【実施例】
【0030】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
<ポリアニリントルエン分散液の調製>
トルエン3000gにアニリン135g、ドデシルベンスルホン酸330gおよび分子量調整剤(末端封止剤)として2,4,6−トリメチルアニリン0.15g(アニリンに対して0.001当量)を溶解させた後、6N塩酸250mLを溶解した蒸留水800gを加えた。
この混合溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド30gを添加し、5℃以下に冷却した後、過硫酸アンモニウム315gを溶解させた蒸留水1200gを加えた。
5℃以下の状態で6時間酸化重合を行なった後、メタノール水混合溶媒(水/メタノール=2/3(質量比))を加え撹拌を行なった。
撹拌終了後、トルエン層を水層に分離した反応溶液のうち、水層のみを除去することによりポリアニリントルエン分散液を得た。
ポリアニリントルエン分散液を一部採取し、トルエンを真空留去したところ分散液中に固形分13質量%(ポリアニリン含有量:4.3質量%、ポリアニリン数平均分子量:100000)が含まれていた。
また、この分散液を孔径1.0μmのフィルターでろ過したところ目詰まりすることはなく、分散液中のポリアニリン粒子の粒子径を超音波粒度分布測定器(APS−100、Matec Applied Sciences社製)で解析した結果、粒度分布は単分散(ピーク値:0.19μm、半値幅:0.10μm)であることが分かった。
さらに、この分散液は室温1年間経過した後も凝集、沈殿することはなく安定であった。元素分析からドデシルベンゼンスルホン酸のアニリンモノマーユニット当りのモル比は0.45であった。得られたポリアニリンの収率は95%であった。
【0032】
<ポリピリジン水分散液の調製>
脱水ジメチルホルムアミド50gに、2,5−ジブロモピリジン5g、分子量調整剤として2−ブロモピリジン0.5g(ピリジンモノマーに対して0.15当量)、重縮合剤としてビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル9gを溶解させた後、窒素下60℃で16時間重合反応を行った。
反応終了後、以下の操作によりポリピリジンの精製を行った。
まず、反応溶液を0.5mol/Lの塩酸水溶液200mLに注ぎ、室温下で2時間撹拌した後に、沈殿物をろ別し、回収した。
次いで、回収した沈殿物を、再度、0.5mol/Lの塩酸水溶液200mL中で、室温下で8時間撹拌した後に、沈殿物をろ別し、回収した。
次いで、回収した沈殿物を、0.1mol/Lのアンモニア水溶液200mL中で、室温下3時間撹拌することにより、ポリピリジンの単離精製を行った。
得られたポリピリジン粉末を、真空下で乾燥した。収量は、1.72g(収率92%)であった。
予めポリピリジン粉末0.8gを88%ギ酸9.2gに溶解させて調製したポリピリジンギ酸溶液と18%ポリスチレンスルホン酸水溶液15gとを混合撹拌した後、175gの蒸留水を加えてポリピリジン水分散液(ポリピリジン含有量:0.4質量%、ポリピリジン数平均分子量:10000)を調製した。
分散液中のポリピリジン粒子の粒子径を超音波粒度分布測定器(APS−100、Matec Applied Sciences社製)で解析した結果、粒度分布は単分散(ピーク値:0.25μm、半値幅:0.12μm)であることが分かった。
【0033】
<ポリピロールトルエン分散液の調製>
トルエン150gにピロール3g、ドデシルベンゼンスルホン酸12.0gおよび分子量調整剤(末端封止剤)として2−メチルピロール0.15gを溶解させた後、6N塩酸5.36mLを溶解した蒸留水75gを加えた。
この混合溶媒にテトラブチルアンモニウムブロマイド0.9gを添加し、0℃以下の状態で6時間酸化重合を行った後、トルエン100g、ついでメタノール/水混合溶媒(メタノール:水=2:3(質量比))を加え撹拌を行った。
撹拌終了後、トルエン層と水層に分離した反応溶液のうち、水層のみを除去することによりポリピロールトルエン分散液を得た。
ポリピロールトルエン分散液を一部採取し、トルエンを真空蒸留したところ分散液中に固形分4.1質量%(ポリピロール含有量:1.2質量%)が含まれていた。また、この分散液を孔径1.0μmのフィルターでろ過したところ目詰まりすることはなかった。更に、この分散液を室温で1年間経過した後も凝集、沈澱することはなく安定なままであった。元素分析からドデシルベンゼンスルホン酸のアニオンモノマーユニット当りモル比は0.95であった。得られたポリピロールの収率は94%であった。
【0034】
<ポリチオフェントルエン分散液の調製>
ポリ(3−ドデシルチオフェンー2,5−ジイル)(アルドリッチ社製、平均分子量60000)をトルエンに分散させて使用した(固形分1.2質量%)。
【0035】
<ポリフルオレントルエン分散液の調製>
ポリ(9,9’−ジドデシルフルオレニルー2,7−ジイル)(アルドリッチ社製)をトルエンに分散させて使用した(固形分1.2質量%)。
【0036】
<実施例1〜7(調製方法A)>
最初に、トルエン1000g中に、活性炭(NY1151、比表面積:1325m
2/g、1次平均粒子径:5μm、比抵抗:1.5×10
-1Ω・cm、クラレケミカル社製)300gを分散させた活性炭トルエン分散液を調製した。
次いで、100℃に加熱した活性炭トルエン分散液に、先に調製したポリアニリントルエン分散液(ポリアニリン含有量:4.3質量%)をポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加し、これらを混合した混合分散液を調製した。
この混合分散液にトリエチルアミン30mLを添加した後、5時間撹拌混合行なった。
撹拌終了後、沈殿物を濾別回収し、メタノールで洗浄した。この時の濾液および洗浄液は、無色透明であった。
洗浄精製された沈殿物を真空乾燥することによりポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0037】
<実施例8(調製方法A)>
ポリアニリントルエン分散液に代えて、先に調製したポリピリジン水分散液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ポリピリジン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。なお、後述するように、実施例8で調製した炭素材料については、評価用電極を負極に配置して電気二重層キャパシタを作製した。
【0038】
<実施例9(調製方法A)>
ポリアニリントルエン分散液に代えて、先に調製したポリピロールトルエン分散液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ポリピロール/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0039】
<実施例10(調製方法A)>
ポリアニリントルエン分散液に代えて、先に調製したポリチオフェントルエン分散液を用い、トリエチルアミンを用いた脱ドープ処理を施さなかった以外は、実施例1と同様の方法で、ポリチオフェン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0040】
<実施例11(調製方法A)>
ポリアニリントルエン分散液に代えて、先に調製したポリフルオレントルエン分散液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ポリフルオレン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0041】
<実施例12〜14(調製方法B)>
最初に、メタノール1000g中に、活性炭(NY1151、比表面積:1325m
2/g、1次平均粒子径:5μm、比抵抗:1.5×10
-1Ω・cm、クラレケミカル社製)300gを分散させた活性炭メタノール分散液を調製した。
次いで、活性炭メタノール分散液に、先に調製したポリアニリントルエン分散液(ポリアニリン含有量:4.3質量%)をポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加し、これらを混合した混合分散液を調製した。
この混合分散液にトリエチルアミン30mLを添加した後、5時間撹拌混合行なった。
撹拌終了後、沈殿物を濾別回収し、メタノールで洗浄した。この時の濾液および洗浄液は、無色透明であった。
洗浄精製された沈殿物を真空乾燥することによりポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0042】
<実施例15〜17(調製方法C)>
最初に、トルエン1000g中に、活性炭(NY1151、比表面積:1325m
2/g、1次平均粒子径:5μm、比抵抗:1.5×10
-1Ω・cm、クラレケミカル社製)300gを分散させた活性炭トルエン分散液を調製した。
次いで、活性炭トルエン分散液に、予め高圧ホモジナイザー(スギノマシン製スターバーストラボ、圧力:150MPa、チャンバーノズル径:φ0.75mm)で処理したポリアニリントルエン分散液(ポリアニリン含有量:4.3質量%)をポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加し、これらを混合した混合分散液を更に高圧ホモジナイザー(スギノマシン製スターバーストラボ、圧力:150MPa、チャンバーノズル径:φ0.75mm)で処理して調製した。
この混合分散液にトリエチルアミン30mLを添加した後、5時間撹拌混合行なった。
撹拌終了後、沈殿物を濾別回収し、メタノールで洗浄した。この時の濾液および洗浄液は、無色透明であった。
洗浄精製された沈殿物を真空乾燥することによりポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0043】
<
参考例18>
活性炭とポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法(調製方法A)で、ポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0044】
<
参考例19>
活性炭とポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加した以外は、実施例12と同様の方法(調製方法B)で、ポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0045】
<
参考例20>
活性炭とポリアニリンの配合量が下記第1表に示す値(括弧内の数値)となるように添加した以外は、実施例15と同様の方法(調製方法C)で、ポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0046】
<比較例1〜7(調製方法D)>
下記第1表に示す量のポリアニリントルエン分散液に、下記第1表に示す量の活性炭(NY1151、比表面積:1325m
2/g、1次平均粒子径:5μm、比抵抗:1.5×10
-1Ω・cm、クラレケミカル社製)を添加することにより混合分散液を得た。
この混合分散液に2モル/リットルのトリエチルアミンメタノール溶液120mLを添加した後、5時間撹拌混合行なった。
撹拌終了後、沈殿物を濾別回収し、メタノールで洗浄した。この時の濾液および洗浄液は、無色透明であった。
洗浄精製された沈殿物を真空乾燥することによりポリアニリン/活性炭複合体からなる炭素材料を調製した。
【0047】
<標準例>
標準例として、活性炭(NY1151、比表面積:1325m
2/g、1次平均粒子径:5μm、比抵抗:1.5×10
-1Ω・cm、クラレケミカル社製)を炭素材料として用いた。
【0048】
<表面性状等>
調製した各炭素材料について、比表面積、ゼータ電位の等電点、ラマンスペクトルおよびメチレンブルー吸着性能について、以下に示す方法により測定した。これらの結果を下記第1表に示す。
(比表面積)
JIS K1477:2007で規定された試験方法に従い、高精度ガス/蒸気吸着量測定装置(BELSORP−max、日本ベル社製)を用いて、窒素吸着によるBET法を用いて測定した。
(ゼータ電位の等電点)
JIS R1638:1999で規定された等電点測定方法に従い、ゼータ電位測定システム(ELSZ−1000ZS、大塚電子製)を用いて、電気泳動レーザー・ドップラー法によって測定されるゼータ電位がゼロになるpH値を測定した。
(ラマンスペクトル)
ラマンスペクトルは、顕微レーザーラマン分光分析装置 Holo Lab 5000R(Kaiser Optical System Inc.製)を用いて、532nmの励起波長で測定した。なお、実施例1および標準例で作製した炭素材料のラマンスペクトルのチャートを
図1に示す。
(メチレンブルー吸着性能)
JIS K1474:2007で規定された活性炭試験方法に従い、分光光度計(UH5300、日立社製)を用いて、メチレンブルー溶液の吸着量を算出した。
【0049】
<静電容量>
調製した各炭素材料、導電助剤(アセチレンブラック)、および、結着剤(ポリフルオロエチレン樹脂)を、質量比で85:10:5の比で混合分散させた後、加圧ロールでシート状へと成型した。得られたシートからディスク状(直径1.6cm)に切り出し、各評価用電極(25mg)を作製した。
作製した各評価用電極を正極に用いた電気二重層キャパシタについて、東洋システム株式会社製3極式簡易型評価セルを用いて静電容量を測定した。電解液は、テトラエチルアンモニウム四フッ化ホウ素のプロピレンカーボネート溶液を濃度1.0モル/リットルで用いた。なお、参照電極は、銀線(vs.Ag/Ag
+)を用いた。
負極は、活性炭、導電助剤(アセチレンブラック)、および、結着剤(ポリフルオロエチレン樹脂)を、質量比で85:10:5の比で混合分散させた後、加圧ロールでシート状へと成型し、得られたシートからディスク状(直径1.6cm)に切り出した電極(30mg)を用いた。なお、正極と負極との間には、セパレーター(ガラス繊維紙、日本板ガラス社製)を介在させた。
一方、上述したとおり、実施例8については、上記と同じ方法で作製した評価用電極を負極として用い、正極として、活性炭、導電助剤(アセチレンブラック)、および、結着剤(ポリフルオロエチレン樹脂)を、質量比で85:10:5の比で混合分散させた後、加圧ロールでシート状へ成型し、そのシートからディスク状(直径1.6cm)に切り出した電極(30mg)を用いた以外は、上記と同じ方法で電気二重層キャパシタを作製し、静電容量を測定した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
上記第1表に示す結果から、ラマンスペクトルのピーク数が3本であっても、比表面積が小さく、メチレンブルー吸着性能が150ml/g未満となる炭素材料(電極材料)、すなわち、活性炭の表面にも導電性高分子が吸着したと考えられる炭素材料は、3電極法により評価した静電容量が標準例と同程度となることが分かった(比較例1〜7)。
これに対し、ラマンスペクトルのピーク数が3本であり、かつ、比表面積およびメチレンブルー吸着性能が所定の範囲内にある炭素材料(電極材料)は、3電極法により評価した静電容量が標準例や比較例と比較しても15〜30%程度向上していることが分かった(実施例1〜
17および参考例18〜20)。
特に、実施例4等と
参考例18との対比、実施例13等と
参考例19との対比、実施例16等と
参考例20との対比から、ゼータ電位の等電点がpH3.0〜pH5.5の範囲内であると、静電容量がより向上する傾向があることが分かった。