特許第6084807号(P6084807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084807
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】交差感作性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/15 20060101AFI20170213BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-234457(P2012-234457)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-85231(P2014-85231A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 邦彦
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−104198(JP,A)
【文献】 特開2006−042702(JP,A)
【文献】 野田勉、外3名,抗菌剤2,4,5,6‐tetrachloroisophthalonitrileのモルモットおよびマウスにおける皮膚感作性とその交差反応性,生活衛生,日本,2006年,Vol. 50,No. 4,Page.197-205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被験物質と第2の被験物質との交差感作性を評価する方法であって、
マウスの一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップと、
一定期間後に、他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップと、
前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップから36〜80時間後に、前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、交差感作性評価方法。
【請求項2】
他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップの前後24時間以内に一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップをさらに含む、請求項1に記載の交差感作性評価方法。
【請求項3】
前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップの前後24時間以内に一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップが、前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップと同時に、一方の耳介にも第1の被験物質を塗布する、請求項2に記載の交差感作性評価方法。
【請求項4】
前記一定期間が7日以上2週間以内である、請求項1〜3のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項5】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節の重量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項6】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項7】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介の厚みの測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項8】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項9】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介の重量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項10】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節のトリチウムチミジンの取り込みの測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【請求項11】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節のブロムデオキシウリジン(BrdU)の取り込みの測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の交差感作性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物、化学物質などの交差感作性を簡便に評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある抗原の免疫で得られた抗体が、別の抗原とも結合反応を示す時、この現象を交差反応といい、その抗原を交差反応性抗原、また抗体を交差反応性抗体という(「生化学辞典 第2版」(株式会社 東京化学同人発行)の「交差反応、交叉反応」)。化粧品、洗剤などの開発において、その主成分の原料、添加剤などとして材料を選択する場合、その材料に触れた消費者などにおいて皮膚免疫応答が惹起される性質を有し(「皮膚感作性」を有する)、さらに、交差反応を引き起こす性質を有する(「交差感作性」を有する)他の天然物、化学物質を探索することは重要である。特に、皮膚感作性を有する物質(皮膚感作性物質)は、消費者の感受性によっては重篤なアレルギー反応を引き起こしてしまう場合もあり、皮膚感作性の有無の検出と共に、交差感作性の評価も特に重要である。
【0003】
化学物質などによる感作の成立には、大きく分けて、2つの段階があることが知られている。第一の段階は、化学物質が体内に入って、生体内のタンパク質などと結合し、これを樹状細胞が異物として認識し、一連の免疫応答を開始する「感作段階」である。第二の段階は、感作されたリンパ球が全身に広がり、再び、同一の化学物質などが体内に入ったときに、よりすばやく、より激しい応答を呈する「惹起段階」である。すなわち、上述した従来の皮膚感作性を検出する手法は、感作の成立のいずれかの段階を検出することを目的としている。
【0004】
たとえば、アジュバントを用いるGPMT(Guinea Pig Maximization Test)法、アジュバントを用いないビューラー法は、「惹起段階」を検出する手法であり、これらの試験で陽性であるということは、原理的かつ原則的に感作が成立していると判断することができる(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、406 皮膚感作性、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg406j.pdf>(非特許文献1)を参照。)。
【0005】
たとえば、政本幸三「単純クマリン類の感作性及び交差反応性」、薬学雑誌、121(1)、p97−103(2001)(非特許文献2)、野田勉ら「抗菌剤2,3,5,6−tetrachloro−4−(methylsulfonyl)pyridineのモルモットにおける皮膚感作性とその交差反応性」、生活衛生、Vol. 50, No. 2, p76−83(2006)(非特許文献3)などに記載されているように、天然物、化学物質の交差感作性を明らかにする方法にも、従来は、主にモルモットを用いた試験法を応用した方法が用いられてきた。しかしながら、モルモットを用いた試験法は、惹起を確認するために、試験期間が長いだけでなく、判定が目視による皮膚反応の判定であるため定量的な結果が得られにくい。また、モルモットを用いた試験法であり、動物愛護の観点から代替し得る方法を見出すことが課題とされていた。
【0006】
近年では、皮膚感作性を検出する方法は、モルモットではなくマウスを用いたLLNA(Local Lymph Node Assay、局所リンパ節試験)が主流となっている(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、429 皮膚感作:局所リンパ節試験、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg429j.pdf>(非特許文献4)を参照。)。LLNAは、「感作段階」を検出する手法であり、試験開始1日目、2日目、3日目に、マウスの両耳に被験物質を塗布した後、6日目に、マウスから耳介リンパ節を採取する。被験物質が皮膚感作性物質であれば、耳介リンパ節においてリンパ球の増殖を惹起する。リンパ球の増殖は適用された用量(アレルゲンの効力)に比例するため、LLNAでは、短い試験期間で、客観的かつ定量的に簡単に皮膚感作性を検出することができる。
【0007】
しかしながら、上述のLLNAは、感作性の検出にラジオアイソトープ(RI)であるH-thymidineを用いることから、日本においては実施できる施設に制限があるという実情があった。本発明者らは、LLNAの改良法として、放射性物質を用いずに、生物発光によりATP(アデノシン三リン酸)を定量することでリンパ球の増殖の指標とする、LLNA:DA(modified LLNA of Daicel based on ATP)を提案した(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、442A 皮膚感作性:局所リンパ節試験:DA、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg442aj.pdf>(非特許文献5)を参照。)。
【0008】
近年では、LLNA、LLNA:DAにより、多くの定量的データが蓄積されてきているものの、LLNA、LLNA:DAでは、「感作段階」を評価する手法であるため原則的に、交差感作性の評価には使用できない。
【0009】
また交差感作性を定量的に評価する方法として、たとえば李卿ら「リンパ球幼若化反応法を用いたDNCBとDNBSによる接触アレルギー反応のin vitro評価」、産業医学、33(6)、p509−518(1991)(非特許文献6)には、感作された動物から単離したリンパ球を用いて交差感作を定量的に評価する可能性を有する方法も提案されているが、この方法では幼若化反応の検出に放射性物質を用いなければならないという問題がある。
【0010】
このように現在のところ、マウスを用いて、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータを直接的に活用できる交差感作性の評価方法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、406 皮膚感作性、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg406j.pdf>
【非特許文献2】政本幸三「単純クマリン類の感作性及び交差反応性」、薬学雑誌、121(1)、p97−103(2001)
【非特許文献3】野田勉ら「抗菌剤2,3,5,6−tetrachloro−4−(methylsulfonyl)pyridineのモルモットにおける皮膚感作性とその交差反応性」、生活衛生、Vol. 50, No. 2, p76−83(2006)
【非特許文献4】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、429 皮膚感作:局所リンパ節試験、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg429j.pdf>
【非特許文献5】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、442A 皮膚感作性:局所リンパ節試験:DA、[平成24年10月17日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg442aj.pdf>
【非特許文献6】李卿ら「リンパ球幼若化反応法を用いたDNCBとDNBSによる接触アレルギー反応のin vitro評価」、産業医学、33(6)、p509−518(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータを直接的に活用できる、簡便な交差感作性の評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の交差感作性評価方法は、第1の被験物質と第2の被験物質との交差感作性を評価する方法であって、マウスの一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップと、一定期間後に、他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップと、前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップから36〜80時間後に、前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の交差感作性評価方法は、他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップの前後24時間以内に一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップをさらに含むことが好ましい。
【0015】
また本発明の交差感作性評価試験では、前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップの前後24時間以内に一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップが、前記他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップと同時に、一方の耳介にも第1の被験物質を塗布することが好ましい。
【0016】
本発明の交差感作性評価方法における一定期間は、7日以上2週間以内であることが好ましい。
【0017】
また本発明の交差感作性評価方法は、惹起反応の検出を、以下の(a)〜(g)の少なくともいずれかの方法によって行うことが好ましい。
【0018】
(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定する、
(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定する、
(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定する、
(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定する、
(e)マウスの左右の耳介の重量を測定する、
(f)マウスの左右の耳介リンパ節のトリチウムチミジン取り込み量を測定する、
(g)マウスの左右の耳介のリンパ節のブロムデオキシウリジン(BrdU)取り込み量を測定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータを直接的に活用できる、簡便な交差感作性の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の交差感作性評価方法の好ましい第1の例を模式的に示す図である。
図2】本発明の交差感作性評価方法の好ましい第2の例を模式的に示す図である。
図3】実験例1のケージ1、2についての結果を示すグラフであり、図3(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図3(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。
図4】実験例1のケージ3、4についての結果を示すグラフであり、図4(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図4(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。
図5】実験例1のケージ5、6についての結果を示すグラフであり、図5(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図5(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。
図6】実験例1のケージ7、8についての結果を示すグラフであり、図6(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図6(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。
図7】実験例1のケージ9〜11についての結果を示すグラフであり、図7(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図7(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の交差感作性評価方法の好ましい第1の例を模式的に示す図である。本発明の交差感作性評価方法は、以下のステップを含む。
【0022】
(1)マウス1の一方の耳介2に第1の被験物質を塗布するステップ(ステップS1)、
(2)一定期間後に、他方の耳介3に第2の被験物質を塗布するステップ(ステップS2)、
(3)前記ステップS2から36〜80時間後に、前記他方の耳介3における惹起反応を検出するステップ(ステップS3)。
【0023】
ここで、本発明の交差感作性評価方法に用いるマウスについては特に限定されないが、これまで世界的に多くの統計データが蓄積されてきたLLNA、LLNA:DAとの相関性が高ければ、LLNA、LLNA:DAと試験結果を照合しやすくなることから、たとえばCBA/Jの系統の未経産で非妊娠の若齢(8〜12週齢)の雌マウスなど、LLNA、LLNA:DAに従来よりよく用いられているマウスを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の交差感作性評価方法におけるステップS1では、まず、マウス1の一方の耳介2に第1の被験物質を塗布する。ここで、「耳介」は、マウスの外耳のうち外側に張り出している部分を指す。第1の被験物質を塗布する部分は耳介に含まれるいずれの領域であってもよいが、塗布のしやすさ、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータと比較しやすいなどの観点から、耳背部の領域が好ましい。
【0025】
本発明において用いられる「被験物質」は、第1の被験物質、第2の被験物質のいずれにおいても、溶媒または分散媒に溶解または分散させることでマウスの耳介に塗布可能となる被験物質塗布液(第1の被験物質塗布液、第2の被験物質塗布液)にそれぞれ調製できるものであればよく、皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質(皮膚に一過性の刺激を与える性質(皮膚刺激性)を有する物質)、その他皮膚感作性、皮膚刺激性のいずれも示さない物質など、未知の材料、公知の材料のいずれもを包含する。なお、第1の被験物質、第2の被験物質のいずれにおいても非特許文献5に記載された定義に沿って、単一の化合物であってもよく、また、多成分(最終製品、調製物など)からなるものであってもよい。溶媒、分散媒などは、当分野において用いられている公知の溶媒、分散媒を第1の被験物質、第2の被験物質に応じて用いればよく、たとえば、アセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。中でも、陽性対照(PC)として用いた場合に一貫した応答を示すことから、アセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)が好ましい。
【0026】
「皮膚感作性物質」とは、個体が誘導性アレルゲンに局所的に曝露された際に生じる免疫学的過程によって皮膚免疫応答を惹起し、その結果、接触感作性の発現に至る性質(皮膚感作性)を有する物質を指す。このような皮膚感作性物質としては、たとえば、パラフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)、イソオイゲノール、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)、オイゲノール、パラフェニレンジアミン、コバルトクロライド、シトラル、イミダゾイルウレア、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、エチレングリコールジメタクリレート(EG)などが知られている。
【0027】
本発明の交差感作性評価方法において、ステップS1で一方の耳介2に塗布する第1の被験物質の量(投与量)は、LLNA、LLNA:DAで採用される基準(非特許文献4、5などを参照)で調製されることが好ましいが、これに限定されるものではない。第1の被験物質塗布液中の第1の被験物質の濃度についても特に制限されるものではないが、耳介が欠損するなどの著しい毒性、腐食性を示さない濃度であれば、0.01〜100%(w/v)の範囲内であることが好ましく、また、たとえば、LLNA、LLNA:DAなどで求めたEC3の値の、0.2倍から50倍の範囲内であることがより好ましい。これは、化学物質などの、刺激性および感作性にはばらつきがあるが、本試験法では、交差感作性の評価に影響を与える刺激性の影響を無視して、交差感作性を評価できるためであると共に、LLNA、LLNA:DAで得られた結果を有効に活用できるためである。
【0028】
また本発明において、ステップS1における第1の被験物質塗布液の塗布回数は、1回の塗布量、第1の被験物質塗布液中の第1の被験物質の濃度、感作性の強さにも依存するが、1〜10回であることが好ましく、1〜3回であることがより好ましく、LLNA、LLNA:DAとの相関性を高めることができる観点からは3回であることが特に好ましい。なお、第1の被験物質を塗布する耳介の領域は、複数回の塗布ごとに(たとえば1回目の塗布と2回目の塗布とで)同じであってもよいし、同じ側の耳介であれば異なっていてもよい。また、ステップS1における塗布の間隔についても特に制限されないが、LLNAとの相関性を高めることができることから、LLNAで採用されているように1日目、2日目、3日目に塗布することが好ましい。この場合、各塗布の間に少なくとも12時間以上の間隔をあけることが好ましく、同一の時刻に塗布するようにすることが特に好ましい。
【0029】
なお、LLNA:DAにおいて、第1の被験物質を塗布する前に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを予め第1の被験物質を塗布する耳介に塗布しておくことで、検出の感度が上昇することが知られており、本発明の交差感作性評価方法においても、これを採用してもよい。SDSを用いる場合、その濃度は、0.01〜10%の範囲が好ましく、0.1〜1%の範囲がより好ましい。
【0030】
続くステップS2では、一定期間後に、他方の耳介3に、第1の被験物質とは異なる第2の被験物質を塗布する。この「一定期間」について特に制限するものではないが、第1の被験物質が皮膚感作性物質である場合には、この一定期間が当該皮膚感作性物質による感作開始から惹起までの期間となることから、7日以上2週間以内であることが好ましく、9日以上12日以内であることがより好ましく、10日以上11日以内であることが特に好ましい。一定期間が7日未満であると、第1の被験物質が皮膚感作性物質であった場合に、感作されたリンパ球の伝播による全身の感作が未だ起こっていないか起こっていたとしても、第2の被験物質との間に交差感作性を有するかを評価するには不十分である傾向にあり、また、2週間を超えても、交差感作性の評価は可能であると考えるが、従来のモルモットを用いた試験と比較して、試験期間の短縮というメリットが薄れてしまう。
【0031】
本発明の交差感作性評価方法において、ステップS2で他方の耳介3に塗布する第2の被験物質の量(投与量)、第2の被験物質塗布液中の第2の被験物質の濃度についても特に制限はされないが、LLNA、LLNA:DAの豊富なデータを活用するという理由からは、ステップS1において一方の耳介2に塗布した1回分の第1の被験物質の量、濃度と同程度であることが好ましい。また、ステップS2における第2の被験物質塗布液の塗布回数について特に制限されないが、1回であることが好ましい。
【0032】
本発明の交差感作性評価方法におけるステップS3では、ステップS2で第2の被験物質を塗布した他方の耳介3における惹起反応を検出する。本発明においては、この惹起反応の検出を、ステップS2から36〜80時間後に行なうことを大きな特徴とする。惹起反応の検出がステップS2から36時間未満である場合には、耳介3のリンパ節の増殖が交差反応を科学的に検出するには不十分である場合があるためであり、80時間を超える場合には、試験期間が十分な検出を行うのに必要以上に長期化するためである。感作期間を十分に確保し、なおかつ試験を2週間以内に実施することでモルモットを用いる方法より短期間で試験結果を得るという観点からは、好ましくはステップS2から40〜72時間後、特に好ましくはステップS2から42〜54時間後に惹起反応の検出を行なうことが好ましい。
【0033】
ステップS3における惹起反応を検出する方法は、耳介リンパ節の増殖、皮膚反応を定量化できるのであれば特に制限されるものではなく、公知の方法を必要に応じて適宜組み合わせて行うことができるが、以下の(a)〜(g)の少なくともいずれかの方法によって行い、コントロール群と比較することが好ましい。
【0034】
(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定する、
(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定する、
(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定する、
(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定する、
(e)マウスの左右の耳介の重量を測定する、
(f)マウスの左右の耳介リンパ節のトリチウムチミジン取り込み量を測定する、
(g)マウスの左右の耳介のリンパ節のブロムデオキシウリジン(BrdU)取り込み量を測定する。
【0035】
上述した(a)〜(g)の方法は、いずれも公知であり、たとえば非特許文献4、5を含めた公知文献を適宜参照することで当業者であれば容易に実施可能である。なお、(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定することで惹起反応を検出する場合には、汎用されている安価な精密電子天秤が使用できるという利点があり、(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定することで惹起反応を検出する場合には、LLNA:DAのデータと比較することにより、感作の程度を類推できるという利点がある。また、(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定することで惹起反応を検出する場合には、2010年7月に改定されたTG429、TG442A、TG442Bの実施の過程で取得できる耳介厚のデータが活用できるという利点があり、(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定することで惹起反応を検出する場合には、豊富に市販されているDNA精製キットを用いることにより、施設間でばらつきの少ないデータが取得できるという利点がある。(e)マウスの左右の耳介の重量を測定することで惹起反応を検出する場合には、汎用されている安価な精密電子天秤が使用でき、また、作業者の熟練度の差が生じにくい可能性が高いという利点がある。(f)マウスの左右の耳介リンパ節のトリチウムチミジン取り込み量を測定する場合には、LLNA法(TG429)で十分確立されている手法が応用可能である。(g)マウスの左右の耳介のリンパ節のブロムデオキシウリジン(BrdU)取り込み量を測定する場合には、LLNA−BrdU法(TG442B)で十分確立されている手法が応用可能である。
【0036】
上述したステップS1〜S3を含む本発明の交差感作性評価方法によれば、マウスを用いて、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータを直接的に活用した、簡便な交差感作性の評価が可能となる。
【0037】
ここで、図2は、本発明の交差感作性評価方法の好ましい第2の例を模式的に示す図である。本発明の交差感作性評価方法は、上述したステップS1〜S3に加え、他方の耳介に第2の被験物質を塗布するステップの前後24時間以内に、一方の耳介に第1の被験物質を塗布するステップ(ステップS2’)をさらに含むことが好ましい。このようなステップS2’をさらに含むことで、上述のように、ステップS3において、他方の耳介で交差感作性を検出するとともに、一方の耳介で十分な感作が成立していることを確認することができる。
【0038】
ステップS2’は、ステップS2の前後24時間以内に行なう。24時間を超えてステップS2よりも前にステップS2’を行なった場合には、ステップS2’で投与した被験物質1が他方の耳介へ直接影響を与える可能性があるという虞があるためであり、また、24時間を超えてステップS2よりも後にステップS2’を行なった場合には、ステップ2で投与した被験物質1が他方の耳介へ影響を与え、被験物質1による感作レベルが正確に評価できなくなるという虞があるためである。被験物質の交差感作性を正確に評価するためには、ステップS2’は、ステップS2の前後24時間以内に行なうことがより好ましく、12時間以内に行なうことがさらに好ましい。また、効率的に、連続的な作業で無駄なく本発明の交差感作性評価方法を行なう観点からは、ステップS2’は、ステップS2と同時に行なうことが好ましい。
【0039】
本発明の交差感作性評価方法において、ステップS2’において一方の耳介2に塗布する第1の被験物質の量(投与量)、第1の被験物質塗布液中の第1の被験物質の濃度についても特に制限されるものではないが、LLNA、LLNA:DAの豊富なデータを活用するという理由からは、ステップS1において一方の耳介2に塗布した1回分の第1の被験物質の量、濃度と同程度であることが好ましい。また、ステップS2’における第1の被験物質塗布液の塗布回数についても特に制限されないが、1回であることが好ましい。
【0040】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
<実験例1>
CBA/Jの系統の未経産で非妊娠の若齢(8〜12週齢)の雌マウスを各ケージごとに5匹個体識別ができるように飼育し、試験開始時および終了時に体重を測定した。
【0042】
また、溶媒としてアセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)を用い、以下の被験物質塗布液をそれぞれ調製した。
【0043】
・0.25%(w/v) 2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)/AOO溶液、
・0.25%(w/v) ジニトロクロロベンゼン(DNCB)/AOO溶液、
・1%(w/v) p−ベンゾキノン(p−BQ)/AOO溶液、
・1%(w/v) ハイドロキノン(HQ)/AOO溶液、
・25%(w/v) α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)/AOO溶液。
【0044】
以下のように、各ケージごとに、操作を行った。なお、1回の塗布量は25μlとした。被験物質塗布液の塗布には、ピペットマンを用いた。
【0045】
(DNFBとDNCBとの間の交差感作性評価)
・ケージ1:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)、左耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出して重量を測定(精密化学天秤を使用)後、調製したマウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量(発光量:Relative Light Unit(RLU))を測定(以下、「R4L1」(右耳4回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ2:10日目のみ(およそ13時)にマウスの左耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R0L1」(右耳0回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ3:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)、左耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R4L1」(右耳4回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ4:10日目のみ(およそ13時)にマウスの左耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布し、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R0L1」(右耳0回、左耳1回の意)とも表記)。
【0046】
それぞれ、摘出した耳介リンパ節は、リン酸バッファー中に懸濁して耳介リンパ節懸濁液を調製し、ルミテスターC−100Nおよびルシフェール250プラス(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)を用いて、各耳介リンパ節懸濁液中のATP量を測定した。
【0047】
図3は、この実験例1のケージ1、2についての結果を示すグラフであり、図3(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図3(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。また図4は、実験例1のケージ3、4についての結果を示すグラフであり、図4(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図4(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。図3に示す結果から、0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を4回右耳に塗布し、0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ1))と、左耳のみ1回0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を塗布した場合(R0L1(ケージ2))とを比較すると、R4L1の方が、左耳の耳介リンパ節が優位に増殖しており、交差感作性が検出された。また図4に示す結果から、0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を4回右耳に塗布し、0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ3))と、左耳のみ1回0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を塗布した場合(R0L1(ケージ4))とを比較すると、R4L1の方が、左耳の耳介リンパ節が優位に増殖しており、交差感作性が検出された。
【0048】
(p−BQとHQとの間の交差感作性評価)
・ケージ5:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に1%(w/v) p−BQ/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳に1%(w/v) p−BQ/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)、左耳に1%(w/v) HQ/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R4L1」(右耳4回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ6:10日目のみ(およそ13時)にマウスの左耳に1%(w/v) HQ/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R0L1」(右耳0回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ7:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に1%(w/v) HQ/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳に1%(w/v) HQ/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)、左耳に1%(w/v) p−BQ/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R4L1」(右耳4回、左耳1回の意)とも表記)、
・ケージ8:10日目のみ(およそ13時)にマウスの左耳に1%(w/v) p−BQ/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布し、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定(以下、「R0L1」(右耳0回、左耳1回の意)とも表記)。
【0049】
図5は、この実験例1のケージ5、6についての結果を示すグラフであり、図5(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図5(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。また図6は、実験例1のケージ7、8についての結果を示すグラフであり、図6(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図6(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。図5に示す結果から、1%(w/v) p−BQ/AOO溶液を4回右耳に塗布し、1%(w/v) HQ/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ5))と、左耳のみ1回1%(w/v) HQ/AOO溶液を塗布した場合(R0L1(ケージ6))とを比較すると、R4L1の方が、左耳の耳介リンパ節が優位に増殖しており、交差感作性が検出された。また図6に示す結果から、1%(w/v) HQ/AOO溶液を4回右耳に塗布し、1%(w/v) p−BQ/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ7))と、左耳のみ1回1%(w/v) p−BQ/AOO溶液を塗布した場合(R0L1(ケージ8))とを比較すると、R4L1の方が、左耳の耳介リンパ節が優位に増殖しており、交差感作性が検出された。
【0050】
(DNFBとHCAとの間の交差感作性評価)
・ケージ9:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳および左耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定、
・ケージ10:1、2、3日目、同じ時刻(およそ13時)にマウスの右耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)を塗布し、10日目の同じ時刻に右耳に0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液(第1の被験物質塗布液)、左耳に25%(w/v) HCA/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定、
・ケージ11:10日目のみ(およそ13時)にマウスの左耳に25%(w/v) HCA/AOO溶液(第2の被験物質塗布液)を塗布した後、12日目の同じ時刻に左右両方の耳介リンパ節を摘出し、ケージ1と同様に重量を測定後、ATP量を測定。
【0051】
図7は、この実験例1のケージ9〜11についての結果を示すグラフであり、図7(a)では、縦軸は耳介リンパ節の重量(mg)、横軸は各ケージの番号を示し、図7(b)では、縦軸はATP量(RLU)、横軸は各ケージの番号を示している。図7に示す結果から、0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を4回右耳に塗布し、0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ9))、左耳の耳介リンパ節の増大が認められたが、0.25%(w/v) DNFB/AOO溶液を4回右耳に塗布し、25%(w/v) HCA/AOO溶液を1回左耳に塗布した場合(R4L1(ケージ10))と、左耳のみ1回25%(w/v) HCA/AOO溶液を塗布した場合(R0L1(ケージ11))とを比較すると、左耳の耳介リンパ節の増殖に差は認められなかった。
【0052】
今回開示された実施の形態および実験例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7