(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084880
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】逆止弁体及びそれを用いた逆止弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/06 20060101AFI20170213BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
F16K15/06
F16K1/00 R
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-77539(P2013-77539)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202254(P2014-202254A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大西 博文
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2875852(JP,B2)
【文献】
特開2004−225717(JP,A)
【文献】
特開2006−207833(JP,A)
【文献】
特開平09−287671(JP,A)
【文献】
特開2004−270914(JP,A)
【文献】
特開2004−046897(JP,A)
【文献】
特開2003−074723(JP,A)
【文献】
実開昭58−050275(JP,U)
【文献】
実開昭62−087266(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/06
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側流路からの流体を導入する開口を有する弁座から下流側に延びる筒状壁によって画定された下流側流路内に、上流及び下流側へ変位可能に設定され、上流側に向けての予閉止付勢力により該弁座に当接される逆止弁体であって、
該逆止弁体の外周面に設けられた係止部と、
該外周面の該係止部の下流側に隣接した摺動抵抗付与部材支持部であって、摺動抵抗付与部材を支持し、当該逆止弁体が上流及び下流側へ変位するときに該摺動抵抗付与部材が該筒状壁に摺動するようにする摺動抵抗付与部材支持部と、
該外周面の該摺動抵抗付与部材支持部の下流側の付勢部材支持部であって、上流側へ付勢される付勢部材を支持し、該付勢部材が該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながら当該摺動抵抗付与部材の外径が増大するようにする付勢部材支持部と、
を有する逆止弁体と、
該弁座及び該下流側流路を備えるハウジングと、
該逆止弁体の該摺動抵抗付与部材支持部上に設定される摺動抵抗付与部材と、
該逆止弁体の該付勢部材支持部上に設定され、該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながら当該摺動抵抗付与部材の外径が増大するようにする付勢部材と、
を備える逆止弁であって、
該付勢部材は、該摺動抵抗付与部材に係合される係合部材と、該係合部材を該摺動抵抗付与部材に下流側から押圧するバネ部材と、を有し、
該係合部材は、当該逆止弁体の該外周面上で該上流側に変位可能に設けられており、該逆止弁体の該外周面と摺動する内周面に突起を有しており、
該逆止弁体の該外周面には、該係合部材の該突起を前後方向で変位可能に受け入れる凹部であって、該突起が係合することにより該係合部材の前方への変位を阻止する前端縁を有する凹部を備えている、逆止弁。
【請求項2】
該係合部材は該摺動抵抗付与部材に下流側から係合する押圧部を有し、該押圧部は、該逆止弁体の外周面を囲う環状とされて該摺動抵抗付与部材に下流側から係合するようにされた、該上流側に向かうに従って先細りとされた押圧面を有する請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
上流側流路からの流体を導入する開口を有する弁座から下流側に延びる筒状壁によって画定された下流側流路内に、上流及び下流側へ変位可能に設定され、上流側に向けての予閉止付勢力により該弁座に当接される逆止弁体であって、
該逆止弁体の外周面に設けられた係止部と、
該外周面の該係止部の下流側に隣接した摺動抵抗付与部材支持部であって、摺動抵抗付与部材を支持し、当該逆止弁体が上流及び下流側へ変位するときに該摺動抵抗付与部材が該筒状壁に摺動するようにする摺動抵抗付与部材支持部と、
該外周面の該摺動抵抗付与部材支持部の下流側の付勢部材支持部であって、上流側へ付勢される付勢部材を支持し、該付勢部材が該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながら当該摺動抵抗付与部材の外径が増大するようにする付勢部材支持部と、
を有する逆止弁体と、
該弁座及び該下流側流路を備えるハウジングと、
該逆止弁体の該摺動抵抗付与部材支持部上に設定される摺動抵抗付与部材と、
該逆止弁体の該付勢部材支持部上に設定され、該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながら当該摺動抵抗付与部材の外径が増大するようにする付勢部材と、
を備える逆止弁であって、
該付勢部材は、該摺動抵抗付与部材に係合される係合部材と、該係合部材を該摺動抵抗付与部材に下流側から押圧するバネ部材と、を有し、
該係合部材は該摺動抵抗付与部材に下流側から係合する押圧部を有し、該押圧部は、該逆止弁体の外周面を囲う環状とされて該摺動抵抗付与部材に下流側から係合するようにされた、該上流側に向かうに従って先細りとされた押圧面を有する、逆止弁。
【請求項4】
該摺動抵抗付与部材が周方向の一部が切断されている分割リング形状とされている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項5】
該摺動抵抗付与部材は、該逆止弁体の外周面を囲う環状とされ、該筒状壁に摺動する外側周面と、該外側周面に形成されて該筒状壁との間に隙間を形成する凹部とを有する請求項4に記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆止弁に関し、特に、ハウジング内に変位可能に設定された弁体(逆止弁体)が弁座に対して付勢され、上流側の流体圧によって弁座から離れて流体の上流側から下流側への一方向での流れを可能とする、いわゆるポペット式の逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水素自動車に水素を供給する水素供給ステーションでは、高圧低温での気体または液体水素を貯留したステーションタンクから延びる供給ホース先端の雌型継手部材(ソケット)を、水素自動車の水素貯留タンクから延びる水素受入管の外部端にある雄型継手部材(プラグ)に連結して、水素の供給が行われる。この雄型継手部材内には供給ホースから水素自動車の水素貯留タンクへの流れだけを許容し、その逆の流れを阻止する逆止弁が設けられる。
【0003】
この逆止弁としてポペット式のものを採用した場合、次のような問題が生じる虞がある。すなわち、水素自動車の水素貯留タンクへの水素の充填が進むと、水素貯留タンク内の圧力が水素供給ステーションの供給ホース内の圧力に近づき、当該逆止弁の上流側と下流側との圧力差が小さくなるため、弁体を弁座に付勢する付勢力とこの圧力差が拮抗した状態となり、弁体が弁座に着座したり離れたりする状態が頻繁に繰り返されるいわゆるチャタリングが生じる。このようなチャタリングは、水素の安定した状態での供給を妨げ、騒音の発生、弁体や弁座の耐久性の低下といった問題を生じる。
【0004】
かかる問題を解消するため、弁体内に流路を形成し、弁座を通して流入した流体を弁体内の流路を通すようにするとともに、この流路の流路抵抗を大きくすることにより当該弁体前後での急激な圧力変動が生じないようにして上述のような問題を解消しようとしたものが開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2011−7275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の提案した逆止弁は、チャタリングの発生を抑制する点で有効なものではあるが、流路抵抗を大きくしている分だけ流体の供給に時間がかかってしまう。例えば、供給ステーションでの水素自動車への水素供給は、できるだけ高速で行われることが望まれるので、この点に対する解決が必要とされる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、チャタリングの発生を抑制しつつ、流体の効率よい供給を可能とする逆止弁及びそれに適した逆止弁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明は、
上流側流路からの流体を導入する開口を有する弁座から下流側に延びる筒状壁によって画定された下流側流路内に、上流及び下流側へ変位可能に設定され、上流側に向けての予閉止付勢力により該弁座に当接される逆止弁体であって、
該逆止弁体の外周面に設けられた係止部と、
該外周面の該係止部の下流側に隣接した摺動抵抗付与部材支持部であって、摺動抵抗付与部材を支持し、当該逆止弁体が上流及び下流側へ変位するときに該摺動抵抗付与部材が該筒状壁に摺動するようにする摺動抵抗付与部材支持部と、
該外周面の該摺動抵抗付与部材支持部の下流側の付勢部材支持部であって、上流側へ付勢される付勢部材を支持し、該付勢部材が該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながらその外径が増大するようにする付勢部材支持部と
を有する逆止弁体を提供する。
【0009】
この逆止弁体は、上述の如き摺動抵抗付与部材を支持可能であり、摺動抵抗付与部材を当該逆止弁体が設定されている下流側流路の周壁と摺動可能とすることにより、当該逆止弁体の前後にかかる流体圧の差圧の変動により当該逆止弁体が上流側及び下流側に変位しようとするときに、それに抗する摺動抵抗を生じさせ、これにより該逆止弁体の上記差圧変動に敏感な変位を抑制し、上述の如きチャタリングを抑制することを可能とする。
【0010】
本発明はまた、上述のような逆止弁体と、
該弁座及び該下流側流路を備えるハウジングと、
該逆止弁の該摺動抵抗付与部材支持部上に設定され、該逆止弁体が上流及び下流側へ変位するときに該筒状壁に摺動する摺動抵抗付与部材と、
該逆止弁体の該付勢部材支持部上に設定され、該摺動抵抗付与部材を上流側に付勢することにより該摺動抵抗付与部材が該係止部に係止されながら当該摺動抵抗付与部材の外径が増大するようにする付勢部材と
を備える逆止弁であって、
該付勢部材は、
該摺動抵抗付与部材に係合される係合部材と、
該係合部材を該摺動抵抗付与部材に下流側から押圧するバネ部材と
を有するようにした逆止弁を提供する。
【0011】
この逆止弁は、上述のような逆止弁体に装着された摺動抵抗付与部材及び付勢部材を備えるので、上述の逆止弁体に関し述べたと同じ効果を奏することが可能となる。
【0012】
具体的には、
該係合部材は、当該逆止弁体の該外周面上で該上流側に変位可能に設けられており、該逆止弁体の該外周面と摺動する内周面に突起を有しており、
該逆止弁体の該外周面には、該係合部材の該突起を前後方向で変位可能に受け入れる凹部であって、該突起が係合することにより該係合部材の前方への変位を阻止する前端縁を有する凹部を備えるようにすることができる。
【0013】
これは、摺動抵抗付与部材の過剰な変形を阻止することにより、該摺動抵抗付与部材によって生じる摺動抵抗を適正なものにすると共に、該摺動抵抗付与部材の耐用期間を長いものにするためである。
【0014】
更に具体的には、該係合部材が該摺動抵抗付与部材に下流側から係合する押圧部を有し、該押圧部は、該逆止弁体の外周面を囲う環状とされて該摺動抵抗付与部材に下流側から係合するようにされた、該上流側に向かうに従って先細りとされた押圧面を有するようにすることができる。
【0015】
上述のような先細りの押圧面を設けることにより、摺動抵抗付与部材の半径方向への変形を容易にしようとするものである。
【0016】
摺動抵抗付与部材は、具体的には、周方向の一部が切断されている分割リング形状とすることができる。半径方向への変形を容易にするものである。
【0017】
該摺動抵抗付与部材は、該逆止弁体の外周面を囲う環状とされ、該筒状壁に摺動する外側周面と、該外側周面に形成されて該筒状壁との間に隙間を形成する凹部とを有するようにすることができる。
【0018】
摺動抵抗付与部材が逆止弁と共に変位するときに、当該摺動抵抗付与部材と下流側流路の周壁との間を流れる流体が、該凹部を通るようにして、該摺動抵抗付与部材と周壁との間の摺動部分に流体中の異物が入り込むのを抑制し、当該摺動抵抗付与部材が長期間に亘り適正に機能するようにするものである。
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】水素自動車の水素受入管の外側端に取り付けられる、本発明にかかる逆止弁を備えたプラグの縦断面図である。
【
図2】
図1の逆止弁内の逆止弁体を上流側から見た端面図である。
【
図3】逆止弁体に取り付けられる摺動抵抗付与部材の端面図である。
【
図4】逆止弁体上で摺動抵抗付与部材を付勢する付勢部材を構成する係合部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、(図示しない)水素自動車の水素貯留タンクから延びる水素受入管の外側端にネジ結合されるネジ部10を(図で見て)右端に有するプラグ(雄型継手部材)12であり、該プラグ12は、(これも図示しない)水素供給ステーションにおける水素供給ホースの先端に設けられるソケット(雌型継手部材)が
図1の左側から嵌合されて水素の供給を受けるようになっている。ここでソケット(雌型継手部材)、プラグ(雄型継手部材)としているのは、水素供給ステーションにおける水素供給ホースの先端に取り付けられた雌型継手部材(ソケット)が、水素自動車の水素貯留タンクから延びる水素受入管の外側端の雄型継手部材(プラグ)の周りに同心状に嵌合されるようになっていることを想定しているものであり、更に、ソケットはプラグ12に対してそのような嵌合を行った状態で、同ソケットの中心軸線に沿って延びる水素供給ノズル(図示せず)が、プラグ12の左端に設けられたノズル挿入口16内に挿入されるようになっていることを想定している。
【0022】
更に図示の例では、プラグ12のノズル挿入口16は、例えば35MPa等の比較的低圧の水素を供給するためのソケットの水素供給ノズルを受け入れるための大径の第1ノズル受入部18と、例えば70MPa等の高圧の水素を供給するためのソケットの供給ノズルを受け入れるための小径の第2ノズル受入部20を有し、これら第1及び第2ノズル受入部18,20には、それぞれOリング22とOリング24とが設けられており、Oリング24の前後にはバックアップリング26が設けられている。
【0023】
プラグ12は、ノズル挿入口16から当該プラグの長さ方向に延びる流路28を備え、該流路28の図で見て右端の出口開口29は水素自動車の水素貯留タンクから延びる水素受入管の外側端に連通されるようになっている。流路28には、下流に向かうに従いフィルタ30及び本発明に係る逆止弁32が設けられている。
【0024】
図示の実施形態では、当該プラグ12の流路28を画定するハウジング34は、該流路28の上流側流路28aを画定する筒状のハウジング上流部材34aと、フィルタ30を支持するとともに逆止弁32の弁座36を構成する環状の中間部材34bと、ハウジング上流部材34aにネジ部40によって螺合されて、中間部材34bを当該ハウジング34内で固定するとともに、弁座36から出口開口29までの下流側流路42を画定する筒状のハウジング下流部材34cとを有する。
【0025】
フィルタ30は中実の上流端部材30a及び筒状の下流端部材30bと、上流端及び下流端部材30a,30bの間に設けられた筒状のフィルタ部材30cと、上流端及び下流端部材30a、30b間にその長さ方向で相互に間隔をあけて設けられた複数のディスク状フィルタ部材30dとを有しており、下流端部材30bが中間部材34b内に螺合されて、当該フィルタ30が上流側流路28aと同心状に保持されるようになっている。上流側流路28a内に供給される水素は、当該フィルタ30の外周の周りに流れ、筒状のフィルタ部材30c、ディスク状フィルタ部材30d及び下流端部材30bの軸方向流路30eを通して下流に流れるようになっている。
【0026】
中間部材34bは、フィルタ30の下流端部材30bの軸方向流路30eと軸線方向で整合された軸方向流路44を有しており、該軸方向流路44の下流側端部は下流に向かうに従って広がる弁座36を形成している。本発明に係る逆止弁32は、該弁座36と、該弁座36から下流側に延びる下流側流路42内に、上流及び下流側へ変位可能に設定される逆止弁体48と、該逆止弁体48を上流側に付勢し、該逆止弁体48の上流側端部48aを弁座36に押圧し、当該弁座36によって囲まれた軸方向流路44の出口開口44aを閉じるための予閉止付勢力を該逆止弁体48に与える付勢部材(コイルバネ)50とを有している。
【0027】
逆止弁体48は、上流側端部48aの近くの外周面48b上に設けられた第1の摺動突起48cと、該摺動突起48cから下流側に離れた位置で外周面48b上に設けられた第2の摺動突起48dと、逆止弁体48の軸線に沿って延びる内部流路48eと、該内部流路48eと下流側流路42の逆止弁体48の周囲部分42aとを連通する半径方向流路48fとを有している。第1及び第2の摺動突起48c、48dは共に環状の突起とされ、その外周面は、下流側流路42の周壁面42bに対して僅かな隙間を有するようにされ、逆止弁体48が下流側流路42内を変位するときのガイドとして機能する。また、第1の摺動突起48cは、
図2に示すように、流体を通すための4つの凹部48c−1が周方向で相互に間隔をあけて設けられており、弁座36から下流に流入する流体(水素)は、第1の摺動突起48cの凹部48c−1を通り、半径方向流路48f及び内部流路48eを通って出口開口29に流れるようにされている。
【0028】
逆止弁体48の外周面48bにおける第2の摺動突起48dの下流側には環状の摺動抵抗付与部材52を支持する摺動抵抗付与部材支持部48b−1と、該摺動抵抗付与部材52を第2の摺動突起48dに向けて付勢する付勢部材50を支持する付勢部材支持部48b−2とされている。付勢部材50は、付勢部材支持部48b−2上で摺動可能とされて摺動抵抗付与部材52に下流側から係合するようにされた環状の係合部材50aと、該係合部材50aを摺動抵抗付与部材52に向けて押圧するバネ部材50bとからなる。
【0029】
第2の摺動突起48dは、摺動抵抗付与部材52が付勢部材50の付勢力によって上流側に変位しようとするのを係止する係止部として作用し、当該摺動抵抗付与部材52がその付勢力がかけられた状態で係止部としての第2の摺動突起48dによって係止されながら半径方向外側に変形するようにされており、それにより当該逆止弁体48の上流側及び下流側への変位に対して摺動抵抗を与えるようになっている。
【0030】
具体的には、摺動抵抗付与部材52は
図3に示すように、周方向での一部が切断された分割リングの形態とされており、係合部材50aは、
図1及び
図4に示すように、上流に向かうに従って先細となるテーパ面とされて摺動抵抗付与部材52に係合する係合面50a−1を有し、該係合面50a−1は摺動抵抗付与部材52の半径方向内側まで延びるようにされており、該摺動抵抗付与部材52に対して半径方向外向きの力を与えるようになっている。摺動抵抗付与部材52は必ずしも分割リングの形態をとる必要は無く、付勢部材50によって係止部としての第2の摺動突起48dに押圧されることによって半径方向に変形可能なものであればどのような形態のものでも良い。
【0031】
係合部材50aは、バネ部材50bの上流側端を支持する下流側小径部分50a−2を有しており、バネ部材50bが該下流側小径部分50a−2から下流側に延びて、その下流側端が下流側流路42の形成された段部42cに係合されて、当該バネ部材50bが該段部42cと係合部材50aとの間で圧縮されるようになされている。図示の例では、付勢部材50は、上述のように、摺動抵抗付与部材52を係止部としての第2の摺動突起48dに押圧して該摺動抵抗付与部材52が半径方向外側に広がるように機能しているが、同時に、当該逆止弁体48を弁座36に対して押圧し、上述した当該逆止弁体48の予閉止付勢力をも与えるようにも機能するようにされている。しかし、これら2つの機能をそれぞれ別の付勢部材で行わせるようにすることもできる。
【0032】
図5は、係合部材50aの変形例を示している。この係合部材50aはその内周面50a−3の後端縁に沿って半径方向内側へ向かう環状の突起50a−4を有し、逆止弁体48の付勢部材支持部48b−2の外周面48bには突起50a−4を前後方向で変位可能に受け入れる環状の凹部48b−4が設けられている。突起50a−4は凹部48b−4の前端縁48b−5及び後端縁48b−6との間で可動となり、係合部材50aが逆止弁体48に対して一定範囲に限り変位可能とする。これは付勢部材50の付勢により摺動抵抗付与部材52が過剰に変形するのを阻止すると共に当該係合部材50aの上流側からかかる水素圧によって下流側に大きく変位して摺動抵抗付与部材52を適正に押圧できなくなるのを防ぐものである。
【0033】
上述のように図示のプラグは水素自動車の水素貯留タンクから延びる水素受入管の外側端に取り付けられるもので、水素供給ステーションにおける水素供給ホースの先端に取り付けられたソケットが嵌合され、その水素供給ノズルがノズル挿入口16内に挿入されて液体または気体水素の供給が開始されると、供給される水素の圧力によって、逆止弁体48は付勢部材50によってかけられている予閉止付勢力に抗して下流側に変位されて弁座36を離れ、水素の供給が行われる。水素自動車の水素貯留タンクへの水素供給が進み、該タンクから延びる水素受入管内の圧力が上昇してくると、逆止弁体48にかかる上流側と下流側の圧力差は小さくなり、最終的には当該逆止弁体48は予閉止付勢力によって弁座に着座され、当該プラグ内の流体流路42は閉止される。逆止弁体48にかかる上流側と下流側の圧力差が小さくなり予閉止付勢力に近づきそれらが拮抗した状態になると、逆止弁体48にかかる上記圧力差に変動が生じるが、本発明に係る逆止弁32では、その逆止弁体48に上述の如き摺動抵抗付与部材52が設けられているので、当該逆止弁体48がその圧力変動に敏感に反応することが抑制され、結果として、上述したチャタリングを抑制することが可能となる。
【0034】
以上、本発明に係る逆止弁を、水素自動車の水素受入管に設けられるプラグに採用した実施形態につき説明したが、本発明に係る逆止弁はこれに限定されるものではなく、チャタリングの問題を有する種々の流体管路において用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
ネジ部10;プラグ(雄型継手)12;ノズル挿入口16;第1ノズル受入部18;第2ノズル受入部20;Oリング22、24;バックアップリング26;流路28;上流側流路28a;出口開口29;フィルタ30;上流端部材30a;下流端部材30b;フィルタ部材30c;ディスク状フィルタ部材30d;軸方向流路30e;逆止弁32;ハウジング34;ハウジング上流部材34a;中間部材34b;ハウジング下流部材34c;弁座36;ネジ部40;下流側流路42;周囲部分42a;周壁面42b;段部42c;軸方向流路44;出口開口44a;逆止弁体48;上流側端部48a;外周面48b;摺動抵抗付与部材支持部48b−1;付勢部材支持部48b−2;環状の凹部48b−3;前端縁48b−4;第1の摺動突起48c;凹部48c−1;係止部(第2の摺動突起)48d;内部流路48e;半径方向流路48f;付勢部材(コイルバネ)50;係合部材50a;係合面50a−1;下流側小径部分50a−2;;内周面50a−3;突起50a−4;バネ部材50b;摺動抵抗付与部材52