(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6084966
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】盗難防止用タグ、信号発信装置およびクリップ機構
(51)【国際特許分類】
G08B 13/22 20060101AFI20170213BHJP
G08B 13/02 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
G08B13/22
G08B13/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-508915(P2014-508915)
(86)(22)【出願日】2012年4月2日
(86)【国際出願番号】JP2012002279
(87)【国際公開番号】WO2013150561
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】594127499
【氏名又は名称】マイティキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100168284
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 英夫
(72)【発明者】
【氏名】辰己 一道
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 直
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 覚
【審査官】
永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−209896(JP,A)
【文献】
特開平11−283131(JP,A)
【文献】
特開2001−023052(JP,A)
【文献】
特開平06−110390(JP,A)
【文献】
特開2004−173846(JP,A)
【文献】
特開昭60−035501(JP,A)
【文献】
特開平10−027285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盗難防止用タグであって、
警報器を内蔵する本体部と、
前記本体部と接続可能な第1のリード線および第2のリード線を有するクリップ部と、を備え、
前記クリップ部は、
対象物を挟持する挟持部と、
前記挟持部により前記対象物が挟持されたことに応じて押下される釦と、
前記押下された釦を収納する収納部と、
前記収納部と接続する第1の導体端部および第2の導体端部とを備え、
前記釦が押下されて前記収納部に収納されたことに応じて前記第1の導体端部および前記第2の導体端部が導通することにより、前記本体部と接続された前記第1のリード線および前記第2のリード線が導通状態を形成し、
前記警報器は、前記本体部が前記導通状態の解除を検知した場合に警報を出力し、
前記挟持部は、
回動部と、
前記回動部を軸に回動可能なつまみ部と、
前記つまみ部と接している板金部と、
前記板金部と少なくとも一部が接触する第1の挟持部であって、前記回動部を軸に前記つまみ部が回動した場合における前記つまみ部の一端の軌跡に沿った湾曲部を有する、前記第1の挟持部と、
前記第1の挟持部と対になって前記対象物を挟持する第2の挟持部とを備え、
前記回動部を軸として前記板金部に向けて前記つまみ部が傾倒することにより、前記つまみ部の一端と接している前記板金部が押下されて前記湾曲部へ向けて屈曲し、前記板金部と接触する前記第1の挟持部が前記第2の挟持部へ接近して挟持状態を形成し、
前記クリップ部は、前記本体部に対して着脱自在であり、前記本体部と接続可能なリード線を有するワイヤ部と交換可能であることを特徴とする盗難防止用タグ。
【請求項2】
前記クリップ部は、
前記第1のリード線と前記第1の導体端部との間に設けられた第1の中継部材と、
前記第2のリード線と前記第2の導体端部との間に設けられた第2の中継部材とをさらに備え、
前記第1のリード線および前記第2のリード線はそれぞれ、前記第1の中継部材および前記第2の中継部材を介して前記第1の導体端部および前記第2の導体端部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の盗難防止用タグ。
【請求項3】
前記クリップ部は、前記第1のリード線および前記第2のリード線をガイドするガイド部材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の盗難防止用タグ。
【請求項4】
前記第1のリード線および前記第2のリード線はステンレス製であり、前記第1の中継部材および前記第2の中継部材は、りん青銅・すずメッキ製であることを特徴とする請求項2に記載の盗難防止用タグ。
【請求項5】
前記つまみ部の傾倒に応じて前記つまみ部と前記板金部との接触部位が前記板金部上でシフトしていき、前記つまみ部を一定の角度以上傾倒すると前記つまみ部と前記板金部との接触部位が所定位置を超え、前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とが挟持状態を形成することを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の盗難防止用タグ。
【請求項6】
前記つまみ部の一端における前記板金部との接触面は、前記第1の挟持部および前記第2の挟持部が前記対象物を挟持する挟持状態において、前記第1の挟持部の前記湾曲部に沿って前記板金部と略全体が接触することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の盗難防止用タグ。
【請求項7】
前記第1の挟持部および前記第2の挟持部が前記対象物を挟持しない非挟持状態において、前記板金部と前記第1の挟持部の前記湾曲部との間に間隙が形成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の盗難防止用タグ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の盗難防止用タグへ信号を送信する信号発信装置であって、
前記本体部が前記導通状態の解除を検知した場合に前記警報器が警報を出力するように、前記本体部をセットするためのセット信号を送信するセット信号送信手段と、
前記本体部が前記導通状態の解除を検知した場合でも前記警報器が警報を出力しないように、前記本体部のセットを解除するための解除信号を送信する解除信号送信手段と、
を備えることを特徴とする信号発信装置。
【請求項9】
盗難防止用タグの本体部と接続可能なクリップ機構であって、
前記本体部と接続可能な第1のリード線および第2のリード線と、
対象物を挟持する挟持部と、
前記挟持部により前記対象物が挟持されたことに応じて押下される釦と、
前記押下された釦を収納する収納部と、
前記収納部と接続する第1の導体端部および第2の導体端部とを備え、
前記釦が押下されて前記収納部に収納されたことに応じて前記第1の導体端部および前記第2の導体端部が導通することにより、前記本体部と接続された前記第1のリード線および前記第2のリード線が導通状態を形成し、
前記挟持部は、
回動部と、
前記回動部を軸に回動可能なつまみ部と、
前記つまみ部と接している板金部と、
前記板金部と少なくとも一部が接触する第1の挟持部であって、前記回動部を軸に前記つまみ部が回動した場合における前記つまみ部の一端の軌跡に沿った湾曲部を有する、前記第1の挟持部と、
前記第1の挟持部と対になって前記対象物を挟持する第2の挟持部とを備え、
前記回動部を軸として前記板金部に向けて前記つまみ部が傾倒することにより、前記つまみ部の一端と接している前記板金部が押下されて前記湾曲部へ向けて屈曲し、前記板金部と接触する前記第1の挟持部が前記第2の挟持部へ接近して挟持状態を形成し、
前記クリップ機構は、前記本体部に対して着脱自在であり、前記本体部と接続可能なリード線を有するワイヤ部と交換可能であることを特徴とするクリップ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗において商品棚等に置かれた商品の盗難を防止する盗難防止用タグ、盗難防止用タグへ指示信号を送信する信号発信装置、および商品を挟持するためのクリップ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、店舗において商品の盗難を防止するために盗難防止用タグを商品に取り付けておき、その商品から盗難防止用タグを不正に取り外したり、盗難防止用タグが取り付けられた商品を店舗から運び出したりした場合に、警報を発して盗難の発生を報知する技術が広く用いられている。
【0003】
これは、盗難防止用タグが不正な取り外し状態を検知したりあるいは店舗の出入口等に設けられたEAS(Electric Article Surveillance)ゲートから発せられる信号を検知したりすることによって、盗難防止用タグ自身あるいはEASゲートなどの他の装置が警報を発するものである。
【0004】
特許文献1では、盗難防止用タグ本体の1つの挿入孔と一端が接続されたリード線を盗難防止対象物に通して、当該リード線の他端を盗難防止用タグ本体の他の挿入孔に接続することにより取り付けを行うワイヤー式の盗難防止用タグが開示されている。
【0005】
特許文献2では、盗難防止対象物が服地である場合、取付具の棒状部を、服地を貫通した状態で盗難防止用タグ本体に差し込み接続することにより取り付けを行うピン式の盗難防止用タグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−109132号公報
【特許文献2】特開平10−241063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤー式の盗難防止用タグでは、盗難防止対象物にリード線を通すことのできる部位が存在しない場合には、盗難防止対象物へ盗難防止用タグを取り付けることができないという課題がある。また、特許文献2に記載のピン式の盗難防止用タグでは、盗難防止対象物の服地にピンを挿入可能な孔がない場合には孔を開けなければならず、盗難防止対象物の品質に影響を及ぼす可能性があるという課題がある。
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、盗難防止対象物にリード線を通すことのできる部位が存在しない場合や、盗難防止対象物にピンを挿入可能な孔がない場合であっても、盗難防止対象物の品質を維持した状態で取り付けを可能にする盗難防止用タグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明に係る盗難防止用タグは、
警報器を内蔵する本体部と、
前記本体部と接続可能な第1のリード線および第2のリード線を有するクリップ部と、を備え、
前記クリップ部は、
対象物を挟持する挟持部と、
前記挟持部により前記対象物が挟持されたことに応じて押下される釦と、
前記押下された釦を収納する収納部と、
前記収納部と接続する第1の導体端部および第2の導体端部とを備え、
前記釦が押下されて前記収納部に収納されたことに応じて前記第1の導体端部および前記第2の導体端部が導通することにより、前記本体部と接続された前記第1のリード線および前記第2のリード線が導通状態を形成し、
前記警報器は、前記本体部が前記導通状態の解除を検知した場合に警報を出力し、
前記挟持部は、
回動部と、
前記回動部を軸に回動可能なつまみ部と、
前記つまみ部と接している板金部と、
前記板金部と少なくとも一部が接触する第1の挟持部であって、前記回動部を軸に前記つまみ部が回動した場合における前記つまみ部の一端の軌跡に沿った湾曲部を有する、前記第1の挟持部と、
前記第1の挟持部と対になって前記対象物を挟持する第2の挟持部とを備え、
前記回動部を軸として前記板金部に向けて前記つまみ部が傾倒することにより、前記つまみ部の一端と接している前記板金部が押下されて前記湾曲部へ向けて屈曲し、前記板金部と接触する前記第1の挟持部が前記第2の挟持部へ接近して挟持状態を形成
し、
前記クリップ部は、前記本体部に対して着脱自在であり、前記本体部と接続可能なリード線を有するワイヤ部と交換可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、盗難防止対象物にリード線を通すことのできる部位が存在しない場合や、盗難防止対象物にピンを挿入可能な孔がない場合であっても、盗難防止対象物の品質を維持した状態で盗難防止用タグの取り付けが可能になる。
【0011】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付の図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施の形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの外観図。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの開状態を示す図。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの閉状態を示す図。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの機能構成図。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る信号発信装置の機能構成図。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部の内部構成を示す図。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部の内部構成を示す図。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの使用例を示す図。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグの使用例を示す図。
【
図6】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部の他の構成例を示す図。
【
図7】本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部の他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
まず
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグ1について説明する。盗難防止用タグ1は、タグ本体部10と、クリップ部20(クリップ機構)とを備える。タグ本体部10は、リード端子挿入孔11と、リード端子挿入孔12と、発光部13と、取り外し釦14と、取り外し孔15とを有している。また不図示の警報器を内蔵している。またクリップ部20は、第1の挟持部21と、第2の挟持部22と、板金部23と、つまみ部24と、回動部25と、第1のリード線26と、第2のリード線27とを有している。これら第1の挟持部21および第2の挟持部22により1つの挟持部を形成する。クリップ部20は、第1のリード線26および第2のリード線27を介してタグ本体部10と接続可能である。
【0014】
第1の挟持部21は凸部21aおよび釦逃がし部21bを有しており、第2の挟持部22は凹部22aおよび釦22bを有している。部分球面形状を有する凸部21aは、例えば硬度90程度のポリエステルエラストマーから成り、部分球面形状を有する凹部22aに当接して嵌合状態を形成する。盗難防止対象物を挟持するための凸部21aおよび凹部22aは、共に部分球面形状であり、滑らかな面である。したがって、盗難防止対象物に盗難防止用タグ1を長時間取り付けた場合であっても、挟持部分が凸凹のある面形状である場合と比較して、盗難防止対象物に跡が付きにくい。そのため商品価値を劣化させるのを防止することができる。さらには、凸部21aがポリエステルエラストマー製であるので、盗難防止対象物の商品価値を劣化させることをさらに防止できる。なお、本実施形態では凸部21aはポリエステルエラストマー製であるが、これに限らず、合成ゴム、ポリイソブチレン等の他のエラストマーを用いてもよい。なお釦22bは、不図示の弾性部材によって付勢されており、その先端部分が凸部21aに向けて突出している。
【0015】
凸部21aおよび凹部22aを共に部分球面形状に形成することによって、第1の挟持部21と第2の挟持部22との間に薄い板状のカードなどを差し込んで、釦22bが押下された状態を保ちつつ(すなわち警報を発することなく)、盗難対象物から盗難防止用タグ1を取り外すといった盗難行為を防止できる。部分球面形状にするのは、凸部21aおよび凹部22aが共に平面形状であると、上述したような不正な差し込み操作によって、警報を発することなく盗難が発生してしまう可能性があるためである。また凸部21aをエラストマー製にすることで、カード等を差し込む際に摩擦力が発生するので、不正な差し込み操作をより効果的に防止することができる。
【0016】
盗難防止用タグ1のユーザがつまみ部24をつまみ、回動部25を軸として板金部23に向けて当該つまみ部24を傾倒することにより、つまみ部24の一端と接している板金部23が押下されて屈曲する。これに伴って第1の挟持部21が第2の挟持部22へ接近する。また、この傾倒に応じて、つまみ部24と板金部23との接触部位が、板金部23上で、第1の挟持部21側から第1のリード線26および第2のリード線27側へとシフトしていく。そして、つまみ部24を一定の角度以上傾倒すると、つまみ部24と板金部23との接触部位が所定位置を超え、逆につまみ部24が第1の挟持部21を第2の挟持部22側へ付勢する付勢力を生成する。
【0017】
この付勢力によって第1の挟持部21の凸部21aが第2の挟持部22の凹部22aに当接する。これによりクリップ部20は閉状態を形成する。一方、逆に閉状態からユーザがつまみ部24をつまみ、回動部25を軸として逆方向へ傾倒を戻すことにより、第1の挟持部21の凸部21aが第2の挟持部22の凹部22aから離間し、クリップ部20は開状態を形成する。開状態が
図2Aに、閉状態が
図2Bにそれぞれ示される。
【0018】
第1の挟持部21と第2の挟持部22との間に盗難防止対象物を配置してユーザが閉状態を形成すると、釦22bが押下されて第1のリード線26と第2のリード線27とがクリップ部20内部において導通する。一方、第1の挟持部21と第2の挟持部22との間に盗難防止対象物を配置せずにユーザが閉状態を形成したとしても、釦逃がし部21bの存在により釦22bが押下されず、導通しない。すなわち、釦逃がし部21bを設けることによって盗難防止対象物を挟持せずに閉状態を形成して保管しておくことができるので、不要な場合にまで導通させてしまうことを防止できる。このリード線の導通状態は、盗難防止用タグ1が盗難防止対象物へ取り付けられたことを示す取付状態に相当することになる。
【0019】
図1、
図2A、
図2Bに示されるように、第1のリード線26の端子および第2のリード線27の端子は、リード端子挿入孔11およびリード端子挿入孔12の何れかにそれぞれ挿入されるが、本実施形態では第1のリード線26の端子がリード端子挿入孔11へ挿入され、第2のリード線27の端子がリード端子挿入孔12へ挿入される場合について説明する。リード端子挿入孔12に挿入された第2のリード線27の端子は、リード端子挿入孔12側に設けられた取り外し釦14を挿入方向に押下することによりその接続状態が解除され、取り外し可能になる。一方、リード端子挿入孔11に挿入された第1のリード線26の端子は、取り外し孔15に不図示の細い突起物を挿入することによりその接続状態が解除され、取り外し可能になる。リード端子挿入孔11およびリード端子挿入孔12の両方に取り外し釦14を設けてしまうと、容易に取り外しが可能になる一方で、取り外したクリップ部20の所在が不明になりやすい。そのため、一方のリード端子挿入孔側にのみ取り外し釦14を設けているが、もちろん両方に取り外し釦14を設ける構成であっても構わない。発光部13は、例えばLEDにより構成されており、盗難防止用タグ1の状態に応じて発光動作を行う。
【0020】
なお、以上説明した盗難防止用タグ1の構成要素は必ずしも全てを含有する必要はなく、また、これらの構成と同様の作用を発揮する構成であれば他の構成であっても構わない。
【0021】
次に
図3Aおよび
図3Bを参照して、盗難防止用タグ1および盗難防止用タグ1へ信号を送信する信号発信装置3の機能構成を説明する。盗難防止用タグ1は、制御部101と、取付状態/取外状態検知部102と、警報出力部103と、信号受信部104と、信号処理部105と、発光制御部106とを備えている。また、信号発信装置3は、制御部301と、セット信号送信部302と、解除信号送信部303とを備えている。
【0022】
制御部101は、各処理部の動作を制御する。取付状態/取外状態検知部102は、盗難防止用タグ1が盗難防止対象物に取り付けられている取付状態(リード線導通状態)、盗難防止対象物から取り外されている取外状態(リード線非導通状態)を検知する。
【0023】
警報出力部103は、取付状態/取外状態検知部102により盗難防止用タグ1が盗難防止対象物から取り外された状態が検知されたり、不図示のEASゲートから所定の信号を受信したりした場合に、警報を出力する。信号受信部104は、
図3Bに示される信号発信装置3(リモート・コントローラ)から送信された制御信号、あるいは不図示のEASゲートから送信された信号を受信する。
【0024】
ここで信号発信装置3が盗難防止用タグ1へ送信する制御信号について説明する。信号発信装置3のセット信号送信部302は、盗難防止用タグ1が盗難防止対象物へ取り付けられている間に、取り外しを検知すると警報を出力する「セット状態」に盗難防止用タグ1をセットするためのセット信号を送信する。なお、不正な取り外しとは、セット状態でリード線が切断されたり、セット状態で盗難防止対象物の挟持が解除されたりすることをいう。信号発信装置3の解除信号送信部303は、セット状態を解除して盗難防止対象物から盗難防止用タグ1を取り外しても警報を出力しない「解除状態」にするための解除信号を送信する。制御部301は、信号発信装置3に設けられた不図示の釦が押下されたことに応じてこれらの信号を送信するように、セット信号送信部302および解除信号送信部303を制御する。
【0025】
信号処理部105は、信号受信部104が受信した信号を解析する。信号発信装置3から送信される制御信号は、上述のセット信号または解除信号を含んでいる。発光制御部106は、発光部13の動作を制御する。信号受信部104が不図示の信号発信装置3から信号を受信した際に、あるいは、不図示のEASゲートから信号を受信した際に、その他何らかのアクションが起こった際に、発光部13を発光させるように制御する。
【0026】
次に
図4Aおよび
図4Bを参照して、本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部20の内部構成を説明する。
図4Aは、クリップ部20の縦断面図を示しており、
図4Bは、クリップ部20の底部の横断面図を示している。
図4Aおよび
図4Bにおいて、釦22bが押下されることにより、釦22bが釦収納部34に収納され、釦収納部34の内部で第1の導体端部32および第2の導体端部33間が導通する。第1の導体端部32および第2の導体端部33は、第1のリード線26および第2のリード線27とそれぞれ接続されているが、本実施形態ではこれらは直接半田付けにより接続されておらず、第1の中継部材30および第2の中継部材31を間に介してそれぞれ接続されている。これは、リード線がステンレス製であり、第1の導体端部32および第2の導体端部33とリード線とを半田付けしにくいためである。この第1の中継部材30および第2の中継部材31は、例えばりん青銅・すずメッキから構成されている。第1の中継部材30および第2の中継部材31を用いることにより、第1のリード線26、第2のリード線27と、第1の導体端部32、第2の導体端部33との接続をより強固なものにすることができる。
【0027】
また、クリップ部20は、ガイド部材35を備えている。このガイド部材35により第1のリード線26および第2のリード線27の配線方向がガイドされる。ガイド部材35を設けることによって、第1のリード線26および第2のリード線27に引張力が加わっても、第1の中継部材30と第1の導体端部32との接続部分、および第2の中継部材31と第2の導体端部33との接続部分に直接引張力が加わるのを回避し、力のかかりを分散させることが可能になる。これにより、製品の耐久性を向上させることができる。
【0028】
図5Aおよび
図5Bを参照して、本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグ1の使用例を説明する。
図5Aに示されるように、店舗において、商品として洋服51が吊り掛け棒52に吊り下げられた状態で展示されている。あるいは、
図5Bに示されるように、商品としてスカーフ53が展示棚54の上に展示されている。なお、店舗は、例えば、家電量販店、ホームセンター等の大型店舗の他、アパレル店や雑貨店等の小規模店舗、また更に、展示場等であってもよい。すなわち、商品棚等に商品(展示品を含む)を陳列(ディスプレイ)する店舗であれば、特に問わない。
【0029】
洋服51にはワイヤーを通すことができる部位がないので、盗難防止用タグ1のクリップ部20によって洋服51のポケットの縁を挟持させ、タグ本体部10をポケット内部に収納している。これにより、タグ本体部10をポケット内部に収納した状態で商品を展示できるため、洋服51を手に取る客にとって盗難防止用タグ1が邪魔にならずに済む。
【0030】
また、盗難防止用タグ1のクリップ部20によってスカーフ53の縁を挟持させて、タグ本体部10を展示棚54の下に配置している。これにより、タグ本体部10が見えない状態で商品を展示できるため、スカーフ53の展示の見栄えを向上することができる。さらには、リード線に一定程度の長さを持たせれば、スカーフ53を手に取る客にとって盗難防止用タグ1が邪魔にならずに済む。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、盗難防止対象物にリード線を通すことのできる部位が存在しない場合や、盗難防止対象物にピンを挿入可能な孔がない場合であっても、盗難防止対象物の品質を維持した状態で盗難防止用タグの取り付けが可能になる。
【0032】
また、クリップ部20と従来のワイヤー式盗難防止用タグのワイヤー部との間に互換性があるので、ワイヤーを通す部位が盗難防止対象物に有る場合にはワイヤー部を用い、ワイヤーを通す部位が無い場合には本発明に係るクリップ部20を用いるといったように、状況に応じた使い分けが可能である。そのため、従来の盗難防止用タグの本体部の構造を活かすことができる。
【0033】
またクリップ部20が故障・破損した場合、当該クリップ部20のみを交換することで対応できる。例えばクリップ部を盗難防止用タグの本体部上に一体に設けた場合には、故障・破損が生じると盗難防止用タグ全体を交換せざるを得なくなる場合があるのに対して、本発明では、クリップ部がタグ本体部とは独立して設けられているため、製品全体を買い替える必要がなくなり、ユーザビリティを向上することができる。
【0034】
なお、以上説明したようなクリップ部20の挟持機構に限らず、盗難対象物を挟持することができれば、洗濯バサミ等に見られる挟持機構などの他の挟持機構を用いてもよい。
【0035】
(第2実施形態)
次に
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグ1のクリップ部20の他の構成例を説明する。
図1、
図2A、
図2Bで説明したクリップ部20は第1のリード線26および第2のリード線27がクリップ部20の本体とそれぞれ接続されている構成について説明した。
図6では、第1のリード線26および第2のリード線27の一部(例えばクリップ部20の本体の付け根部分)に保護部材28をさらに設けており、接続部分を補強している。保護部材28は弾性を有しており、多少の力が加えられても元の位置に戻ることができる。保護部材28により、第1のリード線26および第2のリード線27と、クリップ部20の本体との接続部分が鋭角に屈曲するのを防止することができ、より製品寿命を長くすることができる。なお、保護部材28は第1のリード線26および第2のリード線27全体を覆うように構成されてもよい。
【0036】
(第3実施形態)
次に
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る盗難防止用タグのクリップ部の他の構成例を説明する。
図1、
図2A、
図2Bで説明したクリップ部20は第1のリード線26および第2のリード線27が所定の長さを有する場合について説明した。
図7では、第1のリード線26および第2のリード線27の任意の位置に巻き取り部29をさらに設けており、第1のリード線26および第2のリード線27の長さを調節可能にしている。巻き取り部29は、例えばリール等のリード線巻き取り機構であるが、リード線を巻き取ることができれば他の構成であってもよい。巻き取り部29は、ロック機構を備えてもよく、第1のリード線26および第2のリード線27を所望の長さでロック可能に構成してもよい。リード線を所望の長さに調節可能にすることで、本発明を適用可能な盗難防止対象物の範囲を広げることができる。
【0037】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。