【実施例】
【0057】
次に、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
<グリーンシート作製工程>
セラミック原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウム安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d
50:0.6μm)100質量部に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(数平均分子量:100,000、ガラス転移温度:−8℃)を固形分換算で16質量部、分散剤としてソルビタン酸トリオレート2質量部、可塑剤としてジブチルフタレート3質量部、溶剤としてトルエン/イソプロパノール(質量比=3/2)の混合溶剤(分散媒)50質量部を、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えた内容積50Lのジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧(約4〜21kPa)下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整して塗工用スラリーとして、ドクターブレード法によりPETフィルム上に連続的に塗工し、次いで、40℃、80℃、110℃と乾燥して長尺の10Sc1CeSZグリーンテープ(グリーン体)を作製し、このグリーンテープを4組の切断用金型を用いて約160mmφの10Sc1CeSZグリーンシート(SOFC用電解質シート用のグリーンシート)に連続的に切断した。具体的には、上側中央部金型と下側中央部金型とでグリーンテープを固定した後、上側ロの字形金型を下ろしてグリーンテープを切断すると同時に下側ロの字形金型が連動して下降してから、ロの字形金型と上側中央部金型が上昇し、ロの字形金型により約160mmφに切断されたグリーンシートを得た。
【0059】
<加圧工程>
上記グリーンシートの上下を、市販のPETフィルム(板状体)で挟んだ。このPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が22mN/cm、表面粗さRaが0.005μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。具体的には、厚さ10mmで200mm角の平滑なアクリル板上に、約170mm角のPETフィルムを、上記のように離型処理されたPET面を上にして載置し、次いで、吸着パッドで約160mmφグリーンシートをPET面上に移動させて、載置した。さらにPETフィルムを準備して、そのPETフィルムを離型処理されたPET面を下にしてグリーンシート上に載置し後、前記アクリル板と同様のアクリル板を載置した。すなわち、アクリル板、PETフィルム、グリーンシート、PETフィルム、アクリル板の積層体を構成した。この積層体を、四軸加圧成型機の試料台上に置き、ゲージ圧9.8MPaで1秒間、常温で加圧した。
【0060】
別途、上記積層体と同様の構成の積層体を準備して、当該積層体中のPETフィルムとグリーンシートとの間に中圧用のプレスケール(富士フィルム社製、「プレスケールMW」)を挟み、同様に加圧して、グリーンシート中の任意の50個所について、0.5mm
2の測定領域でピンポイント圧力を測定し、平均圧力値及び最大圧力値を圧力画像解析システム(富士フィルム社製、「プレスケール圧力画像解析システム FPD−9270」)を用いて解析した。
【0061】
<焼成工程>
次いで、加圧処理後のグリーンシートの上下を、ウネリ最大高さが10μmの99.5%アルミナ多孔質板(気孔率:30%)で挟んで、グリーンシート5枚を含む積層体を作製した。脱脂後、グリーンシートを1420℃で3時間加熱焼成し、120mmΦ、厚さ280μmの10Sc1CeSZ電解質シートを得た。なお、得られた電解質シートの周縁端から5mmより内側の領域(すなわちシート中央部領域)の任意の4箇所の厚さを、U字形マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)で測定し、その平均値を算出してシート厚さとした。
【0062】
(実施例2)
加圧工程が異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。実施例2の加圧工程では、PETフィルム上に載置したグリーンシート上に、両面が離型処理されたPETフィルムを載置し、さらにその上にグリーンシート、両面が離型処理されたPETフィルムの順で繰り返し載置した後、グリーンシートを5枚含む積層体を構成した。この積層体を四軸加圧成型機の試料台上に置き、ゲージ圧9.8MPaで3秒間、常温で加圧した。なお、実施例2で離型処理されたPET面は、実施例1の場合と同様に、常態剥離力が22mN/cm、表面粗さRaが0.005μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。加圧処理が施された積層体に含まれるグリーンシートのうち、最上部に位置していたグリーンシートと最下部に位置していたグリーシートの2枚について、焼成を行った。最上部のグリーンシートを焼成して得られた電解質シートを実施例2−1、最下部のグリーンシートを焼成して得られた電解質シートを実施例2−2とした。
【0063】
(実施例3)
加圧工程において、用いたPETフィルムと加圧条件とが異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。実施例3で用いたPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が40mN/cm、表面粗さRaが0.005μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。また、加圧条件は、常温で、21.1MPaで2秒間であった。
【0064】
(実施例4)
加圧工程において、用いたPETフィルムと加圧条件とが異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。実施例4で用いたPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が136mN/cm、表面粗さRaが0.01μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。また、加圧条件は、常温で、29.4MPaで2秒間であった。
【0065】
(実施例5)
加圧工程において、用いたPETフィルムと加圧条件とが異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。実施例5で用いたPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が380mN/cm、表面粗さRaが0.03μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。また、加圧条件は、常温で、32.4MPaで10秒間であった。
【0066】
(実施例6)
グリーンシートの作製工程で用いた材料及び得られたグリーンシートのサイズと、加圧工程で用いたPETフィルム及び加圧条件とが異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。実施例6では、原料粉末として3モル%酸化イットリウム安定化ジルコニア粉末(第一希元素化学社製、商品名「3YSZ」、d
50:0.4μm)を用い、厚さを約0.13mmに設定した以外は、実施例1と同様にして、3YSZグリーンシートを作製した。また、実施例6で用いたPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が470mN/cm、表面粗さRaが0.04μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。また、加圧条件は、常温で、44.1MPaで30秒間であった。焼成後に得られた実施例6の電解質シートは、100mmφ、厚さ0.1mmの3YSZ電解質シートであった。
【0067】
(比較例1)
加圧工程において、用いたPETフィルムが異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。比較例1で用いたPETフィルムは、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が1080mN/cm、表面粗さRaが0.13μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。
【0068】
(比較例2)
加圧工程において、用いたPETフィルム及び加圧条件が異なる以外は、実施例1と同様の方法で電解質シートを作製した。比較例2で用いたPETフィルムは、約170mmΦで、片面が離型処理されたフィルムであり、離型処理された面の常態剥離力が4mN/cm、表面粗さRaが0.0008μm、表面抵抗値が6×10
7Ω/□であった。しかし、このようなPETフィルムを用いて実施例1と同様の積層体を作製しようとした際に、該PETフィルム上に吸着パッドで約160mmΦの円形グリーンシートを載置すると、該グリーンシートが該PETフィルム上をすべってグリーンシート周縁部がPETフィルムからはみ出した。そこで、ピンセットでグリーンシート側面を押しながら積層体を構成し、61.8MPaで5秒間、常温で加圧した。
【0069】
(参考例)
実施例1と同様の方法で得た10Sc1CeSZグリーンテープを、連続型打抜き機(坂本造機社製、商品名「865B」)に刃型を取付けて、プレスストローク40mm、プレススピード80spmで、約160mmφのグリーンシートに切断した。用いた刃型は、刃先形状が片切り刃(中山紙器材社製)で、刃先角度θが57.5°、θ
1が26.5°、θ
2が31°、形状が約160mmφのニューカッター刃を、ベニヤ板に取付け、更にハネ出しスポンジとして硬質グリーンゴム(中山紙器材社製商品名「KSA−17」)を取付けたものであった。得られたグリーンシートは、離型処理したPETフィルムで加圧処理をせずに、そのまま焼成工程に供した。焼成工程は、実施例1と同様の方法で実施した。
【0070】
以上のように作製された実施例1〜6と、比較例1及び2と、参考例との電解質シートを用いて、以下の「バリ高さ測定」、「電解質シート耐荷重試験」、「単セル作製時のスクリーン印刷後の電解質シートの割れ・欠けの評価」及び「模擬5セルスタッキング試験」を実施した。
【0071】
<バリ高さ測定>
実施例1〜6の電解質シートと、比較例1及び2の電解質シートと、参考例の電解質シートとについて、実施の形態で説明したバリ高さ測定装置(キーエンス社製のダブルスキャン高精度レーザー測定器LTシリーズと、コムス社製の高速3次元形状測定システム「EMS2002AD−3D」)を用いて、任意の十字の方向にレーザー光を0.01mmピッチで、シート4箇所の周縁端付近について、シート外からシート上に向かって周縁端から約5mmの長さまでスキャンさせてシート面の変位曲線を求め、その変位曲線からバリ高さを測定した。
【0072】
実施例1〜6の電解質シートと、比較例1及び2の電解質シートについては、バリ高さは、第1〜第7区間の全てについて測定された。そのときの実施例1、実施例4、実施例6、比較例1及び比較例2のシート周縁部の変位曲線は、それぞれ、
図3、
図5、
図6、
図7及び
図8のようになった。さらに、第1区間のバリ高さ[ΔH(0−3)]を決定するシート面の最高点と最低点が、シート周縁端と前記シート周縁端から0.6mm内側の位置との間の区間に存在することが多いことを確認するために、ΔH(0−0.7)及びΔH(0.71−3)も測定した。なお、
図4は実施例1の変位曲線の拡大図である。
【0073】
参考例の、加圧処理なしで作製した電解質シートについては、第1〜第3、第6及び第7区間のバリ高さと、ΔH(0−0.08)、ΔH(0.09−3)、ΔH(0−0.05)及びΔH(0.06−3)とを測定した。なお、参考例の電解質シートについては、0.1mmピッチ、0.001mmピッチでも同様の測定を行った。
【0074】
得られた4箇所の測定データのうち、ΔH(0−3)値が最も大きい数値をその電解質シートの最大バリ高さとして、その位置における各区間のバリ高さを区間最大バリ高さとした。
【0075】
なお、ΔH(0−0.08)、ΔH(0.09−3)、ΔH(0−0.05)、ΔH(0.06−3)、ΔH(0−0.7)及びΔH(0.71−3)は、次のとおりである。
ΔH(0−0.08):シート周縁端とシート周縁端から0.08mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
ΔH(0.09−3):シート周縁端から0.09mm内側の位置とシート周縁端から3mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
ΔH(0−0.05):シート周縁端とシート周縁端から0.05mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
ΔH(0.06−3):シート周縁端から0.06mm内側の位置とシート周縁端から3mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
ΔH(0−0.7):シート周縁端とシート周縁端から0.7mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
ΔH(0.71−3):シート周縁端から0.71mm内側の位置とシート周縁端から3mm内側の位置との間の区間のバリ高さ
【0076】
参考例の電解質シートのバリ高さを表1に、実施例1〜6及び比較例1,2の電解質シートの厚さとバリ高さを表2に示す。
【0077】
<電解質シート耐荷重試験>
アルミナ敷板の上に、表面が平滑で優れた平行度を保った2枚のアルミナ板(ニッカート社製、商品名「SSA−S」)に各電解質シートを挟んだ状態のものを載置し、これを電気炉内に配置した。その上に、重しとして、電解質シートへの単位面積当たりの荷重が0.8kgf/cm
2になるように、棚板状のアルミナを置いた。この状態で室温から1000℃まで10時間かけて昇温し、1000℃で1時間保持してから室温にまで降温する操作を繰り返して、クラック・割れの発生状況を目視とカラーチェックにより観察した。結果を表3に示す。
【0078】
<単セル作製時のスクリーン印刷後の電解質シートの割れ・欠けの評価>
比較例2以外の電解質シートを用い、各電解質シートの一方の面に燃料極、他方の面に空気極を形成して、SOFC用単セルをそれぞれ10枚(各実施例、比較例及び参考例で10枚ずつ)作製した。詳しくは、電解質シート片面に、塩基性炭酸ニッケルを熱分解して得た酸化ニッケル粉末(d
50:0.9μm)60質量部と、市販の8モルイットリア安定化ジルコニア粉末40質量部とからなる燃料極ペーストを、スクリーン印刷で各電解質シートの周縁部5mm幅の領域を除く約110mmφの領域に塗布し、乾燥させた。また、電解質シートの他方の面にも、市販のストロンチウムドープランタンマンガネート(La
0.6Sr
0.4MnO
3)粉末80質量部と、市販の20モル%ガドリニアドープセリア粉末20質量部とからなる空気極ペーストを、燃料極ペーストの場合と同様にしてスクリーン印刷で塗布し、乾燥させた。なお、スクリーン印刷の条件は、スキージ硬度70、スキージ圧0.38MPa、スキージ速度4.5cm/s、スキージ角70°であった。スクリーンには、テトロン製の200メッシュを用いた。そして、スクリーン印刷時の各電解質シートの周縁部の割れ・欠けを目視で観察した結果を表3に示す。次いで、両面に電極を印刷した割れ・欠けの無い電解質シートを、1300℃で3時間焼成して厚さが40μmの燃料極と厚さが30μmの空気極が形成された3層構造の単セルを作製した。
【0079】
<模擬5セルスタッキング試験>
120mmφで3mm厚さのランタンクロマイトからなる空気流路用溝を形成したセパレータ(ニッカトー社製、型式「LCO」)に、「単セル作製時のスクリーン印刷後の電解質シートの割れ・欠けの評価」で作製した単セルの空気極側を接合し、シールして、セパレータ一体型セルをそれぞれ5枚(各実施例、比較例及び参考例で5枚ずつ)作製した。マニホールドに組み込んだニッケル集電板上にニッケルフェルトを貼り付け、その上に、燃料極が上向きになる向きにセパレータ一体型セル、ニッケルメッシュ、セパレータ一体型セルの順で5枚のセパレータ一体型セルを貼り付けた。さらにその上にニッケルフェルトを貼り付け、最上部にマニホールドに組み込んだニッケル集電板を載置して、5セルスタックを形成した。この5セルスタックを、120mmφ5セルスタック発電試験装置に組み込んだ。
【0080】
この状態で空気極側に空気を、燃料極側に窒素を供給しながら、室温から950℃まで10時間かけて昇温し、950℃で1時間保持してから室温にまで降温する操作を繰り返して、空気極側と燃料極側のガスもれをチェックした。結果を表3に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
表1に、高分子フィルムを使用した加圧処理が実施されずに作製された、参考例の電解質シートのバリ高さが示されている。0.1mmピッチで測定した個々のバリ高さは、シート周縁端(0ポイント)から0.1mm以上内側の箇所で測定していることになる。したがって、表1に示すように、測定ピッチ0.1mmでは、ΔH(0−3)は27μmであるが、0.05mm内側の箇所のバリ高さ(Δ(0−0.05))、0.08mm内側のバリ高さ(Δ(0−0.08))は測定されていない。
【0085】
実際、参考例の電解質シートを0.01mmピッチで測定すると、ΔH(0−3)は37μmと、0.1mmピッチで測定された場合よりも10μm大きくなった。このことは、(0−0.05)区間に最大バリ高さがあることを示している。このように、0.01mmピッチで測定すると、0.1mmピッチでは検出できなかったバリ高さが顕在化された。
【0086】
参考例の電解質シートを0.001mmピッチでさらに細かく測定すると、ΔH(0−0.05)について、0.01mmピッチでは検出できなかった39μmの最大バリ高さが顕在化された。
【0087】
以上のように、測定ピッチを小さくすれば測定箇所が増し、より正確なバリ高さが測定できるので、シート反り上がりのプロフィールが明確になった。しかし、測定ピッチが小さくなりすぎると、測定データ処理数が増してデータ処理が煩雑になるという問題も生じた。また、0.01mmピッチと0.001mmピッチとの差異は、0.1mmピッチと0.01mmピッチとの差異ほど大きくなかった。したがって、本発明では、測定ピッチを0.01mmに特定した。また、参考例では、切断後のグリーンシートを吸着パッドでPETフィルムから剥がそうとした時、やや剥がれにくかった。参考例では、その後で加圧処理を実施していないので、バリ高さ比ΔH(0.61−3)/ΔH(0−0.6)や、ΔH(0.11−3)/ΔH(0−0.1)が、0.5未満の値になっていた。これは、切断後のグリーンシートをPETフィルムから剥がすときの応力のために、シート周端部付近の反り上がり(ΔH(0−0.6)、ΔH(0−0.1))が大きくなったことによることが判る。
【0088】
表2に示すように、ΔH(0−3)、ΔH(0−0.7)及びΔH(0−0.6)を比較すると、実施例1〜6において全て同じ値になっている。このことは、最大バリ高さのピークが第2区間(0−0.6mm)にあり、区間(0.61−0.7mm)には無い、すなわち第3区間(0.61−3mm)には無いことを示している。この結果から、シート周縁部に確実に最大バリ高さが存在する区間として、シート周縁端と当該シート周縁端から0.6mm内側との間の区間(第2区間)を選択し、その第2区間(0−0.6mm)に対する第3区間(0.61−3mm)のバリ高さ比を特定することによって、シート周縁端付近の反り上がり程度を規定できることが確認された。
【0089】
表2に示すように、比較例1では、加圧処理時に用いられた高分子フィルムの常態剥離力が1000mN/cm以上であったので、加圧処理後のグリーンシートが吸着パッドでスムーズに剥がれず、同様に剥がすときの応力のために
図7に示すように周縁部の反りが大きくなって、ΔH(0−3)が100μmを超えていることが判る。また、剥がすときの応力により、特にシート周縁端付近の反り上がりが大きくなり、バリ高さ比ΔH(0.61−3)/ΔH(0−0.6)、ΔH(0.31−3)/ΔH(0−0.3)及びΔH(0.11−3)/ΔH(0−0.1)が0.5未満になった。
【0090】
また、比較例2では、加圧処理時に用いられた高分子フィルムの常態剥離力が10mN/cm以下であったので、高分子フィルムに載せたグリーンシートが滑りやすくなり、加圧工程でグリーンシートの一部の周縁部が高分子フィルムからはみ出て全面加圧不能となり、圧力分布も±15%以上となった。そのため、焼成後の電解質シートの周縁部のプロフィールは
図8のようになり、表2に示すように、ΔH(0−3)が150μmを超えていた。周縁部に段差状のバリが生じたので、最大バリ高さ比ΔH(0.61−3)/ΔH(0−0.6)及びΔH(0.31−3)/ΔH(0−0.3)が0.5未満になった。
【0091】
表3に示すように、実施例1〜6の電解質シートでは、耐荷重試験を10回繰り返し後でも割れは発生しなかった。また、実施例1〜6の電解質シートには、スクリーン印刷による割れ・欠けの発生は無く、模擬スタッキング試験でもガスもれは認められなかった。従って、本発明で特定された特性を満たす電解質シートは、シート周縁部のバリ高さが小さく、且つシート周縁端付近の反り上がりも小さいので、荷重強度に対して優れた特性を有しており、SOFC用単セルの電解質シートとして高い信頼性を有する優れたものであることが判る。
【0092】
一方、比較例1、2及び参考例の電解質シートでは、耐荷重試験を10回繰り返した後で割れが発生しないものは無く、スクリーン印刷による割れ・欠けが発生した。さらに、模擬スタッキング試験でもガスもれが認められたので、スタッキング時に電解質シートに割れやクラックが発生したことが判る。