(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6085454
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】洗浄剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20170213BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20170213BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20170213BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20170213BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20170213BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20170213BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20170213BHJP
C11D 3/12 20060101ALI20170213BHJP
C11D 1/65 20060101ALI20170213BHJP
C11D 1/52 20060101ALI20170213BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/26
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/46
A61Q19/10
A61Q5/02
C11D3/12
C11D1/65
C11D1/52
C11D3/20
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-260454(P2012-260454)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-105199(P2014-105199A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇希
(72)【発明者】
【氏名】永見 恵子
(72)【発明者】
【氏名】山田 麻紀子
【審査官】
松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/045568(WO,A1)
【文献】
特開平01−190622(JP,A)
【文献】
特開2012−020979(JP,A)
【文献】
特開2011−178681(JP,A)
【文献】
特開2005−187342(JP,A)
【文献】
特開2004−307463(JP,A)
【文献】
特開2000−143458(JP,A)
【文献】
特表平6−508876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
C11D 1/00− 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状粘土鉱物、高級アルコール、カチオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が配合され、
前記層状粘土鉱物の配合量が0.1質量%以上、
前記高級アルコールの配合量が1.0質量%以下、
前記カチオン界面活性剤の配合量が0.5質量%以下、
前記アニオン界面活性剤の配合量が5質量%以上15質量%以下、
レオメーターを用いて下記測定条件(I)で測定した角周波数が90rad/sにおける貯蔵弾性率が、損失弾性率よりも大きく、
レオメーターを用いて下記測定条件(II)で測定したせん断速度18s-1での粘度に対するせん断速度90s-1での粘度の比が、0.50以下であることを特徴とする
洗浄剤。
<測定条件(I)>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
応力:2.0Pa
温度:25℃
<測定条件(II)>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
【請求項2】
前記角周波数が80rad/sにおいて、前記貯蔵弾性率が前記損失弾性率よりも大きい請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
前記粘度の比が、0.45以下である請求項1又は2に記載の洗浄剤。
【請求項4】
毛髪を洗浄するためのシャンプーとして用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【請求項5】
ポリクオタニウム−10が配合された請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【請求項6】
前記高級アルコールの配合量が、0.5質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【請求項7】
下記一般式(I)で表される脂肪酸アミドが配合された請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【化1】
[上記一般式(I)において、R
1−COは炭素数12以上24以下の脂肪酸残基を表し、R
2は炭素数2以上4以下のアルカノール基を表し、R
3は炭素数2以上4以下のアルカノール基又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪、頭皮、肌などを洗浄するための洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗顔剤や毛髪を洗浄するためのシャンプーなどの洗浄剤においては、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びカチオン界面活性剤から選定された複数の界面活性剤を配合することが一般的となっている。また、使用者から求められる特性に適した原料が洗浄剤に更に配合され、その特性の一層の改善、新たに求められる特性に応じるための原料配合の提案がある。
【0003】
特許文献1には、泡立ちが良好で、すすぎの際のきしみ感を抑制できるシャンプーとして、カチオン界面活性剤、固体油分(高級アルコールなど)、粘土鉱物、及びノニオン性高分子化合物を含有し、カチオン界面活性剤と固体油分を主成分とした液晶構造体が分散するシャンプーの提案がある。この提案の具体例として、固体油分である高級アルコールを4〜8質量%含有するものが特許文献1に記載されている。
【0004】
洗浄剤の提案は特許文献1以外にも多数あり、特許文献2には、泡立ちが良く、すすぎの際のきしみ感を抑制でき、乾燥後の滑沢性を優れるものとし、髪のぱさつきを抑制でき、更には液晶構造体が安定なシャンプーとして、カルボン酸系界面活性剤、カチオン界面活性剤、高級アルコール、及び水膨潤性粘土鉱物を含有し、両性高分子及びカチオン性高分子を含有しないシャンプーの提案がある。そして、その具体例として、高級アルコールを5.5〜7質量%含有するものや、アニオン界面活性剤(N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン)1.0質量%及び高級アルコール2.1質量%を含有するものが記載されている。
【0005】
上記の特許文献1や特許文献2に記載されているような原料配合の洗浄剤は、ポンプ容器から吐出させてから用いるのが一般的となっている。この使用方法からしても、洗浄剤は、ポンプ容器からの吐出が容易な粘性や流動性に設定されるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−307463号公報
【特許文献2】特開2005−187342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、洗髪や洗顔においては、リラックス効果などを求めて頭皮や顔のマッサージを行う場合がある。このとき、潤滑作用を備える洗浄剤によりマッサージを円滑に行えるから、洗浄のみ行うよりも長い時間を要するマッサージの間、洗浄剤の流れ落ちを抑制することが求められる。この抑制を実現するためには洗浄剤の粘度を高めれば良いが、単に粘度を高めるだけでは、マッサージを行うには適さないチキソトロピー性の洗浄剤となってしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、塗布した後に流れ落ち難く、頭皮などをマッサージする際に適したチキソトロピー性を有する洗浄剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、洗浄成分であるアニオン界面活性剤が配合される洗浄剤において、層状粘土鉱物、高級アルコール、及びカチオン界面活性剤をも配合し、これら原料の配合量を適宜調整すれば、特定の角周波数における貯蔵弾性率と損失弾性率が所定関係であり、頭皮などのマッサージを行い易いチキソトロピー性の洗浄剤が得られる知見を得た。また、その貯蔵弾性率と損失弾性率が所定関係の洗浄剤は、塗布した後に流れ落ち難い知見をも得た。以上の知見から、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る洗浄剤は、層状粘土鉱物、高級アルコール、カチオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が配合され、レオメーターを用いて下記測定条件(I)で測定した角周波数が90rad/sにおける貯蔵弾性率が、損失弾性率よりも大きく、レオメーターを用いて下記測定条件(II)で測定したせん断速度18s
−1での粘度に対するせん断速度90s
−1での粘度の比が、0.50以下であることを特徴とする。
<測定条件(I)>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
応力:2.0Pa
温度:25℃
<測定条件(II)>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
【0011】
前記角周波数が80rad/sにおいて、前記貯蔵弾性率が前記損失弾性率よりも大きいと良い。このような貯蔵弾性率であれば、塗布後の洗浄剤の流れ落ち抑制に優れる。
【0012】
前記粘度の比が、0.45以下であると良い。このような粘度の比であれば、マッサージに好適なチキソトロピー性の洗浄剤となる。
【0013】
本発明に係る洗浄剤を、毛髪を洗浄するためのシャンプーとして用いると良い。シャンプーとして用いることで、頭皮のマッサージを同時に行える。
【0014】
本発明に係る洗浄剤における前記層状粘土鉱物の配合量は、0.1質量%以上であると良い。また、本発明に係る洗浄剤における前記高級アルコールの配合量は、1.0質量%以下であると良い。層状粘土鉱物及び/又は高級アルコールがそのような配合量であれば、貯蔵弾性率と粘度の比を上記の範囲に設定するのに適している。
【0015】
本発明に係る洗浄剤の粘性を高めたい場合、例えば、下記一般式(I)で表される脂肪酸アミドを配合すると良い。
【化1】
[上記一般式(I)において、R
1−COは炭素数12以上24以下の脂肪酸残基を表し、R
2は炭素数2以上4以下のアルカノール基を表し、R
3は炭素数2以上4以下のアルカノール基又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る洗浄剤は、アニオン界面活性剤と共に、層状粘土鉱物、高級アルコール、及びカチオン界面活性剤が配合され、特定の角周波数における貯蔵弾性率と損失弾性率が所定関係であり、チキソトロピー性を有するから、塗布した後に流れ落ち難く、頭皮などの皮膚のマッサージを行い易くする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】各実施例の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G'')のグラフである。
【
図2】比較例の貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G'')のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態に係る洗浄剤は、貯蔵弾性率が所定の値を示し、所定のチキソトロピー性を有する。この洗浄剤は、層状粘土鉱物、高級アルコール、カチオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が水と配合されたものであり(水の配合量は、例えば60質量%以上)、必要に応じて、公知の洗浄剤用原料が任意原料として配合される。
【0019】
(貯蔵弾性率)
本実施形態の洗浄剤は、次の特性を有する。すなわち、レオメーターを用いて下記条件により本実施形態の洗浄剤の貯蔵弾性率(以下において「貯蔵弾性率」を「G’」と称することがある。)、及び損失弾性率(以下において、「損失弾性率」を「G’’」と称することがある。)を測定し、G’及びG''を縦軸とし、角周波数(以下において、「角周波数」を「ω」と称することがある。)を横軸とするグラフにおいて、ωが90rad/s以下でG’線とG''線が交差する。
<レオメーター測定条件>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
応力:2.0Pa
温度:25℃
【0020】
本実施形態の洗浄剤は、ωが90rad/sにおいてG’がG''よりも大きな値となるものであり、ωが80rad/sにおいてG’がG''よりも大きな値となるものが良い。このようなG’とG''の関係であれば、洗浄対象物に塗布してからの洗浄剤の流れ落ちを低減できる。
【0021】
(チキソトロピー性)
本実施形態の洗浄剤のレオメーターを用いて下記測定条件(II)で測定した粘度は、せん断速度(以下、「せん断速度」を「dγ/dt」と称することがある。)が速まるに伴い、低い値となる。
<測定条件(II)>
センサー:直径35mm、傾斜角2°のコーンプレートセンサー
温度:25℃
【0022】
本実施形態の洗浄剤は、せん断速度18s
−1での粘度に対するせん断速度90s
−1での粘度の比(η比)が0.50以下となるものであり、η比が0.45以下が良く、0.30以下が好ましくい。このη比範囲であれば、マッサージに必要な力が加わったときに延びるチキソトロピー性を有する洗浄剤となるから、頭皮などの皮膚のマッサージを行い易い。なお、η比の下限は、特に限定されないが、例えば0.15である。
【0023】
本実施形態の洗浄剤の粘度は、dγ/dtが36s
−1の条件で、例えば5Pa・s以上10Pa・s以下であると良い。
【0024】
(層状粘土鉱物)
本実施形態の洗浄剤に配合する層状粘土鉱物は、水分子を取り込む性質を有する。層状粘土鉱物により、皮膚上にある汚れや老廃物が除去される。
【0025】
本実施形態の洗浄剤には、カオリン、スメクタイト、ベントナイトなどの公知の層状粘土鉱物から選ばれた一種又は二種以上を配合すると良い。本実施形態の層状粘土鉱物における配合量としては、0.1質量%以上2.0質量%以下であると良く、0.3質量%以上1.0質量%以下が好ましい。0.1質量%以上にすることで、塗布した後の流れ落ち抑制とマッサージの行い易さのためのG’及びη比の設定に好適であり、2.0質量%以下にすることで、層状粘土鉱物の沈殿生成抑制に適する。
【0026】
(高級アルコール)
本実施形態の洗浄剤に高級アルコールを配合すれば、毛髪の感触改善が可能になる。
【0027】
本実施形態の洗浄剤に高級アルコールを配合する場合、この高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールなどの分岐状飽和アルコール;が挙げられる。
【0028】
高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上を、本実施形態の洗浄剤に配合すると良い。本実施形態の洗浄剤における高級アルコールの配合量は、1.0質量%以下が良く、0.8質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。1.0質量%以下であれば、塗布した後の流れ落ち抑制とマッサージを行い易くするためのG’及びη比の設定に好適であり、1.0質量%を超えると、ωが90rad/sでのG’をG''よりも大きく設定することが困難になる。高級アルコールの配合量の下限は、例えば0.1質量%である。
【0029】
(カチオン界面活性剤)
本実施形態の洗浄剤にカチオン界面活性剤を配合すれば、高級アルコールと共に液晶形成し、クリーム状の感触を付与する。また、当該配合により、毛髪の感触改善が可能になる。
【0030】
本実施形態の洗浄剤にカチオン界面活性剤を配合する場合、このカチオン界面活性剤としては、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる。なお、ここでの「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、その炭素数が16以上22以下であると皮膚への刺激の抑制や毛髪に付与する感触の観点から好ましい。
【0031】
カチオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上を、本実施形態の洗浄剤に配合すると良い。本実施形態の洗浄剤におけるカチオン界面活性剤の配合量は、アニオン界面活性剤よりも大幅に少なくして洗浄機能を確保できる量であると良く、例えば0.5質量%以下である。配合量の下限は、例えば0.1質量%である。
【0032】
(アニオン界面活性剤)
本実施形態の洗浄剤には、洗浄成分として公知のアニオン界面活性剤を配合すると良い。
【0033】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩などの硫酸系アニオン界面活性剤;アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩などのスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸、アシル乳酸塩などのカルボン酸系アニオン界面活性剤;が挙げられる。
【0034】
本実施形態の洗浄剤には、一種又は二種以上のアニオン界面活性剤を配合すると良い。本実施形態の洗浄剤におけるアニオン界面活性剤の配合量は、特に限定されるものではないが、十分な洗浄力を発揮させるためには5質量%以上15質量%以下が良く、8質量%以上15質量%以下が好ましい。
【0035】
(任意原料)
本実施形態の洗浄剤に配合される任意原料は、シャンプーなどの原料として公知の洗浄剤原料から適宜選定される。この原料は、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などである。
【0036】
本実施形態の洗浄剤の粘度を高めたい場合、例えば下記式一般式(I)で表される脂肪酸アミドを配合すると良い。
【化2】
[上記一般式(I)において、R
1−COは炭素数12以上24以下の脂肪酸残基を表し、R
2は炭素数2以上4以下のアルカノール基を表し、R
3は炭素数2以上4以下のアルカノール基又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【0037】
上記一般式(I)におけるR
1−COとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、ヤシ油脂肪酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸などの脂肪酸残基が挙げられる。一般式(I)におけるR
2としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基が挙げられ、また、R
3としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0038】
上記一般式(I)で表される脂肪酸アミドの例としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸N−メチルエタノールアミド、ミリスチン酸N−メチルエタノールアミド、ステアリン酸N−メチルエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミドが挙げられる。
【0039】
上記脂肪酸アミドから選ばれた一種又は二種以上を、本実施形態の洗浄剤に配合すると良い。本実施形態の洗浄剤における上記脂肪酸アミドの配合量は、例えば1質量%以上5質量%以下である。
【0040】
(pH)
本実施形態の洗浄剤のpHは、一般的な洗浄剤のpHであると良く、例えば5.0以上7.0以下である。
【0041】
(製造方法)
本実施形態の洗浄剤の製造方法は、例えば、層状粘土鉱物以外を配合し、加温しつつ撹拌により原料を十分に分散させてから、層状粘土鉱物を配合し、撹拌する方法がある。
【0042】
(用途)
本実施形態の洗浄剤は、皮膚の洗浄を伴う用途に用いられる。当該用途としては、毛髪を洗浄するためのシャンプー、洗顔剤などである。チキソトロピー性を有する洗浄剤であるから、チューブ容器に充填しておいても良い。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0044】
水と、モロッコ溶岩クレイ、高級アルコール、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.)、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリルグリコールヒドロキシプロピルエーテル、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−52、キサンタンガム、ジステアリン酸エチレングリコール、シア脂、ポリエチレングリコール1540、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプロパノール、塩化ナトリウム、クエン酸、及び香料から選択した原料とを配合して、下記実施例の洗浄剤を製造した。
【0045】
製造した実施例の洗浄剤について、HAAKE社製レオメーター「Rheo Stress 6000」を用いて、貯蔵弾性率(G')、損失弾性率(G'')、粘度(η)を測定した。G’及びG''の測定は、周波数依存モードにて、角周波数(ω)92rad/s以下、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、応力2.0Pa、温度25℃の条件で行った。ηの測定は、定常フローカーブモードにて、せん断速度(dγ/dt)18〜90s
−1、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、温度25℃の条件で行った。
【0046】
また、実施例の洗浄剤について、頭皮マッサージの行い易さ(マッサージの行い易さ)の官能評価を、次の通り行った。温水で洗浄してから水を切った頭髪及び頭皮の全体に行きわたるように洗浄剤を塗布し、頭皮全体を十分にマッサージした。このときのマッサージの行い易さについて、実施例3の洗浄剤を使用したときを基準として、評価者5名が評価した。評価結果は、次の通りである。
◎:評価者5名全員が、基準よりマッサージを行い易いと評価した(実施例1、4)。
○:評価者3名が、基準よりもマッサージを行い易いと評価した(実施例2)。
【0047】
下記表1に、実施例の洗浄剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、G’、G''、及びηの測定結果を示す。併せて、マッサージの行い易さに関する評価結果も表1に示す。また、
図1には、各実施例のG’、G''の測定値に基づくグラフを示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1において、次の(1)〜(3)を確認できる。なお、層状粘土鉱物、高級アルコール、及びカチオン界面活性剤を配合することで、流れ落ちの抑制及びチキソトロピー性が向上し、マッサージを行い易かったことは、確認されている。
(1)η比が0.50より低くなる(チキソトロピー性が高くなる)につれて、マッサージを行い易かったこと。
(2)ω=90rad/sにおけるG’とG''の差の観点から、高級アルコールの配合量を多くすれば、ω=90rad/sにおけるG’がG''よりも小さい値となる可能性が生じること(実施例1と2の対比)。
(3)上記(2)の可能性は、脂肪酸アミドであるヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミドを配合して粘度を高める場合に高まること(実施例2と4の対比)。
【0050】
また、
図1におけるG’及びG''の線図から、実施例1〜4の洗浄剤のG’は、ω=90rad/sにおいてG''よりも大きい値であったこと、実施例1、2、及び4の洗浄剤のG’は、ω=80rad/sにおいてG''よりも大きい値であったことを、容易に予想できる。
【0051】
比較例の洗浄剤を、水と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.)、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(6E.O.)、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(16E.O.)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−52、ジプロピレングリコール、グリセリン、塩化ナトリウム、防腐剤、及び香料を配合して製造した。
【0052】
比較例の洗浄剤についてのG’、G''を、上記実施例の洗浄剤と同様に測定した。下記表2に、比較例の洗浄剤の製造のために水と配合した原料及び配合量、並びに、G’、G''の測定結果を示す。また、
図2には、比較例のG’、G''の測定値に基づくグラフを示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2及び
図2から、層状粘土鉱物、高級アルコール、及びカチオン界面活性剤を配合しなかった比較例の洗浄剤は、ω=90rad/s以下で流動性を示すG’<G''の関係であったことを確認できる。