。ポンプ流体監視システム256はポンプRF送受信部252と中央処理装置(CPU)250とポンプメモリ254とを備え、それら全ては互いに通信可能に構成される。ポンプ流体監視システム256はさらに、インタフェース258を介して有線または無線によりユーザおよび/またはネットワークと通信するよう構成され、その通信はユーザから制御メッセージを受けることおよびユーザに警告および他のメッセージを報告することを含む。ポンプRF送受信部252はRF送受信部208を介して流体測定システム200と通信する。
【0017】
図3は、本開示の所定の態様に係る、使い捨て部分102に実装される流体測定システム200の他の例示的な構成を示す。
図3に示されるように、プロセッサ201およびセンサグループのひとつまたは複数または全てのセンサ202、204は単一の集積回路(IC)パッケージ200’に実装されてもよく、一方いくつかのセンサはプロセッサ201を含むICパッケージ200’の外に設けられてもよい。
図3に示される構成では、センサn(要素204)はICパッケージ200’の外に示されている。センサ204は外部コネクタ304を介してプロセッサ201と通信可能に結合される。ある実施の形態では、コネクタ304は使い捨て部分102の蒸着導電性ラインによって実装されてもよい。センサ204への接続をそのように製作することにより、流体測定システム200’を小型化でき、かつコネクタ304に沿った流体の予期せぬ漏れの可能性を最小化できるので有利である。
【0018】
図4は、非使い捨て部分104で実行される例示的なプロセスを示す。ある実施の形態では、プロセスは非使い捨て部分104に提供されている中央処理装置(CPU)250において実行される。ある実施の形態では、プロセスはインタフェース258を介して非使い捨て部分104と通信するコンピュータで実行される。例えば、ある実施の形態では、非使い捨て部分104はポンプであり、プロセスはポンプ104のCPU250で実行される。ある実施の形態では、非使い捨て部分104は医療設備に配置されたコンピュータネットワークの一部であり、患者側コンピュータまたは医療設備の他のコンピュータと通信可能に接続されてもよい。例示的な医療設備通信ネットワークはバターフィールドによる米国特許出願公開第20060026205号公報に開示されており、その出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
図4を参照すると、動作402において、CPU250は無線スキャンを行い、使い捨てIV輸送セットの存在を検出する。無線スキャンは種々の既知の技術を使用して行われてもよい。例えば、ある構成では、CPU250はビーコン信号を送信しそのビーコン信号に応答する形でのIV輸送セットからの応答を待つことにより、使い捨てIV輸送セットの存在をスキャンしてもよい。ある実施の形態では、CPU250は送受信部252に取り付けられたアンテナ周辺の電磁場の変化を検出することによって使い捨てIV輸送セットの存在を検出してもよい。
【0020】
動作404において、CPU250は検出されたIV輸送セットをロードし、輸液セッションを促進する。ロード動作は、使い捨て部分102の能力を識別し、その使い捨て部分102が輸液動作に適していることを確認することを含む。動作404において、CPUは使い捨てIV輸送セットに識別番号を問い合わせる。ある構成では、識別番号は使用ログを維持するために使用される。ある構成では、プロセッサ201は全使用時間を保持し報告するよう構成される。ある構成では、動作404の間、CPU250はプロセッサ201に全使用時間を問い合わせ、その全使用時間が(例えば、システム100が配置される病院によって設定される)時間基準を越える場合、CPU250は、使い捨て部分102は輸液セッションに適していないと決定し、プログラム動作405を行うことなしにロード動作404を停止してもよい。ロード動作はさらに、輸液動作が開始可能となる前にプログラムされる必要がある動作パラメータの識別を行ってもよい。例示的な動作パラメータは、センサによるサンプリングレート、センサにより要求される電力量、検出された使い捨てIV輸送セットによる動作期間などを含む。
【0021】
図4を参照すると、動作405において、CPU250は検出された使い捨てIV輸送セットを動作のためにプログラムする。ある構成では、CPU250はまず検出された使い捨てIV輸送セットに現在保持されている動作パラメータを読み出す。ある構成では、CPU250は、使い捨てIV輸送セットの一意な識別番号を使用して、医療設備通信ネットワークの別のコンピュータから、検出された使い捨てIV輸送セットのための動作パラメータを検索する。ある構成では、CPU250は、使い捨てIV輸送セットに配置されているセンサの動作パラメータに関するユーザ入力を受けるよう構成される。例えば、ある構成では、CPU250はまず検出された使い捨てIV輸送セットの識別番号を読み出すよう構成される。次に、CPU250は、病院通信ネットワークに配置されている病院データベースから、検出されたIV輸送セットのための動作パラメータの許容範囲を検索する。そしてCPU250は、許容範囲調整を伴う動作パラメータのユーザへの提示を促進する。最後に、CPU250はユーザ入力を検査し、ユーザ入力がパラメータについての許容値範囲に違反していないことを確かめる。動作406において、CPU250はプロセッサ201に動作パラメータを送信し、検出されたIV輸送セットを適切な動作パラメータでプログラムした後の輸液セッションを制御する。
【0022】
図5は、上述の動作406で実行される例示的なプロセスを示す。動作502において、CPU250はひとつ以上の流体パラメータを測定する。CPU250は、使い捨て部分102(検出されたIV輸送セット)に配置されているセンサ202、204から測定されたセンサ値を集めることによって、測定を行う。したがって、本開示のある態様では、使い捨て部分102は、非使い捨て部分104に輸液パラメータの測定値を無線送信するよう構成されてもよい。ある構成では、CPU250は、プロセッサ201と通信し、センサグループのひとつ以上のセンサ202、204によって集められた流体パラメータ値を集めることによって測定を行ってもよい。例えば、ある構成では、CPU250は、AILセンサからのセンサ測定を集めることによって、流体チューブ内における空気の存在を検出する。ある構成では、CPU250は、流体圧力センサからのセンサ測定を集めることによって、流体圧力を測定する。CPU250はプロセッサ201に対して、測定が行われるべきサンプリングレート(例えば、毎秒1測定)を指定する。ある構成では、CPU250は測定をポーリングする。すなわち、CPU250は測定値を受けるためのリクエストを送信し、プロセッサ201は測定された流体パラメータ値を渡すことによって応答する。ある構成では、CPU250に対して測定がプッシュされる。すなわち、プロセッサ201は周期的に(例えばステップ405においてプログラムされた動作パラメータに基づいて)センサ202、204をサンプリングし、サンプリングされたセンサ値をCPU250に送信してもよい。ある構成では、CPU250が決定する通りに、センサ測定はポーリングおよびプッシュの両方によって周期的に行われてもよい。
【0023】
動作504において、CPU250は測定値(または複数の測定値)が許容基準を満たしていないかどうかを検査する。ある構成では、許容基準は許される値の範囲である。ある構成では、許容基準は許される最小しきい値または許される最大しきい値である。ある構成では、測定されたパラメータが許容基準を満たしていることが見出された場合、CPU250は輸液セッションを続け、動作502と同様な流体パラメータ値の測定をさらに続ける。測定されたパラメータ値が許容基準を満たさない場合、CPU250は動作506において適切な修正措置をとる。ある構成では、CPU250は警告を発し、測定パラメータについての測定値および許容値をユーザに提示する。
【0024】
図6は、CPU250で実行される例示的なプロセスを示す。動作602において、CPU250は流体パラメータを測定する。動作604で、CPU250は、測定されたパラメータ値が許容基準を満たすかどうかを決定する。測定された値が許容基準を満たさない場合、動作606においてCPU250は実行中の輸液セッションを一時停止する。次にCPU250は動作602に戻り、流体パラメータを測定し続ける。例えば、CPU250は、測定されたパラメータ値が流体チューブ108内に指定量の空気が存在することを示す場合、輸液を停止する。CPU250は、AILセンサからの追加的な測定を周期的に行うことを継続してもよい。
【0025】
図6を参照すると、プロセス604においてCPU250が追加的な測定から値を測定し、その測定値が許容基準を満たす(例えば、流体チューブ108内に許可できない量の空気が存在しない)ことを見出した場合、動作608においてCPU250は輸液セッションが一時停止されたかどうかを検査する。輸液セッションが一時停止されていた場合、動作610においてCPU250はその一時停止されていた輸液セッションを再開し、動作602に戻って流体パラメータを測定する。しかしながら、動作608において輸液セッションが一時停止されていなかった場合、動作602においてCPU250は流れパラメータの測定を続ける。
【0026】
図7は、本開示のある態様に係る例示的な輸液システム700のブロック図である。輸液システム700は、ポンプ筐体724に取り付けられた2つの容器702および704を備える。第1チューブ706は容器702と接続され、容器702からバルブ714へ流体が流れることを可能とする。第2チューブ708は容器704に設けられ、流体が容器704から流れ出てバルブ716へと流れこむことを可能とする。第1エアインライン(AIL)センサ710および第2AILセンサ712はそれぞれ、容器702および704からの流体流内の空気を検出するために設けられてもよい。ある実施の形態では、単一のAILセンサ(不図示)が設けられてもよく、このセンサはバルブ714および716とポンプ718との間に配置されてもよい。バルブ720の後のポンプ718の患者側に別のAILセンサ722が設けられてもよい。
【0027】
動作中、輸液装置700は、流体を容器702および704の一方または両方から患者側へ輸送するために使用される。ポンプ718はバルブ714、716および720の開閉を制御し、流体を適切なチューブ706、708から患者側出力726へと移動させる。
【0028】
図7を参照すると、使用上、輸液システム700はバックプライムされる必要がありうる。バックプライムは、患者側流体チューブ(例えば、出力726)を閉じ位置に維持したまま、一方の輸液チューブ(例えば、第2チューブ708)を他方の輸液チューブ(例えば、第1チューブ706)からの流体を使用して準備することを指す。例えば、図示の輸液システム700を参照すると、医療従事者は輸液システム700を使用して流体を容器702から輸送する一方、流体容器704をオフしてもよい。この流体容器702のみからの輸送の間に、流体チューブ708は空気を含みうる。医療従事者が流体容器704の使用を開始したいと望む場合、医療従事者は、バックプライム中に流体が患者側726に流れないようにポンプ718を動作させることによって、チューブ706からAILセンサ710およびバルブ714を通じて来る流体を使用して流体チューブ708をバックプライムすることができる。本開示のある構成は小型化での実装に適しており、センサ要素およびプロセッサは使い捨て部分に配置されうるので、上述のバックプライムは、使い捨て部分や非使い捨て部分上の複数のAILセンサ間の複数の有線接続を必要とせずに効率的になされうる。
【0029】
実際、医療機器を使用する前に、通常は薬剤や生体液に接触するそのような医療機器を殺菌する。殺菌プロセスは典型的には医療機器をガンマ線放射に曝すことを含む。医療機器内に埋め込まれた電子部品が崩壊する、例えば不具合を起こすまたは電子的メモリに保持される値が変わる可能性がある。したがって、開示の実施の形態のある態様では、メモリ206は保持されるデータを放射殺菌から保護するよう構成された部分を含む。例えば、メモリ206またはその一部は、ガンマ線への暴露に起因するダメージに対する抵抗性を有する不揮発性半導体技術によって製造される。さらに、メモリ206は重要な情報(例えば、シリアル番号などのシステム200の識別子)を誤り訂正形式で保持するよう構成されてもよい。例えば、殺菌放射への暴露に起因するエラーの検出および訂正を可能とするために巡回冗長検査(CRC)が保持されてもよい。ある構成では、データはメモリ206内の異なるアドレスに冗長的に保持されてもよく、データの読み出し中にエラーを検出し訂正するために確認検査が行われてもよい。
【0030】
ある構成では、システム200が殺菌中に放射に曝された後、それに続いてプロセッサ201がプログラムされる。プログラミングは医療設備の中央位置でまたはその場で、患者側装置での使用に先立って行われる。そのような殺菌後のプログラミングは、放射への暴露の後にメモリ206にデータを書き込むことによって、データのインテグリティをより確実なものとする追加的なレベルを提供する。プロセッサ201との無線通信能力はプロセッサ201の非接触プログラミングを容易とし、それによりプログラミング中に使い捨て部分102と物理的に接触することによる潜在的な医療汚染を避けることができる。さらに、データは無線通信されるので、使い捨て部分102に通信ケーブルを取り付ける必要性を排除してプロセッサ201をより早くプログラムすることができる。
【0031】
上述の種々の実施の形態は、有利な流体パラメータ測定方法およびシステムを提供することは当業者には理解されるであろう。例えば、ある態様では、使い捨て部分と非使い捨て部分との間に導電性(オーミック)接続は存在しないので、患者が不意にショックを受ける危険性を低減できる。別の態様では、使い捨て部分に位置する通信モジュールとの通信およびそのモジュールへの電力供給のいずれのためにもワイヤは必要とされないので、使い捨て部分から流体が漏れることによる輸液中の接続ワイヤを介した非使い捨て部分の汚染の可能性が低減される。別の態様では、使い捨て部分上の流体測定システムを動作させるための電力は無線で提供されるので、使い捨て部分は電源を有しなくてもよい。これにより、実務上使い捨て部分の殺菌がより容易となる。さらに、別の態様では、使い捨て部分のデータメモリは、殺菌への暴露に起因するデータロスから保護されるよう構成される。別の態様では、使い捨て部分は非使い捨て部分に識別データを提供するよう構成される。ある構成では、オ使い捨て部分が計画中の輸液セッションに対して適切でないことなどの作業エラーをオペレータに警告するために、非使い捨て部分が識別データを使用できるので有利である。
【0032】
例示を目的とし限定を目的とせずに、輸液システムが流体圧力センサチップを有する使い捨てIVカセットおよび非使い捨て流体ポンプを備える例示的な構成が説明される。CobeCDXIIIシリコンゲージセンサなどの流体圧力センサは使い捨て部分102に配置されてもよい。そのセンサを含む同じシリコンパッケージ(センサチップ)は、パッシブな電波による固体識別(RFID)送受信部ならびにセンサを動作させるための励起および検出回路を含む。シリコンパッケージ内にはさらにオンチップコイルまたは別のアンテナが集積される。シリコンパッケージは、ポリカーボネートまたはアクリルにより形成される硬いIVカセットの本体内に埋め込まれる。圧力センサは流体チャネル108に対して検出可能な程度に近くに配置される。圧力センサは、少量のシリコンゲルまたは同様の材料によって流体チャネル108から電気的にも流体的にも分離される。この少量のシリコンゲルまたは同様の材料は、流体圧力を通すが電気的接続を防ぐための絶縁バリアを形成する。RFIDリーダおよびアンテナは、そのアンテナと使い捨て部分の圧力センサとの距離が非常に短くなるように流体ポンプ内に配置される。そのような短い距離は高周波励起の使用を可能とし、圧力センサを駆動するのに十分な電力の移送を可能とする。動作中、リーダは(無線信号を送信することによって)センサチップを周期的にポーリングする。センサチップは無線電力を受け、それを整流して(例えばキャパシタを使用して)チップ上に蓄える。電力を受け取ることにより、センサチップ上の回路が活性化される。そのように回路が活性化されることにより、圧力を読み取るための流体圧力検出機構が活性化される。検出機構からの電圧はデジタル化され、保持され、非使い捨て部分のリーダへRF送受信部を使用して送信される。非使い捨て部分は、デジタルデータを処理し他の監視回路によって使用される形式に変換する。典型的には複数のプロセッサのうちのひとつはポンプと(例えば、病院ネットワークを介して)通信可能に結合される。
【0033】
本明細書で説明された種々の動作は、ハードウエアやソフトウエアやそれらの組み合わせにおいて実行されてもよいことは理解されるべきである。そのような方法を実装するコードは、コンピュータ読み取り可能媒体に保持されてもよい。そのような媒体は、配布媒体、中間保持媒体、コンピュータの実行メモリ、および本開示の方法を実装するコンピュータプログラムを、コンピュータによって後に読み出されるために保持することができる他の媒体またはデバイスを含むがそれらに限定されない。本開示の方法を実装するコンピュータコードは通常、フロッピーディスク(登録商標)やコンパクトディスク(CD)やデジタルバーサタイルディスク(DVD)に保持され配布されるであろう。コードがコンピュータにロードされると、それはコンピュータに本開示の方法および動作を実行させる。
【0034】
本開示の実施の形態が詳細に説明されたが、その説明は例示のみを目的としており、限定を目的とするものとみなされるべきではないこと、および本開示の範囲は添付の請求の範囲の語句によってのみ限定されることは明確に理解されるべきである。さらに、当業者であれば、本開示は一般に患者ケアセッティングにおける点滴液の輸送を参照して説明されたが、本開示のある構成は実験室での実験や医療デバイス製造設備などの非医療的な生体以外のアプリケーションにおいても使用されうることを認識するであろう。