(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085216
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】建機キャブの窓構造
(51)【国際特許分類】
B60J 1/00 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
B60J1/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-91262(P2013-91262)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-213674(P2014-213674A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】林田 俊也
(72)【発明者】
【氏名】平野 智也
【審査官】
谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−214558(JP,A)
【文献】
実開昭60−089019(JP,U)
【文献】
実開平04−080707(JP,U)
【文献】
特開平11−130454(JP,A)
【文献】
特開2001−220848(JP,A)
【文献】
特開2003−312249(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/110273(WO,A1)
【文献】
実開昭60−133079(JP,U)
【文献】
実開平07−004557(JP,U)
【文献】
特開2005−161994(JP,A)
【文献】
実開昭62−022112(JP,U)
【文献】
特開2005−008056(JP,A)
【文献】
特開2004−324101(JP,A)
【文献】
特開2001−187530(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0078642(US,A1)
【文献】
実公昭48−026856(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブフレームのフロントピラー間の上方にフロントウィンドウを、下方に下窓ガラスを位置させるように上下に並べて設けると共に、前記フロントウィンドウを前記キャブフレームの天井に形成した収納スペースにスライドさせて収納する建機キャブの窓構造において、
前記下窓ガラスを、前記フロントピラー間の下方に着脱可能に設けると共に、前記フロントウィンドウの裏側に取り付け可能に設け、
前記下窓ガラスの左右両側の裏側には、側方に出没可能なピンを有するラッチ装置が設けられ、
前記フロントウィンドウには、前記下窓ガラスから突出する前記ピンを挿入させて係止するための収納用留め部が設けると共に、前記下窓ガラスの上下左右の四隅表面を保持するための収納用ストッパが設けられ、
前記収納用ストッパは、左右一対の上部ストッパと、左右一対の下部ストッパとからなり、
前記上部ストッパは、前記下窓ガラスの表面を保持する上部表面保持部と、前記下窓ガラスの上端を保持する上端保持部とを備え、
前記下部ストッパは、前記下窓ガラスの隅部を収容するラバー製のクッション部と、前記クッション部を収容する外殻部とを備え、
前記クッション部は、前記下窓ガラスの表面を保持する下部表面保持部と、前記下窓ガラスの下端を保持する下端保持部と、前記下窓ガラスの側端を保持する側端保持部と、前記下窓ガラスの裏面を保持する下部裏面保持部とを備えたことを特徴とする建機キャブの窓構造。
【請求項2】
前記キャブフレームには、前記フロントピラー間の下窓ガラスから突出する前記ピンを挿入させて係止するための定位置用留め部が設けられると共に、前記下窓ガラスの下端を保持するための定位置用ストッパが設けられた請求項1に記載の建機キャブの窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラスの下窓ガラスの収納性を向上させた建機キャブの窓構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バックホウ等の建設機械は、シャベルで掘削した穴を更に掘り下げる場合など、作業すべき位置が地表より低い場合がある。
【0003】
このような場合、掘削作業時の下方の視界を向上させ、足元のスペースを確保するためには、建機キャブのフロントガラスの下窓ガラスを外す必要がある。
【0004】
このため、
図6(a)に示すように、建機キャブ40の下窓ガラス41は、上方のフロントウィンドウ42に形成された下窓収納スペース43にスライド移動できるようになっている。
【0005】
図6(b)に示すように、フロントウィンドウ42には、下窓ガラス41の左右両側を案内するための断面コ字状のレール部材44が設けられており、上方に移動する下窓ガラス41を前後方向から規制して下窓収納スペース43に安定して案内できるようになっている。
【0006】
また、
図6(a)に示すように、フロントウィンドウ42は、ルーフ45下の収納スペース46に収納できるようにキャブフレーム47にスライド移動可能に設けられており、収納スペース46に収納することで前方の視界を確保できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−187530号公報
【特許文献2】特開2004−324101号公報
【特許文献3】特開2005−008056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、下窓ガラス41は、レール部材44に下から差し込む構造のため、フロントウィンドウ42が開いている状態では下窓収納スペース43に収納することはできず、フロントウィンドウ42を一旦閉めてから収納する必要があり、操作性が悪いという課題があった。
【0009】
また逆に、フロントウィンドウ42が開いている状態では、下窓収納スペース43に収納された下窓ガラス41を閉めることはできず、フロントウィンドウ42を一旦閉める必要があり、操作性が悪いという課題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、下窓ガラス開閉時の操作性を改善できる建機キャブの窓構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、キャブフレームのフロントピラー間の上方にフロントウィンドウを、下方に下窓ガラスを位置させるように上下に並べて設けると共に、前記フロントウィンドウを前記キャブフレームの天井に形成した収納スペースにスライドさせて収納する建機キャブの窓構造において、前記下窓ガラスを、前記フロントピラー間の下方に着脱可能に設けると共に、前記フロントウィンドウの裏側に取り付け可能に設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下窓ガラス開閉時の操作性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る建機キャブに係り、(a)は後方かつ上方から視た斜視説明図であり、(b)は(a)の要部側面説明図である。
【
図3】(a)は、フロントウィンドウと下窓ガラスとを閉じた状態の要部斜視説明図であり、(b)は上部ストッパの斜視説明図であり、(c)は下部ストッパの斜視説明図である。
【
図4】(a)は、フロントウィンドウを閉じ、下窓ガラスを開いた状態の要部斜視説明図であり、(b)は上部ストッパの斜視説明図であり、(c)は下部ストッパの斜視説明図である。
【
図5】フロントウィンドウと下窓ガラスとを開いた状態の要部斜視説明図である。
【
図6】従来の建機キャブに係り、(a)は要部側面説明図であり、(b)は要部斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る建機キャブの窓構造を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1(a)は、建機キャブのフロントウィンドウ及び下窓ガラスを後方かつ上方から視た斜視説明図であり、
図1(b)は、フロントウィンドウが閉じた状態で下窓ガラスを開くときの説明図であり、
図2は、フロントウィンドウが開かれた状態で下窓ガラスを開くときの説明図である。
【0016】
図1に示すように、建機キャブ1は、キャブフレーム2と、キャブフレーム2のフロントピラー3、3間に上方にスライド可能に設けられたフロントウィンドウ4と、フロントウィンドウ4より下方のフロントピラー3、3間にフロントウィンドウ4と上下に並べて設けられた下窓ガラス5とを備える。
【0017】
キャブフレーム2は、床面を形成する床部6と、床部6に起立して設けられ並行に延びる一対のフロントピラー3、3と、天井を形成するルーフ部7とを備える。
図5に示すように、フロントピラー3、3には、後述するフロントウィンドウ4の下部両側に設けられたローラ8を上下にガイドする上下ガイドレール9が設けられている。また、ルーフ部7には、フロントウィンドウ4の上部両側に設けられたローラ(図示せず)を前後にガイドする前後ガイドレール(図示せず)が設けられている。
【0018】
図1(a)に示すように、フロントウィンドウ4は、正面視上下左右に延びる矩形状に形成された外枠部10と、外枠部10に設けられたフロントガラス11とを備える。外枠部10の上部及び下部の両側には、前述のローラ8(
図5参照)が回転自在に設けられている。また、外枠部10の両側には、フロントウィンドウ4を開閉するときに把持するためのハンドル12が設けられている。
図2に示すように、フロントウィンドウ4は、ハンドル12が上方に持ち上げられることでキャブフレーム2の天井に形成された収納スペース13にスライドされて収納されるようになっている。
【0019】
図1(a)に示すように、下窓ガラス5は、上下左右に延びる矩形状に形成されている。下窓ガラス5の左右両側の上部には、下窓ガラス5をキャブフレーム2又はフロントウィンドウ4に留めるためのラッチ装置14が設けられている。
図3(c)に示すように、ラッチ装置14は、下窓ガラス5に取り付けられ裏面側(キャブ室内側)に位置される装置本体15と、装置本体15に側方に出没自在に設けられたピン16と、装置本体15に設けられピン16を側方に突出させるように付勢するバネ17とを備える。ピン16には、後方に延びて装置本体から突出するつまみ部18が設けられており、つまみ部18を操作することでピン16を装置本体15内に没入させることができるようになっている。
【0020】
また、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、キャブフレーム2には、フロントピラー3、3間の下窓ガラス5から突出するピン16を挿入させて係止するための定位置用留め部19が設けられると共に、下窓ガラス5の下端を保持するための定位置用ストッパ20が設けられている。定位置用留め部19は、フロントピラー3、3に後方に延出する舌片状の延出部21を形成すると共に、延出部21にピン16を挿入するための穴22を形成してなる。定位置用ストッパ20は、ラバーからなり、下窓ガラス5を弾性的に載置できるようになっている。
【0021】
また、フロントウィンドウ4の裏側には、下窓ガラス5から突出するピン16を挿入させて係止する収納用留め部23が設けると共に、下窓ガラス5の上下左右の四隅表面を保持する収納用ストッパ24、25が設けられている。
【0022】
収納用留め部23は、フロントウィンドウ4の外枠部10に後方に延出する舌片状の収納用延出部26を形成すると共に収納用延出部26にピン16を挿入するための穴27を形成してなる。
【0023】
収納用ストッパ24、25は、左右一対の上部ストッパ24と、左右一対の下部ストッパ25とからなる。
図3(b)及び
図4(b)に示すように、上部ストッパ24は、ラバーからなり、下窓ガラス5の表面を保持する上部表面保持部28を有すると共に、下窓ガラス5の上端を保持する上端保持部29を有する。
【0024】
図3(c)及び
図4(c)に示すように、下部ストッパ25は、下窓ガラス5の隅部を収容する袋状に形成されたラバー製のクッション部30と、外枠部10に設けられクッション部30を収容する金属製の外殻部31とからなる。クッション部30には、下窓ガラス5の表面を保持する下部表面保持部32と、下窓ガラス5の下端を保持する下端保持部33と、下窓ガラス5の側端を保持する側端保持部34と、下窓ガラス5の裏面を保持する下部裏面保持部35とが形成されている。上部ストッパ24及び下部ストッパ25は、ラッチ装置14のピン16が収納用留め部23に挿入されたとき下窓ガラス5の表面に押されて下窓ガラス5に圧着するように形状及びサイズを設定されており、下窓ガラス5を建機キャブ1の室内側から安定して取り付けられるようになっている。
【0025】
このように、下窓ガラス5は、定位置用ストッパ20上に載せつつ定位置用留め部19の穴22にピン16を挿入することで、フロントピラー3、3間の下方に着脱可能に設けられるようになっている。また、下窓ガラス5は、収納用ストッパ24、25に四隅表面を圧着させつつ収納用留め部23の穴27にピン16を挿入することで、フロントウィンドウ4の裏側に取り付け可能に設けられるようになっている。
【0027】
図1(b)及び
図3(a)に示すように、フロントウィンドウ4を閉じた状態で下窓ガラス5を開く場合、まず、左右のラッチ装置14のつまみ部18を下窓ガラス5の幅方向内側に移動させて定位置用留め部19の穴22からピン16を抜き、つまみ部18を後方に引いて下窓ガラス5を定位置用ストッパ20上で後方(室内側)に若干倒す。これにより下窓ガラス5がキャブフレーム2から取り外される。
【0028】
次に、下窓ガラス5を持ち上げ、下窓ガラス5の下端の両隅部を左右の下部ストッパ25内に挿入する。しかるのち、つまみ部18を下窓ガラス5の幅方向内側に移動させてピン16を縮退させながら下窓ガラス5の上側を前方に押し、収納用留め部23の穴27にピン16を挿入する。これにより、下窓ガラス5は四隅を収納用ストッパ24、25に圧着された状態でフロントウィンドウ4の裏側に収納される。
【0029】
また、
図2及び
図5に示すように、フロントウィンドウ4を開いた状態で下窓ガラス5を開く場合、上述と同様の手順でキャブフレーム2から下窓ガラス5を取り外し、下窓ガラス5を天井近傍のフロントウィンドウ4の位置まで持ち上げ、下窓ガラス5の下端の両隅部を左右の下部ストッパ25内に挿入する。このとき、フロントウィンドウ4は天井に沿って前後に延びる姿勢となっているため、下窓ガラス5も裏面が下を向くように倒し、下部ストッパ25内に定位置での下端を後方から挿入する。しかるのち、ラッチ装置14のピンを縮退させながら下窓ガラス5の後側を上方に押し、収納用留め部23の穴にピンを挿入する。これにより、下窓ガラス5は四隅を収納用ストッパ24、25に圧着された状態でフロントウィンドウ4の裏側に収納される。
【0030】
また、フロントウィンドウ4を開いた状態で下窓ガラス5を閉じる場合、上述と逆の手順でフロントウィンドウ4から下窓ガラス5を下方に取り外したのち、キャブフレーム2の定位置に下窓ガラス5を後方から取り付けることができる。
【0031】
このように、下窓ガラス5を、フロントピラー3、3間の下方に着脱可能に設けると共に、フロントウィンドウ4の裏側に取り付け可能に設けるものとしたため、フロントウィンドウ4を開いた状態のまま下窓ガラス5を開閉でき、下窓ガラス5の開閉の操作性を改善できる。
【0032】
また、下窓ガラス5の左右両側の裏側には、側方に出没可能なピン16を有するラッチ装置14が設けられ、フロントウィンドウ4には、下窓ガラス5から突出するピン16を挿入させて係止する収納用留め部23が設けられると共に、下窓ガラス5の上下左右の四隅表面を保持する収納用ストッパ24、25が設けられるものとしたため、フロントウィンドウ4に下窓ガラス5を取り付けるとき、フロントウィンドウ4に下窓ガラス5を重ね合わせる方向に押し付け、収納用留め部23の穴27にピン16を挿入するだけで容易に取り付けることができると共に、下窓ガラス5を安定して収納できる。
【0033】
収納用ストッパ24、25は、左右一対の上部ストッパ24と、左右一対の下部ストッパ25とからなり、上部ストッパ24は、下窓ガラス5の表面を保持する上部表面保持部28と、下窓ガラス5の上端を保持する上端保持部29とを備え、下部ストッパ25は、下窓ガラス5の表面を保持する下部表面保持部32と、下窓ガラス5の下端を保持する下端保持部33と、下窓ガラス5の側端を保持する側端保持部34と、下窓ガラス5の裏面を保持する下部裏面保持部35とを備えるものとしたため、下窓ガラス5の前後左右の収納位置を常に一定にでき、下窓ガラス5を安定して収納できる。また、天井の収納スペース13に収納されて頭上に位置するフロントウィンドウ4に下窓ガラス5を取り付けるとき、下部ストッパ25の下部裏面保持部35に下窓ガラス5の前側(定位置での下側)の2隅を支持させたのち、後側を上部ストッパ24に押し付け、収納用留め部23の穴27にピン16を挿入することができ、下窓ガラス5の取付作業を容易にできる。また逆に、頭上のフロントウィンドウ4から下窓ガラス5を取り外すとき、下窓ガラス5を下部ストッパ25の下端保持部33に押し付けつつ収納用留め具からピン16を抜くことで、ピン16を抜いた後も下部ストッパ25に下窓ガラス5の前側の2隅を支持させた状態にでき、この後、下窓ガラス5の持ち方に違和感があれば持ち方を変える等したのち、下窓ガラス5を下部ストッパ25から外すことができ、下窓ガラス5を安全に取り外すことができる。
【0034】
また、キャブフレーム2には、フロントピラー3、3間の下窓ガラス5から突出するピン16を挿入させて係止する定位置用留め部19が設けられると共に、下窓ガラス5の下端を保持する定位置用ストッパ20が設けられるものとしたため、下窓ガラス5を定位置に固定するときと、収納位置に固定するときとで、共通のラッチ装置14を用いることができ、下窓ガラス5の開閉操作を容易にできる。
【符号の説明】
【0035】
1 建機キャブ
2 キャブフレーム
3 フロントピラー
4 フロントウィンドウ
5 下窓ガラス
13 収納スペース
14 ラッチ装置
16 ピン
19 定位置用留め部
20 定位置用ストッパ
23 収納用留め部
24 収納用ストッパ(上部ストッパ)
25 収納用ストッパ(下部ストッパ)
28 上部表面保持部
29 上端保持部
32 下部表面保持部
33 下端保持部
34 側端保持部
35 下部裏面保持部