(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地震などの災害時に、公共下水道4が破損する等して使用できなくなった場合には、マンション等の建物1の排水系統がたとえ無事であったとしても、建物1内のトイレなどの排水器具を使用することができなくなり、生活に支障が出てしまう。そこで、このような非常時に対応できる建物用排水システムの開発が望まれるが、未だに提案されていない。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、建物用排水システムおよびそれに用いる排水桝を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、地震などの災害時に公共下水道が使用できなくなったときでも、トイレなどの排水器具を使用可能にすることができる、建物用排水システムおよびそれに用いる排水桝を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、建物内で生じた排水を公共下水道まで搬送する排水管を含む建物用排水システムであって、地下に埋設される非常用排水貯留槽
、および排水管に設けられ
る分岐部である排水桝を備え、排水桝は、流入口と、公共下水道に繋がる第1流出口と
、非常用排水貯留槽に繋がる第2流出口とを有する
有底筒状の桝本体、および流入口から流入した排水を第1流出口側および第2流出口側のいずれか一方に対して選択的
に導くための流路切替手段を備え
、流路切替手段として、第1流出口および第2流出口に対して付け替え可能とされる封止部材が用いられる、建物用排水システムである。
【0008】
第1の発明では、建物用排水システム(10)は、マンション(100)等の建物に適用され、トイレ等の排水器具から排出される排水を公共下水道(102)まで搬送する排水管(12,12a)、および地下に埋設される非常用排水貯留槽(14)を含む。排水管には、第1流出口(26)と第2流出口(30)とを有する分岐部(16)
として、排水桝(20)が設けられる。
排水桝は、有底筒状に形成される、つまり上部開口を有する桝本体(22)を備える。桝本体の側壁には、流入口(24)、第1流出口および第2流出口が形成される。第1流出口は、排水管を介して公共下水道に接続され、第2流出口は、たとえば非常用排水管(32)を介して非常用排水貯留槽に接続される。また、
排水桝には、第1流出口側および第2流出口側のいずれか一方に対して選択的に排水を導く、つまり排水の流れ方向を選択的に切り替えるための流路切替手
段が設けられる。
この流路切替手段としては、第1流出口および第2流出口の双方に対して着脱可能に取り付けることができる、つまり付け替え可能とされる封止部材(40,60)が用いられる。公共下水道が使用できない非常時には、流路切替手段によって排水流路が第2流出口側に切り替えられ、排水は、公共下水道に排出される代わりに、非常用排水貯留槽(14)に排出されて、そこで一時的に貯留される。
【0009】
第1の発明によれば、地震などの災害時に公共下水道が使用できなくなったときでも、非常用排水貯留槽の容量分は建物から排水を排出することができ、トイレなどの排水器具の使用を一定期間確保できる。
また、分岐部に排水桝を設け、流路切替手段として安価に製作できる封止部材を用いるので、建物用排水システムの敷設コストを低減できる。さらに、第1流出口を封止する封止部材と第2流出口を封止する封止部材とを兼用できるので、部材コストを低減できる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属し、
桝本体の底面には、流入口と第1流出口とを結ぶインバート、および当該インバートから分岐して第2流出口まで延びる分岐インバートが形成され、封止部材は、第2流出口に取り付けられたとき、当該第2流出口を封止すると共に分岐インバートを塞ぐ。
【0011】
第2の発明では、
桝本体(22)の底面には、インバート(28)および分岐インバート(34)が形成される。そして、封止部材(40)は、第2流出口(30)に取り付けられたとき、第2流出口を封止すると共に分岐インバートを塞ぐ形状を有する。つまり、第1流出口(26)側に排水を導くときには、封止部材が分岐インバートを塞ぐ。第2の発明によれば、第1流出口側に排水を導くときの桝本体内における排水溜りが防止される。
【0012】
第3の発明は、
第1または第2の発明に従属し、第2流出口は、第1流出口よりも高い位置に設けられる。
【0013】
第3の発明では、
第2流出口(32)は、第1流出口(26)よりも高い位置に設けられ、好ましくは、第2流出口の底面が第1流出口の中心軸と同程度の高さとなるように配置される。これによって、第2流出口が、通常時における流入口(24)から第1流出口への排水の流れの障害となることを防止できる。
【0014】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に係る建物用排水システムに用いられる排水桝であって、流入口、第1流出口および第2流出口を有する有底筒状の桝本体、および流入口から流入した排水を第1流出口側および第2流出口側のいずれか一方に対して選択的に導くための流路切替手段を備える、排水桝である。
【0015】
第4の発明では、排水桝(20)は、マンション(100)等の建物内で生じた排水を公共下水道(102)まで搬送する排水管(12,12a)に接続されて、排水流路を切り替え可能な分岐部(16)を形成する。排水桝は、有底筒状に形成される、つまり上部開口を有する桝本体(22)を備える。桝本体の側壁には、流入口(24)、第1流出口(26)および第2流出口(30)が形成される。また、排水桝は、たとえば第1流出口および第2流出口に着脱可能に取り付けられる封止部材(40,60)などの流路切替手段を備える。
【0016】
第4の発明によれば、当該排水桝を排水管に組み込むだけで、排水の流れ方向を選択的に切り替え可能な分岐部を排水管に対して安価に形成できる。
【0017】
第5の発明は、第4の発明に従属し、流路切替手段は、第1流出口および第2流出口に対して付け替え可能とされる封止部材を含む。
【0018】
第5の発明では、流路切替手段は、封止部材(40,60)を含む。封止部材は、第1流出口(26)および第2流出口(30)の双方に対して着脱可能に取り付けることができる、つまり付け替え可能とされる。
【0019】
第5の発明によれば、第1流出口を封止する封止部材と第2流出口を封止する封止部材とを兼用できるので、部材コストを低減できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、地震などの災害時に公共下水道が使用できなくなったときでも、非常用排水貯留槽の容量分は建物から排水を排出することができ、トイレなどの排水器具の使用を一定期間確保できる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施例である建物用排水システム10(以下、単に「システム10」と言う。)は、マンション100等の集合住宅に適用され、各家庭のトイレ等の排水器具(図示せず)から排出される排水を公共下水道102まで搬送する排水管12を含む。システム10は、詳細は後述するように、非常用排水貯留槽14(以下、単に「排水貯留槽14」と言う。)を備えており、公共下水道102が使用できない非常時には、排水貯留槽14に排水を貯留することによって、地震等の災害時にもトイレ等の排水器具を通常通り使用できるようにしている。
【0027】
なお、この実施例では、マンション100等の集合住宅にシステム10を適用する場合を想定して説明するが、システム10は、トイレ等の排水器具を備える学校、役所、ホテルおよび戸建住宅などの建物全般に対して適用できる。
【0028】
図1に示すように、排水管12は、トイレ、台所、風呂、洗濯機および洗面台などの排水器具からの排水(汚水や雑排水)を流して公共下水道102まで導くものであり、たとえば硬質塩化ビニル製の管や継手などを適宜連結することにより形成される。各家庭の排水器具から延びる排水管12のそれぞれは、集合ます等を通じてマンション100の敷地104内で適宜合流されて1つの排水管(敷地排水管)12aとなり、所定の下り勾配で配管されて、敷地104外の公共下水道102に接続される。合流して1つになった排水管12a、つまり敷地排水管12aの内径は、マンション100の規模などに応じて適宜設定され、たとえば200mmである。
【0029】
また、システム10は、マンション100の敷地104内の地下に埋設される排水貯留槽14を備える。排水貯留槽14は、中空の直方体状や円柱状などに形成される容器であって、排水貯留槽14の天壁には、点検口(図示せず)が設けられる。この点検口は、通常時には、鉄蓋などの防護蓋によって閉じられる。なお、排水貯留槽14は、基本的にはコンクリート製であるが、その材質は特に限定されず、合成樹脂や金属などによっても形成できる。また、排水貯留槽14の大きさ(内容積)は、マンションの規模(戸数や敷地の大きさ)などに応じて適宜設定され、たとえば非常時にマンション100から排出される1−数日間分の排水を貯留できるように設定される。
【0030】
また、敷地排水管12aには、公共下水道100に繋がる第1流出口26と排水貯留槽14に繋がる第2流出口30とを有する分岐部16が設けられる。この実施例では、分岐部16には、排水桝20が設けられる。
【0031】
具体的には、
図2−5に示すように、分岐部16として機能する排水桝20は、有底円筒状に形成される桝本体22を備える。桝本体22の上端は地表面まで延び、その上部開口には、鉄蓋などの防護蓋(図示せず)が着脱可能に設けられる。桝本体22は、基本的にはコンクリート製であるが、その材質は特に限定されず、合成樹脂や金属などによっても形成できる。桝本体22の内径は、マンションの規模などに応じて適宜設定され、たとえば300−500mmである。
【0032】
桝本体22の側壁下部には、流入口24が形成される。流入口24には、上流側の敷地排水管12aの端部が接続される。また、流入口24の対向位置には、第1流出口26が形成される。第1流出口26には、下流側の敷地排水管12aの端部が接続され、この敷地排水管12aを介して第1流出口26は公共下水道100に繋がる。
【0033】
桝本体22の底面には、流入口24と第1流出口26とを連結させるように直線状のインバート28が形成される。インバート28は、半円筒状の内周面を有し、その内周面は、敷地排水管12aの内径と同径とされる。また、インバート28の内周面(底面)と、流入口24および第1流出口26に接続される敷地排水管12aの管底とは、段差なく面一に連結される。
【0034】
また、桝本体22の側壁下部には、流入口24および第1流出口26の直角方向に、第2流出口30が形成される。第2流出口30には、非常用排水管32の端部が接続され、この非常用排水管32を介して第2流出口30は排水貯留槽14に繋がる。非常用排水管32は、たとえば硬質塩化ビニル製の管や継手などを適宜連結することにより形成される。非常用排水管32の内径は、敷地排水管12aの内径と同径とされ、たとえば200mmである。
【0035】
桝本体22の底面にはさらに、インバート28の中央部分から横方向に分岐して第2流出口30まで延びる分岐インバート34が形成される。分岐インバート34は、半円筒状の内周面を有し、その内周面は、非常用排水管32の内径と同径とされる。また、分岐インバート34の内周面(底面)と、第2流出口30に接続される非常用排水管32およびインバート28の底面とは、段差なく面一に連結される。
【0036】
また、分岐部16には、第1流出口26側および第2流出口30側のいずれか一方に対して選択的に排水を導く、つまり排水の流れ方向を選択的に切り替えるための流路切替手段が設けられる。この実施例では、流路切替手段として、第1流出口26および第2流出口30の双方に対して着脱可能に取り付けることができる(つまり付け替え可能とされる)封止部材40を用いている。すなわち、詳細は後述するように、通常時は、封止部材40を第2流出口30に取り付けることによって排水を第1流出口26側に導き、非常時には、封止部材40を第1流出口26に付け替えることによって排水を第2流出口30側に導くようにしている。
【0037】
図6および
図7に示すように、封止部材40は、硬質塩化ビニル、鋼材または硬質ゴムなどを用いて、略円柱状に形成される封止部42を備える。封止部42の外径および長さは、分岐インバート34の内周面の径および長さと同じまたはほぼ同じ大きさにされる。つまり、封止部42は、その下半部が分岐インバート34内にちょうど嵌り込む大きさを有しており、封止部材40を第2流出口30に取り付けたときには、第2流出口30を封止すると共に、分岐インバート34内全体を塞ぐ(
図3および
図4参照)。なお、封止部42は、軽量化のために中空としてもよい。また、封止部42は、分岐インバート34からはみ出す部分(上半部)については切り欠かれていてもよい。
【0038】
封止部42の一方端部には、くら44が一体的に形成される。くら44は、封止部42の一方端部から横方向に突出する矩形曲板状に形成され、その外面は、桝本体22の内周面に沿う(
図3参照)。また、くら44の外面および封止部42の下面などには、スポンジ系ゴムなどで形成される止水材46が貼り付けられ、通常時における第2流出口30からの排水漏れが防止される。
【0039】
また、くら44の内面には、封止部42の上端部の両横位置において、2つの脚受部48が設けられる。脚受部48は、短管を斜めに切断した形状を有し、その端面は上側に開口する。この脚受部48には、硬質塩化ビニル等で形成される支持脚50が着脱可能に設けられる。支持脚50は、2つの脚受部48から水平方向に突出した後、屈曲して1本となるトーナメント形状に形成される。支持脚50には、ターンバックル等の伸縮部52が設けられ、支持脚50の長さは伸縮部52によって調整可能とされる。また、支持脚50の先端部には、ゴムキャップ54が装着される。ただし、支持脚50の形状はこれに限定されず、支持脚をH形などに形成してもよい。また、支持脚50は、くら44に対して着脱可能に設けるのではなく、たとえば脚受部48を支点として上下方向に回動可能に設けてもよい。
【0040】
封止部材40を第2流出口30に取り付けるときには、先ず、封止部材40の封止部42およびくら44の部分を桝本体22内に仮置きする。この際には、くら44(止水材46)の外面を桝本体22の内周面に当接させると共に、封止部42の下半部を分岐インバート34内に嵌め込むようにする。次に、支持脚50の端部を脚受部48の上側から嵌め込むようにして、くら44に対して支持脚50を水平に接続する。そして、支持脚50の伸縮部52を調整して、支持脚50で桝本体22の内周面にくら44を押さえつけることによって、封止部材40を桝本体22に固定する。なお、封止部材40を第2流出口30から取り外す際には、これと逆の作業を行うとよく、封止部材40を第1流出口26に取り付ける際には、これと同様の作業を行うとよい。このように、
図6に示す封止部材40は、着脱が容易であり、また、金属製の仕切弁などと比較して安価に製作できる。
【0041】
このようなシステム10では、通常時には、
図3に示すように、封止部材40が第2流出口30に取り付けられる。つまり、第1流出口26が開状態であり、第2流出口30が閉状態である通常モードとされている。この通常モードでトイレ等の排水器具が使用されると、その排水は、第1流出口26側を通る、つまり排水管12を通ってそのまま公共下水道102まで搬送される。この際、封止部材40の封止部42が分岐インバート34内全体を塞いでいることから、排水桝20内における排水溜りが防止され、排水は、インバート28を通って排水桝20内を円滑に流れる。
【0042】
一方、地震などの災害が発生する等して公共下水道102が使用できなくなった非常時には、
図8に示すように、封止部材40が第1流出口26に付け替えられ、排水器具からの排水は、公共下水道102に排出されずに、第2流出口30側を通って排水貯留槽14内に排出され、そこで一時的に貯留される。
【0043】
具体的に説明すると、非常時には、マンション100の管理人などの予め決定しておいた作業担当者が、桝本体22の端部開口から手を差し入れて、封止部材40を第2流出口30から取り外して第1流出口26に付け替える。つまり、第1流出口26が閉状態であり、第2流出口30が開状態である非常モードに切り替える。なお、封止部材40を付け替えた後は、桝本体22の端部開口の防護蓋は、元に戻される。
【0044】
封止部材40を第1流出口26に付け替えた状態(非常モード)で、トイレ等の排水器具が使用されると、その排水は、排水管12を通って流入口24から桝本体22内に流入する。桝本体22内に流入した排水は、第2流出口30側を通る、つまり分岐インバート34を通って第2流出口30から流出し、非常用排水管32を通って排水貯留槽14内に排出される。
【0045】
このように、システム10では、封止部材40を第2流出口30から第1流出口26に付け替えるという単純な作業を行うだけで、排水の流れ方向を切り替えることができ、排水貯留槽14内に排水を貯留することができる。したがって、公共下水道102が使用できない非常時でも、排水貯留槽14の容量分は排水をマンション100から排出することができ、この期間は特別な設備や装置などを必要とすることなく、通常通りにトイレ等の排水器具を使用できる。
【0046】
なお、トイレ等の排水器具に使用する際に必要となる水については、上水道が使用可能な場合には、上水道をそのまま利用するとよい。また、予め雨水や水道水などを貯水タンクに貯留してしおき、上水道が使用できない場合には、貯水タンクに貯留しておいた水を利用できるようにしておいてもよい。
【0047】
また、公共下水道102が復旧したときには、封止部材40は、元の状態に戻される。つまり、封止部材40を第1流出口26から取り外して第2流出口30に付け替えるとよい。これによって、排水の流れ方向が第1流出口26側に切り替わり、排水は、排水管12を通ってそのまま公共下水道102まで搬送されるようになる。また、排水貯留槽14に貯留された排水については、バキュームカーや電動ポンプ等を利用して取り除くようにするとよい。或いは、排水貯留槽14に対して公共下水道102に繋がる排出管を予め設けておき、排水を電動ポンプで排出管に排出して、自然流下で公共下水道102まで搬送するようにしてもよい。
【0048】
以上のように、この実施例によれば、地震などの災害時に公共下水道102が使用できなくなったときでも、排水貯留槽14の容量分は建物から排水を排出することができ、トイレ等の排水器具の使用を一定期間確保できる。
【0049】
また、分岐部16に排水桝20を設けることで、流路切替手段として安価に製作できる封止部材40を用いることができるようになるので、システム10の敷設コストを低減できる。さらに、1つの封止部材40を付け替えることで排水の流れ方向を切り替える、つまり第1流出口26を封止する部材と第2流出口30を封止する部材とを兼用するので、部材コストを低減できる。
【0050】
なお、上述の実施例では、第1流出口26および第2流出口30の双方に対して着脱可能に取り付けることができる封止部材(流路切替手段)として、
図6に示すような封止部材40を用いたが、これに限定されない。たとえば、
図9に示すように、封止部材として公知の止水栓(止水プラグ)60を用い、この止水栓60を付け替えることで、排水の流れ方向を第1流出口26側と第2流出口30側とに切り替えるようにしてもよい。止水栓60としては、たとえば、ネジを締め付けることで、2つの円盤で挟まれたゴムが拡径されて止水機能を発揮する止水栓を用いることができる。
【0051】
また、上述の実施例では、流入口24と第1流出口26とを対向する位置に配置し、これらと直交する方向に第2流出口30を配置したが、桝本体22に形成する流入口24、第1流出口26および第2流出口30の配置関係は、適宜変更可能である。たとえば、流入口24に対して第1流出口26と第2流出口30とがY字状やT字状などに分岐するように配置することもできる。ただし、第2流出口30は、万が一の非常時に利用されるものであるので、通常時に利用される第1流出口26が流入口24に対して直線的に連結されることが好ましい。
【0052】
さらに、上述の実施例では、第1流出口26と第2流出口30とを同じ高さに配置するようにしているが、他の実施例として、
図10に示すように、第1流出口26よりも第2流出口30を高い位置に配置することもできる。この場合には、第2流出口30の底面が第1流出口26の中心軸と同程度の高さとなるように配置することが好ましい。これは、通常、排水管12を流れる排水の水位は、排水管12の中心軸高さよりも低い状態となるので、第2流出口30の底面を第1流出口26の中心軸と同程度の高さとすることにより、第2流出口30および分岐インバート34が、通常時における流入口24から第1流出口26への排水の流れの障害となることを防止できるからである。なお、第2流出口30の位置を高くし過ぎると、非常時に第2流出口30側に排水を導く際に、桝本体22内の水位が上がって、上流側の敷地排水管12a(流入口24側)に排水が逆流してしまう恐れがあるので、注意を要する。
【0053】
また、上述の実施例では、封止部材40を付け替える(兼用する)ことによって排水の流れ方向を切り替えるようにしたが、これに限定されない。たとえば、第1流出口26および第2流出口30に対して、個別の封止部材40を用いてもよい。
【0054】
また、たとえば、他の実施例として、
図11に示すように、第1流出口26および第2流出口30のそれぞれに対して仕切弁62を設けることによって、排水の流れ方向を切り替えることもできる。すなわち、2つの仕切弁62を流路切替手段として機能させることもできる。この場合には、通常時には、第1流出口26側の仕切弁62が開状態され、第2流出口30側の仕切弁62が閉状態とされる。一方、非常時には、第1流出口26側の仕切弁62が閉状態され、第2流出口30側の仕切弁62が開状態とされる。なお、仕切弁62としては、手動で開閉する手動弁、および電気的に開閉制御される電磁弁などの公知の仕切弁を用いることができる。
【0055】
また、上述の各実施例では、分岐部16に排水桝20を設けるようにした。これは、封止部材40,60を用いて排水の流れ方向を切り替えることができるようにするためであるが、流路切替手段として封止部材40,60を用いない場合には、排水桝20は必ずしも設ける必要はない。たとえば、排水桝20を設ける代わりに、分岐部16に三方弁を設けて、第1流出口26側および第2流出口30側のいずれか一方に対して選択的に排水を導くようにしてもよい。
【0056】
さらに、上述の各実施例では、分岐部16を排水貯留槽14の外部に配置し、非常用排水管32を用いて第2流出口30から流出した排水を排水貯留槽14まで導くようにしたが、これに限定されない。たとえば、排水貯留槽14内を貫通するように敷地排水管12aを配管し、排水貯留槽14の内部に分岐部16を配置する。そして、非常時には、第2流出口30から排水貯留槽14内に排水を直接排出するようにしてもよい。
【0057】
また、この発明の他の実施例として、
図12に示すように、排水貯留槽14に対してオーバーフロー管64を設けることもできる。オーバーフロー管64は、その上流側端部が排水貯留槽14の上部に接続され、所定勾配で公共下水道102まで配設されて、その下流側端部が公共下水道102に接続される。このようなオーバーフロー管64を排水貯留槽14に設けておくことによって、万が一、非常時に排水貯留槽14の容量を超える排水が排出されたとしても、オーバーフロー管64を介して公共下水道102に排水を逃がすことができる。これにより、敷地104内の排水管12に排水が逆流して、排水管12が詰まってしまうことを防止できる。なお、オーバーフロー管64を備える排水貯留槽14は、上述の各実施例のシステム10のいずれにも適用可能である。
【0058】
なお、システム10は、排水貯留槽14や非常用排水管32などを地下に設ける必要があるので、マンション等の建物の新設時に予め施工しておくことが好ましいが、既設のマンションに追加的に施工することもできる。
【0059】
また、上述の各実施例では、1つの排水貯留槽14を設けるようにしたが、複数の排水貯留槽14を設けるようにしてもよい。この場合には、1つの排水貯留槽14が満水になったときに、他の排水貯留槽14に切り替えて排水を貯留するようにするとよい。
【0060】
さらに、汚水管および雑排水管が1つに合流されて公共下水道102に接続される場合だけでなく、汚水管と雑排水管とが別々に公共下水道102に接続される場合にもシステム10を適用できる。この場合には、たとえば、汚水管および雑排水管のそれぞれに分岐部16を設けるとよい。各分岐部16の第2流出口30から流出した排水は、1つの排水貯留槽14に共通して貯留するようにしてもよいし、2つの排水貯留槽14に個別に貯留するようにしてもよい。また、たとえば、汚水管に分岐部16を設けて、汚水のみを排水貯留槽14に貯留するようにしてもよい。これによって、非常時に必要性の高いトイレを少なくとも使用可能とすることもできる。
【0061】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。