特許第6085384号(P6085384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085384
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】脆性材料基板のブレイク装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20170213BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20170213BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   B28D5/00 A
   H01L21/78 T
   C03B33/033
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-57785(P2016-57785)
(22)【出願日】2016年3月23日
(62)【分割の表示】特願2012-159262(P2012-159262)の分割
【原出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-120725(P2016-120725A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成尾 徹
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−155610(JP,A)
【文献】 特開平8−194200(JP,A)
【文献】 特開昭63−34103(JP,A)
【文献】 特開2003−306338(JP,A)
【文献】 特開2001−18198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/033
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板を載置する載置面を有するテーブルと、
前記テーブルの上方で前記載置面と平行に配置されたビームと、
前記ビームの延在方向に沿って該ビームに設けられたガイド軸と、
前記ガイド軸に沿って移動可能に形成された複数のブレイクバーとからなり、
前記複数のブレイクバーのそれぞれは、昇降軸を介して昇降可能に形成され、かつ、前記載置面に垂直な軸を中心として回転可能に形成されており、これにより前記複数のブレイクバーが、ビームの延在方向に沿って直列に並ぶ直列姿勢と、ビームの延在方向と直交する方向に沿って互いに平行となる分離姿勢とになるように形成されており、
前記分離姿勢においては、前記複数のブレイクバーを同時に下降させることにより、前記脆性材料基板に形成された複数のスクライブラインを同時にブレイク可能なことを特徴とする脆性材料基板のブレイク装置。
【請求項2】
前記複数のブレイクバーは、前記分離姿勢において、ブレイクバー同士の間隔を維持したまま前記ガイド軸に沿って同時に移動できるとともに、それぞれ単独でも移動できるように形成されている請求項1に記載のブレイク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、セラミック、サファイア、半導体ウエハなどの脆性材料からなる基板のブレイク装置に関する。特に、本発明は、前段工程でスクライブライン(切溝)が形成された脆性材料基板をそのスクライブラインに沿ってブレイクして単位基板を取り出すブレイク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、脆性材料基板(以下、単に基板という)の表面にカッターホイール(スクライビングホイールともいう)や固定刃、若しくはレーザービーム等のスクライブ手段を用いて、互いに直交するX方向並びにY方向のスクライブラインを形成し、その後、当該スクライブラインに沿って外力を印加してブレイクすることにより、基板を単位基板に分断する方法は知られており、例えば、特許文献1や特許文献2でも開示されている。
【0003】
図5は、基板の一般的なブレイク装置を示す概略的な斜視図である。
ブレイク装置21は、加工対象となる基板Wを載置して保持する水平なテーブル22を備えている。テーブル22は、モータを内蔵する回転駆動部23により水平面内で回動できるようになっており、かつ、水平なレール24に沿ってY方向に移動できるように構成されている。テーブル22の上方にはX方向に水平に延びるビーム(横枠)25が設けられており、このビーム25に、該ビームと平行にX方向に延びる板状のブレイクバー26が取り付けられ、シリンダ27によって駆動される昇降軸28を介して昇降できるようになっている。
【0004】
図8は、前段のスクライブ工程で、スクライブ手段により表面に互いに直交するX方向のスクライブラインS1ならびにY方向のスクライブラインS2が形成された長方形の基板Wを示すものであって、W1はブレイク後に製品となる単位基板であり、W2はブレイク後に破棄される端材領域である。
この基板Wをブレイク装置21でブレイクするにあたっては、スクライブラインS1、S2のいずれか一方、例えば図5に示すように基板長辺方向のスクライブラインS1がX方向に沿うようにしてテーブル22上に弾性材からなるクッションシート13を挟んで載置する。この場合、図7(a)に示すように、スクライブラインS1、S2が下面となるようにしておく。この後、図7(b)に示すように、基板Wの上方からスクライブラインに向かってブレイクバー26を下降させて基板Wを押圧し、該基板Wをクッションシート上で僅かにV字状に撓ませることにより、スクライブラインのクラックを伸展させて基板Wをブレイクする。このようにして長辺方向のスクライブラインをすべてブレイクした後、図6に示すように、基板短辺方向のスクライブラインS2がX方向に向くようにテーブル22を90度回転させる。そして上記同様に、ブレイクバー26を下降させてすべてのスクライブラインをブレイクしたら、図8で示す単位基板W1が取り出され、端縁部の端材領域W2は破棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3787489号公報
【特許文献2】特開2002−187098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のブレイク装置では、ビーム25と平行にX方向に延びる一つのブレイクバー26によってブレイクするものであるから、スクライブラインの数だけ、即ち、長辺方向のスクライブラインS1と、短辺方向のスクライブラインS2を合計した数だけブレイクバーを昇降させなければならない。通常、一枚の大型基板には数多くのスクライブラインが形成されているので、スクライブラインの数が増えるに応じてブレイクに要する時間が長くなるとともに、ブレイクバーやその昇降機構の摩耗や寿命などにも影響する。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決し、ブレイクに要する時間を短縮することが可能なブレイク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明のブレイク装置は、脆性材料基板を載置する載置面を有するテーブルと、前記テーブルの上方で前記載置面と平行に配置されたビームと、前記ビームの延在方向に沿って該ビームに設けられたガイド軸と、前記ガイド軸に沿って移動可能に形成された複数のブレイクバーとからなり、前記複数のブレイクバーのそれぞれは、昇降軸を介して昇降可能に形成され、かつ、前記載置面に垂直な軸を中心として回転可能に形成されており、これにより前記複数のブレイクバーが、ビームの延在方向に沿って直列に並ぶ直列姿勢と、ビームの延在方向と直交する方向に沿って互いに平行となる分離姿勢とになるように形成し、分離姿勢においては、複数のブレイクバーを同時に下降させることにより、脆性材料基板に形成された複数のスクライブラインを同時にブレイク可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のようにしたものであるから、ブレイクすべきスクライブラインの長さが、個々のブレイクバーの長さより短い場合は、複数のブレイクバーをビームの延在方向と直交する方向に沿って互いに平行となる分離姿勢にして基板のスクライブラインに向かって同時に下降させることにより、複数のスクライブラインを同時にブレイクすることができ、ブレイクに要する時間を短縮することができる。また、ブレイクすべきスクライブラインが個々のブレイクバーの長さよりも長い場合は、二つのブレイクバーをビームの延在方向に直列に並ぶ直列姿勢にすることによってブレイクすることができるといった効果がある。
【0010】
本発明において、前記複数のブレイクバーは、互いに平行となる分離姿勢において、ブレイクバー同士の間隔を維持したまま前記ガイド軸に沿って同時に移動できるとともに、それぞれ単独でも移動できるように形成するのがよい。
これにより、複数のブレイクバーが互いに平行となる分離姿勢でブレイクを行う場合に、複数のブレイクバーによるスクライブラインのブレイクを、同じピッチで連続して行うことができ、作業を効率化することができる。また、それぞれ単独でも移動できるようにしたので、ブレイクすべき基板のスクライブラインのピッチが変わった場合でも、複数本のスクライブラインを同時にブレイクすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかるブレイク装置の一例を示す斜視図であって、基板の短辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示す。
図2図1同様の斜視図であって、基板の長辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示す。
図3】基板ブレイク時の状態を示す断面図である。
図4】ブレイクバーの他の実施例を示す一部の斜視図である。
図5】従来のブレイク装置の一例を示す斜視図であって、基板の長辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示す。
図6図5同様の斜視図であって、基板の短辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示す。
図7】従来のブレイク装置による基板ブレイク時の状態を示す断面図である。
図8】スクライブラインが形成された基板の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明のブレイク装置を図に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明のブレイク装置の一例を示す斜視図であって、基板短辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示すものであり、図2は、基板長辺方向のスクライブラインをブレイクする場合を示す図1同様の斜視図であり、図3は、基板ブレイク時の拡大断面図である。
【0013】
ブレイク装置1は、ブレイクすべき基板Wを載置するテーブル2を備えている。このテーブル2は、水平なレール3、3に沿ってY方向に移動できるようになっており、モータM1によって回転するネジ軸4により駆動される。またテーブル2は、モータを内蔵する駆動部5により水平面内で回動できるようになっている。
【0014】
テーブル2は、この上に載せた基板Wを定位置で保持できるように保持手段を備えている。この保持手段として、例えばテーブル2に開口させた多数の小さな吸着孔(図示せず)からのエア吸引によって吸着保持させることができる。
【0015】
テーブル2を挟んで立設された支持柱6、6に、X方向に延びる水平なビーム(横枠)7がテーブル2を跨ぐようにして架設されている。ビーム7には、モータM2によって駆動されるガイド軸8がビーム7の延在方向、即ち、X方向に沿って設けられている。このガイド軸8に二つのホルダ9、9が移動可能に取り付けられており、該ホルダ9、9に長尺板状のブレイクバー10、10がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
各ブレイクバー10は、流体シリンダ11ならびに該流体シリンダ11によって駆動する昇降軸12により昇降可能に形成されている。また、ブレイクバー10の下端は、図3に示すように、長さ方向に稜線10aを有する下向き三角形で形成されている。
さらに、各ブレイクバー10は、テーブル2の面に垂直な軸(本実施例では、昇降軸12)を中心として回転可能に形成されており、これにより前記二つのブレイクバー10、10は、図1に示すように、ビーム7の延在方向、即ちX方向に沿って直列に並ぶ直列姿勢と、図2に示すように、ビーム7の延在方向と直交する方向、即ちY方向に沿って互いに平行となる分離姿勢とになるように形成されている。本実施例においては、昇降軸12にブレイクバー10が固着され、この昇降軸12がホルダ9内に組み込まれた回動機構(図示外)により回動することによりブレイクバー10が回転できるようになっている。
【0017】
ブレイクバー10をそれぞれ保持する二つのホルダ9は、モータM2を駆動することにより、互いの間隔を保持したままガイド軸8に沿って同時に連動して移動することがきるとともに、それぞれ単独でも移動できるように形成されている。この単独の移動により、ブレイクバー同士の間隔が調整できるようになっている。この構成は、例えば、ホルダ9とガイド軸8との噛合部に、噛み合いを解除して両者間の伝動を一時的に遮断するクラッチなどの伝動遮断機構(図示せず)を介在させることにより達成できる。ブレイクバー10、10の間隔を調整する場合は、いずれか一方のホルダの伝動遮断機構をオンし、他方のホルダのみをモータM2を駆動して移動させる。また、間隔を保持したままブレイクバー10、10を移動する場合は、両方の伝動遮断機構を解除して伝動状態にしておけばよい。
【0018】
次に、図8で示した基板W、即ち、表面に互いに直交するスクライブラインS1、S2が所定のピッチで形成された長方形の基板Wを、上記したブレイク装置1でブレイクする動作について説明する。
先ず、基板Wの長辺方向のスクライブラインS1を分断するに際して、図1に示すように、二つのブレイクバー10、10をX方向に沿って直列に並べる。本実施例では互いに連結した連結姿勢にしている。そして図3(a)に示すように、スクライブラインS1、S2が下向きとなるようにテーブル2上のクッション材13の上面に載置する。この場合、長辺方向のスクライブラインS1がブレイクバー10、10の連結方向、即ちX方向と一致するように載置する。なお、二つのブレイクバー10、10を連結した時の長さは、ブレイクすべき長辺方向のスクライブラインS1の長さよりも長くなるように予め設定しておく。この状態で、連結したブレイクバー10、10をスクライブラインS1の真上から下降させて、最初のスクライブラインをブレイクし、次いで、スクライブラインS1のピッチ分だけテーブル2をY方向に移動させて次のスクライブラインS1をブレイクする。図に示した基板Wでは、長辺方向のスクライブラインS1は2本であるので、2回の下降で長辺方向のスクライブラインのブレイクが完了する。
【0019】
長辺方向のスクライブラインS1のブレイクが完了すると、図2に示すように、二つのブレイクバー10、10を分離させて、ビーム7の延在方向と直交する方向、即ちY方向に沿って互いに平行となる分離姿勢にするとともに、ブレイクバー10、10の間隔をスクライブラインS2のピッチと一致するように調整する。なお、それぞれのブレイクバー10の長さは、ブレイクすべき短辺方向のスクライブラインS2の長さよりも長くなるように予め設定しておく。この状態で、二つのブレイクバー10、10をスクライブラインS2の真上から同時に下降させることにより、二本のスクライブラインS2、S2を同時にブレイクする(図3(a)、(b)参照)。
次いで、ブレイクバー10、10を、その間隔を保持したまま、次にブレイクすべきスクライブラインS2の真上までガイド軸8に沿って移動させ、上記と同様に下降させてブレイクする。この動作をすべての短辺方向のスクライブラインS2がブレイクされるまで繰り返す。図に示した基板Wでは、短辺方向のスクライブラインS2が5本であるので、3回下降させることにより短辺方向のスクライブラインのブレイクが完了する。もし短辺方向のスクライブラインS2が10本であれば、5回の下降で10本全てのスクライブラインS2を分断することができる。
【0020】
このように、分離姿勢にした2本のブレイクバー10、10を同時に下降させることにより、スクライブラインを2本同時にブレイクすることができてブレイクに要する時間を短縮することができるとともに、互いの間隔を維持したままガイド軸8に沿って移動させることにより、同じ間隔で連続してブレイクを行うことができる。
【0021】
また、基板Wの長辺方向のスクライブラインS1の長さが各ブレイクバー10の長さより短い場合は、短辺方向のスクライブラインS2のブレイク時と同じように、ブレイクバー10、10を互いに平行な分離姿勢とし、テーブル2を回転させてスクライブラインS1がY方向と一致するように基板Wを配置することによって、長辺方向のスクライブラインS1も2本同時にブレイクすることができる。これにより、ブレイクに要する時間の短縮をさらに助長することができる。
【0022】
なお、図4に示すように、二つのブレイクバー10、10を連結した際、ブレイクバー10、10の隣接する側端部に、互いにかみ合う凹部10aと凸部10bを設けるのがよい。これにより、両者の連結状態を確実に保持することができる。
【0023】
以上、本発明の代表的な実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記の実施例のみに限定されるものではない。例えば、上記実施例では、ブレイクバー10を二つ設けた例を示したが、三つあるいはそれ以上設置することも可能である。その他本発明の目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、ガラス、セラミック、サファイア、半導体ウエハなどの脆性材料からなる基板のブレイク装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
W 脆性材料基板
S1 長辺方向のスクライブライン
S2 短辺方向のスクライブライン
1 ブレイク装置
2 テーブル
7 ビーム
8 ガイド軸
9 ホルダ
10 ブレイクバー
11 流体シリンダ
12 昇降軸
13 クッション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8