【文献】
町田輝史 ほか,微粉木炭のCIP成形の試み,塑性加工連合講演会講演論文集,2002年11月 1日,Vol.53rd,第429−430頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
活性炭はその大きい比表面積と発達した細孔構造から各種吸着材として汎用されている。例えば浄水処理などの各種液相処理や脱臭処理、空気清浄処理などの各種気相処理において利用されている。また活性炭の導電性や電子授受機能を有する性質、または活性炭の細孔内の表面に触媒を高分散担持させることができるなどの性質に着目して、電気二重層キャパシタ用の炭素電極、燃料電池、空気電池、リチウムイオン電池などの電池用の炭素電極などの電極用材料として利用されている。更に近年では、水素吸蔵やメタン吸蔵などエネルギーの貯蔵材料としても活性炭は注目されている。
【0003】
活性炭は、粉末状活性炭、粒状活性炭、繊維状活性炭など様々な形状で用いられているが、例えば粉末状活性炭は、目詰まりが生じやすく、また粉塵による人体への影響などが問題視されている。また粒状活性炭や繊維状活性炭では十分な
成形体密度が得られなかった。そこで、活性炭とバインダーとを混合して任意の形状に加工した活性炭成形体が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、比表面積が1000m
2/g以上であり、
成形体密度が0.4g/cm
3以上1g/cm
3以下である炭素材料と、10重量%以下のポリテトラフルオロエチレンなどのバインダーとを混合させた水素吸蔵体が開示されている。この技術によれば、炭素材料の比表面積と
成形体密度とがともに大きいため、単位体積当たりの水素吸蔵量を増大できる。
【0005】
また特許文献2には、吸着剤の表面にポリオレフィンの薄いコート層を有する吸着剤成型体であって、該ポリオレフィンはメルトフロレートが1g/10分以下の粘度特性を有するポリオレフィンであることを特徴とする吸着剤成型体が開示されている。この技術によれば、手で触れても手が汚れたり、摩耗によっても黒い埃が出るなどの問題はなく、吸着剤と水溶液との接触が良好であり、吸着剤としての機能が十分に発揮できる。
【0006】
更に特許文献3には、粒状又は粉末状活性炭と、メルトインデックスの異なる2種類以上の有機高分子バインダーを混合し、得られた混合物を金型に充填し、加熱、加圧して成形することを特徴とする活性炭成形体の製造方法が開示されている。この技術によれば、十分な強度を有し、通水抵抗が低く、有害物質除去能力を大きくできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
活性炭成形体の吸着性能や吸蔵性能を向上させるためには、活性炭成形体の細孔容積を増大させることが望ましい。一方で、活性炭を所望の形状に成形するためには、バインダーを添加して強度を高める必要があるが、バインダー含有量を増加させると、活性炭の比表面積や細孔容積が低下するなどの問題があった。
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、細孔容積が大きく、且つ所望の形状に成形可能な強度を有する活性炭成形体、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し得た本発明の活性炭成形体は、活性炭成形体の全細孔容積(cm
3/g)と
成形体密度(g/cm
3)の積から求められる成形体体積当たりの細孔容積(cm
3/cm
3)(以下、「成形体体積当たりの細孔容積」という)が、0.39cm
3/cm
3以上、かつ、活性炭成形体の強度が0.1MPa以上であることに要旨を有する。
【0011】
上記活性炭成形体は、活性炭成形体の比表面積(m
2/g)と
成形体密度(g/cm
3)の積から求められる成形体体積当たりの比表面積(m
2/cm
3)(以下、「成形体体積当たりの比表面積」という)が810m
2/cm
3以上であることも好ましい実施態様である。
【0012】
本発明の活性炭成形体は、吸着材、または吸蔵材として用いることも好ましい実施態様である。
【0013】
更に本発明には、炭素質原料をアルカリ賦活処理して得られた活性炭と、平均粒子径1μm以上、50μm以下のポリオレフィン樹脂を混合し、得られた混合物を加圧処理することによって得られる成形体も含まれる。加圧処理としては等方性加圧処理が好ましい。
【0014】
前記ポリオレフィン樹脂と前記活性炭の合計100質量%に対して、上記ポリオレフィン樹脂を1質量%以上、25質量%以下含むことも好ましい実施態様である。
【0015】
本発明の活性炭成形体の製造方法は、炭素質原料をアルカリ賦活処理して得られた活性炭と、平均粒子径1μm以上、50μm以下のポリオレフィン樹脂とを混合し、得られた混合物を加圧処理することに要旨を有する。加圧処理としては等方性加圧処理が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、細孔容積が大きく、所望の形状に成形可能な強度を有する活性炭成形体を提供できる。したがって本発明の活性炭成形体を用いれば、吸着特性に優れた吸着材、ないし吸蔵特性に優れた吸蔵材を提供できる。また本発明によれば上記特性を有する活性炭成形体を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは上記課題を解決すべく、活性炭成形体について研究を重ねた。まず、活性炭成形体は、加圧成形されているため、活性炭成形体は
成形体密度も考慮する必要がある。そして活性炭成形体の成形体体積当たりの細孔容積を0.39cm
3/cm
3以上、かつ活性炭成形体の強度を0.1MPa以上とすることで、活性炭に要求される吸着特性や吸蔵特性の向上に必要な細孔容積と所望の形状に成形可能な強度とを有する活性炭成形体を提供できることを見いだし、本発明に至った。
【0019】
以下、本発明の上記活性炭成形体に至った経緯について、好適な製造方法に則して説明する。
【0020】
活性炭はバインダーを添加せずに成形すると、活性炭同士が圧密化されているだけであるため、所望の形状に成形することは難しかった。そのため活性炭にバインダーを添加、混合した混合物を成形する必要がある。
【0021】
バインダーとしては各種知られており、バインダーの性質も様々である。バインダーについて検討した結果、本発明の活性炭成形体はポリオレフィン樹脂をバインダーに用いると製造できることを突き止めた。所定の平均粒子径を有するポリオレフィン樹脂を用いた場合、活性炭の比表面積や細孔容積を大幅に低下させることなく、また比較的低い加圧処理で活性炭同士を強固に結着できる。
【0022】
なお、他の公知のバインダーを用いた場合、例えば特許文献1で使用されているポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、室温で粘弾性が高いため活性炭同士を結着できるものの粉化しやすく、十分な強度が得られない。また融点が低く、加圧処理時の温度で完全に溶融してしまうような熱可塑性樹脂を用いると、溶融した樹脂が細孔内部に取り込まれ、吸着サイトが減少する。
【0023】
バインダーを添加して活性炭成形体を製造する場合、バインダー含有量は活性炭成形体の強度決定要因の一つであり、強度向上の観点からはバインダー含有量を増加させることが望ましい。ところが、バインダー含有量の増加に伴って比表面積や細孔容積が低下する。バインダーを添加しても比表面積や細孔容積が大きな活性炭成形体を得るには、使用する活性炭はできるだけ大きい比表面積や細孔容積を有していることが望ましい。
【0024】
活性炭について検討した結果、炭素質原料をアルカリ賦活処理して得られるアルカリ賦活炭を本発明で規定する所定のバインダーと混合して成形することで、水蒸気賦活炭を用いる場合と比べて、比表面積や細孔容積が大きな活性炭成形体が得られることがわかった。特に本発明の活性炭としてアルカリ賦活炭を用いると、成形体体積当たりの細孔容積を大きくすることができ、吸着材や吸蔵材として使用した場合に、体積当たりの吸着量ないし吸蔵量をより一層高めることができる。
【0026】
本発明において活性炭とは、原料となる炭素質原料をアルカリ賦活処理して得られるものである。活性炭の種類としてはオガ屑、木材チップ、木炭、ピートなどを原料とする粉末状活性炭;木炭、ヤシ殻炭、石炭、オイルカーボン、フェノールなどを原料とする粒状活性炭;炭素質物質(石油コークス、石炭コークス、石油ピッチ、石炭ピッチ、コールタールピッチ、及びこれらの複合物など)を原料とする炭素質活性炭;合成樹脂(フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、フラン樹脂など)、セルロース系繊維(紙、綿繊維など)、及びこれらの複合物(紙−フェノール樹脂積層板など)などを原料とする活性炭素繊維;が挙げられる。これらの中でも炭素質活性炭や活性炭素繊維が好ましく、より好ましくは石油コークス由来の活性炭、紙−フェノール樹脂積層板由来の活性炭である。
【0027】
また上記活性炭は、炭素質原料を炭化した後、あるいは炭化せずにそのままアルカリ賦活したものでよい。より大きい比表面積と細孔容積を有する活性炭を製造するためには、炭素質原料を炭化した後、アルカリ賦活処理することが好ましい。アルカリ賦活剤としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩など各種公知の薬品を使用できる。
【0028】
活性炭の比表面積は特に限定されないが、十分な吸着量ないし吸蔵量を確保する観点から比表面積は好ましくは1000m
2/g以上、より好ましくは1500m
2/g以上、更に好ましくは2000m
2/g以上である。比表面積の上限は特に限定されないが、活性炭自体の強度が低下することがあるため、好ましくは4000m
2/g以下、より好ましくは3500m
2/g以下、更に好ましくは3000m
2/g以下である。活性炭の細孔容積も特に限定されないが、同様の観点から、好ましくは0.4cm
3/g以上、より好ましくは0.7cm
3/g以上、好ましくは2.2cm
3/g以下、より好ましくは2.0cm
3/g以下である。平均細孔径は好ましくは3.0nm以下、より好ましくは2.5nm以下であって、好ましくは1.6nm以上、より好ましくは1.7nm以上である。なお、比表面積、細孔容積、平均細孔径は実施例に記載の測定方法に基づく値である。
【0029】
本発明では上記活性炭と混合するバインダー(結着剤)として、平均粒子径1μm以上、50μm以下のポリオレフィン樹脂を用いる。ポリオレフィン樹脂の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置 SALD−2000 (島津製作所社製)を用いて測定されるポリオレフィン樹脂の粒度分布の測定結果から体積基準の累積頻度曲線を求め、累積頻度50%における粒子径を平均粒子径とする。
【0030】
ポリオレフィン樹脂としては、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンであり、より好ましくはポリエチレンである。ポリエチレンは高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレン系共重合体のいずれでもよい。またポリエチレン系共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、エチレンとメタアクリル酸エステル共重合体、エチレンとメタアクリル酸の共重合体およびその一部を金属塩に代えたアイオノマーなどの各種公知の共重合体が例示される。これらは単独で、あるいは任意に組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記活性炭と混合するポリオレフィン樹脂の平均粒子径は1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。一方、大きすぎるとポリオレフィン樹脂と活性炭との接点が減少することがあるため、ポリオレフィン樹脂の平均粒子径は50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0032】
本発明では、活性炭と平均粒子径1〜50μmのポリオレフィン樹脂を混合するが、ポリオレフィン樹脂の含有量は特に限定されず、所望の強度が得られるように適宜調整すればよい。ポリオレフィン樹脂の含有量を増やすと活性炭成形体の強度を高くできる。ポリオレフィン樹脂の含有量が少なすぎると活性炭同士を十分に結着できないことがあるため、ポリオレフィン樹脂の含有量([ポリオレフィン樹脂含有量/(ポリオレフィン樹脂含有量+活性炭含有量)×100])は、ポリオレフィン樹脂と活性炭の合計100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上である。一方、ポリオレフィン樹脂の含有量が多くなりすぎると、活性炭成形体の強度が高くなりすぎて加工性が低下することがある。またポリオレフィン樹脂自体は活性炭としての特性を有さず、比表面積や細孔容積の減少要因となり、活性炭成形体の吸着性能や吸蔵性能などの特性が低下することがある。ポリオレフィン樹脂の含有量はポリオレフィン樹脂と活性炭の合計100質量%に対して、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0033】
本発明では上記混合物を加圧処理して成形する。上記混合物を加圧処理して得られた活性炭成形体は、細孔容積が大きく、高密度化されており、かつ十分な強度を有する。加圧処理方法としては各種公知の加圧処理を採用できるが、好ましくは一軸加圧処理、または等方性加圧処理、より好ましくは等方性加圧処理である。等方性加圧処理した場合、混合物表面を等圧で加圧できるため、成形体内部の空隙が低減して
成形体密度が向上すると共に、活性炭とバインダーの流動性が向上して活性炭とバインダーの接点が多くなって一軸加圧処理よりも強度が向上すると考えられる。したがって成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積をより一層高めることができる。また等方性加圧処理した場合は一軸加圧処理よりも低い処理圧力で高強度化が図れる。等方性加圧処理は、混合物表面に等しい加圧力を加えて方向性なく加圧成形できる方法であればよく、特に制限されない。等方性加圧処理としては、冷間等方圧加圧処理(CIP:Cold Isostatic Pressing)、静水圧加圧処理、ラバープレス処理、熱間等方圧加圧処理(HIP:HOT Isostatic Pressing)が例示され、これらの中でも常温下で3次元的に均一な圧力を加えることができる冷間等方圧加圧処理(CIP)が好ましい。また冷間等方圧加圧処理(CIP)は湿式法、乾式法のいずれでもよい。加圧媒体としてガス、液体など公知の媒体でよい。
【0034】
加圧処理時の処理圧力としては、特に限定されないが、圧力が低すぎると炭素物質同士を十分に結着できず、得られる活性炭成形体の強度、および
成形体密度を十分に高めることができないことがある。また圧力が高すぎると、細孔が損傷するおそれがある。したがって圧力は好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上であって、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下、更に好ましくは200MPa以下である。処理時間は特に限定されない。加圧保持時間は好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上である。一方、上記効果が飽和するため、加圧保持時間は好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0035】
加圧処理して得られた活性炭成形体は強度が向上している。ポリオレフィン樹脂の含有量や加圧処理条件にもよるが、上記好適な条件を満たす活性炭成形体は好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上、更に好ましくは0.5MPa以上、より更に好ましくは0.6MPa以上、最も好ましくは0.7MPa以上の強度を有する。本発明の活性炭成形体は十分な強度を有するため、取り扱い時や使用時の摩擦などによって損壊することがない。また本発明の活性炭成形体は高い充填密度を達成でき、吸着効率や収蔵容量を高めることができる。
【0036】
バインダーを添加すると比表面積や細孔容積は低下するが、アルカリ賦活活性炭を用いることで、バインダーを添加しても比表面積や細孔容積は高い値を維持できる。また本発明の製造方法によれば活性炭成形体は高い
成形体密度を有するため、成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積が大きい。活性炭成形体の
成形体密度は特に限定されないが、好ましくは0.3g/cm
3以上、より好ましくは0.35g/cm
3以上、好ましくは1.2g/cm
3以下、より好ましくは1.0g/cm
3以下である。
【0037】
成形体体積当たりの細孔容積は、0.39cm
3/cm
3以上、好ましくは0.4cm
3/cm
3以上、より好ましくは0.42cm
3/cm
3以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは1.0cm
3/cm
3以下、より好ましくは0.75cm
3/cm
3以下である。上記したように成形体体積当たりの細孔容積が上記範囲内であれば、活性炭成形体は吸着特性や吸蔵特性に優れた特性を示す。
【0038】
更に成形体体積当たりの細孔容積に加えて、成形体体積当たりの比表面積を満足する活性炭成形体は、吸着材、あるいは吸蔵材など各種用途において、より一層優れた吸着性能、あるいは吸蔵性能を奏する。成形体体積当たりの比表面積は好ましくは810m
2/cm
3以上、より好ましくは850m
2/cm
3以上、更に好ましくは900m
2/cm
3以上であって、好ましくは1650m
2/cm
3以下、より好ましくは1300m
2/cm
3以下である。
【0039】
活性炭成形体のサイズは特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。また成形する形状も特に限定されない。
【0040】
上記加圧処理して得られた活性炭成形体は、さらに各種用途に応じたペレット状、板状、ブリケット状、球状など所望の形状に2次成形してもよい。本発明の活性炭成形体(2次成形物を含む、以下同じ)は例えば吸着材や吸蔵材として使用できる。吸着材としては、浄水処理、排水処理、貴金属回収処理などの液相用途、空気浄化処理、脱臭処理、ガス分離処理、溶剤回収処理、排ガス処理などの気相用途が例示される。また吸蔵材としては水素やメタンなどのエネルギー貯蔵用途が例示される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0042】
成形体1
炭素質原料(石油コークス)に質量比3.5倍の水酸化カリウムを添加、混合した後、窒素雰囲気中で800℃に加熱し、2時間賦活処理を行った。得られた賦活物を温水(60℃)洗浄、酸(塩酸)洗浄、温水(60℃)洗浄の順で洗浄して金属不純物が除去された活性炭Aを得た。ポリエチレンと活性炭Aの合計100質量%に対してポリエチレン(PE、平均粒子径30μm)含有量が7.4質量%となるように添加、混合して混合物を得た。得られた混合物を冷間等方圧加圧処理(CIP)して成形した。具体的には混合物をナイロン−ポリエチレン製袋に充填して密封した後、該袋を静水圧粉末成形装置(日本研究開発工業株式会社製)に充填してから、200MPaまで昇圧させ、10分間保持して成形した。得られた成形体を150℃の加熱機内で2時間乾燥し、成形体1を得た。
【0043】
成形体2
ポリエチレンと活性炭Aの合計100質量%に対してポリエチレンが9.2質量%となるように添加した以外は、成形体1と同様にして成形体2を得た。
【0044】
成形体3
ポリエチレンと活性炭Aの合計100質量%に対してポリエチレンが16.7質量%となるように添加した以外は、成形体1と同様にして成形体3を得た。
【0045】
成形体4
使用したポリエチレンの平均粒子径を10μmとした以外は、成形体1と同様にして成形体4を得た。
【0046】
成形体5
紙−フェノール樹脂積層板の炭化物に、質量比で2.5倍の水酸化カリウムを添加した後、窒素雰囲気中800℃で2時間の賦活処理を行った。得られた賦活物を水洗浄(60℃の温水)、酸(塩酸)洗浄、水洗浄(60℃の温水)の順で洗浄して金属不純物が除去された活性炭Bを得た。ポリエチレンと活性炭Bの合計100質量%に対してポリエチレン(PE、平均粒子径30μm)が7.4質量%となるように添加、混合して混合物を得た。得られた混合物を成形体1と同様に冷間等方圧加圧処理(CIP)して成形体5を得た。
【0047】
成形体6
ポリエチレンと活性炭Bの合計100質量%に対してポリエチレンが9.1質量%となるように添加した以外は、成形体5と同様にして成形体6を得た。
【0048】
成形体7
ポリエチレンと活性炭Bの合計100質量%に対してポリエチレンが16.7質量%となるように添加した以外は、成形体5と同様にして成形体7を得た。
【0049】
成形体8
使用したポリエチレンの平均粒子径を10μmとした以外は、成形体5と同様にして成形体8を得た。
【0050】
成形体9
活性炭Aをヤシ殻水蒸気賦活炭(MC−エバテック社製:Z10−28)に変更し、ポリエチレンとヤシガラ水蒸気賦活炭の合計100質量%に対してポリエチレン(PE、平均粒子径30μm)が2.9質量%となるように添加した以外は成形体1と同様にして成形体9を得た。
【0051】
成形体10
ポリエチレンとヤシ殻水蒸気賦活炭の合計100質量%に対してポリエチレンが4.8質量%となるように添加した以外は、成形体9と同様にして成形体10を得た。
【0052】
成形体11
ポリエチレンとヤシ殻水蒸気賦活炭の合計100質量%に対してポリエチレンが9.1質量%となるように添加した以外は、成形体9と同様にして成形体11を得た。
【0053】
成形体12
使用したポリエチレンの平均粒子径を10μmとした以外は、成形体10と同様にして成形体12を製造した。
【0054】
成形体13
ポリエチレンをポリテトラフルオロエチレン粉末(PTFE)に変更し、ポリテトラフルオロエチレンと活性炭Bの合計100質量%に対してポリテトラフルオロエチレンが7.4質量%となるように添加した以外は、混合物を成形体5同様に冷間等方圧加圧処理(CIP)して成形体13を得た。成形体13は非常に脆く、形状を維持できなかったため、強度等を測定できなかった。
【0055】
成形体14
ポリテトラフルオロエチレンと活性炭Bの合計100質量%に対してポリテトラフルオロエチレンが16.7質量%となるように添加した以外は、成形体13と同様にして成形体14を得た。成形体14は非常に脆く、形状を維持できなかったため、強度等を測定できなかった。
【0056】
成形体15
使用したポリエチレンの平均粒子径を10μmとした以外は成形体5と同様にして混合物を得た。得られた混合物を金型(φ19.85mm、高さ24.69mm、実有効高さ17.60mm)に充填して、ハンドプレス機で昇圧し(一軸)、200MPaで10分間保持した後、150℃の加熱機内で2時間乾燥し、成形体15を得た。
【0057】
成形体16
成形体13と同様にして得られた混合物を、成形体15と同様に一軸加圧処理して成形体16を得た。成形体16は非常に脆く、形状を維持できなかったため、強度等を測定できなかった。
【0058】
各成形体の
成形体密度、比表面積、全細孔容積、平均細孔径、強度を下記方法により測定して表1に記載した。
【0059】
<
成形体密度>
成形体密度は成形体から直方体ブロック(縦1cm×横1cm×高さ1cm)を切り出し、該ブロックの質量(g)と体積(cm
3)から下記式により算出した。
成形体密度(g/cm
3)=質量(g)/体積(cm
3)
【0060】
<比表面積>
成形体0.2gを250℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置(マイクロメリティックス社製:ASAP−2400)を用いて、窒素吸着等温線を求めBET法にて比表面積(m
2/g)を算出した。
【0061】
<全細孔容積>
上記窒素吸着等温線から相対圧(p/p0)=0.93における窒素吸着量を全細孔容積(cm
3/g)とした。
【0062】
<平均細孔径>
活性炭の細孔をシリンダー状と仮定し、以下の式により算出した。
平均細孔径(nm)=4×全細孔容積/比表面積×1000
【0063】
<成形体体積当たりの細孔容積>
成形体体積当たりの細孔容積(cm
3/cm
3)=全細孔容積(cm
3/g)×
成形体密度(g/cm
3)
【0064】
<成形体体積当たりの比表面積>
成形体体積当たりの比表面積(m
2/cm
3)=比表面積(m
2/g)×
成形体密度(g/cm
3)
【0065】
<強度試験>
成形体を1cm角にカットした試験片を、テンシロン万能試験機(ORENTEC社製:RTC−1325A)を用いて、試験速度1mm/分で試験片が破壊に至るまでの強度測定を行った。破壊に至った時の最大荷重の値を試験片の断面積で割り戻すことにより強度を算出した。強度は0.1MPa以上を合格と評価した。
【0066】
【表1】
【0067】
表1より、本発明の要件を満足する成形体1〜8、15は成形体体積当たりの細孔容積が大きかった。特にバインダー含有量のみが異なる成形体1(7.4質量%)、成形体2(9.2質量%)、成形体3(16.7質量%)を比べると、バインダー含有量が多くなる程、全細孔容積、比表面積が低下したが、成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積はいずれも大きかった。同様の傾向は成形体5(7.4質量%)、成形体6(9.1質量%)、成形体7(16.7質量%)でも示した。
【0068】
また炭素質原料として石油コークスを用いた成形体1〜4と、紙−フェノール樹脂積層板炭化物を用いた成形体5〜8とを比べると、成形体1〜4は成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積が大きかった。
【0069】
一方、水蒸気賦活炭を用いた成形体9〜12は、アルカリ賦活炭を用いた成形体1〜8と比べて、
成形体密度が大きかったが、比表面積と細孔容積が小さく、成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積が小さかった。
【0070】
成形体13、14、16は、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた例であるが、いずれも強度が低く、粉化して活性炭成形体が得られなかった。
【0071】
成形体15は、成形方法として一軸加圧処理した例であり、成形体8と同等の成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積を有していた。
【0072】
また成形体1〜4(図中、●)、成形体5〜8(図中、△)、成形体9〜12(図中、◆)、成形体15(図中、□)について、成形体体積当たりの細孔容積と、成形体体積当たりの比表面積の関係をグラフにプロットした(
図1)。
【0073】
図1に示すように本発明の要件を満足する成形体1〜8、15は、成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積が成形体9〜12よりも大きかった。また石油コークスを用いた成形体1〜4は成形体体積当たりの細孔容積、および成形体体積当たりの比表面積が紙−フェノール樹脂積層板炭化物を用いた成形体5〜8よりも大きかった。
【0074】
成形方法以外は同じ条件でアルカリ賦活炭を成形した成形体8と15の強度をグラフに示した(
図2)。冷間等方圧加圧処理(CIP)した成形体8と一軸加圧処理した成形体15は、表1に示すように強度以外の特性はほぼ同等であったが、成形体8は成形体15よりも強度が2倍以上高くなった。