特許第6085199号(P6085199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6085199ワイヤレス充電モジュール及びワイヤレス充電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085199
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ワイヤレス充電モジュール及びワイヤレス充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20170213BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20170213BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20170213BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20170213BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170213BHJP
   G01R 31/36 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 X
   H02J50/12
   H01M10/46
   H01M10/44 P
   H01M10/48 P
   G01R31/36 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-52261(P2013-52261)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-180126(P2014-180126A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 聡
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−055045(JP,A)
【文献】 特開平11−283677(JP,A)
【文献】 実開平04−003371(JP,U)
【文献】 特開2008−125268(JP,A)
【文献】 特開平07−107676(JP,A)
【文献】 特開2012−251922(JP,A)
【文献】 特開2012−222955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電コイルと共振コンデンサにより構成された受電共振回路を有する受電機と、
前記受電機の出力電力が供給される二次電池とを備え、
送電機の送電コイルと前記受電コイルの間の電磁誘導または電磁共鳴を介して前記受電共振回路に発生する交流電力を、整流回路により直流電力に変換して前記二次電池を充電するワイヤレス充電モジュールにおいて、
前記二次電池の残存容量を検出する容量検出回路と、前記容量検出回路の動作を制御する受電制御部とを備え、
前記受電制御部は、高精度で残存容量を検出する高精度測定モードと、前記高精度測定モードに比べて検出精度が低い低精度測定モードとで切換えて前記容量検出回路を動作させることが可能であり、
前記二次電池の充電時には前記高精度測定モードで、前記二次電池の放電時には前記低精度測定モードで前記容量検出回路を動作させることを特徴とするワイヤレス充電モジュール。
【請求項2】
前記受電機は、前記充電時と前記放電時とを、前記整流回路が出力する受電電圧に基づいて判別する請求項1に記載のワイヤレス充電モジュール。
【請求項3】
前記受電機は、前記低精度測定モードでは、容量検出の頻度を前記高精度測定モード時と比べて低減させる請求項1または2に記載のワイヤレス充電モジュール。
【請求項4】
前記受電機は、充放電サイクルの毎回あるいは所定の回毎に測定し記録された充放電特性を所定の頻度で平均化して、電池特性の劣化を含めた劣化後充放電特性を演算し、
積算容量、電圧特性、負荷電流特性、1サイクル毎の充放電時間、充電サイクル回数(充電時間)のうちの少なくとも1つのパラメータを用い、前記劣化後充放電特性に基づいて残存容量の演算を行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤレス充電モジュール。
【請求項5】
前記受電機は、予め測定された前記二次電池の初期充放電特性を記憶し、前記劣化後充放電特性と前記初期充放電特性を比較して差異を求め、利用時点での残存容量を補正する請求項4に記載のワイヤレス充電モジュール。
【請求項6】
前記受電機は、検出された残存容量が、設定された限界残存容量未満に達したとき、前記二次電池を電源として接続されたセット機器システムに警告信号を送信する請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイヤレス充電モジュール。
【請求項7】
送電コイルと共振コンデンサにより構成された送電共振回路を有する送電機と、
請求項1に記載のワイヤレス充電モジュールとを備えたワイヤレス充電システムであって、
前記受電機は、前記容量検出回路が検出した前記二次電池の残存容量の情報を二値化して、前記送電機側に逐次無接点でデータを転送する送信部を備え、
前記送電機は、前記転送されたデータに基づき残存容量の表示を行うか、または、前記転送されたデータを前記送電機が接続されたホストシステムに送信するように構成されたワイヤレス充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導または電磁共鳴を利用して、送電側からワイヤレス(無接点)で伝送される電力を受けて二次電池を充電するためのワイヤレス充電モジュールに関し、二次電池の残存容量を、低減された消費電力で効果的に検出するための改良に関する。また、そのようなワイヤレス充電モジュールを用いたワイレス充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめとする小型の電子セット機器に対して、ワイヤレスで給電する電力伝送システムが採用されつつある。セット機器に内蔵された二次電池を充電するために、ワイヤレス電力伝送に基づくワイレス充電システムを採用すれば、充電操作の煩雑さが大幅に改善される。また、コイン型リチウムイオン電池で動作する補聴器のような小型セット機器の場合、使用環境を考慮して防水構造が必要である場合が多いので、形態上、電池をワイヤレスで充電することが必須とされる。
【0003】
ワイヤレス充電システムは、送電機と、セット機器に組み込まれた充電機能を有する受電機により構成される。送電機の送電コイルと受電機の受電コイルの間の電磁誘導を介して電力が伝送され、受電機は、受電コイルを含む共振回路により受電した交流電力を、整流回路により直流電力に変換する。整流回路から出力される電力を充電電圧に電圧変換して、リチウムイオン二次電池等の二次電池に対する充電が行われる。
【0004】
一方、ノートパソコンなど、二次電池を電源とする民生用途の機器では、その残存容量を検出して、使用者に報知する機能は不可欠となっている。民生用の小型電池の電池制御ICでは、電流積算を高精度に行い、満充電容量から使用電荷量を差し引くことで、残存容量を求める方法が一般的である。
【0005】
例えば特許文献1には、電流積算を用いて残存容量を算出するために、満充電容量を正確に算出するように構成された残存容量検出装置が開示されている。満充電容量は電池の劣化により減少するため、二次電池の劣化後の満充電容量を正確に推定することが、残存容量の算出精度向上のために重要である。
【0006】
特許文献1に開示された装置では、電池パックの放電開始時に、電池電圧の電圧値の変化と、電池パックを流れる電流の電流値の変化から直流抵抗を求め、直流抵抗と満充電容量の関係に基づいて電池パックの満充電容量を求める第1の推定方法を実行し、電池パックの放電中に、電池電圧から予測する開放電圧と、電池パックを流れる電流の情報から得られる使用電荷量の関係から電池パックの満充電容量を推定する第2の推定方法を実行する。両方法の組合わせにより、電池の劣化を考慮した満充電容量を精度良く算出して、使用頻度が少ない電池に対しても、残存容量の検出精度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-32267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コイン型二次電池は小容量であるためバクアップ用途が多く、従来、機器システムの稼働用に利用されるケースは少なかった。例外的に、補聴器のような消費電力の少ない小型機器の場合には、コイン型電池がシステムの稼働用に使用されている。また、コイン型リチウムイオン電池は従来のコイン電池と比較して高出力であるため、今後の用途として、小型機器に限らず、機器システムの稼働用への利用が見込まれる。
【0009】
従来、コイン型二次電池では、小容量であるため残存容量検出機能を持たせることは想定されていなかった。残存容量測定のための消費電力が、使用可能時間の減少に与える影響が大きいためである。これに対して、比較的大容量のコイン型リチウムイオン電池を用いること、また、ワイヤレス充電システムを適用することにより、残存容量検出機能を搭載することが望まれるようになった。電池を使用し管理している機器システム側に残存容量を報告し、あるいは充電時の電池容量を送電側にフィードバックすることは、使用者の利便性を高めるために必要だからである。
【0010】
但し、小容量のコイン型二次電池の残存容量管理においては、精度と消費電力はトレードオフの関係にあることを考慮する必要がある。高精度に管理を行おうとすれば消費電力は増加し、省電力にしようとすれば精度が悪くなってしまう。とりわけ小容量の二次電池の場合に電池パック内で電力を消費することは、機器システムへの電力供給能力の低下を招き、機器システムの稼働時間を著しく低下させる。
【0011】
通常の二次電池は、容量が大きく、電池の残存容量を検出する回路を駆動しても充電容量に大きな影響を及ぼすことはない。従って、高い検出精度が求められることもあって、頻繁に容量検出を動作させる。しかし、コイン型二次電池の場合、通常の二次電池の場合と同様な方法で電池の容量検出を頻繁に行うと、自己消費の大きさにより電池の使用時間が極端に減少する。
【0012】
そこで本発明は、二次電池の残存容量を、省電力で効果的に検出することが可能なワイヤレス充電モジュールを提供することを目的とする。
【0013】
また、そのようなワイヤレス充電モジュールを用いた、充電動作を効果的に管理可能なワイヤレス充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のワイヤレス充電モジュールは基本構成として、受電コイルと共振コンデンサにより構成された受電共振回路を有する受電機と、前記受電機の出力電力が供給される二次電池とを備え、送電機の送電コイルと前記受電コイルの間の電磁誘導または電磁共鳴を介して前記受電共振回路に発生する交流電力を、整流回路により直流電力に変換して前記二次電池を充電するように構成される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のワイヤレス充電モジュールは、前記二次電池の残存容量を検出する容量検出回路と、前記容量検出回路の動作を制御する受電制御部とを備え、前記受電制御部は、高精度で残存容量を検出する高精度測定モードと、前記高精度測定モードに比べて検出精度が低い低精度測定モードとで切換えて前記容量検出回路を動作させることが可能であり、前記二次電池の充電時には前記高精度測定モードで、前記二次電池の放電時には前記低精度測定モードで前記容量検出回路を動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成のワイヤレス充電モジュールによれば、充電時と放電時で測定モードを切換えることにより、二次電池の消費電力を低く抑制することが可能である。すなわち、充電時には、電源は外部から供給されるので、消費電力が大きい高精度で測定しても、二次電池の稼働時間には影響がない。一方、放電時は、二次電池の自己消費電力の少ない低精度測定モードに切り替えられる。これにより、全体として省電力で、稼働時間を犠牲にせずに高精度の残存容量管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態におけるワイヤレス充電モジュールを含むワイヤレス充電システムを示すブロック図
図2】同ワイヤレス充電モジュールに含まれる容量検出回路を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のワイヤレス充電モジュールは、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0019】
すなわち、前記受電機は、前記充電時と前記放電時とを、前記整流回路が出力する受電電圧に基づいて判別する。
【0020】
また、前記受電機は、前記低精度測定モードでは、容量検出の頻度を前記高精度測定モード時と比べて低減させる。
【0021】
また、前記容量検出回路及び前記受電制御部は、充放電特性曲線により充電もしくは放電の電流と電圧値から残存容量を算出するための予め記憶されたデータに基づき、充電もしくは放電中に測定した電圧・電流のデータを用いて残存容量を算出する第1算出方法と、充電もしくは放電中に測定した電流を積算して得た積算容量を用いて残存容量を算出する第2算出方法とを実行することが可能なように構成され、前記高精度測定モードでは前記第1算出方法と前記第2算出方法とを併せて実行し、両方法の組合わせにより残存容量を算出し、前記低精度測定モードでは、前記第1算出方法と前記第2算出方法のいずれか一方のみにより残存容量を算出する。
【0022】
また、前記受電機は、充放電サイクルの毎回あるいは所定の回毎に測定し記録された充放電特性を所定の頻度で平均化して、電池特性の劣化を含めた劣化後充放電特性を演算し、積算容量、電圧特性、負荷電流特性、1サイクル毎の充放電時間、充電サイクル回数(充電時間)のうちの少なくとも1つのパラメータを用い、前記劣化後充放電特性に基づいて残存容量の演算を行う。
【0023】
また、前記受電機は、予め測定された前記二次電池の初期充放電特性を記憶し、前記劣化後充放電特性と前記初期充放電特性を比較して差異を求め、利用時点での残存容量を補正する。
【0024】
また、前記受電機は、検出された残存容量が、設定された限界残存容量未満に達したとき、前記二次電池を電源として接続されたセット機器システムに警告信号を送信する。
【0025】
本発明のワイヤレス充電モジュールは、次のように構成することができる。すなわち、送電コイルと共振コンデンサにより構成された送電共振回路を有する送電機と、上記構成のワイヤレス充電モジュールとを備え、前記受電機は、前記容量検出回路が検出した前記二次電池の残存容量の情報を二値化して、前記送電機側に逐次無接点でデータを転送する送信部を備え、前記送電機は、前記転送されたデータに基づき残存容量の表示を行うか、または、前記転送されたデータを前記送電機が接続されたホストシステムに送信する。
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
<実施の形態>
実施の形態1におけるワイヤレス充電システムについて、図1に示すブロック図を参照して説明する。この充電システムは、ワイヤレス電力伝送システムを構成する送電機1と受電機2を含む。送電機1は、送電コイルと共振コンデンサからなる送電共振回路3を備え、受電機2は、受電コイルと共振コンデンサからなる受電共振回路4を備え、両コイル間での電磁誘導または電磁共鳴を介して受電機2に電力を伝送するように構成される。
【0028】
受電機2は、例えば携帯電話や補聴器等の電子セット機器に組み込まれ、内蔵された例えばコイン型リチウムイオン電池等のような二次電池5を充電する。二次電池5から、セット機器システム6に電力を供給する。受電機2と二次電池5により、ワイヤレス充電モジュールが構成される。
【0029】
送電機1は、外部電源7、及びコンピュータ等のホストシステム8と接続されている。外部電源7から供給される電力は、電源回路9により調整され、コイルドライバ10を介して高周波電力として送電共振回路3に供給される。その動作は、送電制御部11のCPU12により制御される。送電制御部11とホストシステム8間の通信により、送電機1の動作が管理される。ホストシステム8による管理が必要の無い単純な充電のみの場合、送電機1には外部電源7のみが接続され、受電機2を管理しシステムが運用される。
【0030】
送電制御部11は更に、ADC(ADコンバータ)13、及びLED駆動部14を備えている。ADC13には、受信部15の出力信号が供給され、LED駆動部14は、LED16に接続されている。受信部15は、送電共振回路3に接続され、受電機2からの負荷変調によるデータ通信を受電共振回路4を介して受信し、受信信号をADC13に入力する。ADC13は、受信信号をデジタル信号に変換して、CPU12及びLED駆動部14に供給する。CPU12は、この通信により得られるデータを、電源回路9の制御に反映させる。また、LED駆動部14は、得られるデータの情報、例えば二次電池5の充電容量(残存容量)をLED16により表示させる。
【0031】
受電機2では、受電共振回路4の共振コンデンサの両端に発生した交流電力が、整流回路20によって直流電力に変換される。整流回路20が出力する受電電圧は充電回路21により所定電圧に制御されて、二次電池5に供給され充電が行われる。整流回路20の出力端と充電回路21の間のノードとグランド間には、ツェナーダイオード22が挿入されて、充電回路21に印加される電圧を制限している。二次電池5の負極端子とグランド間にセンス抵抗23が接続されて、二次電池5の残存容量の検出に用いられる。
【0032】
センス抵抗23の両端は、容量検出回路24に接続され、各ノードにおける電圧が検出される。容量検出回路24にはまた、二次電池5の正極端子が接続されて、二次電池5の電圧が検出される。容量検出回路24はこれらの各電圧に基づき、二次電池5の残存容量を算出する機能を有する。容量検出回路24にはさらに、整流回路20が出力する受電電圧が供給され、これに基づき動作の切り替えが行われる。すなわち、受電電圧が検出されていれば、送電機1からの送電により二次電池5の充電が行われている充電モードであることを意味する。従って、受電電圧の有無によって、充電モードと放電モードを判別することができ、充放電モードに応じた動作が選択される。
【0033】
受電制御部25は、タイマ26、I/F回路27、ROM/RAMメモリ28、及びRF回路29を備え、CPU30によりそれらの要素の動作を制御し、また、それらの要素を用いて容量検出回路24の動作を制御して残存容量の検出を行う。
【0034】
タイマ26は、容量検出回路24に含まれるADCの時間制御等に用いられる。I/F回路27は、セット機器システム6と通信を行い、二次電池5の残存容量のデータを送信したり、セット機器の状況に応じてワイヤレス充電システムの制御を行うために設けられる。ROM/RAMメモリ28には、充電もしくは放電の電流と電圧値から容量を算出するための充放電特性曲線のデータが記憶されている。CPU30は、上述のように容量検出回路24に供給される各部の電圧、及び充放電特性曲線のデータに基づいて残存容量を算出する。RF回路29は、送電機1との間で、受電共振回路4及び送電共振回路3を介した負荷変調によるデータ通信を行うために設けられ、容量検出回路24等の動作により検出された残存容量のデータ等を送信する。
【0035】
このワイヤレス充電システムは、ワイヤレス充電モジュールを構成する受電機2に特徴を有する。すなわち、受電制御部25は、高精度で二次電池5の残存容量を検出する高精度測定モードと、高精度測定モードの場合に比べて検出精度が低い低精度測定モードとで切換えて容量検出回路24を動作させる。これにより、送電機1からの送電電力により二次電池5の充電が行われている充電モード時と、二次電池5の充電が行われていない放電モード時とに応じて、充電時には容量検出回路24を高精度測定モードで動作させ、放電時には低精度測定モードで動作させる。
【0036】
このように、充電時と放電時で測定モードを切換えることにより、二次電池5の消費電力を低く抑制することが可能となる。すなわち、充電時には、電源は外部(ワイヤレス)から供給されるので、消費電力が大きい高精度で測定しても、二次電池5の稼働時間には影響がない。一方、放電時は、二次電池5を電源として検出を行う必要があるので、低精度測定モードに切り替えられる。すなわち、低精度の測定では、自己消費電力が低減されるからである。これにより、残存容量検出の動作全体として省電力となり、稼働時間を犠牲にせずに高精度の残存容量管理が可能となる。
【0037】
このような高精度測定モードと低精度測定モードの間での切換えは、本実施の形態では一例として、容量検出回路24に供給される整流回路20が出力する受電電圧に基づいて、充電時と放電時とを判別することによって行われる。
【0038】
低精度測定モードでの省電力のための動作例としては、容量検出の頻度、すなわち、測定頻度(時間間隔)、測定タイミング(電池電圧変動)等を、高精度測定モードと比べて低減させる設定とすることができる。例えば、充電中に適用する高精度測定モードでは連続して電流積算を行って残存容量を算出し、放電中に適用する低精度測定モードでは間欠的に電圧と電流の関係から残存容量を算出する設定とすることができる。あるいは、測定設定(容量検出回路24に含まれるADCの精度)を変更することにより、消費電力を低減してもよい。
【0039】
あるいは、高精度測定モードと低精度測定モードを設定するために、容量検出回路24及び受電制御部25を、次のような第1算出方法と第2算出方法を実行可能なように構成する。すなわち、第1算出方法は、充放電特性曲線により充電もしくは放電の電流と電圧値から残存容量を算出するための予めROM/RAMメモリ28に記憶されたデータに基づき、充電もしくは放電中に測定した電圧・電流のデータを用いて残存容量を算出する設定とする。第2算出方法は、充電もしくは放電中に測定した電流を積算して得た積算容量を用いて残存容量を算出する設定とする。
【0040】
高精度測定モードでは第1算出方法と第2算出方法とを併せて実行し、両方法の組わせにより残存容量を算出する。低精度測定モードでは、第1算出方法と第2算出方法のいずれか一方のみにより残存容量を算出する。これにより、低精度測定モードではいずれか一方の方法のみを実行するので、二次電池5の消費電力を低く抑制することができる。
【0041】
以上の構成において、残存容量検出の精度を向上させるために、電池特性の劣化に伴う充放電特性の変化に対する補正を行うことが望ましい。例えば、受電制御部25は、充放電サイクルの毎回あるいは所定の回毎に測定し記録された充放電特性を所定の頻度で平均化して、電池特性の劣化を含めた劣化後充放電特性を演算する。そして、積算容量、電圧特性、負荷電流特性、1サイクル毎の充放電時間、充電サイクル回数(充電時間)のうちの少なくとも1つのパラメータを用い、劣化後充放電特性に基づいて残存容量の演算を行う。
【0042】
また、受電制御部25は、予め測定された二次電池の初期充放電特性をROM/RAMメモリ28記憶する構成とする。そして、ROM/RAMメモリ28に記憶された初期充放電特性と劣化後充放電特性とを比較して差異を求め、利用時点での残存容量を補正する構成とすることができる。
【0043】
さらに、二次電池5を適切に使用するための限界残存容量を設定しておき、受電制御部25は、検出された残存容量が限界残存容量未満に達したとき、セット機器システム6に警告信号を送信するように構成されてもよい。また、充電容量を測定することで、容量劣化が既定の値まで達した時、もしくは積算された充電時間が既定の値まで達した時は、素電池を寿命と判断し、セット機器システム6、または送電機1、ホストシステム8に警告信号を送信する構成としてもよい。
【0044】
さらに、ワイヤレス充電システムの構成として、受電機2は、容量検出回路24等により検出した二次電池5の残存容量の情報を二値化して、RF回路29により送電機1側に逐次無接点でデータを転送し、送電機1は、転送されたデータに基づきLED16により残存容量の表示を行う構成とすることができる。あるいは、転送されたデータを、送電機1が接続されたホストシステム8に送信するように構成してもよい。ワイヤレス充電システムの場合、送電機1側で直接残存容量を検出することができないので、このような構成は、送電機1の充電動作制御のためには有用である。
【0045】
次に、容量検出回路24の構成例、及びその動作について、図2のブロック図を参照して説明する。容量検出回路24に設けられた入力電圧セレクタ31には、受電機2の各部の電圧が供給される。二次電池5の電池電圧、センス抵抗23の両端の電圧、及び整流回路20の出力である受電電圧である。容量検出回路24にはCPU30から測定信号切換信号が入力され、それに応じて入力電圧セレクタ31が切換えられて、上述の各部の電圧から選択された電圧がコンパレータ32に入力される。
【0046】
選択された電圧は、コンパレータ32、基準電圧生成回路33、抵抗(1.5R、R、0.5R)、及びエンコーダ34により構成されたADC(コンバータ)によりAD変換されて、CPU30に出力される。すなわち、入力電圧セレクタ31による切換に従って、二次電池5の電池電圧、センス抵抗23の両端の電圧、及び受電電圧が逐次AD変換され、エンコーダ34からCPU30に供給される。CPU30では、これらのデータ、及びROM/RAMメモリ28記憶された充放電特性曲線のデータに基づき、電池容量の演算を行う。
【0047】
上記ADCの動作は、測定制御部35により制御される。測定制御部35による制御動作のために、CPU30からレジスタ設定信号が入力され、さらに、タイマ26からの信号、及びシステムCLKも入力される。測定制御部35は、ストローブ生成回路36、CLK分周回路37、充放電モード切換部38、及びレジスタ39を備えている。レジスタ39には、CPU30からのレジスタ設定信号に基づき、ADCの動作の基本的な設定が記憶される。
【0048】
充放電モード切換部38は、整流回路20の出力である受電電圧に基づき、CLK分周回路37によるシステムCLKの分周比を設定するための切換信号を出力する。すなわち、充放電モード切換部38では、受電電圧の有無に応じて充放電モードを判別し、それによる高精度測定モードと低精度測定モードの選択に応じて切換信号を出力する。
【0049】
CLK分周回路37によるシステムCLKの分周比は、充放電モード切換部38からの切換信号及びエンコーダ34からのAD変換値に応じて決定され、出力されるクロックは、ストローブ生成回路36及びエンコーダ34に供給される。ストローブ生成回路ではストローブ信号が生成されADCに供給されて、ADCの動作タイミングが制御される。これにより、充放電のモードに応じて、AD変換する回数がストローブ生成回路36で制御される。
【0050】
タイマ26からの信号は、残存容量検出のための測定頻度(時間間隔)を管理するために用いられる。上述のように、高精度測定モードを第1算出方法と第2算出方法の併用として設定し、低精度測定モードを第1算出方法と第2算出方法のいずれか一方のみに設定した場合であれば、測定頻度を次の例のように設定する。すなわち、高精度測定モードでは、例えば、電流積算を1回/秒、及び電圧測定を8回/秒の測定頻度とし、低精度測定モードでは、電流積算を0.1回/秒、もしくは、電圧測定を0.1回/秒の測定頻度とする。
【0051】
低精度測定モードでは、ADコンバータ分解能を、例えば10ビットから8ビットに低減したり、動作クロックを10MHzから5MHzにを落とすことで、ADコンバータ回路の消費電力を低減させることもできる。上述のような測定頻度の低減と併用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のワイヤレス充電システムは、二次電池の消費電力を低減して、稼働時間を犠牲にせずに高精度の残存容量管理が可能であるため、携帯電話や補聴器等の小型の電気機器に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 送電機
2 受電機
3 送電共振器
4 受電共振器
5 二次電池
6 セット機器システム
7 外部電源
8 ホストシステム
9 電源回路
10 コイルドライバ
11 送電制御部
12、30 CPU
13 ADC
14 LED駆動部
15 受信部
16 LED
20 整流回路
21 充電回路
22 ツェナーダイオード
23 センス抵抗
24 容量検出回路
25 受電制御部
26 タイマ
27 I/F回路
28 ROM/RAM
29 RF回路
31 入力電圧セレクタ
32 コンパレータ
33 基準電圧生成回路
34 エンコーダ
35 測定制御部
36 ストローブ生成回路
37 CLK分周回路
38 充放電モード切換部
39 レジスタ
図1
図2