【実施例】
【0040】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
最終基本組成がFe
2O
3:52.5モル%、ZnO:22モル%、残部:MnOとなるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、925℃で3時間仮焼した。この仮焼体を、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm
2)または外径:51mm、内径:31mm、高さ:13mmのリング状(実効断面積:127mm
2)となるよう成形し、ついで大気中で400℃まで250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度:1370℃までを、表1に示す種々の酸素濃度雰囲気下で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、焼成保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を10体積%以下に制御して3時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と1kHzおよび100kHzでの比初透磁率μ
ir(=初透磁率μ
i/真空の透磁率μ
0)について調べた結果を、それぞれ表1に示す。
【0041】
なお、残留C量および比初透磁率μ
irはそれぞれ、次のようにして測定した。
・残留C量
試料を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO
2ガスを赤外線検出器により検出し、炭素量に換算する、高周波燃焼式・赤外線吸収法で測定した。
・比初透磁率μir
リング状試料に10ターンの巻線を施し、インピーダンスアナライザにより0.5mA程度の電流を流したときのインダクタンスから、リング試料の断面積、磁路長、巻数を用いて初透磁率に換算して測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示したとおり、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から21体積%の範囲に制御することによって、残留C量を0.0050質量%以下まで低減することができ、その結果、1kHz、100kHz におけるそれぞれの比初透磁率が10000以上の周波数特性に優れたフェライトコアを得ることができた。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルタに搭載すれば、たとえ実効断面積が127mm
2と大きなコアの場合でも、比初透磁率の低下が小さいので、優れたフィルタ特性を発揮することができる。
【0044】
(実施例2)
最終基本組成がFe
2O
3:52.5モル%、ZnO:22モル%、残部:MnOとなるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、925℃で3時間仮焼した。この仮焼体に対し、副成分として最終組成がSiO
2:0.002質量%、CaO:0.030質量%およびNb
2O
5:0.010質量%となるように添加し、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に表2に示す種々の外径、内径、高さを持ち実効断面積が種々に異なるリング状のコアに成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度:1370℃までを酸素濃度:15体積%、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を5体積%以下に制御して3時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と1kHz、100kHz、200kHzでの比初透磁率μ
irについて調べた結果を、表2に併記する。
表2において、本発明の範囲内のものは発明例、また範囲外のものは比較例としている。なお、添加物のうちCaOについては、発明例では酸化物であるCaOの形態で添加したが、比較例として炭酸化物であるCaCO
3の形態で添加した例も併記した。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から明らかなように、CaO成分を酸化物であるCaOの形態で添加し、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまでの焼成雰囲気中の酸素濃度を適正に制御した場合は、残留C量を0.0050質量%以下に制御することができ、その時の1kHz、100kHzにおける比初透磁率はいずれも10000以上で、さらに200kHzにおける比初透磁率は9000以上という、周波数特性に優れたフェライトコアを得ることができた。
したがって、かかるフェライトコアをノイズフィルタに搭載すれば、さらに優れたフィルタ特性を発揮することができる。
【0047】
(実施例3)
最終基本組成が表3,4に示す種々の基本組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に対し、副成分として最終組成が表3,4に示す組成となるように各種微量添加物を添加し、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm
2)または外径:51mm、内径:31mm、高さ:13mmのリング状(実効断面積:127mm
2)となるよう成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度:1370℃までは酸素濃度:15体積%で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を5体積%以下に制御して3時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と1kHz、100kHz、200kHzでの比初透磁率μ
irについて調べた結果を、それぞれ表3,4に併記する。なお、添加物のうちCaOは、発明例では酸化物であるCaOの形態で添加したが、比較例として炭酸化物であるCaCO
3の形態で添加した例も併記した。
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
表3,4から明らかなように、CaO成分を酸化物であるCaOの形態で他の添加物と共に添加した場合には残留C量を0.0050質量%以下に制御することができ、その時の1kHz、100kHzにおける比初透磁率はいずれも10000以上で、さらに200kHzにおける比初透磁率については9000以上という、周波数特性に優れたフェライトコアを得ることができた。特に実効断面積が127mm
2と大きなコアの場合でも、比初透磁率の低下を小さく抑制することができた。
【0051】
(実施例4)
最終基本組成が表5に示す種々の基本組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表5に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm
2)または外径:51mm、内径:31mm、高さ:13mmのリング状(実効断面積:127mm
2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から焼成保持温度1370℃までは表に示す酸素濃度で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と1kHz、100kHz、200kHzでの比初透磁率μ
irについて調べた結果を、それぞれ表5に併記する。
【0052】
【表5】
【0053】
表5から明らかなように、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%超から21体積%の範囲に制御すると共に、CaO成分を酸化物であるCaOの形態で添加して、残留C量を0.0050質量%以下まで低減することにより、実効断面積が42mm
2の場合には、1kHz、100kHzそれぞれにおける比初透磁率が12000以上で、かつ200kHzにおける比初透磁率が10000以上という極めて優れた周波数特性のフェライトコアが、また実効断面積が127mm
2の場合でも、1kHz、100kHzにおける比初透磁率が10000以上で、かつ200kHzにおける比初透磁率が9000以上という優れた周波数特性のフェライトコアが得られている。
【0054】
(実施例5)
最終基本組成が表6に示す種々の基本組成となるように、各粉末原料を秤量し、混合したのち、950℃で3時間仮焼した。この仮焼体に、同じく表6に示す各種微量添加物を添加し、ボールミルで8時間粉砕したのち、焼成後に外径:31mm、内径:19mm、高さ:7mmのリング状(実効断面積:42mm
2)または外径:51mm、内径:31mm、高さ:13mmのリング状(実効断面積:127mm
2)となるように成形し、ついで大気中で400℃まで昇温速度:250℃/hで昇温し、400℃から800℃までは酸素濃度:3体積%、800℃超から焼成保持温度:1370℃までは酸素濃度:6体積%で、昇温速度:600℃/hで昇温した。その後、保持温度:1370℃に達してからは、酸素濃度を8体積%以下に制御して2時間焼成した。
得られた焼結体の残留C量と1kHz、100kHz、200kHzでの比初透磁率μ
irについて調べた結果を、それぞれ表6に併記する。
【0055】
【表6】
【0056】
表6から明らかなように、400℃から焼成保持温度までの温度域の一部にでも、焼成雰囲気中の酸素濃度が5体積%超という条件を満足しない温度域が存在した場合には、フェライト中の残留C濃度を0.0050質量%以下まで低減することができず、その結果、実効断面積が42mm
2の場合には、1kHz、100kHzにおける比初透磁率が12000未満で、かつ200kHzにおける比初透磁率が9000未満、また実効断面積が127mm
2の場合には、1kHz、100kHzにおける比初透磁率が10000未満で、かつ200kHzにおける比初透磁率が8000未満という、低い周波数特性しか得られなかった。