特許第6084894号(P6084894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6084894通信ネットワークの経路探索装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084894
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】通信ネットワークの経路探索装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/751 20130101AFI20170213BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H04L12/751
   H04M3/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-103513(P2013-103513)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-225761(P2014-225761A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】角田 聖也
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−222629(JP,A)
【文献】 特開2008−022523(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0257538(US,A1)
【文献】 荻野 長生,最近のネットワーク工学技術の動向,経営の科学 オペレーションズ・リサーチ 第48巻 第3号 Communications of the Operations Research Society of Japan,日本,社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会,2003年 3月 1日,第48巻
【文献】 森 美華 Mika MORI,仮想ネットワークの構築に適した物理ネットワークの設計技術の検討 Resource Allocation based on Robustness for Physical Networks with Virtualization Technology,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.111 No.408 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2012年 1月19日,第111巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/26,12/50−12/955
H04M3/00,3/16−3/20,3/38−3/58,7/00−7/16,11/00−11/10
H04B10/00−10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワーク内の2つのクライアント装置間に設定する回線の経路探索装置であって、
前記通信ネットワークの各通信装置の被多重化インタフェースと、多重化インタフェースに基づき、前記通信ネットワーク内で取り得る多重化構成を判定して、前記各通信装置の各インタフェースが扱う多重化信号の前記多重化構成の数を判定する判定手段と、
前記通信ネットワークの各通信装置の各インタフェースを、前記判定手段が判定した前記多重化構成の数のノードと定義し、前記通信ネットワークの各通信局舎の各通信装置の接続構成と、前記各通信装置内のインタフェース間での信号経路に基づき、前記ノード間のリンクを定義する定義手段と、
前記定義手段が定義したノード及びリンクをグラフと見做し、前記2つのクライアント装置間で取り得る経路を探索する探索手段と、
を備えていることを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記通信ネットワークの各通信装置の種別毎に、前記通信ネットワークが使用するインタフェースの総てを有する通信装置を求めることで、前記通信ネットワーク内で取り得る多重化構成を判定することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記探索手段は、前記探索した取り得る経路から所定の条件に基づき1つの経路を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の経路探索装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の多重化方式が混在する通信ネットワーク内で2つのクライアント装置を接続する回線の経路を探索する経路探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、通信ネットワークにおいて回線の経路を決定する装置を開示している。この様に、通信を行う2つの装置間に回線を設定するためには、まず、取り得る総ての経路を探索し、その中から所定の基準により1つの経路を最終的に決定することが行われる。このため、回線の経路探索装置が使用される。経路探索装置は、通常、多重化装置等をノードとし、装置間を接続する有線又は無線の伝送路をエッジ又はリンクとし、グラフ理論による経路探索アルゴリズムにより経路の探索及び決定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−022523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、通信ネットワークには、SDH(同期デジタルハイアラーキ)や、OTN(光伝達網)といった様々な多重化方式に従う通信装置が混在し、通信局舎間を伝送される信号の多重化構成は複雑化している。このため、信号の多重化経路が経路探索における制約条件となる。例えば、図10に示す様に局舎#1と局舎#2が波長多重装置(WDM)で接続され、局舎#1及び局舎#2には、それぞれ、OTNに従う多重化装置(OTNと表記)と、SDHに従う多重化装置(SDHと表記)と、クライアント装置が設置されているものとする。なお、各局舎#1及び#2の各通信装置の接続関係は装置間を結ぶ線の通りとする。
【0005】
この場合、局舎#1及び#2それぞれの多重化順序は4通りあるため、クライアント装置を接続するための経路は合計で4×4=16通りとなる。しかしながら、局舎#1において、クライアント装置−OTN−WDMの経路で多重化した信号は、局舎#2においては、その逆順、つまり、WDM−OTN−クライアント装置の経路で分離しなければならず、例えば、WDM−SDH−クライアント装置の経路とすることはできない。したがって、図10の構成において実際にとり得る経路は4通りとなる。
【0006】
この様に、経路探索装置は、上記多重化順序を制約条件として経路探索を行うが、経路の探索中に制約条件を満たすか否かの判定を行う必要があり、通信ネットワークの規模が大きくなると、経路の探索時間が増大してしまう。
【0007】
本発明は、通信ネットワークの規模が増大しても経路の探索時間の増大を抑えることができる経路探索装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、通信ネットワーク内の2つのクライアント装置間に設定する回線の経路探索装置であって、前記通信ネットワークの各通信装置の被多重化インタフェースと、多重化インタフェースに基づき、前記通信ネットワーク内で取り得る多重化構成を判定して、前記各通信装置の各インタフェースが扱う多重化信号の前記多重化構成の数を判定する判定手段と、前記通信ネットワークの各通信装置の各インタフェースを、前記判定手段が判定した前記多重化構成の数のノードと定義し、前記通信ネットワークの各通信局舎の各通信装置の接続構成と、前記各通信装置内のインタフェース間での信号経路に基づき、前記ノード間のリンクを定義する定義手段と、前記定義手段が定義したノード及びリンクをグラフと見做し、前記2つのクライアント装置間で取り得る経路を探索する探索手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
経路探索の際に制約条件を考慮する必要がなくなり、通信ネットワークの規模が増大しても経路の探索時間の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による経路探索装置の概略的な構成図。
図2】一実施形態による経路探索処理を説明するための例示的な通信局舎間及び通信局舎内の構成図。
図3】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図4】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図5】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図6】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図7】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図8】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図9】一実施形態による経路探索処理の説明図。
図10】従来の問題の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0012】
図2は、本実施形態の説明に使用する通信システムの構成図である。図2に示す様に、局舎Aと局舎Bは、それぞれ、WDM1と2で接続され、局舎Bと局舎Cは、それぞれ、WDM3と4で接続されている。また、局舎Aには、SDH7と、クライアント装置50が設置され、局舎Bには、OTN5と、SDH8及び9が設置され、局舎Cには、OTN6と、SDH10及び11と、クライアント装置51が設置されている。なお、各通信装置内に表示する数字を含む四角は、インタフェースを表しており、その数字は、速度を示すインデックスである。なお、各通信装置の下側に示すインタフェースは、多重化される信号に対応し、以下の説明では、下側に示すインタフェースを被多重化インタフェースと呼ぶものとする。これに対して、各通信装置の上側に示すインタフェースは、多重化された信号に対応し、以下の説明では、上側に示すインタフェースを多重化インタフェースと呼ぶものとする。
【0013】
また、図2の構成において、異なる通信装置のインタフェース間を結ぶ線は、通信リンクを示している。なお、通信リンクは、異なる通信装置の同じインデックスのインタフェース間でのみ設定できる。さらに、通信装置の内部において通信装置間を結ぶ線は、通信装置内における信号の取り得る経路を示している。以下、図2の構成を前提としたときに、クライアント装置50とクライアント装置51との間の経路を決定するために、本実施形態による経路探索装置が実行する経路探索処理又は方法について説明する。
【0014】
まず、経路探索装置は、総ての局舎A、B、Cに設置された総てのWDMが有するインタフェースを1つに纏めたWDM、つまり、図3(A)に示すWDMを定義する。なお、通信局舎間を結ぶインタフェースについては考慮する必要はない。同様に、経路探索装置は、経路内の総ての局舎A、B、Cに設置された総てのOTNが有するインタフェースを1つに纏めたOTN、つまり、図3(B)に示すOTNを定義する。さらに、経路探索装置は、経路内の総ての局舎A、B、Cに設置された総てのSDHが有するインタフェースを1つに纏めたSDH、つまり、図3(C)に示すSDHを定義する。なお、このとき被多重化インタフェースと、多重化インタフェースは区別する。
【0015】
続いて、経路探索装置は、図4に示す様に、クライアント装置のインタフェースから、クライアント装置のインタフェースと接続できる図3で定義した通信装置のインタフェースにリンクを定義する。図4においては、SDH及びOTNのインデックスが1のインタフェースへのリンクが定義されている。また、図3で定義した通信装置の多重化インタフェースと、他の通信装置の被多重化インタフェースで接続できるものがあれば、多重化インタフェースから被多重化インタフェースへのリンクを定義する。図4においては、SDH及びOTNのインデックスが2及び8のインタフェース間と、SDH及びWDMのインデックスが8及び32のインタフェース間と、OTNとWDMのインデックスが32のインタフェース間にリンクが定義されている。さらに、通信装置内においては、各通信装置内の信号経路に従い、非多重化インタフェースから多重化インタフェースへのリンクを定義する。
【0016】
続いて、経路探索装置は、図4での定義内容から、各インタフェースにおける多重化構成の数を判定する。ここで、インタフェースの多重化構成の数とは、図4で定義した構成において、起点とするクライアント装置のインタフェースから、当該インタフェースに至る経路数に相当する。図5は、図4の構成に対応する各インタフェースの多重化構成数を示している。例えば、SDHの被多重化インタフェースや、3つの多重化インタフェースに至る経路は1つのみであるためSDHの各インタフェースの多重化構成数はいずれも1となる。また、OTNの3つの被多重化インタフェースも同様に多重化構成数はいずれも1である。一方、OTNの多重化インタフェースには、OTNの3つの被多重化インタフェースのそれぞれからの経路が存在するため、OTNの多重化インタフェースの多重化構成数は3となる。WDMのインデックスが32であるインタフェースには、多重化構成数が3であるOTNの多重化インタフェースと、SDHの1つの多重化インタフェースからの経路が存在するため、WDMのインデックスが32であるインタフェースの多重化構成数は4となる。
【0017】
続いて、経路探索装置は、図2の構成における各インタフェースを、その多重化構成数に分割する。具体的には、図2の局舎BのOTN5及び局舎CのOTN6の多重化インタフェースは、図5より3つに分割され、局舎BのWDM3及びWDM4の被多重化インタフェースは、図5より4つに分割される。図6は、図2の分割されるインタフェースに、その分割数を括弧書きで付け加えたものである。また、図7は、図2の構成における各インタフェースを、多重化構成数に基づき分割した状態を示している。なお、このとき局舎間を接続するWDM1、2、3及び4の多重化側インタフェースは、非多重化側インタフェースと同じ数に分割し、局舎間のリンクも同様に、多重化側インタフェース毎に定義する。また、通信装置内の信号経路についても各局舎の通信装置の信号経路に従いリンクを定義する。このとき、局舎CにおけるOTN6の様に、3つの多重化側インタフェースに対して、非多重化側インタフェースは2となるが、この場合、3つの多重化側インタフェースの1つには、通信装置内部のリンクは定義されない。
【0018】
図8及び図9は、図7の各インタフェースに多重化構成を示す符号を表示したものである。なお、図8は、局舎Aと局舎Bの構成を、図9は、局舎Bと局舎Cの構成を示している。ここで、図8及び図9の文字"C"はクライアント装置を、文字"S"はSDHを、文字"O"はOTNを、文字"W"はWDMを示し、各文字の添え字は、インタフェースのインデックスを示している。例えば、図4のOTNの多重化インタフェースには、クライアント装置の出力を直接多重化した経路(多重化構成C32)と、SDHのインデックスが2のインタフェースを経由する経路(多重化構成C32)と、SDHのインデックスが8のインタフェースを経由する経路(多重化構成C32)の3つの多重化構成が存在するため、分割した3つのインタフェースは、それぞれ、多重化構成C32と、多重化構成C32と、多重化構成C32に分類されている。他のインタフェースについても同様である。
【0019】
経路探索装置は、図8及び図9に示す様に、分割して得られた各インタフェースを、グラフにおけるノードとし、通信装置間及び通信装置内の信号経路をリンクとしてグラフ理論に基づき経路探索を行う。以上説明した様に、探索の前に、通信ネットワークにおいて取り得る多重化構成を判定し、判定した多重化構成に基づき同じ物理インタフェースを分割して、1つ以上のノードに対応させることで、図8及び図9に示すグラフでは、制約条件を考慮することなく経路探索が行えることになる。言い換えると、実際の通信装置をノードとし、通信装置間の信号経路をリンクとするグラフを、制約条件を考慮した上でインタフェースをノードとし、通信装置間及び通信装置内の信号経路をリンクとするグラフを生成することで、経路探索の際には制約条件を考慮する必要がなくなる。したがって、通信ネットワークの規模が大きくなっても、経路探索に必要な時間を抑えることが可能になる。
【0020】
図1は、本実施形態による経路探索装置の概略的な構成図である。データベース部104は、通信ネットワークの各通信局舎間の接続構成と、各通信局舎に設置されている多重化装置及びクライアント装置と、各通信局舎内の通信装置間の接続構成と、各多重化装置に実装されているインタフェースと、多重化装置内のインタフェース間の信号の取り得る経路についての情報を保持している。また、入出力部105は、ユーザから探索又は決定すべき経路の入力を受け付け、結果を表示する。
【0021】
判定部101は、データベース部104が保持している情報に基づき、図2から図5を用いて説明した様に、各インタフェースが扱う多重化信号における多重化構成の数を判定する。定義部102は、各インタフェースを、判定部101が判定した多重化構成の数のノードと定義し、図6から図9を用いて説明した様に、ノード間のリンクを定義して探索グラフを生成する。探索部103は、定義部102が定義した探索グラフを使用して、取り得る経路を探索して、ユーザへの表示のために探索した総ての経路を入出力部105に出力する。或いは、探索部103は、探索した総ての経路から所定の選択基準に基づき1つの経路を決定して、決定した経路をユーザへの表示のために入出力部105に出力する構成であっても良い。
【0022】
なお、本発明による経路探索装置は、コンピュータを上記経路探索装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10