【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、複数の設置体が共通の棒状要素を介して互いに接続された混合要素によって達成される。棒状要素の提供によって、混合要素はより剛性になり、すなわち破壊に対する耐性が高められる。しかしこれまでの経験により、棒状要素の提供によって圧力損失が高まると言われていたため、この解決策はこれまで技術界では支持されていなかった。この仮定は、螺旋状ミキサについて、EP1426099B1による混合要素と比較して確認された。フィラー材料を分配するために必要な力が、フィラー材料Aに対して螺旋状ミキサの場合に測定され、実験ではこの力が472Nであった。同じフィラー材料に対して、EP1426099B1による混合要素の場合には540Nの力が測定され、したがってこの混合要素に関して設置されたものが混合空間のより高い割合を占めるため、予想されたように力が高くなっている。したがって予想されるように、EP1426099B1による混合要素の圧力損失は大きくなる。
【0007】
すべての設置体を互いに接続する棒状要素が提供される場合には混合要素の安定性がさらに高まるが、混合要素によって混合空間のさらに高い割合が占められるため圧力損失も高まり、したがってフィラー材料を分配するための力が大きくなると予想することができる。しかし驚くべきことに、実験では493Nの力がもたらされた。この値は、螺旋状ミキサに対する値と、EP1426099B1による混合要素に対する値との間である。
【0008】
この実験は、フィラー材料Bに対して繰り返された。フィラー材料Bの使用に対して、螺旋状ミキサの場合、力は410Nであり、EP1426099B1による混合要素の場合には461N、本発明による混合要素の場合には443Nであった。
【0009】
フィラー材料Aは、商品名Voco registrado X−traという商品名で販売され、フィラー材料Bは、Kettenbach Monoprenという商品名で販売されている。
【0010】
実験の結果は、使用するフィラー材料に関係なく驚くべき効果が得られ、したがってその効果は混合要素の構造に固有であることを示している。
【0011】
実験では、本発明による混合要素の場合、同じミキサの長さを有する従来技術に対して混合物の均質性が改善されることも見出された。特に、圧力損失が小さくなるため、ミキサを長くすることができる。フィラー材料を押して混合要素を通すために、手で加えることができる最大の力は限られている。このことから、同じ構造長の場合、圧力損失が低減された混合要素は扱いがより簡単であることになる。さらに、本発明による混合要素は、圧力損失がより大きい設置体を有する従来技術による混合要素に対しして延長することができる。これは、混合要素が、例えばEP2181827A1によって既に知られている混合要素より多くの設置体を含むことが可能であり、したがって混合の質を改善することが可能であることを意味する。
【0012】
混合要素は、管状のミキサ・ハウジング内に設置するためのスタティック・ミキサ用に設けられる。混合要素は長手方向の軸線を有し、複数の設置体が長手方向の軸線に沿って並んで配置され、第1の設置体は、長手方向の軸線の方向に延びる第1の壁要素を有する。壁要素は、第1の側壁と、第1の側壁の反対側に配置された第2の側壁とを有する。第1の壁要素に隣接して偏向要素が配置され、偏向要素は、壁要素に対して横方向に延びる偏向面を壁要素の両側に有し、第1の開口部が、壁要素の第1の側壁に面する側で偏向面に設けられる。
【0013】
第1の開口部に隣接して第2の壁要素及び第3の壁要素が配置され、これら第2の壁要素及び第3の壁要素は、長手方向の軸線の方向に延び、またそれぞれが、実質的に長手方向の軸線の方向に延びる1つの内壁及び1つの外壁を有する。内壁及び外壁のそれぞれが、第1の壁要素の第1の側壁又は第2の側壁に対して20°から160°の間の角度を含む。第1の開口部は、第2の壁要素及び第3の壁要素の内壁の間に配置され、第2の開口部が、第2の壁要素又は第3の壁要素の外壁の1つの外側に配置され、第2の開口部は、第1の壁要素の第2の側壁に面する側で偏向面に設けられる。
【0014】
第2の壁要素及び第3の壁要素はしたがって、長手方向の軸線の方向において第1の開口部に隣接して第1の壁要素の反対側に配置され、第2の壁要素及び第3の壁要素は、第1の開口部から始まり長手方向の軸線の方向に延びる通路の境界を定める。第2の開口部が、壁要素の第2の側壁に面する側で偏向面に設けられ、第2の壁要素又は第3の壁要素は、第2の開口部に隣接する。さらに、第2の設置体の第1の壁要素は、第2の壁要素及び第3の壁要素に隣接する。5つより多い設置体が、共通の棒状要素を介して互いに接続される。
【0015】
第2の設置体も特に、長手方向の軸線の方向に延びる第1の壁要素を有することができ、この第1の壁要素は、第1の側壁と、第1の側壁の反対側に配置された第2の側壁とを有する。第1の壁要素に隣接して偏向要素を配置することができ、偏向要素は、壁要素に対して横方向に延びる偏向面を壁要素の両側に有することができ、第1の開口部を、壁要素の第1の側壁に面する側で偏向面に設けることができる。
【0016】
第1の開口部に隣接して第2の壁要素及び第3の壁要素を配置することができ、第2の壁要素及び第3の壁要素は、長手方向の軸線の方向に延び、またそれぞれが、実質的に長手方向の軸線の方向に延びる1つの内壁及び1つの外壁を有する。内壁及び外壁のそれぞれが、第1の壁要素の第1の側壁又は第2の側壁に対して20°から160°の間の角度を含むことができる。第1の開口部は、第2の壁要素及び第3の壁要素の内壁の間に配置することができ、第2の開口部は、第2の壁要素又は第3の壁要素の外壁の1つの外側に配置することができ、第2の開口部は、第1の壁要素の第2の側壁に面する側で偏向面に設けることができる。
【0017】
これは、第2の壁要素及び第3の壁要素を、長手方向の軸線の方向において第1の開口部に隣接する第1の壁要素の反対側に配置することができること、また第2の壁要素及び第3の壁要素が、第1の開口部から始まり長手方向の軸線の方向に延びる通路の境界を定め得ることを意味する。第2の開口部を、壁要素の第2の側壁に面する側で偏向面に設けることができ、第2の壁要素又は第3の壁要素は、第2の開口部に隣接することができ、第1の壁要素、偏向要素、第2の壁要素及び第3の壁要素からなる第2の設置体は、第1の設置体に対して、長手方向の軸線のまわりで10°から180°までの角度だけ回転した状態で配置することができる。
【0018】
第2の設置体は、特に第1の設置体と同じ構造を有することができる。第1の設置体は、第2の設置体に対して約180°の角度回転した状態で配置することができる。
【0019】
混合要素のすべての設置体は、特に棒状要素によって接続することができる。棒状要素は偏向要素の外周に配置することができる。棒状要素は壁要素のそれぞれの側に設けることができるが、複数の棒状要素を設けることも可能であり、特に2つのそれぞれの棒状要素を、壁要素のそれぞれの側に設けることができる。
【0020】
壁要素は、偏向面に対して90から130°の角度を含むことができる。
【0021】
偏向面は、流体の流れを長手方向の軸線と異なる方向に偏向させるために、流動する流体の方向に少なくとも部分的に湾曲した面を有することができ、特に流れ方向及びミキサ・ハウジングの方向に段階的な曲率を設けることができる。
【0022】
代替的な実施例によれば、偏向面は実質的に平坦にすることができる。偏向面は特に、壁要素に対して実質的に90°の角度で延びることができる。
【0023】
第1の設置体の偏向面は特に、長手方向の軸線の方向において、第2の設置体の開口部を覆うように設計される。
【0024】
他の実施例によれば、壁要素の第1の側壁に面する側の偏向要素の面は、少なくとも部分的に、長手方向の軸線に対して60°から90°の角度に整合された横方向の平面内に位置することができる。さらに、壁要素の第2の側壁に面する側の偏向要素の面は、長手方向の軸線に対して60°から90°の角度に整合された横方向の平面内に位置することができる。
【0025】
第1の設置体の第2の壁要素及び第3の壁要素と、第2の設置体の第1の壁要素との間のそれらの接続点に、補強要素を設けることができる。この補強要素によって、第1の設置体と第2の設置体の間の移行部を、その形状安定性及び剛性の点で改善することができる。補強要素により、溶融ポリマーに対する流れ断面も接続点において増大される。補強要素は、例えば厚くした部分として又はリブとして形成することができる。
【0026】
静的混合要素は、特に発泡ポリマーを含むことができる。射出の間又は射出の直後に発泡するスタティック・ミキサの製造のために、従来の射出成形プロセスに対して発砲剤を含むポリマーが用いられる。射出成形法は特に、発砲剤を含むポリマーを600バール未満、特に好ましくは500バール未満の内部工具圧力で射出成形工具内に射出するステップを含む。
【0027】
スタティック・ミキサが、前述の実施例の1つによる混合要素と、混合要素を取り囲むミキサ・ハウジングとを含む。
【0028】
設置体は、ある長さ寸法及びある直径を有する。非円形の管状のミキサ・ハウジングの場合、管状のミキサ・ハウジングの断面領域が正方形であるとき、直径は縁部の長さに相当する。他の形状のミキサ・ハウジングの場合、例えば長方形又は楕円形の断面では、相当直径D
aは、断面領域が円形であるという仮定、すなわち、式D
a=2
*(A/π)
1/2(D
aは相当直径を表し、Aは実際の断面積である)を用いるという仮定の下に決定される。長手方向の寸法と直径の比は少なくとも1であるが、直径として円形断面の直径又は非円形断面に対する相当直径を用いなければならない。
【0029】
長さ寸法は、長手方向の軸線の方向における設置体の大きさである。長さ寸法と直径の比は特に、1より大きくすることができる。
【0030】
複数の設置体は特に、長手方向の軸線に沿って並んで配置することができる。こうした設置体は同じ構造を有することができるか、又はEP1312409B1に示されるようなミキサの配置が得られるように、異なる構造の設置体を互いに組み合わせることができる。隣接する設置体は、この複数の設置体で構成された混合要素が一体部分として設計されるように、少なくとも棒状要素を介して互いに接続される。これは、混合要素が全体として単一の射出成形工具で製造されることを意味する。
【0031】
設置体又は複数の設置体の全体が、5から500mmの間、好ましくは5から300mmの間、優先的には50から100mmの間の長手方向の寸法を有することができる。
【0032】
スタティック・ミキサは、前述の実施例の1つによる混合要素と、混合要素を取り囲むミキサ・ハウジングとを含む。混合要素は、組み立てられた状態でミキサ・ハウジングの長手方向の軸線と一致する長手方向の軸線を有する。したがって設置体のそれぞれもこの長手方向の軸線を有する。長手方向の軸線は、スタティック・ミキサ内へ流れる流体の方向に整合される。流体は、混合要素の上流に配置された入口要素を介して供給される少なくとも2つの成分を含む。
【0033】
混合される製品の流れは、混合空間の内部で偏向要素によって偏向され、その結果、設置された混合要素によってストランドとして管状のミキサ・ハウジング内に入る成分は、スタティック・ミキサを通過する間に連続的に分割されて幅が減少した細片になり、それによって、混合が難しい成分又は高い粘性を有する成分も、このスタティック・ミキサを用いて処理することが可能になる。
【0034】
混合される流体は、原則として2つの異なる成分を含む。ほとんどの場合、成分は液体状態又は粘性材料として存在する。これらには、例えば糊、接着剤が含まれるが、医療分野で用いられる薬剤を含む流体、又は化粧の用途及び食品のための流体も含まれる。そうしたスタティック・ミキサは特に、多成分接着剤の混合など、流動可能な成分からなる硬化する混合製品を混合するための使い捨てミキサとしても用いられる。他の好ましい使用は、歯科分野での印象材の混合におけるものである。
【0035】
これまでに記述したスタティック・ミキサは、対応する射出成形工具が製造され次第、製造及び材料のコストが低くなるため、使い捨てミキサとして適している。さらにスタティック・ミキサは、計量及び/又は混合ユニットに用いられる。スタティック・ミキサは、分配ユニット又は分配カートリッジ、特に多成分カートリッジに取り付けることができる。特に多成分カートリッジは、分配装置、及び分配装置に結合され、前述の実施例の1つによるスタティック・ミキサを包含する管を含む実例として挙げることができる。
【0036】
以下では、図面を参照して本発明について説明する。