(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084803
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20170213BHJP
C08L 33/12 20060101ALI20170213BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20170213BHJP
C08L 25/14 20060101ALI20170213BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20170213BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20170213BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20170213BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20170213BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/12
C08L25/12
C08L25/14
C08K3/34
C08K5/098
C08K5/21
C08K7/14
C08L71/02
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-225076(P2012-225076)
(22)【出願日】2012年10月10日
(65)【公開番号】特開2014-77048(P2014-77048A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501041528
【氏名又は名称】ダイセルポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直樹
【審査官】
繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−032997(JP,A)
【文献】
特開2004−250589(JP,A)
【文献】
特開平04−270797(JP,A)
【文献】
特開2001−279035(JP,A)
【文献】
特開2006−335913(JP,A)
【文献】
特開平06−330091(JP,A)
【文献】
特開2010−240936(JP,A)
【文献】
特開2007−083732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂を成形加工した後の成形加工機の洗浄用であり、
(A)熱可塑性樹脂、
(B)焼成カオリン、
を含有し、さらに(C)脂肪酸のアルカリ金属塩および(D)縮合リン酸塩を含有する、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分が、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウムおよびメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上のものである、請求項1記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)アルカンスルホン酸ナトリウム塩を含有する、請求項1記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分が、PMMA樹脂、AS樹脂およびMS樹脂から選ばれる1種以上のものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに(F)ポリエチレングリコールを含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(G)ガラス繊維を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート(PC)樹脂を成形加工した後の成形加工機を洗浄するための熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を成形するための成形工機用の洗浄剤として、ベース樹脂と他の成分を組み合わせた洗浄用の樹脂組成物が知られている。
このような洗浄用の樹脂組成物には、洗浄性を高めるために各種フィラーや陰イオン界面活性剤などが配合されているものがある。
【0003】
特許文献1〜3には、熱可塑性樹脂およびウォラストナイトを含有する洗浄剤組成物が記載されている。
特許文献4には、熱可塑性樹脂、リン酸エステルまたはカルボン酸の金属塩、研磨剤を含むものが記載されており、研磨剤の中にはカオリンも例示されている。特許文献3の段落番号9では、PC樹脂などの残留物の洗浄には効果がないことが記載されている。
【0004】
PC樹脂を成形加工した後の成形加工機に残留するPC樹脂は、洗浄剤で洗浄する際、アルカリ成分の接触により分解して激しい発泡が生じる(二酸化炭素ガスなどが発生する)ことがあるため、特許文献1〜4ではこのような問題が解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−107433号公報
【特許文献2】国際公開2000/056514号
【特許文献3】特開2001−348600号公報
【特許文献4】米国特許5236514号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗浄性能が高い、PC樹脂を成形加工した後の成形加工機の洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、
ポリカーボネート樹脂を成形加工した後の成形加工機の洗浄用であり、
(A)熱可塑性樹脂、
(B)pHが7未満の鉱物フィラー、
を含有する、成形加工機洗浄用の熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の洗浄用の熱可塑性樹脂組成物は、PC樹脂を成形加工した後の成形加工機の洗浄性が良い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(A)成分>
(A)成分の熱可塑性樹脂は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MS(メチルメタクリレート−スチレン)樹脂から選ばれる1種以上のものが好ましい。
【0010】
<(B)成分>
(B)成分は、pH7未満の鉱物フィラーである。鉱物フィラーのpHは、特開2007−45983号公報の段落番号0025に記載された測定方法によって求めることができる。
(B)成分は、洗浄時において成形加工機に残留するPC樹脂と接触した場合であっても、PC樹脂を分解することなく、洗浄性を高めることができる成分である。
(B)成分は、カオリン、焼成カオリンまたはそれらの混合物から選ばれるものが好ましい。
【0011】
組成物中における(B)成分の鉱物フィラーの含有割合は、(A)成分100質量部に対して10〜100質量部であり、好ましくは10〜80質量部であり、より好ましくは10〜60質量部である。
【0012】
本発明の組成物は、さらに、(C)成分および(D)成分を組み合わせたものを含有することができる。
(C)成分自体は、洗浄時において成形加工機に残留するPC樹脂と接触した場合に分解させるように作用する成分であるが、(D)成分と組み合わせて使用することで、前記の問題の発生を防止すると共に、洗浄性を高めることができる。
【0013】
<(C)成分>
(C)成分の脂肪酸のアルカリ金属塩は、洗浄性および排出性を向上させる成分であり、炭素数が10〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のNa、K、Li、Cs塩が好ましい。脂肪酸は直鎖でもよいし、分岐していてもよい。
これらの中でも、炭素数12〜22の直鎖飽和脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等)のNa塩がより好ましい。
【0014】
<(D)成分>
(D)成分の縮合リン酸塩は、洗浄性および排出性を向上させる成分であり、ピロリン酸ナトリウム(ピロリン酸二水素二ナトリウム)、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウムおよびメタリン酸ナトリウムから選ばれる1種以上を使用することができる。
【0015】
(C)成分と(D)成分の含有割合は、それらの合計量中、
(C)成分は50〜80質量%が好ましく、60〜70質量%がより好ましく、
(D)成分は20〜50質量%が好ましく、40〜30質量%がより好ましい。
【0016】
組成物中における(C)成分と(D)成分の合計の含有割合は、(A)成分100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜6質量部がより好ましく、0.5〜3質量部がさらに好ましい。
【0017】
<(E)成分>
本発明の組成物は、さらに(E)成分のアルカンスルホン酸ナトリウム塩を含有することができる。
(E)成分のアルカンスルホン酸ナトリウム塩は、例えば、特開2006−335913号公報の段落番号0029〜0031に記載の一般式(1)で表されるものを使用することができる。
【0018】
組成物中における(E)成分のアルカンスルホン酸ナトリウム塩の含有割合は、(A)成分100質量部に対して0.5〜10質量部であり、好ましくは0.5〜6質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0019】
<(F)成分>
本発明の組成物は、さらに(F)成分としてポリエチレングリコールを含有することができる。(F)成分は、(C)成分および(D)成分と一緒に使用することが好ましい。
組成物中の(F)成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して0.5〜10質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。
【0020】
<(G)成分>
本発明の組成物は、さらに(G)成分としてガラス繊維を含有することができる。
組成物中の(G)成分の含有割合は、(A)成分100質量部に対して10〜100質量部であり、好ましくは10〜80質量部であり、より好ましくは10〜60質量部である。
【0021】
本発明の組成物は、上記各成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりすることによって製造することができる。
【実施例】
【0022】
実施例および比較例
表1に示す組成の各成分をタンブラーブレンダーで混合後、押出機にて溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。結果を表1に示す。
【0023】
<洗浄性の評価>
射出成形機(住友重機械工業社製「SH100」;シリンダー温度300℃)に、先行使用樹脂としてPC樹脂(バイエル マテリアル株式会社 マクロロン2600)の赤色着色品(赤色色素濃度0.5%)1kgを射出成形した。
その後、表1の各組成物を用いて計量と射出の操作を繰り返し、赤色が消えた時点を洗浄終了として、それまでの組成物の使用量(kg)により洗浄性を評価した。
また洗浄終了後に無着色のPC樹脂(バイエル マテリアル株式会社 マクロロン2600)を流したときに先行使用樹脂(前材であるPC樹脂)の赤色がでるかどうかで洗浄性(前材の残留の有無)を評価した。
なお、洗浄中の発泡の有無を、目視観察で評価し、発泡が生じた場合には洗浄試験は評価しなかった。
【0024】
【表1】
【0025】
・(A)成分
PMMA樹脂:三菱レイヨン(株)製「アクリペットVH001」
MS樹脂:ダイセルポリマー(株)製「セビアン−MAS MAS30」
AS樹脂:ダイセルポリマー(株)製「セビアン−N 020」)
・(B)成分
焼成カオリン:BASF社製 Satintone W(pH5〜6)
カオリン:林化成株式会社 ASP200(pH4.0)
・(B’)成分(比較成分)
タルク:林化成(株)の「ミクロンホワイト#5000S」(pH9.5)
ウォラストナイト:関西マテック(株)の「ウォラストナイトKTP-H02」
(pH9.5〜10.5)
・(C)成分
ベヘン酸ナトリウム塩
・(E)成分
アルカンスルホン酸ナトリウム塩:クラリアントジャパン(株)のHostapur SAS93
・(F)成分
ポリエチレングリコール:日油(株)の「PEG#300」
・(G)成分
ガラス繊維:日本電気電子(株)の「ECS-03-T-120」