(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084692
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】フレキソ刷版における印刷性能を改善する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20170213BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20170213BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20170213BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
G03F7/20 511
G03F7/00 502
G03F7/029
G03F7/031
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-529817(P2015-529817)
(86)(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公表番号】特表2015-534105(P2015-534105A)
(43)【公表日】2015年11月26日
(86)【国際出願番号】US2013051240
(87)【国際公開番号】WO2014035566
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】13/595,473
(32)【優先日】2012年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506314391
【氏名又は名称】マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】カイル・ピー・ボールドウィン
【審査官】
新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0079158(US,A1)
【文献】
特開2010−197540(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0081614(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0280227(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/010459(WO,A1)
【文献】
特表2005−514660(JP,A)
【文献】
特表2003−507771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 7/00
G03F 7/029
G03F 7/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製版工程中に感光性印刷ブランク中に作製される複数のレリーフ印刷ドットの形状を調整する方法であって、前記感光性印刷ブランクは、バッキング層上に配置された少なくとも1つの光硬化性層を含み、
a)前記少なくとも1つの光硬化性層を化学線源に選択的に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化させる工程と、
b)前記感光性印刷ブランクの露光された前記少なくとも1つの光硬化性層を現像してその中のレリーフ像を露呈する工程であって、前記レリーフ像は複数の前記レリーフ印刷ドットを含む工程と、を含み、
前記化学線源は、少なくとも2つの列の紫外線LED光装置の配列を含み、
前記紫外線LED光装置の第1の列は同じ波長の光を放射する列であって、前記紫外線LED光装置の第2の列は同じ波長の光を放射する列であり、
前記紫外線LED光装置の第1の列の光の波長は、前記紫外線LED光装置の第2の列の光の波長と異なっており、
前記紫外線LED光装置の配列の使用が、前記レリーフ印刷ドットの頂部の所望の平坦性、前記レリーフ印刷ドットの所望のショルダー角、及び前記レリーフ印刷ドットの所望のエッジ鮮明度からなる群から選択される少なくとも1つの幾何学的特性を有する前記レリーフ印刷ドットを製造することを特徴とする方法。
【請求項2】
紫外線LED光装置の配列が、少なくとも4つの列を含み、
前記紫外線LED光装置の第1の列と前記紫外線LED光装置の第3の列が同じ波長の光を放射する列であって、
前記紫外線LED光装置の第2の列と前記紫外線LED光装置の第4の列が同じ波長の光を放射する列である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
紫外線LED光装置の配列における紫外線LED光源の交互の列が、360nm〜420nmの範囲の波長で動作する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
紫外線LED光装置の第1の列が365nmの波長で動作し、紫外線LED光装置の第2の列が395nmの波長で動作する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの光硬化性層が、紫外線LED光装置の動作波長の範囲の紫外−可視吸収ピークを有する光開始剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
紫外線LED光装置の第1の列と紫外線LED光装置の第2の列が、異なる角度の光を有するように配置されている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
紫外線LED光装置の第1の列が平行紫外線LED光装置であり、紫外線LED光装置の第2の列が非平行紫外線LED光装置である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
レリーフ印刷ドットのショルダーの角度が、50°より大きい請求項1に記載の方法。
【請求項9】
レリーフ印刷ドットのショルダーと頂部との交点における曲率半径reの、ドットの頂部の印刷面の幅pに対する比として定義される前記レリーフ印刷ドットのエッジ鮮明度が、約5%未満である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
re:pの比が、約2%未満である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バンプ露光が行われない請求項1に記載の方法。
【請求項12】
レリーフ印刷ドットの頂部の曲率半径が、少なくとも1つの光硬化性層の厚みよりも大きい平坦性を有する請求項1に記載の方法。
【請求項13】
製版工程中に感光性印刷ブランク中に作製される複数のレリーフ印刷ドットの形状を調整する方法であって、前記感光性印刷ブランクは、バッキング層上に配置された少なくとも1つの光硬化性層を含み、
a)前記少なくとも1つの光硬化性層を化学線源に選択的に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化させる工程と、
b)前記感光性印刷ブランクの露光された前記少なくとも1つの光硬化性層を現像してその中のレリーフ像を露呈する工程であって、前記レリーフ像は複数の前記レリーフ印刷ドットを含む工程と、を含み、
前記化学線源は、少なくとも2つの列の紫外線LED光装置の配列を含み、
前記紫外線LED光装置の配列の使用が、前記レリーフ印刷ドットの頂部の所望の平坦性、前記レリーフ印刷ドットの所望のショルダー角、及び前記レリーフ印刷ドットの所望のエッジ鮮明度からなる群から選択される少なくとも1つの幾何学的特性を有する前記レリーフ印刷ドットを製造する方法であって
前記紫外線LED光装置の第1の列が同じ角度の光を有する列であって、
前記紫外線LED光装置の第2の列が同じ角度の光を有する列であるように配置され、
前記紫外線LED光装置の第1の列の光の前記角度が、前記紫外線LED光装置の第2の列の光の前記角度と異なっており、
前記紫外線LED光装置の第1の列の光が、前記少なくとも1つの光硬化性層に、前記紫外線LED光装置の第2の列の光と異なる角度で照射することを特徴とする方法。
【請求項14】
紫外線LED光装置の第1の列が平行紫外線LED光装置であり、紫外線LED光装置の第2の列が非平行紫外線LED光装置である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
紫外線LED光装置の配列が、少なくとも4つの列を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
バンプ露光が行われない請求項13に記載の方法。
【請求項17】
紫外線LED光装置の第1の列は同じ波長の光を放射する列であって、紫外線LED光装置の第2の列は同じ波長の光を放射する列であり、
前記紫外線LED光装置の第1の列の光の波長は、前記紫外線LED光装置の第2の列の光の波長と異なっている請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、レリーフ像刷版の製造中に作製される印刷ドットの形状を調整して種々の基材への最適な印刷のための印刷ドットを構成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、一般的に大量印刷に使用される印刷方法である。フレキソ印刷は、紙、板紙材料、段ボール、フィルム、箔、及び積層品等の種々の基材に印刷するために採用される。新聞及び買い物袋は顕著な例である。粗い表面や伸縮性フィルムは、フレキソ印刷によってのみ経済的に印刷することができる。
【0003】
フレキソ刷版は、開口領域の上方に隆起した画像要素を備えたレリーフ版である。一般的に、版は、若干柔らかく、印刷シリンダに巻き付けるのに十分な可撓性を有し、百万部を超えて印刷するのに十分な耐久性がある。そのような版は、主にその耐久性、及びその作製容易性により、多くの利点をプリンタに提供する。製造業者が提供するような典型的なフレキソ刷版は、順番に、バッキング層又は支持層、1以上の未露光光硬化性層、任意的に保護層又はスリップフィルム、及び多くの場合に保護カバーシートからなる多層物品である。
【0004】
支持(又はバッキング)層は、版を支持する。支持層は、紙、セルロースフィルム、プラスチック、又は金属等の透明又は不透明な材料から形成することができる。好ましい材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、及びポリアミド等の合成ポリマー材料から作られたシートが挙げられる。広く使用されている支持層の1つは、ポリエチレンテレフタレートの可撓性フィルムである。
【0005】
光硬化性層は、既知のフォトポリマー、モノマー、開始剤、反応性又は非反応性の希釈剤、フィラー、及び染料のいずれかを含むことができる。本明細書で使用される「光硬化性」との用語は、化学線に反応して重合、架橋、又は任意の他の硬化(curing)反応若しくは硬化(hardening)反応を受ける組成物を指し、その結果として、材料の未露光部分を露光(硬化)部分から選択的に分離及び除去して、硬化材料の三次元レリーフパターンを形成することができる。例示的な光硬化性材料としては、それぞれの主題の全体が参照することにより本明細書中に援用される特許文献1〜特許文献15に開示されている。1を超える光硬化性層を用いてもよい。
【0006】
光硬化性材料は、一般的に、少なくとも何らかの化学線波長域でのラジカル重合によって、架橋(硬化(cure))及び硬化(harden)する。本明細書で使用される「化学線」は、光硬化性層を重合、架橋又は硬化させることができる放射線である。化学線としては、例えば、特にUV及び紫色波長域における増幅(例えば、レーザ)光及び非増幅光が挙げられる。
【0007】
スリップフィルムは、埃からフォトポリマーを保護してその取扱容易性を高める薄層である。従来の(「アナログ」)製版工程においては、スリップフィルムは、UV光を透過し、プリンタが刷版ブランクからカバーシートを剥離してスリップフィルム層上にネガを配置する。次いで、版及びネガがネガを介してUV光によって大露光される。光に露光された領域は、硬化(cure)又は硬化(harden)し、未露光領域を除去して(現像して)刷版にレリーフ像を作製する。
【0008】
「デジタル」即ち「直接刷版」工程においては、レーザは、電子データファイルに格納された画像によって導かれ、一般的には放射線不透過性材料を含むように改変されたスリップフィルムであるデジタル(即ち、レーザアブレーション可能な)マスキング層にその場ネガ(in situ negative)を作製するために使用される。次いで、選択された波長及びパワーのレーザでマスキング層をレーザ放射線に露光することによってレーザアブレーション可能な層の部分がアブレーションされる。レーザアブレーション可能な層の例は、例えば、それぞれの主題の全体が参照することにより本明細書中に援用される特許文献16〜特許文献18に記載されている。
【0009】
レリーフ像印刷要素を形成するための処理工程は、典型的には、
1)デジタル「コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)」刷版に対するマスクアブレーション、又は従来のアナログ刷版に対するネガ生成とすることができる画像生成と、
2)光硬化性層中に床層を作成してレリーフの深度を規定する背面露光と、
3)光硬化性層のマスクで覆われていない部分を選択的に架橋及び硬化させ、これによってレリーフ像を作製する、マスク(又はネガ)を介した前面露光と、
4)溶剤(水を含む)又は熱現像によって未露光フォトポリマーを除去する現像と、
5)必要に応じて、後露光及び粘着低下(detackification)と、を含む。
【0010】
また典型的には、輸送及び取扱いの間の損傷から光硬化性印刷要素を保護するために、取外し可能なカバーシートが設けられる。印刷要素を加工する前に、カバーシートが除去され、感光性表面が化学線に像様に露光される。化学線への像様露光により、露光された領域において、光重合性層の重合、従って不溶化が起こる。適切な現像溶剤(又は熱現像)での処理により、光重合性層の未露光領域を除去し、フレキソ印刷に使用することができる印刷レリーフを残す。
【0011】
本明細書で使用される「背面露光」は、光重合性層の、レリーフを担持する、又は最終的にレリーフを担持することになる反対側の、化学線への全体的な露光を指す。この工程は、典型的には、透明な支持層を介して行われ、光硬化材料の薄層、即ち「床(floor)」を、光硬化性層の支持側に作製するために使用される。床の目的は、一般的に、光硬化性層を感作させてレリーフの深度を規定することである。
【0012】
短時間の背面露光工程(即ち、次の像様露光工程と比較して短い)の後、光硬化性層と接触し、かつそれを介して化学線が導かれるデジタル画像形成されたマスク又は写真用ネガマスクを利用して、像様露光が行われる。
【0013】
使用される放射線の種類は、光重合性層中の光開始剤の種類に依存する。デジタル画像形成されたマスク又は写真用ネガは、下の材料が化学線に露光されるのを防ぎ、従ってマスクにより覆われた領域は重合せず、一方でマスクにより覆われていない領域は化学線に露光されて重合する。任意の従来の化学線源を、この露光工程に用いることができる。好適な可視光源及び紫外線源の例としては、炭素アーク、水銀蒸気アーク、蛍光ランプ、電子閃光装置、電子ビーム装置、及び写真用フラッドランプが挙げられる。
【0014】
画像形成後、感光性印刷要素を現像して、光硬化性材料の層の未重合部分を除去し、硬化した感光性印刷要素中の架橋されたレリーフ像を露呈する。典型的な現像方法としては、様々な溶媒又は水での洗浄が挙げられ、多くの場合ブラシが用いられる。現像の他の選択肢としては、エアナイフの使用、又は典型的には熱とブロッティング材料とを使用する熱現像が挙げられる。得られる表面は、典型的には印刷される画像を再現する複数のドットを含むレリーフパターンを有する。レリーフ像を現像した後、得られたレリーフ像印刷要素を印刷機に取り付けて印刷を開始することができる。
【0015】
ドットの形状及びレリーフの深度は、他の要因の中でも特に印刷された画像の品質に影響を及ぼす。また、白抜き文字(open reverse text)や陰影を維持しながら、フレキソ刷版を使用して微細なドット、線、更にはテキスト等の小さな図形要素を印刷することは、非常に困難である。画像の最も明るい領域(一般的にハイライトと呼ばれる)においては、画像の濃度は、連続階調画像のハーフトーンスクリーン表示におけるドットの面積で表される。振幅変調(AM)スクリーニングでは、一定間隔の格子上に位置する複数の網点の非常に小さな寸法への縮小を含み、ハイライトの濃度がドットの面積で表される。周波数変調(FM)スクリーニングでは、網点の寸法を一般的に何等かの固定値に維持し、ランダム又は疑似ランダムに配置されたドットの数が画像の濃度を表す。いずれの場合も、適切にハイライト領域を表すためには、非常に小さなドット寸法を印刷する必要がある。
【0016】
フレキソ版上に小ドットを維持することは、製版工程の性質上、非常に困難となり得る。UV不透過のマスク層を使用するデジタル製版工程においては、マスク及びUV露光の組合せが、略円錐形状を有するレリーフドットを生成する。これらのドットの最小のものは、処理中に脱落する傾向にあるが、これは、印刷中、これらの領域にはインクが全く転写されないことを意味する(即ち、ドットが版及び印刷機の少なくともいずれかに「保持」されない)。或いは、ドットが処理に耐えた場合は、それらは印刷機の損傷の影響を受け易い。例えば、小さなドットは、印刷中に、折り重なり及び折り砕けの少なくともいずれかを起こすことが多く、過剰のインクが転写されたりインクが全く転写されなかったりすることを引き起こす。
【0017】
それぞれの主題の全体が参照することにより本明細書中に援用される特許文献19及び特許文献20に記載されているように、これらに限定されないが、(1)ドット表面の平坦性、(2)ドットのショルダー角、(3)ドット間のレリーフの深度、及び(4)ドットの頂部がドットのショルダーへと移行する点におけるエッジの鮮明度等の特定の組の幾何学的特性が、優れた印刷性能を生むフレキソドット形状を定義することが見出された。
【0018】
本発明者らは、シート状フォトポリマーを選択的に架橋及び硬化させる際の1以上の紫外線LED装置の使用が、所望の幾何学的特性を有するフレキソ印刷ドットを含むレリーフ像を生成することができることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0456336A2号明細書(Goss等)
【特許文献2】欧州特許出願公開第0640878A1号明細書(Goss等)
【特許文献3】英国特許第1,366,769号明細書(Berrier等)
【特許文献4】米国特許第5,223,375号明細書(Berrier等)
【特許文献5】米国特許第3,867,153号明細書(MacLahan)
【特許文献6】米国特許第4,264,705号明細書(Allen)
【特許文献7】米国特許第4,323,636号明細書(Chen等)
【特許文献8】米国特許第4,323,637号明細書(Chen等)
【特許文献9】米国特許第4,369,246号明細書(Chen等)
【特許文献10】米国特許第4,423,135号明細書(Chen等)
【特許文献11】米国特許第3,265,765号明細書(Holden等)
【特許文献12】米国特許第4,320,188号明細書(Heinz等)
【特許文献13】米国特許第4,427,759号明細書(Gruetzmacher等)
【特許文献14】米国特許第4,622,088号明細書(Min)
【特許文献15】米国特許第5,135,827号明細書(Bohm等)
【特許文献16】米国特許第5,925,500号明細書(Yang等)
【特許文献17】米国特許第5,262,275号明細書(Fan)
【特許文献18】米国特許第6,238,837号明細書(Fan)
【特許文献19】米国特許第8,158,331号明細書(Recchia)
【特許文献20】米国特許出願公開第2011/0079158号明細書(Recchia等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、種々の基材上への、又は種々の条件下での、或いはその両方における最適な印刷のために、レリーフ像印刷要素中のレリーフ印刷ドットの形状を調整又は変更する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、所望の幾何学的特性を有するドットを含むレリーフ像印刷要素を製造する改良された方法を提供することにある。
【0022】
本発明の更に別の目的は、印刷面、エッジ鮮明度、ショルダー角、深度、及びドット高さの点で優れたドット構造を有する印刷ドットを含むレリーフ像印刷要素を作製することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、エッジ鮮明度、ショルダー角、及び印刷面の少なくともいずれかの点で調整されたレリーフドットを有するレリーフ像印刷要素を作製する改良された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的のために、一実施形態において、本発明は、一般的に、製版工程中に感光性印刷ブランク中に作製される複数のレリーフ印刷ドットの形状を調整する方法であって、前記感光性印刷ブランクは、バッキング層上に配置された少なくとも1つの光硬化性層を含み、
a)前記少なくとも1つの光硬化性層を化学線源に選択的に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化させる工程と、
b)露光された前記感光性印刷ブランクを現像してその中のレリーフ像を露呈する工程であって、前記レリーフ像は複数の前記レリーフ印刷ドットを含む工程と、を含み、
前記化学線源は、紫外線LED光装置の配列を含み、前記紫外線LED光装置の配列の使用が、前記レリーフ印刷ドットの頂部の所望の平坦性、前記レリーフ印刷ドットの所望のショルダー角、及び前記レリーフ印刷ドットの所望のエッジ鮮明度からなる群から選択される少なくとも1つの幾何学的特性を有する前記レリーフ印刷ドットを製造することを特徴とする方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、ドットの印刷面の平坦性を特徴付ける手段を示しており、pは、ドットの頂部を横切る距離であり、r
tは、ドットの表面の曲率半径である。
【
図2】
図2は、フレキソドット及びそのエッジを示しており、pは、ドットの頂部を横切る距離である。これは、エッジ鮮明度r
e:pの特徴付けに使用され、r
eは、ドットのショルダーと頂部との交点における曲率半径である。
【
図3】
図3は、ドットのショルダー角θの測定を示す。
【
図4】
図4は、イルガキュア651の紫外−可視プロットを示す。
【
図5】
図5は、ダロキュアTPOの紫外−可視プロットを示す。
【
図6】
図6は、イルガキュア819の紫外−可視プロットを示す。
【
図7】
図7は、UVトラックシステムの特定の入力の線速度を示す。
【
図8】
図8は、低速域を拡大したUVトレースシステムを示す。
【
図9】
図9は、395nmで露光した高レベルのダロキュアTPOの床構築を示す。
【
図10】
図10は、Digital Light Labの365nmの光源を25%の入力レベルで用いて露光した種々のフォトポリマー組成物のSEM像を示す。
【
図11】
図11は、UV Process Supplyの395nmの光源を用いて露光した種々のフォトポリマー組成物のSEM像を示す。
【
図12】
図12は、UV Process Supplyの415nmの光源を用いて露光した種々のフォトポリマー組成物のSEM像を示す。
【
図13】
図13は、365nmの光源と395nmの光源とを混合で用いて露光した種々のフォトポリマー組成物のSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明者らは、レリーフ像印刷要素中の印刷ドットの形状及び構造が、実現しようとするレリーフ像印刷要素の印刷に大きな影響を与えることを見出した。
【0027】
一方で、本発明者らはまた、紫外線LED装置を用いて、印刷ドットの形状及び構造が変更又は調整され得ることを見出した。より具体的には、発明者らは、紫外線LED装置を使用して、得られる印刷ドットのドット角度を制御することが可能であることを見出した。
【0028】
個々の紫外線LED装置は、異なる波長で動作させることができることを理解されたい。また、紫外線LED装置から放射するUV光は、特定の1つの波長にピークを有する、しばしばスペクトルエネルギー分布と呼ばれる波長の範囲に渡ることを理解されたい。例えば、紫外線LED装置は、とりわけ、365nm、375nm、385nm、395nm、405nm及び415nmの波長で利用可能である。
【0029】
本発明は、一般的に、製版工程中に感光性印刷ブランク中に作製される複数のレリーフ印刷ドットの形状を調整する方法であって、前記感光性印刷ブランクは、バッキング層上に配置された少なくとも1つの光硬化性層を含み、
a)前記少なくとも1つの光硬化性層を化学線源に選択的に露光して前記少なくとも1つの光硬化性層を選択的に架橋及び硬化させる工程と、
b)露光された前記感光性印刷ブランクを現像してその中のレリーフ像を露呈する工程であって、前記レリーフ像は複数の前記レリーフ印刷ドットを含む工程と、を含み、
前記化学線源は、紫外線LED光装置の配列を含み、前記紫外線LED光装置の配列の使用が、前記レリーフ印刷ドットの頂部の所望の平坦性、前記レリーフ印刷ドットの所望のショルダー角、及び前記レリーフ印刷ドットの所望のエッジ鮮明度からなる群から選択される少なくとも1つの幾何学的特性を有する前記レリーフ印刷ドットを製造することを特徴とする方法に関する。
【0030】
少なくとも1つの光硬化性層は、前記少なくとも1つの光硬化性層を埃から保護してその取扱容易性を高める薄層であるスリップフィルムで被覆することができる。従来の(「アナログ」)製版工程においては、スリップフィルムは、UV光を透過し、プリンタがスリップフィルム層上にネガを配置する。次いで、少なくとも1つの光硬化性層及びネガを含む版が、ネガを介してUV光により大露光される。光に露光された領域は、硬化(cure)又は硬化(harden)し、未露光領域を除去して(現像して)刷版にレリーフ像を作製する。或いは、少なくとも1つの光硬化性層上にネガを直接配置することができる。
【0031】
或いは、「デジタル」即ち「直接刷版」工程においては、少なくとも1つの光硬化性層は、マスキング層でコーティングされており、これは放射線不透過性材料を含むように改変されたスリップフィルムであってもよい。この場合、レーザが、電子データファイルに格納された画像によって導かれ、マスキング層にその場(in situ)「ネガ」を作製するために使用される。レーザアブレーション可能な層の部分は、マスキング層を選択された波長及びパワーのレーザでレーザ放射線に露光することによってアブレーションされる。次いで、その上にその場ネガを有する少なくとも1つの光硬化性層が、その場ネガを介してUV光により大露光される。光に露光された領域は、硬化(cure)又は硬化(harden)し、未露光領域を除去して(現像して)刷版にレリーフ像を作製する。化学線源への選択的な露光は、アナログ方式又はデジタル方式のいずれかを用いて行うことができる。
【0032】
紫外線LED装置は、ランダムに、混合様式で、又は連続した列で配置することができる。例えば、列を成した紫外線LED装置においては、最初の紫外線LED装置は395nmの光を放射可能であり、次の紫外線LED装置は365nmの光を放射可能であり、次の紫外線LED装置は415nmの光を放射可能である等、その他もろもろであり、列全体でこのパターンを繰り返す。次の列とその次以降の列とは、同じパターン、又は異なるパターンを有することができる。或いは、異なる波長の光を放射する紫外線LED装置を有する次の列と共に、列を成した紫外線LED装置の全てが同じ波長の光(即ち、365nm、395nm、415nm)を発することができる等、その他もろもろであり、残りの列についてはそのパターンが繰り返される。パターン又は順序は、変更することもできる。
【0033】
好ましい実施形態では、紫外線LED光装置の配列は、少なくとも4つの列を含む。4列の電球の配列では、第1及び第3の列は365nmとすることができ、第2及び第4の列は395nmとすることができる。各波長は、従って、強度を独立して調節する能力を有するであろう独立した回路に関連しており、ユーザによるドット形成のカスタマイズを許容する。一実施形態では、紫外線LED光源の配列は、2つが交互になった50の列に配置することができる。
【0034】
本発明者らは、紫外線LED光装置の角度と紫外線LED光装置の波長との両方を変化させることで、所望の幾何学的特性を有するレリーフ印刷ドットを生成することができることを見出した。
【0035】
好ましい一実施形態では、紫外線LED光装置の配列における紫外線LED光源の交互の列は、異なる波長を有していてもよい。これらの波長は、紫外又は近紫外の範囲、好ましくは約320nm〜約420nmの範囲、より好ましくは約360nm〜約420nmの範囲で動作することができる。
【0036】
例えば、ある光硬化性配合物については、365nmの波長の光源によって鋭角のドットが得られ、395nmの波長の光源によって広い角度のドットが得られることが分かった。365nmの紫外線LED光源と395nmの紫外線LED光源との両方の組合せを用いることによって、2つの個別の光源のほぼ中間のドット形状を得ることが可能であることが分かった。従って、好ましい一実施形態では、紫外線LED光装置の交互の列は、365nm及び395nmの波長で動作する。但し、他の好適な波長の紫外線LED光装置、及びその組合せもまた、本発明の実施において使用することができる。また、更なる制御を提供してレリーフ印刷ドットの幾何学的特性をより厳密にカスタマイズするために、各々の紫外線LED光装置の光強度もまた制御可能である。
【0037】
或いは、交互の列の異なる波長の紫外線LED装置とは対照的に、紫外線LED光装置の配列は、例えば、365nm、395nm、及び415nmの少なくともいずれかを含む異なる波長の紫外線LED装置のランダムなパターンで配置されている。
【0038】
少なくとも1つの光硬化性層は、既知のフォトポリマー、モノマー、開始剤、反応性希釈剤又は非反応性希釈剤、フィラー、及び染料のいずれかを含むことができる。一実施形態では、少なくとも1つの光硬化性層は、紫外線LED光装置の動作波長に近い、又はその範囲の紫外−可視吸収ピークを有する光開始剤を含む。
【0039】
別の好ましい実施形態では、紫外線LED光装置の交互の列は、光が少なくとも1つの光硬化性層に影響を与えるように計算された、異なる角度の光を有するように配置される。従って、印刷ドットの形状及び角度を効果的に制御するために、異なる角度の光と単一波長とを用いることができる。例えば、紫外線LED光装置の交互の列は、平行紫外線LED光装置と非平行紫外線LED光装置とを含むことができる。別の実施形態では、紫外線LED光装置の交互の列は、コリメーションの異なる角度を含み、これによって交互の列が少なくとも1つの光硬化性層に異なる角度で照射することができる。
【0040】
最後に、印刷ドットの形状及び角度を制御するために、異なる波長の紫外線LED光源と異なる角度の光との組合せを用いることができる。
【0041】
図1に示すように、ドットの頂部の平坦性は、ドットの頂部を横切る曲率半径r
tとして測定することができる。印刷面とドットとの間の接触面の大きさは、印刷圧力とともに指数関数的に変化するため、印刷の観点からは丸いドット表面は理想的ではないことに留意されたい。従って、ドットの頂部は、好ましくは、ドット頂部の曲率半径がフォトポリマー層の厚みよりも大きい平坦性を有し、より好ましくは、ドット頂部の曲率半径がフォトポリマー層の厚みの2倍よりも大きい平坦性を有し、最も好ましくは、ドット頂部の曲率半径がフォトポリマー層の厚みの3倍よりも大きい平坦性を有する。
【0042】
ドットのショルダーの角度は、図
3に示すように、ドットの頂部と側面とによって形成される角度θとして定義される。極端な場合、垂直な円柱は、90°のショルダー角を有するであろうが、実際には、殆どのフレキソドットは、より小さな角度、多くの場合90°よりも45°に近い角度を有する。
【0043】
50°より大きいドットのショルダー角が、階調範囲を通して好ましい。図
3に示すように、本明細書で使用されるドットのショルダー角とは、ドットの頂部に接する水平線と、隣接するドットの側壁を表す線との交点により形成される角度を意味する。
【0044】
図
2に示すように、エッジ鮮明度は、平坦なドット頂部とショルダーとの間に明確に定義された境界の存在に関し、一般的には、ドットのエッジが鋭く明確であることが好ましい。これらのはっきりしたドットのエッジは、ドットの「支持」部から「印刷」部を良好に分離し、印刷の間にドットと基板との間の接触面積をより着実なものとさせることを可能にする。
【0045】
図
2に示すように、エッジ鮮明度は、(ドットのショルダーと頂部との交点における)曲率半径r
eの、ドットの頂部、即ち印刷面の幅pに対する比として定義することができる。真円状の先端を有するドットでは、一般的に理解される意味でのエッジが実際には存在せず、r
e:pの比が50%に近づくため、正確な印刷面を定義することが困難である。対照的に、鮮明なエッジのドットは、非常に小さな値のr
eを有し、r
e:pはゼロに近づく。実際には、r
e:pは5%未満が好ましく、r
e:pは2%未満が最も好ましい。図
2は、フレキソドット及びそのエッジを示しており、pは、ドットの頂部の直径であってエッジ鮮明度r
e:pの特徴付けを示しており、r
eは、ドットのショルダーと頂部との交点における曲率半径である。
【0046】
また、本明細書に記載の本発明の利点の1つは、バンプ露光を行う必要がないことである。バンプ露光では、版が高強度の主線量の化学線に曝される前に、少なくとも1つの光硬化性層を感作するために低強度「前露光」の線量の化学線が使用される。バンプ露光は、版の全体領域に適用される、酸素の濃度を減少させる版の短時間の低線量の照射であり、印刷要素の重合を阻害して微細な特徴(即ち、ハイライトドット、細線、孤立したドット等)の保存に役立つ。しかしながら、該前露光工程はまた、陰影色調の塗り潰れを引き起こし、それによって画像のハーフトーンの階調範囲を減少させる可能性がある。従って、本発明者らは、紫外線LED光装置の配列の使用が、バンプ露光を行う必要なく、好ましい結果を提供することを見出した。
[実施例I]
【0047】
種々の光開始剤を含む光硬化性組成物を評価して、各々が2つの波長(365nm及び395nm)の光源とどの様に相互作用するのか調べるために、研究を行った。驚くべきことに、395nmの光源と365nmの光源との両方が、中間から広いドットを生成することが分かった。
【0048】
UV Process Supply, Inc.から入手可能な、365nm、395nm、及び415nmの波長を有し、それぞれ約10mW〜30mWの強度を有する3つの紫外線LED装置ユニットを試験した。また、365nmの波長、及び約175mWの強度を有する、Digital Light Labs, Inc.から入手可能なユニットについても試験した。
【0049】
365nm付近にピークを有する光開始剤を用いて、光硬化性シートのポリマー刷版ブランクの種々の配合物を調製した。好適な光開始剤の一例は、Ciba Specialty Chemicals, Inc.からイルガキュア651の商標名で入手可能な2,2−ジメトキシ−1,2−ジ(フェニル)エタノンである。
【0050】
3段階に濃度を増加させたイルガキュア651の紫外−可視スペクトルを、
図4に示す。
【0051】
図4において観察されるように、イルガキュア651は、250nm及び340nmに吸収ピークを有する。参考までに、UV Process Supply, Inc.から入手可能な395nmのLED装置の紫外−可視スペクトルは、非常に狭い帯域幅を有しており、これは紫外線LED光源の典型である。このため、395nmの光源はイルガキュアI−651に使用可能な範囲外であると見なす人もいるかもしれない。しかしながら、イルガキュアI−651を含むフォトポリマー配合物は、395nmの光源を用いて極めて良好に硬化される。UV Process Supply, Inc.の365nmのLED光源の帯域幅もまた、非常に狭い。
【0052】
より長い波長で開始することが公表されている2つの市販のタイプの光開始剤は、モノアシルホスフィン(MAPO)、及びビスアシルホスフィン(BAPO)である。MAPO光開始剤としては、ダロキュアTPOの商標名でBASFから市販されているジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシドが挙げられる。BAPO光開始剤としては、イルガキュア819の商標名でBASFから市販されているフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが挙げられる。ダロキュアTPO、及びイルガキュア819の紫外−可視プロットを、
図5及び
図6に示す。MAPOの吸収ピークは、295nm、368nm、380nm、及び393nmである。BAPOの吸収ピークは、295nm及び370nmである。より長い波長で開始することが公表されている他の光開始剤としては、イルガキュア784の商標名でBASFから市販されており、398及び470に吸収ピークを有するメタロセンである、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−)−1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタンが挙げられる。
【0053】
MAPOとBAPOとの間の主な違いは、活性化された際にBAPOは1分子につき2つのラジカルを生成するのに対して、MAPOは1分子につき1つのラジカルのみを生成することである。MAPO及びBAPOに加え、イルガキュア651(α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン)、イルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、及びイルガキュア369(2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)−1−プロパノン)の更に3つの一般的な紫外光開始剤を調べた。
【0054】
表1は、紫外線LEDの用途を調べるために用いた、レリーフ像刷版の調製において感光性配合物を架橋及び硬化させるための、種々の高レベル及び低レベルの開始剤配合物を記載している。
【0055】
【表1】
(種々の光開始剤を含有する感光性配合物)
【0056】
高レベルのイルガキュア369及び高レベルのイルガキュア819は完全に溶解しなかったために行わなかった点を除き、各光開始剤は、感光性配合物中に0.5%及び2.0%のレベルで構成した。全ての版を調製した後、表2に記載するように、標準的なクラムシェル型露光装置(365nmの蛍光管)を用いて、それらの背面露光硬化速度を測定した。
【0057】
【表2】
(種々の光開始剤を含む感光性配合物の背面露光硬化速度)
【0058】
45Gのシート状の版については、目的とする床は25mil〜30milであった。いずれのレベルのイルガキュアI−184も、クラムシェルで4分間後に何ら床は得られなかった。25milの床を得るためには、高レベルのイルガキュアI−184で十分な10分間が必要であった。但し、イルガキュア184による床の硬化の不良は、主に使用されたPETによるものであることが後に判明した。低UV吸収のPETを用いた場合、イルガキュア184は、容易に床を硬化させた。
【0059】
幾つかの光開始剤が、一般的に刷版配合物に使用されるイルガキュアI−651よりも実質的に高速で床を構築したことは、興味深い点であった。高レベルのダロキュアTPOは、低レベルのダロキュアTPOよりも低速で床を形成することが認められ、これは、開裂したダロキュアTPO分子による吸収が原因である可能性がある。版は、045Gの厚みでDTF628ポリエチレンテレフタレート(PET)上に作製した。DTF628PETは、365nmの光の多くを吸収するので、異なるPETの使用は、より高速で床を構築することができると考えられる。
【0060】
次いで、予め硬化させた床を有するデジタルアブレーションした版を、非常に遅い動作速度では非常に安定であるように設計された紫外線トラックシステム上の種々の紫外線LED光源下に配置した。特定の割合の入力についての線速度のグラフを描き、
図7及び
図8に示した。
【0061】
プロットにおいて観察され得るように、速度は、20%の入力から80%の入力まで実質的に線形である。順方向は、最速で約4.2フィート/分である。最高速度は約7フィート/分であり、戻り(逆)方向において生じるが、調節できない。この研究の目的のために、0.13フィート/分(10%の入力)の線速度を選択した。出力は制限せず、光源から版面までの高さは0.5インチに設定した。
【0062】
図9は、UV Processの395nmのLED光源と組み合わせた、高レベルTPO配合物を用いた床の構築プロファイルを示す。紫外線トラックシステムは特定の設定で実行し、版は溶剤中で処理(即ち現像)した。
【0063】
図10は、Digital Lightの365nmのユニットと、試験した各々の光開始剤配合物との組合せからの、ドットのSEM画像を示している。
【0064】
図から分かるように、試験した配合物の幾つかは、365nmの光源下で優れたドット形状を示した。低レベルのイルガキュアI−189配合物は、平坦なドットを形成し始めているが、イルガキュアI−651、ダロキュアTPO、及びイルガキュアI−369の配合物は、頂部が真に平坦なドットを示した。評価した低レベルの各々の光開始剤配合物は、標準的な丸みを帯びたデジタルドットの形成を示した。イルガキュアI−651のドットは、電柱の様であったが、ダロキュアTPO、及びイルガキュアI−369の配合物は、印刷が良好であろうと思われた。
【0065】
図11は、UV Processの395nmの光ユニットを用いて硬化した種々の配合物のドットのSEM画像を示す。
【0066】
イルガキュアI−184及びイルガキュアI−651の配合物は、何らドットを保持することができなかったため、表示していない。395nmの光源を用いたドット形成に最も有望な配合物は、光開始剤として、ダロキュアTPO及びイルガキュアI−369を含んでいた。
【0067】
しかしながら、
図12に示すように、TPO配合物のみ、UV Processの415nmのLED装置によって好ましいドットを形成することが観察された。
【0068】
最良のドット形成は、365nmではイルガキュアI−651及びダロキュアTPOの光開始剤であり、395nmではダロキュアTPO光開始剤であった。従って、一連の露光配列において、2つの波長の組合せを試みることにした。高レベルのダロキュアTPO配合物は、最初に1つの波長により硬化させ、次いで直後に他の波長により硬化させた。次いで光源の順序を切り替え、高レベルのダロキュアTPOで再び実行した。
【0069】
図
13は、これらの光とダロキュアTPOとの組合せの結果を示している。なお、クラムシェル露光のような個々の波長の実行を、比較のために示す。結果は、ドットが2つの個々の露光の平均の幅であったことを示している。従って、紫外線LED装置の配列の特定の設計を、特定のドット形成のために最適化することができることが分かる。
【0070】
395nmの波長ではドット形成が見られなかったため、ドット形状を調整するために395nmの波長に対して高比率の365nmを使用することも可能であると考えられるが、イルガキュアI−651配合物は実行しなかった。
【0071】
驚くべきことに、ダロキュアTPOと波長365nmのLED光源とで最良のドット形成が生じることを発見した。もう一つの驚きは、イルガキュアI−369光開始剤が、365nmのLED光源で良好に働いたことであった。
【0072】
結果は、混合波長の使用によって影響を最小限に抑えることができることを示した。即ち、2種の異なる光源を連続で使用する代わりに、異なる波長の電球が配列全体に分散されるように光源を構成することができる。
【0073】
例えば、紫外線LED光装置は、4列の電球として配列された配列を含むことができる。配列の第1及び第3の列は365nmとすることができ、配列の第2及び第4の列は395nmとすることができる。従って、各波長は、強度を独立して調節する能力を有するであろう独立した回路に関連しており、ユーザによるドット形成にカスタマイズされうる。