特許第6085258号(P6085258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085258
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】周波数変換システム及び周波数変換方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/15 20060101AFI20170213BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20170213BHJP
【FI】
   H04B7/15
   H04B1/40
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-18399(P2014-18399)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-146506(P2015-146506A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米坂 真司
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝己
(72)【発明者】
【氏名】金田 泰明
(72)【発明者】
【氏名】美尾谷 成貴
(72)【発明者】
【氏名】川村 昌史
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−263358(JP,A)
【文献】 特開2007−335965(JP,A)
【文献】 特表2011−525072(JP,A)
【文献】 特開2001−230716(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0133465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の複数の部屋間に敷設されている伝送線路であって放送信号を伝送している伝送線路を利用して無線基地局と前記部屋に備えられたアンテナとの間で無線信号を伝送する際に用いられる周波数変換システムであって、
前記無線基地局と前記伝送線路とを接続し、前記アンテナと前記伝送線路とを接続する複数の周波数制御装置を備え、
前記周波数制御装置は、
前記無線基地局又は前記アンテナから入力される無線信号を、前記放送信号で用いられていない周波数帯であって前記伝送線路で伝送可能な周波数帯である伝送周波数帯の信号に変換して前記伝送線路に出力し、
前記伝送線路から入力される信号のうち、前記伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に変換して前記無線基地局又は前記アンテナに出力し、
前記周波数制御装置は、
前記無線基地局又は前記アンテナから入力される信号を放送信号と無線信号とに分離する第1の周波数帯分離部と、
前記第1の周波数帯分離部によって分離された無線信号を伝送周波数帯の信号に周波数変換する第1の周波数変換部と、
前記第1の周波数帯分離部によって分離された放送信号と前記第1の周波数変換部により得られた伝送周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記伝送線路に出力する第1の送受信部と、
前記伝送線路から入力される信号を放送信号と伝送周波数帯の信号とに分離する第2の周波数帯分離部と、
前記第2の周波数帯分離部によって分離された伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に周波数変換する第2の周波数変換部と、
前記第1の周波数帯分離部によって分離された放送信号と前記第2の周波数変換部によって得られた無線信号の周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記無線基地局又は前記アンテナに出力する第2の送受信部と、
を有する、
ことを特徴とする周波数変換システム。
【請求項2】
請求項に記載の周波数変換システムにおいて、
複数の前記周波数制御装置のうちいずれか一つの周波数制御装置の前記第1の送受信部は、予め定められた複数の周波数帯の試験信号を順に前記伝送線路に出力し、
複数の前記周波数制御装置のうち他の周波数制御装置の前記第1の送受信部は、前記伝送線路を介して前記試験信号を受信したか否かを示す情報をユーザに出力する
ことを特徴とする周波数変換システム。
【請求項3】
請求項に記載の周波数変換システムにおいて、
複数の前記周波数制御装置のうちいずれか一つの周波数制御装置の前記第1の送受信部は、無線信号を前記伝送線路に出力し、
複数の前記周波数制御装置のうち他の周波数制御装置の前記第1の送受信部は、前記伝送線路を介して無線信号を受信したか否かを検出し、
前記第1の送受信部が無線信号を伝送線路から受信した場合に、前記第1の周波数変換部は前記第1の周波数帯分離部によって分離された無線信号を周波数変換せずに前記第1の送受信部に出力する
ことを特徴とする周波数変換システム。
【請求項4】
建物内の複数の部屋間に敷設されている伝送線路であって放送信号を伝送している伝送線路を利用して無線基地局と前記部屋に備えられたアンテナとの間で無線信号を伝送する際に用いられ前記無線基地局と前記伝送線路とを接続し前記アンテナと前記伝送線路とを接続する複数の周波数制御装置を備える周波数変換システムにおける周波数変換方法であって、
前記周波数制御装置が、前記無線基地局又は前記アンテナから入力される無線信号を、前記放送信号で用いられていない周波数帯であって前記伝送線路で伝送可能な周波数帯である伝送周波数帯の信号に変換して前記伝送線路に出力する第1のステップと、
前記周波数制御装置が、前記伝送線路から入力される信号のうち、前記伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に変換して前記無線基地局又は前記アンテナに出力する第2のステップと
有し、
前記第1のステップは、
前記無線基地局又は前記アンテナから入力される信号を放送信号と無線信号とに分離する第1の周波数帯分離ステップと、
前記第1の周波数帯分離ステップによって分離された無線信号を伝送周波数帯の信号に周波数変換する第1の周波数変換ステップと、
前記第1の周波数帯分離ステップによって分離された放送信号と前記第1の周波数変換ステップにより得られた伝送周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記伝送線路に出力する第1の送受信ステップと、
を含み、
前記第2のステップは、
前記伝送線路から入力される信号を放送信号と伝送周波数帯の信号とに分離する第2の周波数帯分離ステップと、
前記第2の周波数帯分離ステップによって分離された伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に周波数変換する第2の周波数変換ステップと、
前記第1の周波数帯分離ステップによって分離された放送信号と前記第2の周波数変換ステップによって得られた無線信号の周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記無線基地局又は前記アンテナに出力する第2の送受信ステップと、
を含む、
ことを特徴とする周波数変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変換システム及び周波数変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信を用いてデータの送受信を行う無線LAN(Local Area Network)が普及し、一般家庭でも利用されるようになっている。無線LANのアクセスポイントが設置されている居室と異なる居室でステーション(例えば、ノート型パソコンやスマートフォンなど)を利用する場合には、アクセスポイントとステーションとの間における無線通信の距離が長くなったり、壁越しで無線通信を行ったりするために十分な受信電力を得られないことがある。このような場合には、通信速度の低下や無線通信の切断が生じることがあり、無線LANの利便性を損なうことになってしまう。
【0003】
そこで、住居等の建物においてテレビ放送の受信信号を各居室で利用可能にするために既に設けられている同軸線などを用いて居室間における無線LANの無線信号の伝送を行い、居室内に設けられたアンテナであって同軸線に接続されたアンテナを介して無線通信を行うことにより、通信品質を向上させる技術が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−318278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、住居等の建物に既に設けられている同軸線が放送衛星(BS)や通信衛星(CS)などを用いたテレビ放送の信号に対応していない場合、すなわち同軸線がGHz帯の信号の伝送に適さない場合には、上述したように無線信号を既設の同軸線で伝送することにより無線LANの利用可能範囲を広げられないという問題があった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、建物において設けられている同軸線などの伝送線路が無線LANで用いられる無線信号の伝送に適さない場合においても、当該伝送線路を利用した無線LANの利用可能範囲を広げることができる周波数変換システム及び周波数変換方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、建物内の複数の部屋間に敷設されている伝送線路であって放送信号を伝送している伝送線路を利用して無線基地局と前記部屋に備えられたアンテナとの間で無線信号を伝送する際に用いられる周波数変換システムであって、前記無線基地局と前記伝送線路とを接続し、前記アンテナと前記伝送線路とを接続する複数の周波数制御装置を備え、前記周波数制御装置は、前記無線基地局又は前記アンテナから入力される無線信号を、前記放送信号で用いられていない周波数帯であって前記伝送線路で伝送可能な周波数帯である伝送周波数帯の信号に変換して前記伝送線路に出力し、前記伝送線路から入力される信号のうち、前記伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に変換して前記無線基地局又は前記アンテナに出力することを特徴とする周波数変換システムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の周波数変換システムにおいて、前記周波数制御装置は、前記無線基地局又は前記アンテナから入力される信号を放送信号と無線信号とに分離する第1の周波数帯分離部と、前記第1の周波数帯分離部によって分離された無線信号を伝送周波数帯の信号に周波数変換する第1の周波数変換部と、前記第1の周波数帯分離部によって分離された放送信号と前記第1の周波数変換部により得られた伝送周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記伝送線路に出力する第1の送受信部と、前記伝送線路から入力される信号を放送信号と伝送周波数帯の信号とに分離する第2の周波数帯分離部と、前記第2の周波数帯分離部によって分離された伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に周波数変換する第2の周波数変換部と、前記第1の周波数帯分離部によって分離された放送信号と前記第2の周波数変換部によって得られた無線信号の周波数帯の信号とを合成し、合成により得られた信号を前記無線基地局又は前記アンテナに出力する第2の送受信部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の周波数変換システムにおいて、複数の前記周波数制御装置のうちいずれか一つの周波数制御装置の前記第1の送受信部は、予め定められた複数の周波数帯の試験信号を順に前記伝送線路に出力し、複数の前記周波数制御装置のうち他の周波数制御装置の前記第1の送受信部は、前記伝送線路を介して前記試験信号を受信したか否かを示す情報をユーザに出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の周波数変換システムにおいて、複数の前記周波数制御装置のうちいずれか一つの周波数制御装置の前記第1の送受信部は、無線信号を前記伝送線路に出力し、複数の前記周波数制御装置のうち他の周波数制御装置の前記第1の送受信部は、前記伝送線路を介して無線信号を受信したか否かを検出し、前記第1の送受信部が無線信号を伝送線路から受信した場合に、前記第1の周波数変換部は前記第1の周波数帯分離部によって分離された無線信号を周波数変換せずに前記第1の送受信部に出力することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、建物内の複数の部屋間に敷設されている伝送線路であって放送信号を伝送している伝送線路を利用して無線基地局と前記部屋に備えられたアンテナとの間で無線信号を伝送する際に用いられ前記無線基地局と前記伝送線路とを接続し前記アンテナと前記伝送線路とを接続する複数の周波数制御装置を備える周波数変換システムにおける周波数変換方法であって、前記周波数制御装置が、前記無線基地局又は前記アンテナから入力される無線信号を、前記放送信号で用いられていない周波数帯であって前記伝送線路で伝送可能な周波数帯である伝送周波数帯の信号に変換して前記伝送線路に出力する第1のステップと、前記周波数制御装置が、前記伝送線路から入力される信号のうち、前記伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯の信号に変換して前記無線基地局又は前記アンテナに出力する第2のステップとを有することを特徴とする周波数変換方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明よれば、放送信号で用いられていない周波数帯であって伝送線路で伝送可能な周波数帯を用いて、無線信号を周波数変換して得られた信号を伝送することにより、建物に既に敷設されている伝送線路が無線信号の伝送に適していない場合であっても、伝送線路を用いた無線基地局とアンテナとの間の伝送を行うことができ、伝送線路を利用した無線LANの利用可能範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の周波数変換システムを同軸線が既設されている建物で用いる一例を示す図である。
図2】本実施形態における周波数制御装置1が行う周波数変換の概要を示す図である。
図3】本実施形態における周波数制御装置1の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態における周波数変換システム及び周波数変換方法を説明する。周波数変換システムは、建物内に既に敷設されている伝送線路であってテレビ放送用の信号を建物内の各居室に伝送する伝送線路を利用して無線LANの利用可能範囲を広げる際に用いられる。周波数変換システムは、複数の周波数制御装置を備えている。各周波数制御装置は、建物内に既設の伝送線路と無線LAN機器との間に接続される。周波数制御装置は、無線LANで用いられる無線信号の周波数を、伝送線路で伝送可能な周波数へ周波数変換することにより、伝送線路を用いた無線LANの利用可能範囲を広げることを可能にする。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態の周波数変換システムを同軸線(伝送線路)が既設されている建物で用いる一例を示す図である。同図に示すように、建物(住居)には、4つの居室R1〜R4がある。また、建物には、テレビ・アンテナ21が備えられており、テレビ・アンテナ21で受信したテレビ放送用の信号(以下、放送信号という)は、前述の同軸線を介して各居室R1〜R4の端子T1〜T4に伝送される。図1に示す例では、テレビ・アンテナ21で受信された信号は、分配器22によって居室R1の端子T1と分配器23とに分配される。また、分配器23は、分配器22から入力される放送信号を、居室R2の端子T2と居室R3の端子T3と居室R4の端子T4とに分配する。居室R3にはテレビ受像機24が位置している。テレビ受像機24は、端子T3に接続され、端子T3を介して放送信号を受信してテレビ放送の視聴を可能にする。上述のように、各居室R1〜R4の端子T1〜T4は、分配器22及び分配器23を介して同軸線で接続されている。
【0016】
また、図1に示す例では、建物内の同軸線を利用した通信システムが構成されている。この通信システムは、ホームゲートウエイ31(無線基地局)、アンテナ32及びアンテナ33、コンピュータ34及びコンピュータ35、並びに3つの周波数制御装置1(1A〜1C)を備えている。ホームゲートウエイ31は、外部ネットワーク4にされており、建物内の通信システムと外部ネットワーク4との間における信号の中継処理などを行う。ホームゲートウエイ31は、居室R1に位置し、周波数制御装置1Aを介して端子T1に接続されている。また、ホームゲートウエイ31は、無線LANの無線信号を内蔵のアンテナで送受信するとともに、無線信号を周波数制御装置1Aと送受信する。アンテナ32は、居室R2に位置し、周波数制御装置1Bを介して端子T2に接続されている。アンテナ33は、居室R3に位置し、周波数制御装置1Cを介して端子T3に接続されている。ホームゲートウエイ31は、建物内の同軸線と各周波数制御装置1A〜1Cとを介して、アンテナ32及びアンテナ33と接続されている。
【0017】
周波数制御装置1Aは、ホームゲートウエイ31から入力される無線信号の周波数を、放送信号の周波数近傍の周波数帯であって放送信号の伝送に同軸線上で利用されていない周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Aは、無線信号に対する周波数変換により得られた信号を同軸線に出力する。ここで、無線信号に対する周波数変換における変換先の周波数帯は、周波数制御装置1A〜1Cにおいて共有されている。変換先の周波数帯(以下、伝送周波数帯という)は、例えば周波数制御装置1A〜1Cを各居室R1〜R4に設置する際にユーザが設定してもよいし、放送信号で使用される周波数帯が既知である場合には予め設定されている。また、周波数制御装置1Aは、同軸線から入力される信号において伝送周波数帯に含まれる信号成分を、無線LANの無線信号の周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Aは、周波数変換で得られる無線信号をホームゲートウエイ31に出力する。
【0018】
周波数制御装置1Bは、同軸線から入力される信号において伝送周波数帯に含まれる信号成分を、無線LANの無線信号の周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Bは、周波数変換で得られる無線信号をアンテナ32から送出する。また、周波数制御装置1Bは、アンテナ32で受信される無線信号の周波数を、伝送周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Bは、周波数変換で得られる信号を同軸線に出力する。
【0019】
周波数制御装置1Cは、周波数制御装置1Cと同様に、同軸線から入力される信号において伝送周波数帯に含まれる信号成分を、無線LANの無線信号の周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Cは、周波数変換で得られる無線信号をアンテナ33から送出する。また、周波数制御装置1Cは、アンテナ33で受信される無線信号の周波数を、伝送周波数帯へ周波数変換する。周波数制御装置1Cは、周波数変換で得られる信号を同軸線に出力する。
【0020】
ここで、周波数制御装置1(1A〜1C)において行われる周波数変換について説明する。図2は、本実施形態における周波数制御装置1が行う周波数変換の概要を示す図である。同図において、横軸は周波数を示している。一般に、住宅等の建物において既に敷設されている同軸線には、地上波テレビ放送の放送信号と衛星テレビ放送の放送信号とを伝送可能な同軸線(衛星放送対応の同軸線)と、地上波テレビ放送の放送信号を伝送できるが衛星テレビ放送の放送信号を伝送できない同軸線(衛星放送未対応の同軸線)とがある。
【0021】
周波数制御装置1は、無線LANの無線信号の周波数(例えば2.4GHz)を地上波テレビ放送の放送信号の周波数帯の近傍の周波数帯である伝送周波数帯(例えば800MHz〜1GHz)へ、図2に示すように周波数変換をする。また、周波数制御装置1は、入力される信号において伝送周波数帯に含まれる信号成分を無線信号の周波数帯へ変換(図2に示す周波数変換に対して逆の周波数変換)を行う。
【0022】
図1に戻り説明を続ける。コンピュータ34は、居室R2に位置し、アンテナ32との間で無線信号を送受信することにより、同軸線と周波数制御装置1A及び周波数制御装置1Bとを介して、ホームゲートウエイ31と通信を行う。また、コンピュータ35は、居室R4に位置し、アンテナ33との間で無線信号を送受信することにより、同軸線と周波数制御装置1A及び周波数制御装置1Cとを介して、ホームゲートウエイ31と通信を行う。コンピュータ34及びコンピュータ35は、ホームゲートウエイ31と通信することにより、外部ネットワーク4との通信が可能になっている。ここで、外部ネットワーク4は、インターネットサービスプロバイダが提供するネットワーク又はネットワークインタフェースやインターネットなどである。
【0023】
図3は、本実施形態における周波数制御装置1の構成例を示すブロック図である。周波数制御装置1は、送受信部11及び送受信部15、周波数帯分離部12及び周波数帯分離部14、並びに周波数変換部13を有している。送受信部11は、ホームゲートウエイ31が出力する無線信号又はアンテナ32、33で受信した無線信号を入力し、入力した無線信号を周波数帯分離部12に出力する。周波数帯分離部12は、送受信部11から入力される信号のうち、無線信号の周波数帯における成分の信号を周波数変換部13に出力し、無線信号の周波数帯以外の周波数帯における成分の信号を送受信部15に出力する。
【0024】
周波数変換部13は、周波数帯分離部12から入力される信号に対して、無線信号の周波数帯から伝送周波数帯への周波数変換を行う。周波数変換部13は、周波数変換により得られた伝送周波数帯の信号を送受信部15に出力する。送受信部15は、周波数帯分離部12から入力される信号であって放送信号を含む信号と、周波数変換部13から入力される伝送周波数帯の信号とを合成する。送受信部15は、合成により得られた信号を、建物内に既設されている同軸線に出力する。
【0025】
また、送受信部15は、同軸線から入力される信号を周波数帯分離部14に出力する。周波数帯分離部14は、送受信部15から入力される信号のうち、伝送周波数帯における成分の信号を周波数変換部13に出力し、伝送周波数帯以外の周波数帯における成分の信号を送受信部11に出力する。周波数変換部13は、周波数帯分離部14から入力される信号に対して、伝送周波数帯から無線信号の周波数帯への周波数変換を行う。周波数変換部13は、周波数変換により得られた無線信号の周波数帯の信号を送受信部11に出力する。
【0026】
送受信部11は、周波数帯分離部14から入力される信号であって放送信号を含む信号と、周波数変換部13から入力される無線信号の周波数帯の信号とを合成する。送受信部15は、合成により得られた信号を、接続されているホームゲートウエイ31に出力するか又は接続されているアンテナ32、33から送出する。
【0027】
周波数制御装置1が上述の構成を有しているので、建物に既に敷設されている同軸線が衛星放送未対応の同軸線であり、無線LANにおける無線信号の伝送に適していない場合であっても、当該同軸線で伝送可能な地上波テレビ放送の放送信号が利用する周波数帯の近傍の伝送周波数帯を利用して同軸線上の伝送を行うことができる。また、周波数制御装置1は、ホームゲートウエイ31とアンテナ32及びアンテナ33とに出力する際に、伝送周波数帯の信号を無線信号の周波数帯に戻す周波数変換を行うので、ホームゲートウエイ31とアンテナ32及びアンテナ33とに変更を加えることなく、衛星放送未対応の同軸線を利用して無線LANの利用可能範囲を広げることができる。
【0028】
特に、衛星テレビ放送のサービスが開始される前や衛星テレビ放送が広く普及する前に同軸線を設置したような古い建物では、衛星放送未対応の同軸線が設置されている場合が多い。このような場合には、複数の周波数制御装置1からなる周波数変換システムを適用することにより、既設の同軸線を交換することなく、既設の同軸線を利用して無線LANの利用可能範囲を広げることができる。
【0029】
なお、実施形態では、周波数制御装置1が、ホームゲートウエイ31とアンテナ32及びアンテナ33側(衛星放送対応の同軸線側)から入力される信号に含まれる無線信号の周波数帯の成分の信号に対して、伝送周波数帯への周波数変換を常に行う構成を説明した。しかし、周波数制御装置1は、建物に既設の同軸線(伝送線路)において無線LANの無線信号が伝送可能か否かを検出し、検出結果に応じて周波数変換を行うか否かを選択するようにしてもよい。
【0030】
例えば、ユーザが周波数制御装置1を各居室に設置した後に、伝送線路において無線信号の周波数変換を行わずとも伝送できるか否かを判定するために周波数制御装置1を試験モードに設定する。試験モードにおいては、設置された周波数制御装置1の送受信部15それぞれが無線信号の周波数帯において試験信号を伝送線路に順に出力し、他の周波数制御装置1の送受信部15それぞれが試験信号を受信できたか否かを示す情報をユーザに出力する。ユーザは試験モードを解除する際にすべての周波数制御装置1が試験信号を受信できた場合には、周波数変換部13は周波数変換を行わずに入力された信号を出力するように設定してもよい。
【0031】
また、実施形態では、建物に既設のテレビ放送用の同軸線を無線LANの利用可能範囲を広げるために用いる場合について説明した。しかし、建物に既設の伝送線路であれば、テレビ放送用の同軸線以外を用いて建物内における無線LANの利用可能範囲を広げてもよい。この場合、建物に既設の伝送線路において利用されていない周波数帯であって当該伝送線路で伝送可能な信号の周波数帯(伝送周波数帯)をユーザが予め設定する。あるいは、周波数制御装置1は、伝送線路における伝送周波数帯を検出するようにしてもよい。この場合、ユーザが周波数制御装置1を各居室に設置した後に、伝送線路において信号の伝送が可能な周波数帯を検出するために周波数制御装置1を周波数帯検出モードに設定する。周波数検出モードにおいて、送受信部15は予め定められた周波数帯の試験信号を順に送信し、他の周波数制御装置1における送受信部15が受信できた周波数帯の試験信号を示す情報をユーザに出力する。ユーザは周波数帯検出モードを解除する際に、すべての周波数制御装置1において受信できた試験信号の周波数帯を伝送周波数帯に用いるように設定をする。
【0032】
また、実施形態においては、建物内の同軸線において伝送される放送信号は、建物に設置されたテレビ・アンテナ21で受信した放送信号である場合を示した。しかし、放送信号は、建物に設置されたテレビ・アンテナ21で受信した信号以外であってもよい。例えば、建物の外部からホームゲートウエイ31が受信する信号に放送信号が含まれていてもよい。このときは、ホームゲートウエイ31は、無線信号と放送信号とを同軸線に出力することになる。
【0033】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1、1A、1B、1C…周波数制御装置
4…外部ネットワーク
11、15…送受信部
12、14…周波数帯分離部
13…周波数変換部
21…テレビ・アンテナ
22、23…分配器
24…テレビ受像機
31…ホームゲートウエイ
32、33…アンテナ
34、35…コンピュータ
R1、R2、R3、R4…居室
T1、T2、T3、T4…端子
図1
図2
図3