(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084915
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】セラミックス部材と金属部材との接合体及びその製法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20170213BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L23/08 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-226645(P2013-226645)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-91676(P2014-91676A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/722907
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 智之
(72)【発明者】
【氏名】川尻 哲也
【審査官】
伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−273736(JP,A)
【文献】
特開平01−226777(JP,A)
【文献】
特開2003−212669(JP,A)
【文献】
特開平09−283671(JP,A)
【文献】
特開2000−286038(JP,A)
【文献】
特開2012−216786(JP,A)
【文献】
特開2013−193935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
H01L 23/08
H01L 21/683− 21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材に設けた凹部に、Ni被膜、Au被膜又はNi被膜を下地としてその上にAu被膜を形成した積層被膜を有するMo又はTi製の金属部材を接合層を介して接合した接合体であって、
前記接合層は、Au,Ge,Ag,Cu及びTiを含有し、前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面と接しており、
前記接合層のうち前記セラミックス部材との接合界面には、Tiがリッチに存在しており、
前記接合体を前記接合体の厚み方向に切断したとき、前記接合層の断面積に占める気孔の断面積の総和の割合(気孔率)が0.1〜15%である
接合体。
【請求項2】
Tiは、前記接合層の内部に存在する前記気孔の周囲に凝集している、
請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
(a)凹部が設けられたアルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材を用意する工程と、
(b)前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面にAg−Cu−Tiペーストを塗布し、真空雰囲気で800℃〜900℃に加熱することにより、前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面にメタライズ層を形成する工程と、
(c)前記メタライズ層を形成した前記凹部の底面にAu−Geシートをセットし、その上にNi被膜、Au被膜又はNi被膜を下地としてその上にAu被膜を形成した積層被膜を有するMo又はTi製の金属部材をセットし、真空雰囲気で360〜450℃に加熱することにより、前記メタライズ層と前記Au−Geシートとが渾然一体となった接合層が前記金属部材と前記セラミックス部材との間に形成された接合体を得る工程と、
を含み、
前記接合体は、前記接合体を前記接合体の厚み方向に切断したとき、前記接合層の断面積に占める気孔の断面積の総和の割合(気孔率)が0.1〜15%である、
接合体の製法。
【請求項4】
前記工程(b)では、前記メタライズ層の厚みを5〜75μmとする、
請求項3に記載の接合体の製法。
【請求項5】
前記工程(b)では、前記Ag−Cu−TiペーストはTiを1.50〜2.10wt%含有している、
請求項3又は4に記載の接合体の製法。
【請求項6】
前記接合体は、請求項1又は2に記載の接合体である、
請求項3〜5のいずれか1項に記載の接合体の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス部材と金属部材との接合体及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス部材と金属部材との接合体としては、金属部材の端部とセラミックス部材とが接合部を介して接合されたものが知られている(特許文献1)。この接合体では、接合部が、セラミックス部材上に形成されているメタライズ層と、メタライズ層と金属部材の端部との間に介在しているロウ接合層とを備えている。こうした接合体は、以下のようにして製造される。すなわち、まず、AlN焼結体製で円盤状のセラミックス部材の接合面上に、Cu−Al−Si−Tiを含むリング状の第1ロウ材を設置する。続いて、この第1ロウ材を1050℃で5分間真空雰囲気で加熱し、メタライズ層を形成する。続いて、メタライズ層上にAg−Cuを含むリング状の第2ロウ材を設置し、その上に筒状の金属部材の端面を設置し、金属部材上におもりを設置する。これを800℃で5分間真空雰囲気で加熱し、ロウ接合層を形成する。こうすることにより得られた接合体は、ヘリウムリーク量がほとんどなく、熱サイクル後においても、クラックはなくヘリウムリーク量はほとんどない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−219578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした接合体では、十分な強度が得られないことがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミックス部材と金属部材とを接合した接合体の強度を十分高くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接合体は、
アルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材に設けた凹部に、Ni被膜、Au被膜又はNi−Au被膜(下地がNi)を有するMo又はTi製の金属部材を接合層を介して接合した接合体であって、
前記接合層は、Au,Ge,Ag,Cu及びTiを含有し、前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面と接しており、
前記接合層のうち前記セラミックス部材との接合界面には、Tiがリッチに存在しており、
前記接合体を前記接合体の厚み方向に切断したとき、前記接合層の断面積に占める前記気孔の断面積の総和の割合(気孔率)が0.1〜15%
のものである。
【0007】
この接合体によれば、セラミックス部材と金属部材とを接合した接合体の強度が十分高くなる。その理由は、以下のように推察される。まず、アルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材と、Ni被膜、Au被膜又はNi−Au被膜(下地がNi)を有するMo又はTi製の金属部材との接合には、Au,Ge,Ag,Cu及びTiを含有する接合層が好適だと考えられる。また、接合層のうちセラミックス部材との接合界面にTiがリッチに存在していることから、その接合界面においてTiとセラミックスとが反応して接合層を繋ぐ役割を果たしていると考えられる。更に、気孔率が0.1〜15%であるため、初期においても熱サイクル後においても、強度が高く、しかもクラックが発生するのを防止することができる。なお、気孔率が0.1%を下回るとクラックが発生したり熱サイクル後の強度が初期に比べて大きく低下したりするため好ましくない。また、気孔率が15%を上回ると強度が極端に低くなるため好ましくない。
【0008】
本発明の接合体は、Tiは、前記接合層の内部に存在する気孔の周囲に凝集していることが好ましい。このようなTiの凝集は、接合体を接合体の厚み方向に切断したときの切断面のTiマッピング像から確認することができる。
【0009】
本発明の接合体の製法は、
(a)凹部が設けられたアルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材を用意する工程と、
(b)前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面にAg−Cu−Tiペーストを塗布し、真空雰囲気で800℃〜900℃に加熱することにより、前記凹部の側面の少なくとも一部及び底面にメタライズ層を形成する工程と、
(c)前記メタライズ層を形成した前記凹部の底面にAu−Geシートをセットし、その上にNi被膜、Au被膜又はNi−Au被膜(下地がNi)を有するMo又はTi製の金属部材をセットし、真空雰囲気で360〜450℃に加熱することにより、前記メタライズ層と前記Au−Geシートとが渾然一体となった接合層を前記金属部材と前記セラミックス部材との間に形成する工程と、
を含むものである。
【0010】
この接合体の製法によれば、得られる接合体の強度が十分大きくなる。また、この製法は、上述した接合体を製造するのに適している。
【0011】
本発明の接合体の製法において、前記工程(b)では、前記メタライズ層の厚みを5〜75μmとすることが好ましい。こうすれば、接合体の強度をより大きくすることができる。また、セラミックス部材にクラックが発生するのを防止することができる。
【0012】
本発明の接合体の製法において、前記工程(b)では、前記Ag−Cu−TiペーストはTiを1.50〜2.10wt%含有していることが好ましい。Tiの含有率が下限値を下回ると、得られる接合体の強度が初期に比べて熱サイクル後に大きく低下したり、熱サイクル後にクラックが発生したりする。また、Tiの含有率が上限値を上回ると、得られる接合体の強度が初期でも熱サイクル後でも小さくなってしまう(クラックは発生しない)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】代表例の接合体を接合体の厚み方向に切断したときの断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の接合体10の製造工程図である。
【0015】
本実施形態の接合体10は、
図1(d)に示すように、板状のアルミナ又は窒化アルミニウムのセラミックス部材12に設けた凹部12aに、Ni被膜、Au被膜又はNi−Au被膜(下地がNi)を有するMo又はTi製の端子14を接合層16を介して接合したものである。接合層16は、Au,Ge,Ag,Cu及びTiを含有し、凹部12aの側面の少なくとも一部(ここでは全部)及び底面と接している。この接合層16のうちセラミックス部材12との接合界面には、Tiがリッチに存在している。また、接合体10を接合体10の厚み方向に切断したとき、接合層16の断面積に占める気孔の断面積の総和の割合(気孔率)が0.1〜15%である。
【0016】
なお、気孔は、接合層16の断面を2値化処理したときの暗部として求めることができる。2値化処理は、例えば、接合層16の断面全体の画素につき輝度のヒストグラムを作成し、ヒストグラムに現れる2つの山の間(谷)の部分の輝度値を閾値に設定し、閾値より小さい輝度の画素を0、それ以上の輝度の画素を255とすることによって行うことができる。後述の実施例では、輝度値の閾値を80として2値化処理を行い、気孔率を算出した。
【0017】
こうした接合体10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、凹部12aを有するセラミックス部材12を用意する(
図1(a)参照)。次に、凹部12aの側面の少なくとも一部及び底面にAg−Cu−Tiペースト20を塗布し、塗布完了後乾燥し、真空雰囲気で800〜900℃に加熱することにより焼き付けを行う(
図1(b)参照)。その結果、凹部12aの側面の少なくとも一部及び底面にメタライズ層22が形成される。焼き付け時の温度が800℃未満だと、ペースト材の反応性が悪くなるため好ましくなく、900℃を超えると、反応生成物が増加し、熱膨張差の増加やヤング率の増加により残留応力が大きくなり、クラックの発生や強度低下の原因になるため好ましくない。続いて、メタライズ層22が形成された凹部12aの底面にAu−Geシート24をセットする(
図1(c)参照)。そして、Au−Geシート24の上に端子14を載せ、端子14の上に図示しない錘を載せ、その状態で真空雰囲気で360〜450℃に加熱する。これにより、メタライズ層22とAu−Geシート24とが渾然一体となった接合層16が端子14とセラミックス部材12との間に形成される。その結果、接合体10が得られる(
図1(d)参照)。加熱時の温度が360℃未満だと、ロウ材(Au−Geシート)の反応性が悪くなるため好ましくなく、450℃を超えると、反応生成物が増加し、熱膨張差の増加やヤング率の増加により残留応力が大きくなり、クラックの発生や強度低下の原因になるため好ましくない。
【0018】
以上説明した接合体10によれば、セラミックス部材と金属部材とを接合した接合体の強度が十分高くなる。その理由は、以下のように推察される。まず、セラミックス部材12と端子14との接合には、Au,Ge,Ag,Cu及びTiを含有する接合層16が好適だと考えられる。また、接合層16のうちセラミックス部材12との接合界面にTiがリッチに存在していることから、その接合界面においてTiとセラミックスとが反応して接合層16をセラミックス部材12に強く繋ぐ役割を果たしていると考えられる。更に、気孔率が0.1〜15%であるため、初期においても熱サイクル後においても、強度が高く、しかもクラックが発生するのを防止することができる。
【0019】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0020】
例えば、上述した実施形態では、セラミックス部材12として内部に電極を埋設したものを用い、凹部12aの底面にその電極と接続された導電部材を露出させておき、その導電部材に接合層16を介して端子14を接合してもよい。この場合、端子14は、電極への給電のために用いられる。なお、電極としては、例えばヒーター電極(抵抗発熱体)や静電チャック用電極、プラズマ発生用電極などが挙げられる。
【実施例】
【0021】
[代表例]
直径6mm、深さ0.5mmの凹部(端子穴)が設けられたアルミナセラミックス部材を用意した。このアルミナセラミックス部材の凹部の周りをマスキングテープでマスキングし、その凹部の側面及び底面にディスペンサー装置によりAg−Cu−Tiペーストを塗布した。塗布完了後、10分自然放置し、その後、クリーンオーブンで120℃(物温)で1時間乾燥した。マスキングテープをはがし、焼成温度850℃、焼成時間10分、真空度5×10
-5Torr以下で焼き付けを行った。これにより、凹部の側面及び底面にAg−Cu−Tiのメタライズ層が形成された。メタライズ層の膜厚は30μmであった。なお、Ag−Cu−TiペーストのTi含有率は1.7wt%とした。
【0022】
その後、凹部の底面に直径5.5mm、厚み0.15mmのAu−Geシートをセットした。その上に、Ni被膜を有するMo製の端子(直径5.8mm、厚さ6mm)をセットし、錘を載せてから水平出し及び位置合わせを行った。その後、焼成温度400℃、焼成時間10分、真空度5×10
-5Torr以下で処理した。これにより、メタライズ層とAu−Geシートとが渾然一体となった接合層が端子とアルミナセラミックス部材との間に形成された接合体を得た。接合層は、凹部の側面及び底面と接していた。
【0023】
接合層の構成元素をEPMAで解析したところ、Au,Ge,Ag,Cu及びTiが含まれていた。また、接合層のうちアルミナセラミックス部材との接合界面には、Tiがリッチに存在していた。具体的には、接合体を接合体の厚さ方向に切断した断面のTiマッピング像を見たところ、アルミナセラミックス部材と接合層との界面にTi層があり、気孔周辺にTiの凝集が見られた。アルミナセラミックス部材と接合層との界面にTi層があるのは、Tiがアルミナと反応したためであり、このTi層はアルミナセラミックス部材と接合層とを繋ぐ役割を果たしていると考えられる。更に、接合層には、小さな気孔が分布しており、気孔率は5.3%であった。気孔率は、接合層の断面を2値化処理したときの暗部を気孔の断面とし、接合層の断面積に対する気孔の断面積の総和の割合とした。接合層の断面写真を
図2に示す。2値化処理は、HALCON11.0を用いて行った(HALCONはMVTec Software GmbH の登録商標)。
【0024】
[メタライズ層の膜厚について]
上述した代表例において、凹部にメタライズ層を形成したときの膜厚が表1に示す値となるように接合体を作製した。作製した接合体の破断強度を測定すると共に、接合直後の接合体のアルミナセラミックス部材にクラックが見られるか否かを検査した。その結果を表1に示す。なお、破断強度は、引張破断荷重と同義であり、アルミナセラミックス部材が下になるように接合体を支持台に上下動しないようにしっかりと固定し、端子の上面から垂直下向きに設けられたネジ穴に引張棒の先端をねじ込み、この引張棒に垂直上向きの荷重を加え、接合層が破断したときの荷重を破断強度とした。
【0025】
表1において、クラックの指標は、○:クラックは見られない、△:クラックは見られるものの、程度は軽微であり接合特性に影響を与えない、×:クラックが見られ、致命的な影響を及ぼす、を意味する。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、凹部に形成されたメタライズ層の膜厚が2〜80μmでは、破断強度が50kgf以上と高く、クラックも見られなかった。特に、その膜厚が5〜75μmのとき、破断強度がより高くなった(120kgf以上)。なお、上述した代表例において、Ag−Cu−Tiペーストを塗布する代わりに、Ag−Cu−Tiシートを用いて底面のみにメタライズ層を形成したところ、メタライズ層の膜厚が25μmであってもクラックが見られた。以上のことから、メタライズ層は、凹部の底面だけでなく側面の少なくとも一部に形成されている必要があることがわかった。また、メタライズ層の膜厚は、2〜80μm、好ましくは5〜75μmのときに破断強度が高くクラックも見られないことがわかった。メタライズ膜厚が2μmを下回ると、アルミナセラミックス部材に形成されるメタライズ層が不十分となり強度が低下し、反対にメタライズ膜厚が80μmを超えるとクラックが発生し強度が低下する。なお、メタライズ層の膜厚が2〜80μmの場合には、接合層とアルミナセラミックス部材との接合界面にTiがリッチに存在していた。
【0028】
[気孔率について]
上述した代表例において、気孔率が表1に示す0〜35%となるようにAg−Cu−Tiペースト中のTi含有率を調整して接合体を作製した。作製した当初の接合体の破断強度とクラックの有無を測定した。また、熱サイクル試験後の接合体の破断強度とクラックの有無も測定した。熱サイクル試験は、室温から200℃まで加熱したあと室温に冷却する操作を1サイクルとし、これを1000サイクル繰り返した。その結果を表2に示す。
【0029】
なお、Ti含有率0%のペーストを用いた例は1回行い、Ti含有率0.5%、1.5%のペーストを用いた例は2回ずつ行い、それ以外のペーストを用いた例は3回ずつ行った。
【0030】
表2において、クラックの指標は、○:クラックは見られない、△:クラックは見られるものの、程度は軽微であり接合特性に影響を与えない、×:クラックが見られ、致命的な影響を及ぼす、を意味する。
【0031】
【表2】
【0032】
表2から明らかなように、気孔率が0.1〜15%の接合層を持つ接合体(主にTi含有率1.50〜2.10wt%のAg−Cu−Tiペーストを用いて製造した接合体)は、初期及び熱サイクル後の破断強度がいずれも120kgf以上と高く、初期及び熱サイクル後のいずれにおいてもクラックは見られなかった。また、気孔率が0.1〜15%の接合層を持つ接合体には、代表例と同様、接合層とアルミナセラミックス部材との接合界面にTiがリッチに存在していた。更に、気孔率が0.1〜15%の接合層には、代表例と同様、Au,Ge,Ag,Cu及びTiが含まれていることを確認した。
【0033】
また、上述した代表例において、アルミナセラミックス部材の代わりに窒化アルミニウムセラミックス部材、Ni被膜を有するMo端子の代わりにAu被膜を有するMo端子を用い、Ag−Cu−TiペーストのTi含有率を1.8wt%とした以外は、上述した代表例と同様にして接合体を作製した。なお、メタライズ層の厚みは30μmであった。この接合体も、メタライズ層とAu−Geシートとが渾然一体となった接合層が端子とセラミックス部材との間に形成されていた。また、その接合層のうちセラミックス部材との接合界面には、Tiがリッチに存在していた。気孔率は4.1%であった。この接合体について、作製した当初の破断強度と熱サイクル試験後の破断強度は、それぞれ147kgf、144kgfであり、十分な強度を有していた。また、作製した当初と熱サイクル試験後のいずれにおいてもクラックは見られなかった。このような結果が得られた理由としては、窒化アルミニウムセラミックスもアルミナセラミックスと同様に、接合層とセラミックス部材との接合界面にTiがリッチに存在していること、またAu被膜については、接合層との濡れ性がNi被膜と同様によかったことが挙げられる。
【0034】
また、上述した代表例において、Ni被膜を有するMo端子の代わりにNi被膜を有するTi端子を用い、Ag−Cu−TiペーストのTi含有率を1.8wt%とした以外は、上述した代表例と同様にして接合体を作製した。なお、メタライズ層の厚みは30μmであった。この接合体も、メタライズ層とAu−Geシートとが渾然一体となった接合層が端子とセラミックス部材との間に形成されていた。また、その接合層のうちセラミックス部材との接合界面には、Tiがリッチに存在していた。気孔率は3.8%であった。この接合体について、作製した当初の破断強度と熱サイクル試験後の破断強度は、それぞれ 148kgf、146kgfであり、十分な強度を有していた。また、作製した当初と熱サイクル試験後のいずれにおいてもクラックは見られなかった。
【符号の説明】
【0035】
10 接合体、12 セラミックス部材、12a 凹部、14 端子、16 接合層、20 Ag−Cu−Tiペースト、22 メタライズ層、24 Au−Geシート。