特許第6084708号(P6084708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6084708抗IL−17A抗体ならびに自己免疫性および炎症性障害の処置におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084708
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】抗IL−17A抗体ならびに自己免疫性および炎症性障害の処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20170213BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170213BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170213BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20170213BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20170213BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20170213BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20170213BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 17/06 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 11/06 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20170213BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20170213BHJP
【FI】
   C07K16/24ZNA
   A61K39/395 U
   !C12N15/00 A
   !C12N5/10
   !C12N1/21
   !C12N1/19
   !C12N1/15
   !C12P21/08
   !A61P37/02
   !A61P19/02
   !A61P29/00 101
   !A61P11/00
   !A61P17/06
   !A61P13/12
   !A61P11/06
   !A61P25/00
   !A61P1/04
【請求項の数】20
【全頁数】150
(21)【出願番号】特願2015-556599(P2015-556599)
(86)(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公表番号】特表2016-508508(P2016-508508A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】IB2014058854
(87)【国際公開番号】WO2014122613
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】61/762,406
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディ パドバ,フランコ,イー.
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロンドー,ジャン−ミッチェル,レネ
【審査官】 長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−540824(JP,A)
【文献】 特表2009−519348(JP,A)
【文献】 特表2010−500028(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/053763(WO,A1)
【文献】 Eur. J. Immunol.,2006年,Vol.36,pp.2868-2874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域(V)を含み、
a.ここで、前記Vは、順番に、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載の3つの相補性決定領域(CDR)を含み、かつ、前記Vは、順番に、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載の3つのCDRを含むか;または
b.ここで、前記Vは、順番に、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載の3つのCDRを含み、かつ、前記Vは、順番に、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載の3つのCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分であって、VおよびVを含み、
ここで、前記Vは、配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含み、かつ、前記Vは、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Kabatの定義に従って説明される、請求項2に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Chothiaの定義に従って説明される、請求項2に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記Vは、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、前記Vは、配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
ヒト抗体またはその抗原結合部分、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、キメラ抗体またはその抗原結合部分、ヒト化抗体またはその抗原結合部分、F(ab’)フラグメント、FabフラグメントあるいはFvフラグメントである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
ヒト抗体である、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
ヒトIL−17Aに対する結合親和性がBiacoreアッセイにより測定した場合、200pM未満である、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
ヒトIL−17Aに対する結合親和性がBiacoreアッセイにより測定した場合、100pM未満である、請求項8に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて、請求項6に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分を含む、医薬組成物。
【請求項11】
ヒトホモ二量体IL−17Aおよびヒトヘテロ二量体IL−17AFに結合する単離された抗体であって、重鎖および軽鎖を含み、
ここで、前記重鎖は、配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含み、かつ、前記軽鎖は、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRを含む、単離された抗体。
【請求項12】
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号7、配列番号8、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号42、配列番号23、配列番号11に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Kabatの定義に従って説明される、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項13】
配列番号12に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号1、配列番号2、配列番号3に記載されたものであり、かつ、配列番号43に記載のアミノ酸配列の3つのCDRが、アミノ酸配列として配列番号41、配列番号5、配列番号6に記載されたものであり、
さらに、前記CDRは、Chothiaの定義に従って説明される、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項14】
前記重鎖は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むVおよび配列番号43に記載のアミノ酸配列を含むVを含む、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項15】
前記重鎖は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、かつ、前記軽鎖は、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項16】
ヒト抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項17】
ヒト抗体である、請求項16に記載の単離された抗体。
【請求項18】
ヒトIL−17Aに対する結合親和性(K)がBiacoreアッセイにより測定した場合、200pM未満である、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項19】
ヒトIL−17Aに対するKがBiacoreアッセイにより測定した場合、100pM未満である、請求項11に記載の単離された抗体。
【請求項20】
1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて、請求項1〜5または請求項11〜19に記載の単離された抗体またはその抗原結合部分を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2013年2月8日に出願されたUS61/762406の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、IL−17Aに特異的に結合する抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質に関する。本開示は、より具体的には、IL−17Aの効果を阻害し、IL−17Aにより誘導される活性を阻害することができる特異的抗体およびタンパク質、ならびに前記抗体およびタンパク質を使用して、例えば、IL−17Aシグナリング(signaling)の阻害により処置することができる病理学的障害、例えば、自己免疫性および炎症性障害、例えば、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、多発性硬化症、または慢性閉塞性肺疾患、喘息もしくは嚢胞性線維症を処置する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
インターロイキン−17A(IL−17AはIL−17と呼ばれることもある)は、炎症性T細胞の新しく定義されたサブセット、Th17細胞により生成される中心的なリンホカインである。いくつかの動物モデルにおいて、これらの細胞は、様々な自己免疫性および炎症性プロセスにとって極めて重要である。IL−17Aレベルの増加は、ブドウ膜炎(Ambadi-Obi, et al 2007, Nature Med; 13:711-718)、関節リウマチ(RA)、乾癬、気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、同種移植片拒絶、がん、腹腔内膿瘍および癒着、ならびに多発性硬化症(Weaver, et al 2007, Annu Rev Immunol; 25:821-852;Witowski et al 2004, Cell Mol Life Sci; 61:567-579)と関連してきた。Th17細胞は好中球により支配される炎症応答を迅速に開始させることができる(Miossec, et al 2009, NEJM; 361:888-98)。
【0004】
IL−17Aは、げっ歯類のT細胞ハイブリドーマに由来する転写物から元々同定されたものである。それはIL−17ファミリーと呼ばれるサイトカイン群の基本メンバーである。げっ歯類においてはCTLA8として知られ、IL−17AはTリンパ球向性ラジノウイルスヘルペスウイルスサイミリ(Rouvier E, et al 1993, J. Immunol. 150: 5445-56)のオープンリーディングフレームによりコードされるウイルスIL−17Aに対する高い相同性を示す。
【0005】
IL−17Aは、インターフェロンガンマと同様、様々な組織におけるケモカイン生成を増加させることによって遅延型反応における強力なメディエータとして作用し、単球および好中球を炎症部位に動員するサイトカインである。IL−17ファミリーは、細胞外病原体による免疫系の侵入に応答し、病原体の細胞マトリックスの破壊を誘導する炎症促進性サイトカインの役割において機能する。IL−17Aは、腫瘍壊死因子およびインターロイキン−1と相乗的に作用する(Miossec P, et al 2009, N. Engl. J. Med. 361:888-98)。
【0006】
その機能を惹起するために、IL−17Aは、IL−17Rと呼ばれるI型細胞表面受容体に結合し、少なくとも2つのバリアント、IL−17RAおよびIL−17RCが存在する(Pappu R, et al 2012, Trends Immunol.; 33:343-9)。IL−17RAは、IL−17A、IL−17AFおよびIL−17Fに結合し、複数の組織:血管内皮細胞、末梢性T細胞、B細胞系列、線維芽細胞、肺、骨髄単球、および骨髄間質細胞において発現される(Kolls JK, Linden A 2004, Immunity 21:467-76; Kawaguchi M, et al 2004, J. Allergy Clin. Immunol. 114:1265-73; Moseley TA, et al 2003, Cytokine Growth Factor Rev. 14:155-74)。
【0007】
IL−17Aに加えて、IL−17ファミリーのメンバーとしては、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E(IL−25とも呼ばれる)、およびIL−17Fが挙げられる。IL−17ファミリーの全てのメンバーは、類似するタンパク質構造を有し、その三次元形状にとって重要である4つの高度に保存されたシステイン残基を有する。系統発生分析により、IL−17ファミリーメンバーのうち、IL−17Fアイソフォーム1および2(ML−1)がIL−17Aに対する最も高い相同性を有し(それぞれ、IL−17Aに対する55%および40%のアミノ酸同一性を有する)、次いで、IL−17B(29%)、IL−17D(25%)、IL−17C(23%)に対する相同性を有し、IL−17EがIL−17Aとの関連が最も遠い(17%)ことが示される。これらのサイトカインは全て、哺乳動物において良好に保存され、62〜88%ものアミノ酸がヒトとマウス相同体間で保存されている(Kolls JK, Linden A 2004, Immunity 21:467-76)。
【0008】
IL−17Aは、35kDaの分子量を有する、ジスルフィド結合したホモ二量体の分泌糖タンパク質である155アミノ酸のタンパク質である(Kolls JK, Linden A 2004, Immunity 21:467-76)。IL−17Aの構造は、シグナルペプチド、次いで、IL−17ファミリーに特徴的なアミノ酸領域からなる。タンパク質上のN結合グリコシル化部位は、タンパク質の精製後に初めて同定され、標準的なSDS−PAGE分析において2つのバンド、一方は15kDaおよび他方は20kDaを示した。IL−17ファミリーの異なるメンバーの比較は、2つのジスルフィド結合を形成する4つの保存されたシステインを示した(Yao Z, et al 1995, J. Immunol. 155:5483-6)。IL−17は、それが他の公知のインターロイキンとの類似性を有さない点でユニークである。さらに、IL−17は、他のいかなる公知のタンパク質または構造ドメインに対しても類似性を有さない(Kolls JK, Linden A 2004, Immunity 21:467-76)。一般に、IL−17FなどのIL−17ファミリーの他のメンバーは、ホモ二量体を形成する(IL−17Aと同様)。
【0009】
IL−17Aはまた、ある特定の環境下ではIL−17Fとヘテロ二量体を形成することも知られている。また、ヘテロ二量体IL−17AFも、IL−23による刺激後にTh17細胞により生成される。
【0010】
IL−17AFは、IL−17AおよびIL−17Fと同様、IL−17RAおよびIL−17RC受容体を介してシグナルを伝達すると考えられる。IL−17AFの生物学的機能は、IL−17AおよびIL−17Fのそれと類似する。IL−17AFによる標的細胞の刺激は、適切な環境においては気道好中球増加に加えて、様々なケモカインの生成を誘導する。IL−17AFは、ホモ二量体IL−17Aよりもこれらの活性においてあまり強力ではないが、ホモ二量体IL−17Fよりは強力であると考えられる。例えば、IL−17Aの効力が1である場合、IL−17AFの相対効力は、IL−17Aのそれの約1/10であり、IL−17Fの相対効力は、IL−17Aのそれの約1/100である。ヒトおよびマウスIL−17AFは両方とも、マウス細胞に対する活性を示す。IL−17AFは、合計271個のアミノ酸からなり、約30.7kDaの分子量を有する(Shenandoah BiotechnologyからのヒトIL−17AFヘテロ二量体の製品説明からのデータ)。
【0011】
いくつかの関連する結晶構造が公開されている。これらのものは、ホモ二量体IL−17Fの結晶構造を含む(Hymowitz et al 2001, EMBO J, 19:5332-5341)。
【0012】
受容体IL−17RAとの複合体にあるIL−17Fの結晶構造も公開されている(Ely et al., 2009 Nature Immunology 10:1245-1251)。さらに、抗体のFab断片との複合体にあるIL−17Aの少なくとも1つの結晶構造が公開されている(Gerhardt et al., 2009 Journal of Molecular Biology, 5:905-921)。
【0013】
乾癬を含むいくつかの炎症疾患および自己免疫疾患は、Th1および/またはTh17応答の増悪と関連する。それらの多くは現在、一般的な免疫抑制剤または抗TNF−α抗体などの非常に選択的に作用する生物製剤のいずれかを用いて処置されているが、全ての患者において有効であるわけではない。これらのものは感染の危険性を増大させ、反復処置の後に無効になることがわかった。したがって、高い安全性プロファイルおよび前記疾患の長期的寛解または治癒を誘導する同時的能力を有する処置に関する満たされない医学的要求がある。
【0014】
いくつかの免疫調節機能がIL−17ファミリーのサイトカインについて報告されており、それは多くの免疫シグナリング分子のその誘導によるものと推測される。IL−17Aの最も重要な役割は、炎症促進性応答の誘導および媒介におけるその関与である。IL−17Aはまた、アレルギー応答とも関連する。IL−17は、多くの細胞型(線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、およびマクロファージ)からの、他の多くのサイトカイン(IL−6、G−CSF、GM−CSF、IL−1β、TGF−β、TNF−αなど)、ケモカイン(IL−8、GRO−α、およびMCP−1など)、ならびにプロスタグランジン(例えば、PGE2)の生成を誘導する。サイトカインの放出は、IL−17A応答に特徴的な、気道再モデリングなどの多くの機能を引き起こす。ケモカインの発現の増加は、好中球などの他の細胞を誘引するが、好酸球は誘引しない。IL−17機能は、ヘルパーT細胞17(Th17)と呼ばれるCD4+T細胞のサブセットにとっても必須である。これらの役割の結果として、IL−17ファミリーは、関節リウマチ、喘息、狼瘡、同種移植片拒絶および抗腫瘍免疫などの多くの免疫/自己免疫関連疾患と関連している(Aggarwal S, Gurney AL 2002, J. Leukoc. Biol. 71:1-8)。さらに、関連は、変形性関節症、敗血症、敗血性または内毒素性ショック、アレルギー反応、骨量低下、乾癬、虚血、全身性硬化症、線維症、および脳卒中などのさらなる状態に引きつけられる。
【0015】
かくして、IL−17Aの効果に拮抗し、そして、IL−17Aにより誘導される活性を阻害することができる特異的抗体、ならびに、特に、前記抗体を使用して、IL−17Aシグナリングの阻害により処置することができる病理学的障害を処置する組成物および方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
したがって、一態様において、本開示は、配列番号7、配列番号8および配列番号3によりコードされる配列に対する少なくとも95%の同一性を有するCDRアミノ酸配列、ならびに配列番号42、配列番号23および配列番号11によりコードされる配列に対する少なくとも64%の同一性を有するCDRアミノ酸配列を含む、単離された抗体または抗体の抗原結合部分を含むタンパク質を提供し、ここで、前記抗体または分子は、ホモ二量体IL−17Aおよびヘテロ二量体IL−17AFに特異的に結合するが、ホモ二量体IL−17Fには特異的に結合しない。
【0017】
一実施形態においては、IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fは、カニクイザル(cynomolgus monkey)、アカゲザル(rhesus macaque monkey)、マーモセット、ラット、マウスまたはヒトの2種または3種またはそれ以上などの、1種または複数から選択される。1つの特定の実施形態においては、IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fは、ヒト由来である。1つの特定の実施形態においては、IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fは、ヒトおよびマウス由来である。1つの特定の実施形態においては、IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fは、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウスおよびヒト由来である。
【0018】
1つの特定の実施形態においては、本開示の単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号43に対する少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態においては、単離された抗体は、配列番号14に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号44に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
一実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、a)第1の可変アミノ酸がGly(G)およびVal(V)からなる群から選択され、第2の可変アミノ酸がTyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)からなる群から選択され、第3の可変アミノ酸がTrp(W)およびSer(S)からなる群から選択され、第4の可変アミノ酸がGlu(E)およびAla(A)からなる群から選択される、配列番号73の軽鎖CDR1ドメイン;
b)可変アミノ酸がAsn(N)およびGln(Q)からなる群から選択される、配列番号74の軽鎖CDR2ドメイン;ならびに
c)可変アミノ酸がAsn(N)およびAsp(D)からなる群から選択される、配列番号75の軽鎖CDR3ドメイン
からなる群から選択されるCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域を含む。
【0020】
一実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、順番に(in sequence)、a)配列番号7、配列番号8および配列番号3を含む重鎖CDRと、順番に、b)配列番号42、配列番号23および配列番号11、c)配列番号42、配列番号10および配列番号11、d)配列番号34、配列番号23および配列番号11、e)配列番号22、配列番号23および配列番号24、またはf)配列番号9、配列番号10および配列番号11を含む軽鎖CDRとを含む。
【0021】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、重鎖CDR(順番に、配列番号7、配列番号8および配列番号3)と、軽鎖CDR(順番に、配列番号42、配列番号23および配列番号11)とを含む。
【0022】
別の特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、重鎖CDR(順番に、配列番号7、配列番号8および配列番号3)と、軽鎖CDR(順番に、配列番号42、配列番号10および配列番号11)とを含む。
【0023】
別の特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、重鎖CDR(順番に、配列番号7、配列番号8および配列番号3)と、軽鎖CDR(順番に、配列番号34、配列番号23および配列番号11)とを含む。
【0024】
別の特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、重鎖CDR(順番に、配列番号7、配列番号8および配列番号3)と、軽鎖CDR(順番に、配列番号22、配列番号23および配列番号24)とを含む。
【0025】
別の特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、重鎖CDR(順番に、配列番号7、配列番号8および配列番号3)と、軽鎖CDR(順番に、配列番号9、配列番号10および配列番号11)とを含む。
【0026】
一実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、a)配列番号12を含む免疫グロブリン重鎖と、b)配列番号43、c)配列番号53、d)配列番号35、e)配列番号25、またはf)配列番号13を含む免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0027】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号43に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0028】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号53に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0029】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号35に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0030】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号25に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0031】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号12に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号13に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0032】
一実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、a)配列番号14を含む免疫グロブリン重鎖と、b)配列番号44、c)配列番号54、d)配列番号36、e)配列番号26、またはf)配列番号15を含む免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0033】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号14に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号44に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0034】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号14に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号54に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0035】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号14に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号36に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0036】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号14に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号26に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0037】
1つの特定の実施形態においては、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号14に記載の免疫グロブリン重鎖と、配列番号15に記載の免疫グロブリン軽鎖とを含む。
【0038】
本開示の一態様においては、本開示の特定の実施形態による単離された抗体または分子と同じエピトープに結合する、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質が提供される。
【0039】
一実施形態において、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、Arg78、Glu80、およびTrp90を含む、ヒトIL−17AエピトープなどのIL−17Aエピトープに結合する。
【0040】
IL−17Aエピトープは、Tyr85またはArg124をさらに含んでもよい。
【0041】
一実施形態において、ヒトIL−17AエピトープなどのIL−17Aエピトープは、Pro82、Ser87またはVal88のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0042】
本開示の一態様においては、特定の実施形態による抗体または分子と同等(equivalent)のエピトープ認識特性を有する抗原認識表面を含む、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質が提供される。
【0043】
本開示の一態様においては、特定の実施形態による少なくとも1つの抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質により、ヒトIL−17AなどのIL−17A、またはヒトIL−17AFなどのIL−17AFへの結合から交差遮断(cross-blocked)される単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質が提供される。
【0044】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、a)ヒトIL−17Fホモ二量体、IL−17Bホモ二量体、IL−17Cホモ二量体、IL−17Dホモ二量体、IL−17Eホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/またはb)カニクイザルIL−17Fホモ二量体、マウスIL−17Fホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/またはc)IL−1、IL−3、IL−4、IL−6、IL−8、gIFN、TNFアルファ、EGF、GMCSF、TGFベータ2からなる群から選択された他のヒトサイトカインのいずれか1つもしくは複数、および/またはd)IL−1b、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12、IL18、IL23、IFNもしくはTNFからなる群から選択される他のマウスサイトカインのいずれか1つもしくは複数に特異的に結合しない。
【0045】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、ヒトIL−17AなどのIL−17Aに結合し、該抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質はIL−17Aとその受容体との間の結合を阻害または遮断し、そして、IL−17A活性を低下させるか、または中和する。
【0046】
一実施形態においては、ヒトIL−17Aに対する前記抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質の結合親和性は、Biacore(商標)により測定された場合、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下、または10pM以下である。特定の実施形態においては、ヒトIL−17Aに対する前記抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質の結合親和性は、Biacore(商標)により測定された場合、200pM未満、または100pM未満である。
【0047】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、in vitroで、好ましくは、培養軟骨細胞または線維芽細胞を用いて評価した場合、IL−6分泌、またはGRO−アルファ分泌を阻害することができる。
【0048】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、ラットAIAモデルなどのin vivoでの抗原誘導性関節炎実験モデルにおいて膝の腫れ(knee swelling)を阻害することができる。
【0049】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、さらなる活性部分にコンジュゲートされる。
【0050】
抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、モノクローナル抗体またはその抗原結合部分であってもよく、好ましくは、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体またはその部分であってもよい。
【0051】
本開示の態様においては、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて、本開示の実施形態による抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を含む医薬組成物が提供される。
【0052】
ある実施形態において、医薬組成物は、1つまたは複数のさらなる活性成分を含む。
【0053】
1つの特定の実施形態においては、前記医薬組成物は、凍結乾燥物(lyophilisate)である。別の特定の実施形態においては、医薬組成物は、好ましくは事前に充填された注射筒(シリンジ(syringe))として調製された、治療上許容される量の本開示の抗体または分子を含む液体製剤である。
【0054】
本開示はさらに、医薬としての使用のため、より好ましくは、IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−17Aシグナリング、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌の阻害により処置することができる病理学的障害の処置のための、本開示の前記抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質、特に、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5抗体の使用に関する。
【0055】
1つの特定の実施形態においては、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症、または嚢胞性線維症などの自己免疫性および炎症性障害の処置のために用いることができる。
【0056】
本開示の一態様においては、IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害の処置における使用のための医薬の製造における、本開示の前記抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質、特に、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5抗体の使用が提供される。
【0057】
1つの特定の実施形態において、IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症などの炎症障害または状態である。
【0058】
本開示の一態様においては、IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害を処置する方法であって、状態が軽減されるように、有効量の本開示による単離された抗体または分子、特に、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5抗体を投与する工程を含む前記方法が提供される。
【0059】
ある実施形態においては、状態は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症などの炎症障害または状態である。
【0060】
本開示はまた、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を生成するための手段にも関する。そのような手段は、本開示の抗体もしくはタンパク質の少なくとも重鎖および/もしくは軽鎖可変領域をコードする単離された核酸分子、または特に、宿主細胞中での、本開示による抗体もしくはタンパク質、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5の組換え生成のために、そのような核酸を含むクローニング発現ベクターを含む。特定の実施形態においては、そのようなクローニングまたは発現ベクターは、配列番号18、31、51、19、28、32、38、40、46、48、52、56および58からなる群から選択される少なくとも1つの核酸配列を含む。別の実施形態においては、それは、当業者には周知である好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、配列番号16、29、49、17、27、30、37、39、45、47、50、55および57からなる群から選択される可変重鎖および軽鎖配列のコード配列のうちの少なくとも1つを含む。
【0061】
ある実施形態において、核酸分子はメッセンジャーRNA(mRNA)である。
【0062】
本開示はさらに、上記の1つまたは複数のクローニングまたは発現ベクターを含む宿主細胞および本開示の抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質、特に、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の生成のためのプロセスであって、前記宿主細胞を培養する工程、前記抗体またはタンパク質を精製および回収する工程を含む前記プロセスに関する。
【0063】
定義
本開示をより容易に理解することができるように、ある特定の用語が最初に定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0064】
用語「免疫応答」とは、侵入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞、または自己免疫もしくは病的炎症の場合、正常なヒト細胞もしくは組織の、ヒト身体に対する選択的損傷、その破壊、またはそれからの除去をもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、および上記細胞または肝臓により生成される可溶性大分子(抗体、サイトカイン、および補体が挙げられる)の作用を指す。
【0065】
「シグナル伝達経路」または「シグナリング活性」とは、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達をもたらす、増殖因子の受容体への結合などのタンパク質間相互作用により一般に開始される生化学的因果関係を指す。一般に、伝達は、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における、1つまたは複数のタンパク質上の1つまたは複数のチロシン、セリン、またはトレオニン残基の特異的リン酸化を含む。最後から2番目のプロセスは、典型的には、遺伝子発現の変化をもたらす核事象を含む。
【0066】
天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖とを含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと省略される)と、重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと省略される)と、軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、Cを含む。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割することができ、VおよびV領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する。それぞれのVおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRと4つのFRとを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)などの宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0067】
本明細書で用いられる用語「相補性決定領域」および「CDR」とは、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の配列を指す。一般に、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDRが存在し(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDRが存在する(LCDR1、LCDR2、LCDR3)。
【0068】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界を、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(「Kabat」の番号付けスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(「Chothia」の番号付けスキーム)により記載されたものなどの、いくつかの周知のスキームのいずれかを用いて決定することができる。例えば、古典的形式について、Kabatの下では、重鎖可変ドメイン(VH)中のCDRアミノ酸残基は、31〜35(HCDR1)、50〜65(HCDR2)、および95〜102(HCDR3)と番号付けられる;軽鎖可変ドメイン(VL)中のCDRアミノ酸残基は、24〜34(LCDR1)、50〜56(LCDR2)、および89〜97(LCDR3)と番号付けられる。Chothiaの下では、VH中のCDRアミノ酸は、26〜32(HCDR1’)、52〜56(HCDR2’)、および95〜102(HCDR3’)と番号付けられる;VL中のアミノ酸残基は、26〜32(LCDR1’)、50〜52(LCDR2’)、および91〜96(LCDR3’)と番号付けられる。KabatとChothiaの両方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRは、ヒトVH中ではアミノ酸残基26〜35(HCDR1)、50〜65(HCDR2)、および95〜102(HCDR3)ならびにヒトVL中ではアミノ酸残基24〜34(LCDR1)、50〜56(LCDR2)、および89〜97(LCDR3)からなる。
【0069】
本明細書で用いられる場合、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗原部分」)という用語は、抗原(例えば、IL−17Aの部分)に特異的に結合する能力を保持する、タンパク質などの抗体の全長または1つもしくは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能を、全長抗体の断片により実行することができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)断片;VおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVおよびVドメインからなるFv断片;VドメインからなるdAb断片(Ward et al. 1989, Nature 341:544-546);ならびに単離された相補性決定領域(CDR)、またはそのような抗原結合部分を含む任意の融合タンパク質が挙げられる。
【0070】
したがって、用語「抗原結合部分」は、ラクダ科抗体または以下に記載のような「非抗体」分子などの、代替フレームワークまたは足場内に含まれていてもよい本開示の抗体に対応する部分を指してもよい。
【0071】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VおよびVは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、組換え方法を用いて、VおよびV領域が対形成して一価分子を形成する一本鎖タンパク質として作製することができるようにする合成リンカーにより連結することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al. 1988, Science 242:423-426;およびHuston et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者には公知の従来の技術を用いて得られ、その断片は無傷(インタクト(intact))抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0072】
本明細書で用いられる場合、「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、ヒトIL−17AなどのIL−17Aに特異的に結合する単離された抗体は、IL−17A以外の他の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、IL−17Aに特異的に結合する単離された抗体は、他の種に由来するIL−17A分子、またはIL−17AFなどのIL−17Aヘテロ二量体などの他の抗原に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0073】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0074】
IL−17Aの用語は、別途説明しない限り、配列番号76または配列番号78に定義されるヒトIL−17Aを指す。IL−17Fの用語は、別途説明しない限り、配列番号77に定義されるヒトIL−17Fを指す。IL−17AFは、当業者によって理解されるように、IL−17AサブユニットとIL−17Fサブユニットのヘテロ二量体である。異なる種に由来する、接頭辞「r」を用いて指定される組換えタンパク質を、以下に記載のアッセイにおいて用いた。例えば、組換えヒトIL−17Aは、rhuIL−17と指定される。当業者であれば、当技術分野で公知の出発材料および標準的なプロトコールを用いてそのようなタンパク質を発現させる方法を知っている。しかしながら、当業者を援助するために、別途記述しない限り、以下のアミノ酸配列を用いることができる:カニクイザル(cyno)IL−17A、配列番号79;cynoIL−17F、配列番号80;アカゲザル(rhesus)IL−17A、配列番号81;マーモセット(marmoset)IL−17A、配列番号82;マウス(m)IL−17A、配列番号83;mIL−17F、配列番号84、ラットIL−17A、配列番号85;ヒトIL−17受容体A(huIL−17RA)、配列番号86。当業者には公知の通り、上記配列はわずかに、すなわち、異なる集団群から生じるため、変化し得る。実施例において、例えば、スクリーニング目的で、ツール抗体も用いられる。そのような抗体は標準抗体であり、当業者であれば容易に取得することができる。
【0075】
用語「エピトープ」とは、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常は特異的三次元構造特性、ならびに特異的電荷特性を有する。立体エピトープと非立体エピトープは、後者ではなく前者への結合が、変性溶媒の存在下では失われる点で区別される。
【0076】
用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4などのIgG)を指す。アイソタイプはまた、改変型のこれらのクラスの1つも含み、ここで、改変はFc機能を変化させるため、例えば、エフェクター機能またはFc受容体への結合を増強または低下させるために作製されている。
【0077】
本明細書で用いられる用語「ヒト抗体」は、フレームワークとCDR領域の両方がヒト起源の配列から誘導される可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もまた、そのようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列、もしくは変異型のヒト生殖系列配列または例えば、Knappik, et al. 2000, J Mol Biol 296:57-86に記載のような、ヒトフレームワーク配列分析から誘導されるコンセンサスフレームワーク配列を含有する抗体から誘導される。
【0078】
「ヒト化」抗体は、ヒトにおける免疫原性が低いが、非ヒト抗体の反応性を保持する抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を保持し、抗体の残りの部分を、そのヒト対応物(すなわち、定常領域ならびに可変領域のフレームワーク部分)と置き換えることにより達成することができる。例えば、Morrison et al. 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855;Morrison and Oi, 1988, Adv. Immunol., 44:65-92;Verhoeyen et al. 1988, Science, 239:1534-1536;Padlan 1991, Molec. Immun., 28:489-498;およびPadlan 1994, Molec. Immun., 31:169-217を参照されたい。ヒト操作技術の他の例としては、限定されるものではないが、米国特許第5,766,886号に開示されたXoma技術が挙げられる。
【0079】
本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでの無作為もしくは部位特異的突然変異誘発またはin vivoで体細胞突然変異により導入される変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で用いられる用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列から誘導されるCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0080】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワークとCDR領域の両方がヒト配列から誘導される可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。
【0081】
本明細書で用いられる用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段により調製、発現、作出または単離される全てのヒト抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックもしくはトランス染色体(transchromosomal)である動物(例えば、マウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、組換え体、組合せヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の、他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段により調製、発現、作出または単離される抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワークとCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列から誘導される可変領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態においては、そのような組換えヒト抗体を、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を用いる場合は、in vivo体細胞突然変異誘発)に供することができ、かくして、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列から誘導され、それと関連するが、in vivoではヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しない場合もある配列である。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG1またはIgG4などのIgG)を指す。
【0083】
語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に用いられる。
【0084】
本明細書で用いられる場合、「IL−17Aポリペプチドに特異的に結合する」抗体またはタンパク質は、100nM以下、10nM以下、1nM以下、100pM以下、または10pM以下のKでヒトIL−17Aポリペプチドに結合する抗体またはタンパク質を指すことが意図される。「IL−17A以外の抗原と交差反応する」抗体は、10nM以下、1nM以下、または100pM以下のKでその抗原に結合する抗体を指すことが意図される。「特定の抗原と交差反応しない」抗体は、100nM以上のK、または1μM以上のK、または10μM以上のKでその抗原に結合する抗体を指すことが意図される。ある特定の実施形態においては、抗原と交差反応しないそのような抗体は、標準的な結合アッセイにおいて、これらのタンパク質に対して本質的に検出不可能な結合を示す。
【0085】
本明細書で用いられる用語「Kassoc」または「K」は、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度(association rate)を指すことが意図されるが、本明細書で用いられる用語「Kdis」または「K」は特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。
【0086】
本明細書で用いられる用語「K」は、KとKの比(すなわち、K/K)から得られる解離定数を指すことが意図され、モル濃度(M)で表される。抗体のK値を、当技術分野でよく確立された方法を用いて決定することができる。抗体のKを決定するための方法は、当業者には周知であり、例えば、実施例に記載のように実行される、表面プラズモン共鳴を用いるか、またはBiacore(商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いることによる。
【0087】
IL−17のその受容体への結合の阻害を、本明細書の以後の本文中に記載されるアッセイなどの様々なアッセイにおいて都合良く試験することができる。用語「同程度で」とは、参照と同等の分子(equivalent molecule)とが、統計ベースで、本明細書に記載のアッセイの1つにおいて本質的に同一のIL−17阻害活性を示すことを意味する(実施例を参照されたい)。例えば、本開示のIL−17結合分子は、典型的には、例えば、実施例に記載のようにアッセイした場合、対応する参照分子の半数阻害濃度(IC50)の±10以内、すなわち、10nM未満、より好ましくは、9、8、7、6、5、4、3または2nM、好ましくは、それと実質的に同じである、ヒト皮膚線維芽細胞中のヒトIL−17により誘導されるIL−6生成に対するヒトIL−17の阻害に関する、IC50を有する。あるいは、用いられるアッセイは、可溶性IL−17受容体と本開示のIL−17結合分子によるIL−17の結合の競合的阻害のアッセイであってもよい。
【0088】
本明細書で用いられる用語「親和性」とは、単一の抗原部位における抗体と抗原との間の相互作用の強度を指す。それぞれの抗原部位内で、抗体「アーム」の可変領域は、弱い非共有力を介して、いくつかの部位で抗原と相互作用する;相互作用が多くなるほど、親和性が強くなる。IgG抗体またはその断片(例えば、Fab断片)に関する、本明細書で用いられる用語「高親和性」とは、標的抗原に対する10−8M以下、10−9M以下、または10−10M、または10−11M以下、または10−12M以下、または10−13M以下のKを有する抗体を指す。しかしながら、高親和性結合は、他の抗体アイソタイプについて変化してもよい(can 10 vary)。例えば、IgMアイソタイプに関する高親和性結合とは、10−7M以下、または10−8M以下のKを有する抗体を指す。
【0089】
本明細書で用いられる用語「アビディティ」とは、抗体−抗原複合体の全体的な安定性または強度の有益な尺度を指す。それは3つの主要な因子:抗体エピトープ親和性;抗原と抗体の両方の価数;および相互作用部分の構造的配置により制御される。最終的には、これらの因子は抗体の特異性、すなわち、特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合する可能性を規定するものである。
【0090】
本明細書で用いられる場合、IL−17RへのIL−17A結合を阻害する抗体またはタンパク質は、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、10nM以下のIC50、好ましくは1nM以下のIC50、より好ましくは100pM以下のIC50でIL−17RへのIL−17A結合を阻害する抗体またはタンパク質を指すことが意図される。そのようなアッセイは、以下の実施例でより詳細に説明される。
【0091】
本明細書で用いられる用語「IL−17Aアンタゴニスト」または「IL−17A遮断分子」は、IL−17Rを介してIL−17Aに誘導されるシグナリング活性を阻害することによって、IL−17A活性を低下させるか、または中和する抗体またはタンパク質を指すことが意図される。これは、ヒト細胞中でのIL−17A依存的IL−6またはGRO−アルファ生成アッセイなどのヒト細胞アッセイにおいて示すことができる。そのようなアッセイは、以下の実施例でより詳細に説明される。いくつかの実施形態においては、本開示の抗体またはタンパク質は、in vitroヒト細胞アッセイにおいて測定された場合、10nM以下、1nM以下、または100pM以下のIC50でIL−17A依存的IL−6またはGRO−アルファ生成を阻害する。そのようなアッセイは、以下の実施例でより詳細に説明される。いくつかの実施形態においては、本開示の抗体またはタンパク質は、マウスおよびラットにおけるin vivoアッセイにおいて抗原誘導性関節炎を阻害する。そのようなアッセイは、以下に実施例でより詳細に説明される。
【0092】
本明細書で用いられる用語「ADCC」または「抗体依存的細胞傷害性」活性とは、細胞枯渇活性(cell depleting activity)を指す。ADCC活性を、当業者には周知の標準的なADCCアッセイにより測定することができる。
【0093】
本明細書で用いられる場合、本開示の抗体またはタンパク質に対する「選択性」という用語は、ある特定の標的ポリペプチドには結合するが、密接に関連するポリペプチドには結合しない抗体またはタンパク質を指す。語句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に用いられる。
【0094】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)および一本鎖または二本鎖型のいずれかのそのポリマーを指す。特に限定しない限り、この用語は参照核酸と類似する結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する(プソイドウリジンにより置き換えられたウリジンを有するmRNA分子、それを合成する方法、およびin vivoでの治療タンパク質の送達のための方法を開示する、Karikoらの米国特許第8,278,036号を参照されたい)。mRNAをパッケージングするための方法、例えば、Karikoらの米国特許第8,278,036号;およびModernaの特許出願WO2013/090186A1に開示されたものを用いることができる。別途指摘しない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に改変されたそのバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オーソログ、SNP、および相補的配列ならびに明示的に示される配列をも暗示的に包含する。特に、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択されたコドン(または全てのコドン)の第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0095】
本明細書で用いられる用語「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。本明細書で用いられる用語「cyno」または「cynomolgus」は、カニクイザル(マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis))を指す。本明細書で用いられる用語「rhesus」または「rhesus macaque」とは、アカゲザル(マカカ・ムラッタ(Macaca mulatta))を指す。本明細書で用いられる用語「marmoset」とは、マーモセットを指す。
【0096】
本明細書で用いられる場合、任意の疾患または障害(すなわち、関節リウマチ)の「処置すること(治療すること(treating))」または「処置(治療(treatment))」という用語は、一実施形態においては、疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの発生を遅延させるか、または停止させるか、または低下させること)を指す。別の実施形態においては、「処置すること」または「処置」とは、患者によって認識され得ないものなどの少なくとも1つの身体的パラメータを軽減するか、または改善することを指す。さらに別の実施形態においては、「処置すること」または「処置」とは、身体的に(例えば、認識できる症状の安定化)、生理的に(例えば、身体的パラメータの安定化)疾患もしくは障害を調節すること、またはその両方を指す。疾患の処置および/または防止を評価するための方法は、本明細書で特に説明しない限り、当技術分野で一般に公知である。
【0097】
本明細書で用いられる場合、患者を参照して「選択すること」および「選択された」とは、特定の患者が、その特定の患者が所定の基準を有することに起因して、より大きい患者群から特に選択されることを意味するために用いられる。同様に、「患者を選択的に処置すること」とは、特定の患者が所定の基準を有することに起因してより大きい患者群から特に選択される患者に対する処置を提供することを指す。同様に、「選択的に投与すること」とは、特定の患者が所定の基準を有することに起因してより大きい患者群から特に選択される患者に薬物を投与することを指す。
【0098】
本明細書で用いられる用語「最適化された」とは、ヌクレオチド配列を、生成細胞または生物、一般には、真核細胞、例えば、ピチア(Pichia)の細胞、トリコデルマ(Trichoderma)の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞において好ましいコドンを用いてアミノ酸配列をコードするように変化させたことを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られる出発ヌクレオチド配列により元々コードされるアミノ酸配列を完全に、またはできるだけ多く保持するように操作される。本明細書の最適化された配列は、CHO哺乳動物細胞中で好ましいコドンを有するように操作されているが、他の真核細胞中でのこれらの配列の最適化された発現も、本明細書で想定される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列も、最適化されていると言う。
【0099】
本明細書で用いられる場合、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要がある、ギャップ数、および各ギャップの長さを考慮に入れて、配列により共有される同一の位置数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置数/位置の総数x100)である。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの決定を、以下に記載のような数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。
【0100】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを用いる、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれた、E. Meyers and W. Miller 1988,Comput. Appl. Biosci., 4:11-17のアルゴリズムを用いて決定することができる。あるいは、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックス、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重量および1、2、3、4、5または6の長さ重量を用いる、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラム中に組み込まれた、Needleman and Wunsch 1970, J. Mol, Biol. 48:444-453のアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0101】
また、2つのヌクレオチドアミノ酸配列間の同一性パーセントを、例えば、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる、核酸配列のためのBLASTNプログラムなどのアルゴリズムを用いて決定することもできる。
【0102】
用語「交差遮断」、「交差遮断された」、「交差遮断する」は、本明細書では互換的に用いられ、標準的な競合結合アッセイにおいて、IL−17Aへの他の抗体または結合剤の結合に干渉する抗体または他の結合剤の能力を意味する。
【0103】
抗体または抗体の抗原結合部分を含むタンパク質などの他の結合剤が、IL−17Aへの別の抗体または結合分子の結合に干渉することができる能力または程度、したがって、それを本開示による交差遮断と言うことができるかどうかを、標準的な競合結合アッセイを用いて決定することができる。1つの好適なアッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定することができる、Biacore(商標)技術の使用(例えば、Biacore(商標)3000機器(Biacore(商標)、Uppsala、Sweden)を用いることによる)を含む。交差遮断を測定するための別のアッセイは、ELISAに基づくアプローチを用いる。これらの方法に関するさらなる詳細は、実施例に与えられる。
【0104】
例えば、本明細書に例示される抗体(すなわち、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5)ならびにその抗原結合部分を含むタンパク質は、全て互いに「交差遮断する」。これらの抗体は全て、IL−17A上の同じエピトープを標的とする。他の交差遮断抗体は、同じか、または関連するエピトープに結合することが予測される。
【0105】
本開示によれば、本開示による、交差遮断抗体または抗体の抗原結合部分を含むタンパク質などの他の結合剤は、抗体または結合剤の組合せ(混合物)の記録された結合が、組み合わせた2つの抗体または結合剤の最大理論結合(上記で定義される)の80%〜0.1%(例えば、80%〜4%)の間、特に、最大理論結合の75%〜0.1%(例えば、75%〜4%)の間、より特には、最大理論結合の70%〜0.1%(例えば、70%〜4%)の間、より特には、65%〜0.1%(例えば、65%〜4%)の間であるように、記載されたBiacore(商標)交差遮断アッセイにおいてIL−17Aに結合する。
【0106】
液相の抗IL−17A抗体が、液相の抗IL−17A抗体の非存在下(すなわち、陽性対照ウェル)で得られるIL−17A検出シグナルと比較してIL−17A検出シグナル(すなわち、被覆抗体により結合したIL−17Aの量)の60%〜100%の間、特に、70%〜100%の間、より特には、80%〜100%の間の低下を引き起こすことができる場合、抗体は、実施例に記載のようなELISAアッセイにおいて交差遮断として定義される。
【発明を実施するための形態】
【0107】
発明の詳細な説明
本開示は、部分的には、ホモ二量体IL−17Aおよびヘテロ二量体IL−17AFに特異的に結合するが、ホモ二量体IL−17Fには特異的に結合しない抗体分子の発見に基づくものである。本開示は、完全なIgGフォーマット抗体ならびに以下でさらに説明されるその抗原結合部分を含むタンパク質の両方に関する。
【0108】
したがって、本開示は、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウスまたはヒトのうちの1つまたは複数から選択されるものなどのいくつかの種について驚くべきことに類似する結合能力を有する抗体ならびにその抗原結合部分を含むタンパク質、ならびにそのような抗体および組成物の医薬組成物、製造方法、および使用方法を提供する。
【0109】
組換え抗体
本開示の抗体は、以下の表1に記載される全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列により誘導、単離および構造的に特徴付けられた、ヒト組換え抗体XAB1ならびに抗体誘導体XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5を含む。
【0110】
【表1】
【0111】
本開示のそのような単離された抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の対応する可変領域VおよびVアミノ酸配列を、以下の表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
本開示の他の抗体は、アミノ酸の欠失、挿入または置換により変異しているが、上記の抗体に対して、特に、上記の配列中に記載されるCDR領域において、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%または100%の同一性を依然として有するアミノ酸を有するものを含む。いくつかの実施形態においては、本開示の抗体は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のいずれか1つの変異バリアントであり、前記変異バリアント抗体は、1、2、3、4または5個を超えないアミノ酸が、上記の配列中に記載されたCDR領域と比較した場合、CDR領域中のアミノ酸欠失、挿入または置換により変異された、変異アミノ酸配列を含む。
【0114】
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長軽鎖および重鎖ヌクレオチドコード配列を、以下の表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変軽鎖および重鎖ヌクレオチドコード配列を、以下の表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
本開示の抗体をコードする他の核酸は、ヌクレオチドの欠失、挿入または置換により変異しているが、上記の配列または以下の表5および表6に記載のコード領域に対応するCDRに対して少なくとも60、70、80、90、95または100パーセントの同一性を依然として有する核酸を含む。
【0119】
いくつかの実施形態においては、それは、1、2、3、4または5個を超えないヌクレオチドが、上記の配列または以下の表5および表6に記載のCDRコード領域を有するCDRコード領域においてヌクレオチド欠失、挿入または置換により変化したバリアント核酸を含む。
【0120】
同じエピトープに結合する抗体については、V、V、全長軽鎖、および全長重鎖配列(ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列)を、「混合および一致(mixed and matched)」させて、本開示の他の抗IL−17A結合分子を作出することができる。そのような「混合および一致」した抗体のIL−17A結合を、上記の結合アッセイまたは他の従来の結合アッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験することができる。これらの鎖が混合および一致した場合、特定のV/V対に由来するV配列を、構造的に類似するV配列と置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対に由来する全長重鎖配列を、構造的に類似する全長重鎖配列と置き換えるべきである。同様に、特定のV/V対に由来するV配列を、構造的に類似するV配列と置き換えるべきである。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似する全長軽鎖配列と置き換えるべきである。したがって、一態様において、本開示は、配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号13、25、35、43および53からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有し、前記重鎖および軽鎖領域が、抗体がIL−17Aに特異的に結合するように選択される、単離された組換え抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を提供する。
【0121】
本開示によるいくつかの抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質のVCDR1(用いられるCDR定義に応じてHCDR1またはHCDR1’とも呼ばれる)、VCDR2(用いられるCDR定義に応じてHCDR2またはHCDR2’とも呼ばれる)、VCDR3(用いられるCDR定義に応じてHCDR1またはHCDR1’とも呼ばれる)、VCDR1(用いられるCDR定義に応じてLCDR1またはLCDR1’とも呼ばれる)、VCDR2(用いられるCDR定義に応じてLCDR2またはLCDR2’とも呼ばれる)、VCDR3(用いられるCDR定義に応じてHCDR3またはHCDR3’とも呼ばれる)のアミノ酸配列の例を、表5および表6に示す。
【0122】
表5において、本開示のいくつかの抗体のCDR領域は、Kabatのシステム(Kabat, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、また、Zhao&Lu 2009, Molecular Immunology 47:694-700も参照されたい)を用いて説明される。
【0123】
読解を容易にするために、CDR領域がKabatの定義に従って説明される場合、それらは以後、それぞれ、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。
【0124】
【表5】
【0125】
コンセンサス配列、配列番号73、配列番号74および配列番号75は、Xと命名される、いくつかの可変アミノ酸を含む。XAB2〜XAB5の配列の配列アラインメントに基づいて、配列番号73中の4つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:第1の可変アミノ酸(X1)を、Gly(G)およびVal(V)からなる群から選択することができる;第2の可変アミノ酸(X2)を、Tyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)からなる群から選択することができる;第3の可変アミノ酸(X3)を、Trp(W)およびSer(S)からなる群から選択することができる;ならびに第4の可変アミノ酸(X4)をGlu(E)およびAla(A)からなる群から選択することができる。配列番号9は、配列番号22と比較して91%の配列同一性を有し、配列番号34および配列番号42と比較して73%の配列同一性を有する。配列番号22は、配列番号34および配列番号42と比較して64%の配列同一性を有する。配列番号34は、配列番号42と比較して91%の配列同一性を有する。
【0126】
同様に、配列番号74中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:X1を、Asn(N)およびGln(Q)からなる群から選択することができる。配列番号10は、配列番号23と比較して86%の配列同一性を有する。
【0127】
配列番号75中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:X1を、Asn(N)およびAsp(D)からなる群から選択することができる。配列番号11は、配列番号24と比較して89%の配列同一性を有する。
【0128】
表6において、本開示のいくつかの抗体のCDR領域は、Chothiaのシステム、Al-Lazikani et al. 1997, J. Mol. Biol. 273:927-948を用いて説明される。読解を容易にするために、CDR領域がChothiaの定義に従って説明される場合、それらは以後、それぞれ、HCDR1’、HCDR2’、HCDR3’、LCDR1’、LCDR2’、LCDR3’と呼ばれる。
【0129】
【表6】
【0130】
コンセンサス配列、配列番号71および配列番号72は、Xと命名されるいくつかの可変アミノ酸を含む。XAB2〜XAB5の配列の配列アラインメントに基づいて、配列番号71中の4つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:第1の可変アミノ酸(X1)を、Gly(G)およびVal(V)からなる群から選択することができ、第2の可変アミノ酸(X2)を、Tyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)からなる群から選択することができる;第3の可変アミノ酸(X3)を、Trp(W)およびSer(S)からなる群から選択することができる;第4の可変アミノ酸(X4)を、Glu(E)およびAla(A)からなる群から選択することができる。配列番号4は、配列番号20と比較して86%の配列同一性を有し、配列番号33および配列番号41と比較して57%の配列同一性を有する。配列番号20は、配列番号33および配列番号41と比較して43%の配列同一性を有する。配列番号33は、配列番号41と比較して86%の配列同一性を有する。
【0131】
同様に、配列番号72中の1つの可変アミノ酸を、以下に従って有利に選択することができる:X1を、Asn(N)およびAsp(D)からなる群から選択することができる。配列番号6は、配列番号21と比較して86%の配列同一性を有する。
【0132】
これらの抗体がそれぞれIL−17Aに結合することができ、抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域により提供されることを考慮すれば、VCDR1、2および3配列ならびにVCDR1、2および3配列を「混合および一致」させることができる(すなわち、異なる抗体に由来するCDRを混合および一致させることができ、VCDR1、2および3ならびにVCDR1、2および3を含有するそれぞれの抗体は本開示の他の抗IL−17A結合分子を作出する)。そのような「混合および一致」した抗体のIL−17A結合を、上記および実施例に記載の結合アッセイまたは他の従来のアッセイ(例えば、ELISA)を用いて試験することができる。VCDR配列を混合および一致させる場合、特定のV配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列と置き換えるべきである。同様に、VCDR配列を混合および一致させる場合、特定のV配列に由来するCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列と置き換えるべきである。新規VおよびV配列を、1つまたは複数のVおよび/またはVCDR領域配列を、本開示のモノクローナル抗体について本明細書に示されるCDR配列に由来する構造的に類似する配列で置換することにより作出することができることが当業者には容易に明らかとなる。
【0133】
一実施形態においては、単離された組換え抗体、またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号7に記載の重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の重鎖可変領域CDR2;配列番号3に記載の重鎖可変領域CDR3;配列番号9、22、34、42および73からなる群から選択される、好ましくは、配列番号9、22、34、42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号10、23、および74からなる群から選択される、好ましくは、配列番号10および23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;ならびに配列番号11、24および75からなる群から選択される、好ましくは、配列番号11および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を有し、前記CDR領域は、本開示の抗体またはタンパク質がIL−17Aに特異的に結合するように選択される。
【0134】
別の実施形態においては、単離された組換え抗体、またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号1に記載の重鎖可変領域HCDR1’;配列番号2に記載の重鎖可変領域HCDR2’;配列番号3に記載の重鎖可変領域HCDR3’;配列番号4、20、33、41および71からなる群から選択される、好ましくは配列番号4、20、33、41からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域LCDR1’;配列番号5に記載の軽鎖可変領域LCDR2’;ならびに配列番号6、21、および72からなる群から選択される、好ましくは、配列番号6および21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域LCDR3’を有し、前記CDR領域は本開示の抗体またはタンパク質がIL−17Aに特異的に結合するように選択される。
【0135】
ある特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、配列番号7、配列番号8および配列番号3;配列番号12;またはc)配列番号14を含む。
【0136】
本明細書で用いられる場合、ヒト抗体は、抗体の可変領域または全長の鎖がヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を用いる系から得られる場合、特定の生殖系列配列「の生成物(the product of )」であるか、またはそれ「から誘導される(derived from)」重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もしくは軽鎖を含む。そのような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を担持するトランスジェニックマウスを、対象の抗原で免疫すること、またはファージ上に展示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを対象の抗原でスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の生成物」であるか、またはそれ「から誘導される」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し、ヒト抗体の配列に対して順番に最も近い(すなわち、最大の同一性%)ヒト生殖系列免疫グロブリン配列を選択することにより、そのようなものとして同定され得る。特定のヒト生殖系列免疫グロブリン配列「の生成物」であるか、またはそれ「から誘導される」ヒト抗体は、例えば、自然に生じる体細胞変異または部位特異的突然変異の意図的な導入のため、生殖系列配列と比較した場合にアミノ酸の相違を含んでもよい。しかしながら、選択されるヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、ヒト抗体を、他の種(例えば、マウス生殖系列配列)の生殖系列免疫グロブリンアミノ酸配列と比較した場合、ヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。ある特定の事例においては、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において少なくとも60%、70%、80%、90%、もしくは少なくとも95%、またはさらには少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一であってもよい。典型的には、特定のヒト生殖系列配列から誘導されるヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との10個を超えないアミノ酸の相違を示す。ある特定の事例においては、ヒト抗体は、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との5個を超えない、またはさらには4、3、2または1個を超えないアミノ酸の相違を示してもよい。
【0137】
本開示において、潜在的な治療抗体の結合のための標的として特に好ましいIL−17A上のエピトープが同定された。このエピトープはXAB1、ならびにXAB1の配列の改変により開発されたバリアント抗体XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5により結合する。このエピトープは、残基Arg78とTrp90の間で、IL−17A配列上に見出される。
【0138】
エピトープは、IL−17A内に以下の最も好ましいアミノ酸残基を含むと考えられ得る:Arg78、Glu80、Trp90。さらに、以下のアミノ酸残基も好ましい:Tyr85、Arg124。他の重要なアミノ酸残基は、Pro82、Ser87、Val88である。さらに寄与するアミノ酸残基は、Val45、Leu49、Asp81、Glu83、Pro86、Pro130、Phe133、Lys137であり、ここで()の印を付けたアミノ酸はホモ二量体IL−17Aの第2のIL−17Aサブユニットにより寄与される残基を示す。
【0139】
IL−17A上のこのエピトープを標的とする抗体は、IL−17Aのその受容体への結合を遮断して、in vitroでIL−17Aに媒介される効果を阻害し、抗原誘導性関節炎の実験的in vivoモデルの重症度を低下させることが示された。さらに、このエピトープに結合する抗体は、IL−17AFヘテロ二量体により媒介されるin vitroでの効果を阻害し、また、標的分子のマウスおよび他の種のバリエーションから誘導されるIL−17AおよびIL−17AFに対する予想外に高い親和性を保持することが予想外にも示された。
【0140】
かくして、このエピトープはまた、IL−17AFヘテロ二量体の構造内に接近可能な形式で予想外に保存されるため、特に好ましい。したがって、本開示の好ましい抗体は、IL−17AFヘテロ二量体にも結合する。理論によって束縛されることを望むものではないが、IL−17AFヘテロ二量体の構造はIL−17Aと十分に類似しているか、または本開示の抗体との相互作用は、それをIL−17Aと十分に類似するものにし、結合が依然として起こると予測される。
【0141】
in silicoでの予測と組み合わせた、IL−17A、IL−17Fならびにこれらの分子とX線結晶分析(当技術分野で公開されており、本発明者らによって行われた)により得られた抗体または受容体との間の相互作用に関する利用可能な構造に基づく構造分析により、本開示の抗体への結合、または本開示の抗体とIL−17AFとの交差反応性が必ずしも起こらないことが示唆されたため、これは予想外である。より具体的には、ヘテロ二量体のIL−17FモノマーサブユニットのN末端領域は、本開示の抗体のIL−17AFヘテロ二量体への結合を立体的に阻害すると予測された。かくして、予想は、IL−17AFとの抗体の有意な交差反応性が存在しないことであった。
【0142】
しかしながら、これらの予測にも拘らず、本発明者らは、開示された抗体によるIL−17AFへの交差結合が起こると決定した。これは、いくつかの理由から実際に有利であり得る。上記で考察された通り、IL−17AFも炎症促進性サイトカインとして関与し、IL−17Aについて記載されるか、または疑われる同じ病理学的状態または望ましくない生物学的事象の多くに関与し得る。したがって、本開示の抗体は、IL−17AとIL−17AFとの両方を標的とするか、または阻害することができるため、特に治療的に有用であり得る。
【0143】
さらに、本発明者らは、本開示の抗体とIL−17AFとの間のこの結合が、in vitroアッセイにおいて観察されたように、IL−17AFの生物学的活性の阻害とも相関することを証明した。したがって、本開示の抗体は、IL−17Aの活性だけでなく、IL−17AFの活性も同様に効率的に標的化し、拮抗/中和する。
【0144】
本発明者らによって行われた研究のさらに予想外の結果は、以下のようなものである。元の「親」抗体XAB1の親和性成熟もまた、高い親和性を保持する抗体のセット、またはカニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、もしくはマウスなどの他の種から誘導されるIL−17Aバリアントに対する改善された親和性をもたらした。
【0145】
ヒトIL−17Aに対する本開示の抗体の親和性を改善する努力において、IL−17Aの種バリアントに対する得られる抗体の親和性をも改善することは予想されないため、これは予想外であった。事実、通常はその反対が予想され得る。標的抗原の特異的種バリアント(すなわち、ヒト)に対する抗体親和性を改善するための努力は通常、その抗原の他の種バリアントに対する親和性を低下させると予想される。種バリアント(またはホモログ/パラログ)の概念は、所与の種の共通の祖先を認識するが、進化の過程にわたって多様性が生じたことを受け入れるものである。したがって、異なる種において同定された特定の分子のバリアント間に良好な程度の配列保存が存在する場合であっても、ある種バリアントに対する改善された親和性が別の種バリアントに対する親和性に対する改善を有すると推測することはできない。事実、異なる種の配列間の多様性は、一般に、あるバリアントに対する親和性の改善が別の種バリアントに対する結合親和性の低下(またはさらには消失)をもたらす可能性がより高いとの予想をもたらす。マウスとヒトIL−17Aの間の配列同一性は、62%に過ぎない(Moseley et al. 2003, Cytokine & Growth Factor Reviews 14:155-174)。
【0146】
しかしながら、本件においては、これは観察されず、本発明者らによって作製された抗体バリアントは他の種に由来するIL−17Aバリアントに対する高い親和性を保持していた。有用な治療分子として候補抗体分子を開発するために必要な研究中に、他の種において、または他の種(カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラットもしくはマウスなど)の、もしくはそれから誘導される成分を含む細胞、分子もしくは系に対して様々な試験およびアッセイを実行する必要があり得るため、これは有用である。これは、本開示の抗体を、さらなる開発にとって特に好適なものにする。
【0147】
したがって、本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質は、様々な望ましい特性を共有し得、これらとしては、IL−17Aに対する高い親和性、マウス、ラット、カニクイザルおよびマーモセットなどの他の種に由来するIL−17Aとの交差反応性、IL−17Fなどの他のIL−17アイソタイプに対する交差反応性の欠如、他のサイトカイン(ヒトもしくはマウスサイトカインなど)に対する交差反応性の欠如、ヘテロ二量体IL−17AFとの交差反応性、IL−17Aの、IL−17RAなどのその受容体への結合を遮断する能力、IL−6もしくはGRO−アルファ分泌の刺激などのIL−17Aにより誘導される生物学的効果を阻害もしくは中和する能力、および/または抗原誘導性関節炎モデルにおいて観察される腫れなどのIL−17A(および/もしくはIL−17AF)により媒介されるin vivoでの効果を阻害する能力が挙げられる。
【0148】
本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質はまた、抗体−IL−17A複合体の遅い除去、リガンドの遅い回転率および長期間のIL17A捕捉を提供することが示された。これらの抗体およびタンパク質のさらなる有利な特徴は、詳細な実施形態に提供される。
【0149】
同種抗体(homologous antibodies)
さらに別の実施形態においては、本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質は、上記の、特に表1に記載の抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のアミノ酸またはヌクレオチド配列に対してホモロガス(相同(homologous))である、全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列;全長重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、可変領域重鎖および軽鎖ヌクレオチド配列、または可変領域重鎖および軽鎖アミノ酸配列、または6つ全部のCDR領域アミノ酸配列またはヌクレオチドコード配列を有し、ここで、本開示の抗体またはタンパク質は、元のXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5抗体の望ましい機能的特性を保持する。
【0150】
元のXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5抗体の望ましい機能的特性を、
(i)例えば、実施例に記載のような、Biacore(商標)アッセイにおいて測定した場合、例えば、Kが1nM以下、100pM以下、または10pM以下である、IL−17Aに対する結合親和性(IL−17Aに対する特異的結合);
(ii)例えば、実施例に記載のような、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、例えば、IC50が10nM以下、または1nM以下、または100pM以下である、IL−17Aに結合するIL−17Rの競合的阻害;
(iii)実施例に記載のような、細胞アッセイにおいて測定した場合、例えば、IC50が10nM以下、または1nM以下、または100pM以下である、IL−17A依存的活性、例えば、IL−6またはGRO−アルファの生成の阻害;
(iv)実施例に記載のような、in vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて測定した場合、観察される効果、例えば、膝の腫れの阻害;
(v)カニクイザル、アカゲザル、ラット、またはマウスIL−17Aポリペプチドとの交差反応性;
(vi)ヒトまたはマウスIL−17AFポリペプチドとの交差反応性;
(vii)例えば、実施例に記載のような、Biacore(商標)アッセイにおいて測定した場合、例えば、Kが1nM以下、100pM以下、または10pM以下である、IL−17AFに対する結合親和性(IL−17AFに対する特異的結合);
(viii)実施例に記載のようなin vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、例えば、IC50が200nM以下、150nM以下、または100nM以下である、IL−17AFの阻害;
(ix)薬物開発のための好適な特性、特に、高濃度、すなわち、50mg/ml超でも製剤中で安定であり、凝集しないこと
からなる群から選択することができる。
【0151】
例えば、本開示は、CDR配列、すなわち、6つのCDR領域;HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3またはHCDR1’、HCDR2’、HCDR3’、LCDR1’、LCDR2’、LCDR3’が、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の少なくとも1つの抗体の対応するCDR配列に対する少なくとも60、70、90、95または100%の配列同一性を共有し、前記同種抗体(homologous antibody)またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片が、IL−17Aに特異的に結合し、抗体またはタンパク質が以下の機能特性:それがIL−17Aのその受容体への結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけるIL−17A依存的IL−6もしくはGRO−アルファ生成を阻害する、またはin vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて観察される効果の阻害、のうちの少なくとも1つを示す、可変重鎖(V)および可変軽鎖(V)配列を含む、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の同種抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパク質)に関する。関連する特定の実施形態においては、同種抗体またはタンパク質は、1nM以下のKでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、IL−17Aのその受容体への結合を、1nM以下のIC50で阻害する。XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のCDRは、上記の表5および表6に定義される。
【0152】
本開示はさらに、抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの対応する重鎖および軽鎖可変領域と少なくとも80%、90%、または少なくとも95%または100%同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の同種抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片)に関する;同種抗体またはタンパク質はIL−17Aに特異的に結合し、それは以下の機能的特性:それがIL−17Aのその受容体への結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけるIL−17A依存的IL−6もしくはGRO−アルファ生成を阻害する、またはin vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて観察される効果の阻害、のうちの少なくとも1つを示す。関連する特定の実施形態においては、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片は、1nM以下のKでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、IL−17Aのその受容体への結合を、1nM以下のIC50で阻害する。XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のVおよびVアミノ酸配列は、上記の表2に定義される。
【0153】
別の例では、本開示は、全長重鎖および全長軽鎖を含み、可変重鎖がXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変重鎖および軽鎖の対応するコードヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一であるヌクレオチド配列によりコードされ、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片が、IL−17Aに特異的に結合し、それが以下の機能特性:それがIL−17Aのその受容体への結合を阻害する、それが細胞アッセイにおけるIL−17A依存的IL−6もしくはGRO−アルファ生成を阻害する、またはin vivo抗原誘導性関節炎アッセイにおいて観察される効果の阻害、のうちの少なくとも1つを示す、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の同種抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片)に関する。関連する特定の実施形態においては、同種抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片は、1nM以下のKでIL−17Aに結合し、in vitro競合結合アッセイにおいて測定した場合、IL−17Aへの結合を、1nM以下のIC50で阻害する。XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変領域のコードヌクレオチド配列を、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長コードヌクレオチド配列を示す表3ならびにXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の可変領域のアミノ酸配列を示す表2から誘導することができる。
【0154】
様々な実施形態において、抗体または抗体の抗原結合部分を含むタンパク質などのその抗原結合断片は、1つもしくは複数、2つ以上、3つ以上、または4つ以上の上記で考察された所望の機能特性を示してもよい。本開示の抗体またはタンパク質は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってもよい。一実施形態においては、抗体またはタンパク質は、完全ヒトサイレントIgG1抗体などの完全ヒトサイレント抗体である。
【0155】
沈黙化されたエフェクター機能を、抗体のFc定常部分における変異により取得することができ、当技術分野で記載されている:Strohl 2009(LALA & N297A);Baudino 2008, D265A (Baudino et al. 2008, J. Immunol. 181:6664-69, Strohl, CO 2009, Biotechnology 20:685-91)。サイレントIgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列中にL234AおよびL235A変異を含むいわゆるLALA変異体を含む。サイレントIgG1抗体の別の例は、D265A変異を含む。D265A変異はまた、好ましくは、P329A変異(DAPA)と組み合わせることもできる。別のサイレントIgG1抗体は、無グリコシル化(aglycosylated)または非グリコシル化抗体をもたらす、N297A変異を含む。
【0156】
アミノ酸配列変異体を含む抗体を、コード核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発)、次いで、本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持された機能(すなわち、上記の機能)についてコードされ変化した抗体の試験により取得することができる。
【0157】
保存的改変を有する抗体
ある特定の実施形態においては、本開示の抗体(またはその抗原結合部分を含むタンパク質)は、HCDR1、HCDR2およびHCDR3配列(またはHCDR1’、HCDR2’およびHCDR3’)を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LCDR2およびLCDR3配列(またはLCDR1’、LCDR2’およびLCDR3’)を含む軽鎖可変領域とを有し、これらのCDR配列の1つまたは複数は、本明細書に記載の抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5に基づく特定のアミノ酸配列またはそれらの保存的改変を有し、抗体またはタンパク質は、本開示の抗IL−17A抗体の所望の機能特性を保持する。
【0158】
本明細書で用いられる用語「保存的配列改変」は、アミノ酸残基が類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたアミノ酸置換を指すことが意図される。類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。かくして、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基と置き換え、変化した抗体を、本明細書に記載の機能的アッセイを用いて保持された機能について試験することができる。
【0159】
部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発などの、当技術分野で公知の標準的な技術により、改変を本明細書に開示される抗体中に導入することができる。
【0160】
操作および改変された抗体
他の抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質などの抗原結合断片を、出発材料として上記に示されたXAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の1つまたは複数のVおよび/またはV配列を有する抗体を用いて調製して、出発抗体から変化した特性を有してもよい改変された抗体を操作することができる。抗体を、可変領域の一方または両方(すなわち、Vおよび/またはV)内、例えば、1つまたは複数のCDR領域内および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を改変することにより操作することができる。さらに、またはあるいは、抗体を、定常領域内の残基を改変して、例えば、抗体のエフェクター機能を変化させることにより操作することができる。
【0161】
実施することができる1つの型の可変領域操作は、CDR移植である。抗体は、主として6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由から、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外側の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列は多くの抗体−抗原相互作用を担うため、異なる特性を有する異なる抗体に由来するフレームワーク配列上に移植された特定の天然に存在する抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al. 1998, Nature 332:323-327;Jones, P. et al. 1986, Nature 321:522-525;Queen, C. et al. 1989, Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033;Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照されたい)。
【0162】
したがって、本開示の別の実施形態は、表5または表6に定義されたXAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの6つのCDR領域を含むが、元の抗体とは異なるフレームワーク配列を依然として含有する、単離された組換えCDR移植(グラフト化)抗IL−17A抗体に関する。
【0163】
そのようなフレームワーク配列を、生殖系列抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開された参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖系列DNA配列を、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseでインターネット上で利用可能)、ならびにKabat, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242;Tomlinson, I. M., et al. 1992, J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCox, J. P. L. et al. 1994, Eur. J Immunol. 24:827-836に見出すことができる。
【0164】
フレームワーク配列の例は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つで用いられるフレームワーク配列と構造的に類似するものである。VCDR1、2および3配列、ならびにVCDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が誘導する生殖系列免疫グロブリン遺伝子中に見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域上に移植してもよいし、またはCDR配列を、生殖系列配列と比較して1つまたは複数の変異を含有するフレームワーク領域上に移植してもよい。例えば、ある特定の例においては、フレームワーク領域内の残基を変異させて、抗体の抗原結合能力を維持するか、または増強することが有益であることが見出されている(例えば、Queenらの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照されたい)。
【0165】
別の型の可変領域改変は、「親和性成熟」として知られる、Vおよび/またはVCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることによって、対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発を実施して、変異を導入し、抗体結合に対する効果、または他の対象の機能特性を、本明細書に記載され、実施例に提供されるin vitroまたはin vivoアッセイにおいて評価することができる。したがって、一実施形態においては、本開示は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5抗体の1つから誘導される親和性成熟した抗体に関する。保存的改変(上記で考察されたもの)を導入することができる。変異は、アミノ酸置換、付加または欠失であってもよい。さらに、典型的には、CDR領域内の1、2、3、4または5個を超えない残基を変化させる。例えば、本開示の抗体は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の1つの6つのCDRを含み、CDR領域内の1、2、3、4または5個を超えない残基が変化した親和性成熟した抗体である。
【0166】
したがって、別の実施形態においては、本開示は、操作された抗体の重鎖および/または軽鎖アミノ酸配列が元の配列と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を含有することを除いて、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5抗体の少なくとも1つの対応する重鎖および軽鎖可変領域と同一である重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む単離され操作された抗IL−17A抗体を提供する。
【0167】
代替フレームワークまたは足場への抗原結合ドメインの移植
得られるポリペプチドがIL−17Aに特異的に結合するXAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の少なくとも1つの結合領域を含む限り、様々な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたは足場を用いることができる。そのようなフレームワークまたは足場は、5つの主要なイディオタイプのヒト免疫グロブリン、またはその断片(本明細書の他の場所に開示されるものなど)を含み、好ましくは、ヒト化された態様を有する、他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科において同定されたものなどの単一重鎖抗体(single heavy-chain antibody)は、この点で特に興味深い。新規フレームワーク、足場および断片が、当業者によって探索および開発され続けている。
【0168】
一態様において、本開示は、本開示のCDRを移植することができる非免疫グロブリン足場を用いた、非免疫グロブリンに基づく抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質の作製に関する。配列番号76の標的タンパク質に特異的な結合領域を含む限り、既知の、または将来の(future)非免疫グロブリンフレームワークおよび足場を用いることができる。そのような化合物を、本明細書では、「標的特異的結合領域を含むポリペプチド」と呼ぶ。非免疫グロブリンフレームワークの例は、以下のセクションでさらに説明される(ラクダ科抗体および非抗体足場)。
【0169】
ラクダ科抗体
ラマ種(ラマ・パッコス(Lama paccos)、ラマ・グラマ(Lama glama)およびラマ・ビクグナ(Lama vicugna))などの新世界メンバーを含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(カメルス・バクトリアヌス(Camelus bactrianus)およびカレルス・ドロマデリウス(Calelus dromaderius)科のメンバーから得られた抗体タンパク質が、サイズ、構造的複雑性およびヒト対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。自然に見出されるこの科の哺乳動物に由来するある特定のIgG抗体は軽鎖を含まず、かくして、他の動物に由来する抗体の、2つの重鎖と2つの軽鎖とを有する典型的な4鎖四次構造とは構造的に異なる。PCT公開番号WO94/04678を参照されたい。
【0170】
HHとして同定される小さい単一可変ドメインであるラクダ科抗体の領域を、「ラクダ科ナノボディ」として知られる低分子量抗体由来タンパク質をもたらす、標的に対する高い親和性を有する小さいタンパク質をもたらす遺伝子操作により取得することができる。1998年6月2日に発行された米国特許第5,759,808号を参照されたい;また、Stijlemans, B. et al. 2004, J Biol Chem 279: 1256-1261;Dumoulin, M. et al. 2003, Nature 424: 783-788;Pleschberger, M. et al. 2003, Bioconjugate Chem 14: 440-448;Cortez-Retamozo, V. et al. 2002, Int J Cancer 89: 456-62;およびLauwereys, M. et al. 1998, EMBO J 17: 3512-3520も参照されたい。ラクダ科抗体および抗体断片の操作されたライブラリーは、例えば、Ablynx、Ghent、Belgiumから商業的に入手可能である。非ヒト起源の他の抗体と同様、ラクダ科抗体のアミノ酸配列を組換え的に変化させて、ヒト配列とより密接に類似する配列を得ることができる、すなわち、ナノボディを「ヒト化」することができる。かくして、ヒトに対するラクダ科抗体の自然の低い抗原性を、さらに低下させることができる。
【0171】
ラクダ科ナノボディはヒトIgG分子の約1/10の分子量を有し、そのタンパク質はわずか数ナノメートルの物理的直径を有する。小さいサイズの1つの結果は、より大きい抗体タンパク質には機能的に不可視である抗原性部位に結合するラクダ科ナノボディの能力である、すなわち、ラクダ科ナノボディは、さもなければ古典的な免疫学的技術を用いた場合には解明できない抗原を検出する試薬として、また、可能性のある治療剤として有用である。かくして、小さいサイズのさらに別の結果は、ラクダ科ナノボディが標的タンパク質の溝または狭い裂け目中の特異的部位への結合の結果として阻害することができ、したがって、古典的な抗体よりも古典的な低分子量の薬物の機能とより密接に類似する能力において役立ち得ることである。
【0172】
低分子量およびコンパクトなサイズは、極端に熱安定性であり、極端なpHおよびタンパク質分解的消化に対して安定であり、抗原性が低いラクダ科ナノボディをさらにもたらす。別の結果は、ラクダ科ナノボディは循環系から組織へ容易に移動し、さらに血液脳関門を通過し、神経組織に影響する障害を処置することができることである。ナノボディは、血液脳関門をわたる薬物輸送をさらに容易にすることができる。2004年8月19日に公開された米国特許出願公開第20040161738号を参照されたい。ヒトに対する低い抗原性と組み合わせたこれらの特徴は、高い治療潜在能力を示す。さらに、これらの分子は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞中で完全に発現させることができ、バクテリオファージ中で融合タンパク質として発現され、機能的である。
【0173】
操作されたナノボディを、45分から2週間のレシピエント対象中での半減期を有するように遺伝子操作によりさらにカスタマイズすることができる。特定の実施形態においては、ラクダ科抗体またはナノボディは、本開示のヒト抗体、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のうちの1つの重鎖または軽鎖のCDR配列を、例えば、PCT公開番号WO94/04678に記載のような、ナノボディまたは単一ドメイン抗体フレームワーク配列中に移植することにより得られる。
【0174】
非抗体足場
公知の非免疫グロブリンフレームワークまたは足場としては、限定されるものではないが、アドネクチン(フィブロネクチン)(Compound Therapeutics,Inc.、Waltham、MA)、アンキリン(Molecular Partners AG、Zurich、Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd(Cambridge、MA)およびAblynx nv(Zwijnaarde、Belgium))、リポカリン(アンチカリン)(Pieris Proteolab AG、Freising、Germany)、小モジュラー免疫医薬品(Trubion Pharmaceuticals Inc.、Seattle、WA)、マキシボディ(Avidia,Inc.(Mountain View、CA))、プロテインA(Affibody AG、Sweden)およびアフィリン(ガンマ−クリスタリンまたはユビキチン)(Scil Proteins GmbH、Halle、Germany)、タンパク質エピトープ模倣物質(Polyphor Ltd、Allschwil、Switzerland)が挙げられる。
【0175】
(a)フィブロネクチン足場
フィブロネクチン足場は、好ましくは、フィブロネクチンIII型ドメイン(例えば、フィブロネクチンIII型の10番目のモジュール(10Fn3ドメイン))に基づくものである。フィブロネクチンIII型ドメインは、それ自身、互いに対して包み、タンパク質のコアを形成する2つのベータシート間に分布し、さらにベータ鎖を互いに接続し、溶媒露出したループを含有する(CDRと類似する(analogous))7つまたは8つのベータ鎖を有する。ベータシートサンドイッチのそれぞれの端部には少なくとも3つのそのようなループが存在し、その端部はベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,818,418号)。
【0176】
これらのフィブロネクチンに基づく足場は免疫グロブリンではないが、全体の折畳みは、ラクダおよびラマのIgG中の全抗原認識単位を含む、最も小さい機能的抗体断片、重鎖の可変領域のものと密接に関連する。この構造のため、非免疫グロブリン抗体は、天然で類似する抗原結合特性およびこれらの抗体に対する親和性を模倣する。これらの足場を、in vivoでの抗体の親和性成熟のプロセスと類似するin vitroでのループ無作為化およびシャッフリング戦略において用いることができる。これらのフィブロネクチンに基づく分子を、その分子のループ領域を標準的なクローニング技術を用いてXAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のうちの1つのCDRと置き換えることができる足場として用いることができる。
【0177】
(b)アンキリン−分子パートナー
この技術は、異なる標的への結合のために用いることができる可変領域を担持させるための足場としてアンキリン由来反復モジュールを有するタンパク質を用いることに基づくものである。アンキリン反復モジュールは、2つの逆平行αヘリックスとβターンとからなる33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボソームディスプレイを用いることによって最適化されることが多い。
【0178】
(c)マキシボディ/アビマー−アビジア
アビマーは、LRP−1などの天然Aドメイン含有タンパク質から誘導される。これらのドメインは、天然でタンパク質間相互作用のために用いられ、ヒトにおいては250を超えるタンパク質が構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーにより連結されたいくつかの異なる「Aドメイン」モノマー(2〜10)からなる。例えば、米国特許出願公開第20040175756号;第20050053973号;第20050048512号;および第20060008844号に記載の方法を用いて、標的抗原に結合することができるアビマーを作出することができる。
【0179】
(d)プロテインA−Affibody
Affibody(登録商標)親和性リガンドは、プロテインAのIgG結合ドメインの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルを含む小さく単純なタンパク質である。プロテインAは、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)細菌に由来する表面タンパク質である。この足場ドメインは、58アミノ酸からなり、そのうちの13は多数のリガンドバリアントを含むAffibody(登録商標)ライブラリーを作製するために無作為化される(例えば、米国特許第5,831,012号を参照されたい)。Affibody(登録商標)分子は抗体を模倣する;それらは150kDaである抗体の分子量と比較して、6kDaの分子量を有する。その小さいサイズにも拘らず、Affibody(登録商標)分子の結合部位は、抗体のものと類似している。
【0180】
(e)アンチカリン−Pieris
Anticalin(登録商標)は、Pieris ProteoLab AG社により開発された製品である。それらは、化学的に感受性であるか、または不溶性である化合物の生理学的輸送または保存に通常関与する広範囲の小さく強固なタンパク質であるリポカリンから誘導される。いくつかの天然リポカリンはヒト組織または体液中に存在する。
【0181】
タンパク質構造は、免疫グロブリンに類似しており、剛性フレームワークの頂部に超可変ループを有する。しかしながら、抗体またはその組換え断片とは対照的に、リポカリンは160〜180アミノ酸残基を有する単一ポリペプチド鎖を含み、単一免疫グロブリンドメインよりもほんのわずかに大きい。
【0182】
結合ポケットを作り上げる4つのループのセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な側鎖を許容する。かくして、高い親和性および特異性を有する異なる形状の所定の標的分子を認識するように結合部位を特許プロセスで再形成させることができる。
【0183】
リポカリンファミリーの1つのタンパク質である、オオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合タンパク質(BBP)は、4つのループのセットを突然変異誘発することによってアンチカリンを開発するために用いられてきた。「アンチカリン」を記載する特許出願の一例は、PCT公開WO199916873である。
【0184】
(f)Affilin−Scilタンパク質
Affilin(商標)分子は、タンパク質および低分子に対する特異的親和性のために設計された低分子非免疫グロブリンタンパク質である。新しいAffilin(商標)分子を、それぞれ異なるヒト由来足場タンパク質に基づく2つのライブラリーから非常に迅速に選択することができる。
【0185】
Affilin(商標)分子は、免疫グロブリンタンパク質に対していかなる構造的相同性も示さない。Scilタンパク質は、2つのAffilin(商標)足場を用いるものであり、その一方はガンマ結晶性ヒト構造接眼レンズタンパク質であり、他方は「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。両方のヒト足場は非常に小さく、高温安定性を示し、pH変化および変性剤に対してほぼ耐性である。この高い安定性は主に、タンパク質の拡張されたベータシート構造に起因する。ガンマ結晶由来タンパク質の例はWO200104144に記載されており、「ユビキチン様」タンパク質の例はWO2004106368に記載されている。
【0186】
(g)タンパク質エピトープ模倣物質(PEM)
PEMは、タンパク質間相互作用に関与する主要な二次構造であるタンパク質のベータ−ヘパリン二次構造を模倣する、中サイズの環状のペプチド様分子(MW1〜2kDa)である。
【0187】
フレームワークまたはFc操作
本開示の操作された抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質は、例えば、抗体の特性を改善するために、Vおよび/またはV内のフレームワーク残基に対して改変を行ったものを含む。典型的には、そのようなフレームワーク改変は、抗体の免疫原性を低下させるために作製される。例えば、1つの手法は、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰変異」させることである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が誘導される生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有してもよい。そのような残基を、抗体フレームワーク配列と、抗体が誘導される生殖系列配列とを比較することにより同定することができる。フレームワーク領域配列をその生殖系列配置に戻すために、体細胞変異を、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介性突然変異誘発により、生殖系列配列に「復帰変異」させることができる。そのような「復帰変異」抗体も、本開示によって包含されることが意図される。
【0188】
別の型のフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去することによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、Carrらによる米国特許出願公開第20030153043号にさらに詳細に記載されている。
【0189】
フレームワークまたはCDR領域内で作製される改変に加えて、またはその代わりに、Fc領域内に改変を含むように、典型的には、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/または抗原依存的細胞性細胞傷害性などの、抗体の1つまたは複数の機能特性を変化させるように、本開示の抗体を操作することができる。さらに、本開示の抗体を化学的に改変する(例えば、1つまたは複数の化学部分を抗体に結合させることができる)か、または改変してそのグリコシル化を変化させ、再度、抗体の1つまたは複数の機能特性を変化させることができる。これらの実施形態はそれぞれ、以下でさらに詳細に説明される。
【0190】
本明細書で用いられる用語「Fc領域」は、天然(ネイティブ)配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、IgG抗体の位置C226から、またはP230からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものと定義される。Fc領域中の残基の番号は、KabatのEUインデックスのものである。Fc領域のC末端リシン(残基K447)を、例えば、抗体の生成または精製中に除去することができる。したがって、本開示の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されない抗体集団、ならびにK447残基を含む、および含まない抗体の混合物を有する抗体集団を含んでもよい。
【0191】
一実施形態においては、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変化する、例えば、増加するか、または減少するように改変される。この手法は、Bodmerらの米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にするため、または抗体の安定性を増加もしくは低下させるために変化させる。
【0192】
別の実施形態においては、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期を低下させる。より具体的には、1つまたは複数のアミノ酸変異を、抗体が天然(ネイティブ)のFc−ヒンジドメインSpA結合と比較して減じられたスタフィロコッカスプロテインA(SpA)結合を有するようにFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン境界領域中に導入する。この手法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0193】
別の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を、その生物学的半減期を増加させるように改変する。様々な手法が可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載のように、以下の変異のうちの1つまたは複数を導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、CH1またはCL領域内で抗体を変化させることができる。
【0194】
さらに他の実施形態においては、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基と置き換えて、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質のエフェクター機能を変化させることによって、Fc領域を変化させる。例えば、抗体がエフェクターリガンドに対する変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1つまたは複数のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えることができる。親和性を変化させるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であってもよい。この手法は、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号および第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0195】
別の実施形態においては、抗体が変化したC1q結合および/または低下した、もしくは消失した補体依存的細胞傷害性(CDC)を有するように、アミノ酸残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基と置き換えることができる。この手法は、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0196】
別の実施形態においては、1つまたは複数のアミノ酸残基を変化させることによって、補体を固定する抗体の能力を変化させる。この手法は、BodmerらによるPCT公開WO94/29351にさらに記載されている。
【0197】
さらに別の実施形態においては、Fc領域を改変して、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質が、抗体依存的細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介し、かつ/または1つまたは複数のアミノ酸を改変することによりFcγ受容体に対する抗体の親和性を増加させる能力を増加させる。この手法は、PrestaによるPCT公開WO00/42072にさらに記載されている。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnのためのヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、結合が改変されたバリアントが記載されている(Shields, R.L. et al. 2001, J. Biol. Chem 276:6591-6604を参照されたい)。
【0198】
ある特定の実施形態においては、IgG1アイソタイプのFcドメインを用いる。いくつかの特定の実施形態においては、IgG1 Fc断片の変異バリアント、例えば、抗体依存的細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介し、かつ/またはFcγ受容体に結合する融合ポリペプチドの能力を低下させるか、または除去するサイレントIgG1 Fcを用いる。IgG1アイソタイプのサイレント変異体の例は、Hezareh et al. 2001, J. Virol 75:12161-8により記載されたような、アミノ酸位置234と235でロイシンがアラニンにより置き換えられたIgG1である。IgG1アイソタイプのサイレント変異体の別の例は、D265A変異を有するIgG1である(アスパラギン酸が位置265でアラニンにより置換されている)。ある特定の実施形態においては、Fcドメインは、Fcドメインの位置297でのグリコシル化を防止するサイレントFc変異体である。例えば、Fcドメインは、位置297にアスパラギンのアミノ酸置換を含有する。そのようなアミノ酸置換の例は、グリシンまたはアラニンによるN297の置き換えである。
【0199】
さらに別の実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質のグリコシル化を改変する。例えば、無グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を変化させて、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させることができる。そのような炭水化物改変を、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を変化させることにより達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の除去をもたらすことによって、その部位のグリコシル化を除去する1つまたは複数のアミノ酸置換を作製することができる。そのような無グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そのような手法は、Coらによる米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0200】
さらに、またはあるいは、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体または二分岐のGlcNac構造が増加した抗体などの、変化した型のグリコシル化を有する抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を作製することができる。そのような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが証明されている。そのような炭水化物改変を、例えば、グリコシル化機構が変化した宿主細胞中で抗体を発現させることによって達成することができる。グリコシル化機構が変化した細胞は、当技術分野で記載されており、本開示の組換え抗体を発現させることによってグリコシル化が変化した抗体を生成する宿主細胞として用いることができる。例えば、HangらによるEP1176195は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞系を記載しており、そのような細胞系中で発現された抗体は低フコシル化を示す。したがって、一実施形態においては、本開示の抗体は、低フコシル化パターンを示す細胞系、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損した哺乳動物細胞系中での組換え発現により生成される。PrestaによるPCT公開WO03/035835は、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合させる能力が低下し、また、その宿主細胞中で発現される抗体の低フコシル化をもたらす、バリアントCHO細胞系、Lecl3細胞を記載する(Shields, R.L. et al. 2002, J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公開WO99/54342は、操作された細胞系中で発現された抗体が、抗体のADCC活性の増加をもたらす二分岐GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞系を記載する(Umana et al. 1999, Nat. Biotech. 17:176-180も参照されたい)。あるいは、本開示の抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質を、哺乳動物のようなグリコシル化パターンのために操作され、グリコシル化パターンとしてフコースを欠く抗体を生成することができる酵母または糸状菌中で生成させることができる(例えば、EP1297172を参照されたい)。
【0201】
本開示により企図される本明細書に開示される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質の別の改変は、ペグ化である。これらの分子を、例えば、その生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。例えば、抗体をペグ化するために、抗体、またはその断片を、典型的には、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に結合されるようになる条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などの、ポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。ペグ化を、反応性PEG分子(または類似する反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって実行することができる。本明細書で用いられる用語「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1〜C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために用いられてきた任意の形態のPEGを包含することが意図される。ある特定の実施形態においては、ペグ化される抗体は、無グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当技術分野で公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0202】
本開示により企図される抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質の別の改変は、得られる分子の半減期を増加させるための、ヒト血清アルブミンまたはその断片などの血清タンパク質との、本開示の抗体の少なくとも抗原結合領域のコンジュゲートまたはタンパク質融合物である。そのような手法は、例えば、BallanceらのEP0322094に記載されている。
【0203】
別の可能性は、得られる分子の半減期を増加させるためにヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質に結合することができるタンパク質との、本開示の抗体の少なくとも抗原結合領域の融合物である。そのような手法は、例えば、NygrenらのEP0486525に記載されている。
【0204】
変化した抗体を操作する方法
上記で考察されたように、本明細書に示されるVおよびV配列または全長重鎖および軽鎖配列を有する抗IL−17A抗体を用いて、全長重鎖および/もしくは軽鎖配列、Vおよび/もしくはV配列、またはそれに結合した定常領域を改変することによって、新しい抗IL−17A抗体を作出することができる。かくして、本開示の別の態様において、本開示の抗IL−17A抗体の構造的特徴は、ヒトIL−17Aへの結合およびまた、in vivoアッセイにおけるIL−17Aの1つまたは複数の機能特性(例えば、IL−17AもしくはIL−17AFのその受容体への結合の阻害、IL−6、GRO−アルファのIL−17AもしくはIL−17AFにより誘導される生成の阻害など)阻害活性の阻害などの、本明細書に開示される抗体の少なくとも1つの機能特性を保持する、構造的に関連する抗IL−17A抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を作出するために用いられる。
【0205】
IL−17Aと実質的に同じ結合特性を保持する他の抗体としては、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの同じVHおよびVL領域、またはCDR領域と、異なる定常領域またはフレームワーク領域(例えば、異なるアイソタイプ、例えば、IgG4またはIgG2から選択される異なるFc領域)を保持する、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つのキメラ抗体またはCDR移植抗体が挙げられる。
【0206】
例えば、上記で考察された通り、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5のいずれか1つ、またはその変異の1つまたは複数のCDR領域を、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRと組換え的に組み合わせて、本開示のさらなる組換え操作された抗IL−17A抗体を作出することができる。他の型の改変としては、以前のセクションに記載されたものが挙げられる。操作方法のための出発材料は、上記の表に提供されたXAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5の1つもしくは複数のVおよび/もしくはV配列、またはその1つもしくは複数のCDR領域である。操作された抗体を作出するために、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5の1つもしくは複数のVおよび/もしくはV配列、またはその1つもしくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)必要はない。むしろ、配列に含まれる情報は、元の配列から誘導される「第2世代」配列を作出するための出発材料として用いられ、次いで、「第2世代」配列はタンパク質として調製および発現される。
【0207】
第2世代配列は、例えば、少なくとも1つの変化した抗体配列を作出するために、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの重鎖可変領域抗体配列および/または軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基のDNAコード配列を変化させること;ならびに変化した抗体配列をタンパク質として発現させることによって誘導される。
【0208】
したがって、別の実施形態においては、本開示は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの全長重鎖抗体配列、全長軽鎖抗体配列からなる哺乳動物細胞中での発現について最適化された抗IL−17A抗体を調製し;ヌクレオチドコード配列中の少なくとも1つのコドンであって、少なくとも1つの変化した抗体配列を作出するために全長重鎖抗体配列および/または全長軽鎖抗体配列内のアミノ酸残基をコードする前記コドンを変化させ;ならびに変化した抗体配列をタンパク質として発現させるための方法を提供する。
【0209】
また、変化した抗体配列を、それぞれXAB1、XAB2、XAB3、XAB4もしくはXAB5のいずれか1つのユニークな重鎖および軽鎖CDR3配列、または米国特許出願公開第20050255552号に記載の最小必須結合決定基、ならびにCDR1およびCDR2配列のための代替配列を有する抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって調製することもできる。スクリーニングを、ファージディスプレイ技術などの、抗体ライブラリーから抗体をスクリーニングするのに好適な任意のスクリーニング技術に従って実施することができる。
【0210】
標準的な分子生物学技術を用いて、変化した抗体配列を調製し、発現させることができる。変化した抗体配列によりコードされる抗体は、本明細書に記載の抗IL−17A抗体の所望の機能特性の1つ、いくつか、または全部を保持するものであり、その機能特性としては、限定されるものではないが、ヒトIL−17Aへの特異的結合;および/またはIL−17Aのその受容体への結合の阻害;および/または例えば、IL−6もしくはGRO−アルファのIL−17Aに誘導される生成の阻害などが挙げられる。
【0211】
変化した抗体は、上記で考察された1つもしくは複数、2つ以上、または3つ以上の機能特性を示してもよい。
【0212】
本開示の抗体を操作する方法のある特定の実施形態においては、抗IL−17A抗体コード配列の全部または一部に沿って無作為または選択的に変異を導入し、得られる改変された抗IL−17A抗体を、本明細書に記載のように結合活性および/または他の機能特性についてスクリーニングすることができる。変異方法は、当技術分野で記載されている。例えば、ShortによるPCT公開WO02/092780は、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリ、またはその組合せを用いる抗体変異を作出し、スクリーニングするための方法を記載する。あるいは、LazarらによるPCT公開WO03/074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するためのコンピュータスクリーニング法の使用方法を記載する。
【0213】
本開示の抗体をコードする核酸分子
本開示の別の態様は、本開示の抗体またはタンパク質をコードする核酸分子に関する。可変軽鎖ヌクレオチド配列の例は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5のいずれか1つの可変軽鎖アミノ酸配列をコードするものであり、後者の配列は表3(XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の重鎖および軽鎖の全ヌクレオチドコード配列を示す)および表2(XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の可変領域のアミノ酸配列を示す)から誘導される。
【0214】
本開示はまた、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞系におけるタンパク質発現のために最適化されている後者の配列から誘導される核酸分子に関する。
【0215】
核酸は、全細胞、細胞溶解物中に存在してもよく、または部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当技術分野で周知の他の技術などの標準的な技術により、他の細胞成分または他の夾雑物、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から精製された場合、「単離される」または「実質的に純粋にされる」。F. Ausubel, et al., ed. 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。本開示の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含有しても、またはしなくてもよい。ある実施形態において、核酸は、cDNA分子である。核酸は、ファージディスプレイベクターなどのベクター中、または組換えプラスミドベクター中に存在してもよい。
【0216】
本開示の核酸を、標準的な分子生物学技術を用いて取得することができる。一度、例えば、VおよびVセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片を、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作して、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作においては、VまたはVをコードするDNA断片は、別のDNA分子、または抗体定常領域もしくは可撓性リンカーなどの別のタンパク質をコードする断片に作動可能に連結される。本文で用いられる用語「作動可能に連結される」は、例えば、2つのDNA断片によりコードされるアミノ酸配列がインフレームにあるか、またはタンパク質が所望のプロモーターの制御下に発現されるように、2つのDNA断片が機能的様式で連結されることを意味することが意図される。
【0217】
をコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、V領域をコードする単離されたDNAを、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., el al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片を、標準的なPCR増幅によって取得することができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってもよい。いくつかの実施形態においては、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプのうちから選択される。Fab断片重鎖遺伝子については、VをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することができる。
【0218】
をコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、V領域をコードする単離されたDNAを全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片を、標準的なPCR増幅により取得することができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であってもよい。
【0219】
scFv遺伝子を作出するために、VおよびVをコードするDNA断片を、可撓性リンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4−Ser)をコードする別の断片に作動可能に連結し、VおよびV配列を、可撓性リンカーにより連結されたVおよびV領域と共に、連続単一鎖タンパク質として発現させることができる(例えば、Bird et al. 1988, Science 242:423-426;Huston et at. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al. 1990, Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0220】
本開示の組換え抗体の単離
抗体およびその抗原結合部分を含むタンパク質をスクリーニングする様々な方法が、当技術分野で記載されている。そのような方法を、抗原免疫化の際に完全ヒト抗体を生成することができるトランスジェニックマウスなどのin vivo系と、抗体DNAコードライブラリーを作製すること、抗体生成のための適切な系中でDNAライブラリーを発現させること、親和性選択基準を用いて標的に結合する抗体候補を発現するクローンを選択すること、および選択されたクローンの対応するコード配列を回収することからなるin vitro系とに分けることができる。これらのin vitro技術はディスプレイ技術として公知であり、限定されるものではないが、ファージディスプレイ、RNAまたはDNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母または哺乳動物細胞ディスプレイが挙げられる。それらは当技術分野でよく記載されている(概説については、例えば、Nelson et al. 2010, Nature Reviews Drug discovery, “Development trends for human monoclonal antibody therapeutics” (Advance Online Publication)およびHoogenboom et al. 2001, Method in Molecular Biology 178:1-37, O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, N.J.を参照されたい)。1つの特定の実施形態においては、本開示のヒト組換え抗体は、HuCAL(登録商標)ライブラリーなどの、ヒト組換え抗体ライブラリーのライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を用いて単離される。
【0221】
およびV遺伝子または関連するCDR領域のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングするか、またはDNA合成装置により合成し、ファージライブラリー中で無作為に組換えた後、抗原結合クローンについてスクリーニングすることができる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当技術分野で確立されているか、または以下の実施例に記載される。例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;および第5,571,698号;Dowerらの米国特許第5,427,908号および第5,580,717号;McCaffertyらの米国特許第5,969,108号および第6,172,197号ならびにGriffithsらの米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号および第6,593,081号を参照されたい。
【0222】
ある特定の実施形態においては、IL−17Aに対するヒト抗体を、マウス系よりもむしろヒト免疫系の部分を担持するトランスジェニックまたはトランス染色体マウスを用いて同定することができる。これらのトランスジェニックおよびトランス染色体マウスは、本明細書ではそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書では「ヒトIgマウス」と集合的に呼ばれる。
【0223】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活化する標的化された変異と一緒に、再配置されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する(例えば、Lonberg, et al. 1994, Nature 368:856-859を参照されたい)。したがって、マウスは、マウスIgMまたはκの発現の低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランス遺伝子は、クラススイッチングおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナルを生成する(Lonberg, N. et al. 1994, supra; Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101に概説されている; Lonberg, N. and Huszar, D. 1995, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93、およびHarding, F. and Lonberg, N. 1995, Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMAbマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスにより担持されるゲノム改変は、Taylor, L. et al. 1992, Nucleic Acids Research 20:6287-6295;Chen, J. et at. 1993, International Immunology 5:647-656;Tuaillon et al. 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724;Choi et al. 1993, Nature Genetics 4:117-123;Chen, J. et al. 1993, EMBO J. 12: 821-830;Tuaillon et al. 1994, J. Immunol. 152:2912-2920;Taylor, L. et al. 1994, International Immunology 579-591;およびFishwild, D. et al. 1996, Nature Biotechnology 14: 845-851にさらに記載されている。さらに、全てLonbergおよびKayの米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;および第5,770,429号;Suraniらの米国特許第5,545,807号;全てLonbergおよびKayのPCT公開WO92103918、WO93/12227、WO94/25585、WO97113852、WO98/24884およびWO99/45962;ならびにKormanらのPCT公開WO01/14424も参照されたい。
【0224】
別の実施形態においては、本開示のヒト抗体を、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽鎖トランス染色体を担持するマウスなどの、トランス遺伝子およびトランス染色体上にヒト免疫グロブリン配列を担持するマウスを用いて生じさせることができる。本明細書では「KMマウス」と呼ばれるそのようなマウスは、IshidaらのPCT公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0225】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替トランスジェニック動物系が当技術分野で利用可能であり、これを用いて本開示の抗IL−17A抗体を生じさせることができる。例えば、Abgenix,Inc.からのXenomouseと呼ばれる代替トランスジェニック系を用いることができる。そのようなマウスは、例えば、Kucherlapatiらの米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号および第6,162,963号に記載されている。当業者には明らかであるように、Trianni,Inc.からのTrianni(商標)マウス、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.からのVelocImmune(商標)マウス、またはKymab LimitedからのKymouse(商標)マウスなどの、いくつかの他のマウスモデルを用いることができる。
【0226】
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代替的なトランス染色体動物系が当技術分野で利用可能であり、これを用いて本開示の抗IL−17A抗体を生じさせることができる。例えば、「TCマウス」と呼ばれる、ヒト重鎖トランス染色体と、ヒト軽鎖トランス染色体との両方を担持するマウスを用いることができる;そのようなマウスは、Tomizuka et al. 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載されている。
【0227】
また、免疫化の際にヒト抗体応答を生成することができるようにヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを用いて、本開示のヒトモノクローナル抗体を調製することもできる。そのようなマウスは、例えば、Wilsonらの米国特許第5,476,996号および第5,698,767号に記載されている。
【0228】
マウス系からの本開示のモノクローナル抗体の生成
従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and Milstein 1975, Nature 256:495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術などの、様々な技術によって、モノクローナル抗体(mAb)を生成することができる。モノクローナル抗体を生成するための多くの技術、例えば、Bリンパ球のウイルスまたはがん形質転換を用いることができる。
【0229】
ハイブリドーマを調製するための動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生成は、よく確立された手順である。融合のための免疫化された脾細胞の単離のための免疫化プロトコールおよび技術は当技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウスミエローマ細胞)および融合手順も公知である。
【0230】
本開示のキメラまたはヒト化抗体を、上記のように調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAを、対象のマウスハイブリドーマから取得し、標準的な分子生物学技術を用いて非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するように操作することができる。例えば、キメラ抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許第4,816,567号を参照されたい)。ヒト化抗体を作出するために、当技術分野で公知の方法を用いて、マウスCDR領域をヒトフレームワーク中に挿入することができる。例えば、Winterの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照されたい。
【0231】
ヒトモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマの作製
本開示のヒトモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマを作製するために、免疫化されたマウスに由来する脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウスミエローマ細胞系などの適切な不死化細胞系に融合することができる。得られるハイブリドーマを、抗原特異的またはエピトープ特異的抗体の生成についてスクリーニングすることができる。例えば、免疫化されたマウスに由来する脾臓リンパ球の単一細胞懸濁液を、50%PEGを用いて、1/6の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL1580)に融合することができる。細胞を平底マイクロタイタープレート中、約2x145で塗布した後、20%胎児クローン血清、18%「653」条件培地、5%オリゲン(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトエタノール、50ユニット/mlペニシリン、50mg/mlストレプトマイシン、50mg/mlゲンタマイシンおよび1X HAT(Sigma;HATは融合の24時間後に添加される)を含有する選択培地中で2週間インキュベートする。約2週間後、HATをHTで置き換えた培地中で細胞を培養することができる。次いで、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体についてELISAにより個々のウェルをスクリーニングすることができる。一度、広範囲のハイブリドーマ増殖が生じたら、通常は培地を10〜14日後に観察することができる。抗体を分泌するハイブリドーマを再塗布し、再度スクリーニングし、ヒトIgGについて依然として陽性である場合、限界希釈によって1回または2回、モノクローナル抗体をサブクローニングすることができる。次いで、安定なサブクローンをin vitroで培養して、特徴付けのために組織培養培地中に少量の抗体を生成させることができる。
【0232】
ヒトモノクローナル抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製のために2リットルの回転式フラスコ中で増殖させることができる。上清を濾過し、濃縮した後、プロテインA−セファロース(Pharmacia、Piscataway、N.J.)を用いる親和性クロマトグラフィーを行うことができる。溶出したIgGをゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィーによりチェックし、純度を確保することができる。バッファー溶液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を用いてOD280により濃度を決定することができる。モノクローナル抗体をアリコートにし、−80℃で保存することができる。
【0233】
モノクローナル抗体を生成するトランスフェクトーマの作製
本開示の抗体を、例えば、当技術分野で周知である(例えば、Morrison, S. 1985, Science 229:1202)組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション法との組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で生成することができる。
【0234】
例えば、抗体、またはその抗体断片を発現させるために、部分的または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学または生化学技術(例えば、DNA化学合成、PCR増幅もしくは対象の抗体を発現するハイブリドーマを用いるcDNAクローニング)により取得し、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、DNAを発現ベクター中に挿入することができる。この文脈において、用語「作動可能に連結された」は、ベクター内の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するその意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター中にライゲートされることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いられる発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別のベクター中に挿入されるか、またはより典型的には、両遺伝子は同じ発現ベクター中に挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクター上の相補的制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)により発現ベクター中に挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域を用いて、Vセグメントがベクター内のCセグメントに作動可能に連結され、Vセグメントがベクター内のCセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクター中にそれらを挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作出することができる。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にする、リーダー配列とも呼ばれるシグナルペプチドをコードしてもよい。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクター中にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチド)であってもよい。そのようなシグナルペプチドの例は表7に見出され、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の例は表8に見出される。
【0235】
【表7】
【0236】
【表8】
【0237】
抗体鎖遺伝子に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を担持する。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel 1990, Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CAに記載されている。当業者であれば、調節配列の選択などの発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現レベルなどの因子に依存してもよい。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマから誘導されるプロモーターおよび/またはエンハンサーなどの、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を指令するウイルスエレメントが挙げられる。あるいは、ユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターなどの、非ウイルス調節配列を用いてもよい。さらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復に由来する配列を含有する、SRaプロモーター系などの、異なる起源に由来する配列を含む(Takebe, Y. et al. 1988, Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。
【0238】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子などの、さらなる配列を担持してもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号、全てAxelら、を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に対して、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸リダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅と共にdhfr−宿主細胞中での使用のため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0239】
軽鎖および重鎖の発現のために、標準的な技術を適用して、宿主細胞に重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターをトランスフェクトした。様々な形態の用語「トランスフェクション」は、外因性DNAの原核または真核宿主細胞への導入のために一般的に用いられる様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。理論的には、原核または真核宿主細胞中で本開示の抗体を発現させることができる。真核細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞、酵母または糸状菌中での抗体の発現は、適切に折畳まれ、免疫学的に活性な抗体を集合させ、分泌する可能性が原核細胞よりも高いため、そのような真核細胞、特に、哺乳動物細胞が考察される。
【0240】
1つの特定の実施形態においては、本開示によるクローニングまたは発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、表3に由来するコード配列のいずれか少なくとも1つを含む。別の特定の実施形態においては、本開示によるクローニングまたは発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、表4に由来するコード配列のいずれか少なくとも1つを含む。
【0241】
本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、R.J. Kaufman and P.A. Sharp 1982, Mol. Biol. 159:601-621に記載のDHFR選択マーカーと共に用いられる、Urlaub and Chasin 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されたdhfr−CHO細胞を含む)、CHOK1dhfr+細胞系、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。特に、NSOミエローマ細胞と共に使用するための、別の発現系は、PCT公開WO87/04462、WO89/01036およびEP0338841に示されたGS遺伝子発現系である。一実施形態においては、本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳動物宿主細胞としては、例えば、米国特許第6,946,292号に記載のような、FUT8遺伝子発現について欠損した哺乳動物細胞系が挙げられる。
【0242】
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞中に導入する場合、宿主細胞中での抗体の発現または宿主細胞を増殖させる培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間にわたって宿主細胞を培養することにより、抗体を生成する。標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から抗体を回収することができる(例えば、Abhinav et al. 2007, Journal of Chromatography 848:28-37を参照されたい)。
【0243】
1つの特定の実施形態においては、本開示の宿主細胞は、好適なプロモーター配列に作動可能に連結された、それぞれ、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の発現にとって好適な、配列番号18、31、51、19、28、32、38、40、46、48、52、56、および58からなる群から選択されるコード配列を有する発現ベクターをトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0244】
次いで、後者の宿主細胞を、それぞれ、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5からなる群から選択される本開示の抗体の発現および生成のための好適な条件下でさらに培養することができる。
【0245】
イムノコンジュゲート
別の態様において、本開示は、細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素などの活性または治療部分にコンジュゲートされた、本開示の抗IL−17A抗体、またはその断片を特徴とする。そのようなコンジュゲートを、本明細書では「イムノコンジュゲート」と呼ぶ。IL−17AがTh17細胞の表面上に発現される場合、これは特に好ましい(Brucklacher-Waldert et al. 2009, J Immunol. 183:5494-501)。
【0246】
1つまたは複数の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは、「イムノトキシン」と呼ばれる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞にとって有害である(例えば、殺傷する)任意の薬剤を含む。例としては、タキソン、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにその類似体または相同体が挙げられる。また、治療剤としては、例えば、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、除去剤(ablating agent)(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(chloraxnbucil)、メルファラン(meiphalan)、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も挙げられる。
【0247】
本開示の抗体にコンジュゲートすることができる治療的細胞毒素の他の例としては、デュオカルマイシン、カリケアミシン、メイタンシンおよびオーリスタチン、ならびにその誘導体が挙げられる。カリケアミシン抗体コンジュゲートの例は、商業的に入手可能である(Mylotarg(商標);Wyeth−Ayerst)。
【0248】
当技術分野で利用可能なリンカー技術を用いて、細胞毒素を本開示の抗体にコンジュゲートすることができる。細胞毒素を抗体にコンジュゲートするために用いられてきたリンカー型の例としては、限定されるものではないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが挙げられる。例えば、リソソーム区画内で低いpHによる切断を受けやすいか、またはカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織中で選択的に発現されるプロテアーゼなどの、プロテアーゼによる切断を受けやすいリンカーを選択することができる。
【0249】
細胞毒素の型、リンカーおよび治療剤を抗体にコンジュゲートするための方法のさらなる考察については、Saito, G. et al. 2003, Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215;Trail, P.A. et al. 2003, Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337;Payne, G. 2003, Cancer Cell 3:207-212;Allen, T.M. 2002, Nat. Rev. Cancer 2:750-763;Pastan, I. and Kreitman, R. J. 2002, Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091;Senter, P.D. and Springer, C.J. 2001, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照されたい。
【0250】
また、本開示の抗体を、放射性同位体にコンジュゲートして、ラジオイムノコンジュゲートとも呼ばれる、細胞傷害性放射性医薬品を作製することもできる。診断的または治療的に用いるために抗体にコンジュゲートすることができる放射性同位体の例としては、限定されるものではないが、ヨウ素131、インジウム111、イットリウム90、およびルテチウム177が挙げられる。ラジオイムノコンジュゲートを調製するための方法は、当技術分野で確立されている。ラジオイムノコンジュゲートの例は、Zevalin(商標)(DEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa Pharmaceuticals)などの、市販のものであり、同様の方法を用いて、本開示の抗体を用いてラジオイムノコンジュゲートを調製することができる。
【0251】
本開示の抗体コンジュゲートを用いて、所与の生物応答を改変することができるが、薬物部分は古典的化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質としては、例えば、酵素的に活性な毒素、またはその活性断片、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロン−γなどのタンパク質;または、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL1」)、インターロイキン−2(「IL2」)、インターロイキン−6(「IL6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、もしくは他の増殖因子などの、生物応答改変剤が挙げられる。
【0252】
抗体にそのような治療部分をコンジュゲートするための技術は周知であり、例えば、Amon et al.1985, "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56; Hellstrom et at. 1987, "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 ; Thorpe 1985, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506; Thorpe et al. 1982, Immunol. Rev., 62:119-58を参照されたい。
【0253】
二特異的分子
別の態様において、本開示は、本開示の抗IL−17A/AF抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を含む二特異的または多特異的分子を特徴とする。本開示の抗体またはタンパク質を、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体または受容体のリガンド)に誘導体化または連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二特異的分子を作製することができる。本開示の抗体またはタンパク質は事実、1つより多い他の機能的分子に誘導体化または連結して、2つより多い異なる結合部位および/または標的分子に結合する多特異的分子を作製することができる;そのような多特異的分子も、本明細書で用いられる用語「二特異的分子」により包含されることが意図される。本開示の二特異的分子を作出するために、本開示の抗体またはタンパク質を、二特異的分子が得られる別の抗体、抗体断片、ペプチドまたは結合模倣物質などの、1つまたは複数の他の結合分子に機能的に連結することができる(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合その他による)。
【0254】
したがって、本開示は、IL−17A、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの、1つの抗原結合部分に対する少なくとも1つの第1の結合特異性と、第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性とを含む二特異的分子を含む。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるIL−17Aの別のエピトープである。別の例は、IL−17A、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの、1つの抗原結合部分に対する少なくとも1つの第1の結合特異性と、IL−17A内または別の標的抗原内の他の場所のエピトープに対する第2の結合特異性とを含む二特異的分子である。
【0255】
さらに、二特異的分子が多特異的である本開示について、前記分子は、第1および第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含んでもよい。
【0256】
一実施形態においては、本開示の二特異的分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、または一本鎖Fvを含む、少なくとも1つの抗体、またはその抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体、またはFvもしくはLadnerらの米国特許第4,946,778号に記載の単一鎖構築物などの任意のその最小断片であってもよい。
【0257】
本開示の二特異的分子中で用いることができる他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
【0258】
本開示の二特異的分子を、当技術分野で公知の方法を用いて、構成結合特異性をコンジュゲートすることにより調製することができる。例えば、二特異的分子のそれぞれの結合特異性を別々に作製した後、互いにコンジュゲートすることができる。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、様々なカップリング剤または架橋剤を共有的コンジュゲーションのために用いることができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N−スクシンイミジル−S−アセチル−チオアセテート(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシレート(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. 1984, J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい)。他の方法としては、Paulus 1985, Behring Ins. Mitt. No. 78,118-132; Brennan et al. 1985, Science 229:81-83、およびGlennie et al. 1987, J. Immunol. 139: 2367-2375に記載のものが挙げられる。コンジュゲート剤はSATAおよびスルホ−SMCCであり、両方ともPierce Chemical Co.(Rockford、IL)から入手可能である。
【0259】
結合特異性が抗体である場合、それらを2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によりコンジュゲートすることができる。特定の実施形態においては、ヒンジ領域を改変して、コンジュゲーションの前に、奇数の、例えば、1のスルフヒドリル残基を含有させる。
【0260】
あるいは、両方の結合特異性を、同じベクター中にコードさせ、同じ宿主細胞中で発現および集合(アセンブリ)させることができる。この方法は、二特異的分子がmAb x mAb、mAb x Fab、Fab x F(ab’)またはリガンドx Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の二特異的分子は、1つの一本鎖抗体と結合決定基とを含む一本鎖分子、または2つの結合決定基を含む一本鎖二特異的分子であってもよい。二特異的分子は、少なくとも2つの一本鎖分子を含んでもよい。二特異的分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;および米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0261】
二特異的分子のその特異的標的への結合を、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、またはウェスタンブロットアッセイにより確認することができる。これらのアッセイはそれぞれ、一般には、特定の対象のタンパク質−抗体複合体の存在を、対象の複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を用いることにより検出する。
【0262】
多価抗体
別の態様において、本開示は、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5のいずれか1つの抗原結合部分から選択される、IL−17Aに結合する本開示の抗体の少なくとも2つの同一のまたは異なる抗原結合部分を含む多価抗体を提供する。一実施形態においては、多価抗体は、抗体の少なくとも2、3または4つの抗原結合部分を提供する。抗原結合部分を、タンパク質融合により、または共有もしくは非共有連結により一緒に連結することができる。あるいは、連結方法は、二特異的分子について記載されている。例えば、本開示の抗体を、本開示の抗体の定常領域、例えば、Fcまたはヒンジ領域に結合する抗体と架橋することにより、四価化合物を取得することができる。
【0263】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、医薬的に許容される担体と一緒に製剤化された(formulated)、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質の1つまたは組合せ、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5からなる群から選択される1つの抗体を含有する、組成物、例えば、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、1つもしくは組合せの(例えば、2つ以上の異なる)本開示の抗体、またはイムノコンジュゲートもしくは二特異的分子を含んでもよい。例えば、本開示の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または相補的活性を有する抗体またはタンパク質の組合せを含んでもよい。
【0264】
本開示の医薬組成物はまた、組合せ療法において、すなわち、他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、組合せ療法は、少なくとも1つの他の抗炎症剤または別の化学療法剤、例えば、免疫抑制剤と組み合わせた、本開示の抗IL−17A抗体またはタンパク質、例えば、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5からなる群から選択される1つの抗体を含んでもよい。組合せ療法において用いることができる治療剤の例は、本開示の抗体またはタンパク質の使用に関する以下のセクションにより詳細に記載される。
【0265】
本明細書で用いられる場合、「医薬的に許容される担体」は、生理的に適合する任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または輸注による)に好適であるべきである。一実施形態においては、担体は、皮下経路に好適であるべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、イムノコンジュゲート、または二特異的分子を材料中で被覆して、酸の作用および化合物を不活化し得る他の自然条件から化合物を保護することができる。
【0266】
本開示の医薬組成物は、1つまたは複数の医薬的に許容される塩を含んでもよい。「医薬的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持し、任意の望ましくない毒性効果に影響しない塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. 1977, J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。そのような塩の例としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの非毒性無機酸、ならびに脂肪族モノ−およびジ−カルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などの非毒性有機酸から誘導されるものが挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ならびにN,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの非毒性有機アミンから誘導されるものが挙げられる。
【0267】
本開示の医薬組成物はまた、医薬的に許容される酸化防止剤を含んでもよい。医薬的に許容される酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;およびクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0268】
本開示の医薬組成物中で用いることができる好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。
【0269】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。滅菌手順と、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有との両方により、微生物の存在の防止を確保することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含有させることも望ましい場合がある。さらに、注射可能な医薬形態の吸収の延長を、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によりもたらすことができる。
【0270】
医薬的に許容される担体は、滅菌注射溶液または分散物の即興の調製のための滅菌水溶液または分散物および滅菌粉末を含む。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本開示の医薬組成物におけるその使用が企図される。また、追加活性化合物を組成物中に含有させることもできる。
【0271】
治療組成物は、典型的には、製造および保存の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度にとって好適な他の規則的構造(ordered structure)として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。多くの場合、当業者は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含有させることができる。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含有させることにより、注射可能な組成物の吸収の延長をもたらすことができる。
【0272】
安定なタンパク質(例えば、抗体)製剤の開発に関する概説は、Cleland et al. 1993, Crit. Reviews. Ther. Drug Carrier Systems 10(4):307-377およびWei Wang 1999, Int. J. Pharmaceutcs 185:129-88に見出すことができる。抗体に関するさらなる製剤の考察は、例えば、Daugherty and Mrsny 2006, Advanced Drug Delivery Reviews 58: 686-706;米国特許第6,171,586号、第4,618,486号、米国特許出願公開第20060286103号、PCT公開WO 06/044908、WO07/095337、WO04/016286、Colandene et al. 2007, J. Pharm. Sci 96: 1598-1608;Schulman 2001, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 164:S6-S11および他の公知の参考文献に見出すことができる。
【0273】
皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、典型的には、以下の成分:注射用水、塩水溶液(saline solution)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などのバッファー、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性の調整のための薬剤のうちの1つまたは複数を含む。塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基を用いてpHを調整することができる。そのような調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射筒または複数用量バイアル中に封入することができる。
【0274】
適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記で列挙された成分の1つまたは組合せと共に含有させた後、滅菌マイクロ濾過を行うことにより、滅菌注射溶液を調製することができる。一般的には、分散物は、本開示の抗体またはタンパク質を、基本分散媒体と、上記で列挙されたものに由来する必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に含有させることにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、活性成分の粉末と、予め滅菌濾過されたその溶液に由来する任意のさらなる所望の成分とをもたらす減圧乾燥および凍結(フリーズ)−乾燥(凍結乾燥)である。
【0275】
1つの特定の実施形態においては、抗体XAB1、XAB2、XBA3、XAB4またはXAB5を、バイアル中の液体製剤として投与した。バイアルあたりの薬物の量は、150mgであった。液体は、150mg/mLの抗体、4.8mMのL−ヒスチジン、15.2mMのL−ヒスチジン−HCl、220mMのスクロースおよび0.04%のポリソルベート20、pH6.0±0.5を含有していた。20%の過剰充填(overfill)を添加して、意図される用量の完全な取り出しを可能にした。
【0276】
単一剤形(single dosage form)を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象、および特定の投与様式に応じて変化する。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、100%のうち、この量は、医薬的に許容される担体と組み合わせた、約0.01%〜約99%の活性成分、約0.1%〜約70%、または約1%〜約30%の活性成分である。
【0277】
投薬レジメン(dosage regimen)は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単一ボーラスを投与し、数回に分割された用量を経時的に投与するか、または治療状況の要件によって示されるように用量を比例的に減少もしくは増加させることができる。投与の容易性および投薬の均一性のために、単位剤形(dosage unit form)中に非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で用いられる単位剤形とは、処置される対象のために単一の投薬として適合させた物理的に個別の単位を指す;各単位は、必要とされる医薬的担体と共に、所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性化合物を含有する。本開示の単位剤形に関する明細は、活性化合物の独特の特徴および達成しようとする特定の治療効果、個体における感受性の処置のためのそのような活性化合物を組み合わせる際の当技術分野において固有の制限によって決定され、それに直接依存する。
【0278】
抗体またはタンパク質の投与のために、投薬範囲は、宿主体重の5、15および50mg/kg皮下投与、より通常は0.01〜5mg/kgなどの約0.0001〜150mg/kgである。例えば、投薬量(dosage)は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内であってもよい。例示的な処置レジメンは、週1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、月1回、3カ月毎に1回または3〜6カ月毎に1回の投与を必要とする。本開示の抗IL−17A抗体またはタンパク質のための投薬レジメンは、静脈内投与による1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kgまたは30mg/kgを含み、抗体は以下の投与スケジュール(dosing schedule)の1つ:6つの投薬について4週間毎、次いで、3カ月毎;3週間毎;3mg/kg体重で1回、次いで、1mg/kg体重で3週間毎を用いて与えられる。
【0279】
いくつかの方法においては、異なる結合特異性を有する2つ以上の抗体が同時に投与され、その場合、投与される各抗体の投薬量は指示される範囲内にある。本開示の抗体またはタンパク質は通常、複数の機会に投与される。単一投薬間の間隔は、例えば、毎週、毎月、3カ月毎または毎年であってもよい。また、間隔は患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することにより示される通り、不規則であってもよい。いくつかの方法においては、投薬量は、約1〜1000μg/mlおよびいくつかの方法においては約25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整される。
【0280】
あるいは、抗体またはタンパク質を、持続放出製剤として投与することができ、この場合、低頻度の投与が必要とされる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化する。一般に、ヒト抗体が、最長の半減期を示し、次いで、ヒト化抗体、キメラ抗体、および非ヒト抗体である。投与の投薬量および頻度は、処置が予防的であるか、または治療的であるかどうかに応じて変化してもよい。予防的適用においては、比較的低い投薬量が比較的頻繁でない間隔で、長期間にわたって投与される。いくらかの患者は、その余生にわたって処置を受け続ける。治療的適用においては、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が、疾患の進行が低下もしくは終結するまで、または患者が疾患症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで必要となることもある。その後、患者を予防的レジメで投与することができる。
【0281】
本開示の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関する所望の治療応答を達成するのに有効である、活性成分の量を取得するために変化させることができる。選択される投薬量レベルは、用いられる本開示の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミド、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康および以前の病歴、ならびに医学界で周知の同様の因子などの、様々な薬物動態因子に依存する。
【0282】
本開示の抗IL−17A抗体またはタンパク質の「治療上有効な投薬量(therapeutically effective dosage)」は、疾患症状の重症度の低下、無疾患症状期間の頻度および持続期間の増加、または疾患の苦痛に起因する悪化もしくは障害の防止をもたらし得る。
【0283】
本開示の組成物は、当技術分野で公知の様々な方法の1つまたは複数を用いて1つまたは複数の投与経路によって投与することができる。当業者には明らかであるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化する。本開示の抗体のための投与経路としては、例えば、注射または輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で用いられる語句「非経口投与」は、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内(intrathecal)、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内(intraspinal)、硬膜外および胸骨内(intrastemal)注射および輸注が挙げられる。
【0284】
あるいは、本開示の抗体またはタンパク質を、局所、表皮または粘膜投与経路、例えば、鼻内、経口、経膣、直腸、舌下または局所などの非経口経路により投与することができる。
【0285】
本開示の抗体またはタンパク質を、埋込み体(インプラント)、経皮パッチ、およびマイクロカプセル送達系などの、制御放出製剤などの、迅速な放出に対して抗体を保護する担体を用いて調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製のための多くの方法が特許されているか、または当業者には一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0286】
治療組成物を、当技術分野で公知の医学的デバイスを用いて投与することができる。例えば、一実施形態においては、本開示の治療組成物を、米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号または第4,596,556号に示されたデバイスなどの、針のない皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本開示において有用な周知の埋込み体およびモジュールの例としては、制御された速度で薬剤(medication)を分注するための埋込み可能なマイクロ注入ポンプを示す米国特許第4,487,603号;皮膚を介して薬剤を投与するための治療デバイスを示す米国特許第4,486,194号;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを示す米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための可変流埋込み可能注入装置を示す米国特許第4,447,224号;マルチチャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を示す米国特許第4,439,196号;および浸透圧薬物送達系を示す米国特許第4,475,196号が挙げられる。他の多くのそのような埋込み体、送達系、およびモジュールが、当業者には公知である。
【0287】
ある特定の実施形態においては、本開示の抗体またはタンパク質を、in vivoでの適切な分布を確保するために製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本開示の治療化合物がBBBを通過するのを確保するために(必要に応じて)、例えば、リポソーム中でそれらを製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;および第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞または器官に選択的に輸送され、かくして、標的化された薬物送達を増強する1つまたは複数の部分を含んでもよい(例えば、V.V. Ranade 1989, J. Cline Pharmacol. 29:685を参照されたい)。例示的標的化部分としては、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらの米国特許第5,416,016号を参照されたい);マンノシド(Umezawa et al. 1988, Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P.G. Bloeman et al. 1995, FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. 1995, Antimicrob. Agents Chernother. 39:180);界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al. 1995, Am. J. Physiol.1233:134);p120(Schreier et al. 1994, J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられる;また、Keinanen and Laukkanen 1994, FEBS Lett. 346:123;Killion and Fidler 1994, Immunomethods 4:273も参照されたい。
【0288】
本開示の使用および方法
本開示の抗体またはタンパク質は、in vitroおよびin vivoでの診断的および治療的有用性を有する。例えば、これらの分子を、培養物中、例えば、in vitroもしくはin vivoで、または対象中、例えば、in vivoで細胞に投与して、様々な障害を処置、防止または診断することができる。
【0289】
方法は、IL−17Aと関連する障害および/または自己免疫性および炎症性障害、例えば、関節リウマチ、または乾癬を処置、防止または診断するのに特に好適である。
【0290】
特に、本開示は、IL−17Aと関連する障害および/または自己免疫性および炎症性障害を処置する方法を提供する。ある特定の実施形態においては、方法は、本開示による、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。
【0291】
本開示はまた、細胞を、治療上有効用量(therapeutically effective dose)の本開示の抗体を含む組成物と接触させることによって、標的細胞または組織中でのIL−17AまたはIL−17AFにより誘導されるシグナリング応答を低下させるか、または抑制するための方法も提供する。
【0292】
本開示はまた、細胞を、本開示による抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質などの抗原結合断片と接触させるステップを含む、細胞中のIL6、CXCL1、IL−8、GM−CSFおよび/またはCCL2のレベルを低下させるための方法も提供する。
【0293】
本明細書において、語句「IL−17A/AF媒介性疾患」または「IL−17A/AF関連障害」は、直接的または間接的であっても、疾患または状態の原因、発生、進行、持続性または病理を含む疾患または医学的状態において、IL−17AまたはIL−17AFが役割を果たす全ての疾患および医学的状態を包含する。したがって、これらの用語は、異常なIL−17A/AFレベルと関連するか、もしくはそれを特徴とする状態および/または標的細胞もしくは組織中のIL−17A/AFにより誘導される活性、例えば、IL−6もしくはGRO−アルファの生成を低下させるか、もしくは抑制することによって処置することができる疾患もしくは状態を含む。これらのものは、関節炎、関節リウマチ、または乾癬などの、炎症状態および自己免疫疾患を含む。これらのものは、アレルギーおよびアレルギー状態、過敏性反応、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症および臓器または組織移植拒絶をさらに含む。
【0294】
例えば、本開示の抗体またはタンパク質を、同種移植拒絶または異種移植拒絶を含む、心臓、肺、混合心肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植のレシピエントの処置のために、ならびに骨髄移植後などの移植片対宿主疾患および臓器移植関連動脈硬化症の防止のために用いることができる。
【0295】
本開示の抗体またはタンパク質は、限定されるものではないが、自己免疫疾患および炎症状態、特に、関節炎(例えば、関節リウマチ、進行性慢性関節炎および変形性関節炎)および骨量減少、炎症性疼痛、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎および腸炎性関節炎を含む炎症状態およびリウマチ疾患を含むリウマチ疾患、腱付着部炎、過敏症(気道過敏症と皮膚過敏症の両方を含む)ならびにアレルギーなどの自己免疫成分を含む病因を有する炎症状態の処置、防止または改善にとって有用である。本開示の抗体を用いることができる特定の自己免疫疾患としては、自己免疫性血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、赤芽球癆および特発性血小板減少症など)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性筋疾患(皮膚筋炎)、歯周炎、多発性軟骨炎、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病および過敏性腸症候群など)、内分泌眼病、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、全身性硬化症、線維症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、ブドウ膜炎、乾性角結膜炎および春季カタル、間質性肺線維症、プロテーゼ周囲骨溶解、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群、例えば、特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフローゼ症候群を含む、および含まない)、多発性ミエローマ、他の型の腫瘍、皮膚および角膜の炎症疾患、筋炎、骨埋込み体の緩み、代謝障害(肥満、アテローム性動脈硬化症および拡張型心筋症などの他の心血管疾患、心筋炎、II型糖尿病、および脂質異常症など)、および自己免疫性甲状腺疾患(橋本甲状腺炎など)、小血管および中血管原発性血管炎、巨細胞性動脈炎を含む大血管血管炎、汗腺膿瘍、視神経脊髄炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病、アトピー性および接触性皮膚炎、細気管支炎、炎症性筋疾患、自己免疫性末梢性ニューロパシー、免疫性腎疾患、肝疾患および甲状腺疾患、炎症およびアテローム血栓症、自己炎症性熱症候群、免疫血液障害、ならびに皮膚および粘膜の水疱性疾患が挙げられる。解剖学的には、ブドウ膜炎は、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または全ブドウ膜炎であってもよい。それは慢性または急性であってもよい。ブドウ膜炎の病因は、全身性疾患と関連する自己免疫性もしくは非感染性、感染性、または白点症候群であってもよい。
【0296】
また、本開示の抗体またはタンパク質は、喘息、気管支炎、細気管支炎、特発性間質性肺炎、じん肺症、肺気腫、およびその他の気道の閉塞性または炎症性疾患の処置、防止、または改善にとっても有用であってよい。
【0297】
また、本開示の抗体またはタンパク質は、変形性関節症、骨粗鬆症および他の炎症性関節炎、ならびに加齢に伴う骨量減少、特に、歯周病などの一般的な骨量減少を含む骨代謝の疾患を処置するのに有用であってもよい。
【0298】
さらに、本開示の抗体またはタンパク質はまた、慢性カンジダ症および他の慢性真菌症を処置するのに有用であってもよく、ならびに寄生虫による感染の合併症、および喫煙の合併症、ならびにウイルス感染およびウイルス感染の合併症は有望な処置手段と考えられる。
【0299】
IL−17およびその受容体の阻害は、慢性炎症性疾患の処置のための最も有望な新しい作用様式(MOA)であり、乾癬が、IL−17モジュレーター薬物開発のために現在研究されているいくつかの疾患のうち、最も進んだ適応症である(Miossec P and Kolls JK. 2012, Nat Rev Drug Discov.10:763-76)。いくつかの研究により、中程度から重度の尋常性乾癬を有する患者におけるIL−17Aの遮断が短期間で安全であり、非常に顕著な改善を誘導することが一義的に証明された(例えば、Hueber W, Patel DD, Dryja T, et al 2010, Sci Transl Med. ;2:52ra72)。これらの知見は、予想を超えるものであり、IL−17Aが乾癬の発症における鍵となるシグナリング分子であるという仮説を確認するものであった(Garber K. 2012,Nat Biotechnology 30:475-477)。
【0300】
さらに、最も一般的な多発性硬化症(MS)モデル実験的自己免疫性脳脊髄炎を含むいくつかの動物モデルにおいて、IL−17は炎症プロセスにおいて中枢的なものである(Bettelli E, et al 2008, Nature; 453:1051-57, Wang HH, et al 2011, J Clin Neurosci; 18(10):1313-7, Matsushita T, et al 2013, PLoS One; 8(4):e64835)。IL−17の効果は主に炎症促進性であり、他のサイトカインと相乗作用する。上皮細胞によるケモカイン生成の誘導、マクロファージにおけるインターロイキン(IL)−1b、腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−9の上方調節、ならびにIL6、IL−8およびプロスタグランジンE2の分泌の誘導などのIL−17の効果は、MS病理の多くの態様と良好に適合する。また、マウスにおけるトランスジェニック過剰発現モデルを含む、神経炎症におけるIL−17の中枢的役割に反論するデータもある(Haak S et al 2009, JCI; 119:61-69)。
【0301】
喘息は、気道閉塞の症状により臨床的に示される気道の異質性炎症疾患(heterogeneous inflammatory disease)であり、自発的に、または処置に応答して重症度が変化する。喘息は2型ヘルパーT細胞(Th2)およびその生成物により誘導されると考えられるが、最近のデータにより、Th2の高い遺伝子特性は喘息を有する対象の約50%のみの気道に存在することが示唆されている(Woodruff PG et al 2009, Am J Respir Crit Care Med 180:388-95)。好中球炎症は急性重症喘息において優勢である;喘息を有するいくらかの個体は顕著な喀痰好中球増加症および吸入ステロイドに対する弱い臨床応答を示す;ならびに喀痰好中球増加症は、高用量の吸入および/または経口ステロイドを摂取する喘息個体において顕著である(Wenzel 2012, Nature Med 18:716-25)。
【0302】
喘息の重症度と相関するIL−17Aのレベルの増加が、健康な対照と比較して喘息を有する個体の循環および気道中で報告されている。アレルギー性肺炎症のマウスモデルにおける前臨床試験は、好中球性気道炎症およびステロイド耐性気道過敏性におけるIL−17Aおよびその受容体(IL−17RA)に関する要件を包含していた。かくして、in vitroでのIL−17Aの特性、喘息における量の増加の存在、および疾患の前臨床モデルは、ステロイドに対してあまり応答しない好中球および/または低Th2型の疾患におけるIL−17Aの役割を支援する(Cosmi L et al 2009, Am J Respir Crit Care Med 180:388-95)。
【0303】
かくして、以下の状態一覧は、本開示による抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を用いる処置のための特に好ましい標的を含む:多発性硬化症、乾癬、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、およびループス腎炎。
【0304】
本開示の抗体またはタンパク質を、唯一の活性成分として、または例えば、上記の疾患の処置または防止のために、他の薬物、例えば、免疫抑制剤もしくは免疫調節剤または他の抗炎症剤または他の細胞傷害剤もしくは抗がん剤と一緒に、例えば、それに対するアジュバントとして、またはそれと組み合わせて投与することができる。例えば、本開示の抗体を、DMARD、例えば、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、メトトレキサート、D−ペニシラミン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、タクロリムス、シロリムス、ミノサイクリン、レフルノミド、糖質コルチコイド;カルシニューリン阻害剤、例えば、シクロスポリンAまたはFK506;リンパ球再循環のモジュレーター、例えば、FTY720およびFTY720類似体;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573またはTAFA−93;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えば、ABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプリン;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制相同体、類似体もしくは誘導体;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそのリガンド;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体、例えば、非CTLA4タンパク質配列、例えば、CTLA4Ig(例えば、ATCC68629と指定される)またはその変異体、例えば、LEA29Yに連結されたCTLA4の少なくとも細胞外部分またはその変異体を有する組換え結合分子;接着分子阻害剤、例えば、LFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えば、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシンもしくは5−フルオロウラシル;抗TNF剤、例えば、TNFに対するモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、CDP870、またはTNF−RIもしくはTNF−RIIに対する受容体構築物、例えば、エタネルセプト、PEG−TNF−RI;炎症促進性サイトカインの遮断剤、IL1遮断剤、例えば、アナキンラまたはIL1トラップ、カナキヌマブ、IL13遮断剤、IL4遮断剤、IL6遮断剤、他のIL17遮断剤(セクキヌマブ、ブロアダルマブ、イクセキズマブなど);ケモカイン遮断剤、例えば、プロテアーゼ、例えば、メタロプロテアーゼの阻害剤または活性化因子、抗IL15抗体、抗IL6抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗CD20抗体、NSAID、例えば、アスピリンまたは抗感染剤(一覧は上記の薬剤に限定されない)と組み合わせて用いることができる。
【0305】
上記により、本開示はさらなる態様において、
本明細書に開示される治療上有効量の抗IL−17A抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質と、例えば、上記に示されたような、免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症性化学療法剤または抗感染剤である、少なくとも1つの第2の薬物物質とを、例えば、同時に、または連続的に同時投与する(co-administration)工程を含む上記で定義された方法、
【0306】
または、治療上有効量のa)本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質と、b)例えば、上記に示されたような、免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症性化学療法剤または抗感染剤から選択される少なくとも1つの第二の物質とを含む、治療的組合せ(therapeutic combination)、例えば、キット
を提供する。キットは、その投与のための説明書を含んでもよい。
【0307】
本明細書に開示される抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を他の免疫抑制/免疫調節剤、抗炎症性化学療法または抗感染療法と共に投与する場合、同時投与される組合せ化合物の投薬量は勿論、用いられる同時薬物(co-drug)の種類、例えば、それがDMARD、抗TNF、IL1遮断剤その他であるかどうか、用いられる特定の薬物、処置される状態などに応じて変化する。
【0308】
一実施形態においては、抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質を用いて、IL−17Aのレベル、またはIL−17Aを含有する細胞のレベルを検出することができる。これは、例えば、試料(in vitroの試料など)および対照試料を、抗IL−17A抗体(またはタンパク質)と、抗体とIL−17Aとの間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることにより達成することができる。抗体(またはタンパク質)とIL−17Aとの間で形成される任意の複合体を、試料および対照中で検出および比較する。例えば、ELISAおよびフローサイトメトリーアッセイなどの、当技術分野で周知の標準的な検出方法を、本開示の組成物を用いて実施することができる。
【0309】
したがって、一態様において、本開示は、試料中のIL−17A(例えば、ヒトIL−17A抗原)の存在を検出するため、またはIL−17Aの量を測定するための方法であって、試料、および対照試料を、抗体またはその部分とIL−17Aとの間の複合体の形成を可能にする条件下で、IL−17Aに特異的に結合する、本開示の抗体もしくはタンパク質、またはその抗原結合部分と接触させる工程を含む、前記方法をさらに提供する。次いで、試料と対照試料との間の複合体形成の差異が試料中のIL−17Aの存在を示す、複合体の形成を検出する。
【0310】
また、本開示の組成物(例えば、抗体、タンパク質、ヒト抗体および二特異的分子)と、使用のための説明書とからなるキットも本開示の範囲内にある。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬、または本開示の1つもしくは複数のさらなる抗体もしくはタンパク質(例えば、第1の抗体とは異なる標的抗原上のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)をさらに含有してもよい。キットは、典型的には、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上で、もしくはそれと共に供給される、またはそうでなければキットに付随する任意の文書(writing)、または記録された材料を含む。キットは、患者が上記で定義されたような抗IL−17A抗体処置に応答する群に属するかどうかを診断するための手段をさらに含んでもよい。
【0311】
完全に説明された本開示を、以下の実施例および特許請求の範囲によってここでさらに例示するが、これらは例示的なものであり、さらなる限定を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0312】
図1】XAB1 Fabの三次元構造を提供する図である。図1Aは空間充填表示である。図1Bは略画表示である。
図2】ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。図2Aは空間充填表示における2つのXAB1 Fv断片を示し、図2Bは略画表示における2つのXAB1 Fv断片を示す。
図3-1】実施例に記載のELISA結果のグラフを示す図である。グラフ番号は以下のような候補指定に対応する:1はMB440である;2はMB464である;3はMB468である;4はMB444である;5はMB435である;6はMB463である;7はXAB1である。図3Aは正規化されたシグナル 対 Fab濃度(M)を示すグラフである。図3Bは正規化された残存シグナル 対 洗浄インキュベーション時間(時間)を示すグラフである。図3Cは正規化されたシグナル 対 Fab競合剤濃度(M)を示すグラフである。
図3-2】実施例に記載のELISA結果のグラフを示す図である。グラフ番号は以下のような候補指定に対応する:1はMB440である;2はMB464である;3はMB468である;4はMB444である;5はMB435である;6はMB463である;7はXAB1である。図3Aは正規化されたシグナル 対 Fab濃度(M)を示すグラフである。図3Bは正規化された残存シグナル 対 洗浄インキュベーション時間(時間)を示すグラフである。図3Cは正規化されたシグナル 対 Fab競合剤濃度(M)を示すグラフである。
図4】ヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。図4Aは空間充填表示における2つのXAB2 Fv断片を示し、図4Bは略画表示において示される2つのXAB2 Fv断片を示す。
図5】詳細図としてのヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。
図6】ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。図6Aは空間充填表示における2つのXAB5 Fv断片を示し、図6Bは略画表示における2つのXAB5 Fv断片を示す。
図7】抗体L−CDR1の詳細図としての、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。
図8】ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。図8Aは空間充填表示における2つのXAB4 Fv断片を示し、図8Bは略画表示における2つのXAB4 Fv断片を示す。
図9】抗体L−CDR1の詳細図としての、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。
図10】抗体L−CDR2の詳細図としての、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する図である。
図11】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおけるXAB4に関する治療スコアを示すグラフである。
図12】EAEモデルにおける動物の治療体重変化(%)を示すグラフである。
図13】EAEモデルにおける累積治療スコアを示すグラフである。
図14】EAEモデルにおける処置前後の治療スコアの比較を示すグラフである。
図15】EAEモデルにおける処置前後の治療スコアの比較を示すグラフである。
図16】EAEモデルにおけるXAB4に関する予防スコアを示すグラフである。
図17】EAEモデルにおける動物の予防体重変化(%)を示すグラフである。
図18】EAEモデルにおける累積予防スコアを示すグラフである。
図19】EAEモデルにおける最大予防スコアを示すグラフである。
図20】EAEモデルにおけるEAE発症(開始(onset))を示すグラフである。
図21】ヒトアストロサイトモデルにおけるIL−6放出に対するXAB4の拮抗効果を示すグラフである。
図22】ヒトアストロサイトモデルにおけるCXCL1放出に対するXAB4の拮抗効果を示すグラフである。
図23】ヒトアストロサイトモデルにおけるIL−8放出に対するXAB4の拮抗効果を示すグラフである。
図24】ヒトアストロサイトモデルにおけるGM−CSF放出に対するXAB4の拮抗効果を示すグラフである。
図25】ヒトアストロサイトモデルにおけるCCL2放出に対するXAB4の拮抗効果を示すグラフである。
【実施例】
【0313】
XAB1は、ヒトIgG1/κモノクローナル抗体である。それを標準的な分子生物学技術を用いて作製した。簡単に述べると、Medarexシステムを用いた。マウスを、組換えヒトIL−17Aで免疫した。マウスを、CO吸入により安楽死させ、脾細胞を収獲し、PEG4000を用いてミエローマ細胞系と融合させた。融合した細胞を腹膜細胞のフィーダー層と共にウェル中に播種した。培養細胞から上清を取得し、ELISAによりIL−17A反応性mAbについてアッセイした。IL−17A mAbの生成について陽性のクローンを選択し、取り出した。
【0314】
in vitroアッセイにおけるIL−17Aに対する結合親和性、IL−17Aのその受容体への結合を遮断する能力、およびIL−17Aにより媒介される生物効果を遮断する能力などの、初期の有望な抗体/抗原結合特性に基づいて、XAB1の分泌を担うハイブリドーマをさらなる特徴付けのために同定した。
【0315】
XAB1のアミノ酸配列は、配列番号14(重鎖)および配列番号15(軽鎖)である。XAB1を、その後の親和性成熟のために選択した。
【0316】
構造誘導性親和性成熟に対する第1のステップとして、遊離状態のXAB1 FabならびにヒトIL−17Aとの対応するFv複合体の結晶構造を、以下に記載のように決定した。ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の三次元構造の分析により、合理的な親和性成熟プロセスと同時に、その代わりとして、より無作為化されたプロセスを実行することができた。さらなる詳細を以下に提供する。
【0317】
さらに、X線結晶学を用いて、作製されたいくつかの親和性成熟したバリアント抗体を特徴付けた。親和性成熟したバリアントからの結晶データの分析により、バリアント抗体の結合挙動のより深い理解が可能になり、以下でさらに説明されるように、いくつかの予想外の特性が発見された。
【0318】
実施例1 遊離状態のXAB1 Fabの結晶構造
(i)材料および方法
標準的な分子生物学プロトコールを用いて、XAB1 Fab抗体断片を取得した。簡単に述べると、Fabをクローニングし、重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグと共に大腸菌(E.coli)W3110中で発現させた。組換えタンパク質を、Ni−キレートクロマトグラフィー、次いで、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中、SPX−75カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。次いで、XAB1 Fabを限外濾過により10.4mg/mlまで濃縮し、結晶化させた。
【0319】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロップ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパク質ストックを、40%PEG300、0.1Mリン酸−クエン酸ナトリウムpH4.2を含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。全液滴サイズは0.4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶をナイロン製cryo−loop中に載せ、液体窒素中で直接的に簡易冷却した。
【0320】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡単に述べると、2.1Å解像度のX線データを、Swiss Light Source、ビームラインX10SAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射を用いて収集した。合計で、それぞれ1.0°の振動の180の画像を、190mmの結晶−検出器距離で記録し、HKL2000ソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結晶は、セルパラメータa=51.63Å、b=132.09Å、c=77.25Å、α=90.00°、β=98.88°、γ=90.00°および非対称単位中の1個のXAB1 Fab分子を有する空間群C2に属していた。2.1Å解像度でのR−symは10.4%であり、データ完全性は99.0%であった。
【0321】
構造を、プログラムPHASERを用いる分子置換により決定した。V/VおよびCH1/Cドメインの検索モデルを、PDBエントリー1HEZから作成した。反復モデルの構築および精密化を、さらなる有意な改善をモデルに対して行うことができなくなるまで、プログラムCoot(Crystallographic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(Crystallography & NMR eXplorer)バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.188および0.231であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.004Åおよび0.9°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0322】
(ii)結果
XAB1 FabのX線精密化の結果を表9に提供し、三次元構造を図1に示す。
【0323】
【表9】
【0324】
図1は、実施例1で得られたXAB1 Fabの三次元構造を提供する。図1Aは、空間充填表示である。図1Bは、略画表示である。XAB1 Fabの重鎖および軽鎖は、それぞれ暗灰色および明灰色で見える。
【0325】
実施例2 ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の結晶構造:構造誘導性親和性成熟(structure-guided affinity maturation)のためのパラトープの分析
(i)材料および方法
標準的な分子生物学プロトコールを用いて、XAB1 Fv抗体断片を取得した。簡単に述べると、Fvをクローニングし、重鎖上のC末端ヘキサヒスチジンタグおよび軽鎖上のC末端Strepタグと共に大腸菌(E.coli)W3110中で発現させた。組換えタンパク質を、Ni−キレートクロマトグラフィーにより精製した。
【0326】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB1 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.1mg)を過剰のFv(2.7mg)と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中でのS100サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体を限外濾過により21.2mg/mlまで濃縮し、結晶化させた。
【0327】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロップ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパク質ストックを、10%PEG20,000、0.1MビシンpH9.0、2.0%(v/v)ジオキサンを含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。全液滴サイズは0.4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を結晶化バッファーと20%PEG20,000、30%グリセロールとの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で簡易冷却した。
【0328】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡単に述べると、3.0Å解像度のX線データを、Swiss Light Source、ビームラインX10SAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射を用いて収集した。合計で、それぞれ1.0°の振動の110の画像を、300mmの結晶−検出器距離で記録し、HKL2000ソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結晶は、セルパラメータa=184.31Å、b=55.81Å、c=70.99Å、α=β=γ=90°を有する空間群P22に属していた。3.0Å解像度でのR−symは11.2%であり、データ完全性は99.9%であった。
【0329】
構造を、プログラムPHASERを用いる分子置換により決定した。XAB1 Fvの検索モデルを、以前に決定されたXAB1 Fabの結晶構造から作成した(実施例1を参照されたい)。IL−17Aの検索モデルを、公開されたヒトIL−17F結晶構造(PDBエントリー1jpy)から作成した。反復モデルの構築および精密化を、さらなる有意な改善をモデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystallographic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(Crystallography & NMR eXplorer)バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.215および0.269であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.007Åおよび1.0°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0330】
(ii)結果
分子置換計算により、1個のIL−17Aホモ二量体と、結合した2個のXAB1 Fv断片とを含む二量体複合体が示された。ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体のX線精密化の結果を表10に提供し、この複合体の三次元構造を図2に示す。それぞれのXAB1 Fvは両方のIL−17Aサブユニットへの接触を作るが、分子間接触の大部分(埋まった表面の約96%)は1つのIL−17Aサブユニットのみによって寄与される。
【0331】
【表10】
【0332】
図2は、実施例2で得られたような、ヒトIL−17AとのXAB1 Fv複合体の三次元構造を提供する。図2Aは、空間充填表示における2つのXAB1 Fv断片を示す;IL−17Aホモ二量体は略画表示で示される。図2Bは、略画表示における2つのXAB1 Fv断片を示す;IL−17Aホモ二量体は空間充填表示で示される。XAB1 Fvの重鎖および軽鎖は、それぞれ、暗灰色および明灰色で示される。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖は明灰色で示され、他方は暗灰色で示される。
【0333】
複合体の詳細な分析を実施した。プログラムCootおよびPymolを用いる結晶構造の注意深い視覚的検査を実行し、抗体−抗原境界面に埋まったタンパク質表面の量を、CCP4プログラムスイートのプログラムAREAIMOLを用いて算出した。抗体と抗原の原子間の3.9Åのカットオフ距離を用いて、分子間接触を定義した。結合の概要を以下のようにまとめることができる。XAB1の結合は対称的である;それぞれのFv断片はIL−17Aホモ二量体上の等価なエピトープに結合する。
【0334】
それぞれのFv断片の結合は、平均1732Åの組み合わせた表面上に埋まっており、30の抗体および25のIL−17Aアミノ酸残基を含んでいた。XAB1軽鎖(約560Å)の埋まった表面への寄与は、重鎖のもの(約275Å)よりも大きかった。さらに、CDRH2はIL−17Aへの直接的接触を作らず、親和性成熟のための機会を提供するにはタンパク質抗原から遠すぎると考えられた。CDRH1の寄与は1個のアミノ酸側鎖のみ(Tyr32)に限られると考えられた;このCDRも、アミノ酸置換を介する親和性成熟のための機会を提供するにはIL−17Aから遠すぎた。XAB1 CDRH3は、IL−17Aと複数の緊密な接触を作った。しかしながら、この領域における構造の注意深い検査は、点突然変異によりこれらの接触をさらに増強するための機会を示すことができなかった;したがって、CDRH3は、親和性増強のための標的領域として好適ではないと見なされた。対照的に、軽鎖CDRの検査により、親和性成熟のための複数の機会が示された。3つの軽鎖CDRのうち、CDRL1は最も有望であると考えられ、この観察に基づいて、本発明者らはIL−17A残基Arg124、Phe133およびTyr85への接触を強化する試みにおいて軽鎖の位置30〜32を無作為化することを提唱した。
【0335】
合理的設計による親和性成熟
上記の結果に基づいて、ホモ二量体IL−17AとのXAB1境界面が比較的小さく、軽鎖からの優勢な寄与、CDRH2からの関与がなく、CDRH1により主に間接的な寄与(すなわち、CDRH3の安定化による)を特徴とすることが見出された。したがって、XAB1の重鎖は親和性成熟のための有望な機会を提供するとは考えられなかった。
【0336】
対照的に、XAB1軽鎖は、最大4個のアミノ酸残基の任意の挿入を有するアミノ酸残基30〜32(CDRL1)、アミノ酸51〜53および56(CDRL2)ならびに最大4個のアミノ酸残基の任意の挿入を有するアミノ酸残基92および93においていくらかの機会を提供した。
【0337】
ホモ二量体ヒトIL−17Fに関する公開された結晶構造、およびヒト受容体IL−17RAとの複合体にあるホモ二量体IL−17Fの構造の利用可能性により、結晶化されたIL−17AおよびXAB1(およびそのバリアント)と複合体にあるIL−17Aの観察された構造に基づいて予測を行うことができた。
【0338】
IL−17FとIL−17Aとの間で予測された構造類似体(配列同一性および相同性に基づく)を精査した。IL−17FおよびIL−17Aは、構造的類似性を担持していた。本発明者らは、IL−17Aが公開されたIL−17F/IL−17RA複合体について示されたもの(Ely LK et al 2009, Nat Immunol. 10:1245-51)と同じ様式でその受容体のN末端ドメインに結合するとの仮説を立てた。
【0339】
他の種から誘導されるIL−17Aの配列と共に、ヒトIL−17AおよびIL−17Fの既知の配列の観察された構造および比較に基づいて、本発明者らは、いくつかのさらなる予測を行った。
【0340】
XAB1(およびXAB1により標的とされるエピトープに対する親和性が改善された、それから誘導される抗体バリアント)は、ヒトIL−17Aに高度に特異的であると予想された。そのような抗体は他の種に由来するIL−17Aとのいくらかの交差反応性を保持すると仮定された(種間の高い程度の保存された配列同一性または相同性に基づく)。しかしながら、利用可能な配列データおよび構造予測に基づいて、IL−17Aの種バリアントとのどの程度の交差反応性を予想することができるかは明らかではなかった。他のインターロイキンとの構造的類似性の欠如を考慮すれば、そのような分子(ヒトまたは他の種に由来する)との交差反応性は非常に可能性が低いと予想された。
【0341】
さらに、IL−17AとIL−17Fの配列間の差異(特に、N末端領域)により、本開示の抗IL−17A抗体がIL−17Fに結合しないという予測が得られた。例えば、2つの結晶構造の重ね合わせにより、立体障害がこれらの抗体とIL−17Fとの間の結合を阻害することが示された。さらに、IL−17AFヘテロ二量体の構造への外挿により、特に、N末端領域におけるそのような干渉が抗体のIL−17AFヘテロ二量体への結合を阻害し、それによって、IL−17AFへの結合の欠如、すなわち、IL−17AFヘテロ二量体に関するこれらの抗体による交差反応性の欠如をもたらすことも示唆された。
【0342】
実施例3 親和性成熟抗体バリアントの作製
初期抗体XAB1の実際の親和性成熟は、上記で考察された理由のため、軽鎖に焦点を当てたものであった。本研究は、3つのステップ:(i)ライブラリー作製、(ii)ライブラリースクリーニング、および(iii)候補特徴付けで実行された。
【0343】
取り扱いが容易であるため、タンパク質工学研究(すなわち、親和性成熟)を、Fab断片形式で実行した。操作の後に候補を完全なIgGに初期化して戻した。
【0344】
(i)ライブラリー作製
軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列を変異させて、遺伝子バリアントのライブラリーを作出した。2つの異なる手法(AおよびB)を、ライブラリー作製のために用い、2つの別々のライブラリーを提供した。
【0345】
1)方法A−エラープローンPCRによる無作為変異:
XAB1の軽鎖の可変ドメインをコードするDNA領域を、エラープローンPCRを用いて無作為に変異させた。より詳細には、この領域を、高頻度で変異を導入するポリメラーゼMutazyme IIを用いて増幅させた(さらなる詳細については、Stratagene #200550により供給されるGeneMorph II無作為突然変異誘発キットと共に供給される指針を参照されたい)。しかしながら、任意の好適な無作為変異技術または戦略を用いることができる。
【0346】
次いで、XAB1の発現ベクター中に切断および貼付することにより、PCR断片バリアントのプールをクローニングした。本質的には、親である非変異配列を発現ベクターから切出し、その場所に貼付された無作為突然変異誘発された配列で置き換えた。標準的な分子生物学技術を用いて、これを達成した。
【0347】
この結果、様々な無作為に変異した可変ドメイン配列を含む発現ベクターバリアントのライブラリーが得られた。
【0348】
2)方法B−合理的設計による変異:
この手法の下では、ライブラリーの作製を、親和性成熟の先駆けとして実行された構造分析により誘導した。特定のアミノ酸残基(特に、XAB1の軽鎖のCDR1中の)を、上記の結晶構造から誘導されるエピトープおよびパラトープ情報に基づいて標的化した。
【0349】
結晶構造情報に基づいて選択された、3つのアミノ酸残基を完全に無作為化した。標準的な分子生物学的手法を、構築のために用いた。
【0350】
第1に、縮重オリゴヌクレオチドを用いて、適切なCDRをコードする可変領域の断片と、軽鎖フレームワークの第1の部分とをPCRにより増幅した。すなわち、CDRをコードするオリゴヌクレオチドを、規定の位置(複数可)に様々な塩基を提供するような方法で合成した。オリゴヌクレオチドの設計により、NNK縮重コドン(Nは4つ全ての塩基、A、T、CおよびGを表し、KはGおよびTを表す)によるCDR中の特異的に標的化されたアミノ酸位置の無作為化が可能になり、これらの位置で20種全部の天然アミノ酸が可能になった。
【0351】
この第1のステップの後、第1のものと重複し、残りの部分の軽鎖をコードする第2の断片も、PCRにより増幅した。次いで、両断片を「アセンブリ」PCRにより集合させ、完全な可変軽鎖を作製し、「切断および貼付」様式で発現ベクター中にクローニングし戻した。それにより、親配列を、一定範囲の合理的に変異した配列と置き換え、それによって特定のアミノ酸位置で、20種全部のアミノ酸を表した。
【0352】
(ii)ライブラリースクリーニング
一度、XAB1バリアントをコードする配列を含むライブラリーが作製されたら、それらをスクリーニングして、親XAB1配列よりも優れた特徴、例えば、IL−17Aに対するより高い親和性を有するものを選択した。
【0353】
2つのスクリーニング技術を用いた。第1に、高効率スクリーニングを、「コロニー濾過スクリーニング」(CFS)により行った。このアッセイにより、多数のクローンの好都合のスクリーニングが可能になった。それはELISAスクリーニング前に陽性ヒットを減少させ、特に、ライブラリーサイズが「方法B」におけるライブラリーサイズ(8000のみ)と比較してはるかに大きい(>10)ため、無作為手法「方法A」にとって有用であった。ELISAスクリーニングは、10個以下のクローンにとって好都合であり、より定量的な結果を与える。
【0354】
1)コロニー濾過スクリーニング(CFS):
CFSのプロトコールは、Skerra et al. 1991, Anal Biochem 196:151-155に基づくものであった。いくつかの適合化を行った。
【0355】
Fabバリアントライブラリーを発現する大腸菌(E.coli)を、LB寒天およびグルコースを含有するペトリ皿の上、フィルター上で増殖させた。同時に、PVDF膜を標的タンパク質(IL−17A)で被覆した。被覆された膜を寒天プレート上に置いた。大腸菌(E.coli)を発現するFab断片のコロニーを含むフィルターを、膜の上に置いた。細胞により発現されたFab断片はコロニーから拡散し、標的IL−17Aに結合した。次いで、かくしてPVDF膜上に捕捉されたFab断片を、ウェスタン染色のためにアルカリホスファターゼとコンジュゲートさせた二次抗体を用いて検出した。結合特性が改善されたバリアントのみを選択するための条件は、参照としてXAB1を用いて以前に確立されたものであった。
【0356】
より具体的には、大腸菌(E.coli)をライブラリーで形質転換した後、細胞を、LB寒天+1%グルコース+対象の抗生物質を含有するペトリ皿上に置いたDurapore(商標)膜フィルター(0.22μm GV、Millipore(登録商標)、カタログ番号GVWP09050)上に塗布した。プレートを30℃で一晩インキュベートした。
【0357】
PVDF膜(Immobilon−P、Millipore(登録商標)、カタログ番号IPVH08100)をメタノール中で予め湿らせ、PBS中で洗浄し、PBS中の1μg/mlのhuIL−17A溶液で被覆した。膜を室温で一晩インキュベートした。被覆後、膜をTris緩衝生理食塩水(TBS)+0.05%Tween(TBST)中で2回洗浄し、5%ミルクTBST中、室温で2時間遮断した。次いで、膜をTBST中で4回洗浄し、1mM IPTGを含む2xYT培地中に浸した。捕捉膜と呼ばれるこの膜を、1mM IPTG+対象の抗生物質を含むLB寒天プレート上に置き、上にコロニーを含むDurapore膜で覆った。得られるサンドイッチを30℃で4時間インキュベートした。
【0358】
このインキュベーションの後、捕捉膜をTBSTで4回洗浄し、室温で1時間、5%ミルクTBST中でブロッキングした。次いで、膜をTBSTで1回洗浄し、室温で1時間、二次抗体(抗huカッパ軽鎖抗体、アルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲート、Sigma#A3813、2%ミルクTBST中で1:5000に希釈)と共にインキュベートした。その後、膜をTBSTで4回、TBS中で1回洗浄し、基質溶液(SigmaFast BCIP/NBTタブレット、10ml HO中で1タブレット)中でインキュベートした。シグナルが予想された強度に達した時、膜を水で洗浄し、乾燥させた。
【0359】
捕捉膜上でシグナルを展開させた後、親XAB1よりも強いシグナルを与えるコロニーを拾い、以下に記載の2回目のELISAスクリーニングに進めさせた。
【0360】
2)ELISAスクリーニング:
CFSの後、ELISAを用いて、CFSにより選択された候補をスクリーニングした。簡単に述べると、エラープローンPCR突然変異誘発により同定された比較的少数のバリアント(すなわち、ライブラリーA)について、ELISAを96穴形式で手動で行った。対照的に、合理的設計(方法B)により構築されたライブラリーについては、IL−17Aに対するその異なる結合親和性を識別し、最も高い親和性を有するクローンを同定することができるために、より多数の改善されたクローンをELISAレベルでスクリーニングする必要があった。384穴プレート形式でその目的のためにELISAロボットを用いた。しかしながら、ELISAプロトコールはそれぞれ同じであったが、唯一の相違は試薬の量であった。
【0361】
a)細胞培養:
クローンを、最初に2xYT培地+1%グルコース+対象の抗生物質中、30℃、900rpmで一晩増殖させた。これらの培養物を含有するプレートを、マスタープレートと呼んだ。次の日、マスタープレートからの培養物のアリコートを、2xYT培地+0.1%グルコース+対象の抗生物質を含有する発現プレートに移した。これらのプレートを30℃、900rpmで約3時間インキュベートした。次いで、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)溶液を0.5mMの最終濃度で添加した。プレートを30℃、900rpmで一晩インキュベートした。
【0362】
次の日、溶解バッファー((2x)ホウ酸緩衝生理食塩水(BBS)溶液(Teknova#B0205)+2.5mg/mlリゾチーム+10u/mlベンゾナーゼ)を培養物に添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、遮断のために12.5%ミルクTBSTを添加した。30minインキュベートした後、細胞溶解物を2%ミルクTBST中で1:10に希釈し、ELISAプレート中に移した。
【0363】
b)ELISA:
ELISAプレート(Nunc Maxisorp)を、1時間、1μg/mlのhuIL−17A溶液で被覆した。プレートをTBSTで1回洗浄し、5%ミルクTBSTで1時間遮断した。遮断後、プレートをTBSTで3回洗浄した後、希釈した細胞溶解物をプレート上に載せ、1時間インキュベートした。その後、プレートをTBSTで3回洗浄し、APコンジュゲート化二次抗体と共に1時間インキュベートした。
【0364】
最後にプレートをTBSTで3回洗浄した後、基質溶液(AttoPhos基質セット、Roche#11681982001)と共にインキュベートした。全プロセスを室温で実施した。
【0365】
上記の「古典的」ELISAに加えて、標的タンパク質に対する非常に高い親和性(ピコモル濃度範囲)を有するクローン間のより良好な識別のために、改変型ELISAも行った。以下に詳述するように、「オフレート(off-rate)」ELISAおよび「競合」ELISAを、この目的のために開発した。
【0366】
c)「オフレート」ELISA:
このアッセイのために、「古典的」ELISAプロトコールと比較した改変は、結合ステップ後の洗浄ステップであった(ELISAプレート中での細胞溶解物のインキュベーション)。「古典的」プロトコールにおいては、プレートをTBSTで3回洗浄した。洗浄溶液を分注し、インキュベーション時間なしにすぐに吸引した。「オフレート」ELISAについては、プレートを少なくとも3時間で6回洗浄した。この長い洗浄は、アッセイのストリンジェンシーを増大させ、遅いオフレートを有するクローンを同定することができた。
【0367】
d)「競合」ELISA:
この改変型ELISAプロトコールは、結合ステップの後に追加のステップを含んでいた。細胞溶解物のインキュベーション後、プレートをTBSTで3回洗浄した後、親XAB1の溶液(2%ミルクTBST中の200nM)を室温で一晩インキュベートした。過剰の親Fabと一緒のこの長いインキュベーションにより、「オフレート」ELISAの場合と同様、ピコモル濃度範囲の親和性を有するクローン間のより良好な識別をもたらす、遅いオフレートを有するクローンを同定することができた。残りのプロトコールは、「古典的」ELISAプロトコールと同様であった。ライブラリーに由来するFabバリアントは、競合のために用いられた親XAB1 Fabではなく、重鎖のC末端にFlagタグを有していたため、この場合に用いられた二次抗体は、APコンジュゲート化抗Flagタグ抗体であった。
【0368】
(iii)候補特徴付け
スクリーニング中に同定されたヒットを、さらなる物理化学的特徴付けのために、IL−17Aに結合する高い親和性を確認するため、および/またはさらなるアッセイにおける他の有利な特性のため、より大規模で生成した。これらのものは以下により詳細に記載される。
【0369】
(iv)結果:XAB1の親和性成熟後の候補のスクリーニングおよび初期特徴付け
1)無作為突然変異誘発手法(方法A):
エラープローンPCRライブラリー作製後の変異率は、遺伝子あたり2〜3個の変異でピークに達することがわかった。約3x10個のクローンを、コロニー濾過スクリーニングによりスクリーニングし、いくつかの94のクローンを改善されたものと同定し、結合、オフレートおよび競合ELISAに進行させた。配列決定の結果と組み合わせたELISAデータは、改善のための3つの潜在的なホットスポット、LCDR1中の位置28のGlyからVal(G28V);フレームワーク3中の位置66のGlyからVal(G66V)またはSer(G66S);LCDR3中のAsn92からAsp(N92D)(データは示さないが、位置はXAB2、VL、すなわち、配列番号25のものと同一である)を強調する6つの候補の同定をもたらした。
【0370】
用いられた大腸菌(E.coli)株はリードスルーを可能にするアンバーサプレッサーであるため、停止コドンは1つのクローンにおいて観察されたが、関連していなかった。得られたデータに基づいて、G28VおよびG66V変異が最良の改善を引き起こすと考えられた。記載の2つの点突然変異を担持するXAB1のバリアントを、標準的な分子生物学技術によって作製した。潜在的な翻訳後脱アミド化部位(N92、S93)の除去が有益であるかどうかを試験するために、それに加えてN92D置換を有するさらなるバリアントをクローニングした。より詳細なプロファイリングを、これらの2つのバリアント、特に、XAB2を最終的にもたらすXAB_A2と呼ばれる三重変異バリアントに対して行った。XAB2においては、Kabatの定義によるアミノ酸番号1〜23はフレームワーク1であり、アミノ酸番号24〜34(Kabat)はLCDR1であり、アミノ酸番号35〜49(Kabat)はフレームワーク2であり、アミノ酸50〜56(Kabat)はLCDR2であり、アミノ酸57〜88(Kabat)はフレームワーク3であり、アミノ酸89〜97(Kabat)はLCDR3であり、アミノ酸98〜107(Kabat)はフレームワーク4である。本開示の実施形態による他のVL配列の同じ細分も適用される。
【0371】
かくして、上記のG66V置換はフレームワーク領域中にあり、外側ループと呼ばれる。このフレームワーク領域は、いくつかの場合、結合に寄与することができる。利用可能な構造情報に基づいて、この変異が実際にIL−17Aの領域と相互作用することができ、結晶構造から分解することができないが、外側ループに近接し得ることが回顧的に示唆された。
【0372】
2)合理的突然変異誘発手法(方法B):
無作為化された位置でのアミノ酸分布のスナップショットを、32の無作為に拾ったメンバーの配列決定により作成した。有意な偏りはなかったが、この少数の配列を用いた場合、統計処理を行うことはできない。8000の理論的ライブラリーサイズをオーバーサンプリングした約4x10個のクローンをスクリーニングした。多数のヒットが同定され、2630個のクローンをELISAスクリーニングに進行させた。結合、オフレートおよび競合ELISAを実施し、最も高い改善を示した60個のクローンを配列決定した。これらの60個のクローンの中で、22個のユニークな配列が見出されたが、その結果を表11にまとめる。
【0373】
【表11】
【0374】
22個のユニークなクローンのうち、6個を、0.5Lスケールの標準的な大腸菌(E.coli)発現ならびにIMAC(Ni−NTA)およびSECによる2ステップの精製のために選択した。次いで、精製されたFabを用いて、ELISAにより結合の改善を確認した。
【0375】
XAB1と比較した、選択および精製されたFab候補のELISAの結果を図3に示し、ここでグラフ番号は以下のような候補指定に対応する:1はMB440である;2はMB464である;3はMB468である;4はMB444である;5はMB435である;6はMB463である;7はXAB1である。
【0376】
図3Aは、正規化されたシグナルとFab濃度(M)を示すグラフである。全ての選択されたクローンがXAB1よりも高いシグナルをもたらすことがわかる。図3Bは、正規化された残存シグナルと洗浄インキュベーション時間(時間)を示すグラフである。全ての選択されたクローンが、XAB1よりも高いシグナルをもたらす。図3Cは、正規化されたシグナルとFab競合剤濃度(M)を示すグラフである。再度、全ての選択されたクローンがXAB1よりも高いシグナルをもたらすことがわかる。
【0377】
実施例4 潜在的な翻訳後脱アミド化部位の標的化
本発明者らは、アミノ酸モチーフ、アスパラギン、次いでグリシン(NG)、またはより低い程度で、セリン(NS)の場合も、翻訳後脱アミド化を受けやすいと仮定した。そのようなモチーフは抗体XAB1のL−CDR2(位置56/57)およびL−CDR3(92/93)中に存在する。4つのIgGバリアントを作製して、結合および活性特性に影響することなくNG部位を除去することができるかどうかを試験した。これらの4つの点突然変異バリアントを標準的な分子生物学手順によりクローニングし、100mlスケールでHEK細胞の標準的な一過的トランスフェクションにより生成し、プロテインAカラムにより精製した。
【0378】
精製されたIgGバリアントをin vitro中和アッセイ(例えば、実施例12および13に記載のような)において分析して、その活性を親XAB1 IgGと比較した。その結果、これらの4つのバリアントのうち、3つの活性が低下したことが示された。しかし、候補XAB_B12(変異N56Q)は、親XAB1と比較して活性を保持していた。
【0379】
【表12】
【0380】
かくして最も好適な置換を同定したが、それは親和性成熟プロセス中に同定された最も有望なヒットに導入され、XAB2(XAB_A2 N56Q)、XAB3(MB468 N56Q)、XAB4(MB435 N56Q)が得られた。それらをHEK細胞の標準的な一過的トランスフェクションにより生成し、XAB5(MB435)と共にプロテインAカラムにより精製したところ、NG部位を依然として担持していた。
【0381】
NGモチーフはXAB2、XAB3、XAB4について除去(N56Q)されたが、XAB5には依然として存在していた。無作為親和性成熟手法中に見出されたように、L−CDR3中のNSモチーフはXAB2において除去された(N92D)。したがって、潜在的な部位の脱アミド化に対する感受性を試験するための最適なセットのバリアントが利用可能であった。
【0382】
4つの精製された候補をpH8のバッファー中に希釈し、40℃でインキュベートして、脱アミド化反応を起こさせた。いくつかの時点でアリコートを取得し、当業者には周知の原理に従う陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)により脱アミド化の程度を決定し、細胞に基づくアッセイによりin vitroでの中和活性を決定した(例えば、実施例12および13に記載のように)。
【0383】
CEXの結果により、任意のIgGについて予想された通り、おそらくは抗体フレームワーク中の翻訳後改変部位のため、経時的な酸性バリアントの百分率の増加が示されたが、増加の程度は、他の候補よりもXAB5についてより高かった、すなわち、1週間後で72%対46%および4週間後で94%対83%であった。最後に、in vitro中和活性アッセイの結果はCEXの結果と相関し、XAB5は強制的な脱アミド化条件中、4週間のインキュベーション後に活性を失ったことを示している。当業者には周知のサイズ排除クロマトグラフィー−多角度光散乱法(SEC−MALS)を用いて、試料中の凝集レベルをモニタリングした。
【0384】
そのデータを表13にまとめる。
【0385】
【表13】
【0386】
これらのデータは、抗体活性に対する効果を有していた潜在的な翻訳後脱アミド化部位の除去の成功を示していた。翻訳後脱アミド化は生成または保存の間に起こり、抗体活性に影響し得るため、XAB2、XAB3およびXAB4はしたがって、XAB1よりも均質な生成物を達成する可能性があるため、これは有利である。
【0387】
実施例5 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB2
簡単に述べると、XAB2 Fvをクローニングし、当業者には周知の原理に従って、重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖上にC末端Strepタグを有する大腸菌(E.coli)TGf1−中で発現させた。組換えタンパク質をNi−キレートクロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SPX−75)により精製した。
【0388】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB2 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.5mg)を、過剰のXAB2 Fv(3.7mg)と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中でのS100サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体を限外濾過により26.3mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0389】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロップ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパク質ストックを、0.2M酢酸カルシウム、20%PEG3,350を含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。総液滴サイズは0.4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を、30%PEG3,350、30%グリセロールを含む結晶化バッファーの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で簡易冷却した。
【0390】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡単に述べると、2.0Å解像度のX線データを、Swiss Light Source、ビームラインX06DAで、MAR225 CCD検出器、1.0000ÅのX線照射を用いて収集した。合計で、それぞれ0.5°の振動の360の画像を、190mmの結晶−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結晶は、セルパラメータa=184.72Å、b=55.56Å、c=71.11Å、α=β=γ=90°を有する空間群P22に属していた。2.0Å解像度でのR−symは5.2%であり、データ完全性は100.0%であった。
【0391】
XAB2 Fv複合体の結晶はXAB1 Fv複合体の結晶と高度に同形であったため(実施例2)、後者の構造を、プログラムCNXを用いる結晶学的精密化の初期実行のための入力モデルとして用いた。反復モデルの補正および精密化を、さらなる有意な改善を結晶学的モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystallographic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(Crystallography & NMR eXplorer)バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.214および0.259であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.005Åおよび0.9°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0392】
結果
ヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体のX線精密化の結果を表14に提供し、この複合体の三次元構造を図4に示す。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB2が標的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに対する高い親和性で結合することが確認された。しかしながら、XAB1複合体構造においては、Gly66を含む軽鎖ループは、この残基をバリンに変異させた場合、もはや可能ではないコンフォメーションを採用する。結果として、XAB2複合体において、Gly66のバリン変異(G66V)は、ループに新しいコンフォメーションを採用させ、バリン側鎖はIL−17AのIle51への疎水性接触を作る(図5)。2つのさらなるIL−17A残基、Pro42およびArg43は、この結晶構造において見えるようになる(規則的)。これらの抗原残基は、XAB2抗体とのさらなる結合相互作用、特に、Val28との疎水性接触を作る(図5)。
【0393】
【表14】
【0394】
図4は、ヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体の三次元構造を提供する。図4Aは、空間充填表示における2つのXAB2 Fvを示し、IL−17Aホモ二量体を略画表示で示す。図4Bは略画表示における2つのXAB2 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を空間充填表示で示す。XAB2 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ、暗灰色および明灰色で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰色で示す。
【0395】
図5は、グリシンからバリンへの変異(それぞれ、G28VおよびG66V)を担持する、抗体L−CDR1および外側ループ領域の詳細図としてのヒトIL−17AとのXAB2 Fv複合体の三次元構造を提供する。G66V変異は、外側ループのコンフォメーション中の変化、ならびにIL−17A残基Pro42、Arg43およびIle51とのさらなる抗体−抗原接触をもたらす。XAB2 Fvを明灰色の略画で示し、ヒトIL−17Aホモ二量体を灰色のより暗い影で示す。Ile51はPro42およびArg43と同じIL−17Aサブユニットに属さない。
【0396】
実施例6 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB5
XAB5 Fvをクローニングし、重鎖上にC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖上にC末端Strepタグを有する大腸菌(E.coli)TGf1−中で発現させた。組換えタンパク質を、PBSバッファー中での、Ni−キレートクロマトグラフィー、次いで、SPX−75カラム上でのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。LC−MS分析により、重鎖に関する予想された質量(13703.4Da)、および2つの形態の軽鎖:全長(115aa;12627.3Da;約27%)およびトランケートされたStrepタグ(A1〜Q112;12222.8Da;約73%)の存在が示された。
【0397】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(1.4mg)を、過剰のXAB5 Fv(3.4mg)と混合し、複合体を10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中でのS100サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体を限外濾過により16.5mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0398】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロップ中での蒸気拡散法を用いて、SD2 96穴プレート中、19℃で成長させた。タンパク質ストックを、15%PEG5,000MME、0.1M MES pH6.5、0.2M硫酸アンモニウムを含有する結晶化バッファーと1:1で混合した。総液滴サイズは0.4μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を、20%PEG5,000MME、40%グリセロールを含む結晶化バッファーの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で簡易冷却した。
【0399】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡単に述べると、3.1Å解像度のX線データを、Swiss Light Source、ビームラインX10SAで、Pilatus検出器、1.00000ÅのX線照射を用いて収集した。合計で、それぞれ0.25°の振動の720の画像を、520mmの結晶−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結晶は、セルパラメータa=55.37Å、b=84.08Å、c=156.35Å、α=β=γ=90°を有する空間群C222に属していた。3.1Å解像度でのR−symは8.9%であり、データ完全性は99.7%であった。
【0400】
構造を、以前に決定されたXAB2 Fv複合体から誘導された検索モデルを用いて、プログラムPhaserを用いる分子置換により決定した。反復モデルの補正および精密化を、さらなる有意な改善を結晶モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystallographic Object−Oriented Toolkit)およびCNX(Crystallography & NMR eXplorer)バージョン2002を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.222および0.305であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.008Åおよび1.2°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0401】
結果
ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体のX線精密化の結果を表15に提供し、この複合体の三次元構造を図6に示す。この結晶構造において、XAB5 Fv複合体は正確な結晶学的2倍対称を有する:結晶の非対称単位は二量体複合体の全体の半分しか含有しない。XAB5 Fvは両方のIL−17Aサブユニットとの接触を作るが、分子間接触の大部分は一方のサブユニットのみに対するものである(XAB5 Fvにより埋められたIL−17A表面の約90%は一方のIL−17Aサブユニットによって寄与される)。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB5が標的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結合することが確認された。しかしながら、XAB5複合体構造においては、軽鎖CDRL1はヒトIL−17Aへの結合が増強された3つの点突然変異を担持する。XAB5軽鎖のTrp31はIL−17AのTyr85、より低い程度で、IL−17AのPhe133との強い疎水性/芳香族相互作用に関与する。XAB5軽鎖のAsn30は、IL−17AのPro130の主鎖カルボニルにH結合を提供し、Leu49(同じIL−17Aサブユニット)およびVal45(他のIL−17Aサブユニット)とのvan der Waals接触にある。XAB5軽鎖のGlu32は、分子内H結合相互作用を介してCDRL1ループを安定化する。さらに、Glu32は、IL−17AのArg124との好ましい静電相互作用を作るが、「ヘッドトゥヘッド」の塩架橋相互作用には関与しない(図7)。
【0402】
【表15】
【0403】
図6は、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する。正確な結晶学的2倍対称を有する完全ホモ二量体複合体をここに示す。図6Aは空間充填表示における2つのXAB5 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を略画表示で示す。図6Bは略画表示における2つのXAB5 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を空間充填表示で示す。XAB5 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ、暗灰色および明灰色で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰色で示す。
【0404】
図7は、ヒトIL−17AとのXAB5 Fv複合体の三次元構造を提供する。構造誘導性バイアスライブラリー手法により見出された3つの変異を担持する抗体L−CDR1の詳細図:Asn30、Trp31およびGlu32。これらのXAB5側鎖は、抗原ヒトIL−17A、特に、IL−17A残基Tyr85、Phe133、Arg124、Pro130、Leu49(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)およびVal45(他のIL−17Aサブユニットに由来する)に対する新しい結合相互作用に寄与する。
【0405】
実施例7 親和性成熟により誘導される抗体バリアントのX線分析:XAB4
XAB4 Fvをクローニングし、重鎖上のC末端ヘキサヒスチジンタグを有し、軽鎖上のC末端Strepタグを有する大腸菌(E.coli)TG1細胞中で発現させた。組換えタンパク質を、Ni−キレートクロマトグラフィーにより精製した。
【0406】
次いで、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv断片複合体を、標準的な方法を用いて調製した。簡単に述べると、ヒトIL−17A(0.5mg)を過剰のXAB4 Fv(1.2mg)と混合し、複合体を、10mM TRIS pH7.4、25mM NaCl中でのSPX−75サイズ排除クロマトグラフィー上で泳動した。次いで、タンパク質複合体を限外濾過により6.9mg/mlまで濃縮し、結晶化した。
【0407】
標準的な結晶化プロトコールを行った。簡単に述べると、結晶を、シッティングドロップ中での蒸気拡散法を用いて、VDX 24穴プレート中、19℃で成長させた。タンパク質ストックを、15%PEG5,000MME、0.1M MES pH6.5、0.2M硫酸アンモニウムを含有する結晶化バッファーと2:1で混合した。総液滴サイズは3.0μlであった。X線データ収集の前に、1つの結晶を、25%PEG5,000MME、20%グリセロールを含む結晶化バッファーの1:1混合物中に簡単に移した後、液体窒素中で簡易冷却した。
【0408】
X線データ収集およびプロセッシングを、標準的なプロトコールを用いて実行した。簡単に述べると、3.15Å解像度のX線データを、Swiss Light Source、ビームラインX10SAで、Pilatus検出器、0.99984ÅのX線照射を用いて収集した。合計で、それぞれ0.25°の振動の720の画像を、500mmの結晶−検出器距離で記録し、XDSソフトウェアパッケージを用いてプロセッシングした。結晶は、セルパラメータa=55.76Å、b=87.11Å、c=156.31Å、α=β=γ=90°を有する空間群C222に属していた。3.15Å解像度でのR−symは5.5%であり、データ完全性は99.9%であった。
【0409】
XAB4 Fv複合体の結晶はXAB5 Fv複合体の結晶と高度に同形であったため(実施例6)、後者の構造を、プログラムPhaserを用いる分子置換により構造決定のための入力モデルとして用いた。反復モデルの補正および精密化を、さらなる有意な改善を結晶学的モデルに対して行うことができなくなるまで、Coot(Crystallographic Object−Oriented Toolkit)およびAutobusterバージョン1.11.2(Busterバージョン2.11.2)を用いて実施した。全てのデータに関する最終的なR−およびR−フリーは、それぞれ、0.197および0.253であった。最終的な精密化されたモデルは、それぞれ、0.009Åおよび1.0°の理想的な結合長および結合角に由来する平均二乗偏差(RMSD)を示した。
【0410】
(i)結果
ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体のX線精密化の結果を表16に提供し、この複合体の三次元構造を図8に示す。この結晶構造において、XAB5複合体におけると同様(実施例6)、XAB4 Fv複合体は正確な結晶学的2倍対称を有する:結晶の非対称単位は二量体複合体の全体の半分しか含有しない。XAB4 Fvは両方のIL−17Aサブユニットとの接触を作るが、分子間接触の大部分は一方のサブユニットのみに対するものである(XAB4 Fvにより埋められたIL−17A表面の93%は一方のサブユニットによって寄与される)。X線結晶分析により、バリアント抗体XAB4が標的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結合することが確認された。しかしながら、XAB4複合体構造においては、XAB5複合体構造におけると同様、軽鎖CDRL1はヒトIL−17Aへの結合が増強された3つの点突然変異を担持する。XAB5複合体について既に記載された通り(実施例6)、XAB4のTrp31はIL−17AのTyr85、より低い程度で、IL−17AのPhe133との強い疎水性/芳香族相互作用に関与する。XAB4軽鎖のAsn30は、IL−17AのPro130の主鎖カルボニルにH結合を提供し、Leu49(同じIL−17Aサブユニット)およびVal45(他のIL−17Aサブユニット)とのvan der Waals接触にある。XAB4軽鎖のGlu32は、分子内H結合相互作用を介してCDRL1ループを安定化する。さらに、Glu32は、IL−17AのArg124との好ましい静電相互作用を作るが、「ヘッドトゥヘッド」の塩架橋相互作用には関与しない(図9)。XAB4はまた、潜在的な脱アミド化部位を除去するように設計されたAsnからGlnへの変異の結果として、軽鎖の位置56においてXAB1と異なる。X線分析により、XAB4のGln56がタンパク質抗原残基Leu76およびTrp90に対する接触を作り、Tyr67およびSer64の溶媒接近性を低下させることが示される(図10)。
【0411】
【表16】
【0412】
図8は、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する。図8Aは空間充填表示における2つのXAB4 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を略画表示で示す。図8Bは略画表示における2つのXAB4 Fv断片を示し、IL−17Aホモ二量体を空間充填表示で示す。XAB4 Fvの重鎖および軽鎖を、それぞれ暗灰色および明灰色で示す。IL−17Aホモ二量体の一方の鎖を明灰色で示し、他方を暗灰色で示す。
【0413】
図9は、構造誘導性バイアスライブラリー手法により見出された3つの変異を担持する抗体L−CDR1の詳細図としての、ヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する:Asn30、Trp31およびGlu32。これらのXAB4側鎖は、抗原ヒトIL−17A、特に、IL−17A残基Tyr85、Phe133、Arg124、Pro130、Leu49(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)およびVal45(他のIL−17Aサブユニットに由来する)に対する新しい結合相互作用に寄与する。
【0414】
図10は、Asn56からGlnへの変異を示す抗体L−CDR2の詳細図としてのヒトIL−17AとのXAB4 Fv複合体の三次元構造を提供する。このXAB4側鎖は、IL−17A残基Trp90およびLeu76への結合接触に寄与し、Tyr67およびSer64(全て同じIL−17Aサブユニットに由来する)の溶媒接近性を低下させる。
【0415】
まとめると、X線結晶分析により、さらなる分析のために選択されたバリアント抗体が、その標的特異性を保持し、親XAB1抗体と本質的に同じエピトープに高い親和性で結合することが確認された。さらなる、または改善された結合接触の結果として、それぞれのバリアント抗体とIL−17Aとのより緊密な結合が観察された(以下の表17を参照されたい)。
【0416】
バリアント抗体のさらなる特徴付けを、以下に記載のように行った。
【0417】
【表17】
【0418】
実施例8 Biacore(商標)により測定される親和性測定および交差反応性
動的結合パラメータの決定を、光学バイオセンサBiacore(商標)T200またはT100(http://www.biacore.com)を用いる表面プラズモン共鳴測定により達成した。この技術は、リガンドの受容体への結合(k)および解離(k)に関する顕微鏡的速度定数の標識を用いない決定を可能にする。したがって、それは抗体−抗原相互作用を特徴付けるのに特に適している。
【0419】
抗体のBiacore(商標)チップ表面への間接的結合を、固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウムpH5.0)中の25μg/mlの抗ヒトIg抗体(GE Healthcare Bio−Sciences AB;カタログ番号BR−1008−39)により、または固定化バッファー(10mM酢酸ナトリウムpH5.0もしくはpH4.0)中の20μg/mlのプロテインA(RepliGen:rPA−50)により行った。
【0420】
抗体を、ブランクバッファー中で1.00または1.25μg/mlの最終濃度に希釈した。
【0421】
XAB4またはXAB1の解離定数の決定のための親和性測定を、間接的カップリング/結合法(上記を参照されたい)を用いて、組換えhuIL−17A(配列番号78、例えば、0.14〜8.8nMの2倍増加濃度)、組換えhuIL−17A/Fヘテロ二量体(例えば、0.13〜8nMの2倍増加濃度)、組換えhuIL−17F(配列番号77;例えば、7.8〜500nMの2倍増加濃度)、カニクイザルIL−17A(配列番号79;例えば、0.63〜40nMの2倍増加濃度)、アカゲザルIL−17A(配列番号82;例えば、1.6〜100nMの2倍増加濃度)、マーモセットIL−17A(配列番号82;例えば、0.63〜40nMの2倍増加濃度)、組換えmIL−17A(配列番号83;例えば、0.78〜50nMの2倍増加濃度)、組換えmIL−17A/F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL;例えば、1.25〜40nMの2倍増加濃度)、ラットIL−17A(配列番号85;例えば、0.78〜50nMの2倍増加濃度)について実施し、表面を10mMグリシンpH1.75またはMgCl(3M)を用いて再生した。1つのチップ表面を被覆し、結合能力を有意に喪失させることなく再使用した。Kより下で開始し、Kより10倍高い濃度で終わるようにリガンド濃度を選択した。
【0422】
類似するが同一ではない条件を用いて、XAB2およびXAB3の親和性を測定した。
【0423】
動的痕跡を、Biacore(商標)T200 Control Softwareバージョン1.0を用いて評価した。増加する濃度と共にこれらの痕跡の完全なセットを一緒に取り、ランと呼ぶ。2つのゼロ濃度試料(ブランクラン)をそれぞれの分析物濃度シリーズに含有させ、データ評価中の二重参照を可能にした。
【0424】
結果
抗IL−17抗体XAB4、XAB1、XAB2およびXAB3の、ヒト、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、マウスおよびラットIL−17A、ヒトおよびマウスIL−17A/Fヘテロ二量体ならびにヒトIL−17Fへの結合を、Biacore(商標)技術を用いる表面プラズモン共鳴により決定した。結合(k)および解離(k)の動的速度定数、ならびに解離平衡定数(K)を算出した。
【0425】
XAB4の親和性データを表18に示し、XAB1の親和性データを表19に示し、XAB2の親和性データを表20に示し、XAB3の親和性データを表21に示す。XAB1、XAB2およびXAB3の親和性成熟は、ヒト、カニクイザル、マウスおよびラットIL−17Aに対する親和性を増加させた。
【0426】
【表18】
【0427】
【表19】
【0428】
【表20】
【0429】
【表21】
【0430】
XAB2、XAB3およびXAB5の親和性および動的速度定数は、XAB4について観察されるものと同等である。
【0431】
実施例9 ELISAにおけるIL−17Aおよび他のファミリーメンバーへの結合
異なる抗原上での対象の抗体の滴定を実行した。簡単に述べると、ELISAマイクロタイタープレート(Nunc ImmunoプレートMaxiSorp:Invitrogen、カタログ番号4−39454A)のウェルを、CaおよびMgを含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(10x;Invitrogenカタログ番号14200−083)0.02%NaN(Sigmaカタログ番号S−8032)中の1μg/mlの組換えhuIL−17A(配列番号76;1.8mg/ml)、組換えhuIL−17A/F(0.59mg/ml)、組換えhuIL−17F(配列番号77;1.8mg/ml)、組換えhuIL−17B(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1248IB/CF)、組換えhuIL−17C(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1234IL/CF)、組換えhuIL−17D(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1504IL/CF)、組換えhuIL−17E(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1258−IL/CF)、組換えcynoIL−17A(配列番号79;0.21mg/ml)、組換えcynoIL−17F(配列番号80;1.525mg/ml)、組換えmIL−17A(配列番号83;2.8mg/ml)、組換えmIL−17A/F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL)、組換えmIL−17F(配列番号84;0.2mg/ml)および組換えratIL−17A(配列番号85;3.8mg/ml)(100μl/ウェル)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。
【0432】
次の日、マイクロタイタープレートを300μlのPBS/2%BSA(画分V;Rocheカタログ番号10735094001)/0.02%NaNで37℃で1h、遮断した。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20(Sigmaカタログ番号P7949)/0.02%NaNで4回洗浄した。XAB4またはXAB1を、室温で3h、3組のウェル(100μl/ウェル)中に1μg/mlで添加した。
【0433】
プレートへの抗原の被覆を検証するために、対照抗体、特に、マウスmAb抗huIL−17F(Novartis、5μg/ml)、ヤギ抗huIL−17B(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF1248;10μg/ml)、マウスmAb抗huIL−17C(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB1234;10μg/ml)、ヤギ抗huIL−17D(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF1504;10μg/ml)、マウスmAb抗huIL−17E(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB1258;10μg/ml)、マウス抗mIL−17Aまたは抗mIL−17A/F(Novartis;1μg/ml)、およびラット抗mIL−17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB2057;1μg/ml)(PBS、0.02%NaN中100μl/ウェル、RTで3h)を用いた。
【0434】
次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。次いで、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigmaカタログ番号A9544)を、1/20000の希釈率の試験抗体(100μl/ウェル)をRTで2h30minにわたって受けたウェルに添加した。マウスmAbを受けたこのウェルに、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体(Sigmaカタログ番号A7434)を1/10000の希釈率(100μl/ウェル)でRTで2h30minにわたって添加した。アルカリホスファターゼコンジュゲート化マウス抗ヤギIgG抗体(Sigmaカタログ番号A8062)を、1/50000の希釈率(100μl/ウェル)でRTで2h30minにわたってヤギ抗体に添加した。次いで、プレートを4回洗浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1mg/mlの最終濃度にした100μlの基質(p−ニトロフェニルリン酸錠剤;Sigma;5mgカタログ番号N9389;20mgカタログ番号N2765)を各ウェルに添加した。
【0435】
プレートを、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で30min後に読取った。値は3回の値の平均±SEMである。
【0436】
結果
これらの試験は、XAB4およびXAB1がヒトおよびマウスIL−17A、ならびにヒトおよびマウスIL−17A/Fに結合することができることを示す。さらに、XAB4がカニクイザルおよびラットIL−17Aに結合することができることが示される。ヒト、カニクイザルおよびマウスIL−17Fへの結合ならびに他のヒトファミリーメンバー(IL−17B、IL−17C、IL−17DおよびIL−17E)への結合は、これらの実験条件下では検出されなかった。
【0437】
【表22】
【0438】
実施例10 ELISAによる他のヒト、マウスおよびラットインターロイキンとの交差反応性
別のセットの実験において、選択されたヒト、マウスまたはラットサイトカインに対する本開示の抗体の交差反応性を評価した。
【0439】
ELISAマイクロタイタープレート(Nunc ImmunoプレートMaxiSorp:Invitrogenカタログ番号4−39454A)の3組のウェルを、CaおよびMgを含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(10x;Invitrogenカタログ番号14200−083)0.02%NaN(Sigmaカタログ番号S−8032)中、0.5μg/mlで被覆した組換えmIL−6、組換えmIL−12および組換えmTNFαを除いて、1μg/mlで100μl/ウェルの下記サイトカイン:組換えhuIL1β(Novartis)、組換えhuIL−3(R&D Systems(登録商標)カタログ番号203−IL/CF)、組換えhuIL−4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号204−IL/CF)、組換えhuIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号206−IL−1010/CF)、組換えhuIL−8(R&D Systems(登録商標)カタログ番号208−IL−010/CF)、組換えhuIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号219−IL−005/CF)、組換えhuIL−13(Novartis)、組換えhuIL−17A(配列番号76)、組換えhuIL−17A/F、組換えhuIL−17F(配列番号77)、組換えhuIL−18(MBLカタログ番号B003−5)、組換えhuIL−20(Novartis)、組換えhuIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1290−IL−010/CF)、組換えhuIFNγ(Roche)、組換えhuTNFα(Novartis)、組換えhuEGF(Sigmaカタログ番号E9644.)、組換えhuTGFβ2(Novartis)、組換えmIL−1β(R&D Systems(登録商標)カタログ番号401−ML)、組換えmIL−2(R&D Systems(登録商標)402−ML−020/CF)、組換えmIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号406−ML−010/CF)、組換えmIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号419−ML−010/CF)、組換えmIL−17A(配列番号83)、組換えmIL−17A/F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL)、組換えmIL−17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号2057−IL/CF)、組換えmIL−18(MBLカタログ番号B004−5)、組換えmIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1887−ML)、組換えmIFN−γ(R&D Systems(登録商標)カタログ番号485−MT)、組換えmTNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号410−MT)、組換えratIL−4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号504−RL/CF)、組換えratIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号506−RL−010)、組換えratIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号1760−RL/CF)、組換えratIL−17A(配列番号85)、組換えratIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ番号3136−RL−010/CF)、組換えratTNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号510−RT/CF)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。
【0440】
次の日、マイクロタイタープレートを300μlのPBS/2%BSA(画分V;Rocheカタログ番号10735094001)/0.02%NaNで37℃で1h、遮断した。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20(Sigmaカタログ番号P7949)/0.02%NaNで4回洗浄した。
【0441】
本開示の抗体を、室温で3h、10μg/ml(100μl/ウェル)で添加した。抗原のプレートへの被覆を検証するために、100μl/ウェルの下記対照抗体:マウス抗huIL1β(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB601)、マウス抗huIL−3(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB603)、マウス抗huIL4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB604)、マウス抗huIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB206)、マウス抗hu−IL8(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB208)、マウス抗huIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB219)、マウス抗huIL−13(Novartis)、マウス抗huIL−17A(Novartis)、マウス抗huIL−17F(Novartis)、マウス抗huIL−18(MBL カタログ番号D043−3)、マウス抗huIL−20(Abcam カタログ番号ab57227)、ヤギ抗huIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF1716)、マウス抗huIFN−γ(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB285)、マウス抗huTNF−α(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB610)、マウス抗hu−EGF(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB236)、ヒト抗huTGFβ2(Novartis)、ラット抗mIL−1β(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB401)、ラット抗mIL−2(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB402)、ラット抗mIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB406)、ラット抗mIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB419)、マウス抗m/ラットIL−17A(Novartis)、ラット抗mIL−17F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB2057)、ラット抗mIL−18(MBLカタログ番号D047−3)、ラット抗mIFN−γ(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB485)、ヤギ抗mTNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF−410−NA)、マウス抗ラットIL−4(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB504)、ヤギ抗ラットIL−6(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF506)、ヤギ抗ラットIL−12(R&D Systems(登録商標)カタログ番号AF1760)、マウス抗ラットIL−23(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB3510)、マウス抗ラットTNFα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB510)を用いた。それらを、RTで3h、PBS、0.02%NaH中、1または5μg/mlで添加した。
【0442】
次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。次いで、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigmaカタログ番号A9544)を、1/20000の希釈率(100μl/ウェル)でヒト抗体と共にウェルに添加した。アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体(Sigmaカタログ番号A1047)を、1/10000の希釈率(100μl/ウェル)でマウス抗体と共にウェルに添加した。アルカリホスファターゼコンジュゲート化ウサギ抗ヤギIgG抗体(Sigmaカタログ番号A7650)を、1/1000の希釈率(100μl/ウェル)でヤギ抗体と共にウェルに添加し、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ウサギ抗ラットIgG抗体(Sigmaカタログ番号A6066)を1/20000の希釈率(100μl/ウェル)でラット抗体と共にウェルに添加した。二次抗体をRTで2h30minインキュベートした。次いで、プレートを4回洗浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1mg/mlの最終濃度にした100μlの基質(p−ニトロフェニルリン酸錠剤;Sigma;5mgカタログ番号N9389または20mgカタログ番号N2765)を各ウェルに添加した。
【0443】
プレートをRTで30min後または4℃でON後に、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で読取った。値は3組の値の平均±SEMである。
【0444】
結果
得られたデータは、XAB4とXAB1が両方ともヒト、マウスおよびラット起源のIL−17Aならびにヒトおよびマウス起源のIL−17A/Fに高度に選択的であることを示す。さらに、試験した条件下で、ヒトIL−17Fに対する10μg/mlでのXAB1の反応性(1μg/mlでは見られない、上記を参照されたい)は、XAB4については観察されない。試験した他のサイトカインに対する反応性は検出されなかった。
【0445】
【表23】
【0446】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれるという事実によるものである。
【0447】
【表24】
【0448】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれるという事実によるものである。
【0449】
【表25】
【0450】
NB.負の値はブランク(特異的抗体を含まないウェルのO.D.値)が差し引かれるという事実によるものである。
【0451】
実施例11 IL−17A−IL−17RAおよびIL−17A/F−IL−17RAのin vitro競合結合阻害アッセイ
ヒトIL−17RAは、ストック溶液(BTP22599:1.68mg/ml=46.2μM)から用いた。ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%NaN中のヒトIL−17RA(100μl/ウェル、1μg/ml、約27.5nM)で被覆した。次の日、プレートを、37℃で1h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%NaNでブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。
【0452】
この調製後、抗体バリアント(50μl、IL−17Aについては12nM〜0.12nMおよびIL−17A/Fについては1200nM〜40nM、3のステップ)の滴定を、室温で30分間、ヒトIL−17Aビオチン(0.94nMで50μl)またはIL−17A/F(31nMで50μl)と共に事前にインキュベートした。
【0453】
100μlの混合物を、室温で3時間30分にわたってウェルに添加した。PBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した後、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ストレプトアビジンを1/10000の最終希釈率(100μl/ウェル)で添加した。室温で45分後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで再度4回洗浄し、ジエタノールアミンバッファーpH9.8中のp−ニトロフェニルリン酸基質(1mg/ml)を添加した(100μl/ウェル)。
【0454】
プレートを、30分後にSpectra Max M5マイクロプレートリーダー、フィルター405および490nm中で読取った(3回)。異なる抗体バリアントの阻害の百分率およびIC50の算出を、4パラメータロジスティックモデル(Excel Xlfit;FITモデル205)を用いて行った。
【0455】
結果
データは、XAB4とXAB1が両方ともhuIL−17AおよびhuIL−17A/FのhuIL−17RAへの結合を遮断することができることを示す。IL−17AおよびIL−17A/Fに対するXAB4の親和性が高いほど、阻害能力が高いことを反映する。IC50値を表中に報告する。IL−17A/F−IL−17RA相互作用を遮断するのに必要とされるより高い濃度は、IL−17A/Fの約30倍より高い濃度をアッセイにおいて用いたという事実によって最も説明される。抗体はA/FのAサブユニットに結合し、したがって、IL−17RAへのFサブユニットの結合を防止することができない。しかしながら、IL−17RAへのFの結合は、300nM範囲ではむしろ弱い。
【0456】
【表26】
【0457】
実施例12 本開示の抗体バリアントによるヒトIL−17AおよびIL−17A/F活性のin vitroでの中和
(i)C20A4Cl6細胞(ヒト軟骨細胞系)に関するアッセイ
C20A4Cl6、またはC−20/A4、クローン6(Goldring MB, et al 1994, J Clin Invest; 94:2307-16)細胞を、10%ウシ胎仔血清極低IgG(Gibcoカタログ番号16250−078;ロット1074403)、β−メルカプトエタノール(最終5x10−5M)、およびノルモシン(0.1mg/ml;InvivoGenカタログ番号ant−nr−2)を添加したRPMI(Gibcoカタログ番号61870−010)中で培養した。
【0458】
細胞を、Accutase溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラスチックから剥離させた。ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノール(最終5x10−5M)およびノルモシン(0.1mg/ml)を含まないRPMI1640(Gibcoカタログ番号61870−010)中、100μlのウェルに5x10の密度で96穴マイクロタイタープレート中に細胞を分配した。
【0459】
C20A4Cl6細胞を、一晩プレートに付着させた。次の朝、異なる濃度の組換えhuIL−17A(配列番号76;MW32000)、組換えhuIL−17A/F(MW32800)、組換えhuIL−17F(配列番号77;MW30000)、またはヒトTNFα(Novartis;MW17500)の存在下の対照培地を、50μlの異なる濃度の試験抗体(XAB4、XAB1)、対照抗体(Simulect(登録商標)1.1%溶液、Batch C0011;831179)または対照培地の存在下、3つのウェルに50μlの容量で添加し、200μl/ウェルの最終容量および0.5%ウシ胎仔血清の最終濃度を達成した。
【0460】
huIL−17A(30pM)、huIL−17A/F(300pM)およびhuIL−17F(10nM)を、huTNFα(6pM)と一緒に添加した。XAB4(MW150000)を1〜0.003nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Aを中和し、10〜0.03nMの濃度範囲で添加し、huIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Fを中和した。XAB1(MW150000)を、3〜0.01nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Aを中和し、10〜0.03nMの濃度範囲で添加し、huIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲で添加し、huIL−17Fを中和した。Simulect(登録商標)を、3μM〜100nMの濃度範囲で添加した。培養上清を、24hのインキュベーション後に収集し、huIL−6生成をELISAにより測定した。
【0461】
(ii)BJ細胞(ヒト線維芽細胞)に関するアッセイ
BJ細胞(ATCCカタログ番号CRL2522からのヒト皮膚線維芽細胞)を、10%ウシ胎仔血清極低IgG(Gibcoカタログ番号16250−078;ロット1074403)、β−メルカプトエタノール(最終5x10−5M)およびノルモシン(0.1mg/ml;InvivoGenカタログ番号ant−nr−2)を添加したRPMI(Gibcoカタログ番号61870−010)中で培養した。細胞を、Accutase溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラスチックから剥離させた。
【0462】
ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノール(最終5x10−5M)およびノルモシン(0.1mg/ml)を含まないRPMI1640中、100μlのウェルに5x10の密度で96穴マイクロタイタープレート中に細胞を分配した。BJ細胞を一晩プレートに付着させた。次の朝、異なる濃度のrhuIL−17A(配列番号76;MW32000)、rhuIL−17A/F(MW32800)、rhuIL−17F(配列番号77;MW30000)、またはヒトTNFα(Novartis;MW17500)の存在下の対照培地を、50μlの異なる濃度の試験抗体(XAB4、XAB1)、対照抗体(Simulect(登録商標)1.1%溶液、Batch番号C0011;831179)または対照培地の存在下、3つのウェルに50μlの容量で添加し、200μl/ウェルの最終容量および2.5%ウシ胎仔血清の最終濃度を達成した。
【0463】
huIL−17A(30pM)、huIL−17A/F(300pM)およびhuIL−17F(10nM)を、huTNFα(6pM)と一緒に添加した。XAB4(MW150000)を、1〜0.003nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Aを中和し、10〜0.03nMの濃度範囲で添加してhuIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Fを中和した。XAB1(MW150000)を、3〜0.01nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Aを中和し、10〜0.03nMの濃度範囲で添加してhuIL−17A/Fを中和し、3μM〜30nMの濃度範囲で添加してhuIL−17Fを中和した。Simulect(登録商標)を、3μM〜100nMの濃度範囲で添加した。培養上清を24hのインキュベーション後に収集し、huIL−6およびhuGROα生成をELISAにより測定した。
【0464】
(iii)検出アッセイ
1)ヒトIL−6生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS0.02%NaN中の抗ヒトIL−6マウスMab(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB206;1μg/mlで100μl/ウェル)で被覆し、+4℃で一晩インキュベートした。次の日、マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%NaNでブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。C20A4Cl6(huIL−17A+huTNFαで刺激した培養物については最終希釈率1:5、もしくはhuTNFα+huIL−17A/FもしくはIL−17Fで刺激した培養物については最終希釈率1:2;100μl/ウェル)またはBJ細胞(huIL−17A+huTNFαで刺激した培養物については最終希釈率1:10、もしくはhuTNFα+huIL−17A/FもしくはIL−17Fで刺激した培養物については最終希釈率1:5;100μl/ウェル)の培養上清を添加した。
【0465】
滴定曲線を確立するために、rhuIL−6(Novartis;100μl/ウェル)を、1:2希釈段階で500pg/mlから7.8pg/mlまで滴定した。室温で一晩インキュベートした後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIL−6抗体を添加した(R&D Systems(登録商標)カタログ番号BAF206;30ng/ml;100μl/ウェル)。試料を室温で4h反応させた。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearchカタログ番号016−050−084)を、1/10000の最終希釈率で添加した(100μl/ウェル)。
【0466】
室温で40分後、プレートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠剤(Sigma;5mg、カタログ番号N9389;20mg、カタログ番号N2765)をジエタノールアミンバッファーpH9.8中に溶解し、1mg/mlの最終濃度を得た。100μlを各ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で1h後にO.D.を読取った。
【0467】
2)ヒトGROα生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%NaN中の抗ヒトGROαマウスmAb(R&D Systems(登録商標)Systems(登録商標)カタログ番号MAB275;1.5μg/mlで100μl/ウェル)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次の日、マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%NaNでブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。BJ細胞の培養上清(最終希釈率1:2;100μl/ウェル)を添加した。
【0468】
滴定曲線を確立するために、ヒトGROα(R&D Systems(登録商標)カタログ番号275−GR/CF;100μl/ウェル)を、1:2希釈段階で2ng/mlから0.03ng/mlまで滴定した。室温で一晩インキュベートした後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。
【0469】
ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗ヒトGROα抗体を添加した(R&D Systems(登録商標)カタログ番号BAF275;100ng/ml;100μl/ウェル)。試料を室温で4h反応させた。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ストレプトアビジン(Jackson Immunoresearchカタログ番号016−050−084)を、1/10000の最終希釈率で添加した(100μl/ウェル)。室温で40分後、プレートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠剤(Sigma;5mgカタログ番号N9389;20mg、カタログ番号N2765)をジエタノールアミンバッファーpH9.8に溶解し、1mg/mlの最終濃度を得た。100μlを各ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で1h後にO.D.を読取った。
【0470】
3)算出
データを平均(Means)±SEMとして報告する。4パラメータ曲線適合をELISA算出のために用いた。抗体によるIL−6およびGRO−α分泌の阻害に関するIC50値を、Xlfit(FITモデル205)を用いて算出した。
【0471】
(iv)結果
1)C20A4Cl6細胞(ヒト軟骨細胞系)に関するアッセイ
XAB4とXAB1は両方とも、rhuTNFαの存在下でrhuIL−17AおよびrhuIL−17A/Fで刺激したC20A4Cl6細胞によるhuIL−6分泌の誘導を中和することができる。100nMの対照抗体(Simulect(登録商標))は効果がない。XAB4およびXAB1のIC50値(平均±SEM)を表27に報告する。huIL−17Fに対する阻害は3μMのAb濃度でも観察されない。
【0472】
【表27】
【0473】
これらの実験から、親XAB1抗体がその誘導体と中和活性を共有することが明らかである。XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有することがわかる。
【0474】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表28に見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関する阻害プロファイルは、XAB4およびXAB1、特に、XAB4について観察されるものと同等であることが分かる。
【0475】
【表28】
【0476】
2)BJ細胞(ヒト線維芽細胞)に関するアッセイ
XAB4とXAB1は両方とも、huTNFαの存在下でrhuIL−17AおよびrhuIL−17A/Fで刺激したBJ細胞によるhuIL−6およびhuGROα分泌の誘導を中和する。100nMの対照抗体(Simulect(登録商標))は効果がない。IL−6およびhuGROαの阻害に関するIC50値を表29および表30に報告する。huIL−17Fに対する阻害は3μMのAb濃度でも観察されない。これらの実験から、親XAB1抗体がその誘導体と中和活性を共有することが明らかである。
【0477】
XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有することがわかる。
【0478】
【表29】
【0479】
【表30】
【0480】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表31および表32に見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関する阻害プロファイルはXAB4およびXAB1、特にXAB4について観察されるものと同等であることがわかる。
【0481】
【表31】
【0482】
【表32】
【0483】
実施例13 本開示の抗体バリアントによるマウスIL−17AおよびIL−17A/F活性のin vitroでの中和
CMT−93細胞(ATCC CCL−223)を、10%ウシ胎仔血清極低IgG(Gibcoカタログ番号16250−078;ロット1074403)、β−メルカプトエタノール(最終5x10−5M)およびノルモシン(0.1mg/ml;InvivoGenカタログ番号ant−nr−2)を添加したRPMI(Gibcoカタログ番号61870−010)中で培養した。
【0484】
細胞を、Accutase溶液(PAAカタログ番号L11−007)を用いてプラスチックから剥離させ、ウシ胎仔血清、β−メルカプトエタノールおよびノルモシンを含まないRPMI1640中、100μl/ウェルで5x10の密度で96穴マイクロタイタープレートに分配した。
【0485】
細胞を、一晩プレートに付着させた。次の朝、1nMのrmIL−17A(配列番号83;MW31000)、3nMのrmIL−17A/F(R&D Systems(登録商標)カタログ番号5390−IL;MW30400)、30nMのrmIL−17F(配列番号84;MW30000)、1nMのrratIL−17A(配列番号85;MW31000)または対照培地を、50μlの異なる濃度の試験抗体(XAB4もしくはXAB1)、対照抗体(Simulect(登録商標)1.1%溶液;C0011、831179)または対照培地の存在下で3組のウェルに50μlの容量で添加して、200μl/ウェルの最終容量および1%ウシ胎仔血清の最終濃度を達成した。
【0486】
培養上清を、24hのインキュベーション後に収集し、KC生成をELISAにより測定した。
【0487】
(i)マウスKC生成の検出のためのELISA
ELISAマイクロタイタープレートを、PBS/0.02%NaN中のラット抗マウスKC MAb(R&D Systems(登録商標)カタログ番号MAB453;1μg/mlで100μl/ウェル)で被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次の日、マイクロタイタープレートを室温で3h、300μlのPBS/2%BSA/0.02%NaNでブロッキングした。次いで、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。CMT−93細胞の培養上清(最終希釈率1:5;100μl/ウェル)を添加した。
【0488】
滴定曲線を確立するために、マウスKC(R&D Systems(登録商標)カタログ番号453−KC、100μl/ウェル)を、1:2の希釈段階で1ng/mlから0.016ng/mlまで滴定した。室温で一晩インキュベートした後、プレートをPBS/0.05%Tween20/0.02%NaNで4回洗浄した。0.1μg/mlのビオチンコンジュゲート化ヤギ抗マウスKC抗体(R&D Systems(登録商標)カタログ番号BAF453;100μl/ウェル)を添加した。試料を室温で4h反応させた。洗浄(4回)後、アルカリホスファターゼコンジュゲートストレプトアビジン(Jackson Immunoresearchカタログ番号016−050−084)を1/10000の最終希釈率で添加した(100μl/ウェル)。室温で40分後、プレートを再度4回洗浄した。p−ニトロフェニルリン酸基質錠剤(Sigma;5mgカタログ番号N9389;20mgカタログ番号N2765)をジエタノールアミンバッファーpH9.8中に溶解して、1mg/mlの最終濃度を得た。100μlの培養上清を各ウェルに添加し、405および490nmのフィルターを用いてSpectra Max M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)中で1h後にO.D.を読取った。
【0489】
(ii)算出
データを、平均±SEMとして報告する。4パラメータ曲線適合をELISA算出のために用いた。抗体によるKC分泌の阻害に関するIC50値を、Xlfit(商標)(FITモデル205)を用いて算出した。
【0490】
(iii)結果
XAB4とXAB1は両方とも、マウスまたはラットIL−17AおよびマウスIL−17A/Fで刺激したCMT−93細胞によるマウスKC分泌の誘導を中和することができる。対照抗体(Simulect(登録商標))は効果がない。XAB4およびXAB1のIC50値(平均±SEM)を、表33に報告する。huIL−17Fに対する阻害は10μMのAb濃度でも観察されない。
【0491】
【表33】
【0492】
これらの実験から、両方の親XAB1抗体、ならびにその誘導体が中和活性を有することが明らかである。XAB4バリアントもまた、XAB1よりも高い中和活性を有することがわかる。
【0493】
さらなる実験において、上記の実験と同様、抗体XAB1〜XAB5を全て、表34に見られるように比較した。ここで、XAB2、XAB3およびXAB5に関する阻害プロファイルはXAB4およびXAB1、特にXAB4について観察されるものと同等であることがわかる。
【0494】
【表34】
【0495】
実施例14 ラット抗原誘導性関節炎アッセイ(ラットA/A)
メスのLewisラット(120〜150g)を、−21日目および−14日目に完全Freundアジュバントと1:1でホモジェナイズしたメチル化ウシ血清アルブミン(mBSA)(5mg/ml mBSAを含有する0.1ml)に対して2つの部位で背部で皮内的に感作した。0日目に、ラットを5%イソフルラン/空気混合物を用いて麻酔し、関節内注射のために顔面マスクにより3.5%のイソフルランを用いて維持した。右膝には5%グルコース溶液中の10mg/mlのmBSA 50μl(抗原注射膝)を投与したが、左膝には5%グルコース溶液のみ50μl(ビヒクル注射膝)を投与した。次いで、左膝と右膝の直径を、関節内注射の直後ならびに2、4および7日目に再度、カリパスを用いて測定した。
【0496】
処置を、−3日目に単回皮下注射により投与した。本開示の抗体を、0.15、1.5、15および116mg/kgで注射した。右膝の腫れを、左膝の腫れの比として算出し、R/L膝腫れ比を時間に対してプロットして対照群および処置群に関する曲線下面積(AUC)を得た。各処置群のAUCにおける個々の動物の阻害百分率を、Excelスプレッドシートを用いて対照群のAUC(0%阻害)に対して算出した。
【0497】
結果
結果を表35に示す。右膝の腫れの用量関連阻害が、XAB4について証明され、ED50は1.68mg/kg s.c.と算出された。
【0498】
【表35】
【0499】
同様に、膝の腫れの用量関連阻害が、Wistarラットを用いるモデル(データは示さない)およびマウス抗原誘導性関節炎モデルを用いるモデル(データは示さない)においてXAB4について証明された。
【0500】
実施例15 血管新生機構モデル(Angiogenesis mechanistic model)
マウス中に皮下的に置いた場合、ヒトIL−17A(150〜200ng)を含有するチャンバは、埋込み体の周囲で新しい血管増殖を引き起こす。血管新生の量は、この領域において新しく形成される組織の重量と相関する。0.01、0.03、0.1、0.3、1および3mg/kgのXAB4を用いる予防的処置は、ヒトIL−17により誘導される血管新生を阻害した。5つのより高い用量は全て、組織チャンバ重量の強力かつ有意な阻害をもたらした。4つのより高い用量は用量依存性を示さなかったが、0.03mg/kgの用量は0.1mg/kg以上の用量よりも有効ではなかった。
【0501】
この試験により、IL−17Aの強力な血管新生効果を抗IL−17A抗体を用いて中和することができ、これはin vivoでのヒトIL−17Aに関するXAB4の有効性の実験的証拠を提供する。
【0502】
実施例16 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデル
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルは、多発性硬化症のための公知の動物モデルである(例えば、Constantinescu et al., Br J Pharmacol 2011に概説されている)。IL−17の阻害はC57Bl/6マウスにおいてEAE重症度を低下させることが示されている(Haak S et al 2009, JCI; 119:61-69)。
【0503】
メスのC57Bl/6マウス(9週齢、Harlan、Germany)を、組換えラットミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質ペプチド(MOG1−125)(社内で作製)と、完全Freundアジュバント(CFA、8mg/mlのマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)株H37RA(Difco)を不完全Freundアジュバント(IFA、Sigma)に添加することにより作製)との50/50混合物で免疫した。0日目に尾の基部に200μg/動物のMOG1−125を皮下注射することにより、免疫化を実施した。さらに、200ng/動物の百日咳毒素(PT)を0および2日目に腹腔内注射した。
【0504】
XAB4に関する治療的処置と予防的処置の両方の効果を試験した。
【0505】
治療的処置
治療的処置のために、16匹のマウスを用いた(XAB4について8匹および対照について8匹)。一度、動物が少なくとも2.5の臨床スコア(重度の後肢弱体化)を3日間有したら、処置を開始した。この後、15mg/kgのXAB4またはアイソタイプ対照抗体を単回用量で各週に皮下注射した。
【0506】
結果を、図11〜15に示す(d.p.iは免疫化後の日数である)。全ての図面において、XAB4は丸で表され、アイソタイプ対照は四角で表される。治療スコア(平均±SEM)を図11に示す。XAB4で処置された動物はアイソタイプ対照よりも低い平均臨床スコアを有することが明確にわかる。図12は2群のマウスに関する体重変化(%)を示し、図13は累積治療スコアを示す。図14および15は、処置前後の治療スコアの比較である。全グラフにおいて、XAB4はアイソタイプ対照と比較して治療効果を有することが明確にわかる。かくして、XAB4を用いる治療的処置は、EAEの重症度を有意に低下させた。
【0507】
予防的処置
予防的処置のために、19匹のマウスを用いた(XAB4について10匹および対照について9匹)。各動物を、15mg/kgのXAB4またはアイソタイプ対照で免疫する前に、単回皮下注射により1日処置した。この後、15mg/kgのXAB4またはアイソタイプ対照抗体を、単回投与で各週に皮下注射した。
【0508】
その結果を、図16〜20に示す(d.p.iは免疫化後の日数である)。図16〜19において、XAB4は黒丸で表され、アイソタイプ対照は白四角で表される。予防スコア(平均+SEM)を図16に示す。XAB4で処置された動物はより低い平均臨床スコアを有することが明確にわかる。図17は、2群のマウスに関する体重変化(%)を示し、図18は累積予防スコアを示す。最大予防スコアは図19に見られる。全グラフにおいて、XAB4はアイソタイプ対照と比較して効果を有することが明確にわかる。さらに、XAB4が実線で表され、アイソタイプ対照が点線で表される図20において、EAEの開始が、アイソタイプ対照で処置されたマウス群と比較して、XAB4で処置されたマウス群についてより遅いことがわかる。
【0509】
かくして、XAB4を用いる予防的処置は、EAEの開始を有意に遅延させ、最大EAE重症度を低下させることが示される。
【0510】
実施例17 ヒトアストロサイトにおけるIL6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、およびCCL2のIL−17Aにより誘導されるレベルの減衰
ヒト脳の大脳皮質から単離されたアストロサイトにおけるIL6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、およびCCL2のレベルに対するXAB4の効果を調査した。アストロサイトは、それらに細胞コミュニケーション、ニューロン、グリア細胞および免疫細胞の移動および生存を調節させるいくつかの増殖因子、サイトカインおよびケモカインを放出する。アストロサイトのエンドフィートと内皮細胞との直接的コミュニケーションも、アストロサイトに血液脳関門の機能を制御させる。さらに、アストロサイトは、それらにシナプス伝達および興奮性を調節させるシナプス間隙で、グルタミン酸などの神経伝達物質を放出し、取込む。アストロサイトはCNS損傷後に瘢痕病理を形成し、かくして、正常な生理と病態生理における見かけ上反対の役割を有することが有意である。疾患においては、アストロサイトは様々な精神障害、神経障害および神経変性障害において役割を果たし、神経炎症におけるその役割は重要である可能性があると示唆されている。
【0511】
データは、IL−17AとTNFαとを用いる同時刺激により、IL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSFおよびCCL2の放出が増強され、XAB4がヒトアストロサイトにおけるIL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、およびCCL2のレベルを阻害することを示していた。これらのデータは、アストロサイトからのサイトカイン放出におけるIL−17Aの卓越した役割を示し、神経炎症疾患のための薬物標的としてのその使用を支援する。XAB4を用いるヒトアストロサイトの事前処置は、IL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSFおよびCCL2の、TNFαにより誘導されるレベルに影響することなく、IL−17Aにより誘導されIL−17A/TNFαにより誘導されるレベルを阻害することは注目に値する。総合すると、このデータは、XAB4によるIL−17Aシグナリングの選択的阻害はヒトアストロサイトにおける炎症促進性サイトカインのレベルを減衰させることを示唆していた。疾患において、アストロサイトは様々な精神障害、神経障害および神経変性障害において役割を果たし、神経炎症におけるその役割は重要である可能性があると示唆されている。かくして、アストロサイトの機能を変化させる新規薬物は有用である可能性があり、アストロサイト機能の調節は治療的に有用であることがわかる。結果として、XAB4はアストロサイトのIL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSFおよびCCL2生成に対する効果を有することが示されたため、XAB4は多発性硬化症(MS)の処置などのための有用な治療剤であり得ると結論付けることができる。
【0512】
材料および方法
全てのサイトカインを、R&D Systemsから購入した。バシリキシマブ(Novartis、Basel、Switzerland)をアイソタイプ対照として用いた。用いた一次抗体は、抗IL−17RA Alexa Fluor 647(BG/hIL17AR、Biolegend)、抗IL17RC Alexa Fluor 488(309822、R&D Systems、UK)、抗p65(Santa Cruz、USA)、マウスIgG Alexa Fluor 647(MOPC−21、Biolegend、UK)、マウスIgG Alexa Fluor 488(133303、R&D System、UK)、マウスIgGビオチン(G155−178、BD Biosciences、Switzerland)およびラットIgG PE(A95−1、BD Biosciences、Switzerland)であった。用いた二次抗体および染料は、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(BA1000、Vector、UK)、ストレプトアビジンコンジュゲート化Alexa Fluor 488およびAlexa Fluor 633(S11223およびS2137、Life Technology、USA)、ヤギ抗マウスAlexa Fluor 488およびAlexa Fluor 633(A1101およびA21050、Life Technology、USA)、ストレプトアビジンBV421(405226、Biolegend、UK)、Hoechst 34580(H21486、Life Technology、USA)であった。
【0513】
大脳皮質由来ヒトアストロサイトを、ScienCell Research Laboratory(USA)(カタログ番号1800)から購入した。細胞を、提供業者の説明書に従って増殖させた。簡単に述べると、細胞を、1%アストロサイト増殖補給物質(ScienCellカタログ番号1852)、5%ウシ胎仔血清(ScienCellカタログ番号0010)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ScienCellカタログ番号0503)を添加したヒトアストロサイト培地(ScienCellカタログ番号1801)中で増殖させた。細胞を、5%COおよび37℃でT75培養フラスコ中で維持し、80%集密となるまで3日毎に培地を交換した。全ての処理について、ウェルあたり70,000個の細胞を24穴プレート中に播種し、3日間増殖させ、2〜4h血清飢餓させた後、アストロサイトをXAB4で2h処理し、その後、図面の凡例に示されたように組換えヒトサイトカインで18〜20h処理した。細胞ペレットを用いて、qPCRによりサイトカインのmRNAレベルを定量し、上清を用いて、HTRF(Cisbio、France、IL−6、IL−8およびCXCL1について使用)またはAlphaLISA(PerkinElmer、USA、CCL2およびGM−CSFについて使用)によりサイトカインのタンパク質レベルを定量した。
【0514】
サイトカインmRNAの測定を、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により行った。簡単に述べると、アストロサイトを、350μlの溶解バッファー(1%β−メルカプトエタノールを含むRLTバッファー)中で穏やかに振とうすることにより、室温で5min溶解し、全RNAをRNeasy Microkit(74004、Qiagen、Switzerland)を用いて抽出した。cDNAを、SuperScriptIII逆転写酵素(18080−400、Life Technology、Switzerland)を用いて合成した。各遺伝子の発現レベルを、Viia7 Real−time PCR装置(Life Technology、Switzerland)中でのq−PCRにより評価した。Taqmanプローブを、Life Technology、Switzerlandから購入した。各試料を3組分析し、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に対して正規化した。ヒトアストロサイト上清(10μl)中のヒトIL6、IL8、CXCL1タンパク質のレベル(ng/ml)を、HTRF(IL6:62IL6PEC;IL8:62IL8PEC;CXCL1:6FGROPEG、Cisbio、France)により評価し、ヒトアストロサイト上清(5μl)中のヒトCCL2タンパク質のレベル(ng/ml)をAlphaLISAヒトCCL2/MCP1(AL244C、PerkinElmer、USA)により評価した。全ての測定を、製造業者の説明書に従って実施した。
【0515】
ヒトアストロサイトの細胞懸濁液を、PBS−5mM EDTAを用いて接着培養物から取得した。細胞外染色のために、細胞をPBS2%BSA中、4℃で10min、全マウスIgGと共にインキュベートした後、PBS2%BSA中、4℃で30min、抗体で染色した。細胞内染色のために、細胞を4℃で20min、Cytofix/Cytoperm溶液(554714、BD Biosciences、Switzerland)で透過処理した後、4℃で30min、抗体と共にインキュベートした。70μmの濾過器により濾過した後、細胞をBDFortessa(BD Biosciences、Switzerland)上で獲得し、FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.、USA)を用いてデータを分析した。
【0516】
化合物処理後、細胞をPBS(Sigma Aldrich、Germany)中で洗浄した後、氷冷100%メタノール中で10min固定した。細胞を滅菌PBS中で3x5min洗浄した後、室温で5min、PBS中の0.2%Triton X−100(Sigma Aldrich、Germany)と共にインキュベートすることにより透過処理した。非反応部位を、PBS中の10%正常ヤギ血清(Life Technology、USA)および2%ウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich、Germany)からなるブロッキングバッファーで+4℃で一晩遮断した。次いで、細胞を4℃で一晩、一次抗体中でインキュベートした。一次抗体を除去し、細胞を3x5minのPBSで洗浄した後、二次蛍光抗体を室温で2h適用した。次いで、カバースリップをPBS中で5x5min洗浄し、Hoescht 34580核染色で対抗染色した。最後にカバースリップをVectashieldRマウンティング媒体(Vector、UK)中の顕微鏡スライド上にマウントし、カバースリップの端部をマニキュア液で密封した。細胞を、Axiovert 200M倒立顕微鏡(Zeiss Ltd、Germany)を用いるZeiss LSM 510 META共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて画像化した。
【0517】
結果
XAB4によるTNF−αもしくはIL−17A刺激、またはIL−17A/TNF−α同時刺激の拮抗作用を、図21A〜25Aに示す。XAB4によるIL−1βまたはIL−17A/IL−1β同時刺激の拮抗作用を、図21B〜25Bに示す。
【0518】
図21はIL−6放出に対する拮抗作用を示し、図22はCXCL1放出に対する拮抗作用を示し、図23はIL−8に対する拮抗作用を示し、図24はGM−CSFに対する拮抗作用を示し、図25はCCL2に対する拮抗作用を示す。
【0519】
初代ヒトアストロサイトを、IL−17A(50ng/ml)、TNF−α(10ng/ml)、IL−1β、IL−17A/TNF−αおよびIL−1β/TNF−αを含むか、または含まない、増加する濃度のXAB4(0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nM)で処理した。用いた全濃度を、図面中に示す。示されるデータは、XAB4 0.01nMについては2つの実験、XAB4 0.1nM、1nMおよび10nMについては3つの実験の代表である。示される値は平均±S.E.M.である。
【0520】
図21Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、IL−17A、またはIL−17A/TNF−αで刺激したアストロサイトからのIL−6の放出に対して、対照とアイソタイプの両方と比較して、拮抗作用を有する。IL−6の濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の約10倍高い尺度を有する。図21Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を有さない。
【0521】
図22Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較して、IL−17AまたはIL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのCXCL1の放出に対する拮抗作用を有する。CXCL1の濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の約10倍高い尺度を有する。図22Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を有さない。
【0522】
図23Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照と比較して、IL−17AまたはIL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのIL−8の放出に対する拮抗作用を有する。アイソタイプと比較して、XAB4(0.1nM、1nMおよび10nM)はIL−8の放出に対する拮抗作用を有する。IL−8の濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。最後のデータセットは、y軸の約5倍高い尺度を有する。図23Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を有さない。
【0523】
図24Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較して、IL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのGM−CSFの放出に対する拮抗作用を有する。XAB4(0.1nM、1nMおよび10nM)はアイソタイプおよび対照と比較して、IL−17Aで刺激されたアストロサイトからのGM−CSFの放出に対する拮抗作用を有する。GM−CSFの濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。図24Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を有さないか、または低い拮抗作用を有する。
【0524】
図25Aに見られる通り、XAB4(全濃度)は、対照とアイソタイプの両方と比較して、IL−17Aで刺激されたアストロサイトからのCCL2の放出に対する拮抗作用を有する。XAB4(0.1nM、1nMおよび10nM)はアイソタイプおよび対照と比較して、IL−17A/TNF−αで刺激されたアストロサイトからのCCL2の放出に対する拮抗作用を有する。CCL2の濃度(ng/ml)はy軸により表され、XAB4の濃度はx軸上に表される(それぞれのデータセットについては0、すなわち、対照、0.01nM、0.1nM、1nMおよび10nMならびにアイソタイプについては10nM)。左側のデータセットは未刺激の細胞に関するものであり、次のデータセットはTNF−α(10ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、次のデータセットはIL−17A(50ng/ml)で刺激された細胞に関するものであり、最後のデータセットはTNF−α(10ng/ml)およびIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に関するものである。図25Bに見られる通り、XAB4(全濃度)は、アイソタイプと比較して、IL−1β(0.1ng/ml)で刺激されたか、またはIL−1β(0.1ng/ml)とIL−17A(50ng/ml)で同時刺激された細胞に対する拮抗作用を有さない。
【0525】
総合すると、データは、XAB4によるIL−17Aシグナリングの選択的阻害がヒトアストロサイトにおける炎症促進性サイトカインのレベルを減衰させることを示唆していた。疾患においては、アストロサイトは様々な精神障害、神経障害および神経変性障害において役割を果たし、神経炎症におけるその役割は重要である可能性があると示唆されている。XAB4はアストロサイトのIL−6、CXCL1、IL−8、GM−CSF、およびCCL2生成に対する効果を有することが示されたため、XAB4は多発性硬化症(MS)の処置などのための有用な治療剤であり得る。
【0526】
配列情報
XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に関する配列データを、参照を容易にするために以下にまとめる。
【0527】
表1は、例示的なXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の全長重鎖および軽鎖のアミノ酸配列(配列番号)を記載する。
【0528】
抗体XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5を、従来の抗体組換え生成および精製プロセスを用いて生成することができる。例えば、表3または表4に記載されたコード配列を、哺乳動物生成細胞系における組換え発現のための生成ベクター中にクローニングする。
【0529】
表2は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5からキメラ抗体を作製するために用いることができる、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4またはXAB5の可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)アミノ酸配列をまとめたものである。
【0530】
表5は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に由来するCDR領域がKabatの定義に従って定義された、代替的CDR移植抗体を作製するためのXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の有用なCDR配列(+コンセンサス配列)をまとめたものである。
【0531】
表6は、XAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5に由来するCDR領域がChothiaの定義に従って定義された、代替的CDR移植抗体を作製するためのXAB1、XAB2、XAB3、XAB4およびXAB5の有用なCDR配列(+コンセンサス配列)をまとめたものである。
【0532】
本明細書で記載される全ての配列(配列番号)は、表36に見出される。
【0533】
配列表
本発明を実施するための有用なアミノ酸およびヌクレオチド配列は、表36に見出される。
【0534】
【表36】

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質であって、
a)配列番号7、配列番号8および配列番号3によりコードされる配列
に対する少なくとも95%の同一性を有するCDRアミノ酸配列と、
b)配列番号42、配列番号23および配列番号11によりコードされる配列
に対する少なくとも64%の同一性を有するCDRアミノ酸配列と
を含み、
前記抗体またはタンパク質は、ホモ二量体IL−17Aおよびヘテロ二量体IL−17AFには特異的に結合するが、ホモ二量体IL−17Fには特異的に結合しない、単離された抗体またはその抗原結合部分を含むタンパク質。
[2]
前記IL−17A、IL−17AFまたはIL−17Fが、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、ラット、マウスまたはヒトの1つまたは複数から選択される、上記[1]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[3]
a)配列番号12
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号43
に対する少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列と
を含む、上記[1]または[2]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[4]
a)配列番号14
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と、
b)配列番号44
に対する少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列と
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[5]
a)第1の可変アミノ酸がGly(G)およびVal(V)からなる群から選択され、第2の可変アミノ酸がTyr(Y)、Asn(N)およびIle(I)からなる群から選択され、第3の可変アミノ酸がTrp(W)およびSer(S)からなる群から選択され、第4の可変アミノ酸がGlu(E)およびAla(A)からなる群から選択される、配列番号73の軽鎖CDR1ドメイン;
b)前記可変アミノ酸がAsn(N)およびGln(Q)からなる群から選択される、配列番号74の軽鎖CDR2ドメイン;ならびに
c)前記可変アミノ酸がAsn(N)およびAsp(D)からなる群から選択される、配列番号75の軽鎖CDR3ドメイン
からなる群から選択されるCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[6]
順番に、
a)配列番号7、配列番号8および配列番号3を含む重鎖CDRと、
順番に、
b)配列番号42、配列番号23および配列番号11、
c)配列番号42、配列番号10および配列番号11、
d)配列番号34、配列番号23および配列番号11、または
e)配列番号22、配列番号23および配列番号24
を含む軽鎖CDRと
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[7]
a)配列番号12
を含む免疫グロブリン重鎖と、
b)配列番号43、
c)配列番号53、
d)配列番号35、または
e)配列番号25
を含む免疫グロブリン軽鎖と
を含む、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[8]
a)配列番号14
を含む免疫グロブリン重鎖と、
b)配列番号44、
c)配列番号54、
d)配列番号36、または
e)配列番号26
を含む免疫グロブリン軽鎖と
を含む、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[9]
上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質と同じエピトープに結合する、単離された抗体またはタンパク質。
[10]
Arg78、Glu80、およびTrp90を含むIL−17Aエピトープに結合する、上記[9]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[11]
前記エピトープがTyr85またはArg124のいずれか1つまたは複数をさらに含む、上記[10]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[12]
上記項目のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質と同等のエピトープ認識特性を有する抗原認識表面を含む、単離された抗体またはタンパク質。
[13]
上記項目のいずれか一項に記載の抗体の少なくとも1つによりIL−17AまたはIL−17AFへの結合から交差遮断される、単離された抗体またはタンパク質。
[14]
前記抗体またはタンパク質が、
a)ヒトIL−17Fホモ二量体、IL−17Bホモ二量体、IL−17Cホモ二量体、IL−17Dホモ二量体、IL−17Eホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/または
b)カニクイザルIL−17Fホモ二量体、マウスIL−17Fホモ二量体のいずれか1つもしくは複数、および/または
c)IL−1、IL−3、IL−4、IL−6、IL−8、gIFN、TNFアルファ、EGF、GMCSF、TGFベータ2からなる群から選択される他のヒトサイトカインのいずれか1つもしくは複数、および/または
d)IL−1b、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12、IL18、IL23、IFNもしくはTNFからなる群から選択される他のマウスサイトカインのいずれか1つもしくは複数
に特異的に結合しない、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[15]
IL−17Aへの結合が、
a)IL−17Aとその受容体との間の結合を阻害するか、または遮断し、かつ、
b)IL−17A活性を低下させるか、または中和する、
上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[16]
ヒトIL−17Aに対する結合親和性がBiacore(商標)により測定した場合、200pMまたは100pM未満である、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[17]
好ましくは、培養軟骨細胞または線維芽細胞を用いて、in vitroで評価された場合、IL−6分泌、またはGRO−アルファ分泌を阻害することができる、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[18]
in vivoで抗原誘導性関節炎実験モデルにおける膝の腫れを阻害することができる、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[19]
さらなる活性部分にコンジュゲートされた、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[20]
モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、好ましくは、キメラ、ヒト化、もしくはヒト抗体またはその部分である、上記項目のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[21]
1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせて、上記項目のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質を含む、医薬組成物。
[22]
1つまたは複数のさらなる活性成分をさらに含む、上記[21]に記載の医薬組成物。
[23]
IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害の処置における使用のための、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[24]
炎症性障害または状態の処置における使用のための、上記[23]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[25]
関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症、または嚢胞性線維症の処置における使用のための、上記[24]に記載の単離された抗体またはタンパク質。
[26]
IL−17Aにより媒介されるか、またはIL−6もしくはGRO−アルファ分泌を阻害することにより処置することができる病理学的障害の処置における使用のための医薬の製造における上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質の使用。
[27]
前記病理学的障害が炎症性障害または状態である、上記[26]に記載の使用。
[28]
前記炎症性障害または状態が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症である、上記[27]に記載の使用。
[29]
IL−17Aにより媒介される病理学的障害を処置する方法であって、前記状態が軽減されるように、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質の有効量を投与する工程を含む、方法。
[30]
前記状態が炎症性障害または状態である、上記[29]に記載の方法。
[31]
前記状態が、関節炎、関節リウマチ、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、喘息、多発性硬化症または嚢胞性線維症である、上記[30]に記載の方法。
[32]
上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の抗体またはタンパク質のいずれか1つをコードする単離された核酸分子。
[33]
上記[32]に記載の1つまたは複数の核酸配列を含むクローニングまたは発現ベクターであって、前記ベクターは、上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質の組換え生成に好適である、クローニングまたは発現ベクター。
[34]
上記[33]に記載の1つまたは複数のクローニングまたは発現ベクターを含む宿主細胞。
[35]
前記核酸分子がメッセンジャーRNA(mRNA)である、上記[32]に記載の単離された核酸分子。
[36]
上記[1]から[20]のいずれか一項に記載の単離された抗体またはタンパク質を生成するための方法であって、上記[34]に記載の宿主細胞を培養する工程、前記抗体またはタンパク質を精製および回収する工程を含む、方法。
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