(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着層が、粘着付与剤と、スチレン系エラストマー、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン及びポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、印刷された模様及び色彩を加飾加工の対象物表面にきれいに形成できる積層体及び、印刷された模様及び色彩を加飾加工の対象物表面にきれいに形成された成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意研究を行い、所定の粘着強度を有する粘着層を介して2枚のフィルムを常温で貼り合せた積層体を用い、これを、所望の形状に加工する際の熱で溶着させることによって、従来手法よりも簡易に、かつ少ない数量でも、ラミネート(積層体)による加飾を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
本発明によれば、以下の積層体、積層体の製造方法、成形体及び成形体の製造方法が提供される。
1.ポリオレフィンを含有する透明樹脂層、
粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層、及び
ポリオレフィンを含有する基材層
を、この順で含んでなることを特徴とする積層体。
2.ポリオレフィンを含有する透明樹脂層、
印刷層、
粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層、及び
ポリオレフィンを含有する基材層
をこの順で含んでなることを特徴とする積層体。
3.前記粘着層が、粘着付与剤と、スチレン系エラストマー、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン及びポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上とを含有することを特徴とする1又は2に記載の積層体。
4.前記粘着層が、スチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤と、を含有することを特徴とする3に記載の積層体。
5.前記スチレン系エラストマーが、一般式
A−B−A、又は
A−B
(式中、Aはスチレン系重合体ブロックであり、Bはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックである。)で表されるブロック共重合体であることを特徴とする3又は4に記載の積層体。
6.透明樹脂層のヘイズ値が、0.1%〜60%であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の積層体。
7.少なくとも、粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層(1a)とポリオレフィンを含有する基材層(1b)とを積層して多層フィルム(1)を形成する第一の工程、及び
ポリオレフィンを含有する層を含む透明樹脂シート(2)に、前記多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合せる第二の工程
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
8.前記粘着層(1a)と前記基材層(1b)が、多層押出成形又はラミネート加工により多層化されることを特徴とする7に記載の積層体の製造方法。
9.前記第二の工程が、模様及び/又は色彩が印刷された前記透明樹脂シート(2)の該印刷面に、前記多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合わせる工程であることを特徴とする7又は8に記載の積層体の製造方法。
10.ポリオレフィンを含有する層を含む透明樹脂シート(2)に、粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層(1a)とポリオレフィンを含有する基材層(1b)とを積層してなる多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合せてなる積層体。
11.1〜6及び10のいずれかに記載の積層体を用いた成形体。
12.前記積層体の基材層側にさらに基材樹脂層を有することを特徴とする11に記載の成形体。
13.前記基材樹脂層が射出成形により形成されていることを特徴とする12に記載の成形体。
14.1〜6及び10のいずれかに記載の積層体(I)に熱をかけて所望の形状とすることを特徴とする成形体の製造方法。
15.1〜6及び10のいずれかに記載の積層体(I)を金型へ挿入する工程、及び
前記金型に挿入された積層体(I)の基材層(1a)側に樹脂を射出し、基材樹脂層(II)を設ける射出工程を有することを特徴とする成形体の製造方法。
【0006】
本発明によれば、印刷された模様及び色彩を加飾加工の対象物表面にきれいに形成できる積層体及び、印刷された模様及び色彩を加飾加工の対象物表面にきれいに形成された成形体を提供できる。
本発明によれば、従来のラミネート工法と比較して、簡素かつ廉価に加飾加工ができる。
印刷処理等を施した透明樹脂シートに粘着層/基材層からなる多層フィルムを常温で貼付した積層体を用いることができるため、熱ラミネート、ドライラミネート、押出ラミネート等の設備が不要となり、装置、加工性及び加工量による制限が低減される。
積層体を製造する際に、フィルムの貼り合せを常温で行うことができるため、フィルム材料同士の熱膨張率の違いに基づく位置ずれや印刷面のたるみ、しわ等が生じるおそれが少ない。
また、積層体の粘着層の粘着強度が適度であるため、位置ずれが生じた場合の貼り直しも可能であり、積層体の製造における歩留まり、さらには積層体を用いた成形体の製造における歩留まりの向上も期待できる。
また、積層体の基材層側に射出成形により基材樹脂層を設ける場合には、当該基材樹脂層材料の射出成形時の熱により、積層体の粘着層と透明樹脂層とを熱溶着させることもできるため、製造工程を短縮することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の積層体は、ポリオレフィンを含有する透明樹脂層、粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層、及びポリオレフィンを含有する基材層を、この順で含んでなることを特徴とする。
【0009】
本願明細書において「積層体」は、平面形状を有し、基材層、粘着層及び透明樹脂層又は透明樹脂シートの各層を貼り合わせたものを意味する。
本願明細書において「積層体」は、平面形状を有し、基材層、粘着層、印刷層及び透明樹脂層又は透明樹脂シートの各層を貼り合わせたものを意味する。
「成形体」は、前記「積層体」を加熱して積層体の粘着層を透明樹脂層に熱溶着させたものを意味する。但し、基材樹脂層を有する成形体においては、基材樹脂層部分と区別するために、加熱後の積層体(これ自体が成形体)を「積層体部分」と呼ぶ。
【0010】
透明樹脂層は、ポリオレフィンを含有する透明シート又は透明フィルムである。ここで、「透明」とは、ヘイズ値が0.1%〜60%、好ましくは0.1〜30%の範囲内であることをいう。ヘイズ値が上記範囲内であれば、一方の面に施された印刷等が成形体表面から十分に見え、意匠性に富んだ成形体が得られる。
【0011】
透明樹脂層に含まれるポリオレフィンとしては、プロピレン系樹脂が好ましい。
【0012】
透明樹脂層には、必要に応じて、メタロセン系エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリオレフィン系エラストマー、低立体規則性オレフィン重合体等の樹脂を配合してもよい。
上記樹脂を配合する場合、樹脂の合計を100重量%としたときに、上記ポリオレフィンの配合量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0013】
さらに透明樹脂層には、必要に応じて、顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、造核剤等の添加剤を配合してもよい。
【0014】
透明樹脂層の厚さは、目的に応じて適宜選択すればよいが、20〜1,500μmの範囲内が好適である。尚、透明樹脂層は単層又は複数の層で形成されてもよい。
【0015】
透明樹脂層は、例えば、特許第4237275号に開示されている急冷法、特許第3193801号に開示されている急冷及び加熱法、特開2002−226647号公報に開示されている造核剤を使用した方法によって製造されたものを好適に用いることができる。
【0016】
また、透明樹脂層は、市販のシート又はフィルムを用いてもよく、例えば、ピュアサーモ AG−301X、スーパーピュアレイ EG−170TC(いずれも登録商標、出光ユニテック(株)製)等を用いることができる。
【0017】
基材層は、支持体として一般的に用いられるポリオレフィンを含有するシート又はフィルムであれば特に限定されるものではない。
【0018】
基材層として利用できるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が挙げられる。尚、これらの樹脂は単独で用いてもよく、任意の組み合わせによる混合物として用いてもよい。特に、ブロックコポリマーのポリプロピレン(BPP)が基材層の材料として好ましい。BPPを使用することにより、引裂強度や衝撃強度が向上し、さらには耐熱性・剛性を付与することができる。
【0019】
基材層には必要に応じて顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
さらに、基材層は複数の層で形成されてもよい。単層又は複数層からなる基材層のトータルの厚さとしては、例えば、30〜1,000μmが好適である。
【0020】
粘着層は、粘着付与剤と、スチレン系エラストマー、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン及びポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上とを含有することが好ましく、スチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤と、を含有していることがより好ましい。粘着層は、90%以上、95%以上又は98%以上を、粘着付与剤と、スチレン系エラストマー、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン及びポリオレフィンからなる群から選ばれる1種以上から構成することができる。
【0021】
粘着層に配合されるスチレン系エラストマーは、一般式
A−B−A、又は
A−B
で表されるブロック共重合体である。一方の構成成分であるA、即ちスチレン系重合体ブロックとしては、平均分子量12,000〜100,000程度のものでかつガラス転移温度20℃以上のものが好ましい。
もう一方の構成成分であるB、即ちブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック又はこれらを水素添加して得られる重合体ブロックとしては、平均分子量10,000〜300,000程度のものでかつガラス転移温度−20℃以下のものが好ましい。
構成成分Aと構成成分Bとの好ましい重量比は、A/B=5/95〜50/50、より好ましくは10/90〜30/70である。一般式A−B−Aで表される三元ブロック共重合体と一般式A−Bで表される二元ブロック共重合体との重量比は、A−B−A/A−B=100/0〜20/80、さらに好ましくは100/0〜50/50である。
【0022】
粘着層に配合されるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、ポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が挙げられる。これらのポリオレフィンのうち、ポリプロピレンが好ましい。ポリプロピレンは、スチレン系エラストマーとの相溶性がよく、また耐熱性に優れ、さらにブリードによる被着体の汚染が発生しにくい。
【0023】
粘着層に配合される粘着付与剤としては、スチレン系エラストマーに選択的に相溶する樹脂を利用することができる。
このような樹脂としては、例えば、脂肪族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。
【0024】
また、粘着層には、必要に応じて、液状ポリマーやパラフィンオイル等の軟化剤、充填剤、顔料、老化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤を配合してもよい。
【0025】
粘着層は、スチレン系エラストマー100重量部に対し、10〜200重量部のポリオレフィンと、3〜100重量部の粘着付与剤と、を含有することが好ましい。
尚、ポリオレフィンの含有量は、好ましくは15〜100重量部、より好ましくは20〜60重量部であり、粘着付与剤の含有量は、好ましくは5〜50重量部である。
【0026】
粘着層の厚さは、5μm以上25μm以下であり、好ましくは10μm以上20μm以下である。
【0027】
粘着層の粘着強度は、0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内であり、0.05N/25mm〜1.5N/25mmの範囲内であることが好ましい。粘着強度が0.01N/25mm未満であると、熱成形時までの搬送で剥がれる等ハンドリングが悪化するおそれがあり、10N/25mmを超えると、位置ズレ時の再貼り合せが困難になり、歩留まりが悪化するおそれがある。
ここで粘着強度は、線圧0.38MPa、2m/minの条件下で、基材層と粘着層からなる多層フィルムを被着体(透明樹脂層)に圧着し、23℃にて24時間保存する。その後、引張り試験機を用い、引張り速度0.3m/分、180°ピールにて剥離し、その時の抵抗値を粘着強度とする。
【0028】
粘着層の粘着強度を所定範囲内とするには、これを構成するスチレン系エラストマー、ポリオレフィン及び粘着付与剤等の配合量を調整すればよい。
【0029】
また、本発明の積層体は、上記透明樹脂層と上記粘着層の間に、さらに印刷層を含んでなることが好ましい。
印刷層は、透明樹脂層の片面に、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の手法によって模様及び/又は色彩を印刷することで形成される。この印刷面に多層フィルムの粘着層を接着させることにより、印刷された模様及び色彩が保護できる。
【0030】
透明樹脂層の片面に印刷を施す場合に用いるインクは特に限定されず、透明樹脂層の材質等に合わせて適宜選択すればよい。例えば、スクリーン印刷であれば、帝国インキ製造(株)製、IPX−HF979墨、POS−911墨等が挙げられる。
スクリーン印刷の場合は、例えば、T−250メッシュを用いて印刷し、乾燥炉中で60℃、90分間乾燥することによって印刷層を形成することができる。
【0031】
図1に本発明の一実施形態である積層体Iを示す。積層体Iは、
図1に示すように3層構成であり、多層フィルム1と透明樹脂層2からなり、多層フィルム1は粘着層1aと基材層1bからなる。
【0032】
図2に本発明の他の実施形態である積層体Iを示す。積層体Iは、
図2に示すように4層構成であり、多層フィルム1と、透明樹脂層2と印刷層2aからなり、多層フィルム1は粘着層1aと基材層1bからなる。印刷層2aは透明樹脂層2の内側(粘着層1a側)にあり、多層フィルム1の粘着層1aと接している。
【0033】
本発明の積層体の製造方法は、
少なくとも、粘着強度が0.01N/25mm〜10N/25mmの範囲内である粘着層(1a)とポリオレフィンを含有する基材層(1b)とを積層して多層フィルム(1)を形成する第一の工程、及び
ポリオレフィンを含有する層を含む透明樹脂シート(2)に、前記多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合せる第二の工程
を有することを特徴とする。
【0034】
第一の工程では、粘着層(1a)と基材層(1b)とを、多層押出成形又はラミネート加工により多層化することが好ましい。粘着層(1a)と基材層(1b)とを多層化するための、多層押出成形及びラミネート加工は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、2層共押出法が挙げられる。
【0035】
上記手法によれば、基材層(1b)と粘着層(1a)とを無溶剤で一度に積層することができる。粘着層(1a)と基材層(1b)とを予め多層化することにより、比較的簡単な製造装置により積層体を形成することができる。
また、製造工程の簡略化により、積層体の製造コストを安価に抑えることができる。さらに、共押出法により形成した多層化フィルムにおいては、基材層の表面と粘着層との層間強度が強い一方、粘着層の粘着強度が適度であることから、位置ズレ時に再貼り合せを行うために透明樹脂シート(2)を剥がしても糊残りしにくい。
【0036】
第二の工程では、ポリオレフィンを含有する層を含む透明樹脂シート(2)に、前記粘着層(1a)側に、多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合せて積層体とする。透明樹脂シート(2)が複数層からなるシートである場合、ポリオレフィンを含有する層(透明樹脂層)を粘着層(1a)と貼り合わせる。貼り合わせは通常、常温で行う。粘着層が所定の粘着強度であること、及び常温で貼り合わせを行うことにより、位置ずれがあった場合でも、一旦剥がし、再度貼り合わせることが可能となり、積層体の歩留まりが向上する。
透明樹脂シートは「ポリオレフィンを含有する層」たけから構成されていてもよいが、他の層を含んでもいてもよい。
【0037】
また、第二の工程は、模様及び/又は色彩が印刷された前記透明樹脂シート(2)の該印刷面に、前記多層フィルム(1)の前記粘着層(1a)を貼り合わせる工程であることが好ましい。この工程により、加飾に用いる模様及び/又は色彩を有する積層体が製造できる。
【0038】
本発明の成形体は、上記本発明の積層体を用いたことを特徴とする。
本発明の成形体は、基材層側にさらに基材樹脂層を有することが好ましい。このように本発明の積層体を用いることにより、加飾された成形体を容易に得ることができる。
透明樹脂層/印刷層/粘着層/基材層/基材樹脂層からなる本発明の成形体の一実施形態の模式図を
図3に示す。
この成形体IIIは、積層体部分Iと基材樹脂層IIからなり、積層体部分Iは透明樹脂層2、印刷層2a、多層フィルム1からなる。多層フィルム1は粘着層1aと基材層1bのラミネートフィルムであり、粘着層1aは印刷層2aに融着している。例えば、基材樹脂層IIはポリプロピレンを射出成形したものであり、粘着層1aはスチレン系エラストマーと、ポリオレフィンと、粘着付与剤からなり、基材層1bはポリプロピレンからなる。
【0039】
基材樹脂層は、多層フィルム1の基材層1bと溶着できる樹脂からなる。例えば、オレフィン系樹脂からなり、プロピレン系樹脂からなることが好ましいが、この限りではない。
【0040】
基材樹脂層を設ける手法は特に限定されないが、射出成形により形成することが好ましい。
【0041】
本発明の成形体の製造方法は、本発明の積層体(I)に熱をかけて所望の形状とする工程を含むことを特徴とする。
【0042】
所望の形状の成形体を製造するには、金型を用いることが好ましい。金型を用いる場合に、積層体(I)に熱をかけるタイミングは、金型に入れる前であってもよいし、金型に入れた後であってもよい。本発明の積層体は、金型へ挿入した後、溶融された射出樹脂の熱等により所望の形状とすることもできる。この場合、金型へ挿入した後、型閉めにより、所望の形状とした後、溶融された射出樹脂の熱等により最終的な形状とすることもできる。
成形工程は、赤外線ヒーター及び加熱板等にて積層体(I)の少なくとも片面を100℃〜170℃の範囲に加熱し、真空、圧空及び真空圧空等の方法で金型に押し当てて付形を行ってもよい。当該加熱は、積層体(I)を金型に挿入した状態において、溶融された射出樹脂の熱により、基材樹脂層を形成すると同時に行ってもよい。この場合、付形と同時に透明樹脂層と粘着層、及び基材層と基材樹脂層の溶着を行うことができる。
尚、積層体の基材層側に射出成形により基材樹脂層を設ける場合には、当該基材樹脂層材料の射出成形時の熱により、基材樹脂層と積層体の基材層とが溶着される。
【0043】
この工程では、積層体(I)に熱を加えることにより、粘着層(1a)と透明樹脂シート(2)とが熱溶着する。
ここで、積層体(I)の加熱は、粘着層(1a)と透明樹脂シート(2)とが熱溶着され、多層フィルム(1)が、形状を維持したまま容易に透明樹脂シート(2)から剥離できない状態になるのに十分な温度及び時間であればよい。加熱温度は、シート表面温度が好ましくは100℃〜170℃、より好ましくは120℃〜160℃の範囲内である。上記温度範囲であれば、十分な熱溶着が達成される。また、加熱時間は加熱方法に応じて適宜調整すればよい。当該加熱は、例えば、積層体(I)の少なくとも片面に、射出樹脂を接触させることで実施することもできる。
【0044】
本発明の成形体の製造方法では、前記積層体(I)を金型へ挿入する工程、及び
前記金型に挿入された積層体(I)の基材層側に樹脂を射出し、基材樹脂層(II)を設ける射出工程を有する。
基材樹脂層(II)の材料は、本発明の成形体の説明において述べた通りである。
【0045】
射出工程は、具体的には、本発明の積層体(I)が挿入された金型を型閉めして所望の形状にした後、溶融状態の成形樹脂を金型のキャビティに射出し、成形樹脂の熱により積層体(I)の粘着層(1a)と透明樹脂シート(2)とが熱溶着されると同時に、積層体(I)の基材層(1b)と基材樹脂層(II)とが熱溶着され、成形樹脂の固化と同時に成形樹脂表面に本発明の積層体(I)からなる加飾シート(成形体)が一体化接着された加飾樹脂成形品を得る工程である。
【0046】
透明樹脂層(2)の印刷面(印刷層)と粘着層とが熱溶着された本発明の成形体によって、加飾が施された三次元形状を有する樹脂成形品を容易に製造することができる。
本発明の積層体を用いる本発明の成形体の製造方法によれば、大掛かりな装置を必要とせず、また、本発明の積層体は、印刷層を有する透明樹脂層の貼り直しも容易であるため、歩留まりを向上させることができ、さらに本発明の積層体を用いることで、一度の加工量にも特に制限なく、成形体の製造を行うことができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
実施例の積層体及び成形体の製造に用いた材料は下記の通りである。
・透明ポリプロピレンシート:ピュアサーモ(登録商標) AG−301X、出光ユニテック(株)製、厚み0.2mm
【0049】
・粘着層材料:ビニル−ポリイソプレンブロックを含むスチレン系エラストマー100重量部、プロピレンホモポリマー35重量部、粘着付与剤として、芳香族系石油樹脂とジシクロペンタジエンとの共重合系石油樹脂16重量部を混合して粘着層材料とした。
粘着層の粘着強度は、1.1N/25mmであった。粘着強度の測定方法は線圧0.38MPa、2m/minの条件下で、基材層と粘着層からなる多層フィルムを被着体(ポリプロピレン製透明樹脂シート)に圧着し、23℃にて24時間保存する。その後、引張り試験機を用い、引張り速度0.3m/分、180°ピールにて被着体を剥離し、その時の抵抗値を粘着強度とした。
【0050】
・基材層材料:ブロックコポリマーのポリプロピレン(BPP)
【0051】
上記粘着層材料と、上記基材層材料とを、2層共押出し法にて、粘着層厚み11μm、基材層厚み39μmとなるよう共押出させて、粘着層/基材層の多層フィルムを得た。
【0052】
実施例1
厚み0.2mmの透明ポリプロピレンシートに、粘着層/基材層の多層フィルムを、粘着層側を透明ポリプロピレンシートに向けて常温で貼り合せを行い、積層体とした。この積層体を熱成形(赤外線ヒーターにてシート表面温度:135℃に加熱)することで粘着層を溶着させて成形体を得た。
【0053】
実施例2
厚み0.2mmの透明ポリプロピレンシートの片面にスクリーン印刷にてインク層を付与し、粘着層/基材層の多層フィルムを、粘着層側をインク層へ向けて常温で貼り合せを行い、積層体とした。この積層体を熱成形(赤外線ヒーターにてシート表面温度:135℃に加熱)することで粘着層を溶着させて、成形体を得た。
【0054】
実施例3
厚み0.2mmの透明ポリプロピレンシートの片面にオフセット印刷にてインク層を付与し、粘着層/基材層の多層フィルムを、粘着層側をインク層へ向けて常温で貼り合せを行い、積層体とした。この積層体を熱成形(赤外線ヒーターにてシート表面温度:135℃に加熱)することで粘着層を溶着させて、成形体を得た。
【0055】
実施例4
厚み0.2mmの透明ポリプロピレンシートの片面にグラビア印刷にてインク層を付与し、粘着層/基材層の多層フィルムを、粘着層側をインク層へ向けて常温で貼り合せを行い、積層体とした。この積層体を熱成形(赤外線ヒーターにてシート表面温度:135℃に加熱)することで粘着層を溶着させて、成形体を得た。
【0056】
実施例5〜7
実施例2〜4で得られた積層体(熱成形前のもの)を射出成形の金型へ挿入して型閉めして所望の形状とした後、基材層側へポリプロピレン樹脂(基材樹脂)を射出し、基材層側に基材樹脂層が一体化した成形体を得た。
【0057】
<成形体の評価>
評価例1
実施例1〜4で得られた成形体の粘着層と透明樹脂層の溶着強度を下記のように測定し評価した。結果を表1に示す。
各成形体を25mm幅にカットし、引張り試験機にて、引張り速度0.3m/分、180°ピールにて、透明樹脂層から粘着層/基材層のフィルムを剥離し、その時の抵抗値を溶着強度とした。完全に溶着しており透明樹脂層から粘着層/基材層のフィルムを剥がせない場合は、「溶着」と表現した。
【0058】
【表1】
【0059】
評価例2
実施例5〜7で得られた基材樹脂層を有する成形体の粘着層と透明樹脂層との溶着強度を下記のように測定し評価した。結果を表2に示す。
成形体の基材樹脂上の積層体部分に15mm幅の切り込みを入れ、引張り試験機にて、引張り速度0.3m/分、180°ピールにて、透明樹脂層から粘着層/基材層のフィルムを剥離し、その時の抵抗値を溶着強度として測定した。
密着性は10N/15mm以上で○、5N/15mm以上で△、それ未満で×と標記した。
【0060】
【表2】
【0061】
透明樹脂層に印刷を施した実施例2〜7で得られた成形体では、印刷された模様及び又は色彩が成形体表面にきれいに形成されていた。