(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定階調数の第1画像データを量子化して、前記所定階調数より低く、量子化数を階調数とする第2画像データに変換した後、印刷対象画像データとして、所定の通信経路を介して印刷装置に転送する画像処理装置であって、
所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度を示す印刷濃度データを予め記憶する印刷濃度データ記憶手段と、
前記印刷濃度データを参照して、前記所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、前記所定の量子化数より少ない量子化数を決定する量子化数決定手段と、
前記量子化数決定手段により決定された量子化数で、前記第1画像データの量子化を行う量子化制御手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
前記量子化数決定手段は、前記高速転送モードが指定された場合に、前記所定の量子化数で量子化された前記印刷対象画像データを単位時間当たりに前記印刷装置に転送するデータ転送量と、前記所定の通信経路による単位時間当たりに転送可能なデータ通信量とを比較し、比較結果に基づいて、前記少ない量子化数を決定する処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、以下のような問題があった。例えば、インクを用いた印刷の場合、インクによる印刷用紙へのにじみ度の関係から、印刷画像形成に必要な各印刷濃度に対応するインク吐出数が1つの場合もあれば、近接して2つ以上存在する場合もある。ここで、インク吐出数は、階調値に対応しているのが一般的である。
【0008】
このため、インクによる印刷用紙へのにじみ度を考慮しないで、階調数を低減すると、上記各印刷濃度に対応する1つの階調値が削除されてしまう場合がある。従って、実際に印刷される印刷濃度を考慮しないで、転送データ量を低減すると、画質劣化を招く場合もあるといえる。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであり、実際に印刷される印刷濃度を考慮して、印刷対象画像データの転送データ量を低減するとともに、画質劣化を防止することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置は、所定階調数の第1画像データを量子化して、前記所定階調数より低く、量子化数を階調数とする第2画像データに変換した後、印刷対象画像データとして、所定の通信経路を介して印刷装置に転送する画像処理装置であって、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度を示す印刷濃度データを予め記憶する印刷濃度データ記憶手段と、前記印刷濃度データを参照して、前記所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、前記所定の量子化数より少ない量子化数を決定する量子化数決定手段と、前記量子化数決定手段により決定された量子化数で、前記第1画像データの量子化を行う量子化制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
上記発明において、前記印刷濃度データは、所定の量子化数で量子化した後に取りうる符号値と、前記符号値に対応する印刷濃度との関係を示すテーブルであり、前記量子化数決定手段は、前記テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、前記少ない量子化数を決定するようにしてもよい。
【0012】
また、上記発明において、前記印刷対象画像データを印刷装置に高速に転送する高速転送モードを指定する指定手段を備え、前記量子化数決定手段は、前記高速転送モードが指定された場合に、前記少ない量子化数を決定する処理を行うようにしてもよい。
【0013】
また、上記発明において、前記量子化数決定手段は、前記高速転送モードが指定された場合に、前記所定の量子化数で量子化された前記印刷対象画像データを単位時間当たりに前記印刷装置に転送するデータ転送量と、前記所定の通信経路による単位時間当たりに転送可能なデータ通信量とを比較し、比較結果に基づいて、前記少ない量子化数を決定する処理を行うようにしてもよい。
【0014】
また、上記発明において、前記量子化決定手段により決定される量子化の数は2のベキ乗で示されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、予め記憶された印刷濃度データを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度のいずれか一方を削除するように、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する。
【0016】
この結果、濃度が近接する印刷濃度のいずれか一方を削除するように、量子化数を決定しているので、階調数を低減した場合でも、印刷画像形成に必要な各印刷濃度に対応する階調値が削除されてしまうことがない。そして、所定の量子化数より低減された量子化数を階調数とした印刷対象画像データを転送する。従って、実際に印刷される印刷濃度を考慮して、印刷対象画像データの転送データ量を低減するとともに、画質劣化を防止することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、量子化数決定手段は、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、所定の量子化数より少ない量子化数を決定するので、画質劣化を防止しつつ、印刷対象画像データの転送データ量を一層低減することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、印刷対象画像データを印刷装置に高速に転送する高速転送モードが指定された場合に、上記少ない量子化数の決定処理を行う。このため、ユーザがデータ転送の速さを優先する場合に、上記少ない量子化数の決定処理を行うことができるとともに、ユーザがデータ転送の速さより画質劣化防止をより優先する場合には、上記少ない量子化数の決定処理を行わないようにできる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、高速転送モードが指定された場合に、単位時間当たりに前記印刷装置に転送するデータ転送量と、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量とを比較し、比較結果に基づいて、前記少ない量子化数を決定する。
【0020】
このため、所定の通信経路の通信状況を考慮して、データ転送量がデータ通信量より大きい場合には、量子化数の低減を行わず、データ転送量がデータ通信量より小さい場合には、量子化数の低減を行うことができる。この結果、所定の通信経路の通信状況に応じて、必要な場合に、量子化数の低減処理を行うので、請求項3の効果に加えて、画質の劣化防止を一層達成することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、量子化決定手段により決定される量子化の数は2のベキ乗で示される。通常のデータ通信で送受信されるデータの単位はビット単位である。また、量子化数を階調数とする印刷対象画像データを転送るので、上記データの量は、量子化数に依存して決められる。このため、ビット単位での量子化数の低減により、画質劣化を防止しつつ、確実に印刷対象画像データのデータ量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本実施形態の印刷システムについて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の印刷システム1の全体構成図である。
[印刷システムの構成]
【0024】
図1に示すように、印刷システム1は、ユーザインタフェース等の基本操作を行うためのオペレーションシステムが組み込まれ、各種のソフトウェアの実行が可能な端末装置100と、インクジェット印刷装置200と、これらの間を有線LAN等のネットワークを介して接続する通信経路300とを備える。
【0025】
(端末装置)
端末装置100は、アプリケーション部11とプリンタドライバ部12と印刷データ生成部13と入出力部14と端末側通信部15とを備える。アプリケーション部11及びプリンタドライバ部12は、端末装置100にインストールされたプログラムが、CPU等により解読等の処理が行われることにより構成される。
【0026】
アプリケーション部11は、文書、画像等の原稿データを生成するプログラムを備えるものである。アプリケーション部11で生成された原稿データは、プリンタドライバ部12に出力される。
【0027】
プリンタドライバ部12は、印刷操作画面、印刷設定画面等の表示を入出力部14の出力機能に行わせ、入出力部14の入力機能を介してユーザから印刷の設定を受け、印刷に関する設定情報や印刷状態を入出力部14の出力機能を介してユーザに通知する。プリンタドライバ部12は、ユーザによって設定された情報と、原稿データに基づいて、印刷ジョブデータ(例えば、PDLデータ)を生成する。
【0028】
入出力部14は、入力機能及び出力機能を備える。入力機能は、キーボード等で構成され、出力機能は、液晶表示モニター等で構成される。入出力部14は、ユーザにより各種のデータの入力を可能とし、この入力データをプリンタドライバ部12又はアプリケーション部11に出力する。また、入出力部14は、プリンタドライバ部12又はアプリケーション部11からの出力結果をユーザに対して通知する。
【0029】
印刷データ生成部13は、インクジェット印刷装置200に印刷させるための印刷対象データを生成するものである。具体的には、印刷データ生成部13は、RIP処理部131とRGB−CMYK変換部132と多値ハーフトーン処理部133と印刷濃度データ記憶部134と量子化制御部135とを備える。
【0030】
RIP処理部131は、プリンタドライバ部12から出力された印刷ジョブデータに基づいて、レッド(以下、R)成分、グリーン(以下、G)成分、ブルー(以下、B)成分の所定の解像度のビットマップに展開した結果のラスタデータである展開済み印刷ジョブデータ(以下、展開印刷ジョブデータ)を生成する。ここで、展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された各画素(展開印刷ジョブデータ中の各座標位置に対応する)ごとに、R成分の値(例えば、0〜255)、G成分の値(例えば、0〜255)、B成分の値(例えば、0〜255)が対応づけられている。
【0031】
RGB−CMYK変換部132は、RIP処理部131で生成されたR成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータを、シアン(以下、C)成分、マゼンタ(以下、M)成分、イエロー(以下、Y)成分、ブラック(以下、K)成分を備える展開印刷ジョブデータに変換する。ここで、展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された各座標位置ごとに、C成分の値(例えば、0〜255)、M成分の値(例えば、0〜255)、Y成分の値(例えば、0〜255)、K成分の値(例えば、0〜255)が対応づけられている。
【0032】
多値ハーフトーン処理部133は、RGB−CMYK変換部132により変換された展開印刷ジョブデータに対して、量子化制御部135により設定された量子化数に従って、階調数を低減する多値ハーフトーン処理を行い、量子化数を階調数とする印刷対象データを生成する。
【0033】
具体的な説明について
図2を用いて行う。多値ハーフトーン処理部133は、展開印刷ジョブデータにおいては、各座標位置ごとの色成分(C〜K成分)の値(0〜255)に対して(
図2(a))、例えば、量子化数10と設定されている場合には、量子化するための判定値として、28,56,85、・・・・・226,255を設定する(
図2(b))。そして、色成分の値0に対して量子化された値である符号値(階調値)0、色成分の値1〜28に対して符号値1、色成分の値29〜56に対して符号値2・・・・、色成分の値227〜256に対して符号値9を対応づけることにより、量子化数10に対する量子化処理を施して、256階調の展開印刷ジョブデータから、量子化された値である符号値を生成する。この結果、展開印刷ジョブデータの取りうる色成分値(0〜255)に対して、量子化された後に取りうる符号値は、0〜9となり、階調数は、10となる。上述の量子化処理は、C、M、Y、Kの色成分ごとに行われる。
【0034】
ここで、量子化制御部135には、所定の量子化数で量子化した場合にとりうる印刷濃度を示す印刷濃度テーブルを記憶する印刷濃度テーブル記憶部135が接続されている。印刷濃度テーブルの一例としては、例えば、所定の量子化数で量子化した後に取りうる符号値と、インクジェット印刷装置200で符号値に対応する吐出量で印刷した場合の印刷濃度との関係を示すテーブルがある。
【0035】
印刷濃度テーブルの一例を以下に示す。ここで、量子化数10で量子化した場合にとりうる符号値(0〜9)はインク吐出量(0ドロップ数〜9ドロップ数)に対応するものである。
【0036】
そして、インク吐出量を1ドロップ数から9ドロップ数に変化させたときの印刷濃度(例えば、OD値)を、インク色毎及び印刷用紙の種類毎に、実験的に取得しておく。そして、ユーザが印刷濃度等を入出力部14に入力することで、インク吐出量(1ドロップ数〜9ドロップ数)と、印刷濃度(OD値X1〜X9)と、印刷用紙の種類(普通紙、マット紙、・・・)とが対応付けられた印刷濃度テーブルがインク色毎(C、M、Y、K)に印刷濃度テーブル記憶部134に記憶される。
【0037】
量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する。
【0038】
具体的には、量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、上記少ない量子化数を決定する。この際、量子化数の決定処理は、色成分ごとに独立して行う。但し、データ転送量の削減が十分な場合には、4つの色成分全部ではなく、3つ以下の色成分に対して量子化数の決定処理を行うようにしてもよい。これは、後述の第2の実施形態でも同様である。
【0039】
この量子化制御部135の処理の詳細な説明を以下に示す。量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、量子化数10に対応する符号値0〜9の各々に対応する印刷濃度を取得する。量子化制御部135は、符号値0〜9の各々に対応する印刷濃度の分布から、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、上記決定された量子化数以下となるように量子化数を決定する。
【0040】
たとえば、
図2に示すように、所定の量子化数が10であって、符号値0〜9に対応する印刷濃度が、0〜80(OD値)の場合を一例として説明する。量子化制御部135は、印刷濃度テーブルにおける符号値毎の印刷濃度の分布に基づいて(
図2(b))、符号値間(1,2の間、8,9の間)の印刷濃度の差が所定値以内の符号値の組み合わせを探索する。ここで、所定値は、例えば、インクジェット印刷装置200の印刷条件(印刷用紙、インク、吐出駆動条件(駆動波形電圧等)など)において、各符号値に対応する吐出ドロップ数で印刷した場合に、印刷濃度値に差があるものの、視覚的に同等といえる符号値の範囲を実験的に求めることにより決定される。
【0041】
量子化制御部135は、上記の探索結果、符号値間(1,2の間、8,9の間)の印刷濃度の差が所定値以内の符号値の組み合わせを抽出する。この際、量子化制御部135は、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、所定値以内の符号値の組み合わせか否かを判断し、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返す。例えば、
図2(b)の場合、量子化制御部135は、所定値が5(OD値)の場合、印刷濃度の差が最も少ない符号値の組み合わせ(符号値1,2と符号値8,9)を探索し、差2(OD値)が所定値5(OD値)以内であるので、符号値2、8を削除すると決定する。この際、量子化制御部135は、削除する対象の2つの隣接する符号値のうち、隣接する印刷濃度値の差がより均等になる方の符号値を削除すると決定する。そして、量子化制御部135は、印刷濃度の差が次に少ない符号値の組み合わせ(符号値1,3など)を探索し、差10(OD値)が所定値5(OD値)より大きいので、符号値の削除はこれ以上行わないと決定する。
【0042】
そして、量子化制御部135は、決定された量子化数(例えば、8)で、展開印刷ジョブデータの量子化を行い、印刷対象データを生成する。この結果、印刷対象データにおいては、所定の解像度で展開された各座標位置ごとに、C成分の値(例えば、0〜7)、M成分の値(例えば、0〜7)、Y成分の値(例えば、0〜7)、K成分の値(例えば、0〜7)が対応づけられ、各座標位置ごとの色成分値としては、4ビットから3ビットへ低減されることになる。この際、印刷対象データには、符号値2、8を削除した情報も含まれる。
【0043】
端末側通信部15は、多値ハーフトーン処理部133により処理された印刷対象データを通信経路300を介して、インクジェット印刷装置200に転送する。
【0044】
(インクジェット印刷装置)
インクジェット印刷装置200は、印刷側通信部21と、インクジェット印刷部22とを備える。印刷側通信部21は、通信経路300を介して転送されてきた印刷対象データを受信するものである。
【0045】
インクジェット印刷部22は、印刷対象データ内の各色成分の値を、インク吐出量に変換する。この処理の具体的な説明を以下に示す。
【0046】
インクジェット印刷部22には、予め、端末装置100から、上記所定の量子化数(例えば、10)が送信されてきている。そして、インクジェット印刷部22は、印刷対象データを受信すると、所定の量子化数(例えば、10)に対応する色成分値(符号値)0、1、2、3、・・・7、8、9に対して符号値2、8を削除したことに基づいて、所定の解像度で展開された各座標位置ごとの各色成分の値0〜7を、インク吐出量に対応するドロップ数0、1、3、4、5、6、7、9に変換させる吐出量変換機能を備える(
図2(c)参照)。
【0047】
また、インクジェット印刷部22は、C成分値、M成分値、Y成分値、K成分値に対応した吐出ヘッドを備える。インクジェット印刷部22は、印刷用紙を給紙し、吐出ヘッドにより吐出動作が行われた後印刷済み用紙を排出する給排出部を備えている。インクジェット印刷部22は、吐出量変換機能により出力された各座標位置ごとの各色成分のドロップ数(以下、適時、吐出ドロップデータという)に基づいて、給紙部から給紙された印刷用紙に対して、所定位置に画像形成を行うように、各吐出ヘッドのインク吐出制御を行う。
【0048】
(印刷方法)
次に、上述の印刷システムを用いた印刷方法を、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0049】
端末装置100において、アプリケーション部11が、原稿データを生成した後、プリンタドライバ部12は、ユーザによって設定された情報と、原稿データに基づいて、印刷ジョブデータを生成する(S1)。
【0050】
印刷データ生成部13は、印刷ジョブデータに基づき、各画素の所定階調数の画像データを量子化して上記所定階調数より低い階調数(量子化数)の画像データに変換することにより、印刷対象データを生成する(S2)。このS2の詳細な処理の説明は後述する。
【0051】
印刷データ生成部13は、生成した印刷対象データを、端末側通信部15、通信経路300を介してインクジェット印刷装置200に送信する(S3)。
【0052】
インクジェット印刷装置200において、印刷側通信部21が印刷対象データを受信すると、インクジェット印刷部22は、印刷対象データから吐出ドロップデータを生成する。インクジェット印刷部22は、吐出ドロップデータに基づいて、給紙部から給紙された印刷用紙に対して、所定位置に画像形成を行うように、各吐出ヘッドのインク吐出制御を行う(S4)。
【0053】
次に、端末装置100における印刷対象データの生成処理の詳細な説明を
図4に示すフローチャート図を用いて説明する。なお、各処理において、すでに説明した事項は簡略化して説明する。
【0054】
RIP処理部131は、プリンタドライバ部12から出力された印刷ジョブデータに基づいて、RGB成分の展開印刷ジョブデータを生成する(RIP処理の実行)(S21)。RGB−CMYK変換部132は、RIP処理部131で生成されたRGB成分の展開印刷ジョブデータを、CMYK成分の展開印刷ジョブデータに変換する(S22)。
【0055】
多値ハーフトーン処理部133は、RGB−CMYK変換部132により変換されたCMYK成分の展開印刷ジョブデータを取得すると、量子化制御部135に送る。量子化制御部135は、展開印刷ジョブデータについて現在設定されている量子化数を取得する。
【0056】
量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除か否かを判断する(S23)。このS23の処理では、量子化制御部135は、C成分、M成分、Y成分、K成分について、印刷濃度テーブルを参照して、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除か否かを判断する。
【0057】
削減可能と判断しない場合、量子化制御部135は、設定されている量子化数で量子化処理を行い、印刷対象データを端末側通信部15に送る(S24)。削減可能と判断した場合、量子化制御部135は、量子化数の低減処理を行い、決定されている量子化数で量子化処理を行い、印刷対象データを端末側通信部15に送る(S25)。
【0059】
本実施形態においては、端末装置100の入出力部14の機能と、量子化制御部135の機能が異なる。本実施形態においては、第1の実施形態と異なる機能、処理について主に説明し、第1の実施形態と同一または類似の機能、処理については説明を省略または簡略化する。
【0060】
端末装置100の入出力部14は、印刷対象データをインクジェット印刷装置200に高速に転送する高速転送モードを指定する機能を備える。量子化制御部135は、高速転送モードが指定された場合に、所定の量子化数で量子化された印刷対象データを単位時間当たりにインクジェット印刷装置200に転送するデータ転送量と、通信経路300による単位時間当たりに転送可能なデータ通信量とを比較し、比較結果に基づいて、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する処理を行う。
【0061】
量子化制御部135の具体的な処理の説明を以下に行う。ここで、印刷データ生成部13から印刷対象データを端末側通信部15を介して転送する速度が予め設定されており、この転送する速度に基づいて、印刷対象データを単位時間当たりにインクジェット印刷装置200に転送するデータ転送量が算出される。
【0062】
例えば、端末装置100における生産性(印刷データ生成部13から印刷対象データを端末側通信部15を介して転送する速度)が60ページ/分(60秒)の場合、1秒間に1ページ分の印刷対象データを転送すれば、上記生産性を維持することができる。量子化制御部135は、単位時間当たりのデータ転送量としては、1ページに対応するデータ量を算出する。例えば、原稿サイズがA4で、所定の解像度、変倍率が等倍、色変換処理がRGB−CMYK変換で、多値ハーフトーン変換で量子化数が4ビット表示で、データ転送量は、約16.6MBとする場合に、量子化制御部135は、データ転送量を、16.6MBと算出する。
【0063】
また、量子化制御部135は、通信経路300による単位時間当たりに転送可能なデータ通信量を算出する。この算出方法は、公知であるので、詳細には省略するが、例えば、端末側通信部15は、定期的に、通信経路300内のFTPサーバに試験用のファイルを送信し、上記ファイルのFTPサーバ・端末通信部間の通信に要する時間に基づいて、算出することができる。
【0064】
量子化制御部135は、単位時間当たりのデータ転送量と、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量とを比較し、単位時間当たりのデータ転送量が、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量より大きい場合(または以上でもよい)、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する処理を行う。
【0065】
単位時間当たりのデータ転送量が、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量より大きい場合には、そのまま量子化を行い印刷対象データを転送すると、単位時間当たりのデータ転送量が通信経路の通信速度を超えているため、端末装置100からインクジェット印刷装置200へのデータ転送に遅延が生じる可能性があるからである。
【0066】
例えば、量子化制御部135は、単位時間当たりのデータ転送量を、16.6MBと算出し、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量を13MBと算出した場合、印刷濃度テーブルを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する処理を行う。
【0067】
そして、量子化制御部135は、第1の実施形態で説明したようにして、量子化数の低減処理を行い、量子化数10を8に決定する。量子化制御部135は、量子化数8にすることで、量子化数が3ビット表示となるため、データ転送量16.6MB×3/4=12.5MBと算出する。量子化制御部135は、算出したデータ転送量12.5MBが、単位時間当たりのデータ通信量13MBよりも小さい。このため、端末装置100からインクジェット印刷装置200へ通信可能(単位時間当たりに転送可能なデータ通信量で通信可能)にできるデータ転送量として、12.5MBを決定し、多値ハーフトーン処理部133で行う量子化数を所定の量子化数より少ない量子化数8に決定する。
【0068】
ここで、量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量で、端末装置100からインクジェット印刷装置200へ通信可能なように、データ転送量を決定して、所定の量子化数より少ない量子化数を決定してもよい。
【0069】
なお、量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量で、端末装置100からインクジェット印刷装置200へ通信可能なように、データ転送量を決定できない場合には、その旨を入出力部14に出力する。この場合、入出力部14には、現在の量子化数で量子化処理を行うか、または、再度、原稿データを作成し直すか、を選択させる出力(表示)をユーザに対して行う。
【0070】
(印刷方法)
次に、上述の印刷システムを用いた印刷方法を、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、
図4に示すフローチャート図や、上述の印刷システムの構成で既に説明した機能、処理については、同一符号を付してその説明を省略または簡略化する。
【0071】
本実施形態では、まず、ステップS1において、ユーザが入出力部14を用いて、高速転送モードを指定する旨を入力すると、プリンタドライバ部12は、高速転送モードの指定情報を含む印刷ジョブデータを生成する。
【0072】
そして、ステップS2の印刷対象データの生成において、以下の処理が行われる。なお、ステップS24、S25の処理が行われず、代わりに、ステップS36の処理が行われる。
【0073】
ステップS21で、RIP処理部131は、展開印刷ジョブデータを生成する際に、高速転送モードの指定情報を含む場合には、高速転送モードの指定情報を量子化制御部135に送る。
【0074】
そして、ステップS22の後、量子化制御部135は、印刷対象データに、高速転送モードの指定情報が含まれているか否かを判定し(S32)、高速転送モードの指定情報が含まれていない場合には、ステップS36の処理が行われる。
【0075】
高速転送モードの指定情報が含まれている場合には、量子化制御部135は、単位時間当たりのデータ転送量が、単位時間当たりに転送可能なデータ通信量(以下、単位時間当たりのデータ通信量)より大きいか否かを判定する(S34)。この処理では、ステップS32からの場合には、量子化制御部135は、設定されている所定の量子化数で量子化した場合の単位時間当たりのデータ転送量を算出する。ステップS23からの場合には、量子化制御部135は、所定の量子化数より少ない量子化数で量子化した場合の単位時間当たりのデータ転送量を算出する。
【0076】
単位時間当たりのデータ転送量が、単位時間のデータ通信量より大きい場合には、ステップS23の処理へ移行し、単位時間当たりのデータ転送量が、単位時間のデータ通信量より小さい場合には、ステップS36の処理へ移行する。
【0077】
そして、ステップS23の処理で、削減可能と判断した場合、ステップS34の処理へ移行する。削減不可能と判断した場合には、量子化制御部135は、入出力部14に、現在の量子化数で量子化処理を行うか、原稿データを作成し直すか、を選択させる表示をユーザに対して行う(S35)。現在の量子化数で量子化処理を行う旨が入力された場合、ステップS36の処理へ移行し、原稿データを作成し直す旨が入力された場合、本処理を終了する。この場合、作成された印刷対象データは削除される。
【0078】
ステップS36では、量子化制御部135は、設定された所定の量子化数または所定の量子化数より少ない量子化数で、量子化処理を行い、印刷対象データを端末側通信部15に送る。
【0079】
(変形例1)
上述した実施形態では、端末装置100から印刷対象データを通信経路300(例えば、インターネットなど)を介して転送する場合について説明したが、これに限定されず、以下のようにしてもよい。
【0080】
図6は、変形例1に印刷システムを示す図である。
図6において、
図1と異なる機能、処理について主に説明し、同一または類似の機能、処理については説明を省略または簡略化する。
【0081】
印刷システムは、スキャナ装置500と、インクジェット印刷装置200と、スキャナ装置500とインクジェット印刷装置200との間のデータ通信を行う通信ケーブル310とを備える。スキャナ装置500では、第1の実施の形態の端末装置100と比較して、アプリケーション部11及びプリンタドライバ部12が存在せず、RIP処理部131の代わりに、読み取り部138が設けられている。
【0082】
読み取り部138は、ADF部またはフラットベット部に設定された原稿をCCD等で光学的に読み取ることで、上述のR成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータを生成する。RGB−CMYK変換部132により、R成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータをC成分、M成分、Y成分、K成分の展開印刷ジョブデータに変換される処理以降の処理は、実施の形態1の場合と同様である。
【0083】
(変形例2)
(1)また、上述した実施形態において、量子化数の削減としては、データ量の最小単位がビットであることから、たとえば、2の4乗(量子化数9〜16)から2の3乗(量子化数5〜8)のように、2のべき乗単位で削減するようにしてもよい。ただし、これに限定されず、量子化数10から9に削減し、量子化数に関連する情報量を削減するようにしてもよい。
【0084】
(2)上述した第2の実施形態において、入出力部14により高速転送モードが指定された場合、
図4に示すフローチャート図において、ステップS21〜S25(S24を除く)の処理を行うようにし、高速転送モードが指定されない場合、S21、S22、S23、S24の処理を行うようにしてもよい。
【0085】
(3)第1の実施形態において、
図4に示すS23でNOと判断された場合、ステップS24の処理を行うようにしていたが、ステップS35の処理を行い、NOと判断された場合、処理を終了し、YESと判断された場合、ステップS24の処理を行うようにしてもよい。
【0086】
(4)量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減することを繰り返して、所定量子化数より少ない量子化数を決定するような説明をしたが、これに限定されない。例えば、印刷濃度の差が所定値より少ない場合、対応する2つの符号値のいずれか一方を削減する箇所は、印刷濃度の差が最も少ない箇所でなくてもよい。
【0087】
(5)上述の実施形態では、インクジェット印刷装置200について説明したが、これに限定されず、印刷用紙に対して印刷剤を印刷することで、印刷剤の量の変化に対して印刷濃度差が生じる場合には、同様に適用が可能である。