(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属板と、前記金属板の表面に、プレポリマーおよび硬化剤の反応生成物であるエポキシ樹脂によって構成された下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜の表面に、アクリル樹脂を含有する上塗り塗膜と、を有する塗装金属板を製造する方法であって、
前記金属板の表面に前記プレポリマーおよび前記硬化剤を含有する下塗り塗膜用塗料を塗布し、固化して第一の塗膜を形成する工程と、
前記第一の塗膜の表面に、アクリル樹脂および溶剤を含有する上塗り塗膜用塗料を塗布して第二の塗膜を形成する工程と、
前記第二の塗膜を有する前記金属板を加熱し、前記第一の塗膜および前記第二の塗膜の両方を硬化させる工程と、を含み、
前記プレポリマーの重量平均分子量は、10000以上であり、
前記プレポリマーの分子量分布は、4.5以下である、塗装金属板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、エポキシ樹脂は、金属板に対する密着性に優れており、アクリル樹脂は、耐候性および透明性に優れている。しかしながら、特許文献1で記載されているように、エポキシ樹脂で構成された下塗り塗膜(以下、「エポキシ樹脂の下塗り塗膜」とも言う)の上にアクリル樹脂を含有する上塗り塗膜(以下、「アクリル樹脂の上塗り塗膜」とも言う)が形成された場合では、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対するエポキシ樹脂の下塗り塗膜の密着性が不十分となることがある。このため、このような塗装金属板をプレコート金属板として用いると、上塗り塗膜が下塗り塗膜から剥離することがある。
【0005】
一方、特許文献2で提案されているように、エポキシ樹脂にアクリル樹脂を混合した樹脂組成物で下塗り塗膜が形成された場合では、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性は高まる。しかしながら、下塗り塗膜がアクリル樹脂を含有するため、金属板に対する下塗り塗膜の密着性が低下することがあり、また金属板の腐食が発生するおそれがある。
【0006】
このため、下塗り塗膜のエポキシ樹脂にアクリル樹脂を混合せずに、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性を高める技術の確立が望まれている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エポキシ樹脂の下塗り塗膜にアクリル樹脂を配合しなくても、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の十分な密着性を有する塗装金属板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の分子量を有するエポキシ樹脂で構成された下塗り塗膜が、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対して十分な密着性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の塗装金属板に関する。
[1]金属板と、前記金属板の表面に、プレポリマーおよび硬化剤の反応生成物であるエポキシ樹脂によって構成された下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜の表面に、アクリル樹脂を含有する上塗り塗膜と、を有する塗装金属板であって、前記プレポリマーの重量平均分子量は、10000以上であり、前記プレポリマーの分子量分布は、4.5以下である、塗装金属板。
[2]前記プレポリマーの数平均分子量は、2300〜6000である、[1]に記載の塗装金属板。
[3]前記プレポリマーの分子量1000以下の分子の個数割合は、6.5%以下である、[1]または[2]に記載の塗装金属板。
[4]前記プレポリマーの分子量500以下の分子の個数割合は、3.0%以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装金属板。
[5]前記硬化剤は、メラミン樹脂またはポリイソシアネート化合物である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗装金属板。
【0010】
また、本発明は、以下の塗装金属板の製造方法に関する。
[6]前記金属板の表面に、前記プレポリマーおよび前記硬化剤を含有する下塗り塗膜用塗料を塗布し、固化して第一の塗膜を形成する工程と、前記第一の塗膜の表面に、アクリル樹脂および溶剤を含有する上塗り塗膜用塗料を塗布して第二の塗膜を形成する工程と、前記第二の塗膜を有する前記金属板を加熱し、前記第一の塗膜および前記第二の塗膜の両方を硬化させる工程と、を含み、前記プレポリマーの重量平均分子量は、10000以上であり、前記プレポリマーの分子量分布は、4.5以下である、前記塗装金属板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エポキシ樹脂の下塗り塗膜にアクリル樹脂を配合しなくても、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の十分な密着性を有する塗装金属板を提供することが可能である。よって、本発明によれば、樹脂成分がエポキシ樹脂のみからなる下塗り塗膜と、樹脂成分がアクリル樹脂のみからなる上塗り塗膜とを有する塗装金属板を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る塗装金属板は、金属板、下塗り塗膜および上塗り塗膜がこの順で重なっている。
【0013】
上記金属板の種類は、特に限定されない。金属板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などが含まれる。金属板は、脱脂や酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。金属板は、耐食性、軽量化および対費用効果の観点から、めっき鋼板であることが好ましい。
【0014】
金属板の表面には、耐食性を向上させる観点から、化成処理皮膜が形成されていてもよい。化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などが含まれる。化成処理皮膜の付着量は、塗膜密着性の向上および腐食の抑制に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/m
2となるように上記付着量を調整すればよい。また、クロムフリー皮膜の場合、Ti−Mo複合皮膜では全TiおよびMo換算付着量が5〜500mg/m
2、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/m
2の範囲内となるように上記付着量を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、リン換算付着量が0.1〜5g/m
2となるように上記付着量を調整すればよい。
【0015】
化成処理皮膜は、公知の方法で形成されうる。たとえば、化成処理皮膜は、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、スプレー法などの方法で金属板の表面に塗布し、乾燥させることによって形成されうる。乾燥温度および乾燥時間は、水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、金属板の到達温度が60〜150℃となる温度であることが好ましく、乾燥時間は、2〜10秒の範囲内が好ましい。
【0016】
上記下塗り塗膜は、上記金属板または上記化成処理皮膜の表面に、エポキシ樹脂によって構成されている。エポキシ樹脂は、プレポリマーおよび硬化剤の反応生成物である。エポキシ樹脂の種類は、一種でも二種以上でもよい。
【0017】
上記プレポリマーは、複数のエポキシ基を有するポリマーである。プレポリマー中のエポキシ基の数は、本発明の効果が得られる範囲において適宜に決められうる。たとえば、プレポリマーのエポキシ価は、0.03以下である。なお、上記エポキシ価は、プレポリマー100g中のエポキシ基のモル数である。
【0018】
上記プレポリマーの例には、複数のエポキシ基を有するビスフェノール誘導体が含まれる。このようなビスフェノール誘導体の例には、ビスフェノールとエピクロルヒドリンの共重合体が含まれる。上記ビスフェノールの例には、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMCおよびビスフェノールZが含まれる。
【0019】
上記プレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10000以上である。プレポリマーのMwが10000よりも小さいと、下塗り塗膜中のエポキシ樹脂に上塗り塗膜中のアクリル樹脂が十分に絡み合わず、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が不十分となることがある。プレポリマーのMwの上限値は、塗装金属板の十分な塗膜密着性を得る観点からは特に限定されないが、下塗り塗膜用塗料の調製や塗布性の観点によれば、例えば50000と決めることができる。プレポリマーのMwは、上記の観点から、10000〜50000であることが好ましく、10000〜20000であることがより好ましい。
【0020】
上記プレポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、4.5以下である。プレポリマーの分子量分布が4.5よりも大きいと、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が不十分となることがある。プレポリマーの分子量分布の下限値は、塗装金属板の十分な塗膜密着性を得る観点からは特に限定されないが、プレポリマーの入手の容易さの観点によれば、例えば2.0と決めることができる。プレポリマーの分子量分布は、上記の観点から、2.0〜4.5であることが好ましい。
【0021】
上記プレポリマーの数平均分子量(Mn)は、2300〜6000であることが、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性をより高める観点から好ましい。プレポリマーのMnが上記範囲に対して小さすぎると、上記の分子量分布が実現されず、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が不十分となることがある。プレポリマーのMnが上記範囲に対して大きすぎても、プレポリマー中の分子量のばらつきがより少なくなり、このような分子量の揃ったプレポリマーを必要量または安価に入手することが困難となる。プレポリマーのMnは、上記の観点から、2500〜5000であることが好ましい。
【0022】
分子量1000以下の上記プレポリマーの分子の個数割合は、6.5%以下であることが、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性をより高める観点から好ましい。プレポリマーの上記個数割合が6.5%よりも大きいと、後述する硬化剤による、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性を高める効果が十分に得られないことがある。プレポリマーの上記個数割合は、上記の観点から、5.5%以下であることがより好ましい。
【0023】
分子量500以下の上記プレポリマーの分子の個数割合は、3.0%以下であることが、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性をより高める観点から好ましい。プレポリマーの上記個数割合が3.0%よりも大きいと、後述する硬化剤によって上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性を高める効果が十分に得られないことがある。プレポリマーの上記個数割合は、上記の観点から、2.5%以下であることがより好ましい。
【0024】
上記プレポリマーのMwおよびMnは、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される。また、プレポリマーの上記個数割合は、例えば、溶剤でプレポリマーを洗浄することによってより低分子のプレポリマーを溶解して除去することや、リビング重合によってより高い分子量のプレポリマーを合成すること、などによって調整されうる。
【0025】
上記硬化剤の例には、エポキシ基と化学結合する二以上の官能基を有する化合物が含まれる。上記官能基の例には、イソシアネート基やアミノ基などが含まれる。このような官能基を有する上記硬化剤の例には、ポリイソシアネート化合物やメラミン樹脂などが含まれる。硬化剤は、エポキシ基との反応性が高いほど、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が向上することが期待される。このような観点から、硬化剤は、ポリイソシアネート化合物またはメラミン樹脂であることが好ましく、メラミン樹脂であることがより好ましい。ポリイソシアネート化合物の例には、デュラネート(旭化成ケミカルズ株式会社の登録商標)MF−K60BおよびMF−B60B(旭化成ケミカルズ株式会社製)が含まれる。メラミン樹脂の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型および完全アルキル基型のメラミン樹脂が含まれ、より具体的には、サイメル(サイテックテクノロジー社の登録商標)303、300、370、325および235(サイテックテクノロジー社製)が含まれる。
【0026】
エポキシ樹脂中、上記硬化剤の使用量は、十分な強度を有する下塗り塗膜を形成する観点、および、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性をより高める観点、から、上記プレポリマー100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。硬化剤の使用量が少なすぎると、下塗り塗膜の強度が不十分となることがある。硬化剤の使用量が多すぎると、硬化剤による上記密着性の向上効果が十分に得られないことがある。エポキシ樹脂中の硬化剤の使用量は、NMRやIR、GC−MSなどの公知の分析装置によって確認されうる。
【0027】
下塗り塗膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば0.5〜50μmである。
【0028】
上記上塗り塗膜は、アクリル樹脂を含有し、上記下塗り塗膜の表面に形成される。アクリル樹脂の種類は、一種でも二種以上でもよい。アクリル樹脂の例には、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などの(メタ)アクリル酸エステルの重合体、および、アクリルシリコン樹脂などのアクリル変性樹脂、が含まれる。アクリル樹脂は、上塗り塗膜用塗料に通常配合される公知のアクリル樹脂から好適に選ばれうる。上塗り塗膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば0.5〜300μmである。
【0029】
上記上塗り塗膜は、アクリル樹脂単独で構成される塗膜であってもよいが、加工性や防汚性などの特性を上塗り塗膜に付与する観点から、他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂の例には、フッ素樹脂やポリエステル樹脂などが含まれる。アクリル樹脂および他の樹脂の含有量は、アクリル樹脂による上塗り塗膜の構築、および、他の樹脂による特性の付与、が得られる範囲において、適宜に決められる。たとえば、アクリル樹脂とフッ素樹脂を併用する場合では、フッ素樹脂の質量(Ep)に対するアクリル樹脂の質量(Ac)の比(Ac/Ep)は、0.05以上である。また、上塗り塗膜は、前述した硬化剤をさらに含有していてもよい。
【0030】
フッ素樹脂は、防汚性や耐候性などを向上させる目的で上塗り塗膜に配合される。フッ素樹脂の例には、二フッ化系のフッ素樹脂、三フッ化系のフッ素樹脂および四フッ化系のフッ素樹脂などの、フッ素を有するオレフィンを含むモノマーを重合して得られる樹脂が含まれる。このようなフッ素樹脂の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系のフッ素樹脂(例えばカイナー(アルケマ社の登録商標))、三フッ化フルオロエチレン/ビニルエーテル(FEVE)交互共重合体(例えばルミフロン(旭硝子株式会社の登録商標)、および、四フッ化エチレン/ビニル共重合体(例えばゼッフル(ダイキン工業株式会社の登録商標)、が含まれる。
【0031】
上記下塗り塗膜および上記上塗り塗膜は、前述した樹脂以外に、本発明の効果が得られる範囲において、さらなる材料を含有していてもよい。このようなさらなる材料の例には、防錆顔料、着色顔料、体質顔料、骨材、潤滑剤、光沢調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤および酸化防止剤が含まれる。
【0032】
防錆顔料は、塗装金属板の耐食性を向上させる目的で下塗り塗膜に配合される。防錆顔料の例には、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、シリカ、カルシウムイオン交換シリカ、リン酸ジルコニウム、トリポリリン酸2水素アルミニウム、酸化亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、バナジン酸、バナジン酸カルシウム、リン酸マンガン、クロム酸ストロンチウムおよびクロム酸亜鉛が含まれる。
【0033】
体質顔料は、上記塗膜やその塗料の物性を調整する目的で下塗り塗膜または上塗り塗膜に配合される。体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカおよび炭酸カルシウムが含まれる。
【0034】
着色顔料は、意匠性を付与する目的で下塗り塗膜または上塗り塗膜に配合される。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー、コバルトグリーン、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、メタリック顔料、パール顔料および遮熱顔料が含まれる。
【0035】
骨材は、塗膜の機械的強度、耐磨耗性や耐傷付き性を高める目的で上塗り塗膜に配合される。骨材の例には、平均粒径7μm以上の無機系骨材および有機系骨材が含まれる。無機系骨材の例には、シリカやガラスビーズなどが含まれる。有機系骨材の例には、ユリア樹脂や、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステルなどの樹脂で構成された球状ビーズが含まれる。
【0036】
潤滑剤は、塗装金属板の加工時における潤滑性を付与する目的で上塗り塗膜に配合される。潤滑剤の例には、フッ素系ワックス、ポリエチレン系ワックス、スチレン系ワックスおよびポリプロピレン系ワックスなどの有機ワックス、および、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤、が含まれる。
【0037】
光沢調整剤は、光沢を調整する目的で上塗り塗膜に配合される。光沢調整剤の例には、平均粒径1〜6μmの無機系光沢調整剤および有機系光沢調整剤が含まれる。無機系光沢調整剤の例には、シリカやガラスビーズなどが含まれる。有機系光沢調整剤の例には、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂で構成された球状ビーズが含まれる。
【0038】
紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤は、耐候性および安定性を高める目的で主に上塗り塗膜に配合される。紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが含まれる。
【0039】
光安定剤の例には、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルおよびトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートおよび、(ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、などのヒンダードアミン系の光安定剤が含まれる。
【0040】
酸化防止剤の例には、アスコルビン酸類やトコフェロール類などのビタミン類、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートおよびペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]などのフェノール系の酸化防止剤、および、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイトおよび環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどのホスファイト系の酸化防止剤、が含まれる。
【0041】
本発明に係る塗装金属板は、例えば、上記金属板の表面に塗布された、上記プレポリマーおよび上記硬化剤を含有する下塗り塗膜用塗料を塗布し、固化して第一の塗膜を形成する第一の工程と、上記第一の塗膜の表面に、アクリル樹脂および溶剤を含有する上塗り塗膜用塗料を塗布して第二の塗膜を形成する第二の工程と、上記第二の塗膜を有する上記金属板を加熱し、上記第一の塗膜および上記第二の塗膜の両方を硬化させる第三の工程と、を含む方法によって製造されうる。
【0042】
上記下塗り塗膜用塗料は、上記プレポリマーおよび上記硬化剤を含有する。下塗り塗膜用塗料は、下塗り塗膜に配合される他の材料をさらに含有していてもよい。また、下塗り塗膜用塗料は、例えば塗布性の向上の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。溶剤の例には、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤、ヘキサンやシクロヘキサンなどのアルカン系溶剤、アセトンなどのケトン系溶剤、エタノールや2−プロパノールなどのアルコール系溶剤およびこれらの混合物が含まれる。下塗り塗膜用塗料中の上記成分の含有量は、下塗り塗膜中の上記成分の含有量に基づいて決められる。
【0043】
上記上塗り塗膜は、上記アクリル樹脂および溶剤を含有する。上塗り塗膜用塗料は、上塗り塗膜に配合される他の材料をさらに含有していてもよい。また、上塗り塗膜用塗料中の溶剤は、前述した溶剤から適宜選ばれうる。上塗り塗膜用塗料中の上記成分の含有量は、上塗り塗膜中の上記成分の含有量に基づいて決められる。
【0044】
上記第一の工程において、上記第一の塗膜は、例えば、下塗り塗膜用塗料を塗布した金属板を加熱することによって形成される。第一の塗膜は、それ以上硬度が上昇しないほど完全に硬化された下塗り塗膜用塗料の層であってもよいが、その場合、第二の塗膜との密着性が十分に得られないことがある。このため、第一の塗膜は、さらなる硬化の余地が残されている程度に硬化された下塗り塗膜用塗料の層であることが好ましい。このような第一の塗膜の表面には、上塗り塗膜用塗料を塗布することが十分に可能であり、かつ、後述の第二の塗膜を形成したときに、第一の塗膜中のエポキシ樹脂およびプレポリマーに対して、第二の塗膜中のアクリル樹脂がより強く絡み合うこと、および、第一の塗膜中のプレポリマーが第二の塗膜中の硬化剤と反応すること、が期待される。また、このような下塗り塗膜用塗料の固化は、塗料中のプレポリマーに対する硬化剤の配合比、上記金属板の加熱時における到達温度または加熱時間によって調整されうる。上記固化の終点は、例えば、第一の塗膜の硬度によって適宜に決められうる。
【0045】
上記第二の工程において、上塗り塗膜用塗料は、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、スプレーコートおよびディップコートなどの公知の方法によって、固化した下塗り塗膜用塗料の塗膜に塗布される。上塗り塗膜の膜厚は、例えば、上塗り塗膜用塗料の塗布量によって調整される。上記第一の塗膜の表面は、上塗り塗膜用塗料中の溶剤によって膨潤し、第一の塗膜中のエポキシ樹脂に対して、第二の塗膜中のアクリル樹脂が作用しうる。
【0046】
上記第三の工程において、上記第一の塗膜と上記第二の塗膜の両方が硬化する。第三の工程によって、両塗膜の硬化が終了する。両塗膜の硬化は、上記金属板の加熱時における到達温度または加熱時間によって調整されうる。また、両塗膜の硬化の終点は、例えば、形成される下塗り塗膜および上塗り塗膜の硬度を測定することによって決められる。たとえば、両塗膜の硬化の終点は、両塗膜の加熱に伴う硬度の上昇が停止した以降、と決められる。
【0047】
上記の製造方法は、本発明の効果が得られる範囲において、他の工程をさらに含んでいてもよい。このような他の工程の例には、金属板の塗装前処理を行う工程、および、塗膜の硬化後に塗装金属板を金型で成形する工程、が含まれる。上記の他の工程は、塗装金属板の製造における公知の方法によって行われうる。
【0048】
本発明に係る塗装金属板は、エポキシ樹脂で構成される下塗り塗膜の表面に、アクリル樹脂で構成される上塗り塗膜を有するが、下塗り塗膜がアクリル樹脂を含有しなくても、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の高い密着性が得られる。この理由は、以下のように考えられる。
【0049】
まず、プレポリマーは、10000以上の重量平均分子量を有する。このため、下塗り塗膜を構成するエポキシ樹脂一分子の大きさも大きくなる。エポキシ樹脂が大きいことから、エポキシ樹脂の網目構造の個々の網目も大きくなる。したがって、下塗り塗膜の表面に上塗り塗膜を形成するときに、上塗り塗膜および下塗り塗膜の界面において、上記エポキシ樹脂の網目に、上塗り塗膜を構成するアクリル樹脂が十分に絡まり、このため上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が向上する、と考えられる。
【0050】
また、プレポリマーは、4.5以下という比較的狭い分子量分布を有する。すなわち、プレポリマー中には、より大きなプレポリマーが多く含まれ、より小さなプレポリマーの含有量は少ない。小さなプレポリマーは、エポキシ樹脂となったときに小さな網目を形成してしまうが、このような小さなポリマーは十分に少ないので、エポキシ樹脂の上記網目構造の個々の網目が小さくなりにくい。よって、下塗り塗膜の表面全域で、前述したようにアクリル樹脂がエポキシ樹脂に絡まることによる、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が高められている、と考えられる。
【0051】
さらに、プレポリマーは、一般に、より大きいほど反応性が低い。このため、小さなプレポリマーが少なければ、下塗り塗膜の焼き付け時に、プレポリマーと硬化剤が、いずれも未反応の状態で残りやすい。この下塗り塗膜中の未反応のプレポリマーや硬化剤が、上塗り塗膜の焼き付け時に上塗り塗膜中の硬化剤やアクリル樹脂の特定の官能基(例えば水酸基)と反応すると、下塗り塗膜と上塗り塗膜との間で共有結合が形成される。また、上塗り塗膜中のアクリル樹脂が下塗り塗膜中の未反応の硬化剤との反応部位を有さない場合でも、下塗り塗膜中の未反応のプレポリマーの水酸基と、アクリル樹脂中の水酸基が水素結合を形成しうる、と考えられる。このような共有結合や水素結合などによっても、上塗り塗膜に対する下塗り塗膜の密着性が高められている、と考えられる。
【0052】
以上説明したように、本発明に係る塗装金属板は、高い塗膜密着性を有する。そして、本発明に係る塗装金属板は、アクリル樹脂の上塗り塗膜を有することから耐候性や意匠性なども良好である。よって、本発明に係る塗装金属板は、携帯電話機などの電子機器や外装用建材などの工業製品として、またはそのプレコート金属板として、様々な用途で使用されうる。
【0053】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0054】
[1.プレポリマーの合成]
100質量部のビスフェノールAと、約200〜800質量部のエピクロルヒドリンとをアルカリ触媒存在下で脱ハロゲン化水素反応により共重合し、プレポリマーである樹脂A〜Fをそれぞれ得た。得られたプレポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。GPC装置には東ソー株式会社製のGPC装置HLC−8010を使用し、カラムにはShodex社製のK−800DとK805Lの2本のカラムを使用し、溶離液にはクロロホルムを用いた。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の値は、標準ポリスチレンから換算した。さらに、得られたプレポリマーの分子量分布(PDI)((Mw)/(Mn))、分子量1000以下の分子の個数割合および分子量500以下の分子の個数割合をそれぞれ求めた。結果を表1に示す、
【0055】
【表1】
【0056】
[2.金属板の準備]
板厚0.5mm、片面めっき付着量90g/m
2の溶融亜鉛めっき鋼板を用い、その亜鉛めっき層の表面に、常法に従って、フルオロアシッド系のクロムフリー化成処理液を、フッ素換算付着量で10mg/m
2となるよう塗布し、フルオロアシッド系皮膜を有するめっき鋼板を準備した。
【0057】
[3.下塗り塗膜用の塗料の調製]
下記表2に示す硬化剤A〜Gを用意した。サイメル303、300、370、325および235は、サイテックテクノロジー社製であり、「サイメル」は、同社の登録商標である。デュラネートMF−K60BおよびMF−B60Bは、いずれも旭化成ケミカルズ株式会社製であり、「デュラネート」は、同社の登録商標である。
【0058】
【表2】
【0059】
90質量部のプレポリマーAと、10質量部の硬化剤Aとを混合し、下塗り塗膜用の塗料1を調製した。また、プレポリマーと硬化剤の組み合わせを表3に示すように変更する以外は、下塗り塗膜用の塗料1と同様にして、下塗り塗膜用の塗料2〜24をそれぞれ調製した。
【0060】
【表3】
【0061】
[4.上塗り塗膜用の塗料の調製]
上塗り塗膜用の塗料を用意した。この塗料の組成は、以下の通りであった。
アクリル樹脂 10質量部
フッ素樹脂 40質量部
溶剤 50質量部
アクリル樹脂は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、溶剤はイソホロンであった。
【0062】
[5.塗装金属板の作製]
上記めっき鋼板の表面に、下塗り塗膜用の塗料1を、乾燥膜厚で5μmとなるように塗布した。そして、塗料1中のプレポリマーAと硬化剤Aの全部が反応しないように、めっき鋼板の到達温度が215℃で40秒間となるように上記めっき鋼板を加熱し、塗料1の塗膜を固化した。次いで、固化した塗料1の塗膜の表面に、上記上塗り塗膜用の塗料を、乾燥膜厚で16μmとなるように塗布した。次いで、上塗り塗膜用の塗料を塗布しためっき鋼板を、塗料1中のプレポリマーAが全て反応し、かつ上塗り塗膜が硬化するように、めっき鋼板の到達温度が240℃で60秒間となるように加熱し、直後に水冷し、下塗り塗膜および上塗り塗膜の両方を完全に硬化させた。こうして、塗装金属板1を作製した。
【0063】
塗料1に代えて塗料2〜24を用いる以外は塗装金属板1と同様にして、塗装金属板2〜24をそれぞれ作製した。
【0064】
[6.塗装金属板の評価]
(1)剥離試験(密着性試験1)
塗装金属板1の表面(塗膜側)が外側、塗装金属板1の裏面が内側になり、裏面同士が密着するまで塗装金属板1を折曲げ、セロハンテープを用い、折曲げ部にセロハンテープを接着、剥離したときの塗膜の剥離の有無を観察し、下記の基準で評価した。
○:剥離なし
×:剥離あり
【0065】
(2)高温高湿環境での膨れ試験(密着性試験2)
CCHC(Cleveland Condensing Humidity Cabinet:ASTM D−2247−87−Type A2)と呼ばれる試験機を用い、塗装金属板1の表面を下に向けて、塗装金属板1を80℃の熱水が入った容器の蓋になるように配置し、塗装金属板1の表面を蒸気に一定期間(240時間)晒した。試験後、ASTM D714−56の判定基準に準拠し、塗装金属板1の塗膜におけるブリスターの発生状態を評価した。すなわち、各ブリスターの大きさ(平均径)と密度について、塗装金属板1の塗膜を標準判定写真と対比して評価し、その評価結果が等級記号で示されている。大きさについては8(直径約1mm)、6(直径約2mm)、4(直径約3mm)、2(直径約5mm)の順に4段階、密度については、小さい方からF、FM、M、MD、Dの5段階に級別されており、ブリスターがなければ10である。
【0066】
(3)耐食性試験
JIS K5600−7−1に準じて、塗装金属板1の端面部をシールし、5質量%食塩水を連続的に35℃で一定期間(240時間)吹き付けた。その後、ASTM D714−56の上記の判定基準に準拠して平坦部(塗膜のp平面状の部分)での塗膜の膨れを評価した。また、平坦部での金属板の腐食状態(錆の有無)を観察し、評価した。
【0067】
塗装金属板1と同様にして塗装金属板2〜24のそれぞれの上記試験を行い、塗装金属板2〜24を評価した。結果を表4および表5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
表1および表4から明らかなように、重量平均分子量が10000以上であり、分子量分布が4.5以下であるプレポリマーA〜Cを用いた塗装金属板1〜15では、硬化剤の種類に関わらず、いずれの塗膜密着性および耐食性も高かった。表1から明らかなように、プレポリマーA〜Cは、いずれも、低分子成分の含有量が少ない。したがって、分子量が比較的大きく、低分子成分の含有量が少ないプレポリマーから形成されたエポキシ樹脂の下塗り塗膜は、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対して高い密着性を有することがわかる。
【0071】
一方、表1および表5から明らかなように、プレポリマーの重量平均分子量が数千程度であり、分子量分布が4.5および3.1であるプレポリマーDおよびFを用いた塗装金属板16、18〜24では、分子量分布が4.5以下であったとしても、塗膜密着性および耐食性の両方が低かった。また、重量平均分子量が10000以上であっても分子量分布が14.0と大きなプレポリマーEを用いた塗装金属板17では、分子量1000以下の分子の個数割合が約40%と多く、塗膜密着性および耐食性の双方がより一層低かった。
【0072】
また、プレポリマーDとポリイソシアネート化合物の硬化剤とで形成されたエポキシ樹脂の下塗り塗膜を有する塗装金属板23,24では、塗装金属板16,19〜22に比べて、塗膜密着性および耐食性の両方がさらに低かった。
【0073】
塗装金属板16〜24における塗膜の剥離が生じた部分をルーペにて観察したところ、いずれも、下塗り塗膜との界面で上塗り塗膜が剥離していた。また、塗装金属板16〜24における塗膜のブリスターが発生した部分をルーペにて観察したところ、いずれも、下塗り塗膜と上塗り塗膜との界面でブリスターが発生していた。
【0074】
以上より、分子量が比較的小さなプレポリマーから形成されたエポキシ樹脂の下塗り塗膜は、プレポリマーの分子量分布が比較的狭いとしても、アクリル樹脂の上塗り塗膜に対して十分な密着性を有さず、このため、塗装金属板の加工性および耐食性が不十分となることがわかる。