(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085223
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】配線引き込み構造および配線引き込み具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20170213BHJP
E04D 1/30 20060101ALI20170213BHJP
E04D 13/18 20140101ALI20170213BHJP
【FI】
H02G3/22
E04D1/30 603H
E04D13/18ETD
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-113102(P2013-113102)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-233153(P2014-233153A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594188906
【氏名又は名称】平田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桶屋 匡
(72)【発明者】
【氏名】宮田 和明
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一夫
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−002055(JP,A)
【文献】
特開2013−130010(JP,A)
【文献】
特開2000−166063(JP,A)
【文献】
特開2001−311279(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3178593(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
E04D 1/30
E04D 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根部材に配された接続線を建物内に引き込むための配線引き込み構造であって、
前記屋根部材に設けられた屋根穴部と、
前記屋根穴部の上方空間を覆うように配置され、前記屋根部材からの前記接続線を前記屋根穴部に導くための配線引き込み具とを備え、
前記配線引き込み具は、
前記屋根部材上であって前記屋根穴部よりも軒側に配置されるバネ部材と、
軒側に線挿入部を有し、前記屋根穴部および前記バネ部材の上方を覆うように配置されるカバー部材と、
前記線挿入部から挿入された前記接続線を上下に挟み込むように、前記バネ部材の上面および前記カバー部材の裏面にそれぞれ配置される第1および第2の弾性シール材とを含む、配線引き込み構造。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記屋根部材上に配置されるベース部と、前記ベース部の先端から前記ベース部側に折り返された折り返し部とを含み、
前記第1の弾性シール材は、前記折り返し部の上面に取り付けられている、請求項1に記載の配線引き込み構造。
【請求項3】
前記線挿入部は、シール材により塞がれている、請求項1または2に記載の配線引き込み構造。
【請求項4】
前記配線引き込み具は、前記屋根穴部の位置に開口部を有する板状部材をさらに含み、
前記バネ部材は、前記板状部材に固定されている、請求項3に記載の配線引き込み構造。
【請求項5】
前記板状部材は、前記開口部よりも棟側において、上方に突出し、かつ、桁方向に対して斜め方向に延びる水切り部をさらに含む、請求項4に記載の配線引き込み構造。
【請求項6】
前記カバー部材の棟側の端縁が、前記水切り部に沿うように配置される、請求項5に記載の配線引き込み構造。
【請求項7】
前記シール材は、前記板状部材と前記カバー部材との間に設けられている、請求項4〜6のいずれかに記載の配線引き込み構造。
【請求項8】
前記屋根部材は、屋根下地材を含み、
前記屋根下地材の上方には、複数の瓦が、屋根の勾配方向において一部重なるように並べられており、
前記配線引き込み具は、前記瓦の下面と前記屋根下地材の上面との隙間に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の配線引き込み構造。
【請求項9】
建物の屋根部材に配された接続線を建物内に引き込むための配線引き込み具であって、
前記屋根部材上に配置され、前記屋根部材に設けられた屋根穴部の位置に開口部を有する板状部材と、
前記板状部材上であって前記開口部よりも軒側に配置されるバネ部材と、
軒側に線挿入部を有し、前記開口部および前記バネ部材の上方を覆うように配置されるカバー部材と、
前記線挿入部から挿入された前記接続線を上下に挟み込むように、前記バネ部材の上面および前記カバー部材の裏面にそれぞれ配置される第1および第2の弾性シール材とを備える、配線引き込み具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線引き込み構造および配線引き込み具に関し、特に、建物の屋根部材に配された接続線を建物内に引き込むための配線引き込み構造および配線引き込み具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根上に、たとえば太陽光発電装置などの設備機器が設置されることがある。このような場合、屋根部材に配された接続線(たとえば電力線)は、通常、屋根部材に設けられた屋根穴部から建物内に引き込まれる。
【0003】
特許第3805166号公報(特許文献1)には、屋根下地材に形成した配線引込口への雨水等の流れ込みを防止する水返し材が、屋根下地材に取り付けられるとともに、配線引込口および水返し材が、カバー部材によって覆われた配線引き込み構造が開示されている。カバー部材は、配線挿通口が、水返し材を挟んで配線引き込み口と反対側に位置するように、屋根下地材に取り付けられている。この配線引き込み構造においては、設備機器からの配線が、配線挿通口から水返し材とカバー部材との間の隙間を通って配線引込口へ引き込まれ、カバー部材の配線挿通口に取り付けた乾式シール材によって、配線挿通口が塞がれている。
【0004】
また、屋根部材からの雨漏りを防止する金具として、実用新案登録第3178593号公報(特許文献2)には、板金の上面に上方へ突出しかつ板金の左端部から右端部に向かって斜め方向に延びる水切部を設けた瓦用防水板金が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3805166号公報
【特許文献2】実用新案登録第3178593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来の配線引き込み構造では、配線挿通口の乾式シール材を通り抜けて浸入してきた雨水に対しては、屋根下地材に取り付けられた水返し材によって配線引込口(屋根穴部)への流れ込みを防ぐ構成である。しかしながら、水返し材だけでは、屋根穴部の雨仕舞いとしては不十分な場合がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、建物内への漏水のリスクを低減することのできる配線引き込み構造および配線引き込み具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う配線引き込み構造は、建物の屋根部材に配された接続線を建物内に引き込むための配線引き込み構造であって、屋根部材に設けられた屋根穴部と、屋根穴部の上方空間を覆うように配置され、屋根部材からの接続線を屋根穴部に導くための配線引き込み具とを備える。配線引き込み具は、屋根部材上であって屋根穴部よりも軒側に配置されるバネ部材と、軒側に線挿入部を有し、屋根穴部およびバネ部材の上方を覆うように配置されるカバー部材と、線挿入部から挿入された接続線を上下に挟み込むように、バネ部材の上面およびカバー部材の裏面にそれぞれ配置される第1および第2の弾性シール材とを含む。
【0009】
好ましくは、バネ部材は、屋根部材上に配置されるベース部と、ベース部の先端からベース部側に折り返された折り返し部とを含む。この場合、第1の弾性シール材は、折り返し部の上面に取り付けられる。
【0010】
好ましくは、線挿入部は、シール材により塞がれている。
【0011】
好ましくは、配線引き込み具は、屋根穴部の位置に開口部を有する板状部材をさらに含む。この場合、バネ部材は、板状部材に固定されていることが望ましい。
【0012】
また、板状部材は、開口部よりも棟側において、上方に突出し、かつ、桁方向に対して斜め方向に延びる水切り部をさらに含むことが望ましい。
【0013】
また、カバー部材の棟側の端縁が、水切り部に沿うように配置されることが望ましい。
【0014】
好ましくは、シール材は、板状部材とカバー部材との間に設けられている。
【0015】
屋根部材は、屋根下地材を含み、屋根下地材の上方には、複数の瓦が、屋根の勾配方向において一部重なるように並べられていてもよい。この場合、配線引き込み具は、瓦の下面と屋根下地材の上面との隙間に配置されることが望ましい。
【0016】
この発明のある局面に従う配線引き込み構造は、建物の屋根部材に配された接続線を建物内に引き込むための配線引き込み具であって、板状部材とバネ部材とカバー部材と第1および第2の弾性シール材とを備える。板状部材は、屋根部材上に配置され、屋根部材に設けられた屋根穴部の位置に開口部を有する。バネ部材は、板状部材上であって開口部よりも軒側に配置される。カバー部材は、軒側に線挿入部を有し、開口部およびバネ部材の上方を覆うように配置される。第1および第2の弾性シール材は、線挿入部から挿入された接続線を上下に挟み込むように、バネ部材の上面およびカバー部材の裏面にそれぞれ配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バネ部材の反発力と第1および第2の弾性シール材の弾性力とによって、線挿入部から挿入された接続線の周囲は完全に密閉される。したがって、雨水が接続線を伝って線挿入部から流れ込んできたとしても、屋根穴部よりも軒側において雨水をシャットアウトすることができる。その結果、建物内への漏水のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る配線引き込み構造を模式的に示す模式断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における配線引き込み具を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における配線引き込み具を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態において、カバー部材が取り付けられる前の状態の配線引き込み構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態において、カバー部材が取り付けられた後の状態の配線引き込み構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る配線引き込み構造を模式的に示す模式断面図である。
図1を参照して、本実施の形態では、建物の屋根部2に配された電力線10を屋内に引き込むための配線引き込み構造について説明する。屋根部2は、勾配を有しており、たとえば切妻屋根や片流れ屋根が想定される。本実施の形態において、
図1中矢印A1で示される、屋根部2の勾配方向下側を「軒側」という。また、矢印A1の反対側の方向である、勾配方向上側を「棟側」という。
【0021】
屋根部2は、2つの屋根部材すなわち、屋根下地材21および屋根仕上げ材22を含む。屋根下地材21は、少なくとも、野地板を含み、野地板上に配置される防水シート(図示せず)をさらに含んでいてもよい。屋根下地材21の上面に、屋根仕上げ材22が配置される。
【0022】
屋根仕上げ材22は、複数の瓦221,222,223,…を含み、これらは勾配方向および桁方向に並べられている。本実施の形態では、各瓦は、桁方向に凹凸を有している。複数の瓦221,222,223,…は、勾配方向において一部重なるように並べられている。たとえば、瓦222の棟側上面には、隣接する瓦223の軒側脚部25が載せられている。そのため、屋根下地材21の上面と複数の瓦221,222,223,…の下面との間には、部分的に隙間ができる。本実施の形態では、この隙間を「瓦下空間12」という。たとえば瓦222下の瓦下空間12は、勾配方向において、当該瓦222における棟側脚部26の軒側端縁26bと、隣接する軒側の瓦221における棟側脚部26の棟側端縁26aとで区切られている。この勾配方向長さは、一般的に、20〜40cm程度である。
【0023】
本実施の形態では、電力線10を建物内部11に引き込むための屋根穴部20が、屋根下地材21にのみ設けられている。そして、屋根穴部20の上方空間を覆うように、配線引き込み具(以下「引き込み具」と略す)3が配置される。具体的には、引き込み具3は、上記瓦下空間12に配置される。たとえば陶器瓦のように屋根仕上げ材22に穴を開けることが困難な場合や、屋根部2(屋根仕上げ材22)上部の美観を考慮する場合などに、瓦下空間12に収まるように、引き込み具3が構成される。なお、本実施の形態では、屋根穴部20の位置は、たとえば、瓦下空間12の勾配方向長さの略中央位置である。
【0024】
(引き込み具について)
ここでまず、引き込み具3の構成および配置例について説明する。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態における引き込み具3を示す拡大断面図である。
図3は、本発明の実施の形態における引き込み具3を示す分解斜視図である。
図1〜
図3を参照して、本実施の形態において、引き込み具3は、板状部材4と、板状部材4上に配置されるカバー部材6とを含む。
【0026】
板状部材4は、平面視において矩形形状であり、屋根穴部20の位置に配置される開口部40を有する。開口部40は、屋根穴部20と略同一の形状であってよい。板状部材4上には、上下方向の力に対して弾性変形するように構成されたバネ部材5が固定されている。上下方向は、屋根下地材21に対して垂直な方向である。バネ部材5は、取り付け状態において、開口部40よりも軒側に配置される。本実施の形態では、バネ部材5は、形状的に弾性変形するように構成された板バネである。すなわち、バネ部材5は、板状部材4上に配置されるベース部52と、ベース部52の先端からベース部52に折り返された折り返し部51とを含む。本実施の形態では、折り返し部51の自由端が軒側に向くように配置されている。
【0027】
板状部材4は、さらに、棟側からの浸水を防ぐために、上記実用新案登録第3178593号公報(特許文献2)に記載の構成と同様に、水切り部41を含んでいる。水切り部41は、開口部40よりも棟側において上方に突出し、かつ、桁方向に対して斜め方向に延びている。
【0028】
カバー部材6は、軒側に線挿入部60を有しており、屋根穴部20(開口部40)およびバネ部材5の上方を覆うように配置される。線挿入部60は、板状部材4の軒側端縁4cよりも棟側に配置される。本実施の形態において、カバー部材6のうち、屋根穴部20およびバネ部材5の上方を覆う部分を「覆い部61」、軒方向を除き、覆い部61の周囲に延びる平坦部分を「平坦部62」という。カバー部材6の棟側の端縁すなわち、平坦部62の棟側の端縁62aは、水切り部41に沿うように配置される。
【0029】
覆い部61は、逆U字状断面を有しており、上壁611と、対向する2つの側壁612,613とを含む。覆い部61は、桁方向においてバネ部材5と嵌合するように、側壁612,613間の間隔が、バネ部材5の桁方向長よりも若干長くなるよう形成されていることが望ましい。覆い部61は、上壁611の棟側端縁から棟方向斜め下方に延びる傾斜壁614をさらに含む。
【0030】
本実施の形態において、カバー部材6の覆い部61の下方空間において、線挿入部60を入口とし、屋根穴部20に至るまでの電力線10の通路を「配線通路30」という。
【0031】
ここで、本実施の形態では、バネ部材5の折り返し部51の上面に、弾性シール材71が固定されている。また、カバー部材6の裏面61aにおいても、弾性シール材71と対向する位置に、弾性シール材72が固定されている。より具体的には、弾性シール材71は、バネ部材5の上面におけるたとえば先端部分に、桁方向一端から他端にまで延びるように配置されている。弾性シール材72は、覆い部61の上壁611の裏面61aにおいて、桁方向一端から他端にまで延びるように配置されている。線挿入部60から挿入された電力線10は、対向する弾性シール材71,72によって上下に挟み込まれる。
【0032】
引き込み具3の各部材すなわち、板状部材4、バネ部材5およびカバー部材6は、塩害地域を考慮して、たとえばステンレス製であることが望ましい。各弾性シール材71,72は、圧縮可能な弾性体であって、その材質は、たとえば独立気泡型または連続気泡型の発泡体ゴムであることが望ましい。
【0033】
(配線引き込み構造について)
次に、上述の引き込み具3を備えた配線引き込み構造について詳細に説明する。配線引き込み構造については、
図4および
図5をさらに参照して、引き込み具3の施工手順に従い説明する。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態において、カバー部材6が取り付けられる前の状態の配線引き込み構造を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態において、カバー部材6が取り付けられた後の状態の配線引き込み構造を示す図である。
【0035】
図1〜
図4を参照して、はじめに、バネ部材5が固定された板状部材4が、屋根下地材21の上面21aにおける所定位置に、ビス等により固定される。具体的には、開口部40が、屋根穴部20の位置に配置され、かつ、板状部材4の軒側端縁4cが、軒側に隣接する瓦221の棟側端縁26aに沿うように配置される。
【0036】
電力線10は、軒側の瓦221の凹部23(隣り合う凸部24間)から、瓦222の瓦下空間12(屋根下地材21上)に配される。その電力線10は、バネ部材5に固定された弾性シール材71上に引き渡され、開口部40および屋根穴部20を通って、建物内部11に引き込まれる。
【0037】
電力線10が建物内部11に引き込まれると、
図5に示されるように、板状部材4上にカバー部材6が被せられる。板状部材4上にカバー部材6が被せられただけでは、カバー部材6は浮いた状態であってよい。カバー部材6の重みだけでは、バネ部材5はほとんど伸縮変形しないためである。これに対し、カバー部材6が板状部材4上に押さえ付けられ、平坦部62の裏面62bが板状部材4の上面4aと面接触する状態でビス等により固定されたとする。そうすると、バネ部材5は、カバー部材6の覆い部61の裏面61a(より具体的には弾性シール材72)により下方に押さえ付けられて、下方に伸縮変形する。このとき、バネ部材5の反発力と、対向する弾性シール材71,72とによって、電力線10は上下方向に完全に挟み込まれる。また、電力線10の桁方向両端側においても、弾性シール材71,72が相互に押さえ付けられる。したがって、電力線10の周囲は、弾性シール材71,72によって完全に密閉される。
【0038】
カバー部材6が板状部材4上に取り付けられると、線挿入部60における電力線10の周囲に、湿式のシール材8が設けられることが望ましい。これにより、線挿入部60が塞がれる。本実施の形態では、シール材8は、配線通路30の入口側の開口よりもバネ部材5寄りの位置に設けられている。したがって、たとえば紫外線等によるシール材8の劣化を防ぐこともできる。
【0039】
上述のような引き込み具3の取り付けが完了すると、
図1に示されるように、引き込み具3の上方空間に、瓦222が載置される。その際、瓦221上に配された電力線10の上方に位置する瓦222の軒側脚部25の下端は、電力線10の厚み分だけ切断されることが望ましい。
【0040】
上述のように、本実施の形態によれば、軒側から瓦下空間12(
図1)に流れ込む雨水は、配線通路30のシール材8および弾性シール材71,72によって、2段階で止水可能である。つまり、シール材8によって、軒側から吹き上がる風雨が、配線通路30内に入り込むことを阻止する(一次止水)。また、シール材8を通過して配線通路30内に入り込んできた雨水に対しては、バネ部材5の反発力と弾性シール材71,72の弾性力とによって止水される(二次止水)。この弾性シール材71,72は乾式のシール材であるので、長期に渡り止水性を維持することができる。
【0041】
特に、風圧等によっては、シール材8を通過した雨水が電力線10を伝って棟側へ上昇してくる恐れもある。しかし、本実施の形態によれば、弾性シール材71,72によって、電力線10を伝う雨水を、屋根穴部20よりも軒側でシャットアウトすることができる。
【0042】
さらに、本実施の形態では、バネ部材5は、折り返し部51の自由端が軒側に向くように配置されている。そのため、バネ部材5は水切りとしても機能する。つまり、シール材8を通過した雨水が、電力線10と関係なく、配線通路30内の板状部材4上に流れ込んできたとしても、バネ部材5によって、雨水が屋根穴部20側に浸入するのを阻止することもできる。
【0043】
このように、本実施の形態によれば、線挿入部60を通過して配線通路30内に浸入してきた雨水を、屋根穴部20の手前で確実に止水することができる。なお、カバー部材6を設置する前に、開口部40および屋根穴部20における電力線10の周囲にも、湿式シール材等が設けられてもよい。
【0044】
また、
図5の矢印で示されるように、棟側から瓦下空間12(
図1)に流れ込む雨水は、水切り部41によって側方に逃がされる。そのため、カバー部材6側へ雨水が流れ込むことを阻止することができる。また、上述のように、カバー部材6の棟側の端縁62aは、水切り部41に沿うように配置されている。したがって、板状部材4の上面4aとカバー部材6の平坦部62の裏面62bとの間の防水性を高めることもできる。なお、棟側からの雨水が、屋根下地材21の上面21aと板状部材4の裏面4bとの間に浸入するのを防止する防水部材が設けられていることが望ましい。防水部材は、たとえば、板状部材4の周囲に貼り付けられる防水テープであってよい。あるいは、瓦下空間12よりも棟側から延びる、たとえばアスファルトルーフィングなどの防水シート(図示せず)が、板状部材4上の水切り部41にまで延びていてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、引き込み具3によって、軒側からの雨水および棟側からの雨水の両方が、屋根穴部20へ流れ込むのを防止することができる。したがって、瓦下空間12のような限られた空間内であっても、雨仕舞に優れた引き込み具3を配置することによって、建物内部11への漏水のリスクを低減することができる。
【0046】
また、現場では、板状部材4およびカバー部材6の2つの部材を固定するだけでよいため、施工性にも優れている。
【0047】
なお、本実施の形態では、バネ部材5は、折り返し部51の自由端が軒側に向くように配置されることとした。しかしながら、折り返し部51の自由端が棟側に向くように配置されてもよい。また、バネ部材5は板バネであることとしたが、上下方向の力に対して弾性変形するように構成された部材であれば他の部材であってもよい。
【0048】
また、弾性シール材71,72は、それぞれ、バネ部材5の上面および覆い部61の裏面61aにおいて、桁方向一端から他端にまで延びるように配置されることとした。しかしながら、弾性シール材71,72によって電力線10を伝う雨水の阻止さえできればよい場合には、弾性シール材71,72は、取り付け状態において少なくとも電力線10の周囲を囲むように配置されていればよい。
【0049】
また、本実施の形態では、引き込み具3が板状部材4を含むこととしたが、板状部材4は含まなくてもよい。その場合、バネ部材5は、屋根下地材21上に直接取り付けられればよい。
【0050】
また、本実施の形態では、屋根穴部20は、屋根下地材21のみを貫通するように設けられていたが、屋根仕上げ材22の種類や形状によっては、屋根仕上げ材22をも貫通していてもよい。つまり、引き込み具3は、屋根仕上げ材22上に配置されていてもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、屋根部2に設置された設備機器と建物内部11等に設置された機器とを接続する接続線として、電力線10を例に説明した。しかしながら、接続線は、線状の部材であれば電力線10に限定されない。たとえば、接続線は、アンテナと通信機器とを接続する通信ケーブルなどであってもよい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
2 屋根部、3 引き込み具、30 配線通路、4 板状部材、5 バネ部材、6 カバー部材、8 シール材、10 電力線、11 建物内部、12 瓦下空間、20 屋根穴部、21 野地板、22,221,222,223 瓦、23 凹部、24 凸部、25 軒側脚部、26 棟側脚部、40 開口部、41 水切り部、51 折り返し部、52 ベース部、60 線挿入部、61 覆い部、62 平坦部、71,72 弾性シール材、611 上壁、612,613 側壁、614 傾斜壁。