(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085416
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20170213BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/06 305M
F16K31/06 305K
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-48785(P2012-48785)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-185604(P2013-185604A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−142329(JP,A)
【文献】
特開平09−174269(JP,A)
【文献】
特開昭57−093551(JP,A)
【文献】
特開2008−151348(JP,A)
【文献】
特開2007−211814(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/097392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00−27/12
F16K 31/06−31/11
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有し、プレス加工により形成された弁本体と、前記弁室内に配置される弁部を有する弁体と、前記弁部が接離する弁座を有し、プレス加工により形成された弁座シート部材と、前記弁体を開弁方向及び/又は閉弁方向に駆動する駆動手段とを備える制御弁であって、
前記弁本体の開口端のフランジ部に設けられた曲折部と、前記弁座シート部材のフランジ部に設けられた曲折部とが互いに重ね合わされた状態で、前記両曲折部の端部同士が溶接接合された接合部を備えていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記弁座シート部材の曲折部は、前記弁本体の曲折部の内側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を弁座に接離させて流路を開閉する制御弁であって、弁本体と弁座シート部材をプレス加工により形成した制御弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図5及び
図6に示すように、プレス加工により形成された弁本体32及び弁座シート部材34と、弁本体32のパイプ部32bの内部に固定された吸引子37と、弁本体32のパイプ部32bの内部に収容されて弁体33と共に上下方向に移動するプランジャ36と、電磁コイル38等を備える電磁弁31が記載されている。
【0003】
この電磁弁31は、電磁コイル38へ通電しないときには、
図5に示すように、コイルばね41によってプランジャ36が吸引子37と反対方向の上端位置に維持されて弁体33の弁部33aが弁座シート部材34の弁座34cから離間した開弁状態となっており、流体が流入管42から弁室32aの内部を通って流出管43へと流れることができる。
【0004】
図5の状態から電磁コイル38に通電すると、プランジャ36が吸引子37との間の空間を埋める方向に吸引される磁力が発生する。これにより、プランジャ36がコイルばね41の付勢力に抗しながら下方に向って移動すると共に弁体33が吸引子37の案内部37bに案内されながら弁座シート部材34の弁座34cに向って下方に移動し、
図6に示すように、弁部33aが弁座34cに密接した閉弁状態となり、流入管42から流出管43への流体の流れが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の電磁弁31においては、
図7に示すように、弁本体32に弁座シート部材34を装着するにあたって、弁本体32のフランジ部32cと、弁座シート部材34のフランジ部34dとを重ね合わせ、両者の先端部を溶接しているが、溶接の際に、フランジ部32cに対してフランジ部34dが左右方向(矢印方向)にずれるおそれがあった。
【0007】
また、
図8に示すように、弁本体32のフランジ部に曲折部32dを設け、弁座シート部材34のフランジ部34dの縁部を突き当てた場合には、上記左右方向のずれをある程度解消させることができるものの、曲折部32dが溶接で融けるため、上記左右方向のずれを完全に解消させることはできない。
【0008】
さらに、
図8(a)に示す曲折部32dとフランジ部34dとの端面接触部40も溶接により溶け、
図8(b)に示すように、端面接触部40が短くなるため、フランジ部34dが上下方向(矢印方向)に傾き易くなる。上記のように、弁座シート部材34の左右方向のずれや傾きが発生すると、弁座シート部材34と弁体33との同軸性が確保できなくなり、弁座34cと弁部33aとのシール性が低下するという問題が生じると共に、それを防ぐために溶接条件をシビアに管理する必要が生じ、生産性が低下するという問題も生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、弁本体32のフランジ部32cに対する弁座シート部材34のフランジ部34dの左右方向のずれや、上下方向の傾きを抑えることができ、溶接条件の管理を容易に行うことのできる制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、弁室を有
し、プレス加工により形成された弁本体と、前記弁室内に配置される弁部を有する弁体と、前記弁部が接離する弁座を有
し、プレス加工により形成された弁座シート部材と、前記弁体を閉弁方向及び/又は開弁方向に駆動する駆動手段とを備える制御弁であって、前記弁本体の開口端のフランジ部に設けられた曲折部と、前記弁座シート部材のフランジ部に設けられた曲折部とが互いに重ね合わされた状態で、前記両曲折部の端部同士が
溶接接合された接合部を備えていることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、弁本体の開口端のフランジ部と、弁座シート部材のフランジ部の各々に曲折部を形成し、両曲折部を互いに重ね合わせて端部同士を溶接接合したため、溶接後においても、一方の曲折部が他方の曲折部に当接して両フランジ部の延設方向のずれを抑えることができると共に、両フランジ部の互いの接触部の長さを長く維持することができるため、両フランジ部が互いに離間する方向へ傾くことを防止することもできる。
【0012】
また、本発明によれば、上記両曲折部が互いに重なり合う長さや、両フランジ部が互いに重なり合う長さを容易に所望の長さにすることができるため、溶接時に厳格に管理する必要がなく、組立性が向上し、組立工数を削減することができると共に、不良率が低減して歩留まりが向上する。
【0013】
上記制御弁において、前記弁座シート部材の曲折部を、前記弁本体の曲折部の内側に配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、弁本体のフランジ部に対する弁座シート部材のフランジ部の左右方向のずれや、上下方向の傾きを抑えることができ、溶接条件の管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す図であって、(a)は開弁状態を示す断面図、(b)は(a)のA−A線矢視図である。
【
図2】
図1の電磁弁の閉弁状態を示す断面図である。
【
図3】
図1の電磁弁の弁本体と弁座シート部材との接合方法を説明するための断面図である。
【
図4】
図1の電磁弁の案内部材を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は底面図である。
【
図5】従来の電磁弁の一例を示す図であって、開弁状態を示す断面図である。
【
図6】
図5の電磁弁の閉弁状態を示す断面図である。
【
図7】
図5の電磁弁の弁本体と弁座シート部材との接合方法の一例を説明するための断面図である。
【
図8】電磁弁の弁本体と弁座シート部材との接合方法の他の例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1及び
図2は、本発明の一実施の形態を示し、この電磁弁1は、弁室2aを有する弁本体2と、弁室2a内に配置される弁部3aを有する弁体3と、弁部3aが接離する弁座4cを有する弁座シート部材4と、弁体3と共に移動するプランジャ6と、弁体3の移動を案内すると共に、後述するコイルばね11を支持する案内部材7と、プランジャ6を閉弁方向に吸引するための磁力を発生させる電磁コイル8と、電磁コイル8等を収容するハウジング9と、プランジャ6を上方に付勢するコイルばね11等で構成される。
【0018】
弁本体2は、ステンレス鋼等の材料を用いてプレス加工により成形され、円筒状の弁室2aと上端を閉塞した円筒状のパイプ部2bとで構成される。弁室2a内には、弁体3の弁部3aと、弁座シート部材4の弁座4cとが配置され、弁室2aとパイプ部2bとの境界部には、案内部材7がかしめ固定される。また、弁室2aの下方開口を覆うように弁座シート部材4が装着される。弁室2aの側面には、流入管12の左端部がろう付けにより溶着される。
【0019】
パイプ部2bの内部には、弁体3、プランジャ6及びコイルばね11が収容され、パイプ部2bの外周には、ハウジング9が装備され、ハウジング9の突起部9cにかしめ固定された押圧係止部材16の突起部16aが弁本体2のパイプ部2bに形成した係止凹部2cに係止され、ハウジング9が押圧係止部材16を介して弁本体2のパイプ部2bに固定される。
【0020】
ハウジング9は、磁性材料により形成され、ハウジング9の上壁9a及び下壁9bには貫通孔が各々設けられ、これらの貫通孔に弁本体2のパイプ部2bが挿通される。
【0021】
パイプ部2bの外側には、ボビン10が嵌合装着され、ボビン10の周囲には電磁コイル8が巻回され、ボビン10はハウジング9の内部に収容される。ボビン10には、ターミナル(不図示)を介してリード線17が接続され、このリード線17を介して電磁コイル8に通電される。
【0022】
弁体3は、真鍮等で円柱状に形成され、下端に逆円錐状の弁部3aを有し、上部の小径部3bがプランジャ6にかしめ固定される(かしめ部3c)。この弁体3は、プランジャ6と共に上下方向に移動し、弁部3aが弁座シート部材4の弁座4cに接離することで、流入管12から流出管13への流体の流れを制御する。
【0023】
弁座シート部材4は、ステンレス鋼等の材料を用いてプレス加工により成形され、弁本体2と同一中心軸線上に円筒状のシート本体4aを有し、シート本体4aの上端には、弁座4cが形成される。シート本体4aの下端には段部を介してパイプ嵌合部4bが形成され、パイプ嵌合部4bの端縁には、外方に向って張出したフランジ部4dが形成される。弁座シート部材4は、弁本体2の弁室2aの下方開口を覆うように装着され、フランジ部4dが弁室2aの下端部に溶接により固着される(溶接部14)。弁座シート部材4のパイプ嵌合部4bには、流出管13の上端部が挿入され、ろう付けにより溶着される。
【0024】
図3に示すように、フランジ部4dの端部には下方に曲折された曲折部4eが形成される。また、弁本体2のフランジ部2dにも、下方に曲折された曲折部2eが形成され、弁本体2の曲折部2eと弁座シート部材4の曲折部4eとを互いに重ね合わせ、両曲折部2e、4eの端部同士が溶接接合される(溶接部14)。
【0025】
上述のように弁本体2の開口端を弁座シート部材4によって閉塞することで、溶接後においても、弁本体2の曲折部2eと弁座シート部材4の曲折部4eとが
図3(b)に示す寸法aの長さで互いに当接するため、弁本体2の曲折部2eが弁座シート部材4の曲折部4eのガイドとして機能し、曲折部4eの左右方向のずれを抑えることができる。
【0026】
また、
図3(b)に示すように、溶接後においても、弁本体2のフランジ部2dと弁座シート部材4のフランジ部4dとが寸法bの長さで互いに当接するため、充分な接合長さを確保することができ、弁座シート部材4のフランジ部4d及び曲折部4eが互いに離間する方向へ傾くことを防止することもできる。
【0027】
プランジャ6は、磁性材料により円筒状に形成され、弁本体2のパイプ部2bに上下方向に移動自在に配設される。プランジャ6の鉛直方向の中央部には、弁体3を固定するための固定用孔6aが穿設され、固定用孔6aに、下方より弁体3の小径部3bが嵌入され、上述のようにプランジャ6と弁体3とが一体化される。
【0028】
案内部材7は、ステンレス鋼等の板材を用いてプレス加工により成形され、弁本体2の弁室2aの天井部にかしめ固定される。この案内部材7は、
図4に示すように、案内部材7の下方に開口する逆皿状部7aに複数の均圧孔7cと、弁体3を挿通させる挿通孔7dとが穿設される。逆皿状部7aの中央部から上方に向かって、弁体3を案内するための円筒状の案内部7bが立設される。また、逆皿状部7aの流入管12に対向する部分は、案内部材7を弁室2aにかしめ固定する際、案内部材7を弁室2aに挿入するときに流入管12と干渉しないよう、また、流体が円滑に流れるように切り欠かれている(切欠部7e)。
【0029】
付勢手段としてのコイルばね11は、弁体3の外側において、プランジャ6と案内部材7との間に配設され、プランジャ6はコイルばね11の付勢力により案内部材7から離間する方向に常時付勢される。なお、プランジャ6の下端部は有底筒状に形成されており、その内部にコイルばね11が収容されている。コイルばね11がプランジャ6の外周側に配置される場合には、弁本体2のパイプ部2bとプランジャ6との間の空間が大きくなり、電磁コイル8によるプランジャ6の吸引力が低下するという問題があるが、本実施例では、そのような問題が生じない。
【0030】
次に、上記構成を有する電磁弁1の動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、電磁コイル8への通電を遮断した状態を示し、この状態では電磁コイル8による磁力が発生せず、プランジャ6は、コイルばね11の付勢力により案内部材7と反対方向の上端位置に維持され、弁体3の弁部3aが弁座シート部材4の弁座4cから離間した開弁状態となっており、流体が流入管12から弁室2aの内部、弁座シート部材4のシート本体4aの内部を通って流出管13へと流れ込むことができる。
【0032】
図1の状態から電磁コイル8に通電すると、電磁コイル8に磁力が発生すると共に、磁性材料からなるハウジング9とプランジャ6とに磁路が形成され、プランジャ6が下方に向って吸引される。これにより、プランジャ6が弁本体2のパイプ部2bの内部をコイルばね11の付勢力に抗しながら下方に向って移動すると同時に、弁体3が案内部材7の案内部7bに案内されながらプランジャ6と共に弁座シート部材4の弁座4cに向って下方に移動し、
図2に示すように、弁体3の弁部3aが弁座シート部材4の弁座4cに密接した閉弁状態となり、弁体3が流入管12から流出管13への流体の流れを阻止する。
【0033】
以上のように、本実施の形態によれば、案内部材7をプレス加工により弁体3の軸線方向に短く形成する一方で、プランジャ6を弁体3の軸線方向に長くすることで、電磁コイル8によって生じる磁路をハウジング9とプランジャ6のみで構成している。そのため、従来よりも磁路に形成される隙間の数が減少して磁気効率が向上するので、電磁コイル8を小型化することが可能となり、消費電力及び製造コストを低く抑えることができると共に軽量化することができる。
【0034】
また、案内部材7に、弁本体2の弁室2aの内部とプランジャ6等が収容されるパイプ部2bの内部空間とを連通させる均圧孔7cを設けているため、プランジャ6と案内部材7との間に生ずる流体圧を逃がすことができ、弁室2aの内部圧力とパイプ部2bの内部圧力とが等しくなり、電磁弁1の開弁及び閉弁時の応答性が向上する。
【0035】
なお、上記実施形態では、非通電時にプランジャが開弁方向に付勢されて開弁し、通電するとプランジャが開弁方向に移動して閉弁する電磁弁を例に挙げて説明したが、本発明は、非通電時にプランジャが閉弁方向に付勢されて閉弁し、通電するとプランジャが開弁方向に移動して閉弁する電磁弁にも適用可能である。
【0036】
また、本発明は電磁弁以外の制御弁(例えば、ステッピングモータで流量を制御する電動弁等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 電磁弁
2 弁本体
2a 弁室
2b パイプ部
2c 係止凹部
2d フランジ部
2e 曲折部
3 弁体
3a 弁部
3b 小径部
3c かしめ部
4 弁座シート部材
4a シート本体
4b パイプ嵌合部
4c 弁座
4d フランジ部
4e 曲折部
6 プランジャ
6a 固定用孔
7 案内部材
7a 逆皿状部
7b 案内部
7c 均圧孔
8 電磁コイル(駆動手段)
9 ハウジング
9a 上壁
9b 下壁
9c 突起部
10 ボビン
11 コイルばね
12 流入管
13 流出管
14 溶接部
16 押圧係止部材
16a 突起部
17 リード線