特許第6085173号(P6085173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085173
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電磁発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   H02K35/02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-546898(P2012-546898)
(86)(22)【出願日】2011年11月30日
(86)【国際出願番号】JP2011077592
(87)【国際公開番号】WO2012073980
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月7日
【審判番号】不服2016-511(P2016-511/J1)
【審判請求日】2016年1月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-267376(P2010-267376)
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-294573(P2010-294573)
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-208179(P2011-208179)
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 伸治
【合議体】
【審判長】 中川 真一
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−148144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの円板状の永久磁石が、積層方向に磁化されて互いに同極面同士を向かい合わせて積層された磁石組立体と、
前記磁石組立体の側面側の周囲に円筒形状に形成され、前記積層方向と平行に円筒軸を有するケースと、
前記ケースの円筒胴部の溝に周方向に巻き回され、前記積層方向と平行に巻装されるソレノイドコイルとを備え、
前記磁石組立体は、前記ソレノイドコイルと相対的な位置が変更可能に構成されており、
前記磁石組立体に対向し前記磁石組立体と反発する反発用磁石を有し、前記永久磁石の同極面同士を向かい合わせた平面位置が、静止位置で前記ソレノイドコイルの巻装軸方向の中心と一致するように、前記磁石組立体を保持する保持部を備え、
前記永久磁石の前記巻装軸方向と垂直方向の端面の直径は、前記永久磁石の前記巻装軸方向長さの2倍以上であることを特徴とする電磁発電機。
【請求項2】
前記保持部は、前記磁石組立体に対向し前記保持部と前記磁石組立体との距離を変更する距離調整機構とを備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁発電機。
【請求項3】
前記保持部は、前記磁石組立体に対向し前記磁石組立体と反発する磁極の保持部用永久磁石と、前記保持部用永久磁石と前記磁石組立体との距離を変更する距離調整機構とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁発電機。
【請求項4】
前記距離調整機構は、ねじ機構であることを特徴とする請求項2又は3に記載の電磁発電機。
【請求項5】
前記保持部と前記磁石組立体の一方の前記永久磁石との間に第1の気室を備え、前記保持部と前記磁石組立体の他方の前記永久磁石との間に第2の気室を備え、
前記第1の気室と前記第2の気室とは、大気に連通することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石とソレノイドコイルがコイル巻装軸方向に相対移動することにより発電を行う電磁発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石とソレノイドコイルがコイル巻装軸方向に相対的に移動して発電する発電機は、永久磁石とソレノイドコイルが間隔を隔てて対向配置される。そして、当該発電機は、永久磁石とソレノイドコイルの相対的な移動による運動エネルギーを、コイルに誘起される電気エネルギーに変換する。
【0003】
ここで、従来の発電機では、複数の永久磁石を同じ極同士が対向する向きに積層させて磁束密度を局所的に高めて、コイルに多くの磁束を鎖交させることで、高い電力を得るようにしている(特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術では、単一の永久磁石の外周側にコイルを周方向に巻回して対向配置させて、外部環境の振動周波数と、コイルと相対移動する永久磁石の移動方向の固有振動数を一致させることで、外部の振動との共振により高出力の電力を得るようにした発電機が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−296144号公報
【特許文献2】特開2002−374661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術にあっては、永久磁石が複数のコイルの間を移動して発電する構成になっているため、永久磁石とコイルが磁束密度の小さい位置に対向して、永久磁石がわずかな移動距離で往復運動した場合、十分な電力が得られなくなってしまうという課題がある。
【0007】
また、他の従来技術にあっては、永久磁石をコイルバネで保持する構成になっているため、永久磁石の移動方向の固有振動数を変更して調整する場合は、非線形のコイルバネを用いてたわみ量を調整しても、振動数を大幅に変更する場合はたわみ量が大きくなるため、有効長の長いコイルバネを使用しなければならず、装置が大型化してしまうという課題がある。また、コイルバネの磁化を防止するようにコイルバネと永久磁石の間に磁化防止手段を設けるために、装置が複雑化してしまう。
【0008】
そこで、この発明は、小さい環境振動からでも発生電力が大きく、外部の振動周波数に合わせて永久磁石の移動方向の固有振動数を幅広く調整することができて、小型で、効率の良い電磁発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電磁発電機の第1の特徴は、複数の永久磁石が、積層方向に磁化されて互いに同極面同士を向かい合わせて積層された磁石組立体と、磁石組立体の側面側の周囲に位置するソレノイドコイルとを備え、磁石組立体はソレノイドコイルと相対的な位置が変更可能に構成されており、磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面位置が、静止位置でソレノイドコイルの巻装軸方向の中心と一致するように、磁石組立体を保持する保持部を備えることである。
【0010】
かかる特徴によれば、静止位置で、積層方向に磁化された2つの永久磁石の同極面同士を向かい合わせた平面位置は、磁石の周方向に向かって磁束密度が最も大きくなっている。その平面位置にソレノイドコイルの巻装軸方向の中心を一致させることで、ソレノイドコイルに鎖交する磁束を最大にすることができる。このため、永久磁石の移動距離が小さくてもソレノイドコイルは大きな電力が得られる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に記載の電磁発電機において、保持部は、永久磁石であることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体を、精度良くソレノイドコイルの巻装軸方向の中心を一致させることができる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に記載の電磁発電機において、保持部は、弾性体であることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体を、精度良くソレノイドコイルの巻装軸方向の中心を一致させることができる。
【0013】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1から3の特徴に記載の電磁発電機において、保持部は、磁石組立体に対向し保持部と磁石組立体との距離を変更する距離調整機構とを備えることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体と保持部の距離を調整して保持部のバネ定数を変更することによって、磁石組立体の移動方向の固有振動数を変更することができる。そのため、外部の振動周波数に応じて磁石組立体を共振させることができて、コイルに大きな電力を発生させることができる。
【0014】
本発明の第5の特徴は、本発明の第1から2または第4の特徴に記載の電磁発電機において、保持部は、磁石組立体に対向し磁石組立体と反発する磁極の保持部用永久磁石と、保持部用永久磁石と磁石組立体との距離を変更する距離調整機構とを備えることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体と永久磁石との反発力は離間する距離と指数関数的に変化するバネ特性を持つため、小さな距離の変更で大きく異なるバネ定数に変更できる。このため、保持部を僅かに移動しても固有振動数を大きく変化させることができて、電磁発電機を小型にすることができる。
【0015】
本発明の第6の特徴は、本発明の第4から5の特徴に記載の電磁発電機において、距離調整機構は、ねじ機構であることである。
かかる特徴によれば、微小な距離調整ができるため、精度よく固有振動数を調整できる。
【0016】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1から6の特徴に記載の電磁発電機において、保持部と磁石組立体の一方の永久磁石との間に第1の気室を備え、保持部と磁石組立体の他方の永久磁石との間に第2の気室を備え、第1の気室と第2の気室とは、大気に連通することである。
かかる特徴によれば、磁石組立体の移動による第1と第2の気室の体積変化に伴う気室内空気の流動は、磁石組立体外周の狭い通路を通る空気の流動に依存しない。そのため、磁石組立体の振動は、狭い通路を流動する空気による減衰が小さく、共振時の応答倍率が大きくなって、磁石組立体はソレノイドコイルと大きく高速で相対移動できる。このことから大きな電力が得られる。
【0017】
本発明の第8の特徴は、本発明の第1から7の特徴に記載の電磁発電機において、保持部は、磁石組立体を狭持するように保持部を備えていることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体を、精度良くソレノイドコイルの巻装軸方向の中心と一致させることができる。
【0018】
本発明の第9の特徴は、複数の永久磁石が、積層方向に磁化されて互いに同極面同士を向かい合わせて積層された磁石組立体と、磁石組立体の側面側の周囲に位置するソレノイドコイルとを備え、ソレノイドコイルは、磁石組立体と相対的な位置が変更可能に構成されており、ソレノイドコイルの巻装軸方向の中心が、静止位置で磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面位置と一致するように、ソレノイドコイルを保持する保持部を備えることである。
かかる特徴によれば、静止位置で、積層方向に磁化された2つの永久磁石の同極面同士を向かい合わせた平面位置は、磁石の周方向に向かって磁束密度が最も大きくなっており、その平面位置にソレノイドコイルの巻装軸方向の中心を一致させることで、ソレノイドコイルに鎖交する磁束を最大にすることができる。このため、ソレノイドコイルと永久磁石の相対移動距離が小さくてもソレノイドコイルは大きな電力が得られる。
【0019】
また、ソレノイドコイルが磁石組立体と位置変更可能に構成されているため、振動して変位するソレノイドコイルを軽量に設定することができる。大きな電力を得るように永久磁石を大型にした場合には、永久磁石を可動させる構成は、永久磁石の質量が大きいため外部の環境振動と共振する周波数に、バネ荷重も大きくして合わせる必要がある。大きな質量と大きなバネ荷重は永久磁石が振動するときの移動方向ガイド部材との摩擦が大きくなって効率の良い発電ができない。しかし、軽量のソレノイドコイルを可動させる構成は、バネ荷重も小さくできるため、移動方向ガイド部材との摩擦が小さくて、効率の良い発電ができる。
【0020】
本発明の第10の特徴は、本発明の第1から9の特徴に記載の電磁発電機において、磁石組立体とソレノイドコイルの相対的な位置が変更する距離をX、ソレノイドコイルの巻装軸方向長さをL、磁石組立体の積層方向長さをTとした場合、XがX≦T×0.7−Lとなるように設定されていることである。
かかる特徴によれば、後述する図3の磁束密度分布に示すように、単一の磁極極性の範囲内をソレノイドコイルと磁石組立体が相対移動するため、ソレノイドコイルに逆向きの起電力が発生しない。このことから大きな電力が得られる。
【0021】
本発明の第11の特徴は、本発明の第1から10の特徴に記載の電磁発電機において、永久磁石の巻装軸方向と垂直方向の端面長さは、永久磁石の巻装軸方向長さの2倍以上であることである。
かかる特徴によれば、磁石組立体と反発用磁石の距離が広く確保できて、接触を防止して信頼性の高い電磁発電機が得られる。また、反発用磁石を小さくできるため電磁発電機を小型、軽量にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電磁発電機によれば、外部の小さい環境振動からでも発生電力の大きい電磁発電機を形成することができる。したがって、本発明は、電磁発電機の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例1に係る電磁発電機の断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る電磁発電機の動作時の断面図である。
図3】磁石組立体の磁束密度分布を示す図である。
図4】厚みの異なる磁石組立体の磁束密度分布を示す図である。
図5】単位磁石のソレノイドコイルの巻装軸方向と垂直方向の端面長さとソレノイドコイルの巻装軸方向長さを示す断面図である。
図6】単位磁石の軸方向長さの異なる磁石組立体の反発用磁石とのバネ特性を示す図である。
図7】磁石組立体を周波数60Hz、全振幅1mmで振動させる時のバネ定数の表である。
図8】厚みの異なる磁石組立体の端面側の磁束密度分布を示す図である。
図9】厚みの異なる磁石組立体の重量比と端面側の磁束密度の図である。
図10】本発明の電磁発電機の断面図である。
図11】本発明の実施例2に係る電磁発電機の断面図である。
図12】本発明の実施例2に係る電磁発電機の斜視図である。
図13】本発明の実施例2に係る変形例1の電磁発電機の断面図である。
図14】本発明の実施例2に係る変形例2の電磁発電機の断面図である。
図15】本発明の実施例2に係る変形例3の電磁発電機の斜視図である。
図16】本発明の実施例3に係る電磁発電機の断面図である。
図17】本発明の実施例3に係る電磁発電機の斜視図である。
図18】本発明の実施例3に係る変形例1の電磁発電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)
以下、本発明に係る電磁発電機の一実施形態(実施例1)を図1から図10を参照して説明する。
図1に示すように、電磁発電機1は、磁石組立体3と磁石保持体12と、磁石組立体3の移動を案内するガイド棒11と、ガイド棒11を両端から保持するハウジング23、24と、磁気ばねとして作用して磁石組立体3を反発させる反発手段としての反発用磁石4、5と、ケース22と、磁石組立体との電磁誘導作用により電力を発生するソレノイドコイル21とを備える。
【0025】
ハウジング23、24は、円板により形成される。
ガイド棒11は、丸棒により形成される。また、ガイド棒11はハウジング23、24を形成する円板の一方の面の円中心から他方の面と直交する方向に延長するように設けられる。
磁石保持体12は、内面をガイド棒11が貫通するように取り付けられ、PPS(Polyphenylene sulfide)等の樹脂で形成されてガイド棒11の外周面と低摩擦で摺動するようになっている。
【0026】
磁石組立体3は、円の中心に磁石保持体12の筒の外周面に嵌め込まれる中心孔14を備えた円板形状の磁石である。磁石組立体3の中心孔14が磁石保持体12の筒の外周面に嵌め込まれて、磁石組立体3が磁石保持体12と同心となるように磁石保持体12に固定される。これにより外部振動に応じて磁石組立体3が磁石保持体12を介してガイド棒11上をガイド棒11の延長方向に直線的な往復移動が可能に構成される。磁石組立体3は、円の中心に磁石保持体12の筒の外周面に嵌め込まれる中心孔14を備えた2つの円板状の単位磁石15、16がガイド棒11に沿った方向に積層された構成からなる。単位磁石15は、円板の一方の円面17がS極に着磁され、円板の他方の円面側がN極に着磁されたものである。磁石組立体3は図1に示すように、単位磁石15、16のうち一方の単位磁石の円面17同士、又は、他方の円面同士を向かい合わせて磁石保持体12に挟み込まれて固定される。即ち、単位磁石15、16は、同極に着磁された面同士を向かい合わせて固定されて磁石組立体3を構成する。
【0027】
反発用磁石4、5は、円板形状の磁石であり、磁石組立体3と互いに向かい合う面同士が同極になるようハウジング23、24と接着固定される。これにより、磁石組立体3は、反発用磁石4または5に近づいた場合、同極である反発用磁石4または5により反発するので、反発用磁石4または5より離れる方向に移動する。また、反発用磁石4、5は、単位磁石15、16の外径よりも小径で且つ厚みが薄い。これにより、反発用磁石4、5は、反発する力が小さくなって、外部の低い周波数の振動(100Hz以下等の振動)でも磁石組立体3が移動する距離を長くできるようになっている。
【0028】
ケース22は、両端側のハウジング23、24に嵌め込まれている。そして、ケース22は、非磁性体で円筒形状に形成されている。ケース22は、例えば、樹脂(PPS等)等の非導電性材料で形成されることが好ましい。また、ケース22は、円筒胴部の中央に、ソレノイドコイル21が収容される溝を備える。ソレノイドコイル21が収容される溝の積層方向の中心C1は、磁石組立体3が外部の振動がない静止状態の時、同極面同士を向かい合わせた平面位置C2とほぼ一致する。
【0029】
ソレノイドコイル21は、ケース22の円筒胴部中央の溝において、周方向に巻き回された構成からなる。ケース22の溝の積層方向の中心C1が、静止時の磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面C2とほぼ一致しているため、ソレノイドコイル21の巻装軸方向中心も中心C1と一致し、静止時の磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面位置C2とほぼ一致している。
【0030】
以上のように構成された電磁発電機1は、ハウジング23または24が電動機(図示省略)等に固定される。そして、電動機を回転させると回転体のアンバランス等により電動機本体が振動し、電磁発電機1が振動する。反発用磁石4、5との磁気力によりガイド棒軸方向の均衡位置に保持された磁石組立体3は、振動によりガイド棒軸方向に直線的な往復移動を行い、外周側のソレノイドコイル21に誘導起電力が発生する。
【0031】
図3は、円筒軸と直交する方向にホール素子を向けて積層方向に移動させて磁束密度を測定した磁束密度分布の図である。磁石組立体は、積層方向に磁場配向した異方性のサマリウムコバルト磁石を、積層方向に着磁した外径φ4.2mm、内径1.6mm、厚み1mmの単位磁石とを同極面同士を向かい合わせて積層したものを用いた。なお、図3における距離はホール素子の移動距離を示す。
【0032】
本発明の構成によって、磁石組立体3は、図3に示すように単位磁石を向かい合わせた平面位置C2において、磁束密度が最も高くなっている。また、この磁束密度の最も高い向かい合わせ平面位置C2とソレノイドコイル21の巻装軸方向中心が静止時に一致している。ソレノイドコイル21は磁束密度の最も高い位置を中心にして磁石組立体3と相対移動して誘導起電力を発生する。このことから、小さい移動距離であっても大きな誘導起電力を発生することができる。
【0033】
図2は、電磁発電機の動作時の断面図を示す。合計距離Xは、磁石組立体3の反発用磁石5側に移動した最大距離X1と、反発用磁石4側に移動した最大距離X2を加えたものである。このように、合計距離Xは、磁石組立体3とソレノイドコイル21とが相対的に移動する距離を表す。Lはソレノイドコイル21の巻装軸方向の長さを表し、Tは磁石組立体3の積層方向の長さを表す。以上のように構成された電磁発電機1において、好ましくは、図2に示すように、X≦T×0.7−Lとなるように設定する。
【0034】
このように構成したことによって、磁石組立体3が反発用磁石5側に最も移動した図2(a)と反発用磁石4側に最も移動した図2(b)において、磁石組立体3は積層方向長さTの70%の範囲にソレノイドコイル21が対向するようになっている。同極面同士を向かい合わせて積層した磁石組立体の磁束密度分布は図4に示すように、向かい合わせた面の磁極磁束が磁石組立体の積層方向長さのほぼ70%の範囲にあるため、磁石組立体3が最も大きく移動した場合であっても、ソレノイドコイル21は単一磁極に対向するようになって、反対の磁極と対向して逆向の誘導起電力を発生することがない。そのため、大きな誘導起電力を発生することができる。
【0035】
図4は厚みの異なる磁石組立体3の磁束密度分布を示す図である。具体的には、図4は、積層方向に磁場配向した異方性のサマリウムコバルト磁石を積層方向に着磁し、同極面同士を向かい合わせて積層し、図3と同一方向にホール素子を移動して磁束密度を測定した結果を表す図である。なお、図4における距離はホール素子の移動距離を示す。ここで、図4(a)から図4(c)に係る磁石組立体3の単位磁石は、外形φ4.2mm、内径1.6mmとし、それぞれの厚みを変えている。一例として、図4(a)の厚みを1mm、図4(b)の厚みを2mm、図4(c)の厚みを3mmとした。同極面同士が向かい合う極性の分布する範囲は、厚み1mmの場合に1.4mm、厚み2mmの場合に2.7mm、厚み3mmの場合に4.1mmである。また、磁石組立体の積層方向長さに対するそれぞれの割合は、厚み1mmが70%、厚み2mmが68%、厚み3mmが68%であり、ほぼ70%の範囲に同一極性の磁束が分布している。したがって、磁石組立体が移動する距離Xとソレノイドコイル21の巻装軸方向長さLを加えた合計長さが、磁石組立体の積層方向長さのほぼ70%以下であれば、ソレノイドコイル21には逆向きの誘導起電力は発生しない。
【0036】
図5は、単位磁石のソレノイドコイル21の巻装軸方向と垂直方向の端面長さとソレノイドコイル21の巻装軸方向長さを示す断面図である。図5に示すように、単位磁石15、16のソレノイドコイル21の巻装軸方向と垂直方向の長さL1は巻装軸方向長さL2の2倍以上とすると良い。このように構成したことによって、磁石組立体3は、所定の固有振動数に設定された反発用磁石4、5とのバネ荷重において、体積の小さな反発用磁石4、5を用いても距離を大きくすることができる。そのため、共振時の大きな振幅においても、磁石組立体3と反発用磁石4、5は接触することがない。
【0037】
磁石組立体3と反発用磁石4、5との距離を大きくすることができる理由について、図6図7を用いて説明する。図6は重量の異なる磁石組立体を、反発用磁石との距離を変えながら荷重を測定した図である。図7は重量の異なる磁石組立体について周波数60Hz、全振幅1mmの減衰を考慮しない固有振動数を計算で求めたバネ定数の表である。また、本発明の電磁発電機による磁石組立体の減衰係数は0.1以下と小さいため、減衰のある固有振動数と減衰のない固有振動数はほぼ等しい値となることから、減衰を考慮しない固有振動数の計算で構わない。使用した磁石は、積層方向に磁場配向したネオジウム焼結磁石である。磁石組立体は、外径φ14mm、内径φ3.3mm、厚み3.5mmの単位磁石を積層した。単位磁石を1個ずつ同極面同士を向かい合わせて積層した磁石組立体は、単位磁石の円筒軸に垂直方向の端面長さ(L1)は14mmで、円筒軸方向長さ(L2)は3.5mmである。また、単位磁石の端面長さ/巻装軸方向長さの比は4である。2個の単位磁石の異極面を向かい合わせて積層して1組の単位磁石とし、2組の単位磁石の同極面同士を積層した磁石組立体は、単位磁石の端面長さ/巻装軸方向長さの比が2である。同様に3個の単位磁石を1組の単位磁石として積層した磁石組立体の単位磁石の端面長さ/巻装軸方向長さの比は1.33である。同様に4個の単位磁石の単位磁石の端面長さ/巻装軸方向長さの比は1である。それぞれ4組の磁石組立体のバネ特性の測定とバネ荷重の計算を行った。バネ特性の測定に用いた反発用磁石は、外径φ8.5mm、内径φ5.5mm、厚み0.9mmの厚み方向に磁場配向したネオジウム焼結磁石である。
【0038】
図6のバネ特性では、端面長さ/巻装軸方向長さの比(以下「比」と示す)が4の磁石組立体と比2の磁石組立体ではバネ特性が大きく異なっている。比4と比較して比2は、バネが大幅に強くなっている。比1.33と比1のバネ特性は、比2と大きな差はなく、僅かにバネが強くなっている。図6に付したa、b、c、dは、それぞれ4組の磁石組立体において固有振動数60Hz、全振幅1mmになる計算で求めたバネ定数をグラフ上にプロットしたものである。比4と比2の距離は1mm以上でほぼ同じであるが、比1.33と比1は距離が短くなる方向にシフトしている。このことから、単位磁石の端面長さを巻装軸方向長さの2倍以上とすることにより、反発用磁石と磁石組立体の距離を大きく確保することができることがわかる。
【0039】
次に、実験により得られた、バネ特性の特徴について、根拠を磁石組立体の端面側表面磁束を測定して推察した。
図8は、比4から比1まで4組の磁石組立体の、端面の磁束密度分布の図である。磁束密度の測定は、端面の円面中心線上を一端部から他端部に向けてホール素子を移動して行った。比4から比2では磁束密度が大幅に大きくなっているのに対して、比2から比1.33、比1は磁束密度の増加分は小さくなっている。このことから、比4から比2で大幅にバネが強くなっており、比2から比1.33、比1のバネは僅かに強くなるものと推察する。
【0040】
また、図9に、比4の磁石組立体の重量を1とした重量比と、測定した磁束密度を合計した磁束密度の図を示す。重量比2までは重量に比例して磁束密度が増大しているが、重量比2から重量比4まではグラフの傾きが小さくなって、重量の増加よりも磁束密度の増加は少ない。したがって、比2までは巻装軸方向長さの増加に比例して端面側の磁束密度も増加するが、比2を越えて巻装軸方向長さが増加しても端面側磁束密度は、長さ増加分よりも小さい割合で増加することを示している。このことから、比2までは磁石重量の増加とほぼ比例してバネも強くなるため、反発用磁石との距離を変えずに必要なバネ荷重を得ることができるが、比2を超えて円筒軸方向に磁石を大きくしても重量の増加に見合ったバネ強度が得られないため、反発用磁石と磁石組立体の距離を小さくして必要なバネ荷重を得なければならないと推察する。
【0041】
ハウジング23、24及び単位磁石15、16は、円板でなくても良く、多角板でも良い。また、反発用磁石4、5及び単位磁石15、16は穴を有しなくても良く、ガイド棒11、磁石保持体12を有しなくても良い。
【0042】
(実施例1の変形例)
図10は、実施例1に係る電磁発電機1の変形例を示す。反発用磁石4、5の代わりに、コイルばねのような弾性体31、32によって磁石組立体3とハウジング23、24とを連結しても良い。振動によって弾性体31、32が伸縮することで、磁石組立体3がガイド棒11に沿って直線的に往復移動可能なように構成された電磁発電機1としてもよい。
【0043】
このように構成したことによって、磁石組立体3は、単位磁石15、16の同極面同士を向かい合わせた面C2の、磁束密度が最も高い位置にソレノイドコイル21の巻装軸方向中心C1が静止時に一致しているため、磁束密度が最も高い位置を中心に磁石組立体3とソレノイドコイル21が相対往復移動する。このことから、大きな誘導起電力を発生することができる。
【0044】
(実施例2)
図11図12は、実施例2に係る電磁発電機1を示す。
図11に示すように、電磁発電機1は、磁石組立体3と、磁石組立体3を移動方向に保持する保持部27、28と、保持部27、28を収容するケース8と、磁石組立体3との電磁誘導作用により電力を発生するソレノイドコイル21とを備える。
【0045】
保持部27、28は、ハウジング23、24と反発用磁石4、5からなる。さらに保持部27、28は、保持部27、28と磁石組立体3の距離を調節する距離調整機構を有する。具体的には、ハウジング23、24は外周におねじが形成され、反発用磁石4、5を収容する窪みと、マイナスドライバー等の工具先端が嵌る溝25、26を備え、マイナスドライバー等の工具による回転で、ハウジング23、24のおねじとケース内周面のめねじによりねじ軸方向に移動可能である。
【0046】
反発用磁石4、5は、磁石組立体3の向かい合う極と同極となる面を磁石組立体3に向けて、ハウジング22、23に接着により固定される。
単位磁石15、16は反発用磁石4、5に対向する面がS極に着磁され、他方の面がN極にされたものである。磁石組立体3は反発用磁石4、5と向かい合う極が同極のため、これにより、磁石組立体3が反発用磁石4または5に近づいた場合に磁石組立体3が、反発用磁石4または5により反発して反発用磁石4または5より離れる方向に移動する。
【0047】
ケース8は、非磁性体で形成され、好ましくは、樹脂(PPS等)の非導電性材料で形成されている。ケース8の胴部の中央にはソレノイドコイル21が収容される溝が備えられている。ソレノイドコイル21が収容される溝のケース8の軸方向の中心C1は、磁石組立体3が反発用磁石4、5の磁力によって反発用磁石4、5から離れて、外部の振動がない静止状態の時、同極面同士を向かい合わせた平面位置C2とほぼ一致している。
【0048】
ソレノイドコイル21は、ケース8の胴部の中央の溝に周方向に巻き回された構成である。ケース8の溝の筒軸方向の中心C1が、静止時の磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面C2とほぼ一致しているため、ソレノイドコイル21の巻装軸方向中心も中心C1と一致し、静止時の磁石組立体の同極面同士を向かい合わせた平面位置C2とほぼ一致している。
【0049】
以上のように構成された電磁発電機1は、ケース8が取り付け部35により電動機等に固定され、電動機等を回転させると回転体のアンバランス等により電動機等の本体が振動し、電磁発電機1が振動する。そして、電動機等の振動周波数と磁石組立体3の移動方向の固有振動数が一致するように、ハウジング23、24を回転させて反発用磁石4、5と磁石組立体3との距離を調節することで、磁石組立体3が共振して振動する。磁石組立体3は、振動によりケース8の軸方向に直線的な往復移動を行い、外周側のソレノイドコイル21に誘導起電力が発生する。
【0050】
このように構成したことによって、磁石組立体3は、図3に示すように単位磁石を向かい合わせた平面位置の磁束密度が最も高くなっており、この磁束密度の最も高い、向かい合わせた平面位置とソレノイドコイル21の巻装軸方向中心が静止時に一致しており、ソレノイドコイル21は磁束密度の最も高い位置を中心にして磁石組立体3と相対移動して誘導起電力を発生する。このことから、小さい移動距離であっても大きな誘導起電力を発生することができる。
【0051】
また、反発用磁石4、5は、ハウジング23、24をマイナスドライバー等の工具の回転により、ハウジング23、24のおねじとケース内周面のめねじによりねじ軸方向に移動可能に構成されているため、ハウジング23、24と磁石組立体3との距離を調整することができる。反発用磁石4、5と磁石組立体3との距離は、距離と荷重の関係が図6に示すように距離に対して荷重が指数関数的に変化する関係にあるため、僅かな距離の調整で大幅に傾きの異なるバネ定数に設定することができる。このことから、磁石組立体3の移動方向の固有振動数は、僅かな距離の変更で幅広い周波数に変更することができるため電磁発電機の厚みを薄型にすることができる。さらに、ねじの回転による微少な距離調整ができるため、外部振動周波数に合わせた磁石組立体3の移動方向の固有振動数の調整を高精度に行うことができて、共振により磁石組立体3はソレノイドコイル21と大きく高速で相対移動できる。そのため、大きな誘導起電力を発生することができる。
【0052】
以上のように構成された電磁発電機1において、好ましくは、磁石組立体3と保持部27、28とケース8との間に形成される気室6、7が大気と連通する連通孔41、42をケース8に備えている。
【0053】
このように構成したことによって、磁石組立体3が一方の反発用磁石側に移動した場合において、体積が減少する一方側の気室と体積が増加する他方側の気室は、それぞれの気室が連通孔から空気の流入流出を行うことができる。そのため、磁石組立体3の外周面とケース8との間に形成される狭い通路を通る空気の流通を少なくすることができて、磁石組立体3の振動を減衰させる減衰係数を小さくすることができる。外部振動の入力に対する磁石組立体3の共振応答倍率Qは、一般にQ=1/2ζで与えられる。すなわち共振時の最大応答は減衰係数ζの2倍の逆数であるため、狭い通路を流動する空気による減衰を小さくすることができて共振応答倍率Qが大きくなり、磁石組立体はソレノイドコイルと大きく高速で相対移動できる。そのため、大きな誘導起電力を発生することができる。ただし、連通孔41、42はケース8になくてもハウジング23、24に形成しても良い。
【0054】
図12は、図11の電磁発電機の斜視図である。ただし、図12のようにケース8は円筒形でなくても良く、多角柱形でもよい。それに伴い、図12のハウジング23、24、単位磁石15は、ケース8の形状に合わせて、円板でなくても良く、多角板でも良い。単位磁石15が多角板であり、電磁発電機1が単位磁石15と同様の多角柱形である場合、電磁発電機1を複数設置する場合に、電磁発電機同士の間に無駄なスペースを作ることなく、設置することができる。よって、電磁発電機設置範囲あたりの発電効率が上昇する。
【0055】
(実施例2の変形例1)
図13は、実施例2の変形例1に係る電磁発電機1を示す。
図11に示した実施例2と共通する構成には、同じ符号を示し、説明は省略する。
実施例2と実施例2の変形例1では、単位磁石15、16が十字穴付皿小ねじ14とナット13により締め付けられ、磁石組立体3が形成されている点で異なる。
反発用磁石4、5は、磁石組立体3の向かい合う極と同極となる面を磁石組立体3に向けて、ハウジング23、24に接着により固定される。
【0056】
単位磁石15、16は、中心孔と孔の一方に円錐の面取を備える皿孔付の磁石である。単位磁石15、16の中心孔に十字穴付皿小ねじ14とナット13が嵌め込まれて、十字穴付皿小ねじ14とナット13を締め付けて磁石組立体3が形成される。単位磁石15、16はそれぞれ保持部に対向する面がS極に着磁され、他方の面がN極にされたものである。反発する単位磁石15の面同士を容易に一体化し、磁石組立体3を形成することが可能である。
【0057】
(実施例2の変形例2)
図14は、実施例2の変形例2に係る電磁発電機1を示す。
図11に示した実施例2と共通する構成には、同じ符号を示し、説明は省略する。
実施例2と実施例2の変形例2では、保持部27、28と磁石組立体3の距離を調節する距離調整機構が異なる。
【0058】
保持部27、28は、ハウジング23、24と反発用磁石4、5からなる。さらにハウジング23、24は、ケース8の軸方向に垂直な方向から貫通ねじ43により締め付けられている。貫通ねじ43の締め付けを緩めることで、ハウジング23、24は筒軸方向に移動可能となる。
【0059】
(実施例2の変形例3)
図15は、実施例2の変形例3に係る電磁発電機1を示す。
図11に示した実施例2と共通する構成には、同じ符号を示し、説明は省略する。
実施例2と実施例2の変形例3では、ケース部8が、磁石組立体3の位置を確認することができる、位置確認部36を有する点で異なる。位置確認部36はケース8の内部を目視できる構造であり、磁石組立体3の位置を目視で確認しながら、ハウジング23、24をケース8の軸方向に移動させることができる。また、位置確認部36に目盛等を付している場合、より正確に磁石組立体3の位置を確認でき、ハウジング23、24のより、高精度に反発用磁石4、5と磁石組立体3の距離を調節することが可能となる。
【0060】
(実施例3)
図16図17は、実施例3に係る電磁発電機1を示す。
図16に示すように、電磁発電機1は、ハウジング71と、ハウジング71に十字穴付皿小ねじ51により固定される磁石組立体3と、コイルボビン25に巻回されたソレノイドコイル21と、ソレノイドコイル21を移動方向に保持する保持部61とを備える。
【0061】
ハウジング71は、非磁性材で形成され、中央には磁石組立体3の円錐の面取り部が当接する凸部と、十字穴付皿小ねじ51が嵌め込まれるねじ孔を備えており、外周側に保持部61が取り付く円筒部を備えている。
【0062】
磁石組立体3は、単位磁石15、16が十字穴付皿小ねじ51とハウジング71により締め付けられて形成されている。単位磁石15、16は、中心孔と孔の一方に円錐の面取を備える皿孔付の磁石である。単位磁石15、16の中心孔に十字穴付皿小ネジ5を貫通させてハウジング24のネジ孔に締め付けて磁石組立体3が形成される。単位磁石15、16はそれぞれ向かい合う面がN極に着磁され、他方の面がS極にされたものである。
【0063】
保持部61は、例えばSUS304で形成された板バネである。保持部61の基端側はハウジング71の外周側円筒部に固定され、先端側はコイルボビン25に固定されている。コイルボビン25とソレノイドコイル71は、外部の振動に共振するよう保持部61のバネ荷重が設定されている。
【0064】
コイルボビン25は、非磁性材で形成され、好ましくは、樹脂(PPS等)の非導電性材料で形成されている。ソレノイドコイル21はコイルボビン25に周方向に巻回された構成である。ソレノイドコイル21の巻装軸方向の中心C1は、外部の振動がない静止状態の時、磁石組立体3の同極面同士を向かい合わせた平面位置C2とほぼ一致している。
【0065】
以上のように構成された電磁発電機1は、ハウジング71が電動機等に固定される。そして、電動機を回転させると回転体のアンバランス等により電動機本体が振動し、電磁発電機1が振動する。ハウジング71の振動は、保持部61からコイルボビン25に伝達される。コイルボビン25とソレノイドコイル21は、外部の振動周波数と共振するように保持部61のバネ荷重が設定されているため、ソレノイドコイル21は共振して外部振動の振幅よりも大きく巻装軸方向に振動し、磁石組立体3と相対移動してソレノイドコイル21に誘導起電力が発生する。
【0066】
このように構成したことによって、磁石組立体3は、図3に示すように単位磁石を向かい合わせた平面位置C2の磁束密度が最も高くなっており、この磁束密度の最も高い向かい合わせ平面位置C2とソレノイドコイル21の巻装軸方向の中心C1が静止時に一致しており、ソレノイドコイル21は磁束密度の最も高い位置を中心にして磁石組立体3と相対移動して誘導起電力を発生する。このことから、小さい移動距離であっても大きな誘導起電力を発生することができる。
図17は、図16の電磁発電機の斜視図である。
【0067】
(実施例3の変形例1)
図18は実施例3の変形例1に係る電磁発電機1を示す。
保持部61の板バネの代わりに、コイルバネ81、82によってハウジング71とコイルボビン25を連結し、振動によってコイルバネ81、82が伸縮することで、コイルボビン25とソレノイドコイル21が直線的な往復移動可能なように構成された電磁発電機1としてもよい。
【0068】
このように構成したことによって、ソレノイドコイル21は、磁石組立体3の、単位磁石15、16の同極面同士を向かい合わせた面C2の、磁束密度が最も高い位置に巻装軸方向中心C1が静止時に一致しているため、磁束密度が最も高い位置を中心にソレノイドコイル21と磁石組立体3が相対往復運動する。このことから、大きな誘導起電力を発生することができる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電磁発電機は外部の小さい環境振動からでも発生電力の大きい電磁発電機を形成することができるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 電磁発電機
3 磁石組立体
4、5 反発用磁石
11 ガイド棒
12 磁石保持体
14 磁石組立体の中心孔
15、16 単位磁石
17 単位磁石の円面
21 ソレノイドコイル
22 ケース
23、24、71 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18