特許第6084808号(P6084808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ・ダウコーニング株式会社の特許一覧

特許6084808オルガノポリシロキサン、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置
<>
  • 特許6084808-オルガノポリシロキサン、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084808
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20170213BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20170213BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20170213BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K5/5415
   H01L23/28 D
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-235183(P2012-235183)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84417(P2014-84417A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110077
【氏名又は名称】東レ・ダウコーニング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
(72)【発明者】
【氏名】佐川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 香須美
(72)【発明者】
【氏名】飯村 智浩
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 一裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 好次
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−052045(JP,A)
【文献】 特開2012−082300(JP,A)
【文献】 特開平11−080362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−13/08
H01L 23/00−23/56
C08G 77/00−77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基、但し、一分子中の少なくとも一つのRは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは炭素数1〜12のアルキル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基;Rは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、もしくはフェニル基;a、b、c、およびdは、それぞれ、0.01≦a≦0.45、0.01≦b≦0.45、0≦c≦0.7、0.1≦d<0.9、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有さない直鎖状オルガノポリシロキサン(本組成物に対して、0〜70質量%)、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルとなる量}、および
(D)有効量のヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなる硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分中、Rがフェニル基またはナフチル基である、請求項記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
更に、(E)接着付与剤{上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部}を含む、請求項または記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
請求項乃至のいずれか1項記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物で光半導体素子が封止された光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン、このオルガノポリシロキサンを主成分とする硬化性シリコーン組成物、この組成物を硬化してなる硬化物、およびこの組成物を用いてなる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置における光半導体素子の封止材あるいは保護コーティング材に使用されている。しかし、硬化性シリコーン組成物の硬化物はガス透過性が高いため、光の強度が強く、発熱が大きい高輝度LEDに用いた場合には、腐食性ガスによる、封止材の変色や、LEDの基板にメッキされた銀の腐食による輝度の低下が問題となっている。
【0003】
このため、ガス透過性の低い硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物として、特許文献1には、メチルフェニルビニルシロキサン単位を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、および付加反応用触媒からなる硬化性シリコーン組成物が提案されている。
【0004】
しかし、このような硬化性シリコーン組成物は、硬化反応が遅く、硬化が不十分であると、硬化物の表面にタックを生じ、ゴミや埃が付着するという課題がある。また、このような硬化性シリコーン組成物の硬化反応を完結させるためには多大な時間とエネルギーが必要であるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−052045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高いヒドロシリル化反応性を有し、ガス透過性の低い硬化物を形成するオルガノポリシロキサンを提供することにあり、さらには、高い反応性を有し、ガス透過性の低い硬化物を形成する硬化性シリコーン組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ガス透過性の低い硬化物を提供することにあり、さらには、信頼性に優れる光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオルガノポリシロキサンは、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基、但し、一分子中の少なくとも一つのRは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは炭素数1〜12のアルキル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基;Rは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、もしくはフェニル基;a、b、c、およびdは、それぞれ、0.01≦a≦0.45、0.01≦b≦0.45、0≦c≦0.7、0.1≦d<0.9、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)
で表されることを特徴とする。
【0008】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A)平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)
(式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基、但し、一分子中の少なくとも一つのRは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは炭素数1〜12のアルキル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基;Rは炭素数2〜12のアルケニル基;Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、もしくはフェニル基;a、b、c、およびdは、それぞれ、0.01≦a≦0.45、0.01≦b≦0.45、0≦c≦0.7、0.1≦d<0.9、かつa+b+c+d=1を満たす数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有さない直鎖状オルガノポリシロキサン(本組成物に対して、0〜70質量%)、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分中と(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルとなる量}、および
(D)有効量のヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなることを特徴とする。
【0009】
本発明の硬化物は、上記の硬化性シリコーン組成物を硬化してなることを特徴とする。
【0010】
本発明の光半導体装置は、上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物により光半導体素子を封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサンは、高いヒドロシリル化反応性を有し、ガス透過性の低い硬化物を形成するという特徴があり、本発明の硬化性シリコーン組成物は、高い反応性を有し、ガス透過性の低い硬化物を形成するという特徴がある。さらに、本発明の硬化物は、ガス透過性が低いという特徴があり、本発明の光半導体装置は、信頼性が優れるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の光半導体装置の一例であるLEDの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明のオルガノポリシロキサンについて詳細に説明する。
本発明のオルガノポリシロキサンは、平均単位式:
(RSiO1/2)(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)
で表される。
【0014】
式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、Rのアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。但し、一分子中の少なくとも一つのRは炭素数2〜12のアルケニル基である。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、前記Rと同様のアルキル基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、Rは同じかまたは異なる、炭素数6〜20のアリール基もしくは炭素数7〜20のアラルキル基である。Rのアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、およびこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示され、好ましくは、フェニル基、ナフチル基である。また、Rのアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基、およびこれらのアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。また、Rは炭素数2〜12のアルケニル基であり、前記Rと同様のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、もしくはフェニル基である。Rのアルキル基としては、前記Rと同様のアルキル基が例示される。Rのアルケニル基としては、前記Rと同様のアルケニル基が例示される。
【0015】
また、式中、a、b、c、およびdは、それぞれ、0.01≦a≦0.45、0.01≦b≦0.45、0≦c≦0.7、0.1≦d<0.9、かつa+b+c+d=1を満たす数であり、好ましくは、0.05≦a≦0.45、0.05≦b≦0.45、0≦c≦0.5、0.4≦d<0.85、かつa+b+c+d=1を満たす数であり、更に好ましくは、0.05≦a≦0.4、0.05≦b≦0.4、0≦c≦0.4、0.45≦d<0.8、かつ、a+b+c+d=1を満たす数である。これは、aが上記範囲の下限以上であると、オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物のガス透過性が低下するからである。また、bが上記範囲の下限以上であると、硬化物のガス透過性が低下するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物にべたつきが生じ難くなるからである。また、cが上記範囲の上限以下であると、硬化物の硬度が良好となり、信頼性が向上するからである。また、dが上記範囲の下限以上であると、硬化物の屈折率が良好となるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0016】
本発明のオルガノポリシロキサンは、上記の平均単位式で表されるが、本発明の目的を損なわない範囲で、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位、式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位、式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位、または式:SiO4/2で表されるシロキサン単位を有してもよい。なお、式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、Rは炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、Rは炭素数2〜12のアルケニル基であり、それぞれ前記と同様の基が例示される。また、本発明のオルガノポリシロキサンには、本発明の目的を損なわない範囲で、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のケイ素原子結合アルコキシ基、あるいはケイ素原子結合水酸基を有していてもよい。
【0017】
このようなオルガノポリシロキサンを調製する方法としては、例えば、一般式(I):
SiX
で表されるシラン化合物、一般式(II−1):
SiOSiR
で表されるジシロキサンおよび/または一般式(II−2):
SiX
で表されるシラン化合物、および一般式(III−1):
SiOSiR
で表されるジシロキサンおよび/または一般式(III−2):
SiX
で表されるシラン化合物を、酸もしくはアルカリの存在下、加水分解・縮合反応させる方法が挙げられる。
【0018】
一般式(I):
SiX
で表されるシラン化合物は、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位を導入するための原料である。式中、Rは炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。また、式中、Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子、または水酸基である。Xのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。また、Xのアシロキシ基としては、アセトキシ基が例示される。また、Xのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が例示される。
【0019】
このようなシラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、アントラセニルトリメトキシシラン、フェナントリルトリメトキシシラン、ピレニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アントラセニルトリエトキシシラン、フェナントリルトリエトキシシラン、ピレニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;フェニルトリアセトキシシラン、ナフチルトリアセトキシシラン、アントラセニルトリアセトキシシラン、フェナントリルトリアセトキシシラン、ピレニルトリアセトキシシラン等のアシロキシシラン;フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシラン、アントラセニルトリクロロシラン、フェナントリルトリクロロシラン、ピレニルトリクロロシラン等のハロシラン;フェニルトリヒドロキシシラン、ナフチルトリヒドロキシシラン、アントラセニルトリヒドロキシシラン、フェナントリルトリヒドロキシシラン、ピレニルトリヒドロキシシラン等のヒドロキシシランが例示される。
【0020】
また、一般式(II−1):
SiOSiR
で表されるジシロキサンは、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位を導入するための原料である。式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基である。Rのアルキル基としては、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、Rのアルケニル基としては、前記と同様の基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0021】
このようなジシロキサンとしては、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサエチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサビニルジシロキサンが例示される。このようなジシロキサンを2種以上組合せて使用することもできるが、少なくとも1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン等の1,3−ジアルケニル−1,1,3,3−テトラアルキルジシロキサンを含むことが必要である。
【0022】
また、一般式(II−2):
SiX
で表されるシラン化合物も、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位を導入するための原料である。式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基もしくは炭素数2〜12のアルケニル基である。Rのアルキル基としては、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基である。また、Rのアルケニル基としては、前記と同様の基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、式中、Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子、または水酸基であり、前記と同様の基が例示される。
【0023】
このようなシラン化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジエチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジエチルビニルエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、トリビニルメトキシシラン等のアルコキシシラン;ジメチルビニルアセトキシシラン、ジエチルビニルアセトキシシラン、ジビニルメチルアセトキシシラン、トリビニルアセトキシシラン等のアシロキシシラン;トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジエチルビニルクロロシラン、ジビニルメチルクロロシラン、トリビニルクロロシラン等のハロシラン;ジメチルビニルヒドロキシシラン、ジエチルビニルヒドロキシシラン、ジビニルメチルヒドロキシシラン、トリビニルヒドロキシシラン等のヒドロキシシランが例示される。このようなシラン化合物を2種以上組合せて使用することもできるが、少なくともジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルアセトキシシラン、ジビニルメチルクロロシラン、ジビニルメチルヒドロキシシラン等のアルケニルジアルキルシラン化合物を含むことが必要である。
【0024】
一般式(III−1):
SiOSiR
で表されるジシロキサンは、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位を導入するための原料である。式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基である。式中、Rは炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。また、式中、Rは炭素数2〜12のアルケニル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、ビニル基である。
【0025】
このようなジシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサンが挙げられる。
【0026】
一般式(III−2):
SiX
で表されるシラン化合物も、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO1/2で表されるシロキサン単位を導入するための原料である。式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基である。式中、Rは炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、フェニル基またはナフチル基である。式中、Rは炭素数2〜12のアルケニル基であり、前記と同様の基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、式中、Xはアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子、または水酸基であり、前記と同様の基が例示される。
【0027】
このようなシラン化合物としては、メチルフェニルビニルメトキシシラン、メチルフェニルビニルエトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルフェニルビニルアセトキシシラン等のアセトキシシラン;メチルフェニルビニルクロロシラン等のクロロシラン;メチルフェニルビニルヒドロキシシラン等のヒドロキシシランが例示される。
【0028】
上記の調製方法では、必要に応じて、オルガノポリシロキサンに、式:RSiO2/2で表されるシロキサン単位を導入するためのシラン化合物もしくは環状シリコーン化合物、または、式:SiO4/2で表されるシロキサン単位を導入するためのシラン化合物もしくはシランオリゴマーを反応させることができる。式中、Rは同じかまたは異なる、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、もしくはフェニル基である。Rのアルキル基としては、前記Rと同様のアルキル基が例示される。Rのアルケニル基としては、前記Rと同様のアルケニル基が例示される。
【0029】
このようなシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン;ジメチルジアセトキシシラン、メチルフェニルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のアセトキシシラン;ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロシラン;ジメチルジヒドロキシシラン、メチルフェニルジヒドロキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等のヒドロキシシランが例示される。また、このような環状シリコーン化合物としては、環状ジメチルシロキサンオリゴマー、環状フェニルメチルシロキサンオリゴマー、環状ジフェニルシロキサンオリゴマーが例示される。さらに、シランオリゴマーとしては、テトラメトキシシランの部分加水分解物、テトラエトキシシランの部分加水分解物が例示される。
【0030】
上記の調製方法では、シラン化合物(I)、ジシロキサン(II−1)および/またはシラン化合物(II−2)、およびジシロキサン(III−1)および/またはシラン化合物(III−2)、さらに必要に応じて、その他のシラン化合物、環状シリコーン化合物、あるいはシランオリゴマーを、酸もしくはアルカリの存在下、加水分解・縮合反応させることを特徴とする。
【0031】
使用できる酸としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イオン交換樹脂が例示される。また、使用できるアルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ;トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アミノ基を有するアルコキシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン等の有機塩基化合物が例示される。
【0032】
また、上記の調製方法において、有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類、アセテート類、芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ−ブチロラクトン、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。好ましい有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、γ−ブチロラクトン、トルエン、キシレンが例示される。
【0033】
上記の調製方法では、上記各成分の加水分解・縮合反応を促進するため、水、あるいは水とアルコールの混合液を添加することが好ましい。このアルコールとしては、メタノール、エタノールが好ましい。この反応は、加熱により促進され、有機溶媒を使用する場合には、その還流温度で反応を行うことが好ましい。
【0034】
このような本発明のオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応性が良好であるので、これを主剤とし、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、およびヒドロシリル化反応用触媒を添加することによりヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物を調製することができる。
【0035】
次に、本発明の硬化性シリコーン組成物を詳細に説明する。
本発明の硬化性シリコーン組成物は、上記(A)成分〜(D)成分から少なくともなることを特徴とする。上記(A)成分のオルガノポリシロキサンは上記の通りである。
【0036】
(B)成分は、硬化物に柔軟性、伸張性、可撓性を付与するための任意の成分であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合水素原子を有さない直鎖状のオルガノポリシロキサンである。(B)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2〜12のアルケニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。(B)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、およびこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基等の炭素数6〜20のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基、およびこれらのアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基等の炭素数7〜20のアラルキル基;またはクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が例示され、それぞれ前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0037】
このような(B)成分としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0038】
本組成物において、(B)成分の含有量は、本組成物に対して、0〜70質量%の範囲内であり、好ましくは、0〜50質量%の範囲内であり、特に好ましくは、0〜40質量%の範囲内である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の上限以下であると、硬化物のガス透過性を高めることなく、硬化物に柔軟性、伸張性、可撓性を付与することができ、ひいては、本組成物を用いて作製した光半導体装置の信頼性を向上できるからである。
【0039】
(C)成分は、本組成物の架橋剤であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(C)成分中のケイ素原子結合水素原子の結合位置としては、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖が例示される。(C)成分中のケイ素原子に結合するその他の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、およびこれらのアリール基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基等の炭素数6〜20のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、アントラセニルエチル基、フェナントリルエチル基、ピレニルエチル基、およびこれらのアラルキル基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基等の炭素数7〜20のアラルキル基;またはクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が例示され、それぞれ前記と同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。このような(C)成分の分子構造としては、直鎖状、分岐状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状が例示される。
【0040】
このような(C)成分としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、一般式:R'SiO1/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、一般式:R'HSiO2/2で表されるシロキサン単位と一般式:R'SiO3/2で表されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。なお、式中のR'は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基であり、それぞれ前記と同様の基が例示される。
【0041】
本組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分中および(B)成分中のアルケニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1〜5モルの範囲内となる量であり、好ましくは、0.5〜2モルの範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、硬化物の耐熱性が向上し、ひいては、本組成物を用いて作製した光半導体装置の信頼性が向上するからである。
【0042】
また、(D)成分は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示される。特に、本組成物の硬化を著しく促進できることから、(D)成分は白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体が例示され、好ましくは、白金−アルケニルシロキサン錯体である。
【0043】
また、本組成物において、(D)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進するために有効な量である。具体的には、(D)成分の含有量は、本組成物の硬化反応を十分に促進できることから、本組成物に対して、質量単位で、(D)成分中の触媒金属が0.01〜500ppmの範囲内となる量であることが好ましく、さらには、0.01〜100ppmの範囲内となる量であることが好ましく、特には、0.01〜50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0044】
本組成物には、硬化途上で接触している基材に対する硬化物の接着性を向上させるため、(E)接着付与剤を含有してもよい。この(E)成分としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、この有機ケイ素化合物のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;4−オキシラニルブチル基、8−オキシラニルオクチル基等のオキシラニルアルキル基等のエポキシ基含有一価有機基;3−メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物はケイ素原子結合アルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。
【0045】
本組成物において、(E)成分の含有量は限定されないが、硬化途上で接触している基材に対して良好に接着することから、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0046】
また、本組成物には、その他任意の成分として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等の反応抑制剤を含有してもよい。本組成物において、この反応抑制剤の含有量は限定されないが、上記(A)成分〜(D)成分の合計100質量部に対して、0.0001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0047】
また、本組成物には、その他任意の成分として、蛍光材を含有することができる。この蛍光体としては、例えば、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、青色発光蛍光体が挙げられる。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色〜黄色発光蛍光体、セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体、および、セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色〜黄色発光蛍光体が例示される。酸窒化物蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色〜緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。これらの蛍光材は、1種もしくは2種以上の混合物を用いてもよい。本組成物において、この蛍光材の含有量は特に限定されないが、本組成物中、0.1〜70質量%の範囲内であり、さらには、1〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0048】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、シリカ、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛等の無機質充填剤;ポリメタクリレート樹脂等の有機樹脂微粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃性付与剤、溶剤等を含有してもよい。
【0049】
本組成物は室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内であることが好ましい。
【0050】
次に、本発明の硬化物について詳細に説明する。
本発明の硬化物は、上記の硬化性シリコーン組成物を硬化してなることを特徴とする。硬化物の形状は特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状が挙げられる。硬化物は、これを単体で取り扱うこともできるが、光半導体素子等を被覆もしくは封止した状態で取り扱うことも可能である。
【0051】
次に、本発明の光半導体装置について詳細に説明する。
本発明の光半導体装置は、上記の硬化性シリコーン組成物の硬化物により光半導体素子を封止してなることを特徴とする。このような本発明の光半導体装置としては、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、CCDが例示される。また、光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)チップ、固体撮像素子が例示される。
【0052】
本発明の光半導体装置の一例である単体の表面実装型LEDの断面図を図1に示した。図1で示されるLEDは、LEDチップ1がリードフレーム2上にダイボンドされ、このLEDチップ1とリードフレーム3とがボンディングワイヤ4によりワイヤボンディングされている。このLEDチップ1の周囲には枠材5が設けられており、この枠材5の内側のLEDチップ1が、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物6により封止されている。
【0053】
図1で示される表面実装型LEDを製造する方法としては、LEDチップ1をリードフレーム2にダイボンドし、このLEDチップ1とリードフレーム3とを金製のボンディングワイヤ4によりワイヤボンドし、次いで、LEDチップ1の周囲に設けられた枠材5の内側に本発明の硬化性シリコーン組成物を充填した後、50〜200℃で加熱することにより硬化させる方法が例示される。
【実施例】
【0054】
本発明のオルガノポリシロキサン、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置を実施例により詳細に説明する。粘度は25℃における値である。なお、実施例中、Me、Vi、Ph、Naph、Epは、それぞれメチル基、ビニル基、フェニル基、ナフチル基、3−グリシドキシプロピル基を示す。また、硬化性シリコーン組成物、その硬化物、および光半導体装置の特性を次のようにして測定した。
【0055】
[硬化性の評価]
硬化性シリコーン組成物約0.5gをアルミカップに入れ、150℃の熱風循環式オーブン中で2分間加熱し、硬化物を作製した。その後、直ちに硬化物を室温まで冷却し、その表面を指で触り、表面のタック性の有無で硬化性を評価した。また、キュラストメータ(SIIナノテクノロジー社製のDSC7000)を用いて、加熱速度10℃/分で測定したときの硬化性シリコーン組成物の発熱ピーク温度から、その硬化速度を評価した。
【0056】
[硬化物の透湿度]
硬化性シリコーン組成物をプレスを用いて150℃、2時間で硬化させ、厚み1mmの硬化フィルムを作製した。その硬化フィルムの水蒸気透過率をJIS Z0208のカップ法に準拠して、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。
【0057】
[光半導体装置の信頼性]
硬化性シリコーン組成物を用いて、150℃、2時間加熱して、図1で示される光半導体装置を作製した。この光半導体装置を、50℃、相対湿度75%、硫化水素ガス濃度20ppmの条件下で24時間暴露試験した。暴露試験前後での光半導体装置の発光効率の変化を測定し、光半導体装置の信頼性を評価した。
【0058】
[参考例1]
攪拌機、還流冷却管、温度計付きの四口フラスコに、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン 82.2g、水 143g、トリフルオロメタンスルホン酸 0.38g、およびトルエン 500gを投入し、攪拌下、フェニルトリメトキシシラン 524.7gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。その後、冷却し、下層を分離し、トルエン溶液層を3回水洗した。水洗したトルエン溶液層にメチルグリシドキシプロピルジメトキシシラン 314gと水 130gと水酸化カリウム 0.50gとを投入し、1時間加熱還流した。続いて、メタノールを留去し、過剰の水を共沸脱水で除いた。4時間加熱還流した後、トルエン溶液を冷却し、酢酸 0.55gで中和した後、3回水洗した。水を除去した後、トルエンを減圧下に留去して、粘度8,500mPa・sの平均単位式:
(ViMeSiO1/2)0.18(PhSiO3/2)0.53(EpMeSiO2/2)0.29
で表される接着付与剤を調製した。
【0059】
[実施例1]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 400g(2.02mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 84.86g(0.27mol)、および1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 3.64g(0.02mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 3.47g(23mmol)を投入し、撹拌下、水 120g(6.6mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 87.6gおよび水酸化カリウム 1.82g(32.5mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で8時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.67g(11.2mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 343g(収率:98%)を得た。
【0060】
核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMR分析)の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.210(MeViSiO1/2)0.015(PhSiO3/2)0.775
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,439であり、分散度(Mw/Mn)は1.22であった。
【0061】
[実施例2]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 470g(2.37mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 87.93g(0.28mol)、および1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 13.20g(0.07mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 4.09g(27mmol)を投入し、撹拌下、水 140.8g(7.8mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 102gおよび水酸化カリウム 2.14g(38.1mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で8時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.78g(13.1mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 400g(収率:98%)を得た。
【0062】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.184(MeViSiO1/2)0.046(PhSiO3/2)0.77
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,376であり、分散度(Mw/Mn)は1.16であった。
【0063】
[実施例3]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 470g(2.37mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 65.95g(0.21mol)、および1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 26.39g(0.14mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 4.09g(27mmol)を投入し、撹拌下、水 140.8g(7.8mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 100gおよび水酸化カリウム 2.13g(37.9mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で10時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.77g(12.8mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 391g(収率:98%)を得た。
【0064】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.138(MeViSiO1/2)0.092(PhSiO3/2)0.77
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,786であり、分散度(Mw/Mn)は1.15であった。
【0065】
[実施例4]
反応容器に、1−ナフチルトリメトキシシラン 148.8g(0.6mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 49.6g(0.16mol)、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 7.44g(0.04mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 1.002g(6.7mmol)を投入し、撹拌下、水 32.4g(1.8mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 70.5g、水酸化カリウム 0.538g(9.6mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.577g(9.6mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 152.4g(収率:92.7%)を得た。
【0066】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.32(MeViSiO1/2)0.08(NaphSiO3/2)0.60
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は960であり、分散度(Mw/Mn)は1.02であり、屈折率は1.619であった。
【0067】
[実施例5]
反応容器に、1−ナフチルトリメトキシシラン 148.8g(0.6mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 37.2g(0.12mol)、および1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 14.9g(0.08mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 0.978g(6.5mmol)を投入し、撹拌下、水 35.6g(1.98mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 69.1g、水酸化カリウム 0.525g(9.4mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.57g(9.5mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 141.9g(収率:89.0%)を得た。
【0068】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.24(MeViSiO1/2)0.16(NaphSiO3/2)0.60
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は980であり、分散度(Mw/Mn)は1.02であり、屈折率は1.617であった。
【0069】
[実施例6]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 150g(0.76mol)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 52.47g(0.17mol)、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 3.0g(0.016mol)、およびジフェニルジメトキシシラン 146.78g(0.48mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 2.14g(19mmol)を投入し、撹拌下、水 64.1g(3.6mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 28gおよび水酸化カリウム 1.17g(20.9mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で8時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.48g(8.0mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 244g(収率:98%)を得た。
【0070】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.21(MeViSiO1/2)0.02(PhSiO1/2)0.30(PhSiO3/2)0.47
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,103であり、分散度(Mw/Mn)は1.18であった。
【0071】
[比較例1]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 400g(2.02mol)および1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 93.5g(0.30mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 1.74g(11.6mmol)を投入し、撹拌下、水 110g(6.1mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 89gおよび水酸化カリウム 1.18g(21.1mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.68g(11.4mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 347g(収率:98%)を得た。
【0072】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.23(PhSiO3/2)0.77
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,617であり、分散度(Mw/Mn)は1.16であった。
【0073】
[比較例2]
反応容器に、フェニルトリメトキシシラン 400g(2.02mmol)および1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン 56.2g(0.30mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 0.35g(2.3mmol)を投入し、撹拌下、水 120g(6.65mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 80gおよび水酸化カリウム 0.61g(10.8mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 0.61g(10.2mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 310g(収率:98%)を得た。
【0074】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.23(PhSiO3/2)0.77
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,375であり、分散度(Mw/Mn)は1.17であった。
【0075】
[比較例3]
反応容器に、1−ナフチルトリメトキシシラン 892.8g(3.6mol)および1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン 372.0g(1.2mol)を投入し、予め混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸 6.15g(41mmol)を投入し、撹拌下、水 213.84g(11.88mol)を投入し、2時間加熱還流を行った。その後、85℃になるまで加熱常圧留去を行った。次いで、トルエン 435.6g、水酸化カリウム 3.28g(58.6mmol)を投入し、反応温度が120℃になるまで加熱常圧留去を行い、この温度で6時間反応させた。その後、室温まで冷却し、酢酸 3.524g(58.7mmol)を投入し、中和反応を行った。生成した塩を濾別した後、得られた透明な溶液から低沸点物を加熱減圧除去し、無色透明なガム状粘稠液体 957.4g(収率:94.2%)を得た。
【0076】
NMR分析の結果、この液体は、平均単位式:
(MePhViSiO1/2)0.40(NaphSiO3/2)0.60
で表されるオルガノポリシロキサンであることがわかった。このオルガノポリシロキサンの質量平均分子量(Mw)は1,000であり、分散度(Mw/Mn)は1.02であり、屈折率は1.621であった。
【0077】
[実施例7]
実施例1で調製したオルガノポリシロキサン 78.2質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 21.8質量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モルとなる量)、参考例1で調製した接着付与剤 2質量部、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0078】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は114℃であった。また、硬化物の透湿度は8.1g/m・24hであった。
【0079】
[実施例8]
実施例2で調製したオルガノポリシロキサン 77.7質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 22.3質量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モルとなる量)、参考例1で調製した接着付与剤 2質量部、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度8,000mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0080】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は109℃であった。また、硬化物の透湿度は9.4g/m・24hであった。
【0081】
[実施例9]
実施例2で調製したオルガノポリシロキサン 63.7質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 15.2質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 21.1質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1モルとなる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度4,500mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0082】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は107℃であった。また、硬化物の透湿度は11g/m・24hであった。
【0083】
[実施例10]
実施例2で調製したオルガノポリシロキサン 64.6質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 15.2質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 18.4質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5モルとなる量)、平均単位式:
(HMeSiO1/2)0.60(PhSiO3/2)0.40
で表されるオルガノポリシロキサン 1.8質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5モルとなる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0084】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。また、硬化物の透湿度は10.5g/m・24hであった。
【0085】
[実施例11]
実施例3で調製したオルガノポリシロキサン 64.2質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 15.2質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 20.6質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0086】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は111℃であった。また、硬化物の透湿度は13g/m・24hであった。
【0087】
[実施例12]
実施例6で調製したオルガノポリシロキサン 80.7質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 19.3質量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度5,200mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0088】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は114℃であった。また、硬化物の透湿度は7.4g/m・24hであった。
【0089】
[比較例4]
比較例1で調製したオルガノポリシロキサン 78.1質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 21.9質量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、参考例1で調製した接着付与剤 2質量部、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度7,600mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0090】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面にタックがあり、硬化が十分ではなかった。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は122℃であった。また、硬化物の透湿度は6.7g/m・24hであった。
【0091】
実施例7,8,12と比較例4を対比することにより、実施例7,8,12の硬化性シリコーン組成物は、比較例4の硬化性シリコーン組成物より、硬化性が良好であることがわかった。
【0092】
[比較例5]
比較例1で調製したオルガノポリシロキサン 63.9質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 15.6質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 20.5質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度5,400mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0093】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面にタックがあり、硬化が十分ではなかった。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は120℃であった。また、硬化物の透湿度は12g/m・24hであった。
【0094】
実施例9,10,11と比較例5を対比することにより、実施例9,10,11の硬化性シリコーン組成物は、比較例5の硬化性シリコーン組成物より、硬化性が良好であることがわかった。
【0095】
[比較例6]
比較例2で調製したオルガノポリシロキサン 73.5質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 26.5質量部(上記オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度4,000mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0096】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は92.5℃であった。また、硬化物の透湿度は11.4g/m・24hであった。
【0097】
実施例7,8,12と比較例6を対比することにより、実施例7,8,12の硬化性シリコーン組成物は、比較例6の硬化性シリコーン組成物より、硬化性が良好であることがわかった。
【0098】
[比較例7]
比較例2で調製したオルガノポリシロキサン 61.8質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 15.2質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 23.0質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度3,000mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0099】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は93℃であった。また、硬化物の透湿度は15g/m・24hであった。
【0100】
実施例9,10,11と比較例7を対比することにより、実施例9,10,11の硬化性シリコーン組成物は、比較例7の硬化性シリコーン組成物より、硬化性が良好であることがわかった。
【0101】
[実施例13]
実施例4で調製したオルガノポリシロキサン 60.6質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 14.0質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 25.4質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度4,500mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0102】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は131.2℃であった。また、硬化物の透湿度は3.4g/m・24hであった。
【0103】
[実施例14]
実施例5で調製したオルガノポリシロキサン 59.8質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 14.0質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 26.2質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度4,100mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0104】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面のタックが無く、十分に硬化していた。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は128.5℃であった。また、硬化物の透湿度は3.6g/m・24hであった。
【0105】
[比較例8]
比較例3で調製したオルガノポリシロキサン 60.7質量部、粘度3,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 14.0質量部、式:
HMeSiOPhSiOSiMe
で表されるオルガノトリシロキサン 25.3質量部(上記オルガノポリシロキサン中と上記メチルフェニルポリシロキサン中のビニル基の合計1モルに対し、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1となる量)、および白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン溶液(白金を0.1質量%含有) 0.2質量部を混合して、粘度3,600mPa・sの硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0106】
この硬化性シリコーン組成物を150℃、2分間加熱して得られた硬化物は、表面にタックがあり、硬化が十分ではなかった。なお、この硬化性シリコーン組成物のDSCの発熱ピーク温度は133.7℃であった。また、硬化物の透湿度は3.7g/m・24hであった。
【0107】
実施例13,14と比較例8を対比することにより、実施例13、14の硬化性シリコーン組成物は、比較例8と同程度の透湿度を有する硬化物を形成することができ、比較例8の硬化性シリコーン組成物より、硬化性が良好であることがわかった。
【0108】
[実施例15]
実施例8で調製した硬化性シリコーン組成物を用いて光半導体装置を作製した。この光半導体装置の信頼性を評価したところ、暴露試験前後での発光効率の変化は観察されなかった。
【0109】
[比較例9]
比較例6で調製した硬化性シリコーン組成物を用いて光半導体装置を作製した。この光半導体装置の信頼性を評価したところ、暴露試験後で発光効率が暴露試験前より約6%低下した。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、高い反応性を有し、ガス透過性の低い硬化物を形成できるので、発光ダイオード(LED)等の光半導体装置における光半導体素子の封止材あるいは保護コーティング材として好適である。
【符号の説明】
【0111】
1 光半導体素子
2 リードフレーム
3 リードフレーム
4 ボンディングワイヤ
5 枠材
6 硬化性シリコーン組成物の硬化物
図1