(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバの前記端部は、第2の反射素子を含み、前記第2の反射素子と前記反射素子との間にファブリペローキャビティが形成されている、請求項1に記載の音響センサ。
前記光ファイバから放出され、前記反射素子によって反射される光の光路内に集束要素をさらに備え、前記反射素子によって前記光ファイバの前記端部へと反射される前記光のモードフィールド直径は、前記光ファイバのモードフィールド直径に合致する、請求項1に記載の音響センサ。
前記第1の反射素子は、前記音響センサに印加される圧力の変化に応答して動くように構成された第1のダイヤフラムを含み、前記第2の反射素子は、前記音響センサに印加される圧力の変化に応答して動くように構成された第2のダイヤフラムを含む、請求項11に記載の音響センサ。
前記第1の音響センサは、第1の共振周波数を有し、前記第2の音響センサは、第2の共振周波数を有し、前記容器は、ヘルムホルツ共振周波数を有し、前記第1の共振周波数と、前記第2の共振周波数と、前記ヘルムホルツ共振周波数とは、実質的に互いに等しい、請求項11に記載の音響センサ。
前記第1の音響センサは、第1の共振周波数を有し、前記第2の音響センサは、第2の共振周波数を有し、前記容器は、ヘルムホルツ共振周波数を有し、前記ヘルムホルツ共振周波数と、前記第1の共振周波数とは、前記ヘルムホルツ共振周波数と前記第1の共振周波数とのいずれかの10%未満で互いに異なり、前記ヘルムホルツ共振周波数と、前記第2の共振周波数とは、前記ヘルムホルツ共振周波数と前記第2の共振周波数とのいずれかの10%未満で互いに異なる、請求項11に記載の音響センサ。
前記第1の光ファイバから放出され、前記第1の反射素子によって反射される光の光路内に集束要素をさらに備え、前記第1の反射素子によって前記第1の光ファイバの前記端部へと反射される前記光のモードフィールド直径は、前記第1の光ファイバのモードフィールド直径に合致する、請求項11に記載の音響センサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の詳細な説明
光学音響センシングには、様々な重要な用途がある。例えば、構造健全性モニタリングの場合、音響センサは、大型航空宇宙および風力エネルギー構造の健全性を監視することができる。音響センサはまた、防衛の用途において、長距離範囲での潜水接触に関して移動検知、追跡、および報告を可能とする。さらなる例として、源泉および源泉内の領域での石油およびガスの生産の用途において、監視および制御が可能となる。さらに他の例において、音響センシングは、任意の体液の圧力を測定することができ、生命維持装置などを含む多くの医療用途に使用される。
【0017】
ここに記載される特定の実施形態は、音響波(たとえば、周囲環境からセンサに入射する音響波、またはセンサ内で発生する音響波)に応答する光特性を有するファブリペローセンサをもたらすために機械的ダイヤフラム、第1の反射素子、および第2の反射素子(
たとえば、1つ以上のフォトニック結晶スラブ)を利用する、従来開示された音響センサにおいて引き起こされる1つ以上の問題に対して有利に対処するための構造、要素、または特徴を含む。ここに記載される特定の実施形態は、これらの従来開示された音響センサを適切に変更することによって実施することができる。このような従来開示された音響センサの例は、2009年4月28日に発行された米国特許第7,526,148号、2009年12月8日に発行された米国特許第7,630,589号、2010年10月5日に発行された米国特許第7,809,219号、および2011年2月1日に発行された米国特許第7,881,565号に記載されており、これらの文献の各々はその全体が引用によりここに援用され、米国特許出願公開第2011/0041616号もまた、その全体が引用によりここに援用される。以下に記載される構造、要素、または特徴は、個別に使用することができる、または2つ以上を互いに組み合わせて使用することができる。ここに記載される特定の実施形態は、従来開示された他の音響センサ構成を適切に変更することによって代替的に実施することができる(たとえば、米国特許第7,526,14
8号、米国特許第7,630,589号、米国特許第7,809,219号、米国特許第7,881,565号、および米国特許出願公開第2011/0041616号に記載のものに対応しない構成)。
【0018】
熱的変動に対する感度の低下
図1Aおよび
図1Bは、ここに記載される特定の実施形態に係る例示的な音響センサ10を概略的に示す。音響センサ10は、反射素子22を有するダイヤフラム20を含む。特定の実施形態において、ダイヤフラム20は、音響波400によって偏向可能であり、音響センサに典型的に使用されるシリコンを含むことができる。特定の他の実施形態において、ダイヤフラム20は、以下でより詳細に記載されるように、シリカを有利に含むことができる。さらに他の実施形態において、ダイヤフラム20は、窒化シリコンを含むことができる。他の材料を使用することもできる。特定の実施形態の反射素子22は、ダイヤフラム20上に位置決め(たとえば、堆積)することができる。特定の実施形態において、反射素子22は、ダイヤフラム20に対して直接的に接着(たとえば、熱接着によって)することができる。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、特定の実施形態において、反射素子22は、光ファイバ30と対向しないダイヤフラム20の表面に対して位置決め(たとえば、堆積または結合)される。しかし、他の実施形態において、反射素子22は、光ファイバ30と対向するダイヤフラム20の表面に対して位置決め(たとえば、堆積または結合)することができる。さらに他の実施形態において、反射素子22は、ダイヤフラム20内に位置決め(たとえば、鋳造)することができる。様々な実施形態において、ダイヤフラム20は、フォトニック結晶構造を有する反射素子22を含む。
【0019】
特定の実施形態において、反射素子22は、金属鏡構造(たとえば、金、銀、アルミニウム、クロム、またはこれらの組み合わせからなる1つ以上の層)を含む。特定の実施形態において、たとえば約2nmから約5nmの厚さを有するクロムを、反射素子22の下の接着層として使用することができる。これらの実施形態において、クロムは、目的の特定の波長においては、比較的吸収性が高くなり得る。反射素子22はさらに、酸化および傷から金属面を保護するために、酸化ケイ素からなる薄い(たとえば、約10ナノメートルから100ナノメートルの厚さの)層を含むことができる。
【0020】
特定の実施形態において、反射素子22は、誘電体ミラー(たとえば、所定の反射率を付与するために選択された厚さおよび屈折率を有する複数の透明な誘電体層を含む多層構造)を含む。特定のこのような実施形態において、誘電体ミラーは、1ミクロンから5ミクロンの厚さを有することができ、およそ1平方インチの面積を有することができる(たとえば、膜がフレームに渡って引き伸ばされる)。ここに記載される特定の実施形態に適合する誘電材料の例は、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、一酸化ケイ素、および酸化タンタルを含むが、これらに限定されない。
【0021】
特定の実施形態において、反射素子22は、フォトニック結晶構造の少なくとも一部を含む。特定の実施形態のフォトニック結晶構造は、1つ以上のフォトニック結晶スラブを含む。特定のこのような実施形態に係るフォトニック結晶スラブを作るために、シリコンまたは窒化シリコンなどの誘電体層がダイヤフラム20の外表面に堆積され、その後に誘電体層を通過する穴がパターン形成される。ここに記載される特定の実施形態に適合する例示的な処理は、引用によりここに援用される米国特許第7,526,148号、米国特許第7,630,589号、米国特許第7,809,219号、米国特許第7,881,565号、および米国特許出願公開第2011/0041616号において、より完全に記載されている。
【0022】
音響センサ10はさらに、光ファイバ30を含む。光ファイバ30は、光ファイバ30から放射される光が反射素子22によって反射されるように反射素子22に対して位置決めされる。特定の実施形態の光ファイバ30は、単一モードファイバである。ここに記載される特定の実施形態に適合する例は、限定されるものではないが、シリカ系ファイバ、ニューヨーク州コーニングのコーニング社から市販されているSMF‐28(登録商標)ファイバ、カットオフシフトファイバ、低水ピークファイバ、分散シフトファイバ、非零分散シフトファイバ、および非標準微細構造ファイバ(たとえば、フォトニック結晶ファイバ)を含む。
【0023】
図1Aおよび
図1Bに概略的に示されるように、光ファイバ30は、反射素子32(たとえば、光ファイバ30の第1端32)を含み、反射素子22と光ファイバ30の反射素子32との間には、光キャビティ40が形成される。光ファイバ30の反射素子32と反射素子22とは、特定の実施形態において、500ナノメートルから50ミクロンの距離で互いに間隔が空けられる。特定の実施形態において、より小さい光キャビティ40を有するセンサ10は、より有利な熱安定性を有する。特定の実施形態において、光キャビティ40は、気体(たとえば、空気)を含み、特定の他の実施形態において、キャビティ40は流体(たとえば、水)を含む。
【0024】
特定の実施形態において、光ファイバ30は、光源から光を送り、反射素子22の少なくとも一部を照射する。ここに記載される特定の実施形態に適合する光源は、限定されるものではないが、単色光源(たとえば、レーザ、レーザダイオード)、広帯域光源(たとえば、白熱灯、発光ダイオード)、および可変光源(たとえば、可変レーザ)を含む。
【0025】
特定の実施形態において、光ファイバ30の反射素子32は、光ファイバ30の第1端またはその上に金属層を含み、この金属層は、光ファイバ30から放射された光を部分的に反射し、部分的に透過させる。特定の実施形態において、金属層は、様々な材料からなる複数のサブ層を含み、その例としては、限定されるものではないが、クロム、金、銀、アルミニウム、およびこれらを組み合わせたものが含まれる。特定のこのような実施形態において、金属層はさらに、酸化および傷から金属面を保護するために、酸化ケイ素からなる薄い(たとえば、約10ナノメートルから100ナノメートルの厚さ)層を含む。特定の実施形態において、金属層は、1ナノメートルから50ナノメートルの範囲の厚さを有する。特定の他の実施形態において、光ファイバ30の反射素子32は、複数の誘電材料の層を有する誘電体ミラーを光ファイバ30の第1端またはその上に含む。ここに記載される特定の実施形態に適合する誘電材料の例は、限定されるものではないが、フッ化マグネシウム、硫化亜鉛、二酸化ケイ素、二酸化チタン、および五酸化タンタルを含む。特定の実施形態において、光ファイバ30の反射素子32は、光ファイバ30の第1端またはその上にフォトニック結晶構造を含む。
【0026】
光ファイバ30の反射素子32が光ファイバ30の部分的に反射する端部を含む実施形
態において、光ファイバ30の端部とダイヤフラム20の反射素子22との間には、ファブリペロー光キャビティ40が規定される。光が光ファイバ30の外へ伝播した後、反射素子32によって反射された光の少なくとも一部は光ファイバ30内に戻る。入射した音響波400がダイヤフラム20を偏向するにつれ、ファブリペロー反射スペクトルにおける周波数偏移が誘発される。この偏移は、固定波長においてファブリペロー光キャビティ40によって反射された力の変化として検知される。
【0027】
特定の実施形態において、ダイヤフラム20を偏向して光キャビティ40の長さに影響を及ぼす入射音場以外の1つ以上の要因が、ファブリペロースペクトルにおいて周波数偏移を誘発し、これにより、測定された音圧に誤差が生じ得る。たとえば、ファブリペロー光キャビティ40の温度が緩やかに上昇する場合、ファブリペロー光キャビティ40を囲う材料が膨張し得る。このため、ファブリペロー光キャビティ40の間隔が増大し得て、反射スペクトルが徐々に偏移し得る。特定の実施形態において、この周波数偏移は、音圧の緩やかな変化と区別がつかないことがある。プローブ波長においては、波長(または光周波数)に伴う反射パワーの変化率が、スペクトルの偏移に伴って変化し得るので、反射素子22の所与の変位に対する特定の実施形態における音響センサ10の応答性もまた変化し得る。
【0028】
この処理は、
図2に示されており、様々な温度での波長に応じた例示的な音響センサ10の応答(反射パワー/入射パワー)の一部がグラフ化されている。温度が上昇してスペクトラムが(
図2の左へ)偏移するにつれ、点で示される(固定された)レーザ波長での動作(またはバイアス)点が、最も右端のスペクトル(感度が最も高い)における曲線の急斜部分から、勾配のやや緩やかな部分へ偏移する。曲線の傾斜に比例する音響センサ10のスケール係数が小さくなる、たとえば、音場に対するセンサ応答の較正が小さくなることから、特定の実施形態において、これは望ましいことではない。また、スケール係数、併せて応答が変動し得るため、これは望ましいことではない。この変動が予測不可能なものであることから、調整された測定を音響パワーに対して行うための音響センサ10の能力が低下する。このような異質のスペクトル偏移を引き起こす重要な環境パラメータは、温度である。上記のように、音響センサ10が配置される媒体の温度の変動によって、スペクトルが偏移し得る。特定的に、光ファイバ30の熱膨張係数と光キャビティ40を囲う材料の熱膨張係数とが異なる場合、光キャビティ40の長さが温度の変動に伴って変化し得る。
【0029】
ここに記載される特定の実施形態は、ダイヤフラム20と光ファイバ30とを機械的に結合し、光ファイバ30と同様の熱膨張係数を有する構造要素を有利に利用する。例えば、
図1Aおよび
図1Bに示される特定の実施形態において、音響センサ10は、ダイヤフラム20と光ファイバ30とを機械的に結合し、光キャビティ40を囲う構造要素50を含み、構造要素50は、光ファイバ30と同様の熱膨張係数を有する材料を有利に含む。
図1Bに示されるように、特定の実施形態において、構造要素50は、複数の要素を含むことができる。これに加え、以下でより十分に記載される特定の実施形態において、構造要素50は、1つ以上の穴、流体管、またはチャネル55を含むことができる。
【0030】
特定の実施形態において、光ファイバ30は、小さい熱膨張係数(たとえば、α=0.55×10
−6/℃)を有する溶融シリカからなり、構造要素50もまた、溶融シリカを含む。光ファイバ30と同じ低熱膨張材料からなる構造要素50を使用することにより、音響センサ10は、周囲温度の変動に対して実質的に無反応となる。以下に記載する特定の実施形態において、光ファイバ30は、毛管内に挿入することができる。様々な実施形態において、毛管は、光ファイバ30と同様の熱膨張係数を有する材料を有利に含むことができる。例えば、材料としてシリカを含むことができる。
【0031】
図1Bに示されるように、特定の実施形態の音響センサ10は、反射素子22と、構造要素50と、光キャビティ40と、光ファイバ30とを有するダイヤフラム20を実質的に囲うハウジング60をさらに含む。特定の実施形態において、ハウジング60は、複数の要素、たとえば、保護膜61およびバックチャンバハウジング62を含むことができる。保護膜61は、たとえば、汚染物質を寄せ付けず、腐食を防止するなど、反射素子22および光キャビティ40を環境から隔離した状態に保つことができる。保護膜61は、音響波400を膜61に渡って伝播させて、ダイヤフラム20を偏向するように構成することができる(たとえば、膜61は、弾性ポリマ材料を含むことができる)。
【0032】
特定の実施形態において、バックチャンバハウジング62は、光キャビティ40と流体連結するバックチャンバまたは容器65を囲うことができる。
図1Bに示されるように、バックチャンバハウジング62は、構造要素50および光ファイバ30の両方に対して機械的に結合することができる。一部の実施形態において、バックチャンバハウジング62は、真ちゅうまたはアルミニウムを含有する。他の実施形態において、バックチャンバハウジング61は、上記と同様の理由により、光ファイバ30および/または構造要素50と同様の熱膨張係数を有する材料を有利に含む。これにより、バックチャンバハウジング62は、シリカを含むことができる。
【0033】
図3は、ここに記載される特定の実施形態に係る、シリカを含むセンサヘッドを有するファブリペローセンサ10の温度に応じた共振波長の変化を、シリコンを含むセンサと比較して示す例示的なプロット図であり、1550nmのプローブ波長を使用している。
図3に示すように、特定の実施形態の全シリカセンサ10(たとえば、シリカファイバ30、シリカ毛管、およびシリカ構造要素50)は、シリカファイバとシリコンセンサヘッドとを含むセンサと比較して、熱安定性が実質的に高まる。
【0034】
特定の実施形態において、音響センサ10の感度に対する熱膨張の影響は、音響センサ10の感度に対する他の影響よりも少なくとも10分の1小さい。シミュレーションによれば、適切な設計を用いると、音響センサ10の特定の実施形態の感度は、100℃よりも大きい温度変動がある場合、10%より大きく変化しない。ファブリペローキャビティ40が空気で満たされていると仮定すると、ファブリペローキャビティ40においてミラー間隔が10μmであり、フィネスが30である場合、センサ10の感度を10%変化させる温度変化は、300℃である。ファブリペローキャビティのフィネスFは、F=2πNで規定され、Nは、損失係数が1/eである場合の往復回数である。言い換えると、キャビティ内のエネルギは、N回往復した後、初期値の1/eに低下する。温度変化は、フィネスに対してほぼ反比例しており、空気で満たされたファブリペローキャビティ40を有するセンサ10は、ミラー間隔が10μmであってフィネスが300である場合、感度の変動を10%よりも小さく抑えるには、約30℃の最大温度変化まで許容することができる。
【0035】
水を含むファブリペローキャビティ40の場合、水の屈折率の熱的変動は、光ファイバ適合音響センサ10の特定の実施形態の性能に対して、さらなる悪影響を及ぼし得る。
図1Bのセンサ10がハイドロフォンとして水中で利用される特定の実施形態において、ファブリペローキャビティ40は水で満たされる。この水は、センサ10もしくはハイドロフォンヘッドが浸される周囲水、または保護膜61などの囲いによって周囲水から隔離されて別の容器に入れられた水であり得る。水の屈折率は温度に伴って変動し、空気の屈折率よりも温度による変動が大きく、センサ10の熱感度に対する影響は、シリカの熱膨張による影響よりも約一桁大きい(水のdn/dT係数は、約1550nmの光波長において、−11.8×10
−6/℃となる)。
【0036】
図1Aおよび
図1Bに概略的に示されるセンサ10において、水で満たされたキャビテ
ィの最大耐容温度変化は、空気で満たされたキャビティの最大耐容温度変化よりも概して15分の1となる。たとえば、水で満たされた10μmのファブリペローキャビティ40のフィネスが30である場合、センサ10の感度を10%変化させる温度変化は、20℃にすぎない。この温度変化は、フィネスに対してほぼ反比例している。これにより、たとえば、フィネスが300のキャビティ40を有するセンサ10は、感度の変動を10%より小さく抑えるには、2℃の最大温度変化しか許容できない。
【0037】
ここに記載される特定の実施形態は、温度に伴う水の屈折率の変化を有利に補償するものである。
図4Aは、ここに記載される特定の実施形態に適合する音響センサ10の例を概略的に示す。音響センサ10は、反射素子22を含む。音響センサ10はさらに、光ファイバ30を含む。光ファイバ30は、光ファイバ30から放射された光が反射素子22によって反射されるように反射素子22に対して位置決めされる。光ファイバ30の反射素子32と反射素子22との間には、光キャビティ40が規定される。光キャビティ40は、温度に伴って変化する屈折率を有する媒体を含む。音響センサ20はさらに、光キャビティ40内に位置決めされ、熱膨張係数および厚さを有する補償要素25を含む。特定の実施形態において、熱膨張係数および厚さは、補償要素25が媒体の温度に伴う屈折率の変化を補償するように選択される。特定のこのような実施形態において、この補償は、補償要素を有さない光センサと比較して、光センサの性能上の熱的変動を小さくするには十分である。
【0038】
補償要素25は、センサ10の温度変動に対する感度を減衰させるような熱膨張係数および全厚さを付与するために選択される1つ以上の材料部品を含むことができる。
図4Aに示されるように、光キャビティ40内の補償要素25は、ダイヤフラム20から間隔を空けられた材料からなる。このような材料は、光ファイバ30の第1端32の一部とすることができる。例えば、光ファイバ30がセンサヘッドに挿入される前に、材料を光ファイバ30の反射端に取り付けることができる。光ファイバ30の反射素子32が光ファイバ30に沿って間隔を空けられ、光ファイバ30の端部から離れて設けられる特定の実施形態において、補償要素25は、反射素子32と光ファイバ30の端部との間に光ファイバ30の一部を含むことができる。代替的に、補償要素25の少なくとも一部は、光ファイバ30の反射素子32と反射素子22との間の途中部分に位置決めできるように微細加工によって形成することができる。例えば、補償要素25の少なくとも一部は、光ファイバ30に対向するダイヤフラム20に設けることができる、または、光センサ10の他の部分(たとえば、構造要素50)に対して機械的に結合することができる。
【0039】
図4Bに示されるように、特定の実施形態において、ダイヤフラム20の少なくとも一部は、光キャビティ40内の補償要素25として機能することができる。ダイヤフラム20がシリカを含む特定のこのような実施形態によれば、光キャビティ40内の補償要素25は、ファイバ端32とダイヤフラム20との間の間隔(
図4Bにおいて「W」で識別される)と実質的に等しい厚さ(
図4Bにおいて「S」で識別される)を有する。反射素子22は、ダイヤフラム20の表面を覆う材料、または表面に形成される材料とすることができる。間隔の空間部分は水で満たされており、光は、光ファイバ30とは対向しないダイヤフラム20の側部の反射素子22によって反射される。上記のように、反射素子22は、ダイヤフラム20に対して形成、堆積、または接着された、金属、誘電体、またはフォトニック結晶構造の層を含むことができる。
【0040】
所与の温度変化において、溶融シリカの屈折率は、水とほぼ同じ度合いで変化するが、逆方向に変化する(光波長が1550nmあたりの場合の溶融シリカのdn/dT係数は、約+12.8×10
−6/℃であるのに対して、これらの光波長での水のdn/dTは、約−12.8×10
−6/℃である)。これにより、特定のこのような実施形態において、光がほぼ同じ距離だけ水およびシリカを伝播する場合、水の屈折率に対する温度の影
響は、シリカの屈折率に対する温度の影響によって効果的に相殺される。
図5は、溶融シリカダイヤフラム20の異なる厚さに対する、光路長の温度感応性(物理的な長さを屈折率で掛け合わせたもの)の変動を示すグラフである。
図5は、10μmで一定に保たれたファイバ32の反射端とダイヤフラム20との間の間隔(
図4Bにおいて「W」で識別される)に対応し、ダイヤフラムの厚さ(
図4Bにおいて「S」で識別される)は6μmから10μmの間で変動し、全光厚さ(T=S+W)は16μmから20μmの間で変動する。ダイヤフラムの厚さ(実曲線で表わされる)に対する、キャビティ内を通る光の光路長における温度感応性の絶対値は、非シリカダイヤフラムの場合の温度感応性の絶対値(
図5において一点鎖線で示される)を大きく下回っており、約6.15μmから10μmの間のダイヤフラムの厚さの全範囲に渡って最大実用温度感応性(
図5において点線で示される)を下回る。最小温度感応性は、ダイヤフラムの厚さが約8.15μmの場合に観測され、屈折率の変動と材料の膨張とが互いに補償し合うセンサ10に対応し、センサ10は温度変動に対して実質的に無反応となる。特定の実施形態において、ダイヤフラムの厚さが実用範囲にある場合、水で満たされたキャビティを有してシリカダイヤフラム20を用いるセンサ10またはハイドロフォンは、空気で満たされたキャビティを有するセンサ10よりも温度に対してさらに反応が小さくなる(
図5において破線で示される)。補償要素の異なる厚さに対する光路長の温度感応性dn/dTの関係は、補償要素の他の材料および光キャビティの他の媒体に対して定めることができる。
【0041】
特定の実施形態において、水で満たされたキャビティを有するセンサが熱効果に対して実質的に無反応となるようにダイヤフラムの厚さが選択される。例えば、センサがダイヤフラム20と光ファイバ30との間に水で満たされた10μmのキャビティを含む特定の実施形態において、ダイヤフラムの厚さは、約5μmから約20μmの範囲、約7μmから約10μmの範囲、または約8μmから約9μmの範囲となる。特定の実施形態において、ダイヤフラム20と光ファイバ30との間のキャビティの大きさに対するダイヤフラム20の厚さの比は、約0.5から約1.2の範囲、約0.7から約1の範囲、または約0.8と約0.9の範囲となる。水で満たされた10μmのキャビティの場合のダイヤフラムの厚さとして
図5に示される8.15μmの値は、ダイヤフラム20の外面に設けられた反射素子22から直接的に光が反射するという仮定に基づいている。この仮定は、金属層が反射素子22として使用される特定の実施形態において正確なものとなる。しかし、誘電体ミラーまたはフォトニック結晶(約0.5μmから5μmの厚さの範囲となり得る)が使用される場合、光は、反射される前に、ダイヤフラム20の外面を超えて反射素子22に向かって伝達される。反射素子22の温度に伴う熱膨張および屈折率の変化を補償するために、ダイヤフラムの厚さを調整して所与の反射素子22の無反応性における最適な温度を得ることができる。
【0042】
厚いダイヤフラム20(たとえば、8.15μmの厚さ)の機械的コンプライアンスは低いため、特定の実施形態においては、このようなダイヤフラム20を偏向させることが難しくなり得る。以下でより十分に記載されるように、特定の実施形態においては、機械的コンプライアンスを高めるためにダイヤフラム20の直径を増大させることによって、この問題を解決することができる。
【0043】
図4Bに概略的に示される例示的な構成に関する他の問題としては、シリカダイヤフラム20の表面21から光ファイバ30への反射がある。しかし、シリカおよび水の屈折率の差は小さいため(1550nmの波長において、n
silica=1.444に対して、n
water=1.316)、シリカと水との界面、つまりはダイヤフラムの面21からの反射(R)は、ごくわずかである(R<0.3%)。特定の実施形態において、この反射は、ダイヤフラム20の面21に反射防止膜を堆積させることによって十分に除去または減少させることができる。
【0044】
反射素子22がフォトニック結晶ミラーを含む実施形態において、フォトニック結晶ミラーの熱応答は、センサ10の熱安定性に影響を及ぼす他の要因となる。温度が変化するにつれ、フォトニック結晶ミラーの材料の屈折率も変化し、その物理的寸法(たとえば、材料の厚さ、穴などの周期構造の周期性および直径)も変化する。これら全てのパラメータは、フォトニック結晶ミラーの反射スペクトルに影響を及ぼすため、これらのパラメータが変化するにつれて、スペクトルもまた変化する。フォトニック結晶ミラーの反射率が変化することによって、ファブリペロー光キャビティ40のフィネスが変化し、その反射スペクトルの傾斜、特に
図2に示される最適バイアス点での傾斜、およびセンサ10のスケール係数も変化する。
【0045】
フォトニック結晶ミラーの反射スペクトルに対する温度の影響に関する有限差分時間領域シミュレーション(FDTD)は、特定の用途においてはこの寄与が小さいことを示している。例えば、
図6は、直径が800nmで周期が900nmの穴の平方配置を有して450nmの厚さのシリコンダイヤフラム20に設けられた例示的なフォトニック結晶構造に関して算出された反射スペクトルを示す。これらのパラメータは、このタイプのセンサの場合に適した目標波長である1550nmにおいて高い反射率を得るために選択される。このフォトニック結晶によって、1550nmにおいて〜99%の反射率と、99%の反射率の場合に48nmの帯域幅がもたらされる。
【0046】
屈折率の変化、穴の半径の変化、周期の変化、およびダイヤフラムの厚さの変化を考慮に入れ、同じFDTD法を使用して、異なる温度において同じフォトニック結晶構造のスペクトルを想定することができる。
図7は、ここに記載される特定の実施形態に係るセンサ10の温度に応じた、1550nmでの反射率の計算上の変化を示す。所定の温度範囲の場合、たとえば、約20℃から最大想定温度である約80℃までの範囲の場合、反射率は、20℃での値の0.02%以内に留まる。反射率が99%の場合のフォトニック結晶構造の帯域幅は、
図7には示されないが、この温度範囲にわたって2.1%内に留まる。特定の実施形態において、反射率は、約20℃から約80℃の温度範囲にわたって、20℃での値の0.03%、0.04%、0.05%、0.08%、または0.10%内に留まる。
【0047】
フォトニック結晶の反射率の変動が小さいことによって、光ファイバ30の端32の反射素子32が90%の反射率を有すると仮定した場合、400℃の温度範囲にわたってセンサの共振波長が0.02nm内に留まり、ファブリペロー光キャビティの基準フィネスである96に変換される。
【0048】
ファブリペロー系音響センサ10の熱不安定性に寄与する他の要因としては、光キャビティ40、たとえばキャビティ内媒体の屈折率の変動が熱的に誘発されることが挙げられる。この媒体が空気である場合、たとえばマイクロフォンの場合と同様に、この寄与はごくわずかである。しかし、それが水であって、ハイドロフォンの場合、この屈折率の変化が共振振幅に更なる偏移を誘発させ得る。
【0050】
水の場合、この効果による共振波長の偏移は、±1nmに留まり、これにより、10μmの長さのファブリペローキャビティにおいて最大応答性が10%よりも大きく落ちる前に、±100℃にわたって十分な安定性がもたらされる。この偏移は、多くの用途において適用することができる。
【0051】
図8は、上記の個別の各要因、即ちシリカの熱膨張(TE)、熱的に誘発されたキャビティ内媒体屈折率の変動(RIM)、および熱的に誘発されたフォトニック結晶ミラーのスペクトル応答の変動(PC)からの寄与を示す。
図8はまた、これらの3つの効果をまとめた結果としての温度に伴う共振波長変化を示す。この分析において、キャビティ内媒体として水が使用され、水は負の熱光学係数を有するため、キャビティ内媒体の屈折率の寄与は負となり得る。たとえば、その記号は他の2つの寄与の逆となり、それらを部分的に相殺する。異なる材料および/または設計パラメータを選択することにより、相殺および全体の寄与の度合いを調整することができる。
【0052】
特定の実施形態において、光キャビティ40の媒体の材料は、熱安定性を向上させるために有利に選択することができる。光キャビティ40の長さに加え、光キャビティ40の媒体の屈折率を熱的に調整することによってもまた、センサ10の熱安定性に寄与することができる。例えば、以下の計算式によって調整でき、
【0054】
共振偏移が無い場合は以下の計算式を用い、
【0056】
特定の実施形態において、この効果は、熱安定性のために利用することができる。たとえば、様々な実施形態において、シリカ構造要素40の熱膨張の効果および光キャビティ40の媒体の屈折率調整の効果は、キャビティ媒体の材料が正しく選択される場合には、互いに相殺し合う。例えば、以下の計算式によって求められる。
【0058】
この特定の実施形態においては、光キャビティ40の媒体は、熱安定性を向上させるために選択することができる。
【0059】
ダイヤフラムの横寸法または面積の増大
上述のように、一般に、厚いダイヤフラム20は、薄いダイヤフラム20よりも機械的コンプライアンスが低い。これに加え、センサ10の感度を制限し得る最も強い減衰効果の1つとして、移動ダイヤフラム20によってキャビティ40から水が押し出されるスクイーズ膜減衰があり、これは全体が引用によりここに援用される米国特許第7,526,148号、米国特許第7,630,589号、米国特許第7,809,219号、米国特許第7,881,565号、および米国特許出願公開第2011/0041616号にお
いてより十分に記載されている。
【0060】
ここに記載される特定の実施形態は、ダイヤフラムの直径を増大(たとえば、約5倍)、またはダイヤフラムの面積を増大(たとえば、約25倍)させることによってダイヤフラム20のコンプライアンスを回復させる。このようにダイヤフラムの直径または面積を大幅に増大させることによって、ダイヤフラム20の面積に対する光ファイバ30の端面の相対面積が減るため、スクイーズ膜減衰もまた大幅に減少する(たとえば、約25分の1)。特定の実施形態において、光ファイバ30の端部の直径に対するダイヤフラムの直径の比率は、1.2から8の範囲、1.5から6の範囲、または2から5の範囲にある。特定の実施形態において、光ファイバ30の端面の面積に対するダイヤフラムの面積の比率は、1.4から64の範囲、2.35から36の範囲、または4から25の範囲にある。たとえば、ダイヤフラムの直径が約300μmであり、ファイバ端部の直径が125μmである場合、直径比は約2.4であり、面積比は約5.76である。しかし、ダイヤフラムの直径を約600μmに増大させることによって、直径比が約4.8となり、面積比が約23となり、結果としてスクイーズ膜減衰が約23分の1に減少する。特定の実施形態において、ダイヤフラムの直径または面積は、ダイヤフラム20の所望の共振周波数によって制限される。たとえば、高い周波数が検出される特定の実施形態において、ダイヤフラムの直径は1mmより小さい。この特徴について記載する上でダイヤフラムの直径が使用されるが、ダイヤフラムの形状が概して円形のダイヤフラムのみに限定されることを示すことは意図していない。他の形状(たとえば、楕円、正方形、八角形、または他の多角形もしくは不整形)を有する他のダイヤフラムもまた、ここに記載される特定の実施形態において使用してもよい。これらの実施形態において、ダイヤフラム20は横寸法を有し、ダイヤフラム20のコンプライアンスは、上記のようにダイヤフラムの横寸法を増大させることによって回復することができる。これらの実施形態において、ダイヤフラム20のコンプライアンスは、ダイヤフラム20の断面積を増大させることによって回復させることができる。
【0061】
圧力均等化チャネル
上記のように、特定の実施形態の反射素子22(たとえば、ダイヤフラム20の外側の反射面)は、誘電体系ミラーもしくは金属系ミラー、またはフォトニック結晶反射体とすることができる。全体が引用によりここに援用される米国特許第7,526,148号、米国特許第7,630,589号、米国特許第7,809,219号、米国特許第7,881,565号、および米国特許出願公開第2011/0041616号に記載されるように、フォトニック結晶ミラー反射体は、反射素子22を含む機械的ダイヤフラム20としても機能することができる。フォトニック結晶構造に屈折率および周期性を付与する機能に加え、特定のこのような実施形態においてダイヤフラム20を通って延在する穴は、圧力均等化チャネルとしても機能することができ、センサ10の外側と内側との間の静水圧を均等化させる。しかし、フォトニック結晶反射体の光特性を調整するために同じ穴を使用することによって、ダイヤフラム20の機械的コンプライアンスおよび低周波数でのセンサ10の音響応答に関して、所与の用途に使用される最適なセンサ10の設計が困難となり得る。
【0062】
特定の実施形態において、この問題は、以下のように全体的または部分的に軽減することができる。1つ以上の流体管(たとえば、穴)の組が、センサ10に形成され(たとえば、エッチングまたは穴あけによる)、これによって流体がダイヤフラム10の一方側から他方側に流れ、ダイヤフラム20に渡って圧力が均等化される。
図9に示されるように、特定の実施形態において、1つ以上の流体管55は、ダイヤフラム20を通ることができる。たとえば、1つ以上の流体管55は、上記のように熱効果に対する感度を下げるには十分に厚いダイヤフラム20を通ることができる、または、上記のように機械的コンプライアンスが低い厚いダイヤフラム20を通ることができる。
【0063】
特定の実施形態において、1つ以上の流体管55(たとえば、上記のような厚いダイヤフラム20の穴)は、反射体または反射素子22の光特性に影響を及ぼすダイヤフラム20のフォトニック結晶構造から分離される。例えば、特定のこのような実施形態において、1つ以上の流体管55は、ファブリペローキャビティ40の光特性に寄与しないダイヤフラム20の一部に配置され、たとえば、反射素子22から分離される。特定の実施形態のおいて、
図1Bに示されるように、1つ以上の流体管55(たとえば、構造要素50の一部を通る、または一部に沿った管)は、ダイヤフラム20から分離される。一部の実施形態において、センサ10は、ダイヤフラム20および構造要素50の両方に1つ以上の流体管55を含むことができる。特定の実施形態において、1つ以上の流体管の組の総断面積は、約1μm
2から約50μm
2の範囲にある。特定の実施形態において、1つ以上の流体管の総断面積は、所望の動作可能な音響周波数範囲において、流体(たとえば、水)がフォトニック結晶構造よりも好ましくは1つ以上の流体管(たとえば、穴)を通るのに十分な程に小さい。
【0064】
ここに記載される特定の実施形態は、光学設計および音響設計に関する制限を別個に満たし、より良好にセンサを最適化する。たとえば、フォトニック結晶反射素子22の光特性を付与するフォトニック結晶穴とは別の1つ以上の流体管55を有することによって、ダイヤフラム20にわたる流体の流動のための流体管を付与しない他のフォトニック結晶反射体構造を使用することができる(たとえば、穴ではなく、突起を有するフォトニック結晶構造、または、ダイヤフラム20の全厚さを通過しない穴を有するフォトニック結晶構造)。光学設計、機械的設計、および音響設計を分離するこの方法は、厚いダイヤフラム20に限られず、フォトニック結晶構造(たとえば、穴)の光学機能から機械的機能および音響機能を外したい場合には、薄いダイヤフラム20にも用いることができる。
【0065】
回折損失の減少
特定の実施形態において、上記の厚いダイヤフラム20(たとえば、熱効果に対する感度を減らすには十分に厚いダイヤフラム20、または機械的コンプライアンスの低い厚いダイヤフラム20)は、光ファイバ30の第1端32と反射素子22との間の光路長を増大させ得て、これにより、さらなる回折損失が引き起こされ得る。何らかの方法によって弱められない限り、このさらなる回折損失によって反射率が減少し得て、センサ10の感度も低下し得る。
【0066】
図10は、ここに記載される特定の実施形態に係る、様々なキャビティ長における反射率に応じたファイバファブリペローキャビティ40(たとえば、
図4Bに示される)のフィネスを示す。「有効フィネス」と称することができるファイバファブリペローキャビティ40のフィネスは、光ファイバ30に結合されないエネルギの回折損失の効果を含む。
図10の曲線は、SMF−28単一モードファイバ30と反射素子22とによって形成され、キャビティ40の長さと反射素子22の反射率とを両方変動させたファブリペローキャビティ40について算出されたものである。たとえば、キリック(Kilic)らの「ファ
イバファブリペロー干渉計における非対称スペクトル応答(Asymmetrical Spectral Response in Fiber Fabry-Perot Interferometers)」J. Lightwave Technology、第27巻、第24号、5648−5656ページ(2009年)を参照されたい。
図10の実線は、2つの平坦で無限の反射面の間の標準ファブリペローキャビティの場合における反射率に応じた計算上のフィネスに対応する。キャビティ40の長さが大きいと、厚いダイヤフラム20の場合のように、フィネスは回折損失に支配され、反射素子22の反射率によって大きくは影響されない(たとえば、8λおよび16λのキャビティ長に対応する線を参照
されたい)。センサ感度はフィネスに比例するため、センサ10の感度を向上させるためには、フィネスを高めることが望ましい(たとえば、回折損失を減少させることによる)。
【0067】
特定の実施形態において、センサ10は、回折損失を減少させるために、ファブリペローキャビティ40の光路の一部として、集束要素70(たとえば、レンズまたは局面ミラー)を含む。
図11Aおよび
図11Bは、ここに記載される特定の実施形態に係る2つの例示的な集束要素70を概略的に示す。
図11Aは、レンズ構造70(たとえば、光ファイバ30に対向するダイヤフラム20の面の少なくとも一部として作られた曲面)を含むダイヤフラム20を概略的に示す。
図11Bは、湾曲した反射曲または層70(たとえば、光ファイバ30とは反対を向いた面の少なくとも一部として作られた曲面ミラー)を含むダイヤフラム20を概略的に示す。特定の実施形態において、レンズ構造または層70の反射面のいずれかの曲率は、反射してファイバの端面に戻る光線のモードフィールド直径がファイバモードのモードフィールド直径に合致するように選ぶことができ、これにより、回折損失を実質的に減少または取り除くことができる。たとえば、特定の実施形態において、レンズ構造または層70の反射面のいずれか一方の曲率半径は、約0.1mmから約0.6mmの範囲にある。
【0068】
図11Aから
図11Bに概略的に示されるように、特定の実施形態の集束要素70(たとえば、レンズおよび/または曲面ミラー)は、ダイヤフラム20の一部である。特定の他の実施形態において、集束要素70は、ダイヤフラム20とは別にあるが、ファブリペローキャビティ40の光路の一部である。たとえば、集束要素70は、ダイヤフラム20から間隔を空けた別個のスラブまたは構造を含むことができる(たとえば、ダイヤフラム20と光ファイバ30との間に設けられたレンズ構造、または光ファイバ30に位置決めされた構造)。他の構成もまた、ここに記載される特定の実施形態に適合する。
【0069】
向上したダイナミックレンジ
図12は、ここに記載される特定の実施形態に適合する複数のセンサを有する音響センサシステム100の例を概略的に示す。例示的な裏面ウエハ、ダイヤフラム20、および前面ウエハの走査電子顕微鏡写真が、概略図の下に示される。この例において、構造要素50(裏面ウエハと前面ウエハとを含む)は、シリコンを用いて作られ、ダイヤフラム20の反射要素22は、2つの単一モード光ファイバ30と併せて光キャビティを形成するように位置決めされたフォトニック結晶ミラーを含む。
【0070】
海洋音響学においては、実際には水を圧縮できないため、水で満たされた状態の小さい閉じられたファブリペローキャビティに対してダイヤフラム20を動かすことができない。たとえば、ダイヤフラムの大きさのチャネルであるチャネル90は、ファイバの周囲に作ることができ、これにより、水を光キャビティ40から流出させ、ダイヤフラム20を動かすことができる。特定の実施形態において、ダイヤフラムの大きさのチャネル90は、直径が約0.1mmから約0.4mmの間、約0.15mmから約0.35mmの間、または約0.2mmから約0.3mmの間である。特定の実施形態において、ダイヤフラムの大きさのチャネル90は、ダイヤフラム20の直径を規定し、光ファイバ30の周囲から拡大チャネル92への結合をもたらす。拡大チャネル92はさらに、バックチャンバチャネル95に至ることができる。特定の実施形態において、拡大チャネル92は、ダイヤフラムの大きさのチャネル90より大きく、拡大チャネル92内の流れ抵抗を減少させる。バックチャンバチャネル95は、構造要素50の中心に設けられた大きな穴とすることができる。特定の実施形態において、バックチャンバチャネル95は、直径が約1mmから約2mmの間であり、例えば、直径は1.5mmである。
【0071】
図12に示されるように、特定の実施形態において、異なる音響信号レベルに応答する2つ以上のセンサ101,102を互いに並行に配置して使用し、センサシステム100のダイナミックレンジを向上させることができる。特定のこのような実施形態において、複数の並行なセンサ101,102は、互いに近接して配置され、これによって、センサ
ほぼ同じ音響信号を受ける。2つのセンサ(たとえば、第1のセンサ101および第2のセンサ102)を利用する特定の実施形態において、第1のセンサ101は、弱い音響信号を測定するために使用することができ、第2のセンサ102は、強い信号を測定するために使用することができる。この方法により、2つの組み合わされたセンサ101,102を有するセンサシステム100のダイナミックレンジの合計は、センサ101または102のいずれか一方が単独で使用される場合のダイナミックレンジより大きい。
【0072】
特定の実施形態において、複数のセンサのうちの少なくとも一方のセンサ(たとえば、第1および第2のセンサ101,102のうちの第2のセンサ102)は、複数のセンサの内の他方のセンサ(たとえば、第1のセンサ101)と比較して、より強い信号を測定することができるが、感度は減少する。特定のこのような実施形態において、少なくとも1つのセンサの感度は、様々な方法、技法、または変更によって減少する。たとえば、少なくとも1つセンサ(たとえば、第2のセンサ102)のファブリペローキャビティ40のフィネスは、反射率の低い反射素子22を使用すること、より長いファブリペローキャビティ40を使用すること、またはこれら両方によって減少させることができる。ファブリペローキャビティ40に対するこのような変更は、高い回折損失を引き起こし、ファブリペローキャビティ40のフィネスを減少させる。
【0073】
特定の他の実施形態において、少なくとも1つのセンサ(たとえば、第2のセンサ102)におけるダイヤフラム20の機械的コンプライアンスは、他のセンサ(たとえば、第1のセンサ101)と比較して低くすることができる。たとえば、より厚いダイヤフラム20および/もしくはより小さい直径を有するダイヤフラム20、ならびに/またはコンプライアンスの低い材料からなるダイヤフラム20を使用してダイヤフラム20の機械的コンプライアンスを減少させることができる。
【0074】
特定の実施形態において、少なくとも1つのセンサは、ファブリペローキャビティ40とは異なる光検出スキームを利用することができる。たとえば、少なくとも1つのセンサは、ベアファイバ30(たとえば、端部に反射素子32を有さないファイバ30)を含むことができ、これにより、端面からの大きな反射が無くなる(シリカと水との界面の反射が0.3%であるため)。結合はダイヤフラム20とファイバ端との間の間隔に依存するため、特定のこのような実施例におけるダイヤフラム20の動きは、光ファイバ30に結合する光の量のみに影響を及ぼす。結合した信号は、ファブリペロー信号が音響信号の測定に使用されるのと同じ方法で使用することができる。
【0075】
センサ間の交差カップリングの減少
水の圧縮率が低いことにより、音響信号に応答したダイヤフラム20の動きは、光キャビティ40の内側および外側への水の流動をもたらす。特定の実施形態において、バックチャンバ65とよばれる容器がセンサ10の内部に設けられる。バックチャンバ65は、光キャビティ40と流体連結する所定量(たとえば、大きさとして数立方ミリメートル)の水を含む。2つ以上のセンサ101,102を並行に設けてダイナミックを増加させる場合、上述したように、バックチャンバ65のサイズが大きいと、一部の実施形態においては、各センサ101,102に別個のバックチャンバ65を設けることが実用的でなくなる。並行なセンサ101,102を利用する特定の実施形態において、単一のバックチャンバ65を複数または全てのセンサ101,102で共有させることができる。しかし、特定の実施形態におけるこのような構成は、バックチャンバ65を共有するセンサ101,102の間で信号およびノイズの交差カップリングを引き起こし得る。
【0076】
図13Aおよび
図13Bは、互いに並行に設けられ、同じバックチャンバ65を共有する一対の2つのセンサ101,102のうちの第1のセンサ(たとえば、
図13A)および第2のセンサ102(たとえば、
図13B)の例示的な応答を示すグラフ図である。こ
の
図13Aおよび
図13Bの特定的な例の場合において、(i)第1のセンサ101は、200μmの直径を有する厚さ0.5μmのダイヤフラム20を含み、第1のセンサ101の共振は18kHzであり、(ii)第2のセンサ102は、第1のセンサ101と同じ厚さのダイヤフラム20を有するが、180μmの直径と21kHzの共振を有し、(iii)バックチャンバ65は、半径が3mmで長さが5mmの筒状容積を有し、82kHzのヘルムホルツ共振を有する。
【0077】
図13Aおよび
図13Bから分かるように、2つのセンサ101,102は、互いに結合し、さらなる共振特性をもたらす。
図13Aの矢印は、第2のセンサ102の信号からの結合による第1センサ101の応答における共振特性を指し、
図13Bの矢印は、第1のセンサ101の信号からの結合による第2のセンサ102の応答における共振特性を指す。特定の実施形態において、この交差カップリングは、センサ101,102の間の応答を複雑化してノイズを結合することから、センサ性能に悪影響を及ぼし得て、これによって各センサ101,102のノイズフロアが増加する。
【0078】
ここに記載される特定の実施形態は、2つ以上の平行なセンサ101,102の間の交差カップリングを有利に除去する。特定のこのような実施形態において、バックチャンバ65のヘルムホルツ共振およびセンサ共振は、互いの周波数が実質的に等しくなるように調整される。特定のこのような実施形態において、ヘルムホルツ共振においては、2つの並行なセンサ101,102が音響的に接地されて分離されるように、バックチャンバ65のインピーダンスはゼロとなる。
図14Aおよび
図14Bに示されるように、特定のこのような実施形態は、2つ以上のセンサ101,102の間での交差カップリングを有利に除去または減少させる。
図14Aおよび
図14Bの場合において、バックチャンバの長さは23mmに増加し、これによって、ヘルムホルツ共振が18kHzとなる。この方法により、センサ共振がバックチャンバのヘルムホルツ共振に非常に近くなり、第1のセンサ101と第2のセンサ102との間の交差カップリングが実質的に除去される。特定の実施形態において、バックチャンバ65のヘルムホルツ共振およびセンサ共振は、互いに1%、2%、3%、5%、8%、または10%より小さくなる。
図14Aおよび
図14Bの応答曲線は、第1のセンサ101と第2のセンサ102とが並行である場合についてグラフ化されるが、その曲線は、他のセンサが並行に接続されていない個別のセンサの場合の曲線と実質的に合致する。特定の実施形態において、ヘルムホルツ共振を最適化することは、交差カップリングを減少または完全に除去するのに効果的な方法となり得る。
【0079】
気泡による感度の増加
一般に空気中で組み立てられるセンサ10が水に浸されると、センサ10が水で徐々に満たされ、静水圧に対する無反応性がもたらされる。しかし、少しの空気がセンサ10内に残り、1つ以上の気泡または空気泡(直径の大きさが約0.1mmから約2mmの範囲)がセンサ10内に閉じ込められる場合がある。たとえば、標準的な食器用洗剤などの界面活性剤を水に投入することによって、このような気泡または空気泡を概して防ぐことができ、これにより、水の表面張力が減少し、水がセンサ10内に容易に流れることができる。しかし、特定の実施形態においては、1つ以上の気泡または空気泡をセンサ10内に残すこと、または、1つ以上の気泡または空気泡をセンサ10内に意図的に導入することが有益である。特定の実施形態において、1つ以上の気泡または空気泡は、センサ10の感度を有利に概して増加させ、その一方で周波数帯域幅を減少させる。
【0080】
例えば、特定の実施形態において、小さな空気泡がバックチャンバ65内に存在することによって、音響質量に僅かな影響が及ぼされる。しかし、水の圧縮率は非常に小さいため、バックチャンバ65の剛性は、空気泡の圧縮率によって支配され得る。ダイヤフラム20とバックチャンバ65とを含むシステムの全体的な剛性は、特定の実施形態において減らすことができ、これによって共振周波数も減少する。質量が概して水によって占めら
れており、圧縮率は概して空気によって支配されていることから、特定の実施形態における共振周波数の減少は、空気泡の大きさに強く依存していない(空気泡の大きさが約100μmよりも大きい限りにおいて)。センサ10の特定の実施形態は、100Hzから10kHzの周波数範囲において、3.5μPa/Hz
1/2の低い圧力を有利に測定することができる。閉じ込められた空気によって引き起こされるバックチャンバ65内の圧縮率の増加により、この改善された最小検出可能圧力が付与される。特定の実施形態において、センサ10は、10μPa/Hz
1/2、9μPa/Hz
1/2、8μPa/Hz
1/2、7μPa/Hz
1/2、6μPa/Hz
1/2、5μPa/Hz
1/2、4μPa/Hz
1/2、または3μPa/Hz
1/2より小さい圧力を有利に測定することができる。
【0081】
特定の実施形態において、センサ10の用途において感度がより重要であり、帯域幅を犠牲にすることができる場合に、1つ以上の気泡または空気泡を使用してもよい。1つ以上の気泡または空気泡は、センサ10内において概して圧縮可能(たとえば、水よりも圧縮可能)で概して弾性的な要素として機能し、センサ10の構成物の圧縮率を実質的に支配する。
【0082】
製造処理
特定の実施形態において、音響センサ10の製造処理は、シリコン微細加工技術を伴う。
図15は、ここに記載される特定の実施形態に係る例示的な製造処理を概略的に示す。他の技術も可能である。シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハは、シリコン基板510と、約1μmの厚さを有する埋込酸化膜層520と、約450nmの厚さを有するシリコン素子層530とを含む。
図15の(a)に示されるように、低温酸化物(LTO)層540は、SOIウエハに堆積される。その後、
図15の(b)に示されるように、ウエハはフォトレジスト550で覆われ、たとえばフォトリソグラフィマスク560の使用により、フォトリソグラフィによって露光される。LTO層540は、
図15の(c)に示される構造を形成するために、プラズマエッチングによってエッチングされる。
図15の(d)に示されるように、このパターン形成されたLTO層540は、下方のシリコン層530をエッチングするためのハードマスクとして使用される。
図15の(e)に示されるように、ひとたび前面にフォトニック結晶構造がパターン形成されると、シリコン素子層530のフォトニック結晶構造を解放するために裏面がパターン形成される。
【0083】
図16は、ここに記載される特定の実施形態に係る、裏面パターンをもたらすための例示的な製造処理を概略的に示す。
図16の(a)に示されるように、低温シリコン酸化物(LTO)層540がシリコン基板510に堆積される(たとえば、
図15と併せた上記の処理から得られるシリコン基板510)。
図16の(a)に示されるように、LTO層540をシリコン基板の両側の各々に堆積させることができる。特定の実施形態において、1つ以上の窒化物層(たとえば、図示されないSi
3N
4)をLTO層540の各々に堆積させることができる。これらの窒化物層は、シリコン層530の残留応力への補償を補助することができる。たとえば、特定の実施形態において、Si
3N
4は、引張応力下において堆積され、シリカ(SiO
2)膜による圧縮応力を補償することができる。シリコン素子層530の反対側のシリコン基板510の表面に設けられるLTO層540は、
図16の(b)に示されるように、反応性イオンエッチングを用いてパターン形成される。
図16の(c)に示されるように、シリコン基板510の裏側の少なくとも一部は除去される(たとえば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)ウェットエッチングを用いて)。最後に、
図16の(d)に示されるように、埋込酸化膜層520の少なくとも一部およびシリコン基板510の各側のLTO層540の残りの部分は除去され(たとえば、フッ化水素酸を用いて)、シリコン素子層530の構造が解放される。この例示的な製造方法により、4インチウエハに250個よりたくさんのチップを形成することができる。
図15および
図16の例示的なフォトリソグラフィプロセスによる並行製造処理を利
用することにより、所定時間内で製造できるセンサ10の数が実質的に増加し、これにより、費用を減らすことができる。これは商業的量産化において、非常に重要である。
【0084】
図1Bに示されるように、特定の実施形態において、たとえば構造要素50などのセンサ10の本体は、複数の要素から製造することができる。たとえば、構造要素50は、いくつかのウエハ部分(たとえば、直径が4インチの溶融シリカウエハの部分)を接着することによって作ることができ、各々のウエハ部分には、上述のような圧力均等化チャネルなどの異なるパターンの穴が設けられる。
図17A−
図17Cは、ここに記載される特定の実施形態に係るシリカ構造要素50の基礎的構造として用いられる、3つの個別のウエハ50a,50b,50cと、その穴のパターンを概略的に示す。
図17A−
図17Cの穴は概して円形であるが、穴の他の形状(たとえば、正方形、矩形、三角形、多角形、楕円、または不整形)もまた使用することができる。
図17A−
図17Cのウエハ50a,50b,50cの例示的な穴の直径は、それぞれ0.3mm、2mm、0.2mmである。穴の直径は、他の直径に調整することができる。
図18は、ここに記載される特定の実施形態に係るセンサヘッドを形成するために互いに接着されて、ダイヤフラム20と光ファイバ30とのフォトニック結晶構造に取り付けられた
図17A〜
図17Cのウエハ50a,50b,50cの例示的な配置を概略的に示す図である。この実施形態において、フォトニック結晶構造は、ダイヤフラム20の反射素子22として機能する。特定の実施形態におけるウエハの厚さは、0.5mmである。他の実施形態において、ウエハの厚さは、約0.3mmから0.7mmの間、または約0.4mmから0.6mmの間であってもよい。各ウエハ(たとえば、
図17A−図の17Cの50a,50b,50c)の両側は、接着のために磨かれてもよい。
【0085】
ウエハ部分を作るために、各々がセンサヘッドに対応する複数のセルを含むパターンまたは配列を有して、各ウエハに円形穴の二次元配列をエッチングしてもよい。たとえば、
図17A‐
図17Cは、3つのウエハ50a,50b,50cのためのこのパターンの1つのセルのみを示し、1つのセルは、1つのセンサヘッドを形成するために利用される。特定の実施形態において、ダイヤフラム20に最も近い穴(たとえば、
図17Aに示され、0.3mmの直径を有する)は、音響センサ10のダイヤフラム20の屈曲が許容される寸法を定め、これが最終的な装置の音響感度に影響を及ぼす(たとえば、ダイヤフラムが大きければ大きいほど、センサ10の感度がより高まる)。特定の実施形態の第2層および第3層(たとえば、
図17Bおよび
図17Cに示される)は、ダイヤフラム20から
図18に示されるバックチャンバ65に流れる水のためのチャネルを規定する(たとえば、ハイドロフォンの場合)。特定の実施形態の実施形態において、カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz)のバレーデザイン(Valley Design)で製造され、カリフォル
ニア州ランチョ・クカモンガ(Rancho Cucamonga)のミンドラムプレシジョン(Mindrum Precision)によってパターン形成されたシリカウエハを利用することができる。
【0086】
特定の実施形態において、ダイヤフラム20のフォトニック結晶構造を作った後に、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハが、ケイ酸塩接着(レーザ干渉計重力波観測所(LIGO)プロジェクトに記載される水酸化物触媒接着)と呼ばれる技術を使用してシリカウエハに接着される。この方法において、水酸化物は、水和作用および脱水作用によって、シリカ表面に対して触媒作用を及ぼす。表面は接着のために密接することが望まれるため、特定の実施形態においては、λ/10以上の平面度が用いられる。特定の実施形態においては、高密度のSi‐OH基を有する親水性表面が、良好な接着のために利用される。特定の実施形態において接着を実現するために適用される手順は、脱イオン化(DI)された水で基板をすすいで粒子を洗い落とし、メタノールで表面を拭いて乾燥させることを含む。つぎに、ケイ酸ナトリウム溶液から約5mlがピペットによって抜き取られ、DI水がケイ酸ナトリウム溶液に移され、約25ml(1:4)の接着溶液が得られる。この接着溶液から約1.0mlが新しいピペットを使用して抽出され、ガラス上に施
される。その後、接着される2つの面が圧着される。
【0087】
特定の実施形態において、ダイヤフラムを有するSOIウエハをシリカウエハに接着させるためにこの処理が使用され、シリカウエハの各々は、同じケイ酸塩接着技術を用いて他のシリカウエハに再度接着される。特定の実施形態において、たとえば、
図17Bに示される50bおよび
図17Cに示される50cなどの2つのシリカウエハが互いに接着される。この積層の頂部では、たとえば
図17Aに示される50aなどの他のシリカウエハがウエハ50bに接着される。その後、SOIウエハはウエハ50aに接着される。例示的な処理の際に対応する穴の中心を合わせるために利用される配列は、顕微鏡の下で行われる。この積層は、4つの4インチウエハを含み、二次元配列のセンサは、個別のセンサを得るために個別のセルに分割することができる。接着は、たとえばケイ酸塩接着または熱接着を用いて行うことができる。
【0088】
ひとたびシリカウエハ50a,50b,50cとダイヤフラム20を含むSOIウエハとがケイ酸塩接着技術を用いて接着されると、センサ10がさらに組み立てられる。特定の実施形態におけるセンサ10の組み立て処理は、真空チャックによって固定されたセンサヘッドを保持することと、反射素子32を有する光ファイバ30(たとえば、光ファイバ30の先端に)をダイヤフラム20に近接するように移動させることを含む。この処理の際に、ファブリペローキャビティの自由スペクトル領域の典型的な測定法から推測されるキャビティ長40によって、反射スペクトルを監視することができる。ひとたび正しいキャビティ長40が得られると、光ファイバ30は、構造要素50に接着することができる。特定の実施形態においては、上記のように、ウエハ全体を接着して個別の構造要素50に分割するために製造処理を使用することができる。代替的に、特定の実施形態において、ウエハをまず分割してから個別の構造要素50に1つずつ接着してもよい。特定の実施形態において、光ファイバ30は、ウエハを分割した後に取り付けることができる。他の実施形態においては、光ファイバ30は、ウエハを分割する前に取り付けることができる。
【0089】
特定の実施形態において、構造要素50に光ファイバ30を接着するために使用される方法は、接着に硬化が必要な場合の硬化処理の際、および装置の組み立てが完成した後も再現可能なキャビティ長、たとえば、接着処理の際に実質的に変化しない共振波長を有するファブリペローキャビティ40を有利に提供する。特定の実施形態において、温度の変動に伴うキャビティ長40の変化を実質的にもたらさない接着を有利に生じさせる。この目的は、たとえば、安息香酸フェニル、アークスプライス、またはCo
2レーザ溶融などの複数の技術を用いて達成することができる。
【0090】
図19に示すように、特定の実施形態において、安息香酸フェニルを用いる手法およびエポキシを用いる手法においては、0.75mmの直径を有する2つの貫通穴85が、光ファイバ30の内径に近い内径(たとえば、通常は125μmの直径を有する標準的なファイバが、127μmの直径を有する)を有するシリカ毛管80の側部に対称に穿孔される。毛管80の外径は重要ではなく、1.8mmの値を使用することができる。穴85は、接着材料が毛管80内において光ファイバ30に達して保持するためのチャネルを提供する。室温では粉末である安息香酸フェニル(C
13H
10O
2)は、ここに記載される特定の実施形態に適合する接着材料である。特定の実施形態の光ファイバ30は、毛管80に挿入され、ダイヤフラム20の反射素子20とともにファブリペローキャビティ40を形成する。高精度機械ポジショナによってダイヤフラム20に近接してファイバ端が設けられる一方で、センサ10の光スペクトルは、光スペクトルアナライザによって監視される。正しいキャビティ長が達成されると、安息香酸フェニルが穴85を介して付与され、安息香酸フェニルの融点より高く加熱される(安息香酸フェニルは、68℃−70℃で融解する)。融解した安息香酸フェニルは、穴85に流れ込み、熱源が取り除かれる。安
息香酸フェニルは冷却され、固形化して光ファイバ30を毛管80に接着するにつれ、冷却して結晶化する。特定の実施形態においては、接着処理が完了した後に、出力スペクトルを再検査することができる。接着処理により、ファブリペローキャビティの長さについて目標値からのずれが観測された場合、安息香酸フェニルは再度加熱することができ、この時点で光ファイバ30は自由に動くことができ、キャビティ長が調整され、間隔が再度測定される。この処理は、所望のキャビティ長が達成されるまで数回に渡って繰り返すことができる。この例示的な方法のさらなる1つの利点として、側部の穴85が対称に設けられていることから、接着材料が光ファイバ30に対して均等な力を加え(
図19を参照)、これによってキャビティ長を偏移させることができる。
【0091】
他の例示的な製造方法において、光ファイバ30をシリカ毛管80に取り付けるために電気アーク(たとえば、商業用ファイバ接合機による)が使用される。
図20Aおよび20Bは、ここに記載される特定の実施形態による2つの要素を良好に接着するために用いられる、アーク電流を下げる方法に使用される構造を概略的に示す。特定のこのような実施形態の毛管80は、一方の端部81がテーパ状となっている。光ファイバ30は、毛管80に挿入され、アセンブリ全体が従来のアーク接合機に配置される。アーク電流およびアーク継続時間を適切に選択することで、光ファイバ30はシリカ毛管80と融合する。CO
2レーザを使用しても同じ目的を達成することができる。
図20Aおよび20Bに示されるように、シリカ毛管80のテーパ状でなく大きい領域を有する側部82は、ダイヤフラム20が設けられていないシリカ構造要素50の側部に接着される(たとえば、
図20Aに示される側部82は、ノンスケールの
図20Bに示される構造50の側部51に接着される)。特定の実施形態において、この接着は、上記のようにシリカ表面を接着する目的において良好に作用するケイ酸塩接着によって実現することができる。
【0092】
図21は、ここに記載される特定の実施形態に係る音響センサ10を製造するための例示的な方法1000を示すフロー図である。
図21の機能ブロック1010に示されるように、方法1000は、反射素子22を含むダイヤフラム20を設けることを含む。機能ブロック1020に示されるように、方法1000はまた、光ファイバ30から放射される光が反射素子22によって反射されるように光ファイバ30を反射素子22に対して位置決めすることを含む。反射素子22に対して光ファイバ30を位置決めすることは、それらの間に光キャビティ40を形成することを含む。機能ブロック1030に示されるように、方法1000はさらに、構造要素50を用いてダイヤフラム20を光ファイバ30に対して機械的に結合させることを含む。構造要素50は、シリカを含む。
【0093】
方法1000の特定の実施形態において、機能ブロック1010に示されるように反射素子22を含むダイヤフラム20を設けることは、反射素子22としてのフォトニック結晶構造を設けることを含む。フォトニック結晶構造を設けることは、フォトリソグラフィによって製造されたフォトニック結晶構造を設けることを含んでもよい。特定の実施形態において、方法1000はさらに、ケイ酸塩を用いてダイヤフラム20を構造要素50に接着させることを含む。
【0094】
様々な実施形態において、方法1000はさらに、シリカを含む要素25を光キャビティ40内に用いることを含む。方法1000はさらに、シリカを含む要素25の厚さが光ファイバ30の第1端32とダイヤフラム20との間の距離にほぼ等しくなるように選択することを含む。
【0095】
特定の実施形態において、方法1000はさらに、機械的コンプライアンスを高めるためにダイヤフラムの直径を選択すること、および/または機械的コンプライアンスを高めるためにダイヤフラムの断面積を選択することを含むことができる。方法1000はまた、ダイヤフラム20に位置決めされた反射素子22から分離された1つ以上の流体管55
を用いることを含むことができる。方法1000はまた、感度を高めるために、少なくとも1つの概して圧縮可能かつ概して弾性的な要素を光キャビティ40に用いることを含むことができる。
【0096】
例示的な光音響センサの例示的な実施形態および特徴付け
図22は、ここに記載される特定の実施形態による、製造および組み立てが成された例示的な音響センサ10を概略的に示す図である。この例において、センサ10は、光ファイバ30の反射素子32として機能する15nmの金でコーティングされた単一モードファイバ30の固定端32に近接して(約25μm)配置された 450nmの厚さの単一
結晶シリコンフォトニック結晶構造を有する偏向可能ダイヤフラム20を含む。フォトニック結晶構造は、各側において、300平方μmである。フォトニック結晶構造は、900nmのピッチで800nmの直径の穴の平方格子を有し、たとえば、約100nmの最小壁厚さを有する。センサ10は、ここに記載されるリソフォトグラフィおよびケイ酸塩接着法を用いて製造される。
図23Aは、ダイヤフラム20の作製されたフォトニック結晶構造の上面視の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
図23Bは、ダイヤフラム20の製造されたフォトニック結晶構造の斜視の走査電子顕微鏡写真を示す図である。
図23Cに示されるように、製造されたセンサ10の寸法は、5×5×5mmである。さらに小型化することが可能である。
【0097】
例示的な光音響センサの実験的特徴付け
例示的なファイバ音響センサ10は、音響的に隔離された筺体内において参照用の従来の較正マイクロフォンを用いて試験される。
図24は、音波特徴付けセットアップを概略的に示す。センサ10は、15kHzの線幅でノイズが低い1550nmのレーザダイオードを用いてインテロゲートされる(interrogated)。レーザ光は、光サーキュレータを介してセンサ10に結合され、センサ10によって反射された光は、PINフォトダイオードを用いて検出される。
【0098】
較正基準マイクロフォンおよび音響センサ10の電気出力は、動的信号アナライザ(DSA)に接続され、2つのセンサの周波数応答およびノイズスペクトルならびにこれらのセンサ間の可干渉性が測定される。可干渉性は、2つの信号間の線形相関の度合いを示す尺度である。一方の信号がノイズによって支配されるなど、2つの信号が相関しない場合、可干渉性の値は0となる。完全に相関する場合、可干渉性の値は1となる。1Paの一定の圧力が全ての周波数においてセンサに対して加わるように音響源の出力を調整するために、基準マイクロフォンからの電気信号は、DSAへのフィードバック信号として使用される。平坦な周波数応答を得るために、較正基準マイクロフォンが特定および測定される周波数帯域である30kHzの音響周波数に至るまで測定が行われる。
【0099】
図25は、〜700Hzより高い周波数の場合において、2つのセンサ出力の間に強い可干渉性(〜1)があることを示し、この周波数帯域におけるデータが正確であることを表わす。低い周波数において可干渉性が低くなるのは、一方または両方のセンサが1よりも低い信号対ノイズ比を有するためと考えられる。
図26は、例示的なファイバ音響センサ10の測定された周波数応答を示し、音響ファイバセンサ10のパワースペクトル(ボルト:V)と基準マイクロフォンのパワースペクトル(パスカル:Pa)との比である。このセンサ10は、〜6の測定されたフィネスを有する。8kHzより大きい帯域幅を有する平坦バンドおよびFPセンサにおいては、機械的共振から生じる〜12.5kHzの共振がある。〜700Hzより高い他の小さい共振は、主に音響チャンバにおける残留共振によるものである。
【0100】
図27は、3つの例示的なノイズ曲線をグラフ化したものであり、
図24と同じ装置において異なる例示的なセンサ10で測定されているが、音響信号は欠如している。この例
において、ノイズは、約10
‐4V/Hz
1/2から約10
‐7V/Hz
1/2の間で測定することができる。上部の曲線は、センサ10のノイズである。中間部の曲線は、センサ10を反射体と置き換えた場合に測定されたノイズである。最も下部の曲線は、レーザが切られた場合に測定された。これは、検出電子機器(光検出器およびDSA)によるノイズを表わす。中間部の曲線は、光電子機器ノイズを表わし、検出電子機器とレーザノイズとを含む。これは、最も高い周波数におけるレーザの相対強度ノイズ(−141dB V/√Hz)と〜10kHzより低い1/fノイズ成分とによって支配されるホワイトノイズ成分を有する。センサ10のノイズ(上部の曲線)は、光電子機器ノイズよりも少し大きく、この増加は、センサ10の熱機械ノイズ、およびレーザ相ノイズから強度ノイズに変換したものに対して付与することができる。
【0101】
図28は、
図26に示される周波数応答を有するセンサ10の最小検出可能圧力(MDP)を示す。このスペクトルは、センサ10のノイズスペクトルをその周波数応答で割ることによって得られる。測定された可干渉性が低いため、〜700Hzより低いデータは正確ではない。〜700Hzから8.6kHzの間において、MDPは、〜180から〜27μPa/√Hzの範囲にある。8.6kHzを超えると、MDPは、周波数が装置の主な機械的共振に近付くにつれて向上し、12.5kHzにおいて約5.6μPa/√Hzまで低くなる。1kHzから30kHzの周波数帯域を超えるMDPの平均は、約33である。この結果は、ここに記載される特定の実施形態が、たとえば海軍の音響システムへの適用に望まれる感度および帯域幅性能を提供することが可能であることを示している。特定の実施形態において、これらのMDPの値は、一部が光電子機器ノイズによって制限され、検出電子機器を直接的に向上させることによってさらに減らすことができる。低い周波数において、実験環境の音響ノイズは、測定の際に観測されるMDPの低下に対して応答することも可能である。
【0102】
例示的な光音響センサの熱安定性
例示的なファイバ音響センサ10の熱安定性の特徴付けを行うために、その温度は、2℃から58℃の間で変動し、共振波長の結果としての偏移は、光スペクトルアナライザを用いて記録される。同じ測定は、たとえばシリカファイバやシリコン構造要素などの第一世代ファイバセンサを用いて行われた。2つのセンサのために測定された共振波長の変動は、
図29に示される。温度にともなって正常化された波長偏移は、ここに記載される特定の実施形態のセンサにおいては、以前のセンサよりも〜70倍低い(3.3×10
−6/℃対2.5×10
−4/℃)。全シリカファイバセンサ(たとえば、シリカファイバ30、シリカ毛管80、およびシリカ構造要素50)の熱安定性は、
【0104】
測定された値は、ケイ酸塩接着材料によって高くなる場合が多い。特定の実施形態の場合、この結果は、高度に安定した音響センサへの大きなステップを構成し、大規模センサシステムには十分以上である。
【0105】
例示的な光音響センサシステムの例示的な実施形態および特徴付け
図30は、海洋音響のための例示的な音響センサシステム200である。O.キリック(O. Kilic)、M.ディゴネット(M. Digonnet)、G.キノ(G. Kino)、およびO.ソルガード(O. Solgaard)の「海洋音響のために最適化されたフォトニック結晶ダイヤフ
ラム系ファイバ端ハイドロフォン(Photonic-crystal-diaphragm-based fiber-tip hydrophone optimized for ocean acoustics)」SPEE議事録、7004巻、700405
(2008年)を参照されたい。
図30の展開図において、センサシステム200は、セ
ンサヘッドの面210を含む。センサヘッドの面210は、上記の特定の実施形態によるダイヤフラム20の反射素子22と構造要素50とを含むことができる。実施形態におけるセンサシステム200は、複数230の光ファイバ30を含むことができ、光ファイバ30の各々は、光ファイバ30の端部に反射素子32を有する。センサ200はさらに、バックチャンバハウジング260をさらに含むことができる。センサシステム200の断面は、
図12に示されるセンサシステム100に類似している。
【0106】
図12を参照すると、反射素子20は、シリコン構造要素50を微細加工したフォトニック結晶反射素子22を含むことができる。
図30に示されるように、複数230の光ファイバ30は、4つのSMF−28ファイバを含むことができ、SMF−28ファイバの各々は、異なる光信号を送信および受信する。他の実施形態においては、4つより多い数の光ファイバ30を使用することができる。
図12に示されるように、4つの光ファイバ30のうちの3つは、センサヘッドの面に設けられたダイヤフラム20のフォトニック結晶反射素子22まで達することができる。この実施形態において、フォトニック結晶構造は、高い反射率(>95%)を有する反射素子22である。ここに記載される特定の実施形態によれば、各光ファイバ30の端部は、反射素子32によって覆われ、これにより、フォトニック結晶反射素子22に近接して(〜20μm)端部が配置された場合、各々がファブリペロー光キャビティ40を形成する。適合するダイヤフラム20を変形させることによって、入射音響信号400が光キャビティ40の間隔を調整することができ、反射して光ファイバ30に戻るレーザ光のパワーに変化を生じさせる。
【0107】
図30に示されるセンサシステム200の3つのセンサは、目的の最短音響波長(100kHzで15mm)よりも小さい大きさにほぼ近い約2.5mmの直径を有する領域に集めることができ、これにより、ほぼ同じ音響振幅に露出させることができる。他の実施形態において、センサシステム200は、直径が約2mmから約3mmの領域に集めることができる。3つのダイヤフラム20は、異なる直径(たとえば、150μm、212μm、および300μm)、および異なるコンプライアンスを有することができる(相対的なコンプライアンスは、たとえば、それぞれ×1、×4、および×16である)。他の実施形態において、ダイヤフラム20は、約100μmから約400μm、約150μmから約350μm、または約200μmから約300μmの直径を有することができる。ここに開示されるように、3つのセンサの各々は、単一のセンサよりも高くセンサ200ヘッドのダイナミックレンジを増加させるために、異なる範囲の圧力に対処することができる。計算は、この範囲が圧力を低い海洋の周囲熱ノイズ(〜10μPa/Hz
1/2)から160dBの大きな信号にまで広げことができることを示す。第4のファイバは、センサ配列の用途における較正の目的のために基準反射素子に接続することができる。これは、信号が伝わる経路に関連付けられた損失およびノイズを考慮に入れるために、他の3つのファイバからの音響信号を伴って伝送される静的基準信号を提供することができる。ここに記載され、
図12に示されるように、センサシステム200は、ダイヤフラムの大きさのチャネル90、拡大チャネル92、およびバックチャンバチャネル95を含むことができる。
【0108】
例示的な光音響センサシステムの製造
センサシステム200は、たとえば
図31に示されるように、シリコン微細加工技術を用いて製造することができる。製造は、(a)−(c)ダイヤフラムの大きさのチャネル90および拡大チャネル92をエッチングするステップと、(d)裏面ウエハを接着するステップと、(d)フォトニック結晶反射素子22を定めるステップと、(e)バックチャンバチャネル95およびファイバ整列チャネル97をエッチングするステップとを含むことができる。
【0109】
図31の(a)において、2μmの厚さを有する低温シリコン酸化物(LTO)層61
0が、低圧化学蒸着法(LPCVD)を用いて、400μmの厚さのシリコンウエハ620の両側に堆積される。他の実施形態において、ウエハ620は、約300μmから700μmの厚さ、約350μmから約650μmの厚さ、または約400μmから600μmの厚さとすることができる。熱的に成長したシリコン酸化物に代わって、LTOは、応力が低く、後の製造ステップにおいて有利となる。裏面のLTO層610は、続いて酸化物ウェットエッチング(緩衝化したフッ化水素酸)を用いてパターン形成される。このステップは、拡大チャネル92の形状を定める。
【0110】
拡大チャネル92をウエハ620にエッチングする前に、裏面は、厚い(>10μm)フォトレジスト(図示せず)によって覆われ、
図31の(b)に示されるダイヤフラムの大きさのチャネル90を定める形状にパターン形成される。このステップは、3つのダイヤフラム20の各々の直径を定める。次のステップは、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて裏面をエッチングすることを伴う。エッチングは、ダイヤフラムの大きさのチャネル90の一部のみがウエハ620にエッチングされるように時限とすることができる。
【0111】
図31の(c)において、レジストが次に剥がされ、拡大チャネルのパターンを有する裏面のLTO層610が露出される。次に、第2のDRIEステップが行われ、拡大チャネル92がウエハ620に部分的にエッチングされる。このステップは、部分的にエッチングされたダイヤフラムの大きさのチャネル90をエッチングするために、前面のLTO層610の前面に到達するまで継続される。
【0112】
図31の(d)において、フォトレジストでウエハ620の前面を保護しながら、裏面のLTO層610が時限フッ化水素酸エッチングを用いて剥がされる。その後、400μmの厚さを有する第2のシリコンウエハ620が、1000℃で第1のウエハ620の裏面に接着される。他の実施形態において、第2のウエハ620は、約300μmから約700μmの厚さ、約350μmから約650μmの厚さ、または約400μmから約600μmの厚さとすることができる。この後に、2つの25nmの窒化シリコン層に挟まれた450nmのポリシリコン層を含むダイヤフラム層630をLPCVD堆積させるステップが続く。他の実施形態において、ダイヤフラム全体は、約400μmから約700μmの厚さ、または約450μmから約650μmの厚さとすることができる。薄い窒化物層は、ポリシリコン層において残留応力を補償するように機能することができる。たとえば、S.キム(S. Kim)、S.アドジアリク(S. Hadzialic)、A.サドボ(A. Sudbo)、およびO.ソルガード(O. Solgaard)の「大きい角度範囲および低い極性依存性を備
える単一フィルム広帯域フォトニック結晶微細ミラー(Single-film broadband photonic
crystal micro-mirror with large angular range and low polarization dependence)」ボルチモア、MD、レーザおよび電気工学についての会議(CLEO)、p.CThP7、(2007年)を参照されたい。この低い応力は、たとえば
図32に示されるような、比較的平坦なダイヤフラム20を提供する。
【0113】
図32は、酸化物を下方に設けていない2つの25nmの窒化シリコン層の間に挟まれた450nmのポリシリコン層を含む中型ダイヤフラム(たとえば、直径が212μm)に対する光形状測定を含む。測定は、ダイヤフラム20が比較的小さい量の約300nmだけウエハ620の表面から上昇することを示す。上部領域は、130μmの直径を有する中心領域において約10nm内で平坦である。
【0114】
ダイヤフラム層630は、堆積された後、フォトニック結晶ミラーがパターン形成される。フォトニック結晶反射素子22の穴を作るために、比較的薄い(たとえば、約100nmから約200nmであり、ここでは約150nmである)LTO層610が堆積され、エッチングマスク(図示せず)として機能する。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
レジスト層がLTO層610にスピンコーティングされ、電子ビームリソグラフィを用いてパターン形成される。たとえばフォトリソグラフィなどの他のパターン形成方法も可能である。フォトニック結晶反射素子22の穴は、磁場増強反応性イオンエッチング(MERIE)を用いてLTO層610にエッチングされ、続くMERIEエッチングによってダイヤフラム層630にエッチングされる。
【0115】
図31の(e)において、バックチャンバチャネル95および裏面のファイバ整列チャネル97をエッチングするためにDRIEが使用される。エッチングの際に、フォトニック結晶反射素子22は、残ったLTO層610によって保護される。LTO層610は、短いフッ化水素酸エッチングを用いて最後のステップで剥がされる。
【0116】
様々なチャネルが、交互に行われる一連の不動態化および異方性エッチングステップによって異方的にシリコンウエハ620にエッチングされ、これにより、〜0.25μm(約0.15μmから約0.35μm、または約0.2μmから0.3μm)の平均深さを有する側壁の扇型切り欠きを作ることができる。不動態化ステップにおいては、プラズマが等角的にPTFE状フッ化炭素ポリマの層を堆積させる。このポリマは、エッチングから側壁を保護し、エッチングが完了した後も残る。この不動態化膜の疎水性は、側壁の扇形切り欠き形状との組み合わせにより、DRIEエッチングが施されたチャネルの湿潤を実質的に低くする。特定の実施形態においては、適切に光キャビティ40を水で満たすことが難しくなる。特定の実施形態において十分な湿潤可能性を付与するために、DRIEステップの後に、側壁のポリマを除去することができる。いくつかの実施例においては、完全に除去される。酸素プラズマを用いて有機物をエッチングし、続いて高熱ピラニアウェットエッチング(9:1 硫酸:過酸化水素)を施すアッシャーを用いることは、特定の実施形態においてはウエハ620の側壁ポリマを剥がすには十分である。
【0117】
複数230のファイバ30の内の各光ファイバ30の反射素子32は、切断されたSMF−28ファイバに対して電子ビーム蒸着を用いることで堆積させることができる。例示的な実施形態における反射素子22は、4nmのクロム接着層と、その次の20nm金反射層と、最後の15nmのフッ化マグネシウム保護層とを含む。他の実施例においては、クロム層は、約2nmから約5nmの厚さを有することができる。金反射層は、約15nmから約25nm、または約18nmから約22nmの厚さを有することができる。これに加え、保護層は、約10nmから約20nmの間、または約18nmから約22nmの厚さを有することができる。他の寸法も可能である。金は、センサシステム200に対処するためのレーザの稼働波長である約1550の波長において吸収性が低く、反射特性に優れていることから、有利である。
【0118】
ここに記載されるセンサ10の特定の実施例に係る、複数230のファイバ30を構造要素50に組み付ける方法は、センサシステム200に用いることができる。ファブリペロー干渉計のスペクトルを光スペクトルアナライザを用いて監視しながら、光ファイバ30がファイバ整列チャネル97を介して押し込まれる。ファブリペロー光キャビティ40の目標の間隔に達した後、光ファイバ230は(間隔を監視および調整しながら)エポキシによってしっかりと固定される。最後に、センサヘッドの面210は、エポキシを用いてバックチャンバハウジング260に取り付けられ、複数230の光ファイバ30は、熱収縮管によって締められる。バックチャンバハウジング260は、商業用ボールエンドホースバーブであっても良い。完成してパッケージ化されたセンサシステム200は、
図33の写真に示される。
【0119】
理論モデリング
海洋音響のためのセンサシステム200を最適化することは、海洋ノイズスペクトルが複雑であり、パラメータ空間の分析には、移動検出の光モデリング、ダイヤフラム動作の
機械的モデリング、センサバッフルおよびバックチャンバ設計の音響モデリング、ならびにチャネル構造のマイクロ流体工学モデリングなどの総合的なモデリングを利用する点において、困難である。また、単一のパラメータが同時にいくつかのセンサ特性に影響を与え得る。たとえば、ダイヤフラムにおける穿孔部の大きさが、ダイヤフラムの光反射、静水感度、および機械的コンプライアンスに影響を及ぼす。このため、直接有限要素数値シミュレーションによる最適化処理は実用的ではなく、様々なセンサのパラメータをどのようにして調整できるかについての見識を提供するものではない。ここに記載される分析モデルは、どのようにして設計パラメータを海洋音響に関する要求を満たすように調整するかについての情報を提供するために用いられる。
【0120】
集中素子等価回路モデル
特徴的なセンサシステムの寸法(〜1mm)は、目的の音響波長よりも実質的に小さい。他の実施形態において、センサシステムの寸法は、約1.5mmから約2mmとなり得る。このため、センサシステム200のノイズおよび熱機械ノイズをモデリングするために、空間的に分散した要素を単一の集中素子用いて概算することができる。たとえば、T.B.ガブリエルソン(T. B. Gabrielson)による「微細加工された音響および振動センサにおける機械的熱ノイズ(Mechanical thermal noise in micromachined acoustic and
vibration sensors)」、IEEE Trans. Electron Devices、40巻、903−909ページ(1993)を参照されたい。この集中モデルにおいて、センサシステム200において分散した位置エネルギおよび運動エネルギは、それぞれ、単一の音響コンプライアンスCおよび音響質量Mで記載される。同様に、センサシステム200における散逸は、単一の音響抵抗Rを用いてモデリングされる。
【0121】
集中素子を用いてセンサシステム200における物理的機構について記載すると、
図34に示されるように、これらの要素によって形成される等価回路を介してセンサシステム200を分析することができる。この回路において、音響コンプライアンスCは、電気容量と同様であり、音響質量Mは、電気インダクタンスに類似している。同じ対流において、音響抵抗Rは、電気抵抗と同様である。これらの集中素子の音響インピーダンス(Z)は、それぞれ、1/(jωC)、jωM、およびRである。
【0123】
明瞭化のために、1つのセンサ10のみのモデルが
図34に示され、この例では、3つの異なるセンサがセンサシステム200において並行に設けられ、同じバックチャンバ65に接続される。
【0124】
入射音響信号は、圧力源(P
in)で表わされる。音響信号は、フォトニック結晶反射素子22の穴を通る体積流量(経路M
hole‐R
hole)、または適合ダイヤフラム20の動きを介した体積流量としての2つの経路を通って光キャビティ40へ伝達される。ひとたび信号が光キャビティ40に到達すると、バックチャンバ65につながる光ファイバ30の周囲のダイヤフラムの大きさのチャネル90を通って伝達される。光キャビティ40の容積を小さくすることで、音響コンプライアンスが低くなる。これは、光ファイバ30とダイヤフラム20との間で水は圧縮されないが、バックチャンバ65内へ押し流されることを意味する。バックチャンバ65が無ければ、ダイヤフラム20の動きは堅い光キャビティ40によって抑制され、これによって、水中におけるセンサ10の応答が空気中と比して80dBより大きく降下する。センサ10の光学素子によって測定される量
はダイヤフラム変位のみであるため、この等価回路モデルは、ダイヤフラムコンプライアンスにわたる入力圧力の割合を計算するために使用することができ、これによってセンサの応答が得られる。同様に、散逸性要素からダイヤフラムコンプライアンスに送られるノイズの量は、この等価回路を用いて算出することができ、これによってセンサシステム200の熱機械的ノイズの制限が得られる。
【0125】
ダイヤフラムの音響インピーダンス
厚さh、半径a、および密度ρを有する、周囲に固定された伸張円形ダイヤフラム20における小さい横方向の変位uのための運動方程式は、以下のとおりである:
【0127】
たとえば、S.ティモシェンコ(S. Timoshenko)およびS.ウォイノウスキ−クレイガ
ー(S. Woinowsky-Krieger)のプレートおよびシェルの理論(Theory of Plates and Shells)(マクグロウヒル,ニューヨーク,1959年)、ならびにM.ディジオバンニ(M. Di Giovanni)の平坦および波形ダイヤフラム設計ハンドブック(Flat and Corrugated
Diaphragm Design Handbook)(マーセルデッカー,ニューヨーク,1982年)を参照されたい。
【0129】
Eはヤング率であり、υはポワソン比である。ダイヤフラムの大きさは、音響波長と比較して小さいため、入力圧力は、振幅Pおよび周波数ωを有する平面波としてモデル化される(Hz単位での周波数は、f=ω/2π)。
【0130】
式(5)は、応答周波数およびモードプロファイルのための式を得るために分析的に解くことができる。残留応力が低いダイヤフラム20の曲げプロファイル(たとえば、a
2hσ<<D)は、以下のとおりに表わされる。
【0132】
ここで、u
0=c
mPは中心変位振幅であり、c
m=a
4/64Dはダイヤフラム20の機械的コンプライアンス(剛性の逆数)である。水中では、水のインピーダンスがダイヤフラムの機械構造を支配することから、ダイヤフラム20の機械的共振は無視することができる。これにより、式(6)は、目的の周波数範囲に対して有効であると仮定される。変位が大きい場合(u
0>h/5)、ダイヤフラム20を曲げる引張応力は大きくなり、所与の圧力においてダイヤフラム20を偏向させることが難しくなる。この場合の中心変位は、以下の式で計算することができる:
【0134】
たとえば、M.ディジオバンニ(M. Di Giovanni)の平坦および波形ダイヤフラム設計ハンドブック(Flat and Corrugated Diaphragm Design Handbook)(マーセルデッカー,
ニューヨーク,1982年)を参照されたい。式(5)は、固体ダイヤフラムをモデリングしており、それ故にダイヤフラムの機械的特性に対するフォトニック結晶反射素子22の穴の影響を考慮に入れていない。穴はダイヤフラム20の弾性を高度に異方的とし、これによって機械的モデリングが複雑となる。それにもかかわらず、変更された弾性定数を用いることによって均質ダイヤフラムとしての構造を概算することができる。フォトニック結晶反射素子22の有効弾性定数は、穿孔されたダイヤフラムの歪みエネルギを同等の固体ダイヤフラムの歪みエネルギと同等とみなすことによって求められる。たとえば、M.ピーダーセン(M. Pedersen)、W.オルスイス(W. Olthuis)、およびP.ベルグヴ
ェルド(P. Bergveld)の「薄い穿孔プレートの機械的挙動、およびそのシリコンコンデ
ンサマイクロフォンへの適用について(On the mechanical behaviour of thin perforated plates and their application in silicon condenser microphones)」センサおよびアクチュエータA(Sensors and Actuators A)、54巻、499−504ページ(19
96年)を参照されたい。
【0135】
穿孔されたプレートは、変更された弾性定数を有する固体等方性プレートとしてモデリングすることができる。有効弾性定数は、2つのプレートの歪みエネルギを一致させることによって求められ、以下の材料定数をもたらす。
【0137】
式(8)および式(9)を併せて解くことによって、有効ヤング率E′および有効ポワソン比υ′を算出することができる。代替的に、式(9)は、有効曲げ剛性D′をもたらす。
【0139】
υの二次項を無視することによって、式(11)におけるD′の式がもたらされる。
【0141】
フォトニック結晶反射素子22が規定される全領域(a
PCの半径=25μm)は、ダイヤフラム20(半径はa=150μm)よりも小さい。したがって、弾性係数はダイヤフラム20を通して一定ではない。具体的には、ダイヤフラムの曲げ剛性D
djaは、径方向の位置によって変動し、D
dia(r>a
PC)=DおよびD
dia(r≦a
PC)=D′となる。式(5)のシンプルなモデルを用いるために、複合ダイヤフラムは、∇
2D
dia∇
2≡D″∇
4をおおよそ満たす有効曲げ剛性D″を有する統一ダイヤフラムと同等であると仮定される。同様に、単一の密度ρ″が用いられる。これらの有効弾性定数を算出するために、有限要素解析または重合法を使用することができる。式(11)の変更された弾性定数で表わされる直径が50μmの中心領域を有する、直径が300μmの複合ダイヤフラムの有限要素シミュレーションは、有効曲げ剛性(D″=0.76D)および有効密度(ρ″=0.70/ρ)をもたらす。残留応力は、製造された構造においてはごくわずかとなる。これらの値は、線形変位レジームのために得られる。非線形変位レジームを考慮に入れたシミュレーションでは、同じ結果がもたらされ、式(7)と一致する。
【0143】
ダイヤフラムのコンプライアンス(C
dia)は、このばね定数の逆数であり、それ故に、C
dia=1/k
diaから、音響コンプライアンスは以下のとおりとなる:
【0145】
ダイヤフラム20のコンプライアンスは、圧力に応じたダイヤフラム20の変位を定めることから、特に重要である。センサ10の光学部分は、ダイヤフラムの変位のみを感知するため、集中モデルの主な目的は、この特定のコンプライアンスにわたる圧力(P
dja)およびノイズを算出することにある。
【0146】
ダイヤフラムの放射インピーダンス
周囲流体は、センサ10の全体の機械構成において重要な役割を果たし、センサダイナミクスに大きな影響を及ぼす他の音響質量およびコンプライアンスをモデリングする必要がある。流体の存在によって散逸が生じ、熱機械ノイズが引き起こされ、音響抵抗による損失のモデリングを利用する。音響質量および抵抗を算出する場合、特定の実施例においては、流動が層流であり、流体が圧縮不可能であると仮定することができる。コンプライアンスを算出するために、流体の圧縮可能性が考慮される。
【0147】
特定の実施形態において、水中でのダイヤフラム20の有効音響質量は、真空での音響質量よりも一桁大きい。これは、ダイヤフラム20が振動した場合に、流体がダイヤフラム20とともに動くためである。よって、液体の流動を考慮に入れるために質量項を含むことができ、放射質量(M
rad)と呼ばれる。振動ダイヤフラム20はまた、エネルギの一部を流体に放射し、散逸のチャネルをもたらす。この放射ロスを考慮に入れるために、音響放射抵抗(R
rad)を含むことができる。放射質量および抵抗は、ダイヤフラムを無限バッフルに搭載された剛性ピストンとして概算することによって算出することができ、以下によって得られる。
【0149】
たとえば、L.L.ベラネク(L.L. Beranek)の音響学(Acoustics)(米国物理学協会
、ニューヨーク、1986年)、およびM.ロッシ(M. Rossi)の音響学および電気音響
学(Acoustics and Electroacoustics)(Artech House, Inc.、1988年)を参照されたい。ここでは、ρ
0は流体の密度であり、cは流体内での音の速度を示す。ここに記載されるモデリングは、質量リアクタンスに並行な一定シャント抵抗とは対照的な質量リアクタンスと直列の周波数依存抵抗の対流を使用する。たとえば、L.L.ベラネク(L.L.
Beranek)の音響学(Acoustics)(米国物理学協会、ニューヨーク、1986年)を参照されたい。
【0150】
特定の実施形態において、無限バッフル概算は過度にシンプルであり、センサヘッドの大きさは、目的の周波数範囲の大部分に対するサブ波長とすることが考えられる。センサは、30kHzより大きい放射損失によって制限することができる自己ノイズを有することが望ましく、海洋ノイズは水分子のブラウン運動に支配されるため、特定の実施形態においては、放射損失の正確なモデリングが重要となる。有限閉鎖バッフルは、特定の実施例における構造を記載する上での良い例となり得る。有限バッフルのモデリングは困難ではあるが、結果の要旨は次のとおりである。周波数が低い場合において、センサは無限管の端部においてピストンのように作動し、これによって放射損失が無限バッフルの値の約
半分となる。周波数が高い場合において、ヘッドの大きさが波長に相当する場合、インピーダンス値は無限バッフルのインピーダンス値に近づく。たとえば、P.H.G.クレーン(P. H. G. Crane)の「非バッフル化および一部がバッフル化されたピストン源の音響放射インピーダンスを計算する方法(Method for the calculation of the acoustic radiation impedance of unbaffled and partially baffled piston sources)J. Sound Vib.、第5巻、257−277ページ(1967年)、ならびにT.メロウ(T. Mellow)およびL.カーカイネン(L. Kaerkkaeinen)の「有限開放および閉鎖円形バッフルにおけ
る振動ディスクの音界について(On the sound field of an oscillating disk in a finite open and closed circular baffle)」J. Acoust. Soc. Am.、第118巻、1311−1325ページ(2005)を参照されたい。
【0151】
しかし、評価実験および予測される実用的な用途において、センサ10は、大きい構造体に搭載される。このような実際のバッフル構造の大きさ、形状、および剛性に基づく理論上の処理は、過度に複雑である。それにもかかわらず、これらのバッフルが30kHzより高い波長よりも通常は大きい(<5cm)という事実に基づき、式(14)および(15)の無限バッフルモデルは、センサ10の特定の実施例をモデリングするには十分であると仮定することができる。より念入りに仕上げられたバッフルモデルが使用される場合、周囲海ノイズに寄与する熱ノイズは、センサ−バッフル構造が露出されるような最小ノイズレベルを反射するように調整することができる。
【0152】
フォトニック結晶反射素子の穴を通る流動
フォトニック結晶反射素子22の穴を通って流動する水は、粘性抵抗に直面し得る。ホール抵抗には2つの寄与があり、穴の周辺からの流体の水平流によるもの(スクイーズ膜流)と、穴を通る流体の垂直流によるもの(ポアズイユ流)とがある。
各穴からの水平流の寄与は、以下のとおりである。
【0154】
mは流体の動的粘度および/またはキャビティの間隔である。たとえば、D.ホメントコヴスチ(D. Homentcovschi)およびR.N.マイルズ(R. N. Miles)の「穿孔された平
坦微細構造の粘性減衰のモデリング,音響学での用途(Modeling of viscous damping of
perforated planar microstructures. Applications in acoustics)」J. Acoust. Soc.
Am.、第116巻、2939−2947ページ(2004年)、ならびにZ.スクヴォルの「空気ギャップ静電トランスデューサにおける粘性損失による音響抵抗について(On acoustical resistance due to viscous losses in the air gap electrostatic transducers)」Acustica、第19巻、295−299ページ(1967年)。穿孔された裏プレ
ートを用いる多くのマイクロフォンとは対照的に、境界条件によって境界部のダイヤフラムの動きが防止され、このスクイーズ膜流が誘発される。穿孔されたダイヤフラム20は、穴を通る流動に力を付与する圧力場と同じ圧力場によって動かすことができる。結果として、ダイヤフラム20に設けられた穴は、スクイーズ膜減衰を大幅に減らすことはない。
【0155】
一方で、各穴からの垂直流への寄与は、以下のとおりである。
【0157】
L.L.ベラネク(L.L. Beranek)の音響学(Acoustics)(米国物理学協会、ニューヨ
ーク、1986年)、M.ロッシ(M. Rossi)の音響学および電気音響学(Acoustics and
Electroacoustics)(Artech House, Inc.、1988年)、ならびにD.ホメントコヴスチ(D. Homentcovschi)およびR.N.マイルズ(R. N. Miles)の「穿孔された平坦微
細構造の粘性減衰のモデリング,音響学での用途(Modeling of viscous damping of perforated planar microstructures. Applications in acoustics)」J. Acoust. Soc. Am.、第116巻、2939−2947ページ(2004年)を参照されたい。
【0159】
この変更された厚さは、穴の半径a
holeおよび厚さhが同等である場合に、穴の端部の影響を修正するために使用することができる。たとえば、D.ホメントコヴスチ(D. Homentcovschi)およびR.N.マイルズ(R. N. Miles)の「穿孔された平坦微細構造の
粘性減衰のモデリング(Viscous damping of perforated planar micromechanical structures)」センサおよびアクチュエータA(Sensors and Actuators A)、第119巻、544−552ページ(2005年)を参照されたい。穴の放射抵抗は、流れ抵抗と比較すると重要ではなく、モデリングには含まれていない。穴の音響質量もまた考慮することができ、以下のように捉えられる。
【0161】
たとえば、L.L.ベラネク(L.L. Beranek)の音響学(Acoustics)(米国物理学協会
、ニューヨーク、1986年)、およびM.ロッシ(M. Rossi)の音響学および電気音響
学(Acoustics and Electroacoustics)(Artech House, Inc.、1988年)を参照され
たい。
【0163】
特定の実施形態における穴は並行なチャネルを提供するため、全体的な穴のインピーダンスは、穴の数に等しい係数によって減らすことができる。
【0164】
キャビティの効果
光キャビティ40を通ってダイヤフラムの大きさのチャネル90へ流動する流体は、以下のスクイーズ膜抵抗と呼ばれる抵抗に直面する:
【0166】
たとえば、固体センサおよびアクチュエータに関するJ.B.スター(J. B. Starr)の
「固体加速度計におけるスクイーズ膜減衰(Squeeze-film damping in solid-state accelerometers)」IEEEワークショップ、第4技術ダイジェスト、44−47ページ(1
990年)を参照されたい。フォトニック結晶反射素子22の穴を通る全ての堆積流量は、光キャビティ40を通ることができ、それ故に、その抵抗は式(19)で表わすことができる。しかし、特定の実施形態において、ダイヤフラムの直径はファイバの直径よりもかなり大きいため、動くダイヤフラム20によって誘発される体積流量の一部のみがキャビティ40を通って流動する。したがって、2つの場合における有効抵抗は異なっており、ダイヤフラムの動きによって誘発された流動は、実際のキャビティ抵抗の一部に直面し、以下の剛性ピストン概算をもたらす:
【0168】
ここで、a
fは光ファイバ30の半径である。ファブリペローキャビティ40およびバックチャンバ65は、位置エネルギを蓄える流体量であり、それ故に、ばね効果によってダイヤフラムの動きを妨げることができる。この効果は、キャビティコンプライアンス(C
cav)およびバックチャンバコンプライアンス(C
bc)の2つの音響コンプライアンスによって占められる。
【0170】
ここで、a
bcおよびLは、それぞれ、バックチャンバ65の半径および長さである。たとえば、L.L.ベラネク(L.L. Beranek)の音響学(Acoustics)(米国物理学協会、
ニューヨーク、1986年)、およびM.ロッシ(M. Rossi)の音響学および電気音響学
(Acoustics and Electroacoustics)(Artech House, Inc.、1988年)を参照された
い。キャビティのコンプライアンスは、キャビティの容量が小さいために目的の周波数範囲内でリアクタンスが非常に大きくなることから、計算においては無視してもよい。一方で、バックチャンバ65の容積が比較的大きい場合は、その音響質量を含む。
【0172】
たとえば、同文献を参照されたい。特定の実施形態において、この質量のリアクタンスは、周波数が低い場合には小さいが、27kHzのホルムヘルツ周波数を超えるとバックチャンバのインピーダンスを支配し得る。
【0173】
ファイバ周辺の環状チャネルを通る流動
光ファイバ30、および光ファイバ30が通るダイヤフラムの大きさのチャネル90は、光キャビティ40をバックチャンバ65に接続する環状の開口を規定する。これらの環状のチャネルの抵抗および音響質量は、センサ10のモデリングに含むことができる。計算は、式(17)および(18)と同様の式で表わされる。
【0175】
lは、環状チャネルの長さである。項f
R(ε)およびf
M(ε)は、ε=a
f/aの関数である。
【0176】
ここで長さl、外径a、および内径a
fを有する環状チャネルを通る軸方向の圧力流uのプロファイルは、以下のように記載される。
【0178】
ここでξ=r/aである。たとえば、R.A.ウォース(R. A. Worth)の「同心シリン
ダ間の粘性流動を表わす並行プレートアナロジの正確性(Accuracy of the parallel-plate analogy for representation of viscous flow between coaxial cylinders)」J. Appl. Polym. Sci.、第24巻、319−328(1979年)を参照されたい。面ξ=κ
は、せん断応力がゼロの状態に対応する。式(25)を統合し、u=0、r=a
f、およびr=aの無滑り境界条件を使用すると、軸方向の速度が以下のとおり得られる:
【0180】
光ファイバ30の表面は完全に平滑であると考えられる一方で、上述したように、DRIEによってエッチングされたシリコン側壁は、〜0.25μmの平均高さを有する波形構造を有することができる。このような粗い表面は、流れ抵抗を増大させることができ、水の粘性の増加またはチャネルの直径の減少によって成形することができる。G.M.マラ(G.M. Mala)およびD.リー(D. Li)の「微細管における水の流動特性(Flow characteristics of water in microtubes)」Int. J. Heat Fluid Flow、第20巻、142−148ページ(1999年)、ならびにY.フー(Y. Hu)、C.ワーナー(C. Werner)、およびD.リー(D. Li)の「微細チャネルを介した圧力駆動流動に対する三次元粗さ
の影響(Influence of three-dimensional roughness on pressure-driven flow through
microchannels)」J. Fluids Eng.、第125巻、871−879ページ(2003年)に記載の測定および計算に基づき、波形粗さ(〜0.25μm)によって流れ抵抗を約10%より大きく増大させることができる。したがって、最適なチャネルの大きさを調整することによって、この効果が補償される。
【0181】
モデリングの結果
センサシステムの応答
例示的な実施形態において、1Hz‐100kHzの周波数範囲に対する第1のセンサ(たとえば、300μmの直径を有するダイヤフラム)の応答を集中素子モデルを用いて計算した結果が
図35Aに示される。第1のセンサ設計の構造的なパラメータは、表1に要約されている。
【0183】
周波数が低く、高域カットオフが25Hzである場合、水は、ダイヤフラム20を動かす代わりにフォトニック結晶反射素子22の穴を通って流動する傾向がある。第1のセンサは、静水圧の変動に対しては感度が鈍いことから、たとえば、深海での用途に使用することができる。〜10kHzの場合、ダイヤフラムの機械構成およびそれに伴って移動する追加の水塊によって規定される共振がある。水塊は、ダイヤフラム20の有効質量を約60倍増加させることができ、これにより、空気中で稼働する場合とくらべて共振が降下する。共振周波数は、
図34の音響回路の高周波数部分からw
0=(M
0C
0)
−1/2として規定することができ、M
0=M
rad+M
dia+M
chan+M
bc、および1/C
0=1/C
dia+1/C
bcである。カットオフと共振との間には、入力圧力の大部分がダイヤフラム20にわたって降下する、広く有用な平坦バンドが設けられる。
【0184】
ここに記載されるように、共有されたバックチャンバ65によって、センサシステム200内のセンサ間の交差カップリングが可能となる。
図35Aに示されるように、約16kHzにおいて追加の共振特性の形態となる。この周波数は、第2のセンサ(たとえば、212μmの直径)の共振に対応し、それ故に共振特性は、このセンサからの交差カップリングの結果となる。23kHzの共振を有する第3のセンサ(たとえば、150μmの直径)からのカップリングはない。
【0186】
ここに開示されるように、共振がヘルムホルツ共振の近くに合致するようにバックチャンバ65と並行センサとを設計することにより、カップリングを抑制することが可能となる。
【0187】
集中モデリングの1つの制限としては、バックチャンバ65内に現れるω=πc/Lより高い約50kHzに相当する音響共振は考慮に入れられていない。これらの共振は、バックチャンバのインピーダンスに影響を与え、共振周波数の近くにおいて低い値から高い値へ増大する。たとえば、L.L.ベラネク(L.L. Beranek)の音響学(Acoustics)(
米国物理学協会、ニューヨーク、1986年)を参照されたい。この効果は、ヘルムホルツ共振によるインピーダンスの減少ほど強くはない。バックチャンバのインピーダンスの変動はセンサ応答に対して二次的な降下を与えるが、これらの共振は、実際の応答スペクトルにおいて見ることができ、それ故に、特定の実施例においては望ましくない。このような共振は、たとえば吸音層またはインピーダンス合致層とバックチャンバ65とを整列させるなど、ラウドスピーカー筺体において使用される方法と類似の方法によって減らすことができ、これによって定常波を抑制することができる。通常のラウドスピーカー筺体と比してバックチャンバ65のサイズが小さいので、この方法は変更することができる。
【0188】
熱ノイズ
図35Bは、放射損失(破線)、フォトニック結晶反射素子22の穴を通る流動(点線)、ならびに光キャビティ40および環状チャネルを通る流動(一点鎖線)であるいくつかの散逸チャネルからの寄与を伴ってダイヤフラム20に伝達される熱ノイズの合計(20℃における)を示す。周波数が低い場合において、フォトニック結晶 反射素子22の
小さい穴を通る高度に散逸的な流動が、ノイズフロアを支配する。約1kHzを超えると、フォトニック結晶反射素子22の穴を通る流動は実質的に減り、これにより、環状チャネルを通る散逸がノイズを支配する。40kHzを超えると、ダイヤフラム20の動きによって、他のチャネルで失われたエネルギよりも高いエネルギが再放射され、これにより、放射損失がノイズフロアを支配する。放射損失が限定されたノイズフロアは、センサシステム200が到達することのできる基本最小部である。
図35Cは、第2のセンサ(破線)および第3のセンサ(点線)からの寄与を伴うノイズの合計を示す。第2および第3のセンサからのノイズの寄与は、約27kHzで最小となる。なぜなら、バックチャンバ65はそのヘルムホルツ共振にあり、上述のように、センサ間の交差カップリングを防止するためである。実際の測定時に直面する典型的な光電子機器ノイズスペクトルが、〜10の光フィネスの場合として示される(一点鎖線)。ノイズは、レーザ(‐155dB/Hz)の相対強度ノイズ(RTN)および1kHzより小さい1/fノイズ成分によって支配される白色ノイズ成分を有する。
【0189】
最小検出可能圧力
応答に対して常態化されたダイヤフラム20に対するノイズは、
図36Aに示される最小検出可能圧力(MDP)をもたらす。MDP曲線は、特定の実施形態において、感度に共振が実質的に存在しないことを示す。クロストークによる小さな共振特性以外の共振効果は相殺することができる。ノイズフロアはセンサの熱機械的ノイズ(自己ノイズ)によって設定されるため、共振におけるノイズもまた、増幅させることができる。設計によって、センサシステム200のコンプライアンスを高い値に調整することができ、これにより、自己ノイズが光電子機器ノイズを支配することができる。コンプライアンスを増加させると、センサシステム200がブラウン運動の影響をより受けやすくなるが、信号も増
大させる。これにより、信号対ノイズ比(SNR)を、光電子機器ノイズによってノイズフロアが設定される場合と比して最終的に大きくすることができる。SNRの基本的な限度には、この方法を用いることによって到達することができる。1つの方法において、センサシステム200の感度は、センサシステム200のノイズを高めることによって高まる。この場合、信号およびノイズは同じ源(音響)から得られるため、ノイズおよび信号の共振が相殺され、
図36Aにおいては、MDPのピークは観測されない。この実施形態において、MDP曲線は、チャネルの長さ、バックチャンバの容積、およびフォトニック結晶構造における穴の数などの様々なパラメータ(表Iを参照)を調整することによって、海洋の最小周囲ノイズレベルと合致するように最適化される。計算上のMDP曲線と海洋ノイズとを合致させることにより、少なくとも1Hz−100kHzの非常に広い周波数範囲にわたる、可能な限り最高の感度がセンサシステム200に付与される。
図36Bに示されるように、センサが1つのみ用いられる場合には、さらに良好な合致も得ることができる。
【0190】
ダイナミックレンジ
センサシステム200内の3つのダイヤフラム20のうち、最も大きいダイヤフラム20(たとえば、300μmの直径)は概して最も壊れやすい。したがって、センサシステム200を安全に稼働させるための圧力範囲は、このダイヤフラム20の破壊強度によって制限される。ダイヤフラム20に損傷を与えることなくセンサシステム200が露出することのできる最大圧力は、〜1MPa(240dB,re.1μPa)であり、1GPaは強度を表わし、(たとえば、W.N.シャープ,ジュニア(W. N. Sharpe, Jr.)、
K.ジャクソン(K. Jackson)、K.J.ヘムカー(K. J. Hemker)、およびZ.シーの「ポリシリコンのヤング率および破壊強度に対するサンプルの大きさの影響(Effect of specimen size on Young's modulus and fracture strength of polysilicon)」J. Micromech. Syst、第10巻、317−326ページ(2001年)を参照されたい)、フォトニック結晶反射素子22の穴は亀裂伝播点として作用しないと仮定される。特定の実施形態において、このように大きな圧力がかかる場合、乱れた流動および起こり得るキャビテーションにより、センサシステム200を調整することが難しくなる。特定の実施形態において、キャビテーション効果により、ダイヤフラム20の破壊限度よりも低い圧力でセンサシステム200が損傷し得て、これによって最大安全圧力が減る。海水においては、キャビテーションは約0.18MPaの低い圧力で起こり得る(10mの深さにおいて約10kHzで測定)。たとえば、V.A.アクリシェフ(V. A. Akulichev)およびV.
I.イピシェフ(V. I. IPichev)の「世界の海洋の異なる領域における海水の音響キャ
ビテーション閾値(Acoustic cavitation thresholds of sea water in different regions of the world ocean)」Acoust. Phys.、第51巻、128−138ページ(2005年)を参照されたい。最大安全圧力は、〜220dBにまで減少し得る。
【0191】
高い性能での実施する場合において、特定の実施例では、ダイナミックレンジの制限要因は、センサシステムの応答の線形性であり得る。
図37Aは、光信号およびダイヤフラム変位の計算上の線形性を示す。値が常態化されていることから、それらはダイヤフラムからは独立している。S
FPは、ファブリペロー光キャビティ40からの光信号の振幅である。線形レジームにおいて、この振幅は、定数σ
FPによってダイヤフラムの変位振幅u
0に対して比例し、S
FP=σ
FPu
0となる。
図37Aのグラフは、〜10の光フィネスを仮定している(自由空間ファブリペローキャビティのフィネスとは異なる、ファイバファイバファブリ干渉計のフィネスを参照)。たとえば、O.キリック(O. Kilic)、M.ディゴネット(M. Digonnet)、G.キノ(G. Kino)、およびO.ソルガード(O. Solgaard)の「ファイバファブリペロー干渉計における非対称スペクトル応答(Asymmetrical spectral response in fiber Fabry-Perot interferometers)」J. Lightwave Technol.、第28巻、5648−5656ページ(2009)を参照されたい。ファブリペロ
ー検出によって、小さい圧力振幅を検出するための高い変位感度が付与されるが、その線
形性は限定され得る。〜5nmのみの圧力振幅の場合において、ファブリペロー光キャビティ40の線形性は、90%まで降下し得る。特定の実施形態におけるこのような非線形性は、センサシステム信号における高調波歪みを引き起こし得る。センサシステム応答の線形性に係る要因は、具体的な適用に応じて変動し得るが、ここに開示される特定の実施形態の場合のセンサシステムのダイナミックレンジは、約−30dBの全高調波歪み(THD)に関して算出される。所与の圧力に係るTHDを定めるために、純正弦波の振幅は
図37Aの線形曲線にともなって歪められる。この歪められた波をフーリエ変換することにより、高調波のパワースペクトルが得られる。THDは、より高い高調波の全パワーを基本波のパワーに割ることで算出される。
【0192】
センサシステム200の第1のセンサの場合、約0.6Pa(115dB)の圧力振幅によって
図37Bに示されるような約−30dBのTHDが導き出される。1Hzの帯域幅において第1のセンサが検出することのできる最低圧力は、〜10μPa(20dB)である。したがって、第1のセンサは、約20dBから115dBの範囲に圧力を限定することができる。ここに開示されるように、第2のセンサおよび第3のセンサを利用することによって、このダイナミックレンジを増加させることができる。センサシステム200内の3つのセンサの全てが同じ音響信号を測定するが、それらは光学的に分離されている。したがって、フィネスなどの光学パラメータは、第1のセンサの高い感度を落とすことなく、第2および第3のセンサにおいて変動し得る。第2のセンサの光学フィネスは、〜1に減らすことができ、実質的に二光束干渉に対応する。より小さいコンプライアンスおよび減少したフィネスによって、感度を犠牲にして大きな信号を検出することができ、このセンサの約35dBから140dBの圧力範囲を提供する。
【0193】
ここに開示されるように、センサシステム200内において光学的に分離されたセンサは、光学検出スキームの調整に関してさらに高い自由度を許容する。たとえば、特定の実施形態において、第3のセンサは、大きな信号を測定するように設計されていることから、高い変位感度を必要としない。したがって、ここに記載されるように、ファブリペロー検出と比して感度が低いながらもより高い線形性を有する他の光学検出スキームを用いることができる。たとえば、端部に反射素子を有さない光ファイバが使用され、これによって、その端面からの大きな反射は無くなる(シリカ−水の境界面での反射は、0.3%より小さい)。この実施形態において、光学干渉が防止される。ダイヤフラムの変位は、代わりに、ファイバに戻って結合する光パワーを測定することによって検出される。このカップリングは、光ファイバ30の先端から出てくる光の屈折により、光キャビティ40の間隔に伴って変化する。たとえば、O.キリック(O. Kilic)、M.ディゴネット(M. Digonnet)、G.キノ(G. Kino)、およびO.ソルガード(O. Solgaard)の「ファイバ
ファブリペロー干渉計における非対称スペクトル応答(Asymmetrical spectral response
in fiber Fabry-Perot interferometers)」J. Lightwave Technol.、第28巻、5648−5656ページ(2009)を参照されたい。線形レジームにおいて、信号結合の振幅は、定数σCによってダイヤフラム変位に比例し、S
C=σ
Cu
0となる。この検出スキームを用いて、
図37Aに示されるように、制限要因はダイヤフラム変位の線形性となり得る。このスキームの感度が乏しいことにより、第3のセンサが測定できる最小の変位は、RINによって制限される。これは、センサの自己ノイズが主な制限となる、第1のセンサおよび第2のセンサに用いられるファブリペロー検出とは対照的である。センサシステム200内の第3のセンサは、約80dBから180dBの範囲の圧力を検出することができる。したがって、この例は、ここに開示されるように、並行センサを利用することによってセンサシステム200が、特定の実施形態に限定されるが、圧力に伴うダイヤフラム変位の線形性のみによって、160dB(20dBから180dB)のダイナミックレンジ を許容する。
【0194】
第1のセンサおよび第3のセンサのダイナミックレンジは、約35dB(80dBから
115dB)だけ重なる。したがって、特定の実施形態において、第2のセンサは−30dBのTHDを利用する用途には利用することができない。しかし、−65dBより低いTHDレベルの場合、第1のセンサおよび第3のセンサにおける
図37Bに示されるようなTHD曲線の傾斜が実質的に異なるため、第1のセンサおよび第3のセンサのダイナミックレンジは全く重ならない。パワー結合検出の場合、圧力振幅に対するTHDの変化は、ファブリペロー検出の場合の2倍速くなり得て(約30dB/16dBに対して、約30dB/32dB)、ダイナミックレンジの重なりは、THDの低下につれて徐々に減少し得る。結果として、−60dBまたはそれ以上のTHDを利用する用途の場合、ダイナミックレンジ間が十分に重なるようにセンサシステム200内の第2のセンサを使用することができる。たとえば、−70dBのTHDの場合のダイナミックレンジは、第1のセンサ、第2のセンサ、および第3のセンサについてはそれぞれ、約20dB−75dB、約35dB−100dB、および約80dB−160dBとなる。
【0195】
特定の条件下において、圧力範囲の上限および下限は異なり得る。下限については、1Hzの検出帯域幅が仮定され得る。したがって、帯域幅が大きい場合、各センサのMDPは増加し得て、それ故にダイナミックレンジが減少し得る。この減少によって、センサシステム200内の並行センサの圧力範囲の重なりも減少し得る。例えば、約100Hzの大きな測定帯域幅に関しても、−30dBのTHDレジームにおいて、第1のセンサおよび第3のセンサ間で約15dBの重なりがある。しかし、−40dBより高い、僅かに厳しいTHDの場合、ダイナミックレンジをカバーするために第2のセンサを使用するには重なりが十分でなくなり得る。上限に関しては、乱流が発生しないことが仮定され、これにより、層流に基づく解析モデルが有効となり得る。乱流は、レイノルズ数(Re)が〜1500より大きい場合に微細流体チャネルにおいて起こり得る。たとえば、K.V.シャープ(K.V. Sharp)およびR.J.アドリアン(R.J. Adrian)の「流体で満たされた
微細管における層流から乱流への変遷(Transition from laminar to turbulent flow in
liquid filled microtubes)」Exp. Fluids、第36巻き、741−747ページ(2004年)、およびC.ランズ(C. Rands)、B.W.ウェッブ(B. W. Webb)、およびD.メインズ(D. Maynes)による「微細チャネルにおける乱流への変遷の特性化(Characterization of transition to turbulence in microchannels)」Int. J. Heat Mass Transfer、第49巻、2924−2930ページ(2006年)を参照されたい。
【0196】
ここに記載される解析モデルの利点は、各ダイヤフラムの大きさのチャネル90を介した流量の計算が可能となる点にある。レイノルズ数は流量に比例するため、流動特性を得るためにセンサシステム200の様々な部分を解析することができる。乱流が放たれる第一の場所は、環状チャネルである(たとえば、ダイヤフラムの大きさのチャネル90)。なぜなら、環状チャネルは、水力直径が比較的小さいにも関わらず全ての流動を収容することができるからである(たとえば、光キャビティ40とは異なる)。
図38は、約180dBの一定の圧力でセンサシステム200の第3のセンサに入る場合の3つの流動チャネル90のレイノルズ数を示す。レイノルズ数は、異なる周波数で算出され、入力圧力は変動し、最小のダイヤフラム(たとえば、150μmの直径)への圧力がセンサシステム200において仮定される最大範囲において一定となる(約180dB)。
【0197】
この実施形態において、
図38に示される結果は、センサシステム200のダイナミックレンジ内において乱流が想定されず、それ故に層流モデルおよび予測される圧力範囲の上限が有効であることを示す。特定の実施形態において、乱流によってダイナミックレンジは実質的に増大し得ない。より線形性の高いダイヤフラム構造および変位感知機構を用いても、ダイナミックレンジは最終的に乱流によって制限される。
【0198】
例示的な光音響センサシステムの実験的特徴付け
例示的な光センサシステム200は、蒸留水で満たされた容器内において、
図39に示
されるセットアップによって特徴付けが行われた。光センサシステム200は、〜1550nmのファイバ結合レーザによってインテロゲートされた。レーザ光は、光サーキュレータをまず通過し、光サーキュレータは光を光センサシステム200に供給し、反射した光をセンサシステム200から受光器(たとえば、ニューフォーカス(New Focus)20
53−FC)に方向付ける。受光器は、インジウム−ガリウム−ヒ化物PINフォトダイオード、10に設定された利得段、および10Hzに設定されたハイパスフィルタからなる。
【0199】
光センサシステム200は、基準センサシステム(たとえば、セレスコ(Celesco)L
C−10)によって調整された。基準センサシステムは、約0.1Hzから120kHzの周波数範囲において約39.8μV/Paの感度に調整された鉛ジルコン塩酸チタン塩酸反射素子22を有する。基準センサシステム200は、ゲインが10でハイパスカットオフが10Hzの低ノイズ前置増幅器(たとえば、イサコ(Ithaco)1201)に接続された。
【0200】
2つのセンサシステムの電気出力は、動的信号アナライザ(DSA)(たとえば、HP3562A)に接続された。動的信号アナライザは、原信号を周波数応答、可干渉性、ノイズスペクトル、および全高調波歪みなどの様々なデータに変換した。DSAはさらに、音源を駆動するのに使用された内蔵型信号源を有する。DSAからの駆動信号は、音源に接続された広帯域パワー増幅器(たとえば、クローンハイト(Krohn-Hite)7500)に供給される。音源は、20cmの直径の容器と合致する直径を有する剛性円形ピストン(たとえば、USRD CI 00)からなる音響プロジェクタである。音は、筒状容器内の水柱を上下に動かすことによって発生する。測定されたセンサシステムからの信号は、DSA内の内部フィードバック回路を介して信号源に供給され、信号源の出力が継続的に調整される。これは、センサシステムに入る圧力振幅を周波数範囲の全体に渡って1Paに保つために行われる。一定の入力圧力は、両方のセンサシステムの周波数応答を平滑化し、光センサシステム200の調整をより正確なものにする。
【0201】
2つのセンサシステムは、ドーナツ状の僅かにしぼんだ空気充填ゴム上に設けられる金属プレートからなる振動絶縁段に搭載される。金属の容器は、約56cmの高さを有する平面波管の形態となる。第1のクロスモードのカットオフ周波数は、〜4kHzとなることが予測された。したがって、定常波の共振は、この周波数より高い状態で管内で発生した。キャリブレーション処理に対してこれらの共振が与え得た影響は、2つの方法によって抑制された。2つのセンサシステムは、互いに近接して搭載され(<1cmの距離)、周波数が高い場合、2.5cmの小さい直径を有する追加の金属管がセットアップに使用された。管の外側は、閉鎖したエアポケットを有する0.95cmの厚さのポリエチレンからなる標準的な管熱絶縁材料によって被覆される。絶縁材料は、エアポケットと水との間のインピーダンスが大きくずれていることにより、容器共振からの良好な遮音を提供した。管の直径が小さいことにより、〜35kHzの高いクロスモードカットオフがもたらされ、約1kHzより高い周波数の平滑な応答が得られた。
【0202】
DSAによって測定された基準および光センサシステムスペクトルの間の可干渉性は、
図40に示される。
図40は、2つのセンサシステムの信号が〜150Hzから15kHzの間で強く相関することを示す。〜10kHzより高い場合における弱い相関は、光センサシステム信号がノイズに支配されていることを表わす。
図41Aは、光センサシステム200の測定された周波数応答を示す。周波数応答は、DSAにより、光センサシステム200のパワースペクトル(Vの単位)を調整された基準センサシステムのパワースペクトル(Paの単位)に分割することによって算出される。応答は、〜2.2kHzで共振する。共振周波数を超えると、応答が徐々に降下し、〜10kHzより高いノイズレベルに近づき、可干渉性が悪化する。
【0203】
センサシステム200の共振は、算出された値からずれた低い周波数(10kHzの代わりに2.2kHz)で起こる。製造時のエラーによってダイヤフラム20が僅かに大きくなり、剛性が低くなるなどの様々な理由のうち、ここに記載される重要な理由は、バックチャンバ65内に閉じ込められた空気である。空気泡の正確な大きさは測定されないが、センサヘッドの半透明部分を介して視覚的に推定すると、約1−2mmほどである。
図41Aに示される理論的適合は、1mmの同等な半径を有する空気泡の場合の分析モデルを用いて得られる。
図41Bは、モデルによって得られた理論上の適合を有するセンサシステム200の実験的なMDPを示す。上記のように、センサシステム200は、閉じ込められた空気によって引き起こされるバックチャンバ65内における圧縮可能性の増加による100Hzから10kHzの周波数範囲の場合において、3.5μPa/Hz
1/2の低い圧力を測定することができる。
【0204】
センサシステム応答の線形性を測定するために、音響源は200Hzで駆動され、光センサシステム200のパワースペクトルが測定された。200Hzにおける入力圧力は、較正された基準センサシステムにより、4Paとして測定された。
図42は、光センサシステム200の測定されたパワースペクトルである。入力パワーが比較的大きいにも関わらず、基本波からの信号が実質的に強い(たとえば、飽和が弱い)。DSAは、−29dBのTHDを測定し、センサの応答が非常に線形であることを証明した。
【0205】
様々な実施形態が上に記載された。本発明はこれらの具体的な実施形態を参照して記載されたが、この記載は、限定を意図するものではなく、発明を例示することを意図している。様々な変更および適用は、真の精神および添付の請求項に記載される発明の範囲から逸脱することなく当業者によって得られる。