特許第6085256号(P6085256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6085256損傷した熱機械的部品の局部補修のプロセスおよび該プロセスに従って補修された部品、特に、タービン部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085256
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】損傷した熱機械的部品の局部補修のプロセスおよび該プロセスに従って補修された部品、特に、タービン部品
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/06 20060101AFI20170213BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20170213BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20170213BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20170213BHJP
   B23K 3/04 20060101ALI20170213BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20170213BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20170213BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170213BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   B22F7/06 A
   B22F3/14 101C
   B23K35/14 G
   B23K1/00 330P
   B23K3/04 X
   F01D5/28
   F01D5/18
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   F01D25/00 L
   F01D25/00 X
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-557155(P2013-557155)
(86)(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公表番号】特表2014-513207(P2014-513207A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】FR2012050459
(87)【国際公開番号】WO2012120231
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】1151832
(32)【優先日】2011年3月7日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユゴー,ジユリエツト
(72)【発明者】
【氏名】ムヌイ,ジユステインヌ
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−342617(JP,A)
【文献】 特開平11−043706(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/138096(WO,A1)
【文献】 特開2001−335813(JP,A)
【文献】 特開平10−046208(JP,A)
【文献】 特表2012−528249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金製の熱機械的部品(2)の局部補修のプロセスであって、
PSフラッシュ焼結用エンクロージャダイ(11)内に損傷部品(2)の少なくとも補修部分に対応するくぼみの形状のモールド(1、7)を作製する準備ステップと
その後、多層構造(6)を構成するろう付け用粉末(60)の層と超合金粉末の少なくとも1つの層(31、61)をモールド(1、7)内に導入するステップと
その後、材料と部品(2)との接着部が拡散によって後で形成されるように、温度、圧力、継続時間が調節されたフラッシュ焼結サイクルに従って加圧しパルス電流を通電させることによって温度を急上昇させる焼結ステップとを含み、この焼結ステップにより、多層構造(6)内に組成勾配(G3、G4、G5)が形成されたプリフォーム(2a)であって、補修される部品(2)にさらに接合されるろう付け面(6b)と超合金材料(6s)とがプリフォーム(2a)の表面に現れたプリフォーム(2a)が作製され、さらに、
その後、プリフォーム(2a)のろう付け面(6b)が補修される部品に接着されるろう付けステップを含むことを特徴とする、補修のプロセス。
【請求項2】
焼結ステップにおいて、フラッシュ焼結サイクルの温度、圧力、および継続時間が、少なくとも600℃/分の温度上昇、1000℃から2000℃の範囲の温度、10Mpaから100Mpaの範囲の圧力で調節される、請求項1に記載の補修のプロセス。
【請求項3】
準備ステップにおいて、モールド(1)が、元の部品全体に対応するくぼみと一致する形状を有するように作製され焼結ステップにおいて、超合金層(31)は、拡散によって、材料と補修される部品(2)とを連続的に接着する、請求項1に記載の補修のプロセス。
【請求項4】
う付けステップにおいて、焼結ステップで予め形成されたプリフォーム(2a)のろう付け面(6b)が補修される部品(2)の領域(20)と接触した状態で配置され、その後、適切な炉内で、一緒に接合されるプリフォーム(2a)と配置された部品(2)とを少なくともろう付け用合金(60)の溶融温度に等しい温度になるまで加熱することによって、補修される部品(2)内にろう付け用合金の溶融成分が拡散することで、ろう付け面(6b)が接着される、請求項3に記載の補修のプロセス。
【請求項5】
準備ステップで、金属保護層(32、62)と熱バリア層(33、63)とが、超合金層(31、61)の上に堆積される、請求項1に記載の補修のプロセス。
【請求項6】
金属保護層(32、62)が、Ni、Pt、Hf、Y、Si、Cu、Ag、ならびに/もしくはAu、および/またはNi−Al組成物、Ni−Pt−Al組成物、ならびに/もしくはNi−Al−Zr組成物から成る少なくとも1つのシートダイで構成される、請求項1に記載の補修のプロセス。
【請求項7】
熱バリア(33、63)が、イットリア安定化ジルコニアで構成される、請求項1に記載の補修のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中に、例えば、腐食、浸食、または摩耗により、かなりの応力を受けた損傷熱機械的部品の局部補修のプロセスに関する。本発明は、さらに、このプロセスに従って補修された部品に関し、本発明は、特に、タービン部品に適用されるが、これに限定されない。
【0002】
本発明の分野は、ニッケル基超合金耐火材料の分野である。これらの材料は、熱機械的部品、特に、航空宇宙分野のガスタービン部品、例えば、特に、腐食および酸化に耐えられ可動整流羽根もしくは分配羽根、これらの羽根のプラットフォーム、基部、または、他の機器を構成することができる。
【0003】
しかしながら、これらの部品は、圧力応力および温度応力を受けることで材料が欠損するので、材料を追加して補修する必要がある。この補修は、同じタイプまたは化学的に類似した組成の構成材料を維持しながら、部品を元の寸法に復元することから成る。
【背景技術】
【0004】
そのために、補修が重要性が低いおよび範囲が限定的な、部品の領域に限定される場合には、アーク溶接によって局部補修することが知られている。
【0005】
広範囲または重要性の高い補修に対する1つの解決策は、固体状の材料を補修される領域に追加することから成る。この場合、材料は、特別な炉内で高温にされた超合金粉末とろう付け用粉末の混合物から成るプレートもしくはストリップから切断されたプリフォームとして利用される。したがって、この混合物は、粉末の混合物によって作られた低融点共晶混合物であるので、焼結される。このようにして得られた焼結物は、その後、洗浄された補修される部品の領域に沿って配置されて、全体が高温にされる。次いで、拡散ろう付けのプロセスが行われ、焼結物が部品の表面にろう付けされる。
【0006】
この方法では、ウォータージェットを使用して焼結シートが切断されて平面的な2次元(2D)プリフォームが作製される。ろう付け後、部品は、元の形状に近い形状に復元して適切な空気力学特性を付与するために、平面領域を機械加工することによって成形される。
【0007】
このプロセスでは、ろう付け用粉末、したがって、溶融成分が焼結物の厚さ全体にわたって分布していることが必要となる。しかしながら、溶融成分の存在は、熱機械特性に悪影響をもたらす。
【0008】
また、焼結物のゾーンに関係なく、一定の厚さの2次元の焼結プリフォームしか作製することができない。しかしながら、対象となる部品の近年使用されている種類では、特定のゾーンで厚さが異なる焼結物を使用するのが有利である。現行の方法では、このような精密さを実現することができない。
【0009】
さらに、焼結物の生成は、複数の連続するステップによって行われるので、製造コストが高くなる。また、材料の広範囲の部分が欠損するので、焼結物はシートから作製されるが、シートの大部分は廃棄される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、元の部品の形状にほぼ類似した形状の精密な3次元(3D)焼結物の簡単、迅速、かつ効率的な製造を提案することによって、先行技術の不利点を克服することである。そのために、本発明は、スパークプラズマ焼結(SPS)技術によるフラッシュ焼結を使用する。
【0011】
SPS技術は、高い一軸圧力の印加と高い直流パルスの印加とを同時に組み合わせて、ほぼ即座に均一に温度を上昇させるものである。この技術は、粉末治金の分野では既知の技術であり、凝集と圧密とによって粉末から金属部品もしくは金属酸化物を製造することができる。特に、SPSフラッシュ技術を使用することにより、制御することができる特定の微細構造を有する部品を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
より詳細には、本発明の主題は、超合金製の熱機械的部品の局部補修のプロセスである。本発明のプロセスは、準備ステップにおいて、SPSフラッシュ焼結用のエンクロージャダイ内で損傷部品の少なくとも補修部分に対応するくぼみの形状であるモールドを作製すること、モールドに多層構造を形成する少なくとも1つのろう付け用粉末層と少なくとも1つの超合金基粉末層とを導入することから成る。その後の焼結ステップにおいて、材料と部品との接着部が拡散によって後で形成されるように、温度、圧力、および継続時間が少なくとも1つのプラトー温度および少なくとも1つのプラトー圧力によって調節されたフラッシュ焼結サイクルに従って加圧しパルス電流を通電することにより温度を急上昇させることから成る。この焼結ステップにより、多層構造内に組成勾配が形成されたプリフォームであって、補修される部品に接合されるろう付け面と超合金材料(6s)がプリフォームの表面に現れたプリフォームが作製される。
【0013】
有利には、フラッシュ焼結サイクルの温度、圧力、および継続時間は、少なくとも600℃/分の温度上昇、約1000℃から2000℃の範囲のプラトー温度、約10Mpaから100Mpaの範囲のプラトー圧力で調節される。
【0014】
一実施形態によれば、モールドは、元の部品全体に対応するくぼみと一致する形状を有する。焼結ステップ中に、超合金層は、拡散によって、材料と補修される部品とを連続的に接着する。
【0015】
次のろう付けステップにおいて、このようにして作製されたプリフォームのろう付け面が、補修される部品の領域と接触した状態で配置されることができる。次いで、適切な炉内で、プリフォームとそれに沿って配置された部品とを少なくともろう付け用合金の溶融温度に等しい温度になるまで加熱することによって、補修される部品内にろう付け用合金の溶融成分が拡散することで、ろう付け面が接着される。したがって、補修領域における部品の機械的脆弱部が著しく低減され、あるいは解消される。
【0016】
次のろう付けステップにおいて、このようにして作製されたプリフォームのろう付け面は、補修される部品の領域と接触した状態で配置される。次いで、適切な炉内で、プリフォームとそれに沿って配置された部品とを少なくともろう付け用合金の溶融温度に等しい温度になるまで加熱することによって、補修される部品内にろう付け用合金の溶融成分が拡散することによって、ろう付け面が接着される。
【0017】
特定の実施形態では、
準備段階で、金属保護層および熱バリア層が超合金層の上に堆積され、
金属保護層は、Ni、Pt、Hf、Y、Zr、Al、Si、Cu、Ag、ならびに/もしくはAu、および/またはNi−Al組成物、Ni−Pt−Al組成物、ならびに/もしくはNi−Al−Zr組成物から成る少なくとも1つのシートダイで構成され、
熱バリア層は、6から8%重量のイットリア安定化ジルコニア(熱バリア組成物ZrO−6‐8Y)で構成される。
【0018】
本発明はまた、上述のフラッシュ焼結技術に従って補修される超合金製の熱機械的部品、特に、タービン部品に関する。その後、部品は、材料の拡散によって、補修される部品に接着される。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して後述する一実施形態に関する説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】元の部品と一致するくぼみの形状のSPSダイモールド内の層アセンブリの一例の断面図である。
図2】同アセンブリのフラッシュ焼結後の部分断面図である。
図3】補修される部品の一部と一致するくぼみの形状のSPSダイモールド内の層アセンブリの一例の断面図である。
図4】このアセンブリのフラッシュ焼結後の部分断面図である。
図5】このアセンブリを補修される部品にろう付けした後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、SPSエンクロージャ(図示せず)の中空円筒状黒鉛ダイ11のチャンバ10内に形成されたモールド1の部分縦断面図である。電圧端子Bおよび圧縮ピストンPは、フラッシュ焼結サイクルに従ってモールドを加圧してパルス電流を通電させることができるように調節される。
【0022】
このモールド1は、超合金製の元の部品と一致するくぼみの形状である。損傷部品2は、外表面、特に、部品の一部が欠損している、あるいは、浸食された、腐食した、もしくは酸化した面20を洗浄した後に、このモールド1に導入される。この面20上に、材料の連続層のアセンブリ3、すなわち、超合金粉末層31、白金シートとアルミニウムシートとから成る保護金属層32、およびイットリア安定化ジルコニア(式ZrO)のセラミック粉末から作られる熱バリア33が堆積される。
【0023】
補修される部品の幾何学的形状に沿って、層はモールド1に組み込まれる前に損傷部品2に堆積される、あるいは、アセンブリ3がノズルによってこのモールドに注入されることができる。部品とアセンブリとは、局部圧力を印加することができるようにモールド内に配置された黒鉛ジャケット4内に配置される。部品1上に多層アセンブリ3を形成する上述の様々な方法は、当業者の能力の範囲内である。
【0024】
フラッシュ焼結作業中は、温度および圧力を調節するサイクルは、電圧および圧力の所定の値に従ってプラグラムされたチャートに従って行われる。プログラムでは、8000Aに達する可能性のあるモールド内を流れる電流によって2000℃まで上昇する可能性のあるプラトー温度が規定される。
【0025】
電流が流されることにより、例えば、約600℃/分以上で温度を急上昇させることができる。この速度により、焼結中に粒子が大きくなるのを防ぐことができるので、この速度は、ナノ材料の合成に望ましい。さらに、この速度により、図2に示されるように、均一に拡散が生じて、多層アセンブリ3の生成が維持されると同時に、層31−32−33の境界面における組成勾配G1およびG2の形成を促進し、さらに、焼結超合金層31と補修される部品2との間で材料が連続的に接着するのを促進する。
【0026】
図3を参照すると、断面図は、SPSダイ11のチャンバ10内に形成されたモールド7内の層アセンブリ6の別の例を示している。この例では、モールド7は、部品の元の形状に復元するために損傷部品に追加される補修部と一致するくぼみの形状を有する。
【0027】
上述の方法によれば、くぼみは、アセンブリ6もしくは多層構造を形成する層、つまり、補修される部品の面に合わせることができるろう付け用粉末層60、超合金粉末層61、Ni−Al−Zr組成物のシートから成る保護層62、イットリア安定化ジルコニア(式ZrO)のセラミック粉末で形成され、酸化ガドリニウムGdがドープされた熱バリア63が連続して堆積することで埋められる。
【0028】
図4を参照すると、上述した条件で実行される焼結ステップにより、多層構造6内の層60−61−62−63のそれぞれの間に組成勾配G3、G4、G5が形成されたプリフォーム2aを得ることができる。焼結ろう付け層60は、補修される部品の損傷面に接合される外側面6bを有し、一部の超合金材料6sは、ろう付け面6b内のプリフォーム2aの表面に現れる。
【0029】
図5に示されている次のろう付けステップでは、プリフォーム2aのろう付け面6bは、補修される部品2の相補的形状ゾーン、つまり面20と接触した状態で配置される。次いで、プリフォーム2aおよびそれに沿って配置されている部品2は、適切な炉内で、少なくともろう付け用合金の溶融温度に等しい温度まで、例えば、銀系合金の場合では約700℃まで加熱される。その後、ろう付け面6bは、ろう付け用合金の溶融成分が面20を通って補修される部品2内に拡散することによって接着する。
【0030】
本発明は、上述および図示している例に限定されない。例えば、最初に、化学的および熱的に適合するセラミック材料の複数の層を、堆積させることも可能である。さらに、金属保護層と熱バリア層とは、部品が再構成された時点で、次の部品全体への堆積ステップで追加されてもよい。この場合、保護層と耐熱層は、有利には、事前に、損傷部品の表面から剥がされ、焼結はこれらの層が無い状態で行われる。その後、これらの層は、再構成された部品全体に焼結によって、堆積され接合される。
図1
図2
図3
図4
図5