(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
製紙システムにおいて繊維からの有機汚染物質の堆積を制御する方法であって、繊維を含有する水性懸濁液を、少なくとも1つのリパーゼ及び少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤で処理することを含み、前記有機汚染物質が1つ又は複数のピッチ成分を含む、方法。
前記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤がハロアミン、ハラミンスルホンアミド、アルカリ次亜ハロゲン酸塩、アルカリ土類次亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸、二酸化塩素、二原子ハロゲン、ハロゲン化ヒダントイン、ハロゲン化イソシアヌレート、ハロ−オキサゾリジノン又はそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の方法。
前記水性懸濁液を、前記リパーゼ及び前記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤と組み合わせた少なくとも1つの非イオン性界面活性剤で処理することを更に含む、請求項1に記載の方法。
前記繊維を含有する水性懸濁液に、前記少なくとも1つのリパーゼを過酸化物源無含有酸化剤とは別に添加し、前記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をリパーゼとは別に添加する、請求項1に記載の方法。
前記繊維を含有する水性懸濁液に、前記少なくとも1つのリパーゼ及び前記少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を、過酸化物源無含有酸化剤とは別に添加し、前記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をリパーゼ及び非イオン性界面活性剤とは別に添加する、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、水性懸濁液中の繊維をリパーゼ(複数の場合もあり)と過酸化物源無含有酸化剤(複数の場合もあり)との組合せで処理することによる木質繊維のピッチ及び/又は他の樹脂堆積物形成成分の制御に関する。繊維の処理により、個々の処理成分の効果からは予測されない形で繊維のピッチ含量を低減することができる。水性繊維懸濁液又は他の水性ピッチ含有系において、リパーゼと過酸化物源無含有酸化剤との組合せによってもたらされるピッチ制御の強い相乗効果が存在し得る。本明細書に記載される実験的試験が行われ、ピッチ制御におけるこれらの改善及び相乗効果が指定の組合せによってもたらされ得ることが示された。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤と水性繊維懸濁液との複合相互作用は、繊維の不飽和脂肪酸、樹脂酸及び他のピッチ成分の酸化の増強をもたらすことができ、より容易に繊維から除去可能又は分離可能な遊離ピッチ成分又はその反応生成物を生じると考えられる。指定のリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤成分を水性繊維懸濁液中で組み合わせて使用することによってもたらされるこれらの効果の増強は、それらの個々の効果の算術的合計を上回る可能性がある。得られる酸化生成物は疎水性がより低く(又は親水性がより高く)、例えばパルプの洗浄、水性成分の排出又はそれらの任意の組合せによってパルプからより容易に分離又は除去することができる。この指定のリパーゼと過酸化物源無含有酸化剤成分との組合せによる繊維の処理は、繊維中のピッチ又は同様の樹脂堆積物形成成分を構成する化合物の低減をもたらすことができ、ひいては処理繊維が関わる製紙プロセス中に生じるピッチ問題を軽減又は防止することができる。リパーゼと過酸化物源無含有酸化剤との組合せは、ピッチ成分に過酸化水素単独又は過酸化物源(例えば、過酸化物前駆体又は発生物質)よりも強い酸化効果を与えることができる。リパーゼと過酸化物源無含有酸化剤との組合せは、過酸化物又は過酸化物源を漂白剤として使用しない場合、又は過酸化物漂白剤の使用量の低減が望ましい若しくは有益であり得る場合を含む製紙工場におけるピッチ制御に好適かつ有用である。酵素活性を更に増強するために、非イオン性界面活性剤がリパーゼと過酸化物源無含有酸化剤との組合せとともに処理対象の水性繊維懸濁液又は他の水性ピッチ含有系に含まれていてもよい。本明細書に記載される実験的試験が行われ、水性繊維懸濁液又は他の水性ピッチ含有系を処理するために使用されるリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤と併せた指定の非イオン性界面活性剤の更なる添加によってもたらされ得る、ピッチ制御における改善及び相乗効果が示された。理論に束縛されることを望むものではないが、非イオン性界面活性剤は酵素が繊維基質により良好に浸透するようにし、より良好な酵素送達系をもたらし、酵素により影響を受ける繊維部分を増大することができると考えられる。本発明の方法に使用することができる酵素を含有する製品配合物は、例えばリパーゼ、使用される場合に非イオン性界面活性剤、水及び配合物安定化のための他の任意の構成要素を含有し得る。酸化剤は通常は含まれず、リパーゼ及び任意の非イオン性界面活性剤を含有する処理配合物によって添加される。酸化剤が含まれていてもよい。酸化剤、及び酵素を含有する配合製品、及び任意の非イオン性界面活性剤は、通常は別々に処理対象の系に供給される。これらの成分の処理下の系への同時供給も提供され得る。
【0027】
本発明の処理方法は、例えば製紙プロセス中のピッチ関連問題を軽減又は解消することにより、品質のより良好な紙を作製するか、若しくは製紙工場のフェルト洗浄若しくは調湿、若しくは製紙工場の堆積物のクリーニング及び制御のための運転停止時間を短縮するか、又はその両方のために用いることができる。本発明のピッチを制御する方法は、ピッチ堆積物を除去する加工設備のクリーニング及び関連の整備の必要性を低減又は排除し、製紙プロセスの紙製品上のピッチ堆積物の発生を減少させ、製品の品質及び価値をより良好に維持することができる。
【0028】
リパーゼ(複数の場合もあり)及び過酸化物源無含有酸化剤(複数の場合もあり)による繊維の処理は、製紙プロセスの任意のパルプ化段階、紙製造段階又はそれらの任意の組合せで行うことができる。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤による処理は、パルプ化及び製紙プロセスにおいて、例えばパルプスラリー、プロセス水、白水ループ、又は製紙プロセス中にピッチ成分が存在し得る任意の部位に適用することができる。処理は、1つ又は複数のピッチ成分を含む有機汚染物質が繊維から遊離した処理繊維を、繊維を少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を組み合わせて使用することなく、リパーゼで処理した場合よりも多量にもたらすのに十分な時間及び十分な量の指定の成分の組合せで行うことができる。本発明の方法の紙製造における繊維の処理は、パルプ製造機を組み入れた又は組み入れていない製紙工場に適用することができる。
【0029】
処理下の系におけるリパーゼと過酸化物源無含有酸化剤とを用いた繊維の併用処理によるピッチ除去は、指定の処理成分を単独で使用した場合に個別に得られるピッチ除去の相加量よりも大きい可能性がある。選択肢として、リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤による繊維の処理によって、これらの成分による処理の前に繊維中に存在する全ピッチ成分の少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも65重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%が除去される。
【0030】
上述のように、水性繊維懸濁液を任意に、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤と更に組み合わせて指定のリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤で処理することができる。上述のように、本発明の方法によってもたらされ得るピッチ除去は、1つ又は複数の非イオン性界面活性剤をリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤とともに処理対象の水性繊維懸濁液中に含ませることによって更に増大する、又は相乗効果を与えることができる。非イオン性界面活性剤が繊維の処理に使用されるリパーゼ及び少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤と組み合わせて処理下の系に含まれることにより、非イオン性界面活性剤なしにリパーゼ及び少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤で繊維を処理した場合と比べて、処理前に繊維中に存在する全ピッチ成分の少なくとも約20重量%以上、又は少なくとも約23重量%以上、又は少なくとも約25重量%以上、又は少なくとも約30重量%以上、又は少なくとも約35重量%以上、少なくとも40重量%以上、又は少なくとも約45重量%以上、又は少なくとも約50重量%以上、又は少なくとも約55重量%以上、又は約20重量%〜約95重量%以上(more)、又は約20重量%〜約60重量%以上、又は約25重量%〜約55重量%以上、又は約30重量%〜約50重量%以上、又は約35重量%〜約45重量%以上を除去することができる。
【0031】
図面は、パルプ製造機100及び抄紙機200を備える統合システムに適用される製紙プロセス10の一例を概略的に示すものである。このプロセスでは、繊維を指定のリパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤及び任意に非イオン性界面活性剤を用いて1つ又は複数のプロセス段階で処理し、そのピッチ含量を制御する。繊維源11がパルプ製造機100に供給されるように示されている。リパーゼ101、過酸化物源無含有酸化剤102及び任意に非イオン性界面活性剤103を、処理オプション10Aの一環としてパルプ製造機100内のパルプに添加することができる。種々の付加的処理操作をパルプ製造機のパルプに対して行うことができる。これらの付加的処理には、製造されるパルプのタイプに応じて異なり得る従来の処理が含まれていてもよい。パルプ製造機100から出た処理済みパルプ104を、紙製品204をパルプから作製する抄紙機200に供給することができる。リパーゼ201、過酸化物源無含有酸化剤202及び任意に非イオン性界面活性剤203を、処理オプション10Bの一環として紙製造中にパルプ104に由来する紙料又は他の水性繊維懸濁液に添加することができる。種々の付加的処理操作を抄紙機の繊維に対して行うことができる。これらの付加的処理には従来の製紙処理が含まれていてもよい。このプロセスでは、処理オプション10A及び10Bの少なくとも一方又は両方を製紙に使用される繊維に適用する。この説明図には統合製紙工場を示すが、本発明の方法は、パルプ製造の現場又は現場外での紙製造における後の使用のために保管及び輸送することができる市販のパルプ又は他のパルプへと形成されるパルプを処理するために用いることができる。別の選択肢としては、紙料又は白水を、本発明の方法によって処理されていない出発パルプとして使用される非統合的パルプ製造機等による市販のパルプ又は他のパルプとともに本発明の方法により抄紙機で処理することができる。
【0032】
任意の好適なリパーゼを本発明の指定の方法に使用することができる。1つ又は複数のリパーゼを使用してもよい。2種類以上を使用する場合、リパーゼは同じ又は異なる位置で同時又は別々に導入することができる。リパーゼにはEC3.1.1.3によって分類される酵素が含まれ得る。Recommendations (1992) of the Nomenclature Committee of theinternational Union of Biochemistry and Molecular Biology, Academic Press Inc.,1992を参照されたい。リパーゼは様々な真菌及び/又は細菌、及び/又は他の微生物、又は膵臓源(例えば膵リパーゼ)から誘導又は単離することができる。選択肢として、リパーゼは微生物起源、特に細菌、真菌又は酵母起源であってもよい。リパーゼは、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)の菌株、アクロモバクター属(Achromobacter)の菌株、バチルス属(Bacillus)の菌株、カンジダ属(Candida)の菌株、クロモバクター属(Chromobacter)の菌株、フザリウム属(Fusarium)の菌株、フミコーラ属(Humicola)の菌株、ハイホジーマ属(Hyphozyma)の菌株、シュードモナス属(Pseudomonas)の菌株、リゾムコール属(Rhizomucor)の菌株、リゾプス属(Rhizopus)の菌株、若しくはサーモミセス属(Thermomyces)の菌株を含む任意のソース、又はそれらの任意の組合せ由来であり得る。
【0033】
リパーゼの例としては、トリアシルグリセロールリパーゼ(TAGリパーゼ)、トリアシルグリセロールアシルヒドロラーゼリパーゼ又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。リパーゼは、例えば米国特許第6,074,863号、同第5,507,952号及び同第5,356,800号、並びに米国特許出願公開第2009/0065159号及び同第2002/0137655号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されるリパーゼを含み得る。リパーゼを含有する市販製品を使用してもよい。使用することができる市販のリパーゼとしては、例えばカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼA、カンジダ・アンタークティカリパーゼ8、Resinase A2X、Resinase NT、Resinase HT又はNovoCor(商標) ADL(Novozymes A/Sから入手可能)、Greasex 50L、PALATASE(商標) A、PALATASE(商標) M(Novo Nordiskから入手可能)、Pancreatic Lipase 250(MilesLaboratories, Inc.から入手可能)、Lipase G−1000(Genencorから入手可能)及びOptimyze(商標)、Buzyme(商標) 2515及びBuzyme(商標) 2517(Buckman Laboratories International, Inc.から入手可能)が挙げられる。
【0034】
本発明に使用するリパーゼは、任意の正の量の活性を有することができる。例えば、活性は1分当たり、1グラム当たりのリパーゼ単位(LU/gm/分)として規定される少なくとも約5.0LU/Gm/分、例えば少なくとも約10LU/Gm/分、又は少なくとも約15LU/Gm/分、例えば約15.0LU/Gm/分〜約30.0LU/Gm/分であり得る。この活性を有することができるリパーゼは、例えばトリアシルグリセロールリパーゼ又は他のリパーゼであり得る。例えば、NovozymeのResinase A2Xリパーゼは、1分当たり、1グラム当たりのリパーゼ単位(LU/gm/分)として規定される約15.0LU/Gm/分〜約20.0LU/Gm/分の活性を有する。
【0035】
処理される水性繊維懸濁液に使用することができるリパーゼの総量は、例えば水性繊維懸濁液中に約0.01重量ppm〜約500重量ppm、若しくは約0.1重量ppm〜約250重量ppm、若しくは約1重量ppm〜約100重量ppm、若しくは約3重量ppm〜約50重量ppm、又は他の量であり得る。
【0036】
リパーゼという用語は野生型リパーゼ酵素、及び対象の活性を保持するその任意の変異型、例えば化学修飾突然変異型又はタンパク質改変突然変異型を包含し得ることを理解されたい。かかる変異型は組み換え技法によって作製することができる。野生型リパーゼ酵素も組み換え技法によって、又は天然源からの単離及び精製によって作製することができる。リパーゼは存在する唯一の酵素成分であっても、又は任意の異なる酵素と組み合わせて処理対象の繊維懸濁液に添加する場合の主成分であってもよい。これは例えば適切なサイズ排除カラムでの分画によって推定することができる。かかる明確に規定された、又は精製された、又は高度に精製された酵素は、当該技術分野で既知のように及び/又は対象の特異的酵素に関連する刊行物に記載のように得ることができる。リパーゼに加えて、2種以上、例えば2種、3種、4種以上の酵素を使用してもよい。付加的な酵素として使用することができる酵素は、例えばプロテアーゼ、キシラナーゼ、クチナーゼ、オキシドレダクターゼ、セルロースエンドグルカナーゼ、アミラーゼ、マンナナーゼ、ステロール(sterol)エステラーゼ及び/又はコレステロール(cholesterol)エステラーゼ活性、又はそれらの任意の組合せであり得る。複数の酵素を使用する場合、それらは製紙プロセスに予混合物の一部として添加しても、別々に添加しても、又は組成物の形成若しくは組成物(又はその成分)の導入時に任意の順序で添加してもよい。リパーゼは、少なくとも1つのリパーゼ酵素を含有する製品を意味する「酵素調製物」として処理対象の水性繊維懸濁液に導入することができる。酵素活性に加えて、かかる調製物は少なくとも1つのアジュバントを含有していてもよい。紙パルプ産業の酵素調製に使用することができるアジュバントの例は、例えば緩衝剤、ポリマー、界面活性剤及び安定剤である。
【0037】
過酸化物源無含有酸化剤は、過酸化水素又は過酸化物源以外の任意の酸化剤であり得る。選択肢として、過酸化物源無含有酸化剤は過酸化物源でないハロゲン含有酸化剤であってもよい。過酸化物源無含有酸化剤は、例えばハロアミン、ハラミンスルホンアミド、アルカリ次亜ハロゲン酸塩、アルカリ土類次亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸、二酸化塩素、二原子ハロゲン、ハロゲン化ヒダントイン、ハロゲン化イソシアヌレート、ハロ−オキサゾリジノン又はそれらの任意の組合せであり得る。1つ又は複数の過酸化物源無含有酸化剤を使用することができる。2種類以上を使用する場合、過酸化物源無含有酸化剤(?リパーゼ)は同じ又は異なる位置で同時又は別々に導入することができる。
【0038】
ハロゲン含有酸化剤は、例えば、ハロアミン、例えば、モノクロラミン(NH
2Cl)、ジクロラミン(NHCl
2)、トリクロラミン(NCl
3)、モノブロマミン(NH
2Br)、ジブロマミン(NHBr
2)、トリブロマミン(NBr
3)、モノヨーダミン(NH
2I)、ジヨーダミン(NHI
2)、トリヨーダミン(NI
3)、モノフルオラミン(NH
2F)、ジフルオラミン(NHF
2)、トリフルオラミン(NF
3)、又はそれらの任意の組合せ;N−ハラミンスルホンアミド、例えば、クロラミンT(ナトリウム−N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド)、ジクロラミン−T(N,N−ジクロロ−p−トルエンスルホンアミド)、又はそれらの任意の組合せ;アルカリ次亜ハロゲン酸塩、例えば、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、次亜塩素酸カリウム(KOCl)、次亜塩素酸リチウム(LiOCl)、次亜臭素酸ナトリウム(NaOBr)、次亜臭素酸カリウム(KOBr)、次亜臭素酸リチウム(LiOBr)、次亜ヨウ素酸ナトリウム(NaOI)、次亜ヨウ素酸カリウム(KOI)、次亜ヨウ素酸リチウム(LiOI)、次亜フッ素酸ナトリウム(NaOF)、次亜フッ素酸カリウム(KOF)、次亜フッ素酸リチウム(LiOF)、又はそれらの任意の組合せ;アルカリ土類次亜ハロゲン酸塩、例えば、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)
2)、次亜臭素酸カルシウム(Ca(BrO)
2)、次亜ヨウ素酸カルシウム(Ca(IO)
2)、次亜フッ素酸カルシウム(Ca(FO)
2)、次亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO)
2)、次亜臭素酸マグネシウム(Mg(BrO)
2)、次亜ヨウ素酸マグネシウム(Mg(IO)
2)、次亜フッ素酸マグネシウム(Mg(FO)
2)、又はそれらの任意の組合せ;次亜ハロゲン酸、例えば、次亜塩素酸(HOCl)、次亜臭素酸(HOBr)、次亜ヨウ素酸(HOI)、次亜フッ素酸(HOF)、又はそれらの任意の組合せ;二酸化塩素(ClO
2);二原子ハロゲン、例えば、塩素(Cl
2)、臭素(Br
2)、ヨウ素(I
2)、フッ素(F
2)、又はそれらの任意の組合せ;ハロゲン化イソシアヌル酸、例えば、ジクロロイソシアヌル酸及びそのナトリウム塩及びカリウム塩、並びにトリクロロイソシアヌル酸、又はそれらの任意の組合せ;塩素化又は臭素化ヒダントイン、例えば、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、又はそれらの任意の組合せ;ハロ−オキサゾリジノン、例えば、N−ハロ−2−オキサゾリジノン(例えば、3−クロロ−4,4−ジメチル−2−オキサゾリジノン)、N,N’−ジハロ−2−イミダゾリジノン(例えば、1,3−ジクロロ−4,4,5,5,−テトラメチル−2−イミダゾリジノン)、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0039】
過酸化物源無含有酸化剤は、処理対象の水性繊維懸濁液中に固体(例えば乾燥微粒子)、液体、気体、スラリー、懸濁液、又は酸化剤を水性繊維懸濁液に分散させることが可能な任意の他の形態で供給することができる。例えば、本発明に使用することができる酸化剤の固体微粒子形態、サイズ及び/又はサイズ分布は、それが水溶液系に分散可能である限りにおいて変更することができる。固体微粒子形態の酸化剤は、例えば錠剤又は自由流動性の顆粒若しくは粉末であり得る。固体微粒子形態の酸化剤は、水溶液に少なくとも部分的に可溶性又は溶解性である。過酸化物源無含有酸化剤は、例えば気体、固体若しくは液体の形態、又は他の分散可能な酸化剤の形態で水性繊維懸濁液中、in situで形成することもできる。
【0040】
クロラミンに関しては、例えばクロラミンは1つ、2つ又は3つの水素原子を塩素原子で置換することによるアンモニアの誘導体であり得る。本発明の方法における使用に適合し得るin situクロラミン生成方法は既知である。例えば、純クロラミンを水性繊維懸濁液又は製紙プロセスの他の水溶液系に添加するのではなく、次亜塩素酸ナトリウム溶液又は塩素をアンモニア又はアンモニウム塩とともに添加して、クロラミンをin situで生成することができる。1種類のクロラミン又は異なるクロラミンの組合せを酸化剤として使用することができる。
【0041】
ハロゲン含有酸化剤材料として使用することができるN−ハラミンスルホンアミドに関する例は、クロラミンT(ナトリウム−N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド)及びジクロラミン−T(N,N−ジクロロ−p−トルエンスルホンアミド)である。例えばクロラミンTは、約11.5パーセント〜約13パーセントの活性塩素を含有する白色の又は黄色がかった結晶又は結晶性粉末として市販されている。ジクロラミン−Tは、28パーセント〜約30パーセントの活性塩素を含有する淡黄色の結晶として市販されている。クロラミンの他の誘導体を酸化剤として使用してもよい。他のN−ハラミンスルホンアミドを酸化剤として使用することができる。
【0042】
アルカリ次亜塩素酸塩又はアルカリ土類次亜塩素酸塩に関しては、例えば微粒子状次亜塩素酸カルシウムを使用することができ、微粒子が分散可能である限りにおいてサイズ分布は必ずしも制限されない。使用することができる粒状次亜塩素酸カルシウムは市販されている。次亜塩素酸カルシウムは、米国篩列(U.S. SieveSeries)約−10(2.00ミリメートル)〜約+45(0.35ミリメートル)というサイズ分布を有し得る。すなわち、顆粒は主に約0.08インチ〜約0.014インチ、又は他のサイズ分布であり得る。次亜塩素酸リチウムは、約35パーセントの有効塩素を含有し得る自由流動性の白色粒状製品として市販されている。粒状次亜塩素酸リチウムは概して、米国篩列約−10(1.98ミリメートル)〜約+70(0.21ミリメートル)という粒径、又は他のサイズを有する。他のアルカリ次亜塩素酸塩又はアルカリ土類次亜塩素酸塩を本発明の方法において酸化剤として使用することができる。
【0043】
ハロゲン化イソシアヌレート酸化剤に関しては、例えば塩素化イソシアヌレートであってもよい。有用な塩素化イソシアヌレートとしては、ジクロロイソシアヌル酸並びにそのナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。ジクロロイソシアヌル酸は、約62パーセント〜約70パーセントの有効塩素を含む白色の粒状物質の形態のナトリウム塩として一般に利用可能である。ジクロロイソシアヌル酸は二水和物形態で市販されている。トリクロロイソシアヌル酸(簡潔にトリクロール(trichlor)と呼ばれる場合もある)は、約90パーセントの有効塩素を含有して市販される白色の粒状粉末又は顆粒である。約2部〜4部のトリクロールに対して約1部の量でシアヌル酸が配合されることが多い。他のハロゲン化イソシアヌレートを酸化剤として使用してもよい。
【0044】
ハロゲン化ヒダントイン(hydantoin)酸化剤に関しては、酸化剤はハロゲン化、すなわち臭素化及び塩素化されたジメチルヒダントイン、例えば1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン及び1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインであり得る。1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインは、約55パーセントの活性臭素を含有する自由流動性のクリーム色粉末として市販されている。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインは、約36パーセントの活性塩素を含有する白色の粉末として市販されている。これらのヒダントインは、それぞれジメチルヒダントインの臭素化又は塩素化によって調製することができる。1−ブロモ−3−クロロ−5,5,−ジメチルヒダントインは、約33パーセントの活性臭素及び約14パーセントの活性塩素を含有する自由流動性の白色粉末として市販されている。1−ブロモ−3−クロロ−5,5,−ジメチルヒダントインは、ジメチルヒダントインの逐次的な塩素化及び臭素化によって調製することができる。他のハロゲン化ヒダントイン酸化剤を使用してもよい。
【0045】
ハロ−オキサゾリジノン(halo-oxazolidinone)酸化剤に関しては、使用することができるハロ−オキサゾリジノンは、例えば、3−クロロ−4,4−ジメチル−2−オキサゾリジノン、3−クロロ−4,4−ジエチル−2−オキサゾリジノン、3−クロロ−4−メチル−4−エチル−2−オキサゾリジノン、3−クロロ−4−メチル−4−ヒドロキシ−2−オキサゾリジノン、3−クロロ−4−メチル−4−メトキシ−2−オキサゾリジノン、3−クロロ−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−2−オキサゾリジノン、及び3−クロロ−4−メチル−4−p−メチルフェニル−2−オキサゾリジノン等の2−オキサゾリジノンであり得る。他のハロ−オキサゾリジノン誘導体を、酸化剤として使用することができる。
【0046】
過酸化物源無含有酸化剤は、水性繊維懸濁液中に約0.05重量ppm〜約1000重量ppm、又は約0.2重量ppm〜約750重量ppm、又は約2重量ppm〜約500重量ppm、又は約5重量ppm〜約100重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を供給する量で処理される水性繊維懸濁液に添加することができる。
【0047】
リパーゼ及び少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤は、水性繊維懸濁液中に約0.01重量ppm〜約500重量ppmのリパーゼ及び約0.05重量ppm〜約1000重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、若しくは水性繊維懸濁液中に約0.1重量ppm〜約250重量ppmのリパーゼ及び約0.2重量ppm〜約750重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、若しくは水性繊維懸濁液中に約1重量ppm〜約100重量ppmのリパーゼ及び約2重量ppm〜約500重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を供給する量、又は他の量で処理される水性繊維懸濁液に添加することができる。
【0048】
選択肢として、紙パルプ製造における水性繊維懸濁液は、非イオン性界面活性剤と更に組み合わせたリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤で処理される。上述のように、処理対象の水性繊維懸濁液中のリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤と同時の非イオン性界面活性剤(複数の場合もあり)の更なる存在は、繊維処理によって得られる酵素活性及びピッチ除去に更なる相乗効果を与え得ることが見出された。
【0049】
非イオン性界面活性剤はポロキサマーであり得る。ポロキサマーは、両側に親水性ポリアルキレンオキシドブロックが隣接した疎水性ポリアルキレンオキシドブロックの中央ブロックを含む非イオン性トリブロック共重合体であり得る。選択肢として、ポロキサマーのポリアルキレンオキシドブロックは、独立して低級アルキレンオキシド鎖、例えばC
2、C
3又はC
4アルキレンオキシド鎖を含み得る。選択肢として、ポロキサマーは、2つのポリエチレンオキシド(PEO)のブロックに挟まれたポリプロピレンオキシド(PPO)又はポリブチレンオキシド(PBO)の中央ブロックを含んでいる。選択肢として、ポロキサマーは、一般式I:HO(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
b(C
2H
4O)
aH(式中、a及びbは適用可能なPEO及びPPOブロックにおけるEO単量体単位及びPO単量体単位のそれぞれの平均数である)を有し得るPEO−PPO−PEO共重合体であり得る。PEO−PPO−PEO構造は、第1級ヒドロキシル基で終端する二官能性ブロック共重合体界面活性剤であり得る。その両親媒性構造のために、ポロキサマーは非イオン性(すなわち非荷電)界面活性剤特性を有し得る。
【0050】
ポロキサマーは順次に合成することができる。例えば、中央ブロックを初めにPOから重合してPPOを形成した後、EOを用いた第2の重合工程において外側のPEOブロックを中央PPOブロックの末端に付加することができる。ポロキサマーの商業的供給源は、例えばBASF Corporation(Florham Park,New Jersey,U.S.A.)によるPLURONIC(商標)共重合体である。
【0051】
ポロキサマーの物理的特性は、分子量及びPEO:PPO比の正確な組合せに応じて低粘度液体から、ペースト、固体までの範囲であり得る。選択肢として、全PEO対PPOの質量比は、約1:9〜約9:1、若しくは約1:9〜約8:2、若しくは約2:8〜約8:2、若しくは約2.5:7.5〜約7.5:2.5、若しくは約4:6〜約6:4、又は他の値であり得る。選択肢として、PEOの比率は、質量ベースでポロキサマーの全PEO及びPPO含量の少なくとも過半量(すなわち50%以上)を占める。選択肢として、本発明の組成物及び方法に使用することができるポロキサマーは、重量:重量(w/w)ベースで約50:50:〜約95:5、若しくは約60:40〜約90:10、若しくは約75:25〜約85:15、若しくは約78:22〜約82:18、若しくは約80:20、又は他の値のPEO:PPO比を有し得る。選択肢として、ポロキサマーは、例えば約1000g/mol〜約25000g/mol、若しくは約2500g/mol〜約22500g/mol、若しくは約5000g/mol〜約20000g/mol、若しくは約7500g/mol〜約18000g/mol、若しくは約10000g/mol〜約16000g/mol、若しくは約12000g/mol〜約15000g/mol、又は他の値の分子量を有し得る。ポロキサマー等の非イオン性界面活性剤の水溶性は、親水性親油性バランス(HLB)値又は数と関連し得る。HLB値は従来通りに算出することができる。例えば、ポロキサマーのHLB値は、ポロキサマーの親水性部分の分子量パーセントを5で除算して算出され得る。例えば、80モル%のPEO(合計)を含有するポロキサマーのHLB値は16と算出される(すなわち80/5=16)。20を超えるHLB値は相対的又は比較的な値である。ポロキサマーにおける親水性PEO末端部分の存在は、界面活性剤分子のHLB値が通常ゼロより大きいこと、すなわちそれらが幾らかの親水性特性を有することを意味する。PPOのHLB値はゼロに近く、例えば0.5未満であり得る。選択肢として、ポロキサマーのPEO含量が共重合体の過半量を占める場合、共重合体の親水性特性が分子の親油性特性を上回ることが期待され得る。選択肢として、過半量のPEOを含有するポロキサマーのHLB値は、例えば少なくとも約10、若しくは少なくとも約11、若しくは少なくとも約12、若しくは少なくとも約13、若しくは少なくとも約14、若しくは少なくとも約15、若しくは少なくとも約16、若しくは少なくとも約17、若しくは少なくとも約18、若しくは少なくとも約19、若しくは約10〜約19.9、若しくは約11〜約19、若しくは約12〜約18、若しくは約13〜約17.5、若しくは約14〜約17、又は他の値であり得る。選択肢として、非イオン性界面活性剤は、HLB値が16以上のポロキサマーである。
【0052】
BASFのPLURONIC(商標)コードにおいて、アルファベット表示は室温での製品の物理的形態に基づき得る(Lは液体形態、Pはペースト形態、Fはフレーク(固体)形態である)。数字表示では、最後の数字に10を乗算するとPLURONIC(商標)共重合体における親水性部分のおおよそのパーセンテージ(w/w)が示され得る。本方法及び組成物に使用することができるポロキサマーの商品名には、例えばPLURONIC(商標)F38、PLURONIC(商標)F68、PLURONIC(商標)F88、PLURONIC(商標)F98、PLURONIC(商標)F108、PLURONIC(商標)F87、PLURONIC(商標)P105、及びPLURONIC(商標)F127が含まれ得る。例えばPLURONIC(商標)F108は、重量:重量(w/w)ベースで約80%のPEO(合計):約20%のPPOを含み、約14600g/molの平均分子量を有し得る。
【0053】
使用される非イオン性界面活性剤の量は、例えば、配合物の総重量又は生成物の総重量をベースとして、約0.5重量%〜約30重量%、又は約1重量%〜約25重量%、又は約2.5重量%〜約20重量%、又は約5重量%〜約15重量%、又は約7.5重量%〜約17.5重量%、又は約10重量%〜約15重量%の量であり得る。非イオン性界面活性剤は酵素とともに製品配合物に配合することができる。上述のように、本発明の方法に使用することができる酵素を含有する製品配合物は、通常は酵素、使用される場合に非イオン性界面活性剤、水及び配合物安定化のための他の任意の構成要素を含有し、通常は処理下の系に通常は別々に添加される酸化剤を含有しない。酵素、使用される場合に非イオン性界面活性剤、水及び配合物安定化のための他の構成要素を含有する指定の配合物又は製品の投入量は、例えば乾燥繊維1トン当たり約0.01ポンド〜約10.0ポンド(lb.)、又は乾燥繊維1トン当たり約0.1lb.〜約3.0lb.、又は乾燥繊維1トン当たり約0.25lb.〜約2.5lb.、又は乾燥繊維1トン当たり約0.5lb.〜約2.0lb.、又は他の投入量であり得る。処理される系に投入される非イオン性界面活性剤の量は、例えば乾燥繊維1トン当たり約0.001lb.〜約5.0lb.、又は乾燥繊維1トン当たり約0.0015lb.〜約3.0lb.、又は乾燥繊維1トン当たり約0.01lb.〜約1.0lb.、又は乾燥繊維1トン当たり約0.025lb.〜約0.75lb.、又は他の投入量であり得る。
【0054】
リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤(使用される場合)は併用することができ、ここで「併用する」とは、これらの成分を同じ若しくは別個の導入口から同時に、又は順次に処理対象の水性繊維懸濁液に導入することができ、導入された成分が処理対象の水性流体中の繊維間で共存するようになることを意味する。上述のように、酸化剤は通常、酵素及び非イオン性界面活性剤(使用される場合)を含有する配合物に含まれない。リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤(使用される場合)の併用とは、通常はこれらの成分を別個の導入口から同時に若しくは順次に、又は同じ導入口から順次に処理下の水性繊維懸濁液に導入することを意味し、導入された成分が処理対象の水性流体中の繊維間で共存するようになることを意味する。リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤(使用される場合)は、これらの成分を含有する繊維懸濁液の実質的に均一な混合物をもたらす量、タイミング及び混合作業で繊維懸濁液に添加することができる。酵素配合物及び過酸化物源無含有酸化剤は処理対象の系に別々に添加してもよい。酵素、過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤(使用される場合)の処理される水性繊維懸濁液への添加順序は、通常は効果に影響を及ぼさない。
【0055】
リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤は、水性繊維懸濁液に有効量添加することができる。本明細書で使用される場合、「有効量」とは少なくとも1つのピッチ成分を、例えばかかる1つ又は複数の成分をパルプ若しくは紙の繊維、プロセス水又はその両方からより容易に除去され得る形態へと分解又は変換することによって低減する所望の効果を達成するのに十分な量を意味する。水性繊維懸濁液は、水性懸濁液中に約0.01重量ppm〜約500重量ppmのリパーゼ及び約0.05重量ppm〜約1000重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、並びに任意に処理下の水性繊維懸濁液中に乾燥繊維1トン当たり約0.001lb.〜約5.0lb.の非イオン性界面活性剤を供給する添加量のリパーゼ、少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤及び非イオン性界面活性剤で処理することができる。選択肢として、水性懸濁液中に約0.1重量ppm〜約250重量ppmのリパーゼ及び約0.2重量ppm〜約750重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、並びに乾燥繊維1トン当たり約0.0015lb.〜約3.0lb.の非イオン性界面活性剤で水性繊維懸濁液を処理することができる。別の選択肢としては、水性懸濁液中に約1重量ppm〜約100重量ppmのリパーゼ及び約2重量ppm〜約500重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、並びに乾燥繊維1トン当たり約0.01lb.〜約1.0lb.の非イオン性界面活性剤で水性繊維懸濁液を処理してもよい。
【0056】
本発明の方法によるリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤、並びに任意に付加的に非イオン性界面活性剤を用いた処理は、任意の特定のタイプのパルプ又は紙の処理に限定されず、さらしパルプ、未ざらしパルプ又はそれらの組合せを用いて製造される紙を含む全等級の紙、クラフト紙、亜硫酸紙、セミケミカル紙等に用いることができる。例えば、本発明の方法を用いてもたらされるピッチ制御の改善は種々のタイプのパルプにおいてもたらすことができる。例えば、処理対象のパルプはバージンパルプ及び/又は再生パルプ、例えばバージン亜硫酸パルプ、ブロークパルプ、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、かかるパルプの混合物等を含み得る。再生パルプは古紙、古段ボール箱(OCC)、並びに他の使用済み紙製品及び材料であっても又はそれを含んでいてもよい。上記のパルプに加えて、更なる様々なパルプに本発明の方法を適用することができる。例えば、サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ(SGW)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)及び他のパルプを本発明の方法によって処理することができる。異なるタイプのパルプには異なるタイプの紙製造が必要とされるが、多くの紙に幾つかの異なるタイプのパルプ及び再生/回収紙の組合せ又は「ブレンド」を使用することができる。製紙パルプ又は原料は、水性媒体中に例えばパルプ又は原料中の全乾燥固体含量の少なくとも約50重量%、又は少なくとも約60重量%、又は少なくとも約70重量%、又は少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%の濃度のセルロース繊維を含有することができるが、他の濃度を用いてもよい。これらのパルプ配合物を元に直接、又は1つ若しくは複数の製紙添加剤の添加後に紙料又は繊維完成紙料(fiber furnishes)を形成することができる。本発明の方法によって水性懸濁液中で処理することができる繊維は、少なくとも部分的にセルロース繊維を含んでいてもよい。セルロース繊維はバージンセルロース繊維、紙パルプ製造によるくずセルロース繊維、再生セルロース繊維又はそれらの任意の組合せであり得る。本発明の方法によって処理することができる繊維は、セルロース繊維含量が全繊維含量ベースで最大100重量%とすることができる。処理される繊維は、セルロース繊維と非セルロース繊維との混合物であってもよい。例えば、繊維混合物は、混合繊維の総重量をベースとして、約1wt%〜99wt%のセルロース繊維及び約99wt%〜1wt%の非セルロース繊維、又は約10wt%〜99wt%のセルロース繊維及び約90wt%〜1wt%の非セルロース繊維、又は約25wt%〜99wt%のセルロース繊維及び約75wt%〜1wt%の非セルロース繊維、又は約50wt%〜99wt%のセルロース繊維及び約50wt%〜1wt%の非セルロース繊維、又は約75wt%〜99wt%のセルロース繊維及び約25wt%〜1wt%の非セルロース繊維、又は他の混合物を含み得る。本発明のプロセスは、非セルロース繊維には適用され得ないピッチ含有繊維又はパルプの処理に適用した場合に特に利益をもたらすが、本発明の方法はピッチ無含有繊維の存在にも対応することができる。
【0057】
本発明の方法は例えば、リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)の指定の処理剤を水性繊維懸濁液に分散させ得る任意の紙パルプ製造段階で行うことができる。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)は直接若しくは間接的に又はその両方で水性繊維懸濁液に添加することができる。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)は、例えば任意の貯蔵タンク、例えばパルプ保管容器(貯蔵チェスト)、貯蔵タワー、混合チェスト又は計量チェストに添加することができる。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)は、例えばパルプ化段階の前、その最中及び/又はその後に繊維の水性懸濁液に添加することができる。クラフトパルプ化プロセスでは、例えばリパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)を褐色原料洗浄時に添加することができる。処理は例えばパルプ化段階後及び紙製造前のパルプに適用してもよい。処理は例えば紙料若しくは完成紙料、循環プロセス水、白水又はそれらの任意の組合せに適用してもよい。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)は、例えば原料調製段階中若しくはその前、繊維の水性懸濁液を抄紙機のヘッドボックス、抄紙機の白水(例えば白水ループ)、若しくは他の紙製造プロセス位置に導入する前、又はそれらの任意の組合せで繊維の水性懸濁液に添加することができる。指定の処理剤は繊維含有水性懸濁液に直接、又はプロセス水若しくはそれに添加する他の流体から間接的に、又はそれらの任意の組合せで添加することができる。プロセス水は例えば、紙製造プロセスに原材料として添加される水、紙材の製造プロセスの任意の工程によって生じる中間水生成物若しくは副生成物、又はそれらの任意の組合せを含み得る。プロセス水は循環又は再循環を意図するものであってもよい、すなわちプロセスの同じ又は別の工程で再使用してもよい。「水」という用語は、例えば都市水道水、並びに紙製造プロセスに一般に使用される任意の様々な添加剤及びアジュバントと混合した水道水を含む任意の水性媒体、溶液、懸濁液を意味し得る。
【0058】
リパーゼ、過酸化物源無含有酸化剤、任意の非イオン性界面活性剤、及び本明細書に記載するような任意の付加的な活性剤による水性繊維懸濁液の処理は、パルプ化及び/又は紙製造中に懸濁液の洗浄又はドレネージを行う前に行うことができる。リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤)による処理の後に、洗浄又はドレネージ操作を用いてピッチ成分を繊維からより容易に除去することができる。例えば、クラフトパルプ製造機は典型的には連続した複数の洗浄段階を有し得る(例えば3段階〜5段階)。洗浄段階を酸素脱リグニンの後及び任意の漂白段階の間に設けてもよい。パルプ洗浄機は、パルプが洗浄水の流れとは逆方向に動くような向流を段階間に用いることができる。使用することができる幾つかのタイプの洗浄設備は加圧ディフューザ、大気圧ディフューザ、真空ドラムウォッシャー、ドラムディスプレーサ(drum displacers)及び洗浄プレスである。スクリーニング及びクリーニング操作も例えば一般にパルプ形成(例えば化学パルプ化、機械パルプ化又はその両方)の後、及びパルプの洗浄又はドレネージを含み得る任意の漂白の前にパルプ製造機に含まれる。一部のパルプクリーナでは、パルプからの処理ピッチ成分の遊離を促進し得る希釈水を導入することができる。パルプスクリーニングプロセスを用いることができるが、この場合、パルプをワイヤ部に湿潤させて置き、ワイヤ部上の繊維(アクセプト)を回収し、ワイヤ部を介してパルプから排出された水(例えば白水)は、先の指定のリパーゼと過酸化物源無含有酸化剤との組合せを用いたパルプ繊維の処理による遊離ピッチ成分を含有し得る。このようにして、遊離ピッチ成分はパルプ加工の白水へと分離することができる。抄紙機プロセスでは、紙料を例えば原料調製、接近流系、ウェットエンド又はそれらの任意の組合せにおいて、リパーゼ及び過酸化物源無含有酸化剤(及び任意の非イオン性界面活性剤又は本明細書に記載するような付加的な活性剤)で処理することができる。ウェットエンドとも呼ばれる形成部では、繊維のスラリーはワイヤ部を介して排出される遊離ピッチ成分を含有する液体分を含有し得るが、処理繊維はワイヤ部上に形成される紙匹として回収される。このようにして、遊離ピッチ成分を処理繊維から抄紙機の白水へと分離することができる。
【0059】
概して、リパーゼを導入する水性繊維懸濁液又は供給液の温度及びpHは酵素に関して非活性化すべきでない。リパーゼ及び酸化剤と非イオン性界面活性剤との組合せを、例えば約30分〜約48時間、又は約1時間〜約24時間、又は約3時間〜約12時間、又は他の時間にわたって繊維と接触させることができる。パルプと製紙原料若しくは白水、又は他の水性繊維懸濁液及び系との処理に関する接触時間範囲は、同じ又は実質的に同じ(例えば±10%)とすることができる。パルプ製造機及び抄紙機の通常のプロセス温度及びpHを用いることができる。リパーゼ/酸化剤/非イオン性界面活性剤の組合せに関する通常の適用温度範囲は、例えば約30℃〜約65℃、又は約35℃〜約60℃、又は40℃〜約55℃、又は他の温度であり得る。リパーゼ/酸化剤/非イオン性界面活性剤の組合せに関する通常の適用pH範囲は、例えば約3.5〜約10.0、又は約4.0〜約9.5、又は約4.5〜約9.0、又は他のpH値であり得る。
【0060】
本発明の方法による処理繊維を用いて製造される紙製品も提供する。本発明の方法によって処理された繊維から任意の好適な方法で紙製品を形成することができる。例えば、処理繊維をワイヤ部で回収した後、従来の方法での加工、例えばプレス部、カレンダリング部及び任意のコーティング部での加工を行い、紙を形成することができる。紙製品は、例えば印刷可能若しくはインク付け可能な(inkable)紙シート、段ボール紙構造用のシート、ライナーボード、ティシュペーパー、衛生用及びパーソナルケア用のシート若しくはライナー材料、他の紙ベースの製品、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0061】
本発明の紙製品において供給することができるリパーゼの総量は、例えば処理される乾燥繊維1トン当たり約0.005lb.〜約4lb.、若しくは処理される乾燥繊維1トン当たり約0.01lb.〜約2lb.、若しくは処理される乾燥繊維1トン当たり約0.01lb.〜約1.5lb.、又は他の量であり得る。
【0062】
本発明は、任意の順序及び/又は任意の組合せでの以下の態様/実施形態/特徴を包含する。
1.本発明は、製紙システムにおいて繊維からの有機汚染物質の堆積を制御する方法であって、繊維を含有する水性懸濁液を、少なくとも1つのリパーゼ及び少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤で処理することを含み、上記有機汚染物質が1つ又は複数のピッチ成分を含む、方法に関する。
2.上記処理が、有機汚染物質が繊維から遊離した処理繊維を、該繊維を上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤なしに上記リパーゼで処理した場合よりも多量にもたらすのに十分な時間及び十分な量であり、上記有機汚染物質が1つ又は複数のピッチ成分を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
3.上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤がハロゲン含有酸化剤である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
4.上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤がハロアミン、ハラミンスルホンアミド、アルカリ次亜ハロゲン酸塩、アルカリ土類次亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸、二酸化塩素、二原子ハロゲン、ハロゲン化ヒダントイン、ハロゲン化イソシアヌレート、ハロ−オキサゾリジノン又はそれらの任意の組合せである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
5.上記リパーゼがトリアシルグリセロール(TAG)リパーゼである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
6.上記リパーゼがカンジダ属の菌株に由来する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
7.上記繊維がバージンセルロース繊維を含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
8.上記処理により該処理の前に上記繊維中に存在する全ピッチ成分の少なくとも50重量%が除去される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
9.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を、上記水性懸濁液中に約0.01重量ppm〜約500重量ppmのリパーゼ及び約0.05重量ppm〜約1000重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を供給する量で上記水性懸濁液に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
10.上記水性懸濁液を、上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤と組み合わせた少なくとも1つの非イオン性界面活性剤で処理することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
11.上記非イオン性界面活性剤がポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
12.上記非イオン性界面活性剤が、HLB値が16以上のポロキサマーである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
13.上記リパーゼ、上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤及び上記非イオン性界面活性剤を、上記水性懸濁液中に約0.01重量ppm〜約500重量ppmのリパーゼ及び約0.05重量ppm〜約1000重量ppmの少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤、並びに乾燥繊維1トン当たり約0.001lb.〜約5.0lb.の非イオン性界面活性剤を供給する量で添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
14.上記リパーゼを、乾燥繊維1トン当たり約0.1ポンド〜約1.5ポンドのリパーゼを供給する量で添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
15.上記水性懸濁液がパルプである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
16.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をパルプ化段階の前に上記水性懸濁液に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
17.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をパルプ化段階中に上記水性懸濁液に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
18.上記水性懸濁液が製紙原料である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
19.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を、原料調製段階中又はその前に上記水性懸濁液に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
20.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を、上記水性懸濁液を抄紙機のヘッドボックスに導入する前に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
21.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を抄紙機の白水に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
22.上記リパーゼ及び上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤を含有する水性懸濁液を、上記繊維と約30分〜約48時間にわたって接触させる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
23.上記繊維から紙製品を形成することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
24.上記紙製品が紙、ライナーボード、ティシュ、段ボール板紙又はそれらの任意の組合せである、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
25.上記繊維から紙製品を形成することを更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
26.上記繊維を含有する水性懸濁液に、上記少なくとも1つのリパーゼを過酸化物源無含有酸化剤とは別に添加し、上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をリパーゼとは別に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。選択肢として、過酸化物源無含有酸化剤を任意のリパーゼ及び/又は非イオン性界面活性剤と予め組み合わせず、水性懸濁液中で互いに相互作用させてもよい。
27.上記繊維を含有する水性懸濁液に、上記少なくとも1つのリパーゼ及び上記少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を、過酸化物源無含有酸化剤とは別に添加し、上記少なくとも1つの過酸化物源無含有酸化剤をリパーゼ及び非イオン性界面活性剤とは別に添加する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
28.任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法による紙製品。
【0063】
本発明は、文及び/又は段落に記載のような上記及び/又は下記のこれらの様々な特徴又は実施形態の任意の組合せを包含し得る。本明細書に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部とみなされ、組合せ特徴に関しては限定されないことが意図される。
【0064】
本発明を以下の実施例により更に明らかにするが、これは本発明を単に例示するものであることが意図される。本明細書中で使用される量、パーセンテージ、比率等は全て他に特に規定がなければ重量基準とする。
【実施例】
【0065】
実施例1:
紙パルププロセスによるピッチをシミュレートするために、ダマール樹脂を実験室評価におけるモデルピッチとして使用した。75mgのダマール樹脂を75mlの脱イオン水の入ったフラスコに添加した。表1に示すようにリパーゼ、酸化剤又はリパーゼ/酸化剤の組合せをフラスコに添加した。フラスコの内容物を室温で5時間撹拌した。各フラスコ内の液体の濁度を、分光光度計を用いて600nmで決定した。試験結果を表1に示す。
【0066】
表1.リパーゼ、酸化剤及びリパーゼ/酸化剤の組合せによる5時間の処理後のダマール樹脂溶液の濁度(A
600nm)
【表1】
Tagリパーゼ
*667ppmのTagリパーゼ+2ppmのClO
2(活性二酸化塩素として)
【0067】
ダマール樹脂は通常は水に不溶性である。表1の試験結果によって示されるように、室温で5時間の撹拌後に、対照サンプル(ダマール樹脂のみ)は非常に低い濁度によって示されるように透明のままであった。樹脂が対照サンプルのフラスコの底部又は壁面に観察された。Tagリパーゼ、ClO
2又はリパーゼ/ClO
2の組合せで処理した他の3つのサンプルは乳白色のエマルションへと変わった。濁度の結果から、組合せによる処理がTagリパーゼ単独又はClO
2単独よりもはるかに良好なダマール樹脂の乳化をもたらすことが実証された。組合せによる処理は明らかに強い相乗効果を示した。組合せによる濁度の増大は、2回の個々の処理、すなわちTagリパーゼ単独及びClO
2単独による濁度の増大の総和よりもはるかに大きかった。乳化した樹脂は疎水性がより低く、パルプからの洗浄がはるかに容易であった。これによりピッチ又は堆積物を構成する化合物の低減をもたらすことができ、ひいては製紙プロセス中のピッチ問題を軽減することができる。
【0068】
実施例2:
オレイン酸は不飽和脂肪酸である。オレイン酸は紙パルプ製造によるピッチ堆積物の主成分の1つである。本実施例では、オレイン酸をリパーゼ、酸化剤及びリパーゼ/酸化剤の組合せの乳化効果を評価するための基質として使用した。75mgのオレイン酸を75mlの脱イオン水の入ったフラスコに添加した。表2に示すようにリパーゼ、酸化剤又はリパーゼ/酸化剤の組合せをフラスコに添加した。フラスコの内容物を室温で5時間撹拌した。各フラスコ内の液体の濁度を、分光光度計を用いて600nmで決定した。試験結果を表2に示す。
【0069】
表2.
リパーゼ、酸化剤及びリパーゼ/酸化剤の組合せによる5時間の処理後のオレイン酸溶液の濁度(A
600nm)
【表2】
【0070】
表2の試験結果によって示されるように、二酸化塩素及びモノクロラミンはどちらもtagリパーゼと組み合わせた場合に、オレイン酸を溶液中に乳化するのに効果的であった。tagリパーゼ単独又は酸化剤単独による個々の処理ははるかに効果的でなかった。これらの結果はダマール樹脂による実施例1において提示されたものと同様であった。
【0071】
実施例3:
非イオン性界面活性剤であるPLURONIC(商標) F108を、オレイン酸を水中に乳化するリパーゼ+酸化剤の活性を増強するその有効性について評価した。PLURONIC(商標) F108をTagリパーゼ配合物に2.5重量%、5.0重量%、7.5重量%及び10.0重量%で添加した。75mgのオレイン酸を75mlの脱イオン水の入ったフラスコに添加した。2ppmのCl
2をフラスコに添加した。Tagリパーゼが677ppmとなるように、PLURONIC(商標) F108を含有する2000mgのTagリパーゼ配合物(表3)を添加した。フラスコの内容物を室温で5時間撹拌した。各フラスコ内の液体の濁度を、分光光度計を用いて600nmで決定した。試験結果を表3に示す。
【0072】
表3.
様々な量のPLURONIC(商標) F108を含有するTagリパーゼ処方による5時間の処理後のオレイン酸溶液の濁度(A
600nm)
【表3】
*Tagリパーゼ処方1〜5は各々2.5%のTagリパーゼを含有する。Tagリパーゼ処方による各処理に対して2ppmのClO
2を別々に添加した。PLURONIC(商標) F108のみによる処理については、200mgのPLURONIC(商標) F108をオレイン酸の入ったフラスコに添加した。
【0073】
表3の試験結果から、非イオン性界面活性剤(PLURONIC(商標) F108)が、オレイン酸を水中に乳化するTagリパーゼ+ClO
2の組合せの活性を強く増強することが実証される。これらの実験的試験のTagリパーゼ配合物中のPLURONIC(商標) F108の最適量は7.5%であった。Tagリパーゼ処方1〜5は全て、対照と比較して濁度値を増大した。オレイン酸を乳化する効果の更なる顕著な改善が、2.5%〜10%のPLURONIC(商標) F108の配合物への添加によって観察された。これは、PLURONIC(商標) F108を含まないTagリパーゼ処方5と比較した、PLURONIC(商標) F108を含むTagリパーゼ処方1〜4の濁度値の増大によって示される。
【0074】
出願人らはこの開示における全ての引用文献の内容全体を具体的に援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値と好ましい下限値とのリストのいずれかとして与えられる場合、これは範囲が別々に開示されているかに関わらず、任意の範囲上限又は好ましい値と、任意の範囲下限又は好ましい値との任意の組合せからなるあらゆる範囲を具体的に開示するものと理解されるものとする。数値の範囲が本明細書で言及されている場合、特に指定のない限り、範囲はその端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する場合に言及された特定の値に限定することは意図されない。
【0075】
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施により当業者にとって明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は添付の特許請求の範囲及びその均等物により示されることが意図される。