(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−218054号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】USGS(U.S.Geological Survey),"Offshore Industrial Mineral Studies Using a Marine Induced-Polarization Streamer System",[online],[2012年10月1日検索],インターネット〈URL:http://pubs.usgs.gov/info/offshore/〉
【非特許文献2】Thales Australia,"AMAS ELECTRIC SWEEP",[online],[2012年10月1日検索],インターネット〈URL:http://www.thalesgroup.com/Countries/Australia/Documents/AMAS_Electric_Sweep_Brochure/〉
【非特許文献3】Jeffrey C.Wynn."Titanium geophysics:The application of induced polarization to see-floor mineral explorarion"GEOPHYSICS,VOL.53,MARCH,1988,p.386-401
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る曳航式電界検出装置1を曳航する様子を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る曳航式電界検出装置1の構成を示す図である。
【
図3】船舶から生じる電界信号と磁界信号とを示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る1軸電界検出センサ10の軸方向と電界ノイズとの関係を説明する図である。
【
図5】1軸電界検出センサ10の軸方向が曳航方向と平行でない場合の電界ノイズを説明する図である。
【
図6】実施の形態2に係る曳航式電界検出装置1の機能ブロック図である。
【
図7】潮流の影響により生じる電界ノイズを説明する図である。
【
図8】実施の形態2に係る角度補正機構15による軸の駆動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る曳航式電界検出装置1を曳航する様子を示す図である。
図2は、実施の形態1に係る曳航式電界検出装置1の構成を示す図である。
図1及び
図2に示すように、曳航式電界検出装置1は、海面を航行する船舶20(曳航船)と曳航ケーブル21により接続され、船舶20によって曳航されて海中の電界を検出するものである。なお、ここでは船舶20によって曳航式電界検出装置1が曳航される場合を説明するが、本発明はこれに限らず、海面又は海中を航行する任意の移動体によって曳航されるものであればよい。また、例えばヘリコプターなど空中を航行する移動体によって曳航式電界検出装置1を曳航しても良い。
【0012】
曳航式電界検出装置1は、1軸電界検出センサ10を備えている。1軸電界検出センサ10は、曳航ケーブル21を接続する筐体12に搭載されている。
1軸電界検出センサ10は、海水と接する電極11−1及び11−2を有している。この1軸電界検出センサ10は、電極11−1及び11−2の2点間の電位差と、電極間の距離とから、電極11−1及び11−2の軸方向(2つの電極を結ぶ方向)の電界を検出する。また、1軸電界検出センサ10の電極11−1及び11−2の軸方向は、曳航式電界検出装置1の曳航方向と平行となるように配置されている。即ち、電極11−1における電位をφ1、電極11−2における電位をφ2とし、電極間の距離をdxとすると、曳航方向における海中の電界Exは、Ex=(φ1−φ2)/dx、となる。
【0013】
この曳航式電界検出装置1は、船舶等の移動体(曳航船以外の船舶を含む)から発生する電界信号を検出することにより、船舶等の接近を検出する移動体検出装置に適用できる。即ち、海水は電解質溶液であるために海水中に異種金属が存在すると、電位差を生じる。この場合、イオン化傾向が大きい金属からイオン化傾向が小さい金属に電流が流れ、陽極表面が腐食する。船舶においては、例えば船体外板が陽極(鉄鋼)、プロペラが陰極(銅合金等)となり、プロペラ主軸を介して船体外板へ電流が戻ってくることにより閉回路が構成される。この電流が腐食電流である。また、このような腐食電流による金属の腐食を防止するため、防食電流を流すこともある。そのため、例えば海水に電流を流すための保護亜鉛や白金等の陽極電極が船体に設けられる。また、船尾部分に設けられているプロペラ、舵等は、海水を介して電流が流れ込む(電流を吸い込む)ための陰極電極として機能する。そして、これらは海水を流れる電流に対して、電流源となり、移動体近傍には電界信号が発生する。この電界信号により船舶等の移動体の接近を検知する場合には、検出する海中の電界方向は1軸方向のみ検出すれば良い。
【0014】
次に、曳航式電界検出装置1の移動により発生する電界ノイズについて説明する。
【0015】
図3は、船舶から生じる電界信号と磁界信号とを示す図である。
曳航式電界検出装置1が曳航されると、導電性媒質である海水中を1軸電界検出センサ10が移動する。このような移動は、地磁気及び船舶から発生する磁界を横切ることとなり、電磁誘導によって誘導起電力が生じる。この誘導起電力は、1軸電界検出センサ10によって検出する電界に対するノイズ(電界ノイズE’)となり得る。例えば
図3に示すように、電界信号発生源となる船舶20からの電界を検出する場合、この船舶20から生じる船舶磁界と地磁気とが合成された磁界を横切ることとなる。
【0016】
誘導起電力eは、磁束密度B及び移動速度vに基づいて次式(1)で表される。ここで、磁束密度B及び移動速度vはベクトルであり、誘導起電力eは磁束密度Bと移動速度vとの外積となる。また誘導起電力eもベクトルである。ここで、磁束密度B、移動速度v、誘導起電力eの方向は互いに直交する(フレミングの右手の法則)。
【0018】
図4は、実施の形態1に係る1軸電界検出センサ10の軸方向と電界ノイズとの関係を説明する図である。
図4において、地磁気及び船舶磁界の合成磁界信号H(Hx,Hy,Hz)を、1軸電界検出センサ10が曳航速度Vx(x軸方向)で横切る場合の電界ノイズを考える。なお、曳航方向をx軸、水平方向をy軸、鉛直方向をz軸とする。
上記式(1)より、合成磁界信号Hに起因する電界ノイズE’の各軸成分(ex,ey,ez)は、以下となる。
ex=0
ey=Vx・Hz
ez=Vx・Hy
【0019】
このように、1軸電界検出センサ10が磁界を横切ることにより生じる誘導起電力eは、1軸電界検出センサ10が検出する電界Exと直交する成分のみとなる。
【0020】
以上のように本実施の形態1においては、1軸電界検出センサ10の電極11−1及び11−2の軸方向は、曳航式電界検出装置1の曳航方向と平行となるように配置されているので、1軸電界検出センサ10により検出する電界Exに重畳する電界ノイズの影響を低減することができる。よって、海中の電界を精度良く検出することができる曳航式電界検出装置1を得ることができる。
【0021】
(比較例)
ここで、1軸電界検出センサ10の電極11−1及び11−2の軸方向が、曳航式電界検出装置1の曳航方向と平行でない場合について説明する。
図5は、1軸電界検出センサ10の軸方向が曳航方向と平行でない場合の電界ノイズを説明する図である。
図5において、1軸電界検出センサ10の軸方向をy軸方向とし、地磁気及び船舶磁界の合成磁界信号Hを、1軸電界検出センサ10が曳航速度Vx(x軸方向)で横切る場合の電界ノイズを考える。
この場合、y軸方向の電極間の距離をdyとすると、1軸電界検出センサ10により検出される海中の電界Eyは、Ey=(φ1−φ2)/dy、となる。
このとき、Eyには、合成磁界信号Hに起因する電界ノイズE’のy軸成分(ey=Vx・Hz)が重畳する。即ち、1軸電界検出センサ10の検出値は、地磁気及び船舶から発生する磁界を横切ることで生じた誘導起電力の影響を受け、検出精度が低下することとなる。
【0022】
なお、ここでは、1軸電界検出センサ10の軸方向をy軸方向とした場合を説明したが、z軸方向とした場合も同様に、検出された電界Ezには、電界ノイズE’のz軸成分(ez=Vx・Hy)が重畳する。また、1軸電界検出センサ10の軸方向を曳航方向(x軸)と平行でない任意の方向とした場合にも同様に、電界ノイズE’のy軸成分とz軸成分とが合成されたノイズが重畳することとなる。
【0023】
実施の形態2.
本実施の形態2では、潮流の影響を考慮して、更に、海中の電界を精度良く検出することができる曳航式電界検出装置1について説明する。
【0024】
図6は、実施の形態2に係る曳航式電界検出装置1の機能ブロック図である。
図6に示すように、実施の形態2に係る曳航式電界検出装置1は、1軸電界検出センサ10と、2軸潮流計13と、角度補正量算出手段14と、角度補正機構15とを備えている。なお、2軸潮流計13は、本発明における「速度検出手段」に相当する。
【0025】
2軸潮流計13は、当該曳航式電界検出装置1の曳航方向の速度(曳航速度)と、曳航方向と直交する方向の海水の速度(潮流速度)とを検出する。
角度補正量算出手段14は、2軸潮流計13の検出結果に基づき、曳航方向の速度と海水の速度とを合成した速度ベクトル(合成速度ベクトル)と、1軸電界検出センサ10の軸方向とのなす角度θを求める。
角度補正機構15は、角度補正量算出手段14が求めた角度θに基づき、1軸電界検出センサ10の軸の向きを駆動する。
【0026】
図7は、潮流の影響により生じる電界ノイズを説明する図である。
船舶20によって曳航される曳航式電界検出装置1は、潮流によって、曳航方向以外の方向に移動する場合がある。この移動によっても、1軸電界検出センサ10は、地磁気及び船舶から発生する磁界を横切ることとなり、電磁誘導によって誘導起電力が生じる。
図7に示す例では、曳航式電界検出装置1が船舶20によってx軸方向に曳航されつつ、潮流によってy軸方向にも移動している場合を示している。
【0027】
図7(a)及び(b)に示すように、曳航式電界検出装置1が潮流の影響を受けると、曳航式電界検出装置1は、曳航速度Vxと潮流速度Vyとの合成速度ベクトルの方向に移動する。
このように、1軸電界検出センサ10が潮流速度Vy(y軸方向)で横切る場合の電界ノイズE’の各軸成分(ex,ey,ez)は、上記式(1)より、以下となる。
ex=Vy・Hz
ey=Vx・Hz
ez=Vx・Hy−Vy・Hx
【0028】
このように、潮流の影響を受けて1軸電界検出センサ10がy軸方向に移動すると、1軸電界検出センサ10が検出する電界Exには、電界ノイズE’のx軸成分(ex=Vy・Hz)が重畳する。
【0029】
そこで、本実施の形態2の曳航式電界検出装置1は、角度補正量算出手段14によって、曳航方向(x軸方向)の曳航速度Vxと、この曳航速度に直交する潮流速度Vyとを合成速度ベクトルを求め、この合成速度ベクトルと1軸電界検出センサ10の軸方向とのなす角度θを求める。そして、角度補正機構15によって、1軸電界検出センサ10の軸の向きを駆動する。
これにより、合成速度ベクトルと、1軸電界検出センサ10の軸方向とが平行となり、1軸電界検出センサ10が磁界を横切ることにより生じる誘導起電力eは、1軸電界検出センサ10が検出する電界Exと直交する成分のみとなる。
【0030】
図8は、実施の形態2に係る角度補正機構15による軸の駆動を示す図である。
図8に示すように、例えば、角度補正機構15は、1軸電界検出センサ10の電極11−1及び11−2を、xy平面上を回動可能に支持するように構成される。
なお、角度補正機構15の構成は、これに限定されるものではなく、1軸電界検出センサ10の軸の向きを駆動できるものであればよい。例えば、曳航ケーブル21と接続される筐体12の姿勢を制御して、1軸電界検出センサ10の軸の向きを駆動しても良い。
【0031】
以上のように本実施の形態2においては、曳航速度Vxと潮流速度Vyを合成速度ベクトルと、1軸電界検出センサ10の軸方向とのなす角度を補正して、1軸電界検出センサ10の軸方向が、曳航式電界検出装置1の移動方向と平行となるようにするので、潮流により曳航方向以外に移動する場合であっても、1軸電界検出センサ10により検出する電界Exに重畳する電界ノイズの影響を低減することができる。よって、海中の電界を精度良く検出することができる曳航式電界検出装置1を得ることができる。
【0032】
なお、海中におけるz軸方向の潮流の速度は小さいため、本実施の形態2の2軸潮流計13は、y軸方向の潮流速度を検出しているが、本発明はこれに限らず、z軸方向も加えて、3軸潮流計としても良い。この場合も同様に、曳航速度Vxとz軸方向の潮流速度Vzとの合成速度ベクトルと、1軸電界検出センサ10の軸方向とのなす角度θzを求め、1軸電界検出センサ10の軸の向きを、xz平面上において駆動するようにすることで、z軸方向の移動による電界ノイズの影響を低減できる。