(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリブチレンテレフタレートと前記ポリカーボネートとの質量比(ポリブチレンテレフタレートの含有量/ポリカーボネートの含有量)が、6/4以上9/1以下である請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレートと、ポリカーボネートと、特定のコアシェル系エラストマーと、難燃剤とを含む。
【0019】
<ポリブチレンテレフタレート>
ポリブチレンテレフタレートとは、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C
1〜C
6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレートである。ポリブチレンテレフタレートはホモポリブチレンテレフタレートに限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0020】
ポリブチレンテレフタレートにおいて、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC
8〜C
14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC
4〜C
16のアルキルジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC
5〜C
10のシクロアルキルジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C
1〜C
6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
ポリブチレンテレフタレートにおいて、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC
2〜C
10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC
2〜C
4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、何れもポリブチレンテレフタレートとして好適に使用できる。また、ポリブチレンテレフタレートとして、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明のポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に制限されない。ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に耐ヒートショック性に優れたものとなり、且つ、湿熱環境下での加水分解による強度低下をより受けにくくなる。
【0024】
また、本発明のポリブチレンテレフタレートのメルトフローレートは本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリブチレンテレフタレートのメルトフローレートは6g/10min以上50g/10min以下であるのが好ましい。さらに好ましくは7g/10min以上30g/10min以下である。かかる範囲のメルトフローレートのポリブチレンテレフタレートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なるメルトフローレートを有するポリブチレンテレフタレートをブレンドして、メルトフローレートを調整することもできる。例えば、メルトフローレート50g/10minのポリブチレンテレフタレートとメルトフローレート8g/10minのポリブチレンテレフタレートとをブレンドすることにより、メルトフローレート20g/10minのポリブチレンテレフタレートを調製することができる。ポリブチレンテレフタレートのメルトフローレートは、ISO1133に準拠した条件で測定することができる。
【0025】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中のポリブチレンテレフタレートの含有量は特に限定されないが、後述するポリカーボネートの含有量と調整して決定されることが好ましい。
【0026】
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートは、溶剤法、即ち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、二価フェノールとしてはビスフェノール類を例示することができる。より具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAを例示することができる。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の二価フェノールで置換したものであってもよい。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物又はビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類を例示することができる。これら二価フェノールは二価フェノールのホモポリマー又は2種以上のコポリマーであってもよい。さらに本発明で用いるポリカーボネートは多官能性芳香族化合物を二価フェノール及び/又はカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には複数種のポリカーボネートを含有させてもよい。
【0027】
本発明のポリカーボネートのメルトフローレートは本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリカーボネートのメルトフローレートは3g/10min以上30g/10min以下が好ましい。さらに好ましくは13g/10min以上24g/10min以下である。かかる範囲のメルトフローレートのポリカーボネートを用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。
【0028】
ポリカーボネートの種類は特に限定されない。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中のポリカーボネートの含有量も特に限定されず、ポリブチレンテレフタレートの含有量と調整して決定されることが好ましく、耐衝撃性の観点からは、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。ポリブチレンテレフタレートの含有量とポリカーボネートの含有量の詳細は後述する。
【0029】
前記ポリブチレンテレフタレートの含有量とポリカーボネートの含有量の詳細については、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートとの質量比(ポリブチレンテレフタレートの含有量/ポリカーボネートの含有量)が、6/4以上9/1以下であることが好ましい。6/4以上であればポリブチレンテレフタレートの有する優れた機械特性、電気特性、耐乾熱性及び耐薬品性を示すという理由で好ましく、9/1以下であれば耐衝撃性に優れるという理由で好ましい。より好ましくは6/4以上8/2以下である。
【0030】
<コアシェル系エラストマー>
特定のコアシェル系エラストマーとは、コアはスチレンブタジエン系ゴムであり、シェルはアルキル(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位から構成されるアクリル系重合体である。特定のコアシェル系エラストマーを使用することで、ポリブチレンテレフタレート中に分散するポリカーボネート中に、コアシェル系エラストマーが分散し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐衝撃性(特に、低温での耐衝撃性)を顕著に向上させることができると推測される。
【0031】
また、一般的に、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にエラストマー成分を含有させると、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にある。しかし、上記特定のコアシェル系エラストマーを含有させる場合には、燃焼時の耐バーンスルー性を向上させると推測される。
【0032】
さらに、一般的に、エラストマー成分はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性を低下させる傾向にある。しかし、上記特定のコアシェル系エラストマーは、成形時の流動性を大きく低下させることなく耐衝撃性や耐バーンスルー性を向上させる事ができるため、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は良好な流動性を示す。ここで、良好な流動性とは温度260℃、せん断速度1000sec
−1での溶融粘度が0.35kPa・s未満であることを指す。
【0033】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等を例示することができる。本発明においてアルキル(メタ)アクリレートは、アルキルメタクリレートであることが好ましく、最も好ましくはメチルメタクリレートである。
【0034】
また、アクリル系重合体には、本発明の効果を大きく害さない範囲で、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0035】
スチレンブタジエン系ゴムは、主な共重合成分としてスチレンとブタジエンとを含む重合体である。スチレンブタジエン系ゴムには、本発明の効果を大きく害さない範囲で、スチレン及びブタジエン以外の共重合成分を含んでもよい。
【0036】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中のコアシェル系エラストマーの含有量は5質量%以上20質量%以下である。5質量%以上であることは低温衝撃性向上という理由で必要である。また、20質量%以下であることは難燃性や耐乾熱性及び流動性を損なわないという理由で必要である。より好ましいコアシェル系エラストマーの含有量は、15質量%以上20質量%以下である。
【0037】
難燃剤の種類は特に限定されず、例えば、ハロゲン含有難燃剤、リン含有難燃剤、窒素含有難燃剤、イオウ含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤、芳香族樹脂難燃剤等を例示することができる。本発明においては、ハロゲン含有難燃剤の使用が好ましく、より好ましくは臭素含有難燃剤である。臭素含有難燃剤としては、臭素含有アクリル系樹脂、臭素含有スチレン系樹脂、臭素含有ポリカーボネート系樹脂、臭素含有エポキシ系樹脂、臭素化ポリアリールエーテル化合物、臭素化芳香族イミド化合物、臭素化ビスアリール化合物、臭素化トリ(アリールオキシ)トリアジン化合物等が挙げられる。剛性、耐衝撃性、流動性をバランス良く向上させられるため臭素含有エポキシ系樹脂が好ましい。
【0038】
上記臭素含有エポキシ系樹脂としては、末端が封止されたものを使用してもよい。末端を封止した臭素含有エポキシ系樹脂を使用すれば、成形時の樹脂組成物の流動性が高くなるため好ましい。末端封止された臭素含有エポキシ系樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂が特に好ましい。また、末端封止にはブロモフェノールが好ましく使用されるが、ブロモフェノールの中でもトリブロモフェノールが特に好ましく使用される。なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、複数種類の難燃剤が含まれていてもよい。
【0039】
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤は樹脂組成物の耐衝撃性を低下させる傾向にある。しかし、本発明においては、特定のエラストマーとポリカーボネートとを併用することで、樹脂組成物の耐衝撃性(特に低温における耐衝撃性)が顕著に高められている。その結果、本発明の樹脂組成物は難燃剤を含みつつ、非常に優れた耐衝撃性を有する。
【0040】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、特に限定されないが、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。10質量%以上であれば難燃性が付与されるという理由で好ましく、15質量%以下であれば耐衝撃性が維持されるという理由で好ましい。
【0041】
以上の必須成分である、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、コアシェル系エラストマー、難燃剤以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、難燃助剤、ドリッピング防止剤、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、着色剤等を挙げることができる。
【0042】
難燃助剤として、その種類は特に限定されないが、臭素含有難燃剤を使用する場合には、例えば酸化アンチモンの使用が好ましい。酸化アンチモンとしては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等を例示することができる。また、難燃助剤の含有量は2質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0043】
ドリッピング防止剤として、例えば、フッ素含有樹脂を使用することができる。入手しやすさ、効果の高さ、取り扱いの容易さから、特にテトラフルオロエチレン重合体が好ましい。テトラフルオロエチレン重合体の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0044】
安定剤についても、その種類は特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートのエステル交換を抑制する目的として、例えばリン系安定剤を好ましく用いることができる。また、安定剤の含有量も特に限定されないが、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0045】
酸化防止剤についても、その種類は特に限定されず、適宜好ましいものを用いることができる。また、酸化防止剤の含有量は、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0046】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製方法>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製法の具体的態様は特に限定されるものではなく、一般に樹脂組成物又はその成形体の調製法として公知の設備と方法により、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を調製することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、樹脂組成物の混練温度(シリンダー温度)は250℃以上280℃以下が好ましく、より好ましくは260℃以上270℃以下である。混練温度が280℃より高いと混練中に樹脂の分解が進行しやすく、250℃より低いと得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の各成分の分散状態が優れない場合があり好ましくない。
【0047】
<成形体の製造方法>
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形等の方法)で、種々の成形体を成形することができる。
【0048】
上記のような方法で得られた成形体は、難燃性に優れる。具体的には、UL燃焼試験法における5VAの規格を満たす。また、上記のような方法で得られた成形体は、室温及び低温においても優れた耐衝撃性を備え、さらに、引張り特性や曲げ特性も良好である。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、これを成形してなる成形体が上記の性質を有するため、屋外で使用される屋外用電気部材の原料として好ましい。ここで、屋外用電気部材とは、屋外で使用される電気製品の一部を構成する樹脂部品を指す。屋外用電気部材には難燃性が求められる場合が多く、また、耐候性、耐熱性、室温や低温での耐衝撃性も求められる場合も多い。
【0050】
屋外用電気部材の具体例としては、太陽電池、屋外ブレーカー、屋外スイッチ、電気車両に用いられるコネクタ、又は電気車両用電子部品筐体に用いられる電子部品の筐体を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<材料>
ポリブチレンテレフタレート樹脂1(PBT1):ウィンテックポリマー社製、メルトフローレート:23g/10min
ポリブチレンテレフタレート樹脂2(PBT2):ウィンテックポリマー社製、メルトフローレート:6.5g/10min
ポリカーボネート(PC):帝人化成社製、「パンライトL−1225」
エラストマー1(MBS):シェルがメタクリレート、コアがブタジエンスチレンのコアシェル系エラストマー(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、「パラロイドEXL2602」)
エラストマー2(アクリル系コアシェル):コア層がアクリル系ゴム、シェル層がビニル系重合体のコアシェルエラストマー(ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、「パラロイドEXL2314」)
エラストマー3(EMA−GMA):エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製、「BONDFAST 7M」)
難燃剤1:臭素含有アクリル樹脂(アイシーエル・アイピー・ジャパン社製、「FR1025」)
難燃剤2:臭素含有エポキシ系樹脂(アイシーエル・アイピー・ジャパン社製、「F3100」、末端封止有り)
難燃剤3:臭素含有ポリカーボネート系樹脂(帝人化成社製、「ファイヤーガード7500」)
難燃助剤:三酸化アンチモン(日本精鉱社製、「PATOX−M」)
ドリッピング防止剤(PTFE):ポリテトラフルオロエチレン樹脂(旭硝子(株)製、フルオンCD−076)
安定剤1:リン酸二水素ナトリウム(米山化学工業社製、「リン酸一ナトリウム」)
安定剤2:リン系安定剤(ADEKA社製、「アデカスタブPEP36」)
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン社製、「Irganox1010」)
離型剤:ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製、「リケマールB100」)
【0053】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造>
上記の材料を以下の表1に示す割合(単位は質量%)でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)にホッパーから供給して260℃で溶融混練し、ペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。
【0054】
<評価>
実施例の試験片及び比較例の樹脂組成物を用いて、引張り特性、曲げ特性、衝撃性、低温衝撃性、燃焼性、流動性の評価を以下の方法で行った。
【0055】
[引張り特性]
得られたペレット状の樹脂組成物を、成形温度260℃、金型温度80℃で、射出成形して試験片を作製し、ISO527−1,2に準拠し、引張り強さ、及び引張り伸びの測定を行った。測定結果を表1に示した。
【0056】
[曲げ特性]
得られたペレット状の樹脂組成物を、成形温度260℃、金型温度80℃で、射出成形して試験片を作製し、ISO178に準拠し、曲げ強さ、及び曲げ弾性率の測定を行った。測定結果を表1に示した。
【0057】
[衝撃性]
得られたペレット状の樹脂組成物を、成形温度260℃、金型温度80℃で、射出成形し、シャルピー衝撃試験片を作製し、ISO179/1eAに定められている評価基準に従い、23℃の条件で評価した。評価結果を表1に示した。
【0058】
[低温衝撃]
−40℃の条件で行う衝撃性の評価であり、−40℃で行う以外については、上記の衝撃性と同様の方法で行った。評価結果を表1に示した。
【0059】
[燃焼性]
得られたペレット状の樹脂組成物を、成形温度260℃で成形した短冊状試験片(125×13×1.5/単位mm)、板状試験片(150×150×1.5/単位mm)を用い、アンダーライターズ・ラボラトリーズのUL−94規格燃焼試験における5V試験による評価を行った。満たした規格(5VA、5VB、又は×(5VA、5VBのいずれも満たさず))、短冊状試験片着火後の燃焼時間(試験片5本の平均値、「DRB」は燃焼部の滴下により下部の綿が発火した事を示す)、板状試験片がバーンスルー穴を示すか否か(「○」は穴が無し、「×」は穴があいた、「−」は短冊状試験片の評価でNGのため板状試験片では評価しなかった、ということを示す)を表1に示した。
【0060】
[流動性]
ペレット状の樹脂組成物について、東洋精機製作所社製キャピログラフ1Bを用いて、ISO11443に準拠して、炉体温度260℃、キャピラリーφ1mm×20mmLにて、剪断速度1000sec
−1にて溶融粘度を測定した。測定結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1〜2と比較例1〜5との比較、実施例3と比較例7〜8との比較から、コアはスチレンブタジエン系ゴムであり、シェルはアルキル(メタ)アクリレートであるコアシェル系エラストマーを用いれば、顕著に優れた難燃性を有し、低温での耐衝撃性にも優れ、引張特性や曲げ特性等の機械的性質も良好であり、流動性にも優れることが確認された。また、実施例1〜3の溶融粘度の結果から、本願発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、良好な成形性を備える。
【0063】
また、実施例1〜2と比較例6とから、特定のコアシェル系エラストマーを、特定の量使用することで、本発明の効果を奏することが確認された。
【0064】
実施例1〜3から、ポリカーボネートと特定のコアシェル系エラストマーと臭素含有アクリル系樹脂との組み合わせは、低温での耐衝撃性をより高めることが確認された。
【0065】
また、ポリカーボネートと特定のコアシェル系エラストマーと臭素含有エポキシ系樹脂とを組み合わせると、機械特性と耐衝撃性と流動性を同時に高められることが確認された。
【0066】
実施例3と比較例7〜8、実施例2と比較例1と比較例3、比較例2と比較例5〜6の結果から、エラストマーとしてMBSを用いることで、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性が高まることが確認された。