特許第6085073号(P6085073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6085073-シャフト端部取付構造 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085073
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】シャフト端部取付構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-570587(P2016-570587)
(86)(22)【出願日】2016年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2016050796
(87)【国際公開番号】WO2016117424
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】62/105,367
(32)【優先日】2015年1月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−009079(JP,A)
【文献】 特開2005−317749(JP,A)
【文献】 特開平10−012711(JP,A)
【文献】 特開2004−207465(JP,A)
【文献】 特開2004−152865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを載置するセラミックプレートと一体化された中空セラミックシャフトの端部をチャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に気密に取り付けるシャフト端部取付構造であって、
前記中空セラミックシャフトの端面に金属層を介して気密に接合された金属材料製又は金属−セラミック複合材料製のリング部材と、
シール層を介して前記リング部材を前記チャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に載置した状態で前記底板及び前記シール層を貫通し前記リング部材を前記底板に引きつけるように締結する締結部材と、
を備えたシャフト端部取付構造。
【請求項2】
前記締結部材は、前記底板の下面から前記底板及び前記シール層を貫通し前記リング部材のボルト穴に螺合されたボルトである、
請求項1に記載のシャフト端部取付構造。
【請求項3】
前記中空セラミックシャフトは、AlN製であり、
前記リング部材は、Mo製、W製又はFeNiCo系合金製である、
請求項1又は2に記載のシャフト端部取付構造。
【請求項4】
前記金属層は、Al層又はAl合金層である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャフト端部取付構造。
【請求項5】
前記金属層は、TCBにより形成されたものである、
請求項4に記載のシャフト端部取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフト端部取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハを載置するセラミックプレートと中空セラミックシャフトとが一体化された半導体製造装置用部材が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−272805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした半導体製造装置用部材の中空セラミックシャフトの端部をチャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に気密に取り付けるシャフト端部取付構造として、図4に示すものが知られている。この取付構造では、チャンバ100の底板102に設けた貫通孔104の周縁に、リング状のメタルシール106を介して中空セラミックシャフト108のフランジ110が載置されている。中空セラミックシャフト108は、セラミックプレート112と一体化されてセラミックヒータ114を構成している。断面逆L字の半割リングを2つ合わせてリング状にしたクランプ116は、中空セラミックシャフト108のフランジ110を上から押さえている。ボルト118は、クランプ116の上面からクランプ116を貫通してチャンバ100の底板102に螺合されている。こうすることにより、チャンバ100の内部空間S1と中空セラミックシャフト108の内部空間S2とは気密に分離された状態となる。そのため、チャンバ100の内部空間S1を真空雰囲気とし、その内部空間S1と中空セラミックシャフト108の内部空間S2とを縁切りすることができる。
【0005】
しかしながら、図4の取付構造では、クランプ116とチャンバ100の底板102との間に中空セラミックシャフト108のフランジ110が挟まれているため、ボルト118を強く締めすぎると中空セラミックシャフト108が割れてしまうおそれがあった。一方、中空セラミックシャフト108の割れを回避しようとすると、ボルト118の締めが甘くなることがあり、メタルシール106が十分機能せず、チャンバ100の内部空間S1と中空セラミックシャフト108の内部空間S2とを気密に分離することができないという問題があった。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みなされたものであり、中空セラミックシャフトを破損することなく、チャンバの内部空間と中空セラミックシャフトの内部空間とを十分気密に分離することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャフト端部取付構造は、
ウエハを載置するセラミックプレートと一体化された中空セラミックシャフトの端部をチャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に気密に取り付けるシャフト端部取付構造であって、
前記中空セラミックシャフトの端面に金属層を介して気密に接合された金属材料製又は金属−セラミック複合材料製のリング部材と、
シール層を介して前記リング部材を前記チャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に載置した状態で前記底板及び前記シール層を貫通し前記リング部材を前記底板に引きつけるように締結する締結部材と、
を備えたものである。
【0008】
このシャフト端部取付構造では、中空セラミックシャフトはリング部材と金属層を介してチャンバと気密に接合されている。リング部材はシール層を介してチャンバの底板に設けた貫通孔の周縁に載置され、締結部材は底板及びシール層を貫通してリング部材を底板に引きつけるように締結されている。リング部材は、金属材料製又は金属−セラミック複合材料製であり、セラミックと比べて強度が高い。このため、締結部材を強く締めると、リング部材がシール層を介してチャンバの底板の上面に引きつけられるもののリング部材を破損するおそれはないし、中空セラミックシャフトが締め付けられることもない。したがって、締結部材を強く締めたとしても中空セラミックシャフトを破損してしまうおそれはない。また、締結部材を強く締めることができるため、メタルシールのシール性が十分得られる。したがって、チャンバの内部空間と中空セラミックシャフトの内部空間とを十分気密に分離することができる。
【0009】
本発明のシャフト端部取付構造において、前記締結部材は、前記底板の下面から前記底板及び前記シール層を貫通し前記リング部材のボルト穴に螺合されたボルトであってもよい。
【0010】
本発明のシャフト端部取付構造において、前記中空セラミックシャフトは、AlN製であり、前記リング部材は、Mo製、W製又はFeNiCo系合金製(例えばコバール(登録商標)など)であることが好ましい。こうすれば、リング部材の熱膨張係数がセラミックの熱膨張係数に近くなるため、加熱・冷却が繰り返されたとしても熱膨張差によってリング部材と中空セラミックシャフトとの接合破壊が起きるのを防止することができる。
【0011】
本発明のシャフト端部取付構造において、前記金属層は、Al層又はAl合金層(例えばAl−Si−Mg系合金層やAl−Mg系合金層など)であることが好ましい。こうすれば、TCB(Thermal compression bonding)を採用することができるため、金属層中にピンホールができにくく、金属層のシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のシャフト端部取付構造の一例を示す断面図。
図2】本発明のシャフト端部取付構造の別例を示す断面図。
図3】シャフト端部からのHeリーク量を測定する方法を示す説明図。
図4】従来のシャフト端部取付構造の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のシャフト端部取付構造の一例を図1を用いて以下に説明する。図1は、本発明のシャフト端部取付構造の一例を示す断面図であり、具体的には、チャンバ100の内部に取り付けられたセラミックヒータ10の断面図である。
【0014】
セラミックヒータ10は、ウエハWを加熱するために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ100の内部に取り付けられている。このセラミックヒータ10は、ウエハWを載置可能なウエハ載置面12aを有するセラミックプレート12と、セラミックプレート12のウエハ載置面12aとは反対側の面(裏面)12bに接合された中空セラミックシャフト20とを備えている。
【0015】
セラミックプレート12は、AlNを主成分とする円板状の部材である。このセラミックプレート12には、ヒータ電極14とRF電極16とが埋設されている。ヒータ電極14は、Moを主成分とするコイルをセラミックプレート12の全面にわたって一筆書きの要領で配線したものである。このヒータ電極14の一端には+極のヒータ端子棒14aが接続され、他端には−極のヒータ端子棒14bが接続されている。RF電極16は、セラミックプレート12よりもやや小径の円盤状の薄層電極であり、Moを主成分とする細い金属線を網状に編み込んでシート状にしたメッシュで形成されている。このRF電極16は、セラミックプレート12のうちヒータ電極14とウエハ載置面12aとの間に埋設されている。また、RF電極16の略中央には、RF端子棒16aが接続されている。
【0016】
中空セラミックシャフト20は、AlNとする円筒状の部材であり、上部開口の周囲に第1フランジ22、下部開口の周囲に第2フランジ24を有している。第1フランジ22の端面は、セラミックプレート12の裏面12bにTCBにより接合されている。第2フランジ24の端面は、Mo製のリング部材26にTCBにより接合されている。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する方法をいう。金属接合材としては、Al−Si−Mg系接合材やAl−Mg系接合材等のようなAlとMgとを含有するAl合金接合材などが挙げられる。例えば、Al−Si−Mg系接合材として、88.5質量%のAl、10質量%のSi、1.5質量%のMgを含有し、固相温度が約560℃、液相温度が約590℃の接合材を用いる場合、TCBは固相温度以下(例えば約520〜550℃)に加熱した状態で20〜140kg/mm2、好ましくは30〜60kg/mm2の圧力で3〜6時間加圧して行われる。第2フランジ24の端面とリング部材26との間には、TCBで用いた金属接合材に由来する金属層28が形成される。金属層28は、TCBで形成されているため、ピンホールが生じにくく気密性に優れている。また、第1フランジ22の端面とセラミックプレート12との間にも、同様の金属層(図示略)が形成される。リング部材26とチャンバ100の底板102に設けられた貫通孔104の周縁との間には、メタルシール30(シール層)が配置されている。ボルト32(締結部材)は、底板102の下面から底板102及びメタルシール30を貫通しリング部材26の下面に設けられたネジ穴26aに螺合されている。このボルト32は、リング部材26の円周方向に沿って等間隔に3本以上(好ましくは6本以上)使用されている。なお、ボルト32を底板102の下面から嵌める際、ワッシャを用いてもよい。中空セラミックシャフト20の内部空間S2には、上述したヒータ端子棒14a,14bやRF端子棒16aが挿通され、更に、セラミックプレート12の温度を測定するシース熱電対18も挿通されている。
【0017】
次に、本実施形態のセラミックヒータ10の使用例について説明する。セラミックヒータ10のウエハ載置面12aにウエハWを載置し、チャンバ100の内部空間S1を所定の雰囲気(例えば水素雰囲気とかアルゴン雰囲気とか真空雰囲気)にする。このとき、内部空間S1は、中空セラミックシャフト20の内部空間S2と縁切りされている。そして、リング部材26がチャンバー内雰囲気によるダメージを受けないようなプロセス(例えばウエハアニール等)をウエハWに行う。あるいは、必要に応じてRF端子棒16aを介してRF電極16に交流高電圧を印加することにより、チャンバ100内の上方に設置された図示しない対向水平電極とセラミックヒータ10に埋設されたRF電極16とからなる平行平板電極間にプラズマを発生させ、そのプラズマを利用することもできる。ウエハWの処理時には、RF電極16に直流高電圧を印加することにより静電気的な力を発生させ、それによってウエハWをウエハ載置面12aに吸着することもできる。一方、シース熱電対18の検出信号に基づいてウエハWの温度を求め、その温度が設定温度になるように2本のヒータ端子棒14a,14bの間に印加する電圧の大きさやオンオフを制御する。
【0018】
以上詳述した本実施形態のシャフト端部取付構造では、中空セラミックシャフト20はリング部材26と金属層28を介して気密に接合されている。また、リング部材26はメタルシール30を介してチャンバ100の底板102に設けた貫通孔104の周縁に載置され、ボルト32は底板102の下面から底板102及びメタルシール30を貫通しリング部材26に螺合されている。リング部材26は、Mo製つまり金属材料製であり、セラミックと比べて強度が高い。このため、ボルト32を強く締めると、リング部材26がメタルシール30を介してチャンバ100の底板102の上面に引きつけられるもののリング部材26を破損することはないし、中空セラミックシャフト20が締め付けられることもない。したがって、ボルト32を強く締めたとしても中空セラミックシャフト20を破損してしまうおそれはない。また、ボルト32を強く締めることができるため、メタルシール30のシール性が十分得られる。したがって、チャンバ100の内部空間S1と中空セラミックシャフト20の内部空間S2とを十分気密に分離することができる。
【0019】
また、リング部材26は、Mo製であり、熱膨張係数がAlNセラミックの熱膨張係数に近くなる。そのため、加熱・冷却が繰り返されたとしても熱膨張差によってリング部材26と中空セラミックシャフト20との接合破壊が起きるのを防止することができる。ここで、代表的なセラミックと金属の熱膨張係数を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
更に、金属層28は、アルミニウム合金層であるため、上述したようにTCBを採用することができる。そのため、金属層28中にピンホールができにくく、金属層28のシール性が向上する。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0023】
例えば、上述した実施形態では、リング部材26の材料としてMoを用いたが、WやFeNiCo系合金(例えばコバール(登録商標))を用いてもよい。これらの金属の熱膨張係数は、表1に示すように本実施形態で用いたAlNセラミックの熱膨張係数の±20%以内であるため、加熱・冷却が繰り返されたとしても熱膨張差によってリング部材26と中空セラミックシャフト20との接合破壊が起きるのを防止することができる。
【0024】
上述した実施形態では、セラミックプレート12や中空セラミックシャフト20の材料としてAlNを用いたが、他のセラミックを用いてもよい。例えばAl23を用いる場合には、リング部材26の材料として熱膨張係数の近いCuW(11%Cu−89%W、表1参照)を用いることが好ましい。
【0025】
上述した実施形態では、シール層としてメタルシール30を用いたが、メタルシール30の代わりにOリングを用いてもよい。この場合、Oリングはセラミックヒータ10の使用温度に耐えられるものを用いる。
【0026】
上述した実施形態では、金属層28をTCBにより形成したが、ろう接合により形成してもよい。ろう材としては、従来公知の種々のろう材を使用することができる。但し、ろう接合に比べてTCBの方が金属層28にピンホールが生じにくいため好ましい。
【0027】
上述した実施形態では、締結部材としてボルト32を用いたが、ボルト32の代わりに、図2に示す構造を採用してもよい。即ち、リング部材26の下面に複数のボルト足26bを設け、ボルト足26bがメタルシール30及び底板102を貫通して底板102の下面から突出するようにし、そのボルト足26bにナット34を嵌めてリング部材26を底板26に引きつけるように締結してもよい。このようにしても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。なお、ナット34をボルト足26bに嵌める際、ワッシャを用いてもよい。
【実施例】
【0028】
上述した実施形態(図1)のシャフト端部取付構造を採用した場合と、図4の従来のシャフト端部取付構造を採用した場合とで、シャフト端部からのHeリーク量を評価した。具体的には、図3に示すように、チャンバ100のポートにHeリークディテクタ120を取り付け、チャンバ内真空度を5E−2[Pa]、シャフト端部の温度をRT(室温)に設定した。この状態で、中空セラミックシャフト20の内部空間S2へHeガスを吹きかけ、Heリークディテクタ120の数値を読み取り、その数値をRTにおけるHeリーク量とした。また、シャフト端部の温度を100℃に設定し、同様にしてHeリークディテクタ120の数値を読み取り、その数値を100℃におけるHeリーク量とした。従来のシャフト端部取付構造についても、同様にしてHeリーク量を測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、図1のシャフト端部取付構造を採用した場合、図4の従来のシャフト端部取付構造に比べてRTでも100℃でもHeリーク量は1/10以下に低減した。
【0029】
【表2】
【0030】
本出願は、2015年1月20日に出願された米国仮出願第62/105,367号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【0031】
なお、上述した実施例は本発明を何ら限定するものでないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、セラミックヒータや静電チャック、サセプターなどの半導体製造装置用部材に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 セラミックヒータ、12 セラミックプレート、12a ウエハ載置面、12b 裏面、14 ヒータ電極、14a,14b ヒータ端子棒、16 RF電極、16a RF端子棒、18 シース熱電対、20 中空セラミックシャフト、22 第1フランジ、24 第2フランジ、26 リング部材、26a ネジ穴、26b ボルト足、28 金属層、30 メタルシール、32 ボルト、34 ナット、100 チャンバ、102 底板、104 貫通孔、106 メタルシール、108 中空セラミックシャフト、110 フランジ、112 セラミックプレート、114 セラミックヒータ、116 クランプ、118 ボルト、120 Heリークディテクタ、S1,S2 内部空間。
図1
図2
図3
図4