特許第6084908号(P6084908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084908
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20170213BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   G10K11/16 D
   E01F8/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-156270(P2013-156270)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25983(P2015-25983A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 周示
(72)【発明者】
【氏名】清水 和久
(72)【発明者】
【氏名】狩野 堅太郎
【審査官】 武田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−334884(JP,A)
【文献】 特開2007−262669(JP,A)
【文献】 特開平10−227085(JP,A)
【文献】 特開2008−255722(JP,A)
【文献】 特開2009−175469(JP,A)
【文献】 特開2002−328679(JP,A)
【文献】 実開昭58−042900(JP,U)
【文献】 特開平09−256503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が板状をなし、騒音発生源を含む空間に面した状態で配される吸音パネルであって、内部に空隙を有する複数個のゼオライトの粒とゼオライトの粒同士を結合或いは近接させる結合部材とを有する吸音層と、前記吸音層を挟んで前記空間と反対側に位置し中実な内部構造を有するバックアップ層とを備え、前記吸音層の前記空間に面する吸音面がゼオライトの粒同士の間に空隙を有するポーラス状であり、さらに内部に空隙を有する前記ゼオライトの粒の少なくとも一部が直接前記空間に露出しており、そのゼオライトの粒の内部の空隙の中でも音のエネルギーを熱エネルギーに変換することができるように構成されていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記ゼオライトの粒がモルタルにより結合されている請求項1記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記バックアップ層を重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成している請求項1又は2記載の吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路、高架鉄道、水路等に好適に用いられる吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速道路や高架鉄道の側方に、外部への音の漏洩を抑制すべく、種々の吸音パネルを配することが知られている。
【0003】
しかして、高速道路や高架鉄道の側方に配される従来の吸音パネルは、概ね500Hz以下の低い周波数域では顕著な効果が得られないという弱点が存在していた。また、従来の構成の吸音パネルには、該吸音パネルを通過した騒音が外部に漏洩してしまうという弱点も存在していた。
【0004】
これらの弱点を補うべく、騒音源に対して逆位相の音源を別途付加して騒音を低減させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、このような技術を適用するにあたっては、逆位相の音源を付加するための装置を別途設ける必要がありコストがかさむといった別の問題が存在する。
【0005】
そこで、特別な装置を設けることなく、幅広い周波数域の騒音の外部への漏洩を抑制可能な吸音パネルを実現することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−66969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に着目し、特別な装置を設けることなく、幅広い周波数域の騒音の外部への漏洩を抑制可能な吸音パネルを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る吸音パネルは、以下に述べるような構成を有する。すなわち本発明に係る吸音パネルは、全体が板状をなし、騒音発生源を含む空間に面した状態で配される吸音パネルであって、内部に空隙を有する複数個のゼオライトの粒とゼオライトの粒同士を結合或いは近接させる結合部材とを有する吸音層と、前記吸音層を挟んで前記空間と反対側に位置し中実な内部構造を有するバックアップ層とを備え、前記吸音層の前記空間に面する吸音面がゼオライトの粒同士の間に空隙を有するポーラス状であり、さらに内部に空隙を有する前記ゼオライトの粒の少なくとも一部が直接前記空間に露出しており、そのゼオライトの粒の内部の空隙の中でも音のエネルギーを熱エネルギーに変換することができるように構成されている
【0009】
このようなものであれば、前記吸音面がポーラス状であるので吸音面自体の空隙の中で音のエネルギーを熱エネルギーに変換するだけでなく、吸音層を形成するゼオライトの粒が外部に露出しているのでこのゼオライトの粒内の空隙の中でも音のエネルギーを熱エネルギーに変換することができる。しかも、前記ゼオライトの粒内の空隙は吸音層自体の空隙とサイズが異なるので、より広い周波数域の音を吸収できる。さらに、前記吸音層を挟んで前記空間と反対側に中実な内部構造を有するバックアップ層を配しているので、このバックアップ層が、前記吸音層を通過した音の少なくとも一部を反射し、外部への漏洩を防ぐための構造体として機能する。これらが相俟って、特別な装置を用いることなく、外部への音の漏洩を幅広い周波数領域にわたって抑制することができる。さらに、このバックアップ層を備えることにより、吸音パネルの強度を確保することもできる。
【0010】
その上、ポーラス構造の粒子であるゼオライトを利用していることにより、このような吸音パネルを好適に実現できる
【0011】
前記ポーラス構造の粒子により吸音層を形成するための構成の一例として、このようなポーラス構造の粒子をモルタルにより結合してなるものが挙げられる。
【0012】
前記吸音層を通過した音の少なくとも一部を反射して外部への音の漏洩を抑制する効果、及び強度を確保する効果をより顕著に得ることができるようにするための構成の一例として、前記バックアップ層を重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成しているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特別な装置を設けることなく、幅広い周波数域の騒音の外部への漏洩を抑制可能な吸音パネルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る吸音パネルの使用態様を示す概略図。
図2】同実施形態に係る吸音パネルを示す横断面図。
図3】本発明の第二実施形態に係る吸音パネルを示す横断面図。
図4】本発明に係る吸音パネルの他の使用態様を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一実施形態を、図面を参照しつつ以下に述べる。
【0016】
本実施形態は、図1に示すように、支持構造体2に本発明の吸音パネル5を支持させて構成した側壁1であり、高速道路や高架鉄道等に好適に用いられる。
【0017】
前記支持構造体2は、基台3と、この基台3の上方に設けられ金属製の枠材を格子状に組み合わせてなるとともに前記吸音パネル5を支持する支持体4とを備えている。
【0018】
前記吸音パネル5は、図2に示すように、全体が板状をなし、騒音発生源を含む空間すなわち車線や軌道等の上方の空間Sに面した状態で配され、前記空間Sに面した吸音面5aを有する吸音層51と、この吸音層51を挟んで前記空間Sと反対側に位置するバックアップ層52とを備えている。
【0019】
前記吸音層51は、FRP等の樹脂製又は金属製の平面視正方形状の枠材511a及びこの枠材511aの高さ方向端部同士を接続する格子材511bを備えた結合部材である格子枠511内に、ポーラス状の粒子であるゼオライトの粒512を充填することにより形成している。本実施形態では、ゼオライトの粒512の直径は、前記格子枠511の格子材511bの格子間の寸法よりも大きいものを採用している。さらに、この吸音パネル5は、ゼオライトの粒512が直接前記空間Sに露出するように構成している。そして、この吸音層51の前記空間Sに露出する面すなわち吸音面5aは、ポーラス状である。
【0020】
前記バックアップ層52は、単位容積当たりの質量が比較的大きな骨材を利用した重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成しており、中実な内部構造を有する。このバックアップ層52は、図示しないボルト等により前記吸音層51に接続している。そして、このバックアップ層52を前記支持体4に支持させている。
【0021】
すなわち、本実施形態によれば、吸音面5aがポーラス状であるので、吸音面5a自体の空隙の中で音のエネルギーを熱エネルギーに変換することができる上に、吸音面5aを形成するゼオライトの粒512が内部に空隙を有しており、その空隙の中でも音のエネルギーを熱エネルギーに変換することができる。しかも、吸音面5aを形成する粒子内の空隙は吸音面5a自体の空隙とサイズが異なるので、より広い周波数域の音を吸収できる。また、前記吸音層51を挟んで前記空間Sと反対側に中実な内部構造を有するバックアップ層52を配しているので、このバックアップ層52が前記吸音層51を通過した音の少なくとも一部を反射し、外部への漏洩を防ぐための構造体として機能する。従って、本実施形態の吸音パネル5を採用することにより、特別な装置を設けることなく、幅広い周波数域の騒音の外部への漏洩を抑制可能な吸音パネルを実現することができる。さらに、前記バックアップ層52を備えることにより、この吸音パネル5の強度を確保することもできる。
【0022】
加えて、前記バックアップ層52を重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成しているので、このバックアップ層52により音を反射して空間Sの外部への音の漏洩を抑制する効果、及びこの吸音パネル5の強度を確保する効果をさらに顕著に得ることができる。
【0023】
次に、本発明の第二実施形態を、図面を参照しつつ以下に述べる。なお、上述した第一実施形態におけるものに対応する各部位には、同一の名称及び符号を付している。
【0024】
本発明の吸音パネル5も、図1に示すような高速道路の側壁や、高架鉄道の側壁として好適に用いられる。
【0025】
この吸音パネル5は、図3に示すように、全体が板状をなし、騒音発生源を含む空間すなわち車線や軌道等の上方の空間Sに面した状態で配され、前記空間Sに面した吸音面5aを有する吸音層51と、この吸音層51を挟んで前記空間Sと反対側に位置するバックアップ層52とを備えている。
【0026】
前記吸音層51は、複数個のポーラス構造の粒子であるゼオライトの粒子512と、ゼオライトの粒子512同士を結合させるための結合部材であるモルタル513とを備えている。この吸音層51の前記空間Sに面する面が前記吸音面5aであり、この吸音面5aはポーラス状である。そして、前記ゼオライトの粒子512が外部に露出している。
【0027】
前記バックアップ層52は、単位容積当たりの質量が比較的大きな骨材を利用した重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成しており、中実な内部構造を有する。このバックアップ層52は、図示しないボルト等により前記吸音層51に接続している。そして、このバックアップ層52を前記支持体4に支持させている。
【0028】
すなわち、本実施形態によっても、吸音面5aがポーラス状であるとともにゼオライトの粒子512が外部に露出しており、また、前記吸音層51を挟んで前記空間Sと反対側に中実な内部構造を有するバックアップ層52を配しているので、上述した第一実施形態における主要な効果、すなわち、特別な装置を設けることなく、従来の吸音パネルと比較してより広い周波数域の音を吸収し、さらに前記バックアップ層52によって前記吸音層51を通過した音の少なくとも一部を反射して外部への漏洩を防ぐことにより、幅広い周波数域の騒音の外部への漏洩を抑制することができるという効果、及び前記バックアップ層52によりこのような吸音パネル5の強度を確保することができるという効果を得ることができる。
【0029】
さらに本実施形態では、ゼオライト512の粒をモルタル513により結合することにより吸音層51を形成しているので、このような吸音層51を容易に板状に成形することができ、取り扱いを容易に行うことができる。
【0030】
加えて、本実施形態でも、前記バックアップ層52を重量モルタル又は重量コンクリートを利用して形成しているので、音を反射して外部への音の漏洩を抑制する効果、及びこの吸音パネル5の強度を確保する効果をさらに顕著に得ることができる。
【0031】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0032】
例えば、前述した第一及び第二実施形態では、ポーラス構造の粒子としてゼオライトを採用しているが、ゼオライト以外の多孔質粒子を利用して吸音面を形成してももちろんよい。また、ゼオライトを用いる場合も、天然ゼオライト又は人工ゼオライトのいずれを用いてもよい。
【0033】
また、前述した第一及び第二実施形態では、金属製の枠材を格子状に組み合わせてなる支持体に本発明の吸音パネルを支持させているが、本発明の吸音パネルをコンクリート等により形成した側壁等の既設の構造体の表面に装着するようにしてももちろんよい。
【0034】
加えて、前述した第一及び第二実施形態では、重量モルタル又は重量コンクリートを利用してバックアップ層を形成しているが、吸音層により吸収されなかった音の少なくとも一部を反射可能なものであれば、金属板等、他の材料を用いてバックアップ層を形成してもよい。
【0035】
さらに、この吸音パネルは、前述した第一及び第二実施形態のように高速道路等の側壁として使用するだけでなく、高速道路や高架鉄道の路盤の底壁の上面に設けてもよい。
【0036】
そして、この吸音パネルは、管渠の内面を構成する部材として使用することもできる。すなわち、図4に示すように、ボックスカルバートX1を複数敷設することにより形成した管渠において、ボックスカルバートX1の底版X6及び側版X7の内面すなわち水路SSに向かう吸音面X5aにこのようなゼオライトを含む吸音パネルX5を配することもできる。なお、この吸音パネルX5は、上述した第一又は第二実施形態に係る吸音パネルと同様の構成を有する。すなわち、図示は省略するが、複数個のポーラス構造の粒子であるゼオライトの粒と、ゼオライトの粒同士を結合或いは近接させる結合部材とを有する吸音層と、前記吸音層を挟んで前記水路SSと反対側に位置し中実な内部構造を有するバックアップ層とを備え、この吸音層の水路SSに面する面である吸音面X5aがポーラス状であり、前記ゼオライトの粒が外部に露出している。このようにボックスカルバートX1を複数敷設することにより形成した管渠の内面に本発明の吸音パネルX5を配すると、ゼオライトの粒が外部に露出しているので、ゼオライトの粒の内部の空隙に各種汚染物質を吸着させ、この管渠の内部を流通する水の浄化や植生の確保を図ることができる。加えて、この吸音パネルX5は、ゼオライトの粒が外部に露出しているので、管渠の内部を放射性物質が流通する場合にこの放射性物質をゼオライトの粒に吸着させて放射性物質を除去することもできる。なお、図4においてはボックスカルバートX1を地下に埋設して形成した暗渠を示しているが、上方に開口したコンクリート製構造物を複数敷設することにより形成した開渠を構成するコンクリート製構造物の内面にこのような吸音パネルX5を配してももちろんよい。開渠を構成するコンクリート製構造物の内面にこのような吸音パネルX5を配した場合、吸音パネルX5により内部を水が流通する際の音の外部への漏洩を抑制することもできる。また、ボックスカルバートに限らず、ヒューム管等、管渠を形成可能な他のコンクリート製構造物の内面にこのようなパネルを配してももちろんよい。加えて、自然の河川の川底にこのようなパネルを配してももちろんよい。
【0037】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0038】
5…吸音パネル
5a…吸音面
51…吸音層
511…結合部材(格子枠)
512…ポーラス構造の粒子(ゼオライトの粒)
513…結合部材(モルタル)
X5…吸音パネル
X5a…吸音面
図1
図2
図3
図4