(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予熱手段と前記固形分除去手段との間で空気を導入し、空気が導入された過弗化物を含むガスを当該固形分除去手段に通すことを特徴とする請求項1または2に記載の過弗化物の処理装置。
前記固形分除去手段は、固形分を除去するための第1のフィルタと当該第1のフィルタの交換を行うときに当該第1のフィルタの替わりに固形分を除去する第2のフィルタとを備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の過弗化物の処理装置。
前記固形分除去手段は、過弗化物を含むガスの流通経路下流側に圧縮空気にて逆洗を行うための圧縮空気口を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の過弗化物の処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施する形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0019】
<半導体製造工場の全体構成の説明>
図1は、本実施の形態の過弗化物の処理装置が適用される半導体製造工場の全体構成について説明した図である。
図示するように本実施の形態の半導体製造工場は、半導体の製造を行う半導体製造設備1と、過弗化物を分解処理する過弗化物の処理装置2と、酸性ガスの捕集を行う酸スクラバ3とを備える。
半導体製造設備1は、通常はクリーンルームとなっており、図示する例では、半導体であるシリコン・ポリシリコンをエッチングするP−Siエッチャ11と、絶縁膜である酸化シリコン(SiO
2)等の酸化膜をエッチングする酸化膜エッチャ12と、配線に使用するために金属膜をエッチングするメタルエッチャ13とを備える。
P−Siエッチャ11、酸化膜エッチャ12、メタルエッチャ13は、乾式エッチング(ドライエッチング)装置であり、例えば、プロセスチャンバ内で、反応性のエッチングガスを用いてエッチングを行う反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置である。
【0020】
P−Siエッチャ11、酸化膜エッチャ12、メタルエッチャ13で用いるエッチングガスはそれぞれ異なるが、各装置で乾式エッチングを行った後に排気されるガスには、このエッチングガスに起因する種々の過弗化物(以下、PFC(perfluorocompound)とも云う)やCHF
3などが含まれる。この過弗化物は、CF
4、C
2F
6、C
3F
8、C
4F
8、C
5F
8、SF
6等が例示される。そして過弗化物を含む排気されたガス、すなわちエッチング排ガスは、塩素(Cl
2)ガス等の有毒ガスが毒性ガス除害装置14で除去された後、収集ダクト15により半導体製造設備1外に排出される。本実施の形態では、半導体製造設備1外に排出されるエッチング排ガスは、例えば、キャリアガスとしてのN
2(窒素)ガス99%に、過弗化物等を1%含むガスである。本実施の形態では、エッチング排ガスに含まれる過弗化物は、1%以下であることが好ましい。また排出されるエッチング排ガスの流量は、例えば、3000L/min〜3500L/minである。
【0021】
過弗化物の処理装置2は、詳しくは後述するが、半導体製造設備1から排出されるエッチング排ガス中に含まれる過弗化物を分解することで過弗化物を除害した後、排気ガスとして排出する。そのために半導体製造設備1の各設備から排出され、ダクトを介して集められたエッチング排ガスは、三方弁4を経由して過弗化物の処理装置2に導入される。過弗化物の処理装置2は、クリーンルーム内に設置する必要がなく、通常は半導体製造設備1の外側に設置される。
【0022】
酸スクラバ3は、酸性ガスを捕集する。そして酸性ガスの捕集をした後の無害化したガスを半導体製造工場外に排出する。酸スクラバ3は、過弗化物の処理装置2で、過弗化物を完全に除去しきれなかった場合でも、過弗化物を捕集する役割を担う。また過弗化物の処理装置2に故障等が生じた場合でも、過弗化物の処理装置2のバックアップとしての役割を担う。つまり通常の状態では、過弗化物を含むガスは、三方弁4により過弗化物の処理装置2に導入され、過弗化物の処理装置2により過弗化物が分解され、処理される。しかし過弗化物の処理装置2に故障等が生じた場合は、三方弁4を切替え、過弗化物を含むガスを直接酸スクラバ3に導入されるようにする。
なお
図1には図示していないが、三方弁4の上流側において、半導体製造設備1から排出されるエッチング排ガス中に含まれる酸性ガスを捕集するアルカリスクラバを設けてもよい。
【0023】
<過弗化物の処理装置の構成の説明>
以後、過弗化物の処理装置2についてさらに詳しく説明を行う。
図2は、本実施の形態の過弗化物の処理装置2の概略構成について説明した図である。
図示するように過弗化物の処理装置2は、導入された装置入口排ガス(エッチング排ガス)を前処理する前処理ユニット21と、前処理ユニット21で前処理された装置入口排ガスに含まれる過弗化物を分解する過弗化物分解ユニット22と、過弗化物分解ユニット22で過弗化物を分解した際に生成されるHF(弗化水素)を含む分解ガスを吸着することで乾式除去するHF吸着ユニット23とを備える。そしてこれらの各ユニットにより装置入口排ガスを処理し無害化を行った後、排気ガスとして過弗化物の処理装置2外に排出する。
【0024】
図3は、本実施の形態の過弗化物の処理装置2を構成する各機器を示した図である。
図2で説明したように過弗化物の処理装置2は、前処理ユニット21と、過弗化物分解ユニット22と、HF吸着ユニット23とを主として備える。また図示するように過弗化物の処理装置2は、制御ユニット24を備え、過弗化物の処理装置2に備えられた各機器およびバルブ(図示せず)等の制御を行う。
【0025】
前処理ユニット21は、装置入口排ガスを前処理する前処理手段の一例である。前処理ユニット21は、装置入口排ガスの予熱を行う入口加熱器211と、微粒子の除去を行うフィルタ212、212aとを備える。
入口加熱器211は、予熱手段の一例であり、装置入口排ガスを加熱し、装置入口排ガスに含まれる液体の水である微小な水滴(ミスト)を蒸発させる。入口加熱器211は、装置入口排ガスが通過する配管の周囲にヒータ211aを備える。そして装置入口排ガスは、入口加熱器211を通過する際にヒータ211aにより加熱され、ミストが蒸発する温度でまで予熱される。このとき予熱される装置入口排ガスの温度は例えば、60℃とすることができる。これにより次のフィルタ212においてフィルタがミストにより閉塞することが抑制できる。
【0026】
図4は、(a)〜(b)は、入口加熱器211の内部構造について説明した図である。
本実施の形態では、入口加熱器211は、円筒形状をなす。そして図中上部から装置入口排ガスを導入する。そして装置入口排ガスは、図中下方向に流通し、図中下部から排出される。そして入口加熱器211には、装置入口排ガスの流通経路にフィン211bが配される。
【0027】
図4(a)に図示した例では、入口加熱器211には、円盤状のフィン211bが複数配される。この円盤状のフィン211bは、その中心部における孔部に保持部材211cが貫通している。そしてこの孔部においてフィン211bと保持部材211cとは、溶接等により接合している。これによりフィン211bは、図中上下方向に互いにほぼ平行にかつほぼ等間隔で一列に配列する。
また
図4(b)に図示した例では、フィン211bは、入口加熱器211の内壁に溶接等により接合している。この場合、フィン211bは、図中上下方向に互いにほぼ平行に配列するが、上下方向において千鳥状となり配列する。
【0028】
このようなフィン211bを設けることで、装置入口排ガスの流れに乱れが生ずる。そのため装置入口排ガスが入口加熱器211内部で攪拌され、ヒータ211aによる熱を装置入口排ガスに十分に伝えることができる。また特に
図4(b)に図示した構造では、ヒータ211aによる熱が、フィン211bを通じさらに伝熱するため、装置入口排ガスをより加熱しやすくなる。さらにフィン211bを設けることで、フィン211bに装置入口排ガスが当り、そして当たった箇所で水分が凝縮することでミストを除去する効果も有する。なおこの際に凝縮した水分が入口加熱器211の下部に落下し、入口加熱器211の底部に溜まることがある。そのため本実施の形態では、入口加熱器211の底部にバルブ211dを設けている。そして定期的にバルブ211dを開き、入口加熱器211の下部に溜まった水を排出する。
【0029】
図3に戻り、フィルタ212は、入口加熱器211によりミストを蒸発させた装置入口排ガスから固形分としての微粒子の除去を行う。半導体製造設備1では、上述した、乾式エッチングを行う際に削られた酸化シリコン等の微粒子が生じる。そしてこの微粒子が装置入口排ガスに混入するため、フィルタ212により除去を行う。フィルタ212は、装置入口排ガスを通過させるとともに微粒子を捕集することができるものであれば特に限定されることはないが、例えば、メッシュフィルタなどを用いることができる。
【0030】
また本実施の形態では、フィルタ212の他に補助フィルタとしてフィルタ212aを備え、このフィルタ212とフィルタ212aとの間で装置入口排ガスの流路が切替えられるようになっている。フィルタ212aは、フィルタ212と同等の性能を有するが、フィルタ212より小型であり、使用できる期間が短い。そしてフィルタ212の交換等を行うときは、フィルタ212の替わりにフィルタ212aに装置入口排ガスを通し、固形分を除去する。これにより過弗化物の処理装置2の運転を停止せずにフィルタ212の交換を行うことができる。本実施の形態では、第1のフィルタであるフィルタ212と第2のフィルタであるフィルタ212aとにより固形分除去手段が構成される。
【0031】
なお本実施の形態では、入口加熱器211とフィルタ212との間で空気を導入する。そして空気が導入された装置入口排ガスをフィルタ212またはフィルタ212aに通す。次の過弗化物分解ユニット22において一酸化炭素の生成を抑制するために、酸素が必要となる場合があり、そのためこの段階で空気を装置入口排ガスと混合する。
また本実施の形態では、詳しくは後述するが、フィルタ212を通過した後の装置入口排ガスは、いったん熱交換器231に入る。そして熱交換器231における熱交換により装置入口排ガスが加熱される。さらにこのとき次の過弗化物分解ユニット22において過弗化物を分解するための反応に必要な水が液体の状態で添加される。この水は、熱交換器231において装置入口排ガスとともに加熱され気体の水蒸気となる。そして装置入口排ガスと混合しつつ移送される。本実施の形態では、水として純水を使用し、添加量は、後述の反応式に見合った量であり、例えば、350mL/minである。また、この水はあらかじめ加熱して水蒸気として熱交換器231に添加しても良い。
【0032】
また本実施の形態では、フィルタ212は、装置入口排ガスの流通経路下流側に圧縮空気にて逆洗を行うための圧縮空気口の一例としてのノズル212bを備える。そしてこのノズル212bから圧縮空気を噴射することで、フィルタ212の表面に堆積した固形分を除去する。
【0033】
本実施の形態では、ノズル212bには、圧縮空気を供給する配管が接続されており、その配管の途中にはバルブ212eが設けられている。さらに本実施の形態では、装置入口排ガスがフィルタ212を通る前と後との圧力差を検出する差圧計212cが設けられている。そして差圧計212cによる圧力差が所定の値以上になったときに、バルブ212eを開き、ノズル212bから圧縮空気を噴射してフィルタ212の表面に堆積した固形分を除去する。なおこの処理は、自動的に行うこともできる。即ち、制御ユニット24等により差圧計212cによる圧力差を監視し、そして差圧計212cによる圧力差が所定の値以上になったことを検知したときに、バルブ212eを開く制御信号を送信して圧縮空気を噴射する。またこの場合、予め定められた時間後にバルブ212eを閉める制御信号を送信し、圧縮空気の噴射を停止する。
【0034】
以上のように圧縮空気を噴射し逆洗を行うことで、フィルタ212の装置入口排ガス導入側の表面における固形分が除去され、差圧を低下させることができる。そしてこの逆洗を行うことで過弗化物の処理を停止させることなく、運転を継続することが可能となり、かつフィルタ212の交換時期を延長することができる。
【0035】
過弗化物分解ユニット22は、装置入口排ガスおよび水を加熱するとともに、予め定められた触媒により過弗化物を加水分解して酸性ガスを含む分解ガスを生成する加熱手段の一例である。そして過弗化物分解ユニット22は、第1加熱器221と第2加熱器222の2つの加熱器を備える。
【0036】
第1加熱器221は、内部にヒータ221aが配されており、このヒータ221aにより装置入口排ガス、および熱交換器231で添加され水蒸気となった水を加熱する。第1加熱器221を通過した後の装置入口排ガスは、例えば、450℃〜500℃となっている。本実施の形態では、第1加熱器221を装置入口排ガスの流路が水平方向となる横型の加熱器としている。
【0037】
第2加熱器222は、上方から装置入口排ガスを導入し、まず内部に備えられたヒータ222aにより、装置入口排ガスおよび水蒸気をさらに加熱する。これにより装置入口排ガスは、例えば、750℃に加熱される。
そしてさらに加熱された装置入口排ガスは、第2加熱器222の下方に配された触媒層222bにおいて、装置入口排ガスに混合していた水(水蒸気)と反応し、分解される。
このときの分解反応として、過弗化物として、CF
4、CHF
3、C
2F
6およびSF
6の場合を例に採り、下記に反応式を示す。
【0038】
CF
4+2H
2O→CO
2+4HF …(1)
CHF
3+(1/2)O
2+H
2O→CO
2+3HF …(2)
C
2F
6+3H
2O+(1/2)O
2→2CO
2+6HF …(3)
SF
6+3H
2O→SO
3+6HF …(4)
【0039】
上記(1)式〜(4)式からわかるように、過弗化物は加水分解反応により、酸成分であるHF(弗化水素)を含む分解ガスとなる。またこの場合HFは、分解ガスに含まれる酸性ガスとして捉えることもできる。
【0040】
図5は、反応温度と過弗化物の分解率との関係を説明した図である。
ここでエッチング排ガスに含まれる過弗化物として、CF
4、CHF
3、C
2F
6、C
3F
8、C
4F
8、C
5F
8、SF
6、NF
3を例示している。また過弗化物ではないが、半導体製造設備1から排出されるガス中に含まれる成分としてCOについても併せて図示している。
図示するように何れの成分も750℃近辺においてほぼ100%の分解率となるため、750℃の温度で反応させることで、過弗化物等がほぼ除去できることになる。
【0041】
また触媒層222bを構成する触媒としては、本実施の形態では、Al
2O
3(酸化アルミニウム)にZn(亜鉛)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、F(弗素)、Sn(スズ)、Co(コバルト)、Zr(ジルコニウム)、Ce(セリウム)、Si(ケイ素)等の酸化物を含むものを使用することができる。より具体的には、例えば、Al
2O
3(酸化アルミニウム)が80重量%、NiO(酸化ニッケル)20重量%の組成からなるものを使用することができる。
【0042】
第2加熱器222で過弗化物が分解された後のHFを含む分解ガスは、第2加熱器222の下方から排出され、次のHF吸着ユニット23に送られる。なおこのとき第2加熱器222から排出される分解ガスの温度は、600℃〜700℃程度である。
【0043】
HF吸着ユニット23は、第1加熱器221と第2加熱器222の前段および後段に配され第1加熱器221に流入する前の装置入口排ガスと第2加熱器222から流出した後の分解ガスとの間で熱交換を行なう熱交換手段の一例である熱交換器231と、熱交換器231から流出した後の分解ガスから酸成分をカルシウム塩と反応させることで乾式除去する酸成分除去手段の一例としての酸成分除去装置232と、酸成分除去装置232により酸成分が乾式除去された後の排気ガスを排出する排気ガス排出手段の一例としてのエゼクタ233とを備える。
【0044】
またHF吸着ユニット23は、酸成分除去装置232の上方からHFを乾式除去するための薬剤であるカルシウム塩を供給する薬剤供給手段の一例である薬剤供給装置234と、酸成分除去装置232の下方から使用済みのカルシウム塩を排出する薬剤排出手段の一例である薬剤排出装置235と、酸成分除去装置232から排出されるガス中に含まれるHFの濃度を監視するHF濃度センサ236と、HF濃度センサ236とエゼクタ233との間に配され、酸成分除去装置232にて生じた固形分を除去する粉末トラップ237とをさらに備える。
【0045】
熱交換器231は、第2加熱器222から排出された後の高温の分解ガスと第1加熱器221に導入される前の前述した低温の装置入口排ガスとの間で熱交換を行う。これにより分解ガスの温度は低下するとともに、第1加熱器221に導入される前の装置入口排ガスの温度は上昇する。また前述の通り、熱交換器231は、第1加熱器221に流入する前の装置入口排ガスに水を混合させる。そして熱交換器231に添加された水は蒸発し水蒸気となる。
熱交換器231を通過した後の分解ガスは、温度が300℃〜500℃程度まで低下し、熱交換器231を通過した後の装置入口排ガスは、温度が200℃〜300℃程度まで上昇する。
【0046】
熱交換器231としては、特に限られるものではなく、2枚のプレートを交互に配置し、そのプレート間に流路を構成し、装置入口排ガスと分解ガスをとの熱交換を行うプレートタイプの熱交換器や、シェル(円筒)と多数のチューブ(伝熱管)の中に、それぞれ装置入口排ガスや分解ガスを通し、相互間で熱交換を行うシェルアンドチューブタイプの熱交換器が使用できる。また二重管構造にして内管に高温の分解ガスを流し、外管に低温の装置入口排ガスを流す二重管式熱交換器であってもよい。また装置入口排ガスと分解ガスとは対向して流してもよく、並行して流してもよい。本実施の形態では、二重管式熱交換器を使用し、装置入口排ガスと分解ガスとは対向して流している。
【0047】
酸成分除去装置232は、内部にカルシウム塩からなる薬剤層232aが充填されており、分解ガス中に含まれるHFは、このカルシウム塩と吸着反応することで乾式除去される。カルシウム塩としてはCaCO
3(炭酸カルシウム)、Ca(OH)
2(水酸化カルシウム)、CaO(酸化カルシウム)等を使用することができる。またカルシウム塩の形状としては、粉末状でもよいが、ハンドリングの容易さから円柱形状または球状等に成型されたペレットとすることが好ましい。本実施の形態では、例えば、Ca(OH)
2とCaCO
3との混合物であってCaCO
3:Ca(OH)
2=50重量%〜80重量%:20重量%〜50重量%のものを使用する。この場合成型性がよく、ペレットとしたときに粉化することが抑制できる。また本実施の形態では、この混合物を、底面の直径が3mm程度、高さが8mm程度の円柱形状のペレットにして使用している。
【0048】
このときの吸着反応として、カルシウム塩としてCaCO
3やCa(OH)
2を使用した場合を例に採り、下記に反応式を示す。
【0049】
CaCO
3+2HF→CaF
2+CO
2+H
2O …(5)
Ca(OH)
2+2HF→CaF
2+2H
2O …(6)
【0050】
上記(5)式〜(6)式からわかるように、HFはカルシウム塩と反応し、CaF
2(弗化カルシウム(蛍石))、CO
2(二酸化炭素)、およびH
2O(水)が生じる。
【0051】
エゼクタ233には、圧縮空気を流入させる圧縮空気配管が接続され、この圧縮空気を高速で流すことで生じる負圧により、排気ガスを吸引し、圧縮空気とともに過弗化物の処理装置2外に排出する。これにより排気ガスは、さらに温度が低下し、排出される。酸成分除去装置232から排出された後の排気ガスは、例えば、200℃程度であるが、エゼクタ233から排出される排気ガスは、例えば、100℃以下となる。
【0052】
また分解ガスは、酸成分除去装置232の下方から導入するとともに、酸成分除去装置232の上方から排出する。そして分解ガスは、酸成分除去装置232の下方から上方へ流動する間に上記(5)式〜(6)式で例示したHFとカルシウム塩との反応が生じ、HFが乾式除去される。このときカルシウム塩は、CaF
2となり、これ以上の反応は生じないため、順次交換を行う必要がある。
【0053】
そのため本実施の形態では、カルシウム塩を酸成分除去装置232に供給する薬剤供給装置234と、使用済みのカルシウム塩を酸成分除去装置232から排出する薬剤排出装置235を設けている。
【0054】
本実施の形態では、HF濃度センサ236によりHFの濃度を監視し、HFの濃度が、例えば、100ppmに達したときは、カルシウム塩の交換時期になったと判断する。そして薬剤排出装置235に設けられたロータリーバルブ(図示せず)等の開閉を行い、所定量の使用済みのカルシウム塩を排出する。また使用済みのカルシウム塩を排出した後は、薬剤供給装置234に向けられたロータリーバルブ(図示せず)等の開閉を行い、排出した分の新たなカルシウム塩を供給する。このようにして薬剤排出装置235内のカルシウム塩は、順次交換される。なおこの一連の手順は、制御ユニット24が、HF濃度センサ236から送られるHFの濃度に関する情報を取得し、そしてHFの濃度が、例えば、100ppmに達したときに、薬剤供給装置234や薬剤排出装置235に設けられたロータリーバルブの開閉の制御を行うことで自動的に行われる。またこのときカルシウム塩は、全て交換してもよいが、通常は一部のみ交換が行われる。カルシウム塩の交換量としては、例えば、40kg/hである。
【0055】
粉末トラップ237は、カルシウム塩の交換の際などに酸成分除去装置232で生じたカルシウム塩の粉末等を除去するために設けられる。粉末トラップ237としては、金属メッシュフィルタ等を使用することができる。
【0056】
<過弗化物の処理装置の動作の説明>
図6は、過弗化物の処理装置2の動作について説明したフローチャートである。
以後、
図5および
図6を使用して過弗化物の処理装置2の動作について説明を行う。
まず装置入口排ガスは、前処理ユニット21の入口加熱器211を通過し、予熱が行われる(ステップ101)。これにより装置入口排ガス中に含まれるミストが蒸発する。
次に予熱された装置入口排ガスに空気を導入し、前処理ユニット21のフィルタ212により微粒子が除去される(ステップ102)。
【0057】
このときフィルタ212を交換する必要があるか否かが判断される(ステップ103)。そしてフィルタ212を交換する必要がある場合(ステップ103でYes)、装置入口排ガスの流路を補助フィルタであるフィルタ212aの側に切替える(ステップ104)。そしてフィルタ212を交換する作業を行う(ステップ105)。
フィルタ212を交換する作業が終了すると、装置入口排ガスの流路を元のフィルタであるフィルタ212の側に切替える(ステップ106)。
一方、フィルタ212を交換する必要がない場合(ステップ103でNo)、次のステップ107に進む。なおフィルタ212を交換する必要があるか否かの判断は、前回フィルタ212を交換してから過弗化物の処理装置2を動作させた時間で判断してもよく、また目視等で判断してもよい。
【0058】
次に装置入口排ガスは、熱交換器231による熱交換により加熱される(ステップ107)。またこのとき過弗化物の分解反応に必要な水が添加される(ステップ108)。
熱交換器231を通過した装置入口排ガスは、第1加熱器221によりまず加熱され(ステップ109)、さらに第2加熱器222により過弗化物の分解に必要な温度にまでさらに加熱される(ステップ110)。そして第2加熱器222の触媒層222bを通過するときに過弗化物が分解し、装置入口排ガスは、HFを含む分解ガスとなる(ステップ111)。
【0059】
分解ガスは、再び熱交換器231に入り、前述の装置入口排ガスとの間で熱交換を行う(ステップ112)。
【0060】
そして分解ガスは、酸成分除去装置232においてカルシウム塩と反応し、HFが乾式除去される(ステップ113)。またこのとき制御ユニット24は、HF濃度センサ236により取得されたHF濃度が所定の値以上になったか否かを判断する(ステップ114)。そして所定の値以上になったとき(ステップ114でYes)は、薬剤排出装置235と薬剤供給装置234を動作させ、カルシウム塩の交換を行う(ステップ115)。また所定の値未満であったとき(ステップ114でNo)は、カルシウム塩の交換は行わず、次のステップ116に進む。
【0061】
HFが乾式除去された後の排気ガスは、粉末トラップ237により粉末が除去された後(ステップ116)、エゼクタ233により過弗化物の処理装置2外に排出される(ステップ117)。
【0062】
以上詳述した過弗化物の処理装置2では、以下のような特徴点を有する。
(i)触媒層222bを利用して過弗化物の分解を行うため、大量のエッチング排ガスを処理することができるとともに運転コストを低減することができる。
(ii)分解ガス中に含まれるHFをカルシウム塩との吸着反応により乾式除去することで、従来の水にHFを溶解させてHFを除去する方法に対し、HFを含む排水が生じない。また吸着反応後に生成するCaF
2は、無害であるとともにハンドリングが容易である。さらにCaF
2は、HFを製造する原料となるため、有価物である。つまり地球環境に有害なエッチング排ガスから有価物であるCaF
2を製造することができる。
(iii)熱交換器231により装置入口排ガスと分解ガスとの間で熱交換を行うことで、エネルギーの利用効率が上昇する。また従来の分解ガスを水により冷却する方式に比べ、排水が生じない。そのため排水処理工程が不要となり過弗化物の処理装置2の運転コストを低減することができる。
(iv)酸成分除去装置232の上方に配される薬剤供給装置234と下方に薬剤排出装置235を有する薬剤層232aを組み込むことで、単に弁を開くだけで重力を利用して落とし込むという簡便なシステムにより、カルシウム塩の交換を行うことができる。また本実施の形態では、分解ガスを下方から導入し、上方から排気するとともに、HF濃度センサ236を設け、HFの濃度を監視することでカルシウム塩の交換時期の判断を行う。これにより薬剤層232aの上層部は排出されず、下層部の反応済みのカルシウム塩のみが排出されるので、未反応のカルシウム塩がほとんど生じず、カルシウム塩の無駄な消費量を少なくすることができる。
(v)前処理ユニット21として入口加熱器211と、フィルタ212、212aとを備えることで、前処理工程において多量の水の使用や排水処理を回避できる。なお装置入口排ガス中に酸性ガスが含まれる場合でも、本実施の形態では、酸成分除去装置232が存在するため、酸性ガスが装置の外部に排出されることは少ない。
【0063】
<実際の過弗化物の処理装置の説明>
図7は、実際に製造された過弗化物の処理装置2を上方から見た図である。また
図8は、実際に製造された過弗化物の処理装置2を
図7のVII方向から見た図である。即ち
図8は、過弗化物の処理装置2を水平方向から見た図となる。
図示するように実際の過弗化物の処理装置2は、上方から見た場合でも水平方向から見た場合でも矩形領域の内部にほぼ全ての機器が配置されている。なお制御ユニット24については、矩形領域の外部に配置されている。なお本実施の形態における矩形とは、長方形が基本形であるが、長方形に近い台形や平行四辺形や楕円形なども本実施の形態の特徴を逸脱しない範囲で矩形に含めることができる。
【0064】
次に
図7および
図8における過弗化物の処理装置2の各機器の説明を行う。なお以後、制御ユニット24が設置されている位置を上方から見たときに過弗化物の処理装置2の左下側であるとして説明を行う。
【0065】
装置入口排ガスは、過弗化物の処理装置2の左下側の導入口Inから導入される。そして
図8に示すように矢印A1方向に流れ、過弗化物の処理装置2の下側に設置された入口加熱器211を通過する。そしてこのときに入口加熱器211に配されたヒータ211a(
図3参照)により予熱が行われる。これにより装置入口排ガスに含まれるミストが蒸発する。
【0066】
入口加熱器211を通過した装置入口排ガスは、通常は、複数の配管を経由して矢印A2方向および矢印A3方向に沿って流れ、フィルタ212に導入される。そしてフィルタ212で、装置入口排ガス中に含まれる微粒子が除去される。さらにフィルタ212を通過した後の装置入口排ガスは、矢印A4方向に流れ、熱交換器231に向かう。
【0067】
ただし、フィルタ212を交換するときは、切替え部Kの箇所で装置入口排ガスの流路は切替えられる。そして切替え部Kから矢印A5方向に沿って流れ、フィルタ212aに導入される。そしてフィルタ212aで、装置入口排ガス中に含まれる微粒子が除去される。さらにフィルタ212aを通過した後の装置入口排ガスは、矢印A6方向に流れ、熱交換器231に向かう。
【0068】
なお図示はしていないが、切替え部Kの手前で入口加熱器211を通過した後の装置入口排ガス中に空気が導入される。
【0069】
フィルタ212またはフィルタ212aを通過した後の装置入口排ガスは、配管P1により矢印B方向に流れ、過弗化物の処理装置2の上側に設置された熱交換器231に入る。そして装置入口排ガスは、熱交換器231による熱交換により加熱される。また図示はしていないが、このとき熱交換器231には水が添加され、この水は水蒸気となって装置入口排ガスとともに運ばれる。
【0070】
熱交換器231から排出された装置入口排ガスは、配管P2により矢印C方向に流れ、過弗化物の処理装置2の右下側に設置された第1加熱器221に入る。第1加熱器221は、横型の加熱器であり、
図7中左側より装置入口排ガスが流入し、
図7中右側より装置入口排ガスが排出される。そして第1加熱器221は、内部にヒータ221a(
図3参照)が配され、装置入口排ガスが第1加熱器221内部を左側から右側に移動する際に、加熱が行われる。
【0071】
次に第1加熱器221から排出された装置入口排ガスは、配管P3により矢印D方向に流れ、過弗化物の処理装置2の右上側に設置された第2加熱器222に入る。第2加熱器222は縦型の加熱器であり、上方にヒータ222a(
図3参照)が配され、下方に触媒層222b(
図3参照)が配される。そして装置入口排ガスは、第2加熱器222の上方から流入し、ヒータ222aにより過弗化物の分解温度にまで加熱されつつ、第2加熱器222の下方に流れる。そして触媒層222bにおいて、過弗化物は、装置入口排ガスと混合していた水(水蒸気)と反応し、分解される。そして分解後の生成物であるHFを含む酸性の分解ガスとなり、第2加熱器222の下方から排出される。
【0072】
そして第2加熱器222から排出された分解ガスは、配管P4により矢印E方向に流れ、再び熱交換器231に入る。そして熱交換器231において、高温の分解ガスと低温の装置入口排ガスとの間で熱交換が行われる。
【0073】
熱交換器231から排出された分解ガスは、配管P5により矢印F方向(
図7中左方向)に流れ、過弗化物の処理装置2の上側に設置された酸成分除去装置232に入る。このとき分解ガスは、酸成分除去装置232の下方から流入し、酸成分除去装置232の上方に流れる。そしてこのときにカルシウム塩からなる薬剤層232a(
図3参照)において分解ガスに含まれるHFが吸着反応を起こし、乾式除去される。そして無害化された排気ガスとなり、酸成分除去装置232の上方から排出される。
【0074】
酸成分除去装置232から排出された排気ガスは、配管P6により矢印G方向(
図7中左方向)に流れ、過弗化物の処理装置2の左上側に設置された粉末トラップ237に入る。そして粉末トラップ237により、カルシウム塩の粉末等が除去される。なお配管P6の途中には、HF濃度センサ236が配されており、排気ガス中に含まれるHFの濃度を測定する。また配管P6は、本実施の形態では、比較的長尺として、周囲に放熱フィンを備えている。これは酸成分除去装置232に接続され、エゼクタ233へ向かう配管P6は、矩形領域の他方の長辺側に沿って配され、排気ガスを冷却する放熱フィンを備えると言い換えることもできる。これにより排気ガスの温度をさらに低下させることができる。
【0075】
そして粉末トラップ237から排出された排気ガスは、最後に過弗化物の処理装置2の左上側に設置されたエゼクタ233により吸引され、配管P7により矢印H方向(
図7中上方向)に流れ、排出口Ouから装置外部に排出される。
【0076】
なお以上説明した過弗化物の処理装置2による過弗化物の処理方法は、装置入口排ガスを前処理する前処理工程と、装置入口排ガスおよび水を加熱するとともに、予め定められた触媒により過弗化物を加水分解して酸性ガスを含む分解ガスを生成する加熱工程と、加熱工程の前段および後段に配され、加熱工程に流入する前の装置入口排ガスおよび水と加熱工程から流出した後の分解ガスとの間で熱交換を行なう熱交換工程と、熱交換工程から流出した後の分解ガスから酸成分を乾式除去する酸成分除去工程と、を備え、前処理工程は、装置入口排ガスを加熱し、過弗化物を含むガスに含まれる液体の水を蒸発させる予熱工程と、予熱工程により液体の水を蒸発させた過弗化物を含むガスから固形分を除去する固形分除去工程と、を備えることを特徴とする過弗化物の処理方法として捉えることもできる。
【0077】
また上述した例では、半導体製造工場において排出されるエッチング排ガス中に含まれる過弗化物を処理する場合について説明したが、これに限られるものではないことはもちろんである。例えば、液晶製造工場等から排出されるエッチング排ガスやクリーニング排ガス中に含まれる過弗化物を処理する場合であってもよい。