特許第6085151号(P6085151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6085151床開口部穴埋め工法及びそれに使用する型枠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085151
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】床開口部穴埋め工法及びそれに使用する型枠
(51)【国際特許分類】
   E04G 11/48 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   E04G11/48
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-255994(P2012-255994)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-101734(P2014-101734A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小牧 義知
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−173230(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3063628(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G9/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に開いた開口部をモルタルにより埋める工法において、前記開口部の周面から開口部内に水平向きの鉄筋により差筋アンカーを施工し、前記開口部を橋渡しするように前記床の上面に梁材を渡し、前記開口部の下側から平板により当該開口部を覆うにあたり、前記梁材に設けられた貫通孔と前記平板に設けられた貫通孔の間に、前記床の厚さよりも短い第1ネジ棒と、前記第1ネジ棒の一端に一部のネジ山が螺合される第1ナットと、前記第1ネジ棒の他端に一部のネジ山が螺合された第2ナットと、前記第1ナットの他部のネジ山に螺合された第2ネジ棒と、前記第2ナットの他部のネジ山に螺合された第3ネジ棒とからなり、前記第1ナットから第2ナットまでの長さが、前記モルタルにより埋める厚さに相当する長さのネジ具を配置して、予め、前記平板の貫通孔から前記ネジ具の第2ネジを突出させて第3ナットにより螺合しておき、その後、前記ネジ具が蝶合された前記平板を前記開口部の下側から当該開口部を覆うように前記ネジ具の側を上向きに当該開口部周囲にあてがって当接させ、床の上では、開口部周囲にあてがわれた平板に上向きに螺合されている前記ネジ具の第3ネジ棒を前記梁材の貫通孔から突出させ、第3ナットを螺合して、前記平板を前記梁材に支持させたのち、前記開口の上側からモルタルを充填し、前記モルタルが硬化した後、前記第1ナットから第2ナットから前記第2ネジ棒、第3ネジ棒及び前記ナットを外して、梁材、平板を取り外すことを特徴とする床開口部穴埋め工法。
【請求項2】
前記開口部の対角線寸法が、前記平板の必要な平面かぶり寸法やボルト類のさらなる寸法付加をもってしても大きい場合、前記開口部の周面から開口部内に水平向きに差し込む差筋アンカーの差し込み端部を雄ネジにし、かつ差筋アンカーを入れるために開ける横穴にホールインアンカーを入れて雌ネジを設置することで差筋アンカーを着脱可能とし、前記ネジ具と前記平板とを、前記第2ネジ棒と前記第1ナットと前記第1ネジ棒と前記第2ナットとをそれぞれ螺着し、前記第2ネジ棒に螺着した第3ナットと前記第1ナットとの間に前記平板をそれぞれのワッシャを介して予めセットとして組み付け段取りしておくことで、前記差筋アンカーを着装する前に、床上から前記第1ネジ棒の一本を持って、段取りした前記セットを傾けて前記開口部対角線をかわすことで、床上から前記平板を床下に当接させて、開口部周囲にあてがわれた前記平板に上向きに螺合されている前記ネジ具の第3ネジ棒を前記梁材の貫通孔から突出させ、第3ナットを螺合して、前記平板を前記梁材に支持させ、その後、前記横穴のホールインアンカー内雌ネジに、差し込み端部の雄ネジを螺着することで前記差筋アンカーを設置し、その後前記開口の上側からモルタルを充填することを特徴とする請求項1に記載の床開口部穴埋め工法
【請求項3】
前記平板の下に当該平板の下面に当接されるアングル材を配置し、前記第2ネジ棒に前記平板の貫通孔に加えてアングル材に設けられた貫通孔を貫通させてから、ナットを螺合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の床開口部穴埋め工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に開けられた開口を元の平坦な床面に穴埋めする床開口部穴埋め工法及びそれに使用する型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
多層階のコンクリート製の床を有するRC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)、S造(鉄骨造)の建築物等では、コンクリート製の床面に例えば空調用のダクトを床貫通するなど、種々の目的で開口が形成されている。リフォーム工事によりこのような開口が不要になる場合には、その床部分を利用可能とするため、差し筋を施した後にモルタルコンクリートなどの充填材で穴埋めし塞がなければならないことが生じる。
【0003】
この場合、従来では例えば次のような工事が行われている。
図4は工事の対象である床の開口部100aを示し、図4Aに平面視を、図4Bには断面側面視を表している。図5及び図6は工事の手順を示す説明図であり、図において、左側には平面視を、そして右側には断面側面視を表している。
【0004】
図4に示す開口部100aは平面視四角形であり、大きさは平面視において例えば縦350mmで横400mmほどのものである。この寸法は当然床を貫通していたダクトや配管群、ケーブルラックなどの大きさにより変わるものである。開口部100aの周りは床スラブ100である。床スラブ100の厚さは例えば150mmや200mmといった数十cm程度である。
【0005】
工事の手順を説明すると、図5Aに示すステップ1では、先ず床スラブ100の下階に足場を仮設し、或いは移動用足場などを仮設置し、下から床スラブ100の下面に作業員が寄り付けるようにする。そして、開口部100aの周面を形成した床スラブ100に横穴a1を開け、これに鉄筋を差し、開口部100a内に水平向きの差筋アンカー1を施工する。ここでは差筋アンカー1は開口部100aの周面をなす四面のそれぞれに2本設け、高さを異ならせて縦横に交差させるように配置する。
【0006】
図5Bのステップ2では、床スラブ100の下面から、適当に小さい穴を開口した平板(コンクリート型枠用合板、通称「コンパネ」)2を作業員が上向きに開口部周囲にあてがって当接させ、開口部100aの下面を仮封鎖する。床上に位置する別な作業員は、スラブ100の上面に貫通孔3aの開いた2本のアングル材3を水平状に載置し、開口部100aの対向辺間に橋渡し状に位置させる。
【0007】
この後、複数本の鈍し鉄線(通称、「番線」)4のそれぞれをU字状に曲げて、コンパネ2に上述のように先行して形成された、1本の番線ごとに二つの縦向きの透孔2aに挿し通し、各番線4の一対の端部を上方へ導き、アングル材3の隣接した貫通孔3aに挿し透す、という作業を主に床上の作業員が行う。この状態で、各番線4の一対の端部をねじって結合させることにより環状とし緊張状に締結してコンパネ2を穴開きアングル材3側に引き寄せ床スラブ100の下面に密着状に圧接させる。この後やっと床下からコンパネ2を支持していた床下作業員は解放される。
【0008】
図6Aに示すステップ3では、コンパネ2を下側の型枠として開口部100aの上方からモルタル5を流し込む。モルタル5はコンパネ2により下面が成形される。固化前のモルタル5の上面5aは床スラブ100の上面より少し低い状態に均しておく。この状態で、モルタル5を固化させる。
【0009】
図6Bのステップ4では、再び階下の足場を利用したり、移動用足場を再度設置して床下作業員と床上作業員とを配置して、各番線4を切断し、コンパネ2及び穴開きアングル材3を取り外す。
図6Cのステップ5では、固化したモルタル5の上下面から張り出した番線4部分を切除する。床下の床スラブ100の下面では、番線4はニッパで切断しても残存してしまう。モルタル5の上面5aは仕上げモルタル6で被い、床スラブ100の上面に合致させる。
【0010】
特許文献1には、コンクリート打設の際に、コンクリートの噴出を抑え平滑な打設面を作るため、コンパネをボルトナットで締結すて型枠を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、床スラブ打設の際に、下階の床スラブから支承杭により床枠パネルを支えて、モルタル打ち込みを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−157778号公報
【特許文献2】特開2000−8610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した床開口部穴埋め工法においては、次のような問題があった。
即ち、モルタル5の下面から下方へ張り出した番線4部分は前記ステップ5にて切除するが、このとき番線4をモルタル5の下面に合致させて切断することは不可能であり、番線4の切断箇所が外観部に現れる状態となる。このため開口部100aの塞ぎ箇所の下面の見栄えが損なわれる。そして、この番線4の切断箇所がモルタル5の上面にも同様に現れることから、仕上げモルタルの塗り代を余分に多く見ておかなければならず、その手間がわずらわしい。
【0013】
また、ステップ3において開口部100a内に打設したモルタル5の重量がコンパネ2を介して番線4で支持されることになるが、上述した工事手順によるときは、モルタル5の重量で番線4が延び変形してコンパネ2が下がる現象が生じる。この現象が生じると、床スラブ100の下面とコンパネ2との間からモルタル5が押し出され開口部100aの外側へはみ出し固化する。コンパネ2を取り外した後のモルタル5の下面側の外観を大きく損ねることなる。この問題を単に番線4の使用本数を増やすのみにより解決することは番線4の性質や作業スペースの関係から実際上困難である。リフォーム工事では、特許文献2のように下階のフロアから支承杭を立ててコンパネ2を支えることはほぼ困難である。
【0014】
本発明は、上記のような問題点を解消させるために創案されたものであって、リフォーム工事を行うフロアとその階下の作業、場合によっては工事を行うフロアのみの作業で、型枠を簡単に且つ強固に設置し床開口部の穴埋めを行う工法及びこれに使用する型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による床に開いた開口部をモルタルにより埋める工法は、前記開口部の周面から開口部内に水平向きの鉄筋により差筋アンカーを施工し、前記開口部を橋渡しするように前記床の上面に梁材を渡し、前記開口部の下側から平板により当該開口部を覆うにあたり、前記梁材に設けられた貫通孔と前記平板に設けられた貫通孔の間に、前記床の厚さよりも短い第1ネジ棒と、前記第1ネジ棒の一端に一部のネジ山が螺合される第1ナットと、前記第1ネジ棒の他端に一部のネジ山が螺合された第2ナットと、前記第1ナットの他部のネジ山に螺合された第2ネジ棒と、前記第2ナットの他部のネジ山に螺合された第3ネジ棒とからなり、前記第1ナットから第2ナットまでの長さが、前記モルタルにより埋める厚さに相当する長さのネジ具を配置して、予め、前記平板の貫通孔から前記ネジ具の第2ネジを突出させて第3ナットにより螺合しておき、その後、前記ネジ具が蝶合された前記平板を前記開口部の下側から当該開口部を覆うように前記ネジ具の側を上向きに当該開口部周囲にあてがって当接させ、床の上では、開口部周囲にあてがわれた平板に上向きに螺合されている前記ネジ具の第3ネジ棒を前記梁材の貫通孔から突出させ、第3ナットを螺合して、前記平板を前記梁材に支持させたのち、前記開口の上側からモルタルを充填し、前記モルタルが硬化した後、前記第1ナットから第2ナットから前記第2ネジ棒、第3ネジ棒及び前記ナットを外して、梁材、平板を取り外して床開口部の穴埋めを行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コンパネと梁材とを第1ナット、第2ナット、第1ネジ棒、第2ネジ棒、第3ネジ棒からなるネジ具を介して、コンパネの位置を安定的に維持できるため、床スラブの下面とコンパネとの間からモルタルに漏れ出るのを抑制することができる。
【0017】
またコンパネの位置保持に従来使用していた番線を使用しなくて済むため、番線が打設モルタル等の下面側の見栄えを損ねることはなくなる。そして、第1ナット、第2ナット及び第1ネジ棒はモルタルに埋め込まれ、第2ネジ棒及び第3ネジ棒は最終的に取り外されるため、塞がれた床の下面側の見栄えを損ねることのないのである。
【0018】
さらには第1ナットや第2ナットはその雌ネジを外観部に位置させるように使用するときは、必要時に該雌ネジを介してフック部材などの螺着が可能となる。またモルタルを使用した仕上げ処理が第1ナット又は第2ナットの端面を被うのみで済む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ネジ具の正面図である。
図2】コンクリート製の床面の開口を塞ぐ手順を示す図である。
図3図2に示す工事手順に続いて行われる手順を示す図である。
図4】コンクリート製の床面の開口の一例を示す図である。
図5】従来における工事手順を説明するための図である。
図6図5に示す工事手順に続く手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施例の床開口部穴埋め工法について説明する。
図1は本工法に係るネジ具101を示し、Aは分解した状態の正面図であり、Bは使用状態の正面図である。
【0021】
ネジ具101は型枠の形成に使用されるものであって、第1ネジ棒7、第2ネジ棒8及び第3ネジ棒9と、第1ナット10と第2ナット11を備えている。このほか、ネジ具101に付属するものとして、第3ナット12と、4枚のワッシャ13a、13b、13c、13dを用いる。
【0022】
第1ネジ棒7は床スラブの厚さよりも短く、型枠に初期に流し込まれるモルタルの厚さよりも短い。これは、第1ネジ棒7の両側に、第1ナット10、第2ナット11を夫々半分程度まで螺合し、第1ナット10、第2ナット11及び第1ネジ棒7を合わせた長さが、型枠に初期に流し込まれるモルタルの厚さとほぼ同じ長さとしたときに、第1ナット10、第2ナット11の中に螺合していないネジ山が半分程度、残るようにするためである。
【0023】
第1ナット10、第2ナット11及び第3ナット12は、所謂「袋ナット」ではなく、貫通孔の全長範囲に雌ネジを形成されている。
各ネジ棒7、8、9は、第1ナット10、第2ナット11及び第3ナット12と螺合する箇所にネジ山が設けられていれば、必ずしもその全長範囲に雄ネジを形成しなくてもよい。
【0024】
次に本工法について説明する。
ここでは、モルタルを打設することにより図4中のA、Bに示す開口部100aを塞ぐ工事を行うこととする。
図2は本工法の手順を示す説明図であり、図中、右側は平面視を示し、左側は側面視による断面を示す。図3図2に示す工事手順に続いて行われる工事手順を説明するための図であり、右側は平面視を示し、左側は側面視による断面を示す。
【0025】
先ず、図2に示すステップ1では、先行して床スラブ100の下階に足場を仮設し、或いは移動用足場などを仮設置し、下から床スラブ100の下面に作業員が寄り付けるようにする。そして、図4中に示した従来例のステップ1に示すと同様に、差筋アンカー1を設ける。
ステップ2では、床スラブ100の上面に適当数(例えば2本)の梁材30を水平状に、開口部100aの対向周面間に橋渡し状に床上の作業員により載置して位置させる。梁材としては先に示した従来例と同様にアングル材を用いるのが良い。
【0026】
次に、ネジ具101を図1Bに図示したように組み付ける。つまり、第1ナット10、第2ナット11を第1ネジ棒7の両端に連結し、初期に流し込まれるモルタルの厚さとほぼ同じ長さとする。このとき、第1ナット10、第2ナット11の夫々には、一部のネジ山が螺合され、螺合していないネジ山が他部のネジ山として半分程度、残っている状態である。そして、この残っているネジ山に対して、第2ネジ棒8及び第3ネジ棒9を両側から螺入する。第3ネジ棒9は、床スラブ100の上面に配置された梁材30の貫通孔3aを貫通させ、貫通孔3aの両側をワッシャ13a、13bにより挟んで、第3ナット1で締結しておく。
【0027】
床スラブ100の下から開口部100aに対してコンパネ2をあてがい開口部100aの下面を封鎖した状態とし、第2ネジ棒8をコンパネ2の貫通孔2aを貫通させる。貫通孔2aは、第2ネジ棒8の位置を予定して予め開けておいたものである。さらに、コンパネ2の下側から梁材31(上側と同様に、アングル材を使用した)を配置し、第3ナットで締結する。ワッシャ13c、13dはコンパネ2と梁材31を挟んで配置される。この結果、ネジ具101を介してコンパネ2は梁材30に支持される。
ここで、ステップ1とステップ2の間に、図3Cに示すステップ1’を行うと、より効率的に作業を進められる。すなわち、スラブ100の厚みは予めわかっていることが多いので、前もっての段取りとして開口部100a位置での組立を省くため、コンパネ2の第2ネジ棒8を貫通させるために予め開口させる貫通孔2a毎に、ワッシャ13dと第3ナット12を一端から螺設させた第2ネジ棒8を各々貫通させ、第2ネジ棒8のもう一端からワッシャ13c及びロングナットである第1ナット10をコンパネ2に対してワッシャ13cが当接するように蝶着して、コンパネ2に垂直に第1ナット10が立設するように固定する。その後第1ネジ棒を第1ナット10に蝶着した後、第2ナット11を第1ネジ棒7の他端に蝶着させ、コンパネ上面と第2ナット11の上端の間隔を、型枠に初期に流し込まれるモルタル厚さとほほ同じ長さになるように調整する。そして、第2ナット11が回転しないように第3ネジ棒9を蝶着してネジ具を形成しておく。これを現地ではない作業場で予めセットしておくことで作業性が向上する。このセットを、開口部100aの下面から、床下の作業者がネジ具を上向きにして開口部100aの下面に当接するように押し付ける(図3Cのイ)。このセットを開口部100aの下面から押し付けた後、床上では、第2ナット11の上端が初期に流し込まれるモルタル厚さレベルであることを確認後、第2ナット11の雌ネジをめがけて第3ネジ棒9を螺着して立設した後、ワッシャ13bを第2ナット11上端を載置後、梁材30の貫通孔3aを通し、貫通孔3aの上方からワッシャ13a、第3ナット12を第3ネジ棒9に螺着して、コンパネ2を梁材30によりしっかりと上方へ吊り上げ固定する。
アングル材3である梁材30の位置あわせが自動ででき、かつ、ワッシャ13a、第3ナット12の梁材30を介しての蝶着により、床上の作業もとてもスムーズに行える。
【0028】
ステップ3では、開口部100aの内にモルタル5を打設し、上側の梁材30の下面に至るまで初期の流し込みを行う。
ステップ4では、モルタル5が硬化した後、床スラブ100の下面側において第3ナット12、ワッシャ13c、13d、コンパネ2及び梁材31を第2ネジ棒8から取り外し、第2ネジ棒8を第1ナット10から取り外す。また床スラブ100の上面側において第3ナット12、ワッシャ13a、13b及び梁材30を第3ネジ棒9から取り外すと共に第3ネジ棒9を第2ナット11から取り外す。
【0029】
第1ナット10、第1ネジ棒7及び第2ナット11はモルタル5内に埋まった状態となっている。したがって、モルタル5の下面には第1ナット10の下端面がワッシャ13cの厚さ分の深さ位置にて外観部に露出する。またモルタル5の上面には第2ナット11の上端面がワッシャ13bの厚さ分の深さ位置にて外観部に露出する。モルタル5の上下面における第1ナット10及び第2ナット11の露出した箇所にはワッシャ13b、13cの跡が凹み箇所5bとして形成される。そして第1ナット10及び第2ナット11はこの凹み箇所5bを通じてその端面形状が見える状態となる。
【0030】
ステップ5では、第1ナット10及び第2ナット11の露出した箇所に存在する凹み箇所5bに必要に応じて仕上げモルタル7を供給して該箇所を隠す。または、凹み箇所5bについては何らの処理を行わずそのままの状態で放置しても良い。このようにしておけば、第1ナット10はこれの雌ネジに吊りフックなどを螺着に利用することができる。
【0031】
上記実施例では、第1ネジ棒7、第2ネジ棒8及び第3ネジ棒9の何れも、その全長範囲に雄ネジを形成したものとしたが、これらネジ棒7、8、9の適当な位置に手回し道具(スパナやモンキーレンチ等)の口部を掛け止めるための掛止面を形成することも差し支えない。このようにすれば、これらネジ棒7、8、9とナット10、11、12との脱着が手のみでは行い難いときに手回し道具により容易に行えるようになる。また、コンパネ2を支える下側の梁材31は、場合よっては省略することができる。
また、現地ではない作業場で、第2ネジ棒8、第3ナット12、梁材31、コンパネ2、第1ナット10、第1ネジ棒7、第2ナット11、それぞれのワッシャを予めセットとして組み付け段取りしておけば、開口部100aの対角線寸法が、コンパネ2の必要な平面かぶり寸法やボルト類のさらなる寸法付加をもってしても大きい場合、かつ、開口部100aの周囲を形成した床スラブ100に開けた横穴a1にホールインアンカーを入れて内部に雌ネジを設置し、開口部100a内に水平向きに差す差筋アンカー1の差し込み端部を雄ネジにして前記ホールインアンカーに螺着する構造である場合で差筋アンカー1を脱着することを可能とした場合、床上の作業者が第1ネジ棒7の1本を持って、そのセットを傾けて開口部対角線をかわすことで、床上からコンパネ2を床下に当接することが可能な場合がある。この際は、床下の作業員が不要になる。
【符号の説明】
【0032】
101 ネジ具
2 平板(コンパネ)
3 アングル材
5 モルタル
7 第1ネジ棒
8 第2ネジ棒
9 第3ネジ棒
10 第1ナット
11 第2ナット
13a〜13d ワッシャ
30、31 梁材
図1
図2
図3
図4
図5
図6